映画「デンジャラス・ラン」感想
映画「デンジャラス・ラン」観に行ってきました。
デンゼル・ワシントンが主演と製作総指揮を兼ねる、派手なカーアクションあり・格闘ありの典型的なハリウッドアクション作品。
今作では拷問等のバイオレンス系な表現が作中の複数個所で展開されているため、PG-12指定されています。
物語の舞台は南アフリカ共和国。
元CIAの工作員で、人間の心理を操作する手腕に長けていたことで半ば伝説的な存在となりつつも、現在は組織を裏切り世界36ヶ国で国際指名手配されているトビン・フロストは、とある店で同じくイギリスの諜報部を裏切ったアレック・ウェイドと対面します。
アレック・ウェイドは、「ファイル」と呼ばれているメモリチップをトビン・フロストに引き渡します。
しかしその直後、2人が入った店に傭兵バルガスをリーダーとする集団が潜入、トビン・フロストの生命を狙ってきます。
トビン・フロストはからくも店を脱出したものの、バルガスはよほど周到に計画を練っていたのか、道をことごとくバルガスの部下に封鎖されてしまい、進退窮まる事態に陥ってしまいます。
何とか逃げ道を探し出すべくトビン・フロストが周囲を見渡すと、南アフリカのアメリカ総領事館の建物が目に飛び込んできました。
前述のようにトビン・フロストはアメリカのCIAを裏切っている身なのですが、彼は自身のその状況を逆に利用し、アメリカ総領事館へ駆け込み庇護を求めるという大胆な方策に出ます。
当然のごとく、彼に駆け込まれたアメリカ総領事館、さらには報告を受けたCIAでは衝撃が走ります。
CIAはただちに、ダニエル・キーファーをリーダーとする9名の工作員達を南アフリカへ派遣し、トビン・フロストを尋問する決定を下すのでした。
トビン・フロストの尋問はアメリカ総領事館ではなく、CIAが南アフリカ国内のケープタウンで密かに保有している隠れ家のひとつで行われることになりました。
トビン・フロストの所在が明らかになることで、国内外に動揺が走ることを防ぐためで、当然、トビン・フロストの所在も尋問の事実も機密事項に。
その隠れ家を管理する「接客係」として任務に当たっているのは、CIA工作員としての出世と栄転を夢見るCIA下級エージェントのマット・ウェストン。
CIA本部から「予約」の連絡を受けたマット・ウェストンは、事前に予定していた恋人であるキャサリン・リンクレイターとの逢瀬をキャンセルし、隠れ家の提供という仕事に従事するのでした。
連行してきたトビン・フロストに水責めの拷問を加え、今回の事情を何が何でも吐かせようとする工作員達の光景を、マット・ウェストンは尋問室のマジックミラー?ごしに目撃することになります。
ところがその最中、隠れ家は突如バルガス率いる武装集団の襲撃を受けることになります。
機密になっているはずの隠れ家を襲撃されるはずがないという思い込みに奇襲効果が加わったこともあり、キーファーら9名の工作員達は奮戦虚しく全滅。
ただひとり、下っ端であるが故に戦闘に参加することなく、トビン・フロストの監視を任されたマット・ウェストンは、工作員達の全滅を目の当たりにしたこととトビン・フロストの心理的な揺さぶりもあり、トビン・フロストを連れてその場から逃走することを決断します。
からくも包囲を逃れ、追手からの追撃をもかわしたマット・ウェストンは、CIA本部の指示を仰ぎ行動することになるのですが……。
映画「デンジャラス・ラン」のストーリーには、「予測不可能な展開」というものは特になかったですね。
CIAという組織の内部を知り尽くしている初老の元工作員と、CIAでの出世を夢見る下っ端の若い接客係というコンビは対照的でしたが、それもハリウッド映画では何度か見かけた覚えがあったりします。
同じくデンゼル・ワシントンが主演を演じていた映画「アンストッパブル」でも、鉄道が舞台という違いはあるものの、基本的には「経験豊富な初老のベテランと若い新米」という全く同じ構図が披露されていました。
トビン・フロストの居場所を襲撃者達に教えている内通者がCIAの内部にいて、最終的にはそれを倒すことが目的になるというのもよくあるパターンでしたし、これまで見られてきたハリウッド映画のスタンダードな手法を正しい手順で踏襲している映画、という感は多々ありますね。
逆に、今作ならではのオリジナリティとしては「トビン・フロストが人間心理操作の達人」という設定にあるでしょうか。
作中でも、CIA幹部がマット・ウェストンに対して発言するであろう内容を正確に言い当て、「その際はお前に責任を擦り付けようとしている」と揺さぶり?をかけることでマット・ウェストンの動揺を誘っていたりします。
ただ、せっかくのこの設定も、作中では上手く機能していなかった感じは否めなかったところですね。
元々「人間に対する心理操作」というものを有効に機能させるためには、相手が自分のことをある程度信用していて、活自分の言葉に耳を傾けてくれるという前提が必要不可欠です。
相手の心理を操作しようにも、まずは相手が自分の言葉を聞いてくれないことには何も働きかけることができないのですから。
しかし今作の場合、トビン・フロストはCIAの裏切り者かつお尋ね者であり、周囲への信用など最初から勝ち得ない立場にあり、彼はまず心理操作が行えるための前提条件から作らなくてはならない状況でした。
しかも、マット・ウェストン以外の人間は、トビン・フロストを問答無用で拷問にかけるか殺そうとするかのどちらかで、相手に対する心理操作が行える余地など最初からどこにもありませんでしたし。
誘拐犯と交渉を行う交渉人(ネゴシエーター)といった設定や、謀略や頭脳戦が全面に出てくるようなストーリー構成でもないと、「心理操作の達人」なんて設定はあまり生かしようがないのではないかと。
作中の描写を見る限り、今作はアクションがメインの作品ではあるのでしょうが、せっかく出してきた「心理操作の達人」という設定が半ば使えない状態になっているというのは、少々残念な気がしないでもありませんね。
アクション映画としてはそれなりの出来なので、その手のハリウッド作品が好きな方にはオススメです。
すぷーきー
訪問&TBありがとうございます。
観た人それぞれ感じ方が違うのが面白いですね~。
フロストはマットを動揺させることに成功し、自分の思い通りに動かした、これは人の心を操る天才の設定に合ってると思ったのですがいかがでしょう?
信用はしていなくても、相手は伝説的人物であるとマットは分かってたので受け身の立場でしたし。