映画「ボーン・レガシー」感想
映画「ボーン・レガシー」観に行ってきました。
マッド・デイモンが演じるジェイソン・ボーンが活躍する「ボーン」シリーズ3部作の裏で同時進行していた、CIAの計画を巡る戦いを描いた作品。
今作ではジェイソン・ボーンは顔写真と名前のみの登場となっており、代わりにジェレミー・レナーが扮するアーロン・クロスが主人公を担っています。
なお、今作は映画「エージェント・マロリー」との2本立てで同日観賞しています。
物語の冒頭では、酷寒のアラスカの山岳地帯で過酷な訓練に従事しているアーロン・クロスの姿が映し出されています。
彼は定期的にブルーとグリーンの薬らしきものを服用しながら、川潜りや登山に精を出しています。
一方その頃、CIAは、組織の極秘プログラムである「トレッドストーン計画」および「ブラックブライアー計画」を暴露する記事をイギリスの新聞に掲載しようとしていたサイモン・ロスという記者の抹殺に動き出します。
そして、狙撃手の遠隔狙撃でサイモン・ロスを即死させてしまうCIA。
このサイモン・ロスの死は「ボーン」シリーズ3作目の「ボーン・アルティメイタム」でも描写されており、ここから「ボーン」シリーズと同時進行していることが判明するわけですね。
さらにCIAは、これ以上自分達の極秘プログラムの情報が外部へ流出するのを防ぐべく、暴露された2計画と並行して推進されていた「アウトカム計画」を抹消することを決定します。
「アウトカム計画」とは、薬を使って人間の肉体強化と人格改造を行う一方、相手を薬漬けにすることで裏切りを抑止する兵士だか暗殺者だかを作り出すという内容の極秘プログラムです。
CIA本部は、「アウトカム計画」に関わった全ての人間を抹殺することで、「アウトカム計画」の存在そのものを闇に葬り去ることを画策するのでした。
抹殺の対象は、「アウトカム計画」で肉体強化を施された数人の被験者と、「アウトカム計画」に必要なブルーとグリーンの薬を製造している薬品会社の研究員達。
そして、冒頭に登場していたアーロン・クロスもまた、「アウトカム計画」によって肉体強化が施された、コードナンバー5と呼ばれる存在なのでした……。
アラスカの雪山で登山を続けていたアーロン・クロスは、「アウトカム計画」の要となるブルーとグリーンの薬を密かに隠蔽しつつ、自分の同じ雪山で小屋を構えていたアウトカム計画のコードナンバー3と接触し、薬を分けてもらおうとします。
ところが、既に2人はCIA本部によって抹殺の対象とされていたのでした。
雪山の小屋には無人航空機MQ-9リーパーが派遣され、そのミサイル攻撃によってコードナンバー3は小屋諸共に爆砕されてしまいます。
たまたま運良く難を逃れることができたアーロン・クロスは森の中へと逃れ、MQ-9リーパーを狙撃銃で撃墜。
さらに、自分の腹の中に埋められていたカプセル型の超小型発信機をナイフで取り出し、森の中に自分に襲い掛かってきたオオカミの口の中へ放り込みます。
最初の機体の撃墜を受けて新たに派遣されてきた2機面のMQ-9リーパーは、発信機を抱えているオオカミに照準を合わせてミサイルを発射し、CIA本部ではその発信音が途絶えたことでターゲット殺害に成功したと確信するのでした。
MQ-9リーパーの脅威から脱することに成功したアーロン・クロスは、薬を調達すべく、「アウトカム計画」に必要な薬を製造した薬品会社の関係者の元へと向かうことになるのですが……。
映画「ボーン・レガシー」は、これまでの「ボーン」シリーズ三部作を全て観賞していることを前提とした作品であり、作品単独では意味が分からない用語も少なからず登場します。
冒頭にも出ていた「トレッドストーン計画」および「ブラックブライアー計画」は、「ボーン」シリーズの2作目と3作目でその存在が明らかとなっており、その詳細もそちらで説明されているのですが、今作の中ではただ存在が明示されているだけで復習的な内容の解説もなし。
もちろん、「ボーン」シリーズで主役を張ってきたジェイソン・ボーンについても同様です。
これから考えると、今作は既存の「ボーン」シリーズ三作品「ボーン・アイデンティティー」「ボーン・スプレマシー」「ボーン・アルティメイタム」を全て観賞し、その内容を完全に把握していることが前提の作品であると言えます。
サイモン・ロスの件と併せて考えても、今作がまさに「ボーン」シリーズ本編と同時並行して進行していることが明示されていますし。
「ボーン・レガシー」を観賞するのであれば、過去作を復習してから臨むことをまずはオススメしておきます。
今作のストーリーは、どことなく「ボーン」シリーズ1作目「ボーン・アイデンティティー」に近いものが結構ありましたね。
主人公が逃避行の中で出会った、薬品会社の女性研究員マルタ・シェアリングがヒロインで、かつ2人一緒に戦いつつ恋仲になっていき、最後はアメリカ国外の町(フィリピンの漁村?)でひっそりと生活を始めるという流れは、「ボーン・アイデンティティー」のジェイソン・ボーンとヒロインであるマリー・クルーツの関係を髣髴とさせるものがあります。
また、アーロン・クロスは元々イラク戦争で戦死したことになっていたアメリカ軍兵士で、CIAによって新たな身分が与えられたという設定も、ジェイソン・ボーンのそれとカブるものがありました。
もっとも、こちらはCIAの計画自体が似たり寄ったりなシロモノばかりだったという事情も影響しているでしょうし、アーロン・クロスの場合はジェイソン・ボーンと違って「過去の記憶」まで失われてはいなかったのですが。
ちなみに「ボーン・アイデンティティー」のマリー・クルーツは、2作目の「ボーン・スプレマシー」の序盤であっさりと殺害されてしまうのですが、それから考えると、今作のヒロインであろうマルタ・シェアリングも、次回作早々に死んでしまうことになったりするのでしょうかねぇ。
「ボーン」シリーズはまだまだ続きがあるみたいですし、今後ジェイソン・ボーンが再登板する可能性もどうやらあるようですので。
今作のアクションシーンについては、さすが「ボーン」シリーズと言えるだけのものはあり、シリーズお馴染みの奇抜なアクションが作中の随所で繰り広げられています。
特にラストのオートバイを使ったアクションシーンは、これだけでも必見の価値があります。
アーロン・クロスとマルタ・シェアリングが、結果的に2人で共同戦線を張ってCIAの刺客を倒すという構図も良かったですし。
実際、今作におけるラスボスとなったCIAからの凄腕暗殺者を最終的に倒したのも、暗殺者からの銃撃を受けて負傷してしまったアーロン・クロスではなく、マルタ・シェアリングの蹴りだったりしますからねぇ。
この辺りは、昨今流行の「戦うヒロイン」の面目躍如ではなかったかと。
アクション映画好きと「ボーン」シリーズのファンの方にはオススメな映画と言えますね。