映画「SAFE/セイフ」感想
映画「SAFE/セイフ」観に行ってきました。
「トランスポーター」シリーズや「エクスペンダブルズ」シリーズ、直近では映画「キラー・エリート」で活躍しているジェイソン・ステイサム主演のアクション・サスペンス作品。
今作では最初から最後までとにかくバイオレンスな展開、特に序盤は拷問に近い虐待シーンが延々と続くためか、R-15指定されています。
また今作は、熊本県では毎度おなじみの熊本シネプレックス1箇所限定での上映だったため、いつものごとく熊本市中心部まで足を運んでの観賞となりました。
……これでも「上映されるだけまだマシ」と言わざるをえないところに、熊本の泣けてくる映画事情があったりするのですが(T_T)。
ジェイソン・ステイサムが主演ということもあり、当然のごとくアクションシーンを売りにしている映画である今作ではあるのですが、しかし最初の20分ほどはとにかく鬱々な展開が延々と続きます。
何しろ冒頭のシーンからして、地下鉄で投身自殺を図ろうとする男と、マフィアから心細い逃亡を続けている少女の姿が描かれているのですから。
そのすぐ後から、1年前まで遡って2人がどのような経緯でそうなったのかについて描写されていくことになるのですが、それがまた暗くかつバイオレンスに満ち溢れたエピソードの羅列ときています。
警察をクビにされ、マイナーな総合格闘技のファイターにまで落ちぶれた挙句、本来自分が負けなければならないはずの八百長試合で誤って相手をKOしてしまったことで大損害を被ったロシアン・マフィアに自分の妻を殺されてしまう、今作の主人公ルーク・ライト。
さらに彼は、ロシアン・マフィアの若頭に「今後お前と親しくした人間は容赦なく殺す」とまで脅されてしまい、ホームレスとして生きていく羽目となってしまいます。
さらに彼は、過去に警察でも何か揉め事があったらしく、たまたま再会した警官達に一方的な殴る蹴るの暴行まで受けてしまいます。
一方、中国の南京で平穏に生活していたにもかかわらず、その驚異的な記憶力で逆に学校から厄介払いされてしまった上、チャイニーズ・マフィアに人攫い同然に拉致されアメリカまで連れてこられてしまった少女メイ。
年端も行かない少女であるはずのメイに対し、まるで見せしめと言わんばかりに脅しや虐待・殺人行為まで披露してのけるチャイニーズ・マフィア達の所業は、ルーク・ライト絡みの暗いエピソードにまつわる鬱々なイメージをさらに増幅させる効果がありましたし。
作品の意図としては、序盤でこれでもかと言わんばかりにマフィアや警官達を「絶対的な悪」として描いた上で、それらを徹底的になぎ倒すことで観客に爽快感を抱かせようという意図でもあったのでしょう。
しかし、あれらの描写のせいでR-15指定された上に、観客的にも結構鬱々な気分にさせられてしまうあれらの描写は、それを見る側に少なからぬ忍耐を要求させるものでもあるため、見る人によっては結構賛否が分かれるところではあるでしょうね。
過去の経緯が明らかになり、舞台が再び地下鉄に戻ってきたところで、いよいよ今作の本当の「売り」が披露されることになります。
謎の暗号を記憶している少女メイと、捕縛すべく動いたロシアン・マフィアの一味を目撃したルーク・ライトは、それまで実行しようとしていた投身自殺を止め、メイを助けるべく動き始めるのです。
彼が何故メイを気に留めたのかは作中でも理由が語られていないのですが、ルーク・ライトの最初の目的は、どちらかと言えば自分の妻を殺したロシアン・マフィアへの復讐の方だったのでしょうね。
メイの存在もさることながら、彼女に気を取られて後ろがおろそかになっているロシアン・マフィアのメンバー達は、ルーク・ライトにとっては格好のターゲットでもあったでしょうし。
それまでの無抵抗&無気力感を完全に帳消しにするかのごとく、ルーク・ライトは一方的に敵を叩き潰しまくります。
それまでマフィアや警察の横暴の前に、ただひたすら黙って耐えていただけのルーク・ライトのあまりにも突然の変貌ぶりには、「今までのアレは何だったんだ!」という感想を抱くのに充分なものがありましたが(苦笑)。
まあ、序盤におけるあんな鬱々な展開を最後まで続けられてもそれはそれで論外なのですし、ここから映画としては面白くなるので良しとはしているのですが。
映画「SAFE/セイフ」の面白さは、ジェイソン・ステイサムが演じる主人公のアクションやカーチェイスもさることながら、チャイニーズ&ロシアンの2大マフィアと汚職警官達による三つ巴の構図にあります。
3勢力は、メイが記憶している数字の暗号を他の2勢力に先んじて自分達で手中に収めるために、主人公のみならず他の2勢力に対しても積極的に攻撃を仕掛けてきます。
1勢力がルーク・ライトとメイを追っている際、彼らは目先の2人のみならず他の2勢力とも抗争していたり攻撃されたりしているんですよね。
そのため、彼らは2人の捕獲に集中することができず、結果として2人を逃がすという行為をしばしば繰り返すことになります。
2人を追跡している2大マフィアの幹部達は「もしメイが敵の手に落ちたら……分かっているな?」的な脅しを上層部から受けていますし、警察は警察で市長の意向もあり少なからぬ利権が絡んでいるため、メイの捕獲に躍起になっているありさま。
ルーク・ライトひとりと1勢力だけであれば、さしものルーク・ライトも勝てなかったでしょうにねぇ。
実際、ルーク・ライトとメイが泊まった高級ホテルを中国マフィアが奇襲をかけようとした際には、ホテルの警備員と警官達が中国マフィアに攻撃を仕掛けたりしなければ、ルーク・ライトの油断もあってミッション・コンプリートが達成できていたのではないかと考えられるものがありましたし。
この複雑な三つ巴にルーク・ライトが介入して圧倒的な暴力で敵を倒していく様は、まさに爽快の一言に尽きます。
またルーク・ライト自身、3勢力の均衡と対立構造を利用した立ち振る舞うのが上手かったですね。
獲得した情報を使って駆け引きを行ったり、かつての仇敵達とすら一時的かつ利害関係絡みとは言え平然と手を組んでいたりしますし。
もちろん、双方に全く信用はなく「用が済んだらこいつは殺す」と互いに裏切りの好機を模索する上での共闘ではあったのですが。
ラストの決着のつけ方も全く意外な展開ではありましたが、これも良い意味で意表を突かれた感じでした。
アクション映画好きか、ジェイソン・ステイサムのファンな方であれば、まず観に行って損をすることはない作品と言えるのではないかと。
KGR
2つの組織から追われ、警察すらも味方ではない(最後は味方だけど)孤高のステイサムが、秘密を知っている少女を助けその謎を解く。
かっこいいんですが、そこに至る理由づけがしょぼい。
もう少し脚本を練り込んでほしかった。