テレビドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」 第6話感想
全10話放送予定のTBS系列の金曜ドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」。
今回の記事は、2012年11月16日放映分の第6話感想となります。
前回第5話の視聴率は8.9%。
今まで続いていた視聴率最低記録の更新は回避され、今まで右肩下がりだった視聴率がようやく持ち直した感じではありますね。
とはいっても、初回および2回目放映分の視聴率までは回復しきれておらず、またここからさらに回復するのか、再度反転して落ちていくのかは正直不透明な情勢ではあるのですが。
なお、過去の「大奥」に関する記事はこちらとなります↓
前作映画「大奥」について
映画「大奥」感想&疑問
実写映画版とコミック版1巻の「大奥」比較検証&感想
原作版「大奥」の問題点
コミック版「大奥」検証考察1 【史実に反する「赤面疱瘡」の人口激減】
コミック版「大奥」検証考察2 【徳川分家の存在を黙殺する春日局の専横】
コミック版「大奥」検証考察3 【国内情報が流出する「鎖国」体制の大穴】
コミック版「大奥」検証考察4 【支離滅裂な慣習が満載の男性版「大奥」】
コミック版「大奥」検証考察5 【歴史考証すら蹂躙する一夫多妻制否定論】
コミック版「大奥」検証考察6 【「生類憐みの令」をも凌駕する綱吉の暴政】
コミック版「大奥」検証考察7 【不当に抑圧されている男性の社会的地位】
コミック版「大奥」検証考察8 【国家的な破滅をもたらす婚姻制度の崩壊】
コミック版「大奥」検証考察9 【大奥システム的にありえない江島生島事件】
コミック版「大奥」検証考察10 【現代的価値観に呪縛された吉宗の思考回路】
テレビドラマ「大奥 ~誕生~ 有功・家光篇」
第1話感想 第2話感想 第3話感想 第4話感想 第5話感想
第6話が担当している原作のページ範囲は、コミック版「大奥」3巻のP94~P127まで。
女版家光と捨蔵改めお楽の方の間に女児が生まれてから、有功が玉栄に女版家光と子を為してくれるよう依頼するシーンまでのストーリーが展開されます。
今回は女版家光と有功絡みの本筋のストーリーについては特にオリジナル要素がなかったのですが、その分、稲葉正勝絡みのオリジナルストーリーがかなり前面に出ていた感がありましたね。
今回の話におけるテレビドラマ版オリジナルエピソードは以下の通り↓
・女版家光の出産後、春日局が捨蔵改めお楽の方に「お腹様」であることを告げ、次こそ男児を産むよう促す。
・有頂天になって柿を取ろうとしたお楽の方が、頭を打って半身不随に(原作では柿は話に絡んでこない)。
・お楽の方の半身不随後、女版家光と有功の逢瀬を許した春日局に対し、稲葉正勝がその意図について問い質す。
・家光に扮する稲葉正勝と、元服の儀のために江戸城へ参内した息子の稲葉正則の対面、さらに無難に儀式が終わろうとした際、息子を自分に近づけさせアドリブで語りかける稲葉正勝。
・対面が終わった後、母親に報告を行う稲葉正則と、春日局から「二度と同じことをするな」と警告される稲葉正勝。
話が進む度に思うのですけど、このテレビドラマ版「大奥」では、春日局のサディスティックな悪役ぶりが無意味なまでに前面に出まくっているような感が多々ありますね。
女版家光と有功の逢瀬を許した意図を稲葉正勝に問われているシーンでは、わざわざ自分から他者の憎しみを買うかのごとき振る舞いを稲葉正勝相手に披露していたりしていますし。
春日局に破滅願望でもあるのでなければ、アレって単に稲葉正勝をイビっていただけでしかないのですが。
原作の春日局も相当なまでの悪党ではありましたが、原作の方はあくまでも「必要に応じて手段を選ばない」だったのに対して、テレビドラマ版の方ではそうでない局面においてさえも残虐性が浮き彫りになっています。
よほどにストレスでも溜まっていたのか、それとも老い先短い自分の寿命に苛立ってでもいたのか、はたまた息子をイビることで自分が権力者であることの再確認でもしたかったのかは知りませんが、傍目には実に無意味なことをしているよなぁ、と。
原作と違って春日局の思想的背景が、現時点では全く語られていないため、なおのことサディスティックな一面だけがクローズアップされてしまっていますし。
稲葉正則の元服の儀で、稲葉正勝が春日局の言いつけに背いてアドリブな言動を披露していたのも、息子に対する愛着もさることながら、間違いなく春日局に対する反発も一役買っていたことでしょう。
あの2人、だんだんと反感と対立を深めつつあるようなのですけど、稲葉家の面々共々、今後一体どうなっていくのでしょうかねぇ。
何となく、自分に逆らう息子に対する制裁を目的に、稲葉家に呪いをかけたり殲滅を命じたりする春日局、という構図が思い浮かばずにはいられないのですが(苦笑)。
あと、玉栄に女版家光の側に上がるよう依頼してきた有功の表情が、明らかに腹に一物あるかのごときシロモノだったのが印象に残りました。
前回の話で玉栄に対して「お前はええ子や」と発言していた際の表情と言い、有功って玉栄に対して実は凄まじいまでの悪意や負の感情を抱いているのではないか、とすら解釈せざるをえないところだったのですけど。
有功を演じている堺雅人の表情の作り方は結構上手いものがありますが、自分のことを心から慕ってくれている第一の忠臣である玉栄に対して、わざわざそんな不気味な表情や声色をすることもなかろうに、とは考えずにいられなかったですね。
そして当の玉栄の方では、そんな有功の不気味さに果たして気づけているのでしょうか?
まあ、あの忠臣ぶりを見るにつけ、「まさか有功様が自分に悪意など抱くはずがないだろう」と頭から決めてかかっていそうではあるのですけど(苦笑)。
有功絡み以外になると、玉栄も春日局ばりに手段を選ばぬ悪党ぶりを披露しているものなのですが、主である有功の前では純粋無垢な赤子同前でしかない、ということになるのでしょうかねぇ。
次回第7話で、いよいよ原作でも支離滅裂な論理の塊だった「一夫多妻の否定」「女性に家の後を継がせる」の話が出てくるみたいですね。
春日局も次話で倒れることになるようですし。
正直、あの場面で披露されることになる男女逆転の政治的・論理的正当性については、原作以上のものを出すことはできそうにもありませんが、どんな形で盛り上げていくことになるのでしょうかねぇ。