映画「グランド・クロス シード・オブ・ディストラクション」感想(DVD観賞)
映画「グランド・クロス シード・オブ・ディストラクション」をレンタルDVDで観賞しました。
2011年にカナダで製作されたパニックSF作品。
日本での劇場公開はなく、DVDのみでの日本上陸となるみたいですね。
Wikipediaやシネマトゥデイの映画検索にも引っかからないですし。
物語冒頭では、「アラムート計画」と称する研究を行っている男達が、植物を相手に空気浄化の実験をしている様子が映し出されています。
ビデオカメラで撮影されている男がタバコの煙を植物に吹きかけた瞬間、その植物は煙を吸い込み浄化してしまいました。
直後の測定で、植物の周囲にはタバコ特有の一酸化炭素や二酸化窒素などの有害物質が全く検出されなくなっていたことが判明。
「素晴らしい植物だ!」と絶賛する男の下で、不気味なまでの速度で根を生やす植物が映し出された直後、舞台は全く別の場所へと移ります。
次の舞台は、アメリカ・ネバダ州ラブロックにあるケンブル鉱山。
そこでは一組の男女2人が、有害ゴミの不法投棄を行っている人間の様子をビデオカメラに収めるべく、忍耐強く監視を続けていました。
やがて2人の前に、不審な白いバンが現れます。
不法投棄が行われる様子が行われるのかと緊張し、ビデオカメラを取り出して撮影を始める2人でしたが、バンから降りた男は手ぶらで歩いており、不法投棄を行う様子など全くありません。
代わりに男は、周囲を警戒しつつ、スーツ姿を来た男と対面するのでした。
スーツ姿の男はアタッシュケースから大金を見せつけ、バンの男と何か取引をしようとしているようでした。
それに対し、バンの男はおもむろにナイフを取り出して自分の手を切った後、同じく取り出した葉っぱを手に当てます。
手に当てた葉っぱを男が剥がすと、そこには最初に手を切った際にできたはずの傷はどこにもなくなっていました。
バンの男は大金と引き換えに何かの種子をスーツ姿の男に渡す手筈となっているようで、バンの男は車から種子を持って来ようとします。
しかし、スーツ姿の男にはもうひとり、遠距離から狙撃中で監視しているスナイパーがついていました。
そのスナイパーの男が2人の男女の姿に気づいた時、事態は急激に動き出します。
スーツ姿の男は、バンの男が罠にはめたのではないかと早合点し、スナイパーの男はバンの男を銃で狙撃。
負傷したバンの男は、ちょうどバンから取り出そうとしていた種子を地面に落としてしまい、種子を保管していた容器が割れてしまいます。
そして、種子が地面に落ちてしばらく経った時、それは突然起こりました。
何と、地面から突如巨大な植物の根が生えてきて鉱山を覆いつくしてしまったのです。
スーツ姿の男も、急激に成長する根に巻き込まれる形であっさりとフェードアウト。
遠距離だったために無事だった2人の男女は、クルマに乗ってその場から逃走。
しかし巨大な植物の根は、その後も凄まじい勢いで成長を続け、やがてネバダ州を覆い尽くさんとするのでした……。
映画「グランド・クロス シード・オブ・ディストラクション」は、上映時間が91分と短いこともありとにかく展開が速いです。
今作で脅威として描かれる巨大植物は早々に出現しますし、その成長速度も早ければ、人間達がその脅威を認識するのも何の問題もなく達成されます。
目の前ではにわかに現実とは思えない光景が次から次に繰り広げられていくにもかかわらず。
まあ、たとえどんなに非常識かつ理解不能な光景であっても、それが危険であることは誰の目にも一目瞭然だったわけなのですから、「こんなことが科学的&常識的にありえるはずがない!」などと手をこまねいて現実を否定していたら、生命がいくつあっても足りないのですが。
ただ、作中の巨大植物は、図体の大きさと破壊力という点では申し分なかったものの、対人間についてはどのような脅威になるのかがやや不透明な感が多々ありますね。
植物が人間に直接襲い掛かって殺すシーンというのは作中になく、作中の人間達の死は、植物が作った亀裂に落っこちたり、人が乗った車がいいように弄ばれるという形で、間接的に明示されるに留まっていましたし。
この映画、人の死を直截的に描かないということにこだわりを持ってでもいたのでしょうか?
その割には、ヘリが撃墜された際にパイロットが撃たれて死ぬ様はモロに描いていたりするのですが……。
個人的に疑問だったのは、植物の研究を行っていたマッドサイエンティストの老科学者が、ただ単に「研究を邪魔されたくない」という理由だけで侵入者を抹殺しろと命じたことですね。
自分の研究結果を独占して利益を得るという意図でもあるのならば抹殺命令も納得がいくのですが、単に「研究を邪魔されたくない」って、それが他者を殺さなければならない理由になるのかと。
そのためにわざわざプロの傭兵?を4人も雇っているのも理解に苦しみますし。
ただ「邪魔をされるのを防ぐ」というだけであれば、銃を突きつけて脅して追い払うという形を取った方が、持ち場を離れなくて良い分安全確実なのではないのでしょうか?
プロの傭兵4人も、わざわざ無駄に走らされた挙句に結局は侵入者の侵入と研究妨害を許してしまっているのですし。
殺すことにこだわったがために、却って本来の目的からしても本末転倒な結果をわざわざ自分から招いていたとしか思えないのですけどね、あの老科学者は。
まあ彼にとっての研究とは何物にも代えがたい至宝の存在であったことは、物語終盤に「植物の増殖を止める」ことで合意が成立していたにもかかわらず、植物の根を見て「素晴らしい研究素材だ」とあっさり前言を翻して裏切ったシーンを見ても明らかなのですが。
全体的にイマイチ盛り上がりが欠けていて、いかにもB級映画的なテイストで製作された雰囲気が多大なまでに漂う作品ですね。
作りから考えても低予算な映画なのでしょうし、仕方ない部分もあるのでしょうけど。