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映画「パニック・スカイ フライト411 絶対絶命」感想(DVD観賞)

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映画「パニック・スカイ フライト411 絶対絶命」をレンタルDVDで観賞しました。
2012年に製作されたアメリカ映画で、パニックアクション的な要素を交えつつも、宗教的な色彩の強い作品です。
これも「グランド・クロス シード・オブ・ディストラクション」と同じく、日本での劇場公開なしにDVDのみで日本上陸を果たした映画のようです。
こういう海外映画って、意外に多そうですね。

「竜は海辺に立ち、獣を呼び出す。あらゆる人類を支配する権限を得た獣は、聖なる者をも征服した」 ― 黙示録13章

今作の物語は黙示録13章を読み上げるところから始まった直後、タイのバンコクにあるコンテナ集積所?にあるコンテナのひとつで、周囲を銃で武装した護衛に囲まれる中、とある手術が行われようとしているシーンに場面が移ります。
コンテナを警護している護衛のひとりであるチャド・ターナーは、雇い主に不満そうながらもしぶしぶと警護の任についています。
ところがそんな中、突如コンテナを謎の武将集団が奇襲を仕掛けます。
チャドは善戦するものの、護衛の多くは撃ち倒され、コンテナの手術室にも銃弾が浴びせられてしまいます。
チャドは襲撃者を打ち倒しつつ、警護対象たるコンテナに近づき、その安否を確かめようとします。
少なからぬ銃弾が撃ち込まれたコンテナには、チャドの上司?も手術対象の人間も既に死んでおり、かろうじて生きていたのは瀕死の重傷を追ったひとりの医者だけでした。
チャドが医者に駆け寄ると、その医者は「お前だけが頼りだ」とチャドの腕に何かを打ち込み、そのまま息絶えてしまいます。
そして、何かを打ち込まれたチャドもまた、注射?の打ち込まれた後遺症によるものなのか、そのまま意識を失ってしまうのでした。

次にチャドが目を覚ますと、彼はチャドの様子を観察していた人物と共に、とある一室に寝かされていました。
同じ一室にいた人物は、自分のことをアヴァンティ社のクーパーと名乗り、チャドの腕の中に「チップ」と呼ばれる物が埋め込まれた結果、チャドが会社にとっての重要人物になったことを彼に告げます。
そしてクーパーは、ドイツのベルリンで開かれるG20の会議の場へ行くようチャドに指示を出すのでした。
二日後にバンコク国際空港からベルリンへと飛び立つ飛行機に乗り、かつ旅行者に紛れ込む形で。
またもやキナ臭い任務な感がありありだったものの、チャドに選択の余地もなく、彼はその指示に従うことになります。

一方、アヴァンティ社のライバル企業?とおぼしきターク産業のグローバル本社では、企業のトップと思しき人物とプロの仕事人?の2人が何やら密談を繰り広げていました。
ターク産業のトップの人物は、アヴァンティ社が開発したチップを欲しがっており、大金を積んで買うと申し出ながら断られたことから、プロの仕事人にチップを奪うよう依頼するのでした。
そしてプロの仕事人は、バンコク発ベルリン行の飛行機に搭乗するチャドを捕縛すべく、同じ飛行機に搭乗し蠢動することになるのですが……。

映画「パニック・スカイ フライト411 絶対絶命」は単独では全く完結しておらず、まるまる1本使ってプロローグ的なストーリーを展開しているような感がある作品ですね。
今作では、チャド・ターナーに埋め込まれた「チップ」と呼ばれる存在が、物語の重要なカギを握っているのですが、実のところ、この「チップ」なるものが具体的にどんな力を持っているのかについては、物語のラストに至るまで謎に包まれたままです。
作中における「チップ」の具体的な能力の発動例としては、物語中盤で飛行機の乗客の半分近い数が突然着用していた服を残して忽然と消えてしまったという事例があるにはあるのですが、これにしても「何故、どのような理由でそんな現象が発生したのか?」については全く何も言及されていません。
作中における「チップ」は、リーマンショック後の混沌とした世界を変えられる救世主的な役割を担えるだけの力を持つとされているのですが、作中で披露された「突然人が服を残したまま消える」というだけでは、それがどんな形で救世主的なツールたりえるのか不明もいいところです。
結局、「チップ」の謎は最後まで明かされることなく、ラストは主人公がヒロインと共に低空飛行に入った飛行機からパラシュートで脱出するという結末を迎えただけでしかありませんでしたし。
ハイジャックをやらかしたプロの仕事人も結局死ぬことなく終わっていましたし、作品単独としてはあらゆる点で不完全燃焼が否めないのではないかと。
かといって続編に期待しようにも、続編ができるほどの人気を博しているとは到底思えない出来なことは、日本で劇場公開されることがなかったというその一事だけを見ても一目瞭然なのですしねぇ。
この辺り、アメリカ映画にもピンキリ色々とあるのだなぁ、という当たり前の事実をつくづく感じさせてくれる作品ではありますね。

あと、いくらリーマンショック等の経済危機で世界が混乱をきたしているとはいえ、救世主的な力でもってその状況を改善するというのは正直無理があるのではないかと思わなくはもなかったですね。
黒幕であるターク産業のトップが画策していたのは、作中の描写を見る限りでは「ひとりのリーダーによる超強力な中央集権体制の確立でもって世界を統合しよう」という話のようです。
しかし、通貨を統合しようとしたEUの悲惨なまでの政治的妥協や危機的状況を鑑みるだけでも、それが非現実な行為でしかないことは素人目にも明らかなのではないかと。
超常的かつ絶対的な力や奇跡を行使しさえすれば成し遂げられる、というものではないのですからねぇ、その手の政治的統合というものは。
各国がそれぞれ抱え込んでいるナショナリズムの問題や伝統・慣習・文化・言語の違いなど、単純な力業だけで押し通せない問題はいくらでもあるのですし。
宗教や文化で多くの共通項が存在するはずのヨーロッパの経済的統合ですら失敗するのですから、ましてやひとりの強大なリーダーによる政治的統合など、まだ当面は夢物語もいいところでしかないでしょう。
また仮にそんなものが実現しえたとして、それが大多数の人間および人類社会にとっての利益になるという保証もありはしません。
0.1%の人間だけが利益を享受し、残り全てが圧政と弾圧で苦しめられるなどという未来だって起こりえるのですから。
経済的・政治的な格差が拡大するようなものであれば、一時的に状況が改善されたとしても、長期的には動乱の種を植え付けることにもなりかねないのではないかと。
ヨーロッパやアメリカ、それに中国などで貧富の格差が拡大したことが大きな社会問題となっているように。
ターク産業のトップが、そこまで考えた上で救世主を志向しているとはとても見えないのが何ともねぇ(-_-;;)。

今作は続編ありきが前提のストーリーのため、作品単独では正直評価のしようがないですね。
続編が出た後でまとめて観賞する方が、あらゆる意味でスッキリしそうな映画ではあります。

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