映画「96時間」感想(DVD観賞)
映画「96時間」をレンタルDVDで観賞しました。
日本では2009年に公開されたフランス映画で、リュック・ベッソン製作のアクション・スリラー作品です。
2013年1月11日には続編「96時間/リベンジ」が日本で公開される予定となっており、本作がこれまで全くタッチしていなかったこともあって、事前の予習も兼ねて今回の観賞と相成りました。
当然、続編たる「96時間/リベンジ」も、日本で公開され次第劇場で観賞する予定です。
今作の主人公であるブライアン・ミルズは、元CIA工作員として凄腕を有する実力者でありながら、娘のキム・ミルズのためにアメリカ・カリフォルニア州で隠居生活を送っていました。
妻のレノーアとはとうの昔に離婚しており、娘のキムはレノーアが再婚した大富豪のスチュアートと一緒に生活していました。
それでもブライアンは、キムの誕生日の折には自らプレゼントを持参して駆けつけるなど、娘のことを他の何よりも考え、娘もまた、そんな父親のことを慕っているのでした。
その日の夜、ブライアンはかつてのCIAの元同僚達と共にささやかなバーベキューパーティを行います。
パーティの中でも、ブライアンの娘想い絡みのエピソードが酒の肴として語られていたりします。
パーティが終わり、元同僚達がブライアン宅から帰宅の途につこうとする中、元同僚達のひとりがブライアンに仕事を持ちかけてきます。
コンサート会場へ赴く歌手の護衛を兼ねた送り迎えを4時間遂行するだけで2500ドル、という仕事を持ちかけられたブライアンは、場所が地元でかつ死人が出ない仕事であることから2つ返事で引き受けます。
コンサート会場で楽屋の護衛を任されたブライアンは、娘が歌手志望だったことを思い出し、護衛対象である歌手のシーラに娘への助言を求めます。
それに対するシーラの返答は「他の仕事を探せ」というそっけないものでしたが。
コンサート終了後、シーラは運営側のミスで解放されてしまったゲートから押し寄せるファンから逃走する最中、ナイフを持った男に奇襲されます。
しかし、それをいとも簡単に払いのけて男を取り押さえるブライアン。
ブライアンは暗殺者の存在に動揺するシーラと共に車に乗り、コンサート会場を後にするのでした。
シーラはそのお礼として、ボイストレーナーの紹介とレッスン料の引き受けを申し出、娘のキムが歌手としてやっていけるよう便宜を図ってくれることを約束してくれたのでした。
翌日の昼食時。
コンサートの最中に娘のキムから電話をもらっていたブライアンは、娘の誘いに応じて2人きりのランチを楽しむべく、とあるレストランで娘が来るのを待っていました。
しかし、レストランに現れたキムは、母親のレノーアも一緒に連れてきていました。
娘との2人きりでのランチを楽しみにしていたブライアンはやや落胆した様子でしたが、気を取り直して彼はキムの要件について問い質します。
キムが言うには、親友のアマンダと一緒にフランスのパリへ行こうと誘われたが、キムは17歳の未成年者のために親の同意が必要とのことで、その許可が欲しいとブライアンに頼み込んできたのでした。
しかしブライアンは、「17歳でひとり旅は危険だ」という理由から許可証へのサインを拒み、結果、キムはヒステリックになってその場を立ち去ってしまいます。
そのことがショックだったのと、レノーアからボロクソに言われたことが効いたのか、結局ブライアンは条件付きながらもキムの海外旅行の許可証にサインしてキムに手渡すのでした。
そして、ブライアンに空港まで見送られつつ、キムはアマンダと共にフランスのパリへと向かうことになるのですが……。
映画「96時間」は、娘を人身売買組織に誘拐された父親の奮闘が描かれています。
父親のブライアンは、娘であるキムの安否を心配するあまり、過剰なまでにガチガチな規則でもって娘の行動を束縛・把握しようとします。
結果的に見れば、確かにそのおかげで娘の消息および誘拐犯達の手がかりをわずかながらに把握することができたのですから、一見するとその対応こそがベストだったように思われます。
しかしそれはあくまでも結果論であり、しかもブライアンが提示していた防衛策は、ブライアンでなければ事実上対処ができないというほどに微弱な足跡を残すに過ぎないシロモノでしかありませんでした。
また、キムとアマンダを誘拐した犯人にしても、別に「彼女らを何が何でも狙わなければならなかった」理由があったわけではなく、いつもの人身売買の仕事絡みで、半ば作業的に彼女らを攫ったに過ぎなかったわけです。
何か少しでもツキがあったり手順が違ったりしていたら、彼女らは全く誰にも狙われることなく、無事に旅行を終えていた公算が極めて高かったのです。
つまりキムとアマンダは、一言で言えば「運が非常に悪かった」とでもいうべき境遇にあったのであって、100%確実に生命を付け狙われているわけではなかったことになります。
第三世界とか格別に治安の悪い場所へ行くとかいうのであればまだしも、シャルル・ド・ゴール空港からパリにあるアマンダの従姉の家までであれば、そこまで警戒する場所ではないわけですし。
そんな状況下で、しかも観光旅行気分でパリの街にやってきた2人が周囲を相手に完全警戒態勢で臨むのは、未来を見通す予知能力でも駆使するか、ブライアン並に裏社会の実態を知り抜いているかしていなければ、さすがに難しいものがあったと言わざるをえないでしょう。
まあ、「パリならば安全だろう」という思い込みが逆に盲点ないし間隙となることは大いにあるわけで、誘拐犯達もその辺りの心理を利用することで人身売買業をこなしてきてはいたのでしょうけど。
しかし、桁外れの運の悪さで誘拐犯達に攫われたキムとアマンダも不運の極みではありましたが、今作の場合、それは同時に彼女らを誘拐した当の誘拐犯達にも言えることではありますね。
彼らにしてみれば、いつも通りの仕事をこなしていたはずなのに、元CIA工作員などという危険極まりない猛獣を呼び込んでしまい、わけも分からずに組織もろとも死んでいく羽目となったのですから。
誘拐犯達も、まさかあの時電話で話した父親が元CIA工作員で、アレだけの行動力でもって自分達を追い詰めていき、それによって自分達の生命が奪われることになるとは夢にも思わなかったことでしょうねぇ(^_^;;)。
そんな悲惨な末路な未来を事前に知っていたならば、彼らもあの2人を攫うなどという命知らずなことは、破滅願望でも抱いていない限りは何が何でも避けようとしたでしょうに(苦笑)。
理不尽な非常識に直面する羽目になったのは、もしかしなくても誘拐犯達の方だったでしょうね。
彼らは死の瞬間、あまりにも理不尽な現実と神の気まぐれに呪いの言葉でも吐きたい気分に駆られたかもしれません。
一方、今作で大活躍を演じることになるブライアンは、とにかく冷酷非情な殺人マシーンとしての側面を存分に見せつけてくれます。
彼は敵に対して情け容赦がありませんし、捕えた敵を拷問にかけて情報を引き出した挙句そのまま殺してしまったりもしています。
ブライアンに殺されていく悪党達自身、他者に対してはまさにブライアンと同じように情け容赦なく酷虐に扱ったり殺したりしていったのでしょうし、実際作中にもそういう描写があるわけですから、その点では同情する余地など最初からどこにもないわけではあるのですが。
躊躇なく敵を殺しまくるブライアンのアクションシーンは、個人的には結構爽快なものがあります。
何しろ最近は、映画のみならずエンタメ作品全般で「るろうに剣心」のごとき「不殺の精神」とやらが流行でもしているのか、敵に対して妙に寛大な態度を取ったり、殺すべき敵を殺さなかったりといった描写が幅を利かせすぎている感が多々ありますし。
変に偽善的・温情的な主張をすることなく、「自分達に降りかかる火の粉は払う」を徹底して実行していますからねぇ、ブライアンは。
その筋の通った行動と「強さ」こそが、今作が観客を魅了する最大の要素と言えるものなのかもしれません。
今作の続編たる「96時間/リベンジ」は、今作で壊滅した人身売買組織を統括していた息子を殺された親玉が、ブライアンに対する復讐(リベンジ)を画策することから始まるストーリーのようですね。
アクションシーンを見たいだけならば続編単独でも楽しめないことはないでしょうが、ストーリー的な繋がりを楽しみたいのであれば、やはり今作の事前復習は必須なのではないかと。