映画「アウトロー」感想
映画「アウトロー」観に行ってきました。
イギリスの作家リー・チャイルド原作のハードボイルド小説「ジャック・リーチャー」シリーズを映画化した、トム・クルーズ主演のハードボイルド・アクション大作。
英語の原題は、原作小説と同じ「JACK REACHER(ジャック・リーチャー)」だったのですが、何故これが「アウトロー」なんて邦題に変更されたのでしょうか?
そのままでも良いじゃないか、と思わなくもなかったのですが……。
物語の冒頭は、アメリカ・ペンシルバニア州のピッツバーグ近郊にある公園と川を挟んだ対岸にあるとある駐車場に車を停め、銃を構えて公園の通行人達に狙いを定めるひとりのスナイパーの存在が描かれています。
スナイパーは公園の通行人に向けて総計6発の銃弾を発射し、5人の生命を奪ってその場から車で逃走。
ただちに現場に駆けつけ、狙撃地点となった駐車場の実況検分を開始した地元の警察は、残された証拠品や指紋、監視カメラの映像などから、元アメリカ陸軍のスナイパーであるジェームズ・バーの存在が浮上。
家宅捜索した彼の家でも、監視カメラに映っていた車や、事件で使われていた銃弾など、犯行を裏付ける証拠が次々と出てきたため、警察は一連の事件の主犯をジェームズ・バーと断定し、彼の取り調べを始めます。
しかし、事情聴取を受けているジェームズ・バーは黙秘を続けた挙句、メモに「ジャック・リーチャーを呼べ」などという謎めいた文字を書き綴ります。
その直後、ジェームズ・バーは、収監されていた刑務所で他の囚人達から暴行を受け意識不明&記憶喪失状態に。
一方、警察はメモに書かれていたジャック・リーチャーという名の人物について調べ始めるのですが、経歴は判明したものの、現在も含めたここ2年における足取りがまるで掴めない状態が続いていました。
ジェームズ・バーが昏睡状態となり、捜査が止まってしまった警察が悩んでいる中、何とジャック・リーチャーを名乗る人物がジェームズ・バーに面会しに警察へやってきたというではありませんか。
すぐさま警察はジャック・リーチャーにジェームズ・バーのことを聞き出そうとするのですが、それを制止した人物がいました。
それは、警察のお偉方のひとりであるアレックス・ロディンの娘でジェームズ・バーの弁護人でもあるヘレン・ロディン。
彼女は、自分の許可なくジャック・リーチャーとジェームズ・バーを立ち合わせた父親と警察の非を問い詰めて退散させると、ジャック・リーチャーに対し、自分が担当することになったジェームズ・バーの弁護の手助けをしてほしいと持ちかけます。
しかし、当のジャック・リーチャーは、別にジェームズ・バーの無罪を信じているわけではなかったのです。
それどころか、連続狙撃事件の真犯人がジェームズ・バーであることを疑っておらず、自分の手でジェームズ・バーを殺そうとしていたとすら告白する始末。
ただ、ヘレン・ロディンを介してジェームズ・バーのことを調べることについてはジャック・リーチャーにも異存はなく、かくして彼はヘレン・ロディンの下でジェームズ・バーと連続狙撃事件について調べていくことになります。
しかし、そのことを快く思わない勢力が蠢き始めて……。
映画「アウトロー」では、無差別狙撃事件の犯人と目された人物の嫌疑を晴らすべく、主人公ジャック・リーチャーとヘレン・ロディンの2人が真相を暴くべく奔走するという構図がストーリーの基本ベースとなっています。
しかしそのためなのか、物語の序盤から中盤頃にかけては、事件の現場検証と聞き込みをひたすら行っていく地味な作業とミステリー的な推理描写がメインなんですよね。
トム・クルーズ主演作品にしては、なかなかアクションシーンが出てこない映画と言って良く、かろうじて繰り広げられるそれも、これまでの作品と比較すると何とも地味過ぎる感がどうにも否めなかったですね。
敵の数自体が少ない上に、明らかに無名かつ雑魚な敵の後方からの奇襲であっさりダウンさせられたり、カーチェイスで車がエンストを起こして再起動に必死になっていたりと、ある意味現実的ではあるがカッコ悪いシーンが描写されていたりもしましたし。
原作からしてそうなのかもしれないのですが、これまでのアクション映画で開陳されていたようなトム・クルーズの「圧倒的な強さ」を今作でも期待していただけに、個人的には少々肩透かしを食らわざるをえなかったですね。
まあこれについては、比較対象がどうして直近の作品である「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」にならざるをえなかったりするので、仕方ない一面もあるのですが。
一方で、作中におけるジャック・リーチャーの推理は、裏稼業に携わる人間ならではの発想ではあったにせよ、一見奇想天外ながらもミステリー的な王道に沿ったものとなっています。
これを見ると、今作はアクション要素ではなく「トム・クルーズがミステリーに挑戦!」的なキャッチフレーズで宣伝広報を繰り広げていた方が、映画の実態を的確に表現できていたのではないかと思えてならなかったですね。
トム・クルーズ的にも、今回の映画は一種の新境地開拓的なものがあったのでしょうし。
原作小説たる「ジャック・リーチャー」シリーズは現時点で17巻ほど刊行されているとのことで、それから考えても今作は、今後も続編があることを前提として作られた映画であることは一目瞭然でしょう。
しかしその1作目が、それもトム・クルーズ主演でありながらここまで地味というのは、先行き不安な要素を窺わせるに充分なものがあります。
今後も続編を製作するのであれば、もう少し派手なアクションシーンを挿入していかないと、映画の出来に影響するだけでなく、トム・クルーズの持ち味的なものも生かせないのではないかと思えてならないのですが、どんなものなのでしょうか?
トム・クルーズのアクションや活躍を期待してみると、期待外れに終わること間違いなしの作品ですね。
ミステリー的な推理物や「ジャック・リーチャー」シリーズとして観る分にはまた違った評価もあるかもしれませんが、全体的な評価としては「過大な期待は禁物」といったところになるでしょうか。