映画「オズ はじまりの戦い」感想
映画「オズ はじまりの戦い」観に行ってきました。
ライマン・フランク・ボーム著の児童文学小説「オズの魔法使い」の前日譚で、オズ誕生の起源となる物語で構成されるディズニー作品です。
今作は3D版も公開されていますが、私が観賞したのは2D版となります。
今作の基本ベースとなっている「オズの魔法使い」については、これまで名前しか知る機会がなく、全くの前知識なしで今作に臨むこととなったのですが、前日譚ということもあり、それでも何の問題もなく観賞は可能です。
1905年のアメリカ。
各地を回る移動サーカスでしがない奇術師を営み、周囲から「オズ」の愛称で呼ばれている今作の主人公オスカー・ディグス(以下「オズ」に統一)は、カンザス州へとやってきていました。
オズは女性を口説くのが上手い人間のようで、その日も奇術師としてのショーで奇術を演出するための女性を、持ち前の口説き文句と祖母譲りのオルゴールの贈呈でもって確保していたのでした。
しかし、ショーそのものは成功したものの、足が不自由らしい少女から「自由に歩けるようになりたい」という素朴なお願いをされてしまい、しどろもどりに回答を回避せざるをえなかったオズは、観客から物を投げられまくってショーの会場からそそくさと立ち去ることを余儀なくされてしまいます。
惨憺たる結果で終わったショーの後、オズは自分にあてがわれた小屋で、元恋人の来訪を受けることになります。
再会を喜ぶ2人でしたが、しかしその元恋人は「(2人の知人らしい)ジョンという男から求婚された」と宣言し、オズは衝撃を受けながらも元恋人の求婚を歓迎するのでした。
しかし、傷心にあるオズには、その傷心にひたる時間すらも与えられはしませんでした。
オルゴールを贈呈した女性の関係者で大柄な男2人が、オズを半殺しにすべく動き出したことが確認され、オズは逃走を開始しなければならなかったのです。
逃走の最中、自分が所持している熱気球に乗って追手から逃れることを考えつくオズ。
目論見は成功し、何とか追手の手の届かないところに逃れて一息ついたオズでしたが、熱気球が向かう先には、何と巨大なトルネードが荒れ狂っているではありませんか。
オズは為す術もなく、乗っていた熱気球ごとトルネードに巻き込まれてしまうのでした。
ところがトルネードは、オズが乗っていた熱気球を潰すことはなく、代わりに熱気球を魔法の世界「オズ」へと誘います。
そこでオズが見たのは、直前まで自分がいたカンザスとは全く異なる、見たこともない地形と不思議な生物が住まう光景でした。
気球に乗ったまま川を流されるなどのアクシデントはあったものの、オズは5体満足で無事に気球から降りることができました。
そこでオズは、西の魔女を名乗るセオドラという名の女性と出会い、自分がこの世界を救う予言の人間であることを知らされることとなるのですが……。
映画「オズ はじまりの戦い」は、原作者であるライマン・フランク・ボームが著した全14作に上る「オズ・シリーズ」の1作目「オズの魔法使い」のさらに前の時系列を扱う前日譚となっています。
今作に登場するオズは、原作1作目の題名である「オズの魔法使い」の名に反して、実は最初から最後まで一切魔法を使用することができません。
まあ、元々がアメリカのカンザス州から飛ばされてきた現実世界の人間なのですから、ある意味当然の話ではあるのかもしれませんが。
魔法が使えないオズが代わりに駆使できるのは、奇術師として培ってきた手品の類と、トーマス・エジソンに憧れて身に着けていたらしい1905年当時の科学知識。
現代人である我々の視点から見れば、とても「魔法」と呼称できるようなシロモノであるとは到底言えたものではありません。
しかし、科学を知らない「オズ」の世界の人間や亜人間達にとって、「オズ」の科学知識や手品の類は「魔法」と区別がつくものではないわけです。
実際、オズが最初に出会った西の魔女・セオドラも、オズの手品を魔法と勘違いし、オズという名前の偶然の一致も相まって、彼こそが予言にあった魔法使いだと盛大に誤解していくことになるわけで。
物語前半でただひたすら戸惑いつつ、とりあえずはエメラルド・シティの財宝を目当てにその場凌ぎの言動に終始していた主人公は、物語後半においては詐欺師としてのトリックと科学知識を駆使した頭脳戦で邪悪な魔女達と戦っていくことになります。
その点で今作におけるオズは、どちらかと言えば軍師的な存在ないしは煽動政治家に近い位置付けであると言えるかもしれませんね。
作中でもオズは、魔法が使えないばかりか肉弾戦向きですらなく、直接自分で戦っている描写というものがまるでありませんでしたし。
一方で、作中序盤でヒロインの座を獲得しようとしていたかに思われた西の魔女・セオドラは、結果的に見ればあまりにもピエロ過ぎる扱いで、正直泣けてくるものがありましたねぇ(T_T)。
オズの名前と手品を見て「オズこそが予言の人物だ!」と早合点し、オズと恋仲らしき関係になったかと思えば、オズの元恋人と瓜二つの容貌を持つ南の魔女・グリンダにあっさりとその座を奪われ、嫉妬に狂った挙句、東の魔女にして自身の姉でもあるエヴァノラにそそのかされて緑色の魔女に変貌する始末だったのですから。
作中でも姉から「世間知らず」と評価されていたことを差し引いても、セオドラについてはオズこそが邪悪に引きずり込んだ元凶であるとすら言えるのではないでしょうかね、あの展開では(苦笑)。
あまりにもピエロな悪役過ぎて、緑色の魔女として残虐性を見せつけるシーンでも滑稽さしか感じようがなかったのですが。
そのセオドラを陥れ、父親殺しの黒幕であったエヴァノラの方が、はるかにラスボスとしての風格もありましたからねぇ。
ちなみにこの2人は、観賞後にネットで調べたところによれば、「オズ・シリーズ」の1作目である「オズの魔法使い」で倒されることになるのだそうで、今作のラストでは堂々と逃げ切ってしまっています。
空飛ぶ箒に乗って悠々と逃亡した緑色の魔女セオドラはともかく、魔法の根源を失って老婆になってしまったエヴァノラの描写を見た時は、てっきりエヴァノラはここで死ぬものとばかり考えていたのですけどね。
映画「オズ はじまりの戦い」は、元々が前日譚という事情もあるのでしょうが、明らかに続編ありきな構成で物語が終わっていますね。
実際、製作元であるディズニーは既に続編製作に取り掛かっているという情報もありますし。
引き続きオズにスポットが当てられた今作の続きになるのか、それとも原作1作目「オズの魔法使い」のリメイク実写化(「オズの魔法使い」自体は過去にも実写化されている)になるのかは、未だ不明ではあるようなのですが↓
http://megalodon.jp/2013-0310-2051-34/www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2013/03/09/kiji/K20130309005355730.html
> 米映画製作会社ウォルト・ディズニー・ピクチャーズが新作映画「オズ はじまりの戦い」の続編を早くも計画していることが分かった。
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> 1939年に公開されたオリジナル映画「オズの魔法使」のプロローグが描かれた「オズ はじまりの戦い」は、日本では8日に公開されたばかりのサム・ライミ監督(53)作品。
>
> バラエティ誌はディズニーが早くも続編製作に取り掛かっていると報じた。続編に関しての詳細は明らかにされていない。
今作の総合的な評価としては、「子供向けの作品だと思っていたら、意外に大人も入り込める万人向けの構成になっていて充分に楽しめた」といったものになるでしょうか。
今作の出来を見る限りでは、製作が進められているらしい続編についても、それなりに「魅せる」ものは充分に期待できそうですね。