ひさびさに銀英伝SF設定のネタ。
「ポリス・コーネフ」さんからの質問(Y巡査、もう少し名前ひねれ)です。
「アルテミスの首飾りを破壊した、光速近い速さで氷をギューンととばして、質量がなんたらになってすごいパワーになるという戦法。あれはSFぽっくてかっこいいんですが、イゼルローンなんかもあの手を使えば一発じゃないすかね?どう考えても戦艦一隻より安いコストでしょうし、時間差をつけて何発も撃てばトゥルーハンマーも連発はできないんだし」(構成・新Q太郎)
・・・さて、なんかうまいリクツをつけてください。
ファンサイトの方が向いていそうなのに、何故かあっちではこう言った話題は出てきにくいんですよね。私、基本的に田中芳樹の思想はそんなに批判的には見ていないので(よしりん信者に言わせるとサヨク、らしいです)こう言った話題の方では(でしか)参加しやすくてうれしいです。と、どうでもいい感想は置いといて…
>SFでの所謂「質量弾」戦術が何故一回しか使われなかったか?
まず前提
1、この戦術は質量物に対し一貫した加速を必要とするので、基本的に固定目標に対してしか使えない。(例えば、艦隊なんかには避けられて終わる)
2、よって、使う対象は大型要塞や軍事衛星に限られる。(惑星に対して使うのは、双方が「占領」を目指す以上不可。よって、カプチェランカ等では使えない)
3、では何でイゼルローン等には使われなかったか?
まず考えられるのは、適当な質量物体が無かった、と言う事。バーラトの場合、丁度良い惑星があったようですが、(主星系内ですから、当然マスドライバー等の設備も整っていたでしょう)イゼルローン回廊は危険宙域ですから、そんな所で小惑星を探してうろつくのは愚かですし、哨戒部隊に発見されるのが落ちでしょう。
では、持って行く事を考えてみます。どんなに高性能でも所詮衛星軌道に浮かべる小型(に成らざるを得ない)衛星だったアルテミスの首飾りと違い、イゼルローンは惑星クラスの巨大要塞ですから、ぶつける氷も100や200では効かないでしょう。そんなものを大量に運ぶのは、経済効果が悪すぎるのでは無いでしょうか?長期航行の為に、取りつけるデバイスは高度・高価に成らざるを得ないでしょうし、そもそもワープエンジンの制御となれば、一番高価そうな戦艦用の航法コンピュータを組みこまねばなりません。それぐらいなら、大量生産されている戦艦に爆薬を詰めこんだ方が遥かに経済的でしょう。
加えるに、巨大質量の衝突は容易に人工惑星の内部崩壊や中枢部への誘爆を引き起こします。特に、イゼルローンは中身の多くが空洞ですから、1度内部の重力均衡(含、重力制御装置によるもの)が崩れれば、積み木崩しの様に内部崩壊する事が考えられます。両軍が要塞の「占拠」を狙う以上、これはあまり有効な戦術では無い、とと思われます。
この手のことは昔結構考えました。ちなみに私が気になったのは、アムリッツァの際に発生した次元震による艦列混乱(逃げ遅れた艦が、死ぬよりは、と座標計算も無くワープした事による)から学んで、無人艦をワープさせて敵の艦列を乱れさせる、と言う作戦は何故行われなかったのか?と言う事ですが…
>イゼルローンは中身の多くが空洞ですから、1度内部の重力均衡(含、重力制御装置によるもの)が崩れれば、積み木崩しの様に内部崩壊する
事が考えられます。
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「考えられます」といってもその原理がよく分からないですが(笑)、なんか絵的には面白いですね。自らの重力でグシャリとつぶれていく巨大要塞・・・
こういうのが、SFの醍醐味でありましょう。
架空歴史方面のSFにも、著者は科学アドバイザーを付けよう。某エピソード1も。
久々に書き込みます。
この話のくだりはドーリア会戦だったかと思うのですが、銀英伝自体が手元にないため、設定の詳細は、分かりませんのでツッコミ求む。
ドロ改さん曰く、「弾体を戦場に運び込むのは経済的に無理」の件について。
そもそも、ワープエンジンの原理として、船体の一部に設置されたワープエンジンを稼動させることでエンジン設置部を引っ張る、もしくは、押し出す方法をとった場合、ワープ航法に移行する段階で生じる質量アンバランスの急激な増大、および、エンジン取り付け部における強度不足(おそらく、どんなに科学が発達してもこの強大な物理力に耐えられる金属は開発不可なのでは?)により、瞬時に船体自体が分解してしまうものと考えます。したがって、スタートレックではありませんが、何らかのワープフィールドのようなものにより船体を包み込むことで、船体を含む局地的な空間ごとワープしてしまう方法が、合理的?なような気がします。であるならば、輸送する弾体(氷)も船体を包み込むワープフィールドに収容してしまえば、特に、輸送上の経済的問題は解決すると考えます。で、実際のところ、弾体を攻撃目標に撃ちこむ際、弾体の加速方法は?というと、磁場を利用したもの、通常エンジンを利用したもの、ワープエンジンを利用したもの、が考えられます。
磁場を利用したもの。リニアガン(マスドライバー)になると思います。で、氷を打ち出すには、何らかの磁場を受ける金属、もしくは磁石を氷に設置する必要があり、加速にその設置部が耐えられるか?という問題があります。加速度を極小に設定すれば、問題ありませんが、そうなると今度は、リニアガン自体のレールの長さを非現実的な長さにしなければ難しいとおもいます。よって、弾体は氷よりも金属の無垢か、金属が均一的に分散している小惑星(隕石)を利用するのが現実的だと思います。しかし、その場合でも問題があり、短距離のレールから射出するとなると、短時間に光速近くまで加速されることになりますから、弾体質量の増大はおそろしく急激なものになります。その急激な質量増大を受け止める足場が射出装置や船体となるのですから、果たしてまともな照準が固定できるのか?、それよりも、船体と射出装置の接合部分が吹っ飛ぶ可能性を考えるべきだと思います。
次に、通常エンジンの場合。これは、考慮する必要がないでしょう。通常エンジンで光速近くまで加速するには、おそしくエネルギーを消費するであろうし、機械的にかなりの技術を要すると考えます。っていうか、ワープエンジンがあるのですから、通常エンジンで光速まで加速させる必要性を見出せません。コスト高だと思います。
最後にワープエンジンを利用したもの。これが一番ありえそうですね。ただ、ワープ航法中の物体が静止物体にぶつかる際の物理現象について、まったく想像つきません。果たして衝突という現象が起こるのか不明です。ワープ航法中の物体が通常空間と同空間に位置しているのかもわかりませんから、原理的に予想できません。これについては結論を保留しておきます。ご存知な方は意見求む。
まあ、光速近くまで、加速させる理由が私にはわかりませんが。
>であるならば、輸送する弾体(氷)も船体を包み込むワープフィールドに収容してしまえば、特に、輸送上の経済的問題は解決すると考えます。
これって、実際に撃ち込む時点で、ワープエンジンを設置するのですから、結局意味ないかも。まあ、撃ち込むには直線的で十分ですから、艦船用の航宙コンピュータを搭載させなくて済む分、経済的ではありますが。
光速近くまで加速させる経過で、たとえ射出弾が1グラムであっても、加速に必要な力は極大に漸近していきます。やはり、通常空間を支配する物理法則が、適用されない方法を用いないと無理でしょうね。したがって、ワープ理論(とんでもっぽいけど)など、別法則を利用したもとになるでしょう。
っていうか、田中芳樹にSFを期待しちゃいけないってことかな?銀英伝もSFというより、スペースオペラですし、某エピソード1よろしくってとこですか。
慣性制御技術が実用化されてるって、1巻の頭に書いてなかったっけ。
そうなら、特に質量増大は問題にならないはずですよ
☆(・・)/((( ++)(( ..) m()m
話を最初に振っといて悪いが、
ちんぷんかんぷん一休さん、ですな。
あ・・・どうぞ続けてください。
どうも、はじめまして、トンボさん。
慣性制御装置で質量増大が無視できるって、具体的に想像つかないんだけど、教えていただけないでしょうか?
ずいぶん前のニュートンに、相対性理論か特殊相対性理論だかの特集があったのですが、記事中に、物体が光速に近づく程、その質量が増大していき、結果、光速度に達することができない、云々の話が載っていたように記憶していたのですが、ひょっとしたら勘違いかもしれません。もし、そうならば、およびでなかったっす(-_-;)
銀河英雄伝説第二巻、P187より
>バーラト第三惑星シリューナガルは、寒冷な氷の惑星である。ここから、1ダースの氷塊を切り出す。1個の氷塊は一立方キロメートル、質量にして10億トンとする。
………
>ここで、それぞれの氷塊に航行用エンジンを取り付ける。氷塊を円筒形にし、その中心をレーザーで貫き、バサード・ラム・ジェットエンジンを装着するのだ。
>このエンジンは前方に巨大なバスケット型の磁場を投射し、イオン化されて荷電した星間物質を絡めとる。それは氷塊に近づくにつれ、極小時間のうちに圧縮され、過熱され、エンジン内で核融合反応条件に達し、前方から入ってきた時より遥かに巨大なエネルギー量で後方に噴出す。
>この間、氷の無人宇宙船は休むことなく加速を続け、スピードが光速に近づけば近づくほど、星間物質を吸入する効率は高まる。こうして、氷の宇宙船は亜光速を得る事が出来る。
ワープフィールド
>恐らく銀河英雄伝説におけるこれは、たびたび登場する「エネルギー中和フィールド」でしょう。しかしこれは、3巻でユリアンが巡洋艦を破壊したシーンからして、船体すぐ外に展開されているようなので、フィールド内に「抱えて」ジャンプするのは無理では無いでしょうか?
>質量増大による航路の歪曲
これは、加速が非常に急激なため(たかが一星系内で亜光速まで到達)、逆に航路が激しく「ずれる前」に目標に到達するのでは?ズレ自体も、1600年分進化したコンピュータを使えば、かなりの所まで予想できるのでは無いでしょうか?
仕立て屋さん、こんにちは。
慣性とは静止している物体が止まり続けようとしたり、移動中の物体が等速直線運動し続けようとする力です。それに逆らって運動速度を変更させようとした場合(加速や減速)にエネルギーが必要なわけです。
つまり、慣性が無い(無慣性)物質が存在する場合、その物質を加速させたり減速させたりするのに必要なエネルギーは無限小となる訳です。
銀英の慣性制御レベルについては「実用化」以外の情報がなく、無慣性状態が実現可能か、それとも通常の数十分の1までの減少のみなのかは知りませんが(作者も知らないと思う)。前者の場合には準光速に伴う質量増大は無視可能です。
#「だったら艦船にあんな強力なエンジンは必要ない」とのつっこみはしないように(笑)
まあ、慣性制御は昔のスペオペではありふれた技術です。もっと具体例が知りたい場合には、「銀河パトロール隊」(レンズマンの方が分かりやすいか)でも図書館か古本屋で探して読みましょう。1950年代の作品ですが、SF度に関しては銀英の10倍以上です(笑)
ドロ改さん、どうもお久しぶりです(同名のタレントがいるので「極楽」は外しました)
バサード・ラム・ジェットエンジン使ったんですね。そういえば2巻が出る少し前の頃スペオペで「旬」の技術でしたからねー(笑)
まあ、だったら加速度と質量が反比例するから(無慣性不可で慣性制御による加速度増加が同程度の場合)、別にそんな大きな氷で船作らなくとも、小型の船を高加速で駆動させた方が何かと楽ですね。どうせ亜光速領域入れば質量なんて関係ないし。
問題は、何G加速で行くのか知らないですが、船を亜高速領域まで加速するには、結構な距離と時間が必要なこと、シリューナガルが冥王星軌道にあったとしても全然足りないと思う・・・・
バサード・ラム・ジェットエンジンと亜高速船だったら、ポール・アンダースンの「タウ・ゼロ」がおすすめ。
光速度の90%ぐらいの速度を出している物体は、静止時の2.3倍くらいの質量を有することになります。ドロ改さんに提示していただいた氷解の質量が10億トンということですので、光速度90%における質量は23億トンくらいになります。さて、バサード・ラム・ジェットエンジンなるものの性能にもよるのですが、原理的にお尻で核爆発させてるようなもんなので、その推進力たるや想像を絶するものがあります。光速度の99%で元質量の7.1倍の71億トンとなります。さあて、何%まで、加速させられるのでしょう(笑)。99%あたりから急激に質量が増大するので、例えるなら、絶対移動しない理論上の壁におっそろしく高出力のエンジンを設置して、空ぶかしするようなもんですね。きっと、そうした理論上の加速度0になる前に、推進部の構造体がひしゃげるか氷との接合部で吹っ飛ぶかのどちらかでしょう。また、亜光速に達するまで構造物が慣性力で分解しない程度に加速度を抑えると、どのくらい滑走距離が必要になるでしょうか。まぁ、宇宙は広いから、いいっか?(笑)あっ、なるほど、この慣性力の制御に慣性制御装置を使えるってことかな?トンボさんのおっしゃったことは。これって対人保護用でないの?(違ってたらゴメン)
>ドロ改さん
設定情報ありがとうございます。
バサード・ラム・ジェットエンジンが構造崩壊する前に、エンジンが停止するようプログラムしておけば、問題ないと思います。でも、えらく滑走距離を要すると思いますね。もともと、バサード・ラム・ジェットエンジンって何用に開発されたものなんでしょうか?まさか、特別あつらえじゃないよね。当然、なにかの使い回しだと思いますが。
どもトンボさん、丁寧な解説感謝いたします。いそがしくて、先の投稿の書き込みフォームのままおいといたら、すでにトンボさんに解説いただいていたようです。スンマセン。
で、トンボさんのご解説を読んで、疑問が発生いたしました。よろしく。よろしくって言われてもお困りでしょうが(^^;
慣性ってのは、要は加速による見かけ上の加速度によって生じるもんですよね。これを打ち消すには、空間を隔てて届く力=場の力の類を制御するのが、慣性制御ってことになるとおもいます。たとえば、重力場制御装置みたいなもんでしょうか。ここで、疑問。当然、推進エンジン自体も質量増加するのですから、推進エンジンにも慣性制御装置を働かさないと、どのみちグチャリですよね。でも、逆に働かせてしまうと、今度は、弾体全体を一つの系とした中を推進エンジンのみが突き抜けるってことになりはしまいか?む~ん、考えれば、考えるほどパラドックス的なり。ま、田中氏も当時のSFの流行りを採用しただけなのでしょうから、無理もないか。慣性制御って、ほんとご都合主義的なとこがありますね。トンボさんも指摘されているように、推進エンジンいらんやん(笑)、これって、原理的に光速以上出せるってことになりますね。アインシュタインが泣いてるぅ、無茶っす。
「エネルギーは無限小」、「無慣性不可」、「絶対移動しない理論上の壁」、「光速度90%における質量」、「加速による見かけ上の加速度」
>アインシュタインが泣いてるぅ
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そのまえに俺が泣いてる(;_;)。
昔は単純だったなあ。
「鋼鉄のヨロイを着けているものは、重量が重いので裸の人より速く落ちる。だからそのヨロイを奪えば、奪った男はその重さぶんヨロイの男を追いぬくことができる」
という「キン肉マン」のような、(別の意味で)ハードなSF設定を描ける漢(おとこ)は今いないのか。
黒豹と孔明の艦隊に期待するしかないか
仕立て屋さんへ。
ちょっと、速度、加速度、重力の関係がごっちゃになってる気がします。
慣性に対してももっと単純に
慣性:加速や減速に対する抵抗力(通常は質量×加速度)
と考えると分かり易いかと思います。
あと、質量増加に対しては見かけ上の加速自体が緩やかになるだけで(時間遅延効果により、中の人は
同じ加速度を受ける)構造体にかかる負担は変わりませんよ(エンジン自身も質量増加してるし)
>>アインシュタインが泣いてるぅ、無茶っす。
元々慣性制御ってのは、特殊相対性理論が発表されて恒星間飛行に困ったSF作家が考え出した
アイデアですから、まあ、しょうがないですね。
(まだワープ理論が生まれる前)
ちょっと仕事が忙しくて死にそうなので、今回はこれくらいで勘弁して下さい。
前にも書きましたが、慣性制御については、元祖である、E.E.スミスの「銀河パトロール隊」
(ただ今絶版ですが、図書館で容易に読めるはず)を、バサード・ラム・ジェットエンジン
と亜高速船だったら、ポール・アンダースンの「タウ・ゼロ」(こちらは文庫で入手可能)を
読まれることをおすすめします。どちらも銀英読めれば楽勝です。
> 氷爆弾について
「たかが一星系内で亜光速まで到達」とあったんですが、たしかに銀英伝の記述を見ると「ハイネセンまでの距離は六光時、約六五億キロメートル」となっていました。しかし、バサード・ラム・ジェット・エンジンを利用して、たったこれだけの距離の間に亜光速に達することは可能なんでしょうか。
計算もしてみたんですけど(ちょっとあやしげなので書きませんが(^^;)、ともかくすごい加速度になりそうです。
昔読んだ本の記憶では、当初想定された1Gの加速ですら、実際の星間物質の量が予想よりもすくなくて、磁場の大きさが非現実的なくらいに必要になってしまい実現不可能とあったような・・・。
10億トンの氷を光速の99.999%まで加速するために必要なエネルギーを核融合反応で得るために必要な物質量を六光時を進む間に集めるために必要な「バスケット型の磁場」、ってどのくらいの大きさなのだろう(^^;
バサード・ラムって「ワープ」よりは現実的な航法で好みですけど、何光年もの彼方へ旅するのならともかくミサイルみたいな使い方は似合わないです。っていうか、きらい。