田中芳樹と他の作家との比較検証論
14-A

那須正幹編(1)

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収録投稿1件目
board4 - No.4331

田中芳樹と那須正幹

投稿者:モーグリ
2003年07月13日(日) 15時28分

ふと思ったのですが、田中芳樹氏と那須正幹氏の比較って出来ない物でしょうか?那須正幹氏は色々な意味で田中芳樹先生とは好対照な作家だと思いますので。

那須正幹氏は総計1800万部の大ベストセラー『ズッコケ三人組』シリーズで有名な児童文学作家です。
那須氏はハイペースな執筆速度の人で、ズッコケシリーズを毎年2巻のペースで定期的に執筆しています。実は那須氏は以前からズッコケ三人組を「50巻で完結させる」と明言しています。2003年7月現在49巻まで執筆しており来年で完結させるそうです。
このへんは遅筆でストーリーが破綻した田中芳樹先生の『創竜伝』や「紺碧50巻構想」を打ち上げてトンデモ小説と化した荒巻義雄氏の『紺碧の艦隊』と好対照です。

また、これだけの巻数を執筆しながら「『ズッコケシリーズ』を含めてどの作品でも駄作がほとんどない」のも特徴です。内容も小学生向きとは思えないハイレベルな物も多々あり、私自身子供の頃大好きで大人になった今でも時々読むことがあります。
子供は惰性で本を買うということがないので児童文学業界は大人以上にシビアです。ですからこれだけの事が出来るというのは正直言ってすごいと思います。この辺も田中芳樹先生とは全然違いますね。

余談ですが那須正幹氏には『屋根裏の遠い旅』という反戦児童文学があります。
内容は、屋根裏に迷い込んだ小学生が「日本が太平洋戦争に勝利した」パラレルワールドに迷い込んでしまうというものです。結末はハッピーエンドでありませんし、その衝撃的なラストは読者にショックを受けると思います。

(田中芳樹先生や山本弘氏の発言を見る限り、2人が『屋根裏の遠い旅』を読んでない・知らないのはほぼ確実ですね・・・)

収録投稿2件目
board4 - No.4334

及ばずながら補足

投稿者:2ちゃんねる住民
2003年07月13日(日) 21時48分

那須正幹氏の『屋根裏の遠い旅』ですが、単純な反戦文学という訳ではなく、書かれた当時としてはかなり綿密な仮想の歴史を想定していて、「なるほどこれなら日本が『勝つ』のもあり得るな」と思わせる小説になっています。日本が『勝利』した後の国際関係や国内情勢(一般国民の思考パターンなど)、軍事科学の設定も、読んでいて納得がいくだけの説得力があり、凡百の妄想戦記小説とは比較になりません。
反戦児童文学という枠の中で、これだけ論理的に一つの仮想世界を構成できる那須正幹氏は、確かに田中芳樹氏と比較してみるのも面白いかと思います。

収録投稿3件目
board4 - No.4359

田中芳樹と那須正幹

投稿者:モーグリ
2003年07月15日(火) 17時25分

2ちゃんねる住民さん、色々と補足ありがとうございました。

『屋根裏の遠い旅』を読んだ事がない人のために世界設定を要約しておきます。

<『屋根裏の遠い旅』の世界設定>
1941年初頭にヒトラーが暗殺され、新指導体制となったナチスはソ連に侵攻することなく、1942年8月ヨーロッパで圧倒的勝利を収めます。
日本軍は1942年6月のミッドウェー海戦に大勝します。そして8月のドイツ勝利に便乗して9月10日、日本軍優勢なまま対英米講和を行い太平洋戦争は日本勝利で終了します。

この後日本はアジアで共産勢力との果てしない戦争に入っていきます。
1946年、満州国で共産ゲリラが一斉蜂起(満州動乱)、史実の朝鮮戦争ようなこの戦争は3年間続いて、最終的に満州国は分断国家になり、北部を反乱軍、遼東半島を日本軍が支配することで休戦します。
1957年、中国で共産ゲリラが新政権を樹立、それに反対する日本はそれまでの国民党政府をバックアップして大陸での泥沼の戦闘(第二次支那事変)に巻き込まれていきます。さらにそれに呼応してヴェトナムなどアジア各地でも反日ゲリラが台頭し、日本軍はアジア中で戦争をする事になっていきます。そして物語が書かれた1975年に至ります。

最後は日本がこの世界で始めて開発された原爆(作中では<特殊爆弾>)をヴェトナムに投下する事を暗示して終わっています。

これが「1975年に書かれた反戦児童文学の内容」なのだから正直言って驚きです。

> 日本が『勝利』した後の国際関係や国内情勢(一般国民の思考パターンなど)、軍事科学の設定も、読んでいて納得がいくだけの説得力があり、凡百の妄想戦記小説とは比較になりません。

那須正幹氏の架空歴史のすごい所は、「太平洋戦争に日本が勝った」で終わらずに、戦後の歴史や未来までちゃんと考慮して構築されている事です。
「日本が勝てば後は野となれ山となれ」的な粗雑な妄想戦記とは水準が違います

> 反戦児童文学という枠の中で、これだけ論理的に一つの仮想世界を構成できる那須正幹氏は、確かに田中芳樹氏と比較してみるのも面白いかと思います。

そう思います。

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