前の議論の絡みで、銀英伝の第6巻を読み返してたら、こんなん思いつきました。
まあ、田中氏ばかりをアレするのも何なんで、たまにはこのサイトをパロってみました。・・・とかいいつつ(笑)
芳樹衰亡の歴史
歴史家イシイ・ユースは嘆息する。
「・・・この時期、精神面における芳樹の衰亡は、すでに深いものとなっていた。公正さに背いても権力者を批判したい、と望み、反対者を卑小化することによってその評論を絶対のものにしようとする精神のどこに、向上と進歩への余地が残されているであろうか。」
だが、じつのところ、当の芳樹にとって向上と進歩など意味のないことであったかもしれない。日ごろの不満を、芳樹は小説に名を借りた批評エッセイではらそうとした。権力者の代表であるつらにくい日本国政府が立役者に選ばれた。
奇妙な情報が流れはじめた。
日本国政府がことあるごとに北朝鮮を非難するのは、平和をめざしてなどではなく、収賄事件をごまかすためである。
国民は芳樹をゆえなく非難すべきではない。それは芳樹の滅亡につながるのではなく、まさに、国民が権力者に隷属し、現在の自由と未来の可能性を喪失することにこそつながるのだ。日本国政府こそ、芳樹と国民の共通の敵であり、アジアをおびやかす存在なのである。日本国政府は、誰も知らない間に着々と国力をたくわえ、軍備を増強し、スパイ網を完成させつつある。日本国政府に注意せよ・・・。
最初、芳樹は悪意に満ちた喜びをもって、日本国政府の虚像が拡大し、蜃気楼に彩色がほどこされる情景を見まもっていた。ファンが日本国政府を憎み、小説を買ってくれれば、めでたしめでたしであったのだ。だが、皮肉な観察眼の所有者は必ずいるもので、ボウケンフィオという記者が冷笑まじりの記事を書いた。
「・・・以前、海岸でひとりの少女が拉致された。きっと日本国政府のしわざであろう。今年、不審な船が領海を侵犯し、北朝鮮に逃げ去った。日本国政府から潜入したスパイに洗脳されてことに及んだのだろう。イヴに禁断のみを食べさせたのも、アメリカ大陸の原住民を虐殺したのも、バミューダ海域で客船を沈没させたのも、すべて日本国政府の陰謀の一端であるにちがいない。ああ、日本国政府よ、汝は万能の悪なる者として、歴史上に屹立せん」
あけましておめでとうごさいます。
さて、目出度い内から批判というのもなんなので(って、後でするけど)、年末にFDを整理していたら旧パソコンで書いて移植しなかったデータが結構あったんです。
そこに、下のパロディ(パスティッシュ?)があったので、まあ隠し芸大会のノリで投稿します。
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中国の「史記」風に書いた
楊 文里 伝
(これは、作者の田中氏が決めた公式漢字名です)
ヤンは夫れ自由惑星同盟の商家に生す。父、才有り、財を成す。又古物を愛し、万金を以て陶器を購い、これを遺産とす。然れども、これ全て贋物なり。故にヤン、野において学を修めるを得ず。十六にして軍学校に進みて戦史を学ぶを志す。武芸に長ぜず、思索を以て師の言を聴く時を過ごすのみ。アッテンボローは校弟なり。ラップは同期なり。後年、議会にて名を成すジェシカは校長の娘なり。
二十一にて中尉を拝す。その後、エル・ファシル星に赴く。帝国、此の地を侵す時、ここに於いてヤン、兵と民を退かすを図る。されど将、兵と民を捨てて独り走る。民、ヤンを責めるも、彼動ぜずして曰く。「されば、我らも行かん。敵は将を追いて、我らを追わず。装わざれば則ち虚を衝く可し。」帝国、艦数の甚だしきによりて流星と見なし、これを追わず。この功を以て准将となる。
アスターテに於いて、ヤンは帝国上級大将ラインハルトと干戈を交える。後の皇帝なり。ヤンの策容れられず大敗せり。この時、同盟の将傷つき、彼をして兵馬を指揮せしむ。彼、兵に告げて曰く、
「我が命に従うは夫れ生を得る。今我ら不利なるも、要るは只最後の勝利のみ。いずくんぞ負ける事あらんや。」魚鱗の陣にて進む敵に逆らわず、二手に別れて後背に回る。兵を損すること極めて少なし。ラインハルトこれを賞し、ヤンを讃える文を送るも、彼答えず。後年両雄和を結ぶ時、皇帝笑いて返礼無きを咎む。ヤン恐縮せり。
ヤン、少将を拝し、一三艦隊の長として、イゼルローン要塞を陥すを命ぜらる。
然れども、是れ他の隊の半数を数えるのみ。要塞は砲を備え、甚だ固し。一夫関に当たれば万夫も開くなし。
少将、大佐シェーンコップをこの戦に望む。
シェーンコップは薔薇騎士連帯の長なり、白兵に長ず。
されど、この隊の者は夫れ帝国を去りし者にて、敵に通ずる兵嘗て多し。大佐、少将に問う「汝の策、良しと雖も、我矛を逆さにすれば汝如何せん。」少将曰く「只窮すのみ。汝、信ずる能はずといえど、信ぜざれば、此の策を用いるべからず。故に信ず。」大佐更に問いて
「汝、この征にて何を欲するや。」
「我、不惑に十数年も満たずして、閣下と称さるる。豈ロウを得て蜀を望まんや。此の城を得れば、帝国の同盟を侵す道無し。是れを以て賢なる者あらば、和を結ぶこと難からず。夫れ太平は永えならず数十年のみと雖も、数年の戦に若かず。我に一子あり、彼を戦場に送るを忍びず。」
子とは養子なり、名をユリアンという。後の後継者なり。
大佐「汝直なるか、それとも縦横の徒なるか。されば我も又、永遠に非ざる和の為に身を労せん。」と答う。薔薇連隊、帝国の使者に擬し、司令を虜にす。少将の艦はその後に入り、敵を追って外に出し敵艦隊に砲を浴びせ、敵を滅す。ここに於いて同盟は、要塞と回廊を得る。人、この功を聞きて「魔術師」と彼を称す。
同盟はイゼルローンを得ると雖も、兵を休ませる無し。政を司る者、選挙近くして、民心を得る事を欲す。一参謀有り、フォークと言う。兵法を学びて首席なり。此の男、策を私にて献ず。これを可とす。廟堂にて異を唱う者三名のみ。ヤンは中将と成りて、異を唱うも能はず。三千万の将兵、帝国領に進む。守将はラインハルトなり。戦わずして兵を退き、糧と共に去る。ここに於いて、帝国の民、同盟軍に食を頼む。同盟は義戦を称する故に、民を飢えさせる能はず。されど自らをなお満たすべからず、安くんぞ民をみたす可けんや。フォークは是れを見て即ち狂す。帝国、大兵を以て反攻し、アムリッツァにて戦う。同盟敗れ、あまたの将兵を失うも、中将の軍はこの期に及びても乱れること無し、敵を討ちてのち初めて退く。この敗戦によりて、宰相につきし者はトリューニヒトなり。征に異を唱えし三名の一人なり。他はレベロ、ホアンという。されど二人は常に戦を好まず。
宰相は常においては戦を好み、義を説くも、この征のみは異とし、他の失脚の中で残りし者なり。ヤン、この男を好まず。民を兵とし、自らは城に隠すものという。
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*やれやれ、これでまだ1巻の終わりだけしか来てない。彼の生涯全てを書こうと思ったが、これが限界。
*あくまでも「史記」もどきなので間違いを発見してもあたたかく見守ろうじゃないか、みんな。
しかしこうやって見ると、ホントにどっかの学園の理事長みたいな、中途半端の漢文知識(笑)。
新Q太郎さんは書きました
> *********************
> 中国の「史記」風に書いた
> 楊 文里 伝
> (これは、作者の田中氏が決めた公式漢字名です)
>
最高でーす!!(笑)。
同パターンで、
『獅子帝本紀』とか、『酉海胆仁世家』とかも是非。
きっと、面堂終太郎である。根拠は以下の
通り。
1 女好きで節操がない。
2 その割には、ろくでも無い女が身辺につ
きまとう。(ロイエンタールにはエルフリー
デ、面堂には了子)
3 自己陶酔癖がある。
4 家が金持ち
面堂をヘリコプター「オクトパス」から戦
艦トリスタンに乗せかえれば、きっと誰も分
らないだろう。いよっ、帝国軍の面堂終太郎!
となると、シェーンコップは同盟のトンちゃ
んか?
1 貴族の生まれ
2 身内にトラウマの少女がいる。
3 女に囲まれた日常生活
4 ライバルとは良い勝負(対ポプラン)
> きっと、面堂終太郎である。根拠は以下の
> 通り。
> 1 女好きで節操がない。
> 2 その割には、ろくでも無い女が身辺につ
> きまとう。(ロイエンタールにはエルフリー
> デ、面堂には了子)
> 3 自己陶酔癖がある。
> 4 家が金持ち
> 面堂をヘリコプター「オクトパス」から戦
> 艦トリスタンに乗せかえれば、きっと誰も分
> らないだろう。いよっ、帝国軍の面堂終太郎!
確かに言われればその通りなんですけど、しかし、なんかヤな想像だな~、コレ(^^;)
実際にはみのもんたと久米宏が同質と指摘しているようなものかも知れないですけどねぇ。
そういえば、余談ながら私的にロイエンタールってなんかホモのイメージがあります(オイオイ)。変な同人誌の影響でしょうね。
このあたりでは、同人誌に激怒する田中氏に共感ですな。
20世紀末を数ヶ月後に控えたある日。中国古典関係の小説も手がける人気ノベルス作家、中田良樹邸内の応接室で、全国にその名を知らぬものはいない大手出版社、講団社でノベルス部門の編集を生業とする男が、まんじりともせず屋敷の主の登場を待っていた。
「やぁ、待たせたね」
鈍い音を立てて応接室のドアが開き、ベテラン編集者である男を電話一本で呼びつけた屋敷の主が姿を現した。
「ははッ、先生には、いつも大変お世話になっております!」
編集者は、慌てて応接室のソファーから腰を上げ、膝の高さとなったテーブルに擦り付けんばかりに頭を下げ、自分の担当する人気作家、中田良樹に挨拶をした。社内の新人編集者や、持ち込み原稿を小脇に抱えた作家志望の青年達には、およそ想像もつかないほどの平身低頭ぶりである。
無理もない。ここで中田の機嫌を損ねて、これ以上原稿の上がりが遅くなるのはなんとしても避けなければならないのだから。
先日、この作家がようやく書き上げた原稿を受け取り、印刷所に回す段階に入った矢先に、当の作者から電話一本で「待った」をかけられた。最近、日本国首相が起こした舌禍事件、いわゆる「神の国発言」と、それによって政権党が衆議院選挙で大敗(実際には、連立与党の総議席数では圧倒的過半数を占めているのだが)したことを作中で取り上げたいので、原稿を一部書き直したいというのだ。
既に11巻を数える、中田が執筆中の伝奇小説は、虚実の錯綜をウリにしており、現実に起きた疑獄事件や社会問題をそれとなく作中に織り込み、主人公の美形四兄弟が、不死身の超能力でそれらにかかわる現実のそれを髣髴させる政治家や財界人に文化人、さらに彼らの背後に潜む巨悪を叩きのめすというものであり、美形四兄弟に惹かれた女子中高生や、斜に構えたい盛りの青年層、そして、ある特定の思想的傾向の人々に圧倒的な支持を誇る。続刊を待つ声にも凄まじいものがあるが、当の作者である中田の、古今の如何なる比喩も当てはまらぬほどの遅筆ぶりで、刊行開始から13年となる現在も、未だ完結をみていない。おまけに、その間に世界情勢にはドラスティックな変化が生じており、某大国の消滅をはじめ、国内でも政界再編が進み、与党、野党も巻き込んで離合集散を繰り返し、さらに、劇中で登場したわが国首相のモデルとなった人物が鬼籍に入るなど、現実との齟齬は激しく、最早破綻していると言っても良い。
それでも、出せば売れると分かっているこのシリーズ。編集者としては原稿が上がった時点で、すぐにでも出版してしまいたいところだが、売れっ子作家である中田の意向は絶対である。涙を飲んで、加筆修正が済むのを待たざるを得なかった。であるから、中田から、思ったより早い時期に電話連絡が入った時、ちょうど昼休みで弁当を食べていた編集者は、にわかには信じられず、声もなく、手にした箸を落したと言う。
「これで、ようやく12巻が出せる!」喜び勇んで顎足つきで中田邸に向かった編集者は、あることに気付いた。中田は電話で「すぐ来てくれ」とは言ったものの、「原稿が出来た」とは一言も言ってはいないのだ。一抹の不安は、応接室に通されて、中田を待つ間にみるみる肥大化していった…
「まぁ、座り給え、それでだね」
正面に座った中田に促され、ようやく自分が立ったままであることに気付いた編集者は、慌てて腰を下ろし、固唾を飲んで次の言葉を待った。
「原稿なんだけど、もう少し待ってくれないかな」
「…そう、ですか。良いもののためには、仕方ありませんね」
予想通りの言葉に失望しつつも、、今まで何度となく繰り返されてきたことじゃないか、と自分に言い聞かせて、編集者は上司への言い訳を考えながら中田の次の言葉を待った。
「ほら、この前、朝鮮半島で南北首脳会談があっただろう、あれをなんとしても入れたいんだよ」
ああ、そうか、そうだった。編集者は思い出したように頭の中で呟いた。衆議院選挙期間中、電撃的に実現した南北首脳会談。当事者である韓国マスコミは、おいおいと思いつつもまあ仕方ないとして、一部のテレビ局のキャスターや新聞記者が、北の体制が何ら変わってはいないことも、日本人の拉致疑惑も忘却のかなたへと押しやったかのように「歴史的な会談」「平和的統一の第一歩」「意外に気さくな総書記」と誉めそやしていたのを思い出した。なぜその時、中田がまた「これを取り上げたい」と言い出すことに思い至らなかったのかと自問したが、答えは出ない。いや、編集者にとって第一の優先事項である12巻目の、早期刊行を妨げかねない危険な事態から、目を逸らしたかっただけなのかもしれない。
「日本の侵略が引き起こした悲劇の民族が、ようやく同じテーブルについて、平和的統一を果たそうと言うのだよ。『教育勅語の復活だ』『日本は侵略などしていない』『子供に侵略の事実を教えず、神国日本の正しい姿を叩きこめ』などと、反動的な言辞を垂れ流す政治家や文化人、そして『正しい歴史教科書を創る会』の御用学者、そしてその走狗と化した下品なマンガ家達に、目にものを見せてやりたいからねぇ」
日本の侵略が引き起こしたというのは、いくらなんでも違うのではないか? それに、下品なマンガ家はともかく、当の政治家や文化人に学者は、そもそもノベルスなど読まないだろう…第一、中田曰く、御用学者とやらが昨年世に問うた『国民の新しい歴史』などは、専門家の視点から見れば、それなりに疑問な点も目に付くのであろうが、普通に読むかぎりは、過去から現代へと続く歴史のうねりを体感させられる良書だと思うが…もちろん口には出さない。
「それから、最近何やらインターネットを利用して、私の事を撃つと称して罵詈雑言の限りを尽くす連中がいるそうだね。小説と現実の区別もつかずに何をやっているんだか…今度の12巻を読めば、そういった輩も、おそらくグゥの音も出なくなることだろうさ」
「そうですね、先生のおっしゃるとおりですよ!」
これで何回目だろうと思いつつ、頭で考えていることとは、別のことを口にした。一度受け取った原稿に目は通している。それがどんなものであるかも分かっている。この度、加筆されるとはいえ、大筋が変更されることはあるまい。「罵詈雑言を尽くす連中」を、到底屈服させることが出来るかどうかも。ふと、編集者の頭に疑問が沸く。中田は件のHPを見たことがあるのだろうか? 自分も興味を惹かれて覗いたことがあるが、一度でも見たことがあるなら、いくらなんでもそのような侮辱的な言い様は…
中田邸を後にして、編集部への帰途、電車に揺られながら、編集者は一人ごちた。
「俺が書くわけじゃないんだ。内容に頭を悩ませたって始まらない。編集者の仕事は、本を出すことさ。せめて、上がりが極端に遅れないことを祈ろう…」
しばらくして、講団社の新聞広告にて、12巻の発売日は8月と告知された。予定どおり刊行されるか否かは、誰も知らない。
(注)この文章は(以下略)