田中氏のハードウェア知識や軍事知識の不足が取り上げられていますが、
私自身は、対象が小説であるならばそれほどこだわりません。
例えば、銀英伝ではたかだか数百億の人口規模で、数十・数百万単位の戦死者が出る
「小競り合い」を100年以上も、それも毎年のように行っているという設定や、
数十万隻での艦隊戦というのは、素人目に見ても社会規模に対して
オーバースペックであるような気がします。
また、小説では具体的な描写はありませんが、宇宙空間における艦隊運動や、
イゼルローン要塞、ゼッフル粒子といったハードウェアも、
ハードSFマニアから見れば矛盾の塊かもしれませんし、
「空想科学読本」(でしたっけ?ウルトラマンやスーパーロボットの「ウソ」を
現代科学の立場から解説している本)では散々に叩かれるシロモノかもしれません。
軍事知識については、田中氏の功績として「情報と補給の重要性」を指摘したこと、
「戦術より戦略」を重要視したことがあげられていますが、
今冷静に考えてみると、この2つは何も田中氏の独創ではありませんし、
戦史や兵法をちょっとでもかじったことがあるなら当然に触れざるを得ない
基本事項だと思います。
もちろん、そういった軍事的常識を欠いたまま戦争を描いた作品も多い中、
きちんと基本を押さえていた点は立派ですが。
(もっとも、当時の私はそんな知識などなかったので、「さすが目の付け所が違う」
と目からウロコが落ちる思いでした)
ですが、田中氏自身、軍事や科学の専門家というわけではありませんし、
銀英伝は軍事マニアやSFマニア向けの軍事シミュレーション本ではなくSF「小説」ですから、
「銀英伝」においては必ずしも厳密な科学的・軍事的考証は不要で、
上にあげたことも、小説の「ウソ」の範囲内ということで、致命的欠点にはなり得ないと思います。
作品における重要度としては、「改めて検証すれば」多少気になる程度のもので、
作品としての面白さをスポイルする程のものではないと。
・・・と、ここまで書いて、やはり自分は今でも銀英伝は好きなのかなあと
再確認した次第です。(苦笑)
アッテンBONOさんへ
>例えば、銀英伝ではたかだか数百億の人口規模で、数十・数百万単位の戦死者が出る
>「小競り合い」を100年以上も、それも毎年のように行っているという設定や、
外伝3巻の記述からするとそれほど大規模では無かったようです。
正確には分かりませんが、戦死者の平均は精々年間100万人ぐらいでしょう。小説本編が始まってからの犠牲がそれまでと比べても多すぎる、と見た方が良いかと思います。
そう考えると日本の交通事故死者が年1万人ですから、実のところ同盟市民が戦死する可能性は日本において交通事故で死亡する確率と同程度ということになります。
実際、アムリッツァの犠牲者2000万人にしてもスケールを考えると、第二次大戦最大の戦闘であるクルスク戦で独ソ両軍が被った損害よりも少ないぐらいです。
平時の犠牲ならいざ知らず、常に戦時体制に有ることからすると、そう無茶でもありません。
むしろその後、内戦があったとは言え、同盟軍がろくに再建できていなかった方が疑問でしたね。
しかし詳細に読めば誰でも気付くように、田中氏は艦隊の数をすぐに忘れる悪癖があります。それも「アムリッツァ」「バーミリオン」「イゼルローン回廊」と言った話の根幹に関わる重要な戦闘で明らかに数を誤認して書いてあるところには随分首をひねらされました。
いくら「ハードウェア」に重きを置かないからと言って、作者が同じ巻の中で書いたこと忘れてどうする、とツッコミを入れた記憶があります。
>むしろその後、内戦があったとは言え、同盟軍がろくに再建できていなかった方が疑問でしたね。
>しかし詳細に読めば誰でも気付くように、田中氏は艦隊の数をすぐに忘れる悪癖があります。それも「アムリッツァ」「バーミリオン」「イゼルローン回廊」と言った話の根幹に関わる重要な戦闘で明らかに数を誤認して書いてあるところには随分首をひねらされました。
>いくら「ハードウェア」に重きを置かないからと言って、作者が同じ巻の中で書いたこと忘れてどうする、とツッコミを入れた記憶があります。
アムリッツァ会戦に関してですけど、特にアニメではラインハルトの兵力が大きすぎるような気がしますけどどうなのでしょうね。同盟軍が10万隻から動員したのはともかく、帝国軍もそれくらいってませんか。一応、補給を絶たれた同盟軍を、片っ端から攻撃したのでしょう?せめて同数程度はなければ、数が足らないんじゃないかと思いましたけど。アニメの表現では、帝国軍も10万隻はいた筈です。ラインハルトのセリフで「10万隻の追撃戦は初めて見るな」ってのがありましたから。本当に帝国軍の方が少なかったのかしら?
不沈戦艦さんへ
>アムリッツァ会戦に関してですけど、特にアニメではラインハルトの兵力が大きすぎるような気
>がしますけどどうなのでしょうね。同盟軍が10万隻から動員したのはともかく、帝国軍もそれく
>らいってませんか。一応、補給を絶たれた同盟軍を、片っ端から攻撃したのでしょう?せめて同
>数程度はなければ、数が足らないんじゃないかと思いましたけど。
このあたりはかなりいい加減な部分です。
第13艦隊はこの時点でアスターテの生き残り第2、4、6艦隊の残存戦力全てに新規戦力を加えた完全1個艦隊だったはずで、実際アニメでもケンプ艦隊とはほぼ同数のように描かれていました。
しかし、その直後のキルヒアイス艦隊は第13艦隊の4倍との記述があり(ここは恐らく半個艦隊のままだとの勘違い)、しかもアニメではキルヒアイス艦隊にワーレン、ルッツの両艦隊を加えて3万隻との表現があって「田中氏の勘違いはしょうがないけど、それをアニメにそのまま引きずることはないだろ」と思いました。
それにラインハルトは「同盟軍の兵力分散の愚」を非難してますが、わざわざ帝国軍は同盟軍の分散に合わせるかのように、その全艦隊に同時に攻撃をかけており、この辺りはどう見ても同盟軍を遙かに凌ぐ戦力が無ければおかしいはずです。
その後のバーミリオンでもモートン・カールセンが合わせて7千隻程度の艦隊を率いてヤン艦隊に合流しているはずなのに、それが忘れられていたり、8巻のイゼルローン回廊にてヤン艦隊は最初2万9千隻近かったのが、ファーレンハイト・ビッテンフェルト艦隊との交戦後に「2万隻を割り込んで」しまっていたりと、どうも数勘定のいい加減さが付きまとっています。
まあこの辺りは銀英伝全体としてみれば僅かな瑕疵ですが、同じ様な間違いを肝心な場面で何度も繰り返すところは随分不可解に思ったものです。
>このあたりはかなりいい加減な部分です。
第13艦隊はこの時点でアスターテの生き残り第2、4、6艦隊の残存戦力全てに新規戦力を加えた完全1個艦隊だったはずで、実際アニメでもケンプ艦隊とはほぼ同数のように描かれていました。
しかし、その直後のキルヒアイス艦隊は第13艦隊の4倍との記述があり(ここは恐らく半個艦隊のままだとの勘違い)、しかもアニメではキルヒアイス艦隊にワーレン、ルッツの両艦隊を加えて3万隻との表現があって「田中氏の勘違いはしょうがないけど、それをアニメにそのまま引きずることはないだろ」と思いました。
それにラインハルトは「同盟軍の兵力分散の愚」を非難してますが、わざわざ帝国軍は同盟軍の分散に合わせるかのように、その全艦隊に同時に攻撃をかけており、この辺りはどう見ても同盟軍を遙かに凌ぐ戦力が無ければおかしいはずです。
確か小説ではラインハルト艦隊は同盟軍の7割程度、って設定だった筈です。7割ってことは実戦力比は1/2ですけど。そんな程度の戦力で、アムリッツァの同盟全軍を攻撃できる、って何じゃい!と前から疑問でした。それと、「補給線を絶たれ」に関してですけど、実際足りなくなった補給物資って、食料以外あるんですかね?ラインハルトが全軍で攻勢を掛けるまで、戦闘はやっていない訳ですから弾薬やレーザーやビーム用のエネルギーは足りているだろうし、艦艇の航行用のエネルギーなり燃料も不足はしていないでしょう。一回戦った後、アムリッツァに集結して最後の決戦を行えるくらいですから。艦隊の行動力が低下しているとも思えません。と、すると食料だけなんですよね。極端な話、水さえあればそう簡単に人間は死ぬもんじゃないですから、食料は切れてもイゼルローンに逃げ込むくらいのことは可能でしょう。その程度のことで、戦力が異常に低下して全く抗戦できず、同盟軍は散々打ち破られました、ってのも妙ですね。歩兵同士の戦いと勘違いしていないかな、と思いました。歩兵戦に見立てているのは解りますけど、こういう点には注意してもらいたかったと思います。まあ、作品としての完成度の高い銀英伝だからこそ、の指摘ですけど。だから銀英伝は下らない、などと言うつもりは全くありませんが。
>その後のバーミリオンでもモートン・カールセンが合わせて7千隻程度の艦隊を率いてヤン艦隊に合流しているはずなのに、それが忘れられていたり、8巻のイゼルローン回廊にてヤン艦隊は最初2万9千隻近かったのが、ファーレンハイト・ビッテンフェルト艦隊との交戦後に「2万隻を割り込んで」しまっていたりと、どうも数勘定のいい加減さが付きまとっています。
まあこの辺りは銀英伝全体としてみれば僅かな瑕疵ですが、同じ様な間違いを肝心な場面で何度も繰り返すところは随分不可解に思ったものです。
うーん、ヤンが「敵戦力の6倍で、完璧な補給が行われ、司令官の指示が末端まで守られれば絶対に勝てる」と言ったようなセリフがあったので、数にはこだわった作りになっていると思っていたんですが、結構いい加減だったんですね。これには気づきませんでした。
アニメ版銀英伝では同盟軍第三艦隊は、惑星レーシングにおいてワーレン艦隊に壊滅させられたことになっています。しかし私はこれに疑問をもっています。小説版をよく見直すと第三艦隊について全滅したとか降伏したとはどこにも書かれていなかったと思うのです。アムリッツア会戦の同盟軍と帝国軍の兵力を考えると
第三艦隊はアムリッツア星域まではなんとか撤退していたのではないでしょうか。みなさんどうでしょう。
> アニメ版銀英伝では同盟軍第三艦隊は、惑星レーシングにおいてワーレン艦隊に壊滅させられたことになっています。しかし私はこれに疑問をもっています。小説版をよく見直すと第三艦隊について全滅したとか降伏したとはどこにも書かれていなかったと思うのです。アムリッツア会戦の同盟軍と帝国軍の兵力を考えると
> 第三艦隊はアムリッツア星域まではなんとか撤退していたのではないでしょうか。みなさんどうでしょう。
僕は原作とアニメは別物って割り切ってます♪
原作の方は提督の戦死も確実なのはウランフ、ボロディンだけでひょっとすると後は全員撤退に成功してた可能性も^^;
アニメでグリーンヒル大将が
「すでに第3、第7、第12艦隊が通信途絶、第9艦隊のアル・サレム中将は重傷、第10艦隊のウランフ中将は戦死、両艦隊とも半数以上を失ったとの報告が入っています。第5、第8艦隊はかろうじて敵の追撃を振り切った模様ですが、やはり3割近い犠牲を出しております。ヤン中将の第13艦隊は健在ですが、ドヴェルグ星域で足止めを受け、すでに8時間が経過しました。
我々は、敵の策にのせられたのです。今は一刻も早く、イゼルローンまで撤退させるべきです。閣下、ご決断を!」
と言ってますがそのままなら兵力1艦隊分=1として残存兵力
0.5+0.5+0.7+0.7+1=3.4艦隊
かな?
これだとちょっと戦力半減と言うより6割減に近いので、その後第3艦隊の分も含め戦闘で行方不明になった艦艇がいくらか戻ってきたと言う解釈、確かに成り立つと思います。
第3艦隊は艦隊としては体をなさなくなった(壊滅した)しかしそれなりの数は残ってい、個艦、小集団で撤退。通信が途絶していたのは帝国軍に気づかれないためだったとかで^^
個人的に銀英伝の戦闘というのは中世の騎馬戦+海洋での艦隊決戦だと思うのですが、
ウランフの様に背水の陣を敷いたり、イゼルローン回廊の様に特殊な地形でもない限り宇宙はとんでもなく広大で360°逃げ道はある訳です。
敗走時に「蜘蛛の子を散らすように」逃走した場合(そうまでいかなくてもバラバラに逃走した場合)
幾ら追撃を受けたとしても艦隊の大部分が壊滅してしまう様なことは起こり難いのではないでしょうか。
海洋艦隊決戦では航空機の航続距離と速度は艦艇を遥かに上回っていますが、
銀英伝の艦載機は単独で長距離を航行するものではなく、速度差もそこまではない。
また敗走に移った敵を追撃する場合、損害を狙っても深追いしないのは銀英伝の世界でも同じでしょう。
同盟提督の玉砕趣味で艦隊が壊滅寸前になっていなければ
川上さんの言われるように
単艦・小集団単位でかなりの%が帰ってくるといったことはごく通常のことでは。
事情により返答が遅れました。申し訳ありません。
さて川上さんと駆逐艦さんの意見には大変納得がいきました。確かに司令官が戦死したからといって全滅したとはかぎりませんね。
そういえば重傷を負ったアル・サレム提督もその後どうなったか全く書いてありませんね。漫画版でははっきりと死亡となっていますしその後でてこないことから考えるとやはり死んだと考えるのが自然でしょうけど。