今回の仮想対戦は、魔術士オーフェンからオーフェンとアザリーをエントリーしました。
知らない人のためにオーフェン世界の説明をいたします。
オーフェンの世界には魔術というものが存在し、オーフェンはその使い手です。
オーフェンの使う魔術は主に、熱衝撃波、空間振動、空間爆砕、空中浮遊、瞬間移動、物質消滅などです。そして魔術を使うには必ず声を出さねばなりません。
しかし、オーフェンの持つ能力で魔術以上に強力なものは、「殺そうとすれば殺せないものは無い」と保証された暗殺技能です。その能力はまた「乱戦の中で確実に勝利を掴む能力」と呼ばれたこともあります。
アザリーは、オーフェンの姉弟子であり、魔術の能力はオーフェン以上ですが、戦闘技術も含めた総合能力ではオーフェンより一歩劣るとされます。
今作は小説的な面白さを重視しましたので、かなり長くなっています。
これを書くために、ちょいと創竜伝を読み返したのですが、竜堂兄弟の戦闘シーンは殆ど具体的な描写が無いんですね。
殴って吹っ飛んだとか骨を折ったとか殴られるのを避けたとか、正直言いますと非常に詰まらない描写です。
オーフェンのそれが敵の観察方法から自分の行動原理、その根拠まで仔細に描かれており戦闘思想まで読み取れるのとは正反対です(同じことは同作者のエンジェル・ハウリングにも言える)。
サイドストーリーを書く前提として、竜堂兄弟は格闘技に関しては殆ど素人同然で、特別な訓練を受けていないという点と、生物としての反射行動は人間と同様であろうという点を押さえました。
オーフェンの戦闘技能に関しては、以下を読むと理解できると思います。
魔術士オーフェンはぐれ旅「我が胸で眠れ亡霊」P181~224
魔術士オーフェンはぐれ旅「我が過去を消せ暗殺者」P230~275
魔術士オーフェンはぐれ旅「我が塔に来たれ後継者」P239~252
魔術士オーフェンはぐれ旅「我が聖都を濡らせ血涙」P12~27、P167~173、P193~230
魔術士オーフェンはぐれ旅「我が絶望つつめ緑」P69~76、P117~125、P142~156
魔術士オーフェンはぐれ旅「我が庭に響け銃声」P212~226
魔術士オーフェンはぐれ旅「我が聖域に開け扉(上)」P114~127、P151~159、P242~256
従姉妹の茉理が誘拐されたのはその日の夕方、夕食の材料を買ってくると言っていた彼女は、買い物の途中で何者かに攫われたらしい。
日が落ち、時計が9時を回ろうとしているのに戻ってこない彼女を心配し、家の外に出てみると、ドアには数枚の紙片を縫い止めるようにナイフが突き刺さっていた。
それだけではない。
そのナイフには、彼女が普段から身に付けているネックレスが、不吉さを演出するように血糊にまみれて絡まっていた。
紙は3枚あった。
一枚は、茉理を誘拐した旨と、取り戻したければ指定の場所に、四兄弟のなかの誰でも良いから一人で来い、来なければ人質を殺すという文。
一枚は、指定の場所を示した地図。
そして最後の一枚は、全身を紐のようなもので縛られ、掌にナイフを刺され血を流している茉理の写真だった。
四兄弟は騒然となった。以前、古田がやった、遊び半分で髪を切ってよこすような児戯ではない。
指が送られてこなかっただけましなのだろうが、それでも誘拐犯は人質を傷つけることを厭わない人間である事は確かなのである。
終は犯人の指示など関係ないからみんなで行こうと主張する。
余はそれに反対し、近くまで一緒に行ってそれから誰かが行けばいいと言う。
続は自分が代表して行くと言う。
始は悩んでいた。
この誘拐は金銭を目的としたものではない。
もし全員で行ったことがばれたらどうなるだろう。犯人は単独犯とは限らないのだから、人質が奪還されないよう手の届かないところに移してしまうか、最悪の場合、人質を殺してしまうかもしれない。
自分が行くべきなのだろうか、それとも…。
「兄さん、僕が行きますよ。兄さんは、もし犯人が接触してきたときのために残らねばなりません」
結局、続のこの主張が通る形で、続が代表して行くことになった。
黒の戦闘服は一見してライダースーツのように見え、現代の日本ではそれほど奇異な格好ではないが、着ている人間が美女となれば目立たないということはない。
それを避けるために、アザリーは更に薄手のコートを羽織っていた。
目標は、線は細いが日本人としては相当背が高い男。
要求どおり一人で来たようだが、用心に越したことはない。
男が指定されたビルの中に入るのを確認すると、オーフェンが仕事を終えるまで周囲の警戒を行うことにする。
白魔術を使い意識を飛ばし、ビルの中で目標を待つ義弟にその旨を伝える。
返答はないが、うなずく義弟の姿が脳裏に浮かんだ。
続はビルの階段を昇る。
改装途中のビルらしく、打ちっ放しのコンクリート、ベニヤ板が壁に貼られている。それでも床だけはちゃんとある。天井は高い、が、迂闊に跳べば確実に頭をぶつけるだろう。フロアは広い。店舗用のビルなのだろうか。
外は満月。月明かりが薄っすらとあたりを照らず。指定された場所は4階だった。
階段を昇りきると、そこは月明かりとは別に、弱いがなんとか周囲をうかがえないほどではない程度の光源が目にとまる。
それが何なのかは分からない。
フロアの隅の暗がりに、まるで幽鬼のようにたたずむ黒い影がある。
その傍には…、連れ去られた従姉妹の姿があった。
服を黒い染みで汚し、ぐったりとしているが確かに従姉妹の茉理である。
駆け寄ろうとするが、その時黒い影が口を開いた。
「依頼人の求めでね、あんたを殺しに来た」
「殺し?一体誰に。僕たちは善良な一般市民ですよ。殺されなきゃならない理由なんてありませんよ?」
黒い影が鼻で笑う。目が慣れたのか、影の人物の顔が見て取れた。
年齢は20歳を回った程度だろう。皮肉っぽい顔のつくりで目つきはやたらと悪い。肌は白いため黒人ではない、東洋人風の顔のつくりである。背はそれほど高くない。日本人平均より若干高い、という感じだろう。黒いライダースーツのようなものを身にまとっている。
「暗殺者が依頼主の名を言うと思ったか?
実のところ、あんたらを殺す機会なら幾らでもあった。だがね、ただ殺すだけじゃなく、戦って殺して欲しいんだそうだ。普通は受けない、ばかげた話だからな」
「僕と対等に戦えるとでも?なめられたものですね」
怒りに熱くなる頭をなんとかなだめながら言う。
「…一つ言っておくが、竜にはならないほうがいいぞ。その時は、俺はその娘を連れて逃げることにしている。俺もろとも娘を吹き飛ばすつもりなら構わないがな」
その言葉が戦闘開始の合図だった。
続は目の前の黒ずくめの男に殴りかかる。
男の言う、依頼主とは誰なのだろう?自分たち兄弟が生きていると都合の悪い存在には違いない。
ただ、心当たりはおろか身に覚えも山ほどあるので、具体的に誰が依頼主か推測するのは不可能だ。
一つだけ言えることがある。
この暗殺者は竜堂兄弟が竜に変身できることを知っているということだ。
どのような経路でそれを知りえたのかは分からないが、フォーシスターズの代理人、レディLあたりが出所か。
とすれば、こちらの能力はかなりのところまで知られている可能性がある。
続は右腕を引き絞り、全力でパンチを放った。
暗殺者はそれを避けなかった。避けずに右足を蹴り上げ、ブーツのエッジで続の拳を打ち払った。
続は勢いを殺せず前につんのめる。
一歩二歩と地面を踏みしめ、持ち前の筋力で並の人間ならば転倒必至な状態から強引に持ち直すと、三歩目で回し蹴りを放つ。
暗殺者を捉えたように感じたが、蹴りは虚しく空を切り、回転力は殺されることのないまま壁に叩き込まれる。
ベニヤ板はひとたまりもなく叩き割られた。
暗殺者は滑るように間合いを離している。
オーフェンは考える。
目前の相手、竜堂続は以前に戦った相手に似ている。
「悪霊」ジャック・フリズビー、そしてレッド・ドラゴン種族のヘルパートを思い出させる。
ただの一撃で人体を破壊するパワー。人間には不可能なスピード。
だが、ジャックやヘルパートに比べれば、続は「危険」ではあるが「脅威」ではない。
動き、間合いは人間と同じ。レッド・ドラゴンのように変幻自在ではない。
スピードは速い、が、ジャックほど速くはない。
動物の身体というのは、その身体にふさわしい運動能力を発揮できるようにつくられているのだ。筋力が十倍になれば十倍速く走れるという訳にはいかない。十分に能力を発揮したければ、筋力に見合った走法を身に付けねばならない。さもなければ最初の一歩で宙に跳ね上がることになる。
ジャックは格闘技(と言って良いのか分からない。だがそれ以外にふさわしい単語はないだろう)に長けていた。
レッド・ドラゴンは、内臓や決まった形すらない生物だから、有骨の生物とは運動原理じたいが違う。
彼らに比べれば、続は明らかに取り組みやすい相手だった。
入手した情報によれば杖術の経験ありとのことだが、十分に修めた訳ではあるまい。無駄の多い身のこなし、隙の多い攻撃。経験は自らの血肉になってこそ意味がある。
かといって、迂闊に攻撃するのは危険すぎる。
情報によれば、竜は人を殺すに充分な腕力をそなえるという。攻撃を食らっても致命傷を受けない限り、魔術で治療することは不可能ではないし、ある程度の傷なら無視することもできるが、ほんの数秒が命に関わる戦いには、慎重に慎重を期すことが必要だ。
竜に生半可な攻撃は効かないという。打撃、刃物、銃器も駄目。
さらに、生命に危険が及んだり、気を失わせるような攻撃は、無条件に竜に変えてしまうらしい。
オーフェンは腰から肉厚大振りのナイフを抜きはなった。
続の動きが止まる隙を見計らい、右腕めがけ切りかかる。その動きには毛ほどの隙も、無駄もない。
ちぃん、とまるでガラスが打ちあったような音を立てた。
はじめから効かないつもりで切り込んだが、確かに効かない。
オーフェンは切りかかった勢いを殺さず、そのまま続の側を通り過ぎ、身体を半回転させて正対する。
ナイフは僅かにも表面を削った形跡すらない。
ナイフを鞘に収め、考える。
竜はウロコで覆われているという。
切り込んだときの音と感触からすれば金属ではない、陶器かガラスか、それに類する材質のようだ。
それで全身がくまなく覆われているとすれば、防御の点では申し分ない。
だが、それでは動きに支障をきたす。おそらくウロコの綴り方に一工夫あるに違いない。
甲羅やウロコを持つ生物の特徴を思い出し、対処法を練る。
続は暗殺者が動きを止めたのを見て、安堵した。
ナイフで切りつけられたときには一瞬驚いたが、竜のウロコは事もなく防いでくれた。
暗殺者が動きを止めたのは、攻め手を失ったためだろうか。
続にはそれを判断する材料がない。
相手の情報を持っていないだけではない。相手の動きを予測し、自らの行動の指針ともなる実戦経験が不足している。
絶対に傷を負わない身体を盾に、相手を一方的になぶる戦いなど、経験のうちには入らない。
オーフェンは右の掌を前にかざし、叫んだ。
「我は放つ光の白刃!」
光と熱の奔流が続の元に殺到し、そして炸裂した。
「効くわけがねーな。だがっ」
熱が周囲に陽炎を立てているが、構わずその中心にかがみ込んでいる人影に走り寄る。
どんな動物であれ、強烈な閃光にさらされると本能的な防御反応を取る。
こちらの動きに気づいたのだろう。反射的に右腕を振り上げている。
オーフェンはその右腕を取り、肩に膝を当て、そのまま体重を掛けてひねりあげた。
ごきん、という音と共にあっさりと肩が外される。
続は突然の痛みに驚き、オーフェンから逃れようともがいたが、オーフェンは続の体を踏み台にとし、全力で蹴り出すことで飛び離れた。
さすがに完璧な着地というわけには行かず、オーフェンは左手を床に付きつつ側転気味の前転をすることで体勢を整えた。
続は床に這いつくばっている。。
ものの数秒間の出来事だが、オーフェンは手応えを掴んでいた。
「ふん、たまげたか。関節がある以上関節技は効くよな」
続は怒りに燃えていたが、それ以上に信じられないという気持ちが強かった。
暗殺者が放った光と熱にではない。どんな手品を使ったのか、それとも超能力なのか分からないが、それはダメージにはならなかった。それよりも、関節を決められ肩を外されたこと、自分を傷つける者がいることに驚いていた。
痛みで考えがまとまらない。
突発的な事故に遭うと、人は多かれ少なかれ正気を失う。
パニックになることもあれば、茫然自失の状態になることもある。
そしてこれが竜堂兄弟の弱点である。傷を負わぬ者に傷の痛みなど分からないのだから。
オーフェンはどのようにこの戦いの決着をつけるか、考えていた。
今の自分ならば負ける気はしない。
問題は、倒す方法が限られているということだ。
天性の暗殺者レッド・ドラゴンも、熱衝撃波の直撃を食らえば吹き飛ぶ。
真正面からの熱衝撃波すら避けるのがレッド・ドラゴンだし、体の半分が吹き飛んだところで意に介さない種族だが、それでも攻撃の効果はある。
だが、今相対している相手は、熱衝撃波がまったく効いていないようだ。
事前に知った情報からすれば、この男を倒すには、一撃で致命傷を与える以外に方法は無いのだ。切ったり突いたりが効かないことは確認済みだ。
ならば、体内から破るしかない。
口で言うのは簡単だ、誰だって思いつく。が、実際にどうすればいいかは別問題である。
ある意味、これは株に似ている。株の儲け方は単純だ。安値で株を買い、高値で売ればいい。だが、実際に儲けようとすれば、時期を見抜く眼力と情報を集め処理する能力が必要だ。
単純だが困難だ。そして真理は、ときにこのようにして姿をあらわす。厄介なことだ。
オーフェンは胸のポケットから、先ほどとは異なる比較的小振りのナイフを取り出し、右手に持って構える。
続の様子を慎重に観察し、ゆっくりと間合いをはかる。
間合いを制することは勝負を制することだ。
相手は右腕が利かない。右に回り込むのは定石だが、別の意図があった。
だん、と床が鳴り、オーフェンは飛び込んだ。左拳で続の右肩を狙う。
続はそれを見て取り、身体をよじり後ろに下がることで避けようとした。痛む肩を更に狙われるのは避けたかったし、現実にその目的は達成された。が、オーフェンは始めから避けられると思っていた。第一当たったところで大したダメージにはならない。本命は右手のナイフだった。
ナイフを続の顔めがけ突きつけ、柄にあるスイッチを押す。
パチンという音と共に刀身が飛び出した。
続は顔を背け、左手で顔を覆った。目はつむっている。刀身自体は左手のウロコで弾かれたが、体勢を大きく崩していた。
顔めがけてものが飛んできたとき、とっさに目をつむってしまうのは当然の防衛反応だ。オーフェンは幼年期よりそうならないための訓練を受けているが、続はそのような訓練を受けてはいない。
オーフェンは続けざまに、左足で続の足を払う。
一連の動作には一瞬の遅滞もない。洗練された技術の結実がそこにあった。
続の身体は宙に舞った。
続には、自分の身に何が起こったのか、自分がどんな状況なのかも認識できなかった。
いや、断片的な記憶はある。暗殺者が殴りかかってきたところまでは覚えている。右肩を狙われ、身をよじって避けた。次に見たのは眼前に迫る銀色に輝くものだった。危険を感じ、とっさに顔をかばった。だが、それ以降はいったい何が起きたのか。記憶の中に暗殺者の姿はない。
続は地面に落下した。
右手が利かず、左手は顔をかばっているため、受け身の取りようがない。
オーフェンはそれによるダメージは期待していなかった。
必要なのは相手の体勢を崩すこと。そして相手に意識の空白を作ることにある。
オーフェンは魔術の構成を組み上げている。これまでに何百回と組んだ構成は、意識せずとも一瞬のうちに組み上げることができる。
オーフェンが右手を貫手の形とし続の口に突き込むのと、その言葉を叫ぶのは同時だった。
「我は放つ光の白刃!」
呪文を言い終わる前に熱衝撃波が発生し、強靱無比な竜のウロコの内部を駆けめぐった。
大木すらなぎ倒す衝撃波は竜の体組織をめちゃくちゃに引き裂き、金属を融解させる高熱は肉を焼き水分を蒸発させた。蒸発した水分が続の体を風船のように膨らませる。内圧に耐え切れず、表皮がはじけ飛ぶ。
オーフェンは既に続の口腔から右手を引き抜いていた。右手を見ると、革の手袋は完全に焼け落ちている。
魔力を極力制御したつもりだったが、それでも火傷を負っていた。
「…我は癒す、斜陽の傷痕」
火傷を魔術で癒す。オーフェンは氷のように冷静だった。
勝つべき戦いであり、問題なく勝てたのだから。
アザリーは戻ってきていた。
人質の茉理は、目を見開き口を開け、惚けたような顔をしている。
「あら?気が触れちゃったかしら」
口をぱくぱくさせているが、言葉が出てこないようだ。
息をつき、必死で言葉を紡ごうとする。
「ひ、人殺し。
何の、何の恨みがあって続さんを…」
アザリーが目を丸くした。
「あら、私たちは殺さねばならないときには殺すわ。それが魔術士だもの」
アザリーは茉理を哀れんだ目で見る。
「アザリー、あと3人いる。今度はバルトアンデルスの剣を使わせてくれ」
オーフェンが声をかけた。
「じゃあね、お嬢ちゃん。朝になれば誰かが見つけてくれるわ。私たちは3つ仕事を片づけなければならないから、そのワイヤーははずせないけど」
茉理は絶望的な表情になった。
夜明けまではまだ4時間以上ある。この二人なら、本当に従兄弟たちを皆殺しにしてしまうかもしれない。
叫べば誰かが来てくれるかも。
「あら、叫べば誰かが来てくれると思ってるみたいね。しょうがないか」
アザリーはそう言うと、茉理の瞳をのぞき込んだ。
ふっと、視野が狭まる。泥の中に引きずり込まれるような感覚だ。
「白魔術か」
「ええ、眠らせるついでに記憶をね。後でやっかいなことになりそうだし」
「ワイヤーを外し、適当なところに寝かせておこう。傷も消しておこうか」
「おわったら次ね」
「次は、長男かな?」
遠くから響くように声が遠い。眠るまいと努力するが、意識は宙を浮くかのように頼りない。
眠ってしまえば大変なことになると、自分に言い聞かせ意識を鼓舞するが、それすら難儀だ。
目の前がすっと暗くなる。
まぶたが閉じたんだ、と思った瞬間、茉理はなにも分からなくなった。
私も仮想対戦を書いてみました。
竜堂兄弟と戦うのは、強殖装甲ガイバーの獣神将(ゾアロード)です。
獣神将(ゾアロード)は、悪役側の大幹部なんですけれど、竜堂兄弟と戦わせたくなる特殊能力の持ち主なので。
獣神将(ゾアロード)とは?
強靭な肉体に高い戦闘力 それにバリヤー等の特殊能力を持ちます。
他にもありますが、タナウツとは関係無いので割愛。
今回は竜堂始とリヒャルト・ギュオーが一対一で戦います。
なぜか?はきかないで。作者の都合ということで。
深夜、二人の偉丈夫が相対している。
一方は竜堂家の家長、竜堂始。
もう一方は、
「キサマが竜種とやらか?」
浅黒い肌の堂々たる体格をした男はそう言い放った。
「妙な力をもっているようだが、このオレが来た以上キサマの命運もこれまでだ!」
「たいそうな自信だな」
軽く受け流す始。
相手は武器も持っていない。プロテクターを身に着けてはいるが、そんなものは竜種の力の前にはなんの役にもたちはしない。
始は負けるとは思っていない。
「このリヒャルト・ギュオーに楯つこうというのか?ばかめ!身のほど思いしらせてくれるはッ」
全身から閃光を放つギュオー。とっさに顔を覆う始。光が消え、目の前に立っていたのは、二回り以上大きくなり、さらに角まで生やし異状に様変わり、いや、変身したギュオーの姿があった。
「見せてやろう、獣神将(ゾアロード)力を」
一方的な展開となった。
始はバリヤーをはっているギュオーに近づく事すらできないでいた。
ギュオーの巨躯から繰り出される攻撃は始を追い詰めていった。
それどころか飛道具まである。
「うっ!」
始のそばの地面が大きくえぐれる。
ギュオーの額にある水晶、ゾア・クリスタルからのビームによるものだ。
「どうした?きさまの能力はこんなものか?」
せまる、ギュオー。あまりにも巨大な力の差があった。始は一言も言い返せずにいた。
「どうやらこれまでのようだな。ゾアロードである、このオレの手にかかって死ねることを光栄におもうがいい。くらえいっ!!」
雄叫びとともに重力波が放たれた。かわすまもなく、始に命中する。
そのとたん、あたり一面が白い光に満たされた。
光が消えたあと、始のいた所はクレーターになっていた。
ギュオーは異状に気づいた。今の重力波にここまでの威力はない。ヤツはどこだ・・?
そのとき重力のゆらぎを感じ、視線を上げる。
「なんだと?」
言葉を失うギュオー。視線の先には長大な身体をくねらせる青い竜の姿があった。
宙にいる青竜王は長大な身体を心地よげにくねらせた。
人の身に押し込められていた生命本来のスケールに開放する。これは、たとえようもない程心地よかった。
青竜王は視線を地にむける。その先には異形の人形、ギュオーの姿があった。
竜王に敵対した愚か者。青竜は己が力を解放する。それは見えざる鞭となって、ギュオーに襲い掛かる。
ギュオーは抵抗できずに周囲の地面とともに上空へ飛ばされて行く。
青竜の力を持ってすれば容易いことだ。あっけない幕切れだ。
ふと、目を脇にむける。輝く球体が浮かんでいた。よく見ると、中に何かがいる。ギュオーだ。今の一撃に耐えたらしい。しぶといことだ。
「この力は?こいつも重力使い、か?」
とっさにバリヤーを張り、飛ばされることを防いだギュオー。
獣化?いや、そうではない。なんだ、これは?
しばし自失したギュオーに青竜が近寄ってくる。
「むぅぅぅっ、なんということだ。このオレが押されている?」
近くに来たので、相手の大きさがイヤでも目に付く。
絶望的なまでの体格差に気圧されている事に気がついたギュオーは、己の中にある弱気を打ち払うように雄叫びをあげる。
「これからは、全開で行くぞ!ブルー・ドラゴン!」
先程とは逆の展開となった。ギュオーの全力の重力波をもってしても青竜のバリヤーを破ることはできなかった。もっとも、バリヤーを貫けたとしても竜の鱗には通用しなかったのだが。
青竜の攻撃はギュオーを圧倒する。よくもっているが、そろそろ限界のようだ。
(バリヤーがきしむ?なんという威力!
・・・・・最強の重力使いであるオレがここまで押されるとは、こうなれば『アレ』を使うしかない!)
覚悟を決めたギュオーは青竜との間合いをとる。
無駄なことを。青竜はギュオーのしたいようにやらせた。たとえ地球の裏側まで飛んだとしとも逃げられはしない。以前撃落とした事のあるICBMより小さい標的とはいえ、はずしはしない。
青竜からある程度離れた処で止まり、『アレ』の準備に入るギュオー。
青竜は余裕からか手出しをしてこない。
「なめおって・・・・・まあ、いい。かえって好都合だ。」
全身に気合を漲らせるギュオー。
「この距離なら絶対はずさない。そして・・・この攻撃に耐えられる者など地上に存在しないのだ!」
奥の手を放つ、ギュオー。
「地獄へ行けー!」
ギュオーの身体から無数の光弾が射出される。それらは弧を描き青竜へと向かってくる。
愚かな・・・・まだ解らぬと見える。貴様の力がこの私に通用しない事が。
慌てることなくバリヤーを張る青竜。
青竜を直接狙ったものではないようだ。光弾は青竜の近くの空間に集まり、漆黒の球体と化す。
なんのつもりでこんなことを?
青竜は重力のゆらぎを球体から感知した。周囲の大気が球体に引き寄せられ、いや、吸い込まれていく。
なんだこれは?この球体は?
「見たか!?
瞬間質量7000エクサトンの擬似ブラック・ホールだ!
去れ!ブルー・ドラゴン!
“事象の地平”の彼方へッ!!」
重力使い、禁断の最終奥義“擬似ブラック・ホール”が発動した。
青竜は擬似ブラック・ホールの作り出す重力異常に全力で耐えていた。
周囲の光景すら歪む大重力に抗うのには全身の力をバリヤーに注がなくてはならなかった。
なんという高重力!
青竜王=始はブラック・ホールに対する知識を持っている。しかし、文系の悲しさ、それはたいした物ではない。だが、はっきり解っている事柄がある。この重力にとらわれたら最後だということだ。
擬似とはついていても本物とそうは変わらぬ(と思われる)能力を有していた。
「どうだ、ブルー・ドラゴン!このリヒャルト・ギュオーが作り出した擬似ブラック・ホールは!?」
バリヤーをはる青竜をみてさらに続ける。
「かろうじてバリヤーで持ちこたえているようだが、そのバリヤーとていつまで持つかな?無駄な抵抗は止めてとっとと吸い込まれてしまえ!」
表面は余裕を持っているように振舞うギュオー。実は内心、かなり焦っていた。
その理由は、
(そうだ、早く吸い込まれろ!この擬似ブラック・ホールがオレにも制御できない、本物のブラック・ホールと化す前に!)
そう、これはギュオーにとってもあまりに危険な諸刃の剣でもあったのだ。
ギュオーにとっては真綿で首を絞められるかのような時間が過ぎていった。
青竜は擬似ブラック・ホールに耐えていたが、ついに限界が訪れる。いやな音をたててバリヤーが崩壊する!
とうとう重力圏にとらわれた青竜は飛ぶこともできずに吸い込まれていく。
長大な身体が小さくなって行き、そして、消える。
「やったぞ!」
快哉するギュオー。だが、まだひとつ仕事が残っている。
擬似ブラック・ホールを中和しなければならないのだ。
幾度目かの試行ののち、死力を尽くした中和波が見事、擬似ブラック・ホールを消滅させる。
「フハハハハハハ・・・勝った!オレは勝利したのだ!このリヒャルト・ギュオーがな!」
青竜も、擬似ブラック・ホールも消え、唯一人残ったギュオーの哄笑が虚空へと響いていった。
いかがでしょうか?
なぜ始VSギュオーかといいますと、この2人が重力使いだからなんですが。
で、さらに なぜギュオーかといいますと、これを思いついたのは擬似ブラック・ホールを見た時なんです。かなり前です。
この時は青竜王もギュオーみたいな重力攻撃使えばいいのになんて思いながら創竜伝読んだりしてました。(笑)
それと、青竜王は擬似ブラック・ホールを作れるか?なんてことも考えてました。結論は文系の始には無理!となりました。
雑文、失礼しました。
> いかがでしょうか?
> なぜ始VSギュオーかといいますと、この2人が重力使いだからなんですが。
ギュオーの攻撃力だと竜堂兄弟も一発ですね。
人間状態でも竜状態でも対等以上に戦うキャラというと、ギュオーのようなスーパーキャラでないと無理なんでしょうか?
私は明らかに力不足なキャラが、何とか工夫して戦う、というのが好きなんです。緊張感のない戦いほど読んで面白くないものですしね。
> それと、青竜王は擬似ブラック・ホールを作れるか?なんてことも考えてました。結論は文系の始には無理!となりました。
確かにそういう使い方があることを思いつかないでしょうしねえ。
> ギュオーの攻撃力だと竜堂兄弟も一発ですね。
> 人間状態でも竜状態でも対等以上に戦うキャラというと、ギュオーのようなスーパーキャラでないと無理なんでしょうか?
考えてみたら、あの竜というのは本気で強いんですよね。
素で闘っても勝てる相手はそうはいないでしょう。連中、明らかにウルトラ怪獣より強そうです。
ギュオー以外では、孫悟空やダークシュナイダーとかが互角以上に勝負できそうですね。あとは旧支配者とか。
しかし、とうちゃん直伝の主人公は無敵の術なんていう、御都合主義な概念武装まで施しているので、一体いつどんな特殊能力を発動するか分かったもんじゃありません。
ギュオーとの戦いの後、蒸発したBHの粒子から再生したくらいは言いかねません。竜種の体を構成する粒子は一つ一つが竜種の形状を記憶しているとか。
BHに取り込まれたら構成される粒子の一つ一つが性質を失うとかいわれても、世界は輪廻転生で循環しているとか言って他の材料から平気で復活しそうです。
>私は明らかに力不足なキャラが、何とか工夫して戦う、というのが好きなんです。緊張感のない戦いほど読んで面白くないものですしね。
それなら、いっそのこと銀英伝の大艦隊と戦わせてみてはどうでしょうか? 勿論、司令官の視点で。
ゼッフル粒子やトールハンマーを駆使して竜種を打ち滅ぼしてやりましょう。期待はしませんけど。
> 確かにそういう使い方があることを思いつかないでしょうしねえ。
思いついたら、それを利用してタイムトラベルしたりしそうで今まで以上に迷惑で鬱陶しい存在になるでしょう。最悪、秦カイ殺して金と南宋戦わせるんじゃないですか? 勿論、危なくなったら事あるごとに干渉しまくるでしょう。
その跡は保険と称して将来中国を侵略するであろう、モンゴルやヨーロッパ諸国を攻撃するんじゃないですかね。彼の大好きな中華帝国を世界帝国にするまでやるでしょう。
でも、ここまではやらないだろうと思ってみる。
お初で投稿させていただきます。
最近、楽しくROMさせていただいております者です。
水を差す発言で大変恐縮ですが、
そもそも、この「仮想対戦シリーズ」はココの掲示板でやるような話じゃないような気がします。
ギュオーやオーフェンなんて畑が違うとこのキャラ持ってきても、何の考察にもならないんじゃ・・・。
> 水を差す発言で大変恐縮ですが、
> そもそも、この「仮想対戦シリーズ」はココの掲示板でやるような話じゃないような気がします。
> ギュオーやオーフェンなんて畑が違うとこのキャラ持ってきても、何の考察にもならないんじゃ・・・。
もともと、フォーシスターズがどうやったら竜堂兄弟に勝てるか、というコンセプトで考えていたのです(言い出しっぺは私ですし)。
実際、竜堂兄弟より強いキャラなんて掃いて捨てるほどいるんです。
ですが、創竜伝世界のバランスを崩さずに戦うことのできるキャラ、というつもりでエントリーしてみたのが「柏木姉妹」であり「オーフェン」なんですな。
牛種側にも柏木姉妹のようなハイパワーキャラがいるだろうし、オーフェンレベルの戦闘技能者だっているだろう、と考えた上でなんです。
その根本は、田中芳樹が馬鹿にする格闘技術とは何ぞやという部分から発しているわけです。
まあ、リアルな拳法や空手ではなくて架空の格闘技術なんですけど。
私自身、柔道の有段者にどんな投げられ方をしたか考える間も無く投げられたという経験がありますので、竜堂兄弟には突込みを入れたい気分なんです。
最後に一つ
”もし、自分の身体がその距離を知っていれば。この敵もまた死ぬ。距離を知ることは、殺人を容易くする……
(中略)
自分の剣が当たらないことは分かっていた。この距離は‘知らない’。必殺の呼吸で撃つことができなかった。(エンジェル・ハウリング)”
ライトノベル的な戦闘理論であり大嘘なんですが、それをリアルに読ませる描き方、というものもあるのです。
創竜伝における戦闘シーンのつまらなさ。それは満足にハッタリすらかませない表現の貧困さにあるように感じます。
> 水を差す発言で大変恐縮ですが、
> そもそも、この「仮想対戦シリーズ」はココの掲示板でやるような話じゃないような気がします。
> ギュオーやオーフェンなんて畑が違うとこのキャラ持ってきても、何の考察にもならないんじゃ・・・。
新Q太郎氏のパロディで、「かってに改蔵」のキャラを創竜伝とミックスした作品なども過去に投稿され、「ザ・ベスト」にも掲載されていたりしますから、別作品からネタを振って来ることは構わないのではないかと思いますけど。「あずぎんが英雄伝説」とかいうのもありましたね。それだけでなく。
ま、どうしようもない程脱線でもしない限り、大目に見ましょうよ。
なるほど、納得いたしました。
私の見解が少し、狭かったようですね(^^;
某掲示板の「ライトノベル最強決定戦」のようなノリで脱線するかな?と思いレスを付けてしまいましたが、要らぬ杞憂だったようです。いやはや、余計な水を差してしまい申し訳ありませんでした(_)
まず。
>決戦!! 獣神VS竜王
というタイトルを見て。
てっきり獣神ライガー(アニメの方。さすがに覆面レスラーとは考えませんでした。^^;)対竜堂兄弟
かと思った(笑)。
冗談はさておき。
ガイバーの原作では、疑似ブラックホール(以下疑似B・Hと略)はギガンティック・ダークに破られていますが、
竜堂兄弟が同様の方法で疑似B・Hを破るのは難しいかもしれません。
ガイバー(ギガンティック)のセンサーは、疑似B・H中心部の状況を捉えることができましたが、同様の真似が
竜種に可能かということと、ギガ・スマッシャークラスの打撃を疑似B・H中心部に与えることができるかどうか、
がポイントですね。
あるいは、青竜王に限り、獣神将と同じ手段で疑似B・Hを中和する能力があるかもしれませんが、これは何とも
言えませんね。
とりあえず、獣神将で確実に竜堂兄弟に勝てる存在はアルカンフェルだけでしょう。
と言うより、アルカンフェルなら、竜堂兄弟が竜身で4体がかりで相手しても負けないでしょう。
何しろ、地球を破壊する大きさの巨大隕石を破壊するほどの攻撃力と、ガイバーのメガ・スマッシャーを反射する
防御力を持っていますから(はっきり言ってデタラメな強さです)。多分、11巻に出てきた銀月王も彼の敵では
無いでしょう。
まだ、12人(正確には13人)の獣神将の内、戦闘力が判明しているのは半分くらいですが、アルカンフェル、
ギュオー(イマカラム)の他に竜堂兄弟に致命傷を与えうる能力を持った獣神将というと、リ・エンツイだけですね。
彼の技『絶空斬』なら、竜身でも切断することが可能でしょうし、幾ら竜王でも胴体もしくは首を切られて生きて
いられるとは思えません。
問題は、絶空斬を仕掛けるには、竜王に接近しなければならないことと、技を仕掛けてから切断されるまでに若干
のタイムラグがあるため、他の獣神将がおとりにならないと技にかかってくれないでしょう。
結論として、リ・エンツイと竜王の一対一ではまず竜王の勝ちでしょうね。