山本弘トンデモ資料展
2008年度版1-A
野尻ボード
野尻抱介の掲示板
山本弘 お願い・軌道計算ソフト探してます 2008年01月29日(火)15時00分48秒
URL: http://homepage3.nifty.com/hirorin/
はじめまして、山本弘です。 みなさんにお願いがあって参りました。実は今、新作の執筆準備のために、軌道計算が簡単にできるソフトを探しています。 簡単に言うと、『妖星ゴラス』へのオマージュで、地球を動かす話です。とは言っても、南極にロケットエンジンをつけたりはしません。ネタバレになるので原理は詳しくは書けませんが、この時代には地球を動かすテクノロジーが存在すると思ってください。 以下は基本設定です。数値がアバウトなのは、これから計算してつじつまを合わせていくつもりだからです。 1.時代は22世紀初頭。新しい駆動システムの発明で、宇宙開発が活発化している時代。 2.オールト雲の中に褐色矮星が発見される。その質量は木星の約20倍程度。100億年以上前に生まれた古い星であるため、きわめて低温。赤外線もほとんど放射していないため、これまで観測にかからなかった。褐色矮星は太陽系に接近してきており、数十年後に地球とニアミスを起こすことが判明する。 3.地球に最接近するのは、北半球が夏の時期。南極上空、約40万kmを通過すると予想される。相対速度は秒速300km程度。 4.潮汐力による被害、および引力によって軌道が乱されるのを避けるために、地球の軌道を変えて、最接近時の距離を3倍以上に広げることが計画される。 5.ただし、設定上、加速できるのは地軸に平行な方向のみ。(これが大きな制約) 6.北極方向に加速するか南極方向に加速するかは、切り替えることができる。切り替え作業には約1か月かかる。 7.具体的には、地球の公転軌道面を0.3度以上傾けるとともに、離心率を変化させる。 8.加速度は0.0000108m/s2。(この数字は譲れません) 9.加速期間は1~2年を想定。 10.褐色矮星通過後は、軌道を元に戻す。 こういう設定です。 公転速度を増減させるより、軌道面を傾けることを重視したのは、推力方向が軌道面から66.6度も傾いていると、速度の増減に貢献するベクトルはわずかじゃないかと直感的に考えたからです。 ただ、実際にどういう風に加速したら接近時の距離を最大にできるのか、また、通過時に重力カタパルトで地球が変な方向に飛ばされないか……といったことも計算しなくちゃいけません。 しかし、この計算がものすごく面倒なんです。だから簡単にできる軌道計算ソフトがないかと、この前からネットで検索しているのですが、天文シミュレータとか衛星の軌道計算ソフトとか分子軌道計算ソフトとか占星術ソフト(笑)とかばっかりヒットして、なかなか理想のものが見つかりません。 何かおすすめのソフトはありませんでしょうか?
野尻抱介 2008年01月29日(火)16時28分02秒
>SI接頭辞 エクサのあたりから憶えられず「すごいたくさんぽい」になってしまうので、これ以上増やすのは勘弁してほしいような(^^;。兆と重なって切りのいいテラでやめて、あとは指数にしませんか。 それだとペタFLOPSの計算機を作ってる人が困る? いいかげん1秒なんて長時間で計算能力を測るのをやめてはどうかと。 とかいいつつ「木星質量」を1として太陽質量、地球質量を知っておくと星系の設定に便利ですけどねえ。10木星質量集めてくれば核融合点火か、とか。結局仕事がにじんでしまうのかしらん。 ……と書いたところへ山本弘さんが! ほら、やっぱり「木星の20倍」って言ってるじゃないですか(^^)。SF作家にはこれが便利なんですよ。 というわけで皆の衆、山本さんの新作に協力するように! この場合は宇宙船も扱えるN体シミュレータになりますね。地球を宇宙船扱いして、自らも重力源に設定できるもの。そんなのあるかなあ? 野田司令、どうですか。手持ちのソフトをちょっと手直しすれば。 勝手に仕様を追加すると、受ける潮汐力や月の挙動も描写したくなるはずだから、それも計算できること。月の軌道が変わって潮汐依存の地球環境が激変しそうですが、このさい相当なダメージは折り込みずみでしょう。 1~2年継続する加速で軌道面を変えるとなると、山本さんも想定されているとおり、半年周期で加速方向を変えないといけません。これも仕様に追加ですね。 暦日にあわせて月や地球の位置を計算するのはけっこうめんどくさいので、ここだけステラナビゲータでやってもいいですね。 褐色矮星の固有運動は太陽系脱出速度を大きく超えているので、よその星系から来たことになりますか。というか星系そのものか。こんなのがオールト雲をかき乱すと、何千年か後に彗星シャワーが地球を襲うかもしれませんね。そのためにも今回の危機を乗り切って技術文明を温存しないと。
野田篤司 軌道解析 2008年01月29日(火)20時50分20秒
>野田司令、どうですか。手持ちのソフトをちょっと手直しすれば。 意外と難しいものを、いとも簡単そうに・・・・ 「手持ちのソフト」で一番近いのは、以前、浅利さんの漫画版「おいら宇宙の探鉱夫」で「ハレー彗星捕獲」の軌道解析したときのものです。 ハレー彗星を動かすと言うと派手なような気がしますが、実際はハレー彗星の質量って、とても小さいので、他の惑星の運動には、ほとんど影響しません。ハレー彗星を含めて、全ての惑星は、ケプラーの法則通りに楕円運動するとして計算しました。いわゆる「特別摂動法」と言う方式です。 ところが、木星の20倍もの質量が太陽系内を通過するとなると、そうはいきません。 多体問題の場合、どうなるか全く予測がつきません。運動方程式を立てて、微分方程式を解いて軌道解析します。これを「一般摂動法」と言います。 しかし、この一般摂動は、なかなか難しく、ちゃんと安定した解析解が出てくるように調整するのが大変です。実際、我々の太陽系の惑星が安定した軌道を通っているのは、それぞれが共鳴というか、影響しあって、安定になっているのです。それを「一般摂動法」を再現するのも大変です。その上、木星の20倍の質量が通過した後、再び、8つの惑星が安定した軌道に戻るのか、解析するのも大変です。いや、本当のところ、木星の20倍の質量が通過した後、8つの惑星は安定した軌道に戻らないでしょう。 木星の20倍の質量が、地球の40万キロと言う近傍を通過、それも速度は太陽系外から入って来たと言うことは、秒速50km以上でしょうから、潮汐力の問題よりも、スイングバイのように地球を太陽系外に弾き飛ばす方が、よほど問題だと思います。 この辺、むしろ、私よりも牧野さんの方が専門だと思います。 (「特別摂動法」と「一般摂動法」をGoogleで検索したら、昔、野尻ボードで歌島さんが書き込んだ記事がヒットしました) ところで、山本さんが書いている軌道変換ですが、概略だけなら意外と簡単に計算できます。 まず、地球の公転速度は、約30km/sです。軌道傾斜角を0.3度以上傾けるなら、30km/s
×SIN(0.3度)=157m/sの増速量(ΔV)が必要です。 加速度が0.0000108m/s2なら、157÷(0.0000108×cos(23.5度))=15851783秒=183日です。約半年ですね。実際には、効率が悪くなるので、少し多めにかかります。 「北半球が夏の時期。南極上空、約40万kmを通過する」のであれば、逆の方向に軌道をずらせば良いのですね。 春分を中心に3ヶ月の間、南極に設置したロケットエンジンを噴射し、秋分を中心に3ヶ月間、今度は逆に北極に設置したロケットを噴射すれすれば良い訳です。まあ、余分にもう一回、春分を中心に2ヶ月間くらい、南極のロケットを噴けば、マージンも取れます。 これで、太陽と地球間の1億5千万kmを使って、1億5千万km×
SIN(0.3度)=78.5万kmずらす事ができると計算できます。 う~~ん、たった78.5万kmですかあ 焼け石に水ですね。プログラム作って解析するまでもなく、確実に地球は酷い軌道に吹き飛ばされていますね。 太陽系から脱出するか、ハレー彗星のように長楕円軌道になるのかは判りませんが、少なくとも人類が滅びるには十分でしょう。
蒲谷 ゴラスとジュピター 2008年01月29日(火)23時16分48秒
>10.褐色矮星通過後は、軌道を元に戻す。
ゴラスの劇中では北極にロケットをつけて反対側に押し戻すみたいなセリフがあったと記憶してるのですが、
夏に南極のロケットで北極方向に押されて、傾斜した地球軌道は
北
↑\
夏
\ 冬 ←地球軌道を太陽軌道面からみた図
\
冬に南極のロケットでもういちど押せば元に戻るという話もあります
北
\
夏 ─── 冬
\↑
一方、さよならジュピターの設定は福江先生へのインタビュー記事が詳しいです
シネマ天文楽入門 著者インタビュー 福江「質量が木星の数十倍という設定ですが、ブラックホールの質量は太陽の1/10から1/100ぐらいでしょうか。
となるとサイズ(半径)は、300mから30mの間になります。
太陽と同じ質量をもった天体が、太陽近傍をそこでの脱出速度と同じぐらいで運動していたときに、
その重力圏の大きさは太陽サイズと同じくらいになります。
したがって、ブラックホールの質量が太陽の1/10(1/100)だと、
その重力圏のサイズも太陽半径の1/10(1/100)ぐらいになります。
どうやらすっと入っていくわけにはいかなさそうですね。
おそらく太陽はぶっ壊れちゃうと思います。」
野尻抱介 RE:軌道解析 2008年01月30日(水)00時39分59秒
>野田司令 仕様としては、解析解を求めるんじゃなくて、以前公開していたような数値計算するだけのシミュレータでいいと思います。パラメータを変えて試せるようになっていれば。 で、確かにスイングバイで地球が吹っ飛ばされそうな感じですね。これが一番のネックになりそうです。 やるとしたら矮星の近日点通過前に地球が吹っ飛ばされて、近日点通過後にふたたび地球と矮星が出会うような初期状態を作る。このときにもらった速度を帳消しするような形にもっていけばいいんじゃないでしょうか。燃料漏れのあとののぞみの地球スイングバイみたいな感じで。 ただ、山本さんの設定では矮星の速度が非常に大きい(会合時の地球との相対速度は秒速300km程度。野田さんの想定とは違います)ので、ほとんどまっすぐな双曲線を描いて去ってしまいそうです。これを彗星なみに下げないと二度目のスイングバイはできないと思います。
まきの 軌道解析 2008年01月30日(水)02時07分12秒
こういう時にはとりあえず
太陽質量が1
重力定数が1
天文単位が1
1年が2π な単位系で考えるまきのです。
木星の質量は太陽質量の 1/1000 なので、その20倍ということは太陽質量の 2 パーセントです。で、40万キロは 0.0027 天文単位ですね。速度は
30km/s が単位になるので、大体 10 でくることになります。この時に地球が受ける加速度の最大値が 2700
くらい、速度変化は、大雑把には加速度と、最短距離くらいの長さを通過する時間の積ですから、2700*0.0027/10=0.7
となって地球の軌道速度くらいになって結構大変なことになります。で、距離が3倍になっても速度変化は 1/3 にしかならないので結構大変です。
与えられる加速度が 10^-5 m/s-2 なので、1年間で大体300m/s の速度になって軌道傾斜角 1/100
のオーダーくらいまでは与えられる計算ですが、矮星の軌道によっては公転速度の変化のほうが有用です。軌道傾斜角がそれなりにはあるので上の数字の数分の1程度は軌道速度を変化させることができ、これは公転周期を結局
0.1 パーセント以上変化させられるので、その変化を矮星がくる 10年とかそれ以上前に与えれば経度方向に1パーセント以上動かすことができるからです。
で、計算ですが、、、加速度を与えるタイミングを変えるとかするなら自分でプログラム書けば簡単ですが、、、3体問題とかを数値的に解くプログラムは ここ の8月分にあったりします。
あ、でもこれは積分項式が吉田6次シンプレクティックとかなので、外力をあたえるとかにはむかないですね。うーん。
林 譲治 2008年01月30日(水)08時05分08秒
|これを彗星なみに下げないと二度目のスイングバイはできないと思います。 褐色矮星が単独ではなく大小二つの褐色矮星の連星で、太陽を通過するときに小さい方が弾き飛ばされ、そいつが地球近傍を通過して帳尻を合わせるとか……。そう都合よくは行かないか。
山本弘 ありがとうございます 2008年01月30日(水)11時43分10秒
1日でこんなにレスがつくとは! 感激です。 >野田篤司さん >ところで、山本さんが書いている軌道変換ですが、概略だけなら意外と簡単に計算できます。 >まず、地球の公転速度は、約30km/sです。軌道傾斜角を0.3度以上傾けるなら、30km/s
×SIN(0.3度)=157m/sの増速量(ΔV)が必要です。 加速度が0.0000108m/s2なら、157÷(0.0000108×cos(23.5度))=15851783秒=183日です。約半年ですね。実際には、効率が悪くなるので、少し多めにかかります。 >「北半球が夏の時期。南極上空、約40万kmを通過する」のであれば、逆の方向に軌道をずらせば良いのですね。 >春分を中心に3ヶ月の間、南極に設置したロケットエンジンを噴射し、秋分を中心に3ヶ月間、今度は逆に北極に設置したロケットを噴射すれすれば良い訳です。まあ、余分にもう一回、春分を中心に2ヶ月間くらい、南極のロケットを噴けば、マージンも取れます。 あ、それは僕がやってみた概略計算とほぼ同じです。発想自体は正しかったみたいですね。 最初は潮汐力の影響しか考えてなかったんですが、よく考えると引力によって軌道が変わる影響の方が大きいんですよねえ……ライバーの『バケツ一杯の空気』みたいな事態になりかねない。このへんは褐色矮星の質量をずっと小さくするとか、加速する期間を長くするとか、設定を変えるしかなさそうです。 >蒲谷さん 『シネマ天文学入門』は未読でした。さっそく買ってきます。 >野尻抱介さん > ただ、山本さんの設定では矮星の速度が非常に大きい(会合時の地球との相対速度は秒速300km程度。野田さんの想定とは違います)ので、ほとんどまっすぐな双曲線を描いて去ってしまいそうです。これを彗星なみに下げないと二度目のスイングバイはできないと思います。 接近速度はあまり遅くしたくないのです。あまり太陽系に近すぎると、それまで発見されていなかったのが不自然になってしまいますので。なるべく太陽系から離れたところで発見させたいのです。 光速の1/1000程度だとしても、20年前に発見されるとして、ほんの0.02光年といったところですから、これでもけっこう苦しいんですが。 >まきのさん >与えられる加速度が
10^-5 m/s-2 なので、1年間で大体300m/s の速度になって軌道傾斜角 1/100
のオーダーくらいまでは与えられる計算ですが、矮星の軌道によっては公転速度の変化のほうが有用です。軌道傾斜角がそれなりにはあるので上の数字の数分の1程度は軌道速度を変化させることができ、これは公転周期を結局
0.1 パーセント以上変化させられるので、その変化を矮星がくる 10年とかそれ以上前に与えれば経度方向に1パーセント以上動かすことができるからです。
加速期間を長くして、公転速度を変える方も検討してみます。 実のところ、矮星の軌道面が黄道面に直交する形なのか、ほぼ平行する形なのかも、まだ決めていません。たとえば双曲線軌道が地球の円軌道に外接するような形だと、軌道上の位置が1%ほど変わっても、最接近時刻が3日半ほど前後にずれるぐらいで、あまり意味はなさそうです。 ただ、黄道面にほぼ平行である場合、太陽系に対する矮星の軌道を計算するのに、2次元で近似できるという大きなメリットがありまして(笑)。いや、冗談抜きで切実な問題なんですよ、これ。 >林 譲治さん >褐色矮星が単独ではなく大小二つの褐色矮星の連星で、太陽を通過するときに小さい方が弾き飛ばされ、そいつが地球近傍を通過して帳尻を合わせるとか……。そう都合よくは行かないか。 すみません。他の天体が地球にニアミスするということ自体、確率的にとてもありそうにないことなんで、それ以上の偶然に頼った設定はあまり入れたくないんです。 あと、本当に面倒そうであんまり考えたくないけど、考えなくちゃいけないのが……。 月の軌道がどうなるか、という問題です。 地球を小さい加速度で動かすだけなら、月もほぼ今の軌道のままくっついてくると思うんですが、褐色矮星が接近してきたら……4体問題ですよね、これ。 (一時期、月を動かして矮星にぶつけて軌道を変えるという案も考えたけど、質量差がありすぎてあまり意味ないですね。つーか、二番煎じだし)
野田篤司 位相方向の制御 2008年01月30日(水)20時17分18秒
>会合時の地球との相対速度は秒速300km程度。野田さんの想定とは違います あっ、すいません、間違えていました。 まきのさんの言う通り、公転周期変えた方が有利ですねえ。 同じ10^-5
m/s-2
の加速で計算しても以下のようになります。 例えば、ロケットエンジンを赤道上に置きます。 その場所の時間で、必ず、朝3時から9時まで噴きます。 朝は、地球の公転から言えば進行方向、つまりエンジンは逆噴射になります。 その結果、地球の公転速度が落ちて、軌道半径が小さくなり、公転周期が速くなります。 で、不思議な事に、逆噴射なのに、かえって速く進むようになります。この効果は、何と普通に加速する場合の3倍の感度を持ちます。(正確には
-3倍) 2年間、毎日、噴射を繰り返すと、cosロスを考慮しても、2700万キロも先行させる事ができます。 逆に、毎日、夕方15時から21時に噴くと、2700万キロ手前でかわす事ができます。 地軸の傾きを考慮すると、もう少し悪くなるかな・・ でも、面外制御よりは、ずっと効率が良いですね。 と言っても、2700万キロ離しても、褐色矮星通り過ぎた後は、地球の軌道はグチャグチャですよ、きっと。
野尻抱介 2008年01月31日(木)01時19分00秒
……いかん、このままでは山本さんの新作がアボートしそうだ(^^;。 『妖星ゴラス』のオマージュということですから、極軸方向への加速は温存したいんじゃないでしょうか。 赤道で日単位の周期で加速するとなると、地球の固有振動数を考慮しないといけないのでは。ダンピング・ファクターでしたっけ、相撲取りの腹を殴ってもぼよよんと振動するだけで効かなかった、みたいなことに。 それゆえ、季節単位で加速を続けるには極軸方向しかない、ということにできないでしょうか。 矮星の速度を落とす方法ですが、要するに近くへ来るまで観測にかからなければいいわけですね。矮星がカイパーベルトでひっかけた冥王星クラスの天体が先に飛んできて、火星に衝突するか木星の潮汐力で分解して、内惑星帯にでっかいダスト円盤ができたことにすれば。 やがてダストが太陽に落下して宇宙が晴れたところへ望遠鏡を向けてみると、妖星がそばまで来ていた、と……。 マキノ式速算法には舌を巻きました。これは保存版ですね。研究者や技術者に手計算させるといろいろ癖がでて面白い、というのが今回の流れでわかりました。 でもって先に10木星質量で核融合、と書きましたが、ゼロが一個足りませんでした。失敗失敗。 100木星質量に満たない矮星は、確か重水素だけが核融合するんでしたね。
林 譲治 2008年01月31日(木)07時56分20秒
そう言えば何年か前にスペースガードの人から、「地球は先進国が北半球に集中し、主要な天文施設も北半球にあるため、南半球の観測網が手薄」という問題があるという話を伺ったことが。なので技術的には十分観測可能だが、人間社会の都合で観測されるべきものが観測されなかったということは十分ありえるのでは。
平山寛 軌道傾斜 2008年01月31日(木)09時30分59秒
赤道上加速で地球の周方向に逃げるほうが、同じΔVで距離は稼ぎやすいのは、皆様の議論に出ているとおり。 >
『妖星ゴラス』のオマージュということですから、極軸方向への加速は温存したいんじゃないでしょうか。 これを活かすため、計算したわけじゃなく、定性的な案ですが、 「周方向へ逃げた場合、矮星によるスイングバイは公道面内に働き、地球の公転軌道が楕円になり、気候が滅茶苦茶になる。最接近距離は短くとも南北に逃げ、スイングバイによる地球の軌道変化が、なるべく半径と離心率を変えず、傾斜角のみに働くようにする。」 という解は無いでしょうか。 その後の世界で、地球が太陽系を縦に回るというのも、面白い後日談が描けるかも。
まきの 観測可能性 2008年01月31日(木)20時21分36秒
発見できるかどうかをちょっと考えてみました。1000AU(天文単位)
とかの距離だと太陽光の反射ではたいして明るくならないので、自分で出す赤外線を受けることになります。ガス惑星や褐色矮星の進化は Burrows et al
(1997, ApJ 491, 856), A nongray theory of extrasolar giant planets and brown
dwarfs の図 7, 9 あたりにでていて、0.02 太陽質量だと100億年たって明るさが太陽の大体 10
-7 、有効温度が 400K
といったところです。
絶対等級が 22 等くらいなので、1パーセクなら17等、 0.1 パーセクなら
12等となって、中間赤外での全天サーベイをやれば必ずうかります。木星質量くらいだと
2桁くらい暗くなった上に有効温度も下がるのでかなり発見は難しくなると思います。
ところで、 >マキノ式 というわけではなくて、理論屋が惑星系とか恒星系を扱う時には必ずこんな感じの、系にあった単位系で考えます。重力定数は常に1で、太陽系でも星団でも銀河でも「質量は1」なわけです。
さのたかひさ 南米の天文台 2008年02月01日(金)06時27分32秒 URL: http://www.lo-re-con.com/
>南半球の観測網が手薄 昨年、国立天文台野辺山の特別公開に行った時に、南米ペルーの望遠鏡が資金不足で危機だと訴えるブースがありました。 http://www.peru32m-telescope.net/ 既に施設はあるんだから、これを利用したいと願って現地で活動をしている日本人がいらっしゃいます。
山本弘 2008年02月01日(金)17時08分42秒
URL: http://homepage3.nifty.com/hirorin/
>野田篤司さん >例えば、ロケットエンジンを赤道上に置きます。 >その場所の時間で、必ず、朝3時から9時まで噴きます。 それができればいいんですが、設定上、できないんです。加速方向は地軸に平行な方向のみです。 >野尻抱介さん > 矮星の速度を落とす方法ですが、要するに近くへ来るまで観測にかからなければいいわけですね。矮星がカイパーベルトでひっかけた冥王星クラスの天体が先に飛んできて、火星に衝突するか木星の潮汐力で分解して、内惑星帯にでっかいダスト円盤ができたことにすれば。 褐色矮星自体が独自のオールト雲を持っていて、彗星が先行して太陽系に突入してくる……というアイデアを考えましたが、まだ使うかどうか決めていません。 彗星と言っても、宇宙の初期に誕生した第一世代の星だと、重元素はほとんど含んでいないでしょうから、水じゃなくほとんど液体水素のみからできてるんじゃないかと思います。 >平山寛さん >「周方向へ逃げた場合、矮星によるスイングバイは公道面内に働き、地球の公転軌道が楕円になり、気候が滅茶苦茶になる。最接近距離は短くとも南北に逃げ、スイングバイによる地球の軌道変化が、なるべく半径と離心率を変えず、傾斜角のみに働くようにする。」 >という解は無いでしょうか。 確かに、矮星の引力による加速が地球の軌道面にほぼ垂直方向にのみ働くなら、軌道傾斜角が変わるだけで、公転速度や離心率はあまり変わらないということはありそうですね。そういう解があればいいのですが…… その場合、公転速度や離心率の変化を最小限にするには、地球を追い抜く(またはすれ違う)形ではなく、軌道が直交に近い形で交差する設定にした方がいいのかな、と思います。 たとえば公転速度を速くして逃げようとした場合、通過時に後ろからひっぱられることによって減速し、極方向に逃げる場合より離心率が大きくなってしまう……ということもあるんじゃないでしょうか? >まきのさん >発見できるかどうかをちょっと考えてみました。1000AU(天文単位)
とかの距離だと太陽光の反射ではたいして明るくならないので、自分で出す赤外線を受けることになります。ガス惑星や褐色矮星の進化は Burrows et al
(1997, ApJ 491, 856), A nongray theory of extrasolar giant planets and brown
dwarfs の図 7, 9 あたりにでていて、0.02 太陽質量だと100億年たって明るさが太陽の大体 10-7、有効温度が 400K
といったところです。 うわ、思ったより明るいですね。これはやっぱり質量を小さくするしかなさそうですね。
三浦敏孝 横から見ると 2008年02月02日(土)17時19分22秒
地軸方向でも春分点・秋分点で吹くんだったら加速度のうち地軸の傾きのsin成分=0.39ぐらいを乗じた分は公転周期の変化に効きますよね。
K_O_ どんぶり勘定 2008年02月02日(土)23時35分05秒
原子捕獲屋崩れの超短パルスレーザー屋、K_O_と申します。 野田指令のいう共鳴解の成立は百万年オーダーの太陽系の安定性の話になると思うのですが、山本弘さんの地球を動かす話ではきっとそんな長期間の安定性は気にしないのだと思います(地球を動かすレベルのテクノロジーを持った人類が太陽系を百万年も放置しておくとは思えませんし)。 というわけで、10年くらいの予想なら、正確にやるとしても太陽と褐色矮星と地球の3体問題を普通に数値積分してやればいいのではないかと。いっそのこと褐色矮星-地球の相互作用は一瞬にして起こると近似して2体散乱問題として解いて、散乱結果を太陽中心の重力ポテンシャル問題の解析解に当てはめればいいのではと。 で、野田指令の、 >プログラム作って解析するまでもなく、確実に地球は酷い軌道に吹き飛ばされていますね。 というのはどうなんだろう?と思いました。 というわけで、山本弘さんのシナリオでの地球の軌道変化についてちょっとしたオーダー評価をしてみました。 計算に使用する定数は 1.
地球軌道半径=0.5k光秒=1.5億km 2. 地球の公転周期=3000万秒 3. 褐色矮星質量/太陽質量=(20倍x木星質量)/太陽質量=20 x
1.9e27kg / 2.0e30kg =
1/50 の3つだけです。 評価内容は、静止した地球から40万km離れたところを褐色矮星が300km/sで通過した場合地球が獲得する速度はどのくらいか?
です。 計算の前提となるのは、 1.
褐色矮星と地球の相互作用時間は地球の公転周期より十分小さく、地球はただ直進してるとして、座標変換により2体散乱問題として扱える。 2.
相互作用の間、地球が褐色矮星との相互作用により運動する距離は40万kmに比べて無視できる。 逆2乗則による地球のΔvを、加速度を矩形近似して評価してみます。 矩形の高さはピーク値で評価し、幅は加速度の絶対値がピーク値の半分以上ある期間、として評価してみましょう。 加速度のピーク値を計算するには、太陽の引力による地球の加速度を計算してその何倍になるかで評価するのが簡単でしょう。 というわけで太陽の引力による地球の加速度a1=1.5億km/((地球が1
radian公転する時間)^2)=7mm/s^2。 欲しいのは太陽の1/50の質量の物体が40万kmにある時の加速度ですから、1.5億km/40万km=4e2として、a1
x 4e2 x 4e2 / 50 = 2e1m/s^2。 加速度の絶対値がピーク値の半分の期間、というのは距離が40万km x
sqrt(2)になってから最接近してまた40万km x sqrt(2)になるまで、です。よって最接近点の前後40万kmを運動する期間、と考えられます。40万km
x 2 / 300km/s = 3e3秒。 というわけで、地球が獲得する速度=6e4m/s=公転速度の2倍
となりました。まぁ地球が太陽系内に残ることはありえない値と言えます。 計算前提をチェックしましょう。 1は、太陽と褐色矮星の引力が同じ程度になる期間の長さと地球が1
radian公転する時間を比べればよくて、それは、地球軌道半径(1.5億km) x sqrt(褐色矮星の質量/太陽質量) /
300km=7万秒と500万秒ですからまぁ成立してると思っていいでしょう。 2は、大雑把に今しがた計算した獲得速度と相互作用時間の積の半分として、6e4m/s
x 3e3 / 2 =
9万km。40万kmに比べて無視できるかどうかは怪しいところです。 で、最近接距離を3倍にしたらどうなるか? 矩形近似のピーク値は1/(3
x 3) =
1/9になりますが、幅は3倍になって、トータルの獲得速度は1/3にしかなりません。公転速度の7割。計算前提の2は多分成立するのではないかと思います。うまく調整すれば地球公転軌道面の大幅変化だけで済むかも知れませんが、悪ければハビタブルゾーンから外れる、普通に考えるとほとんどの種が絶滅するような大幅な気象変化になるでしょう。 他の被害ですが...... Δv=60km/sな話は論外として最接近距離120万kmの場合を考えても、潮汐力は太陽のそれの4万倍...... 潮位が単純に潮汐力に比例するかどうかはわかりませんが、大変ろくでもないことにはなりそうです。 あと、月はどうなるか? 月の公転速度って1km/s程度しか無い訳ですが、月と地球は38万km離れてる訳です。褐色矮星の影響で獲得する速度ベクトルがどのくらい違うかと言えば大雑把には地球のΔv
20km/s x (38万km/120万km) =
6km/s...... というわけで、地球を公転軌道面の大幅変化だけで済ませたいなら月は諦めるしか無いと思われます。 最接近が数十年先なら、もっと長い期間噴射してもっと軌道面を傾けるのが適切ではないかと思われます。まぁ、自転軸と公転面の間の傾斜を今と同じになるようにしとかないと気候はひどいことになりますが...... というわけで野田指令は正しかったのでした。 本職の方に限らず突っ込みをよろしくお願いします。
K_O_ 2008年02月03日(日)00時03分00秒
うげ、しまった。 ブラウザキャッシュに残ったの相手にこんな長文を書いてしまったが皆さんさくっと回答されてるではないですか。 地球の軌道傾斜角を変えるのだと継続しても加速期間に対して線形にしか距離は取れませんが、まきのさん案の公転周期を変えるやつだと移動距離は2乗で変化するので数十年加速すれば十分な距離が取れそうです。 赤道噴射は無理?いえいえ、sin(23.5°)は0.4も有るのです。野田指令の計算から結果を流用して20年間噴射することにすれば、1億kmの距離を確保することだって夢じゃないと考えます。
平山寛 影響圏で考えると 2008年02月03日(日)00時28分23秒
質量比が 地球:矮星:太陽=1:6356:332918 なので、 矮星が地球軌道を横切るころの、矮星の影響圏の大きさは、 1AU×(6356/332918)2/5 ≒0.2AU
(3000万km) 最接近距離をこのていど離せれば、影響は十分小さくなるでしょう。 地球の軌道傾斜角を12度くらいにできれば、黄道面から最大0.2AU離れます。
三原 広 2008年02月03日(日)08時57分44秒
>山本弘さん こんにちは。 >> それができればいいんですが、設定上、できないんです。 >>加速方向は地軸に平行な方向のみです。 それでは、地軸に平行に加速をかけ(ただし推力線を軸からずらして)、地 軸自体を転倒させて、公転面と平行な状態にしてから公転速度を上げてはい かがでしょうか。
山本弘 パラメータを変えてみます 2008年02月03日(日)15時48分13秒
>K_O_さん >というわけで、地球が獲得する速度=6e4m/s=公転速度の2倍
となりました。まぁ地球が太陽系内に残ることはありえない値と言えます。 僕もざっと計算してみました。最接近時の距離をL、矮星がLの距離を移動するのにかかる時間をS、距離Lにおける矮星の引力による加速度をAとすると、地球の軌道速度の変化はおよそ3SAになると分かりました。 距離40万kmで質量が地球の6000倍の場合、約58km/sの速度変化になります。K_O_さんの計算とほぼ一致しますね。 距離を10倍に広げても、速度変化は1/10にしかなりません。太陽系から放り出されることはないにしても、やはり地球環境への影響はかなり大ですね。 >平山寛さん >1AU×(6356/332918)2/5≒0.2AU
(3000万km) >最接近距離をこのていど離せれば、影響は十分小さくなるでしょう。 3000万km移動させるのは設定上、かなり難しいので、矮星の質量の方を小さくしてみます。 考えてみりゃ、別に褐色矮星にこだわる必要はないわけですよね。ちょっと大きめの木星型惑星でも充分かもしれません。それなら発見できなかったことの説明もつきますし。 ただ、あまり天体の方を小さくすると、今度は「地球を動かすより天体を爆破した方が簡単なんじゃないの?」というツッコミが入るので(^^;)、あんまり小さくもできないってところがジレンマです。 >三原広さん >それでは、地軸に平行に加速をかけ(ただし推力線を軸からずらして)、地 軸自体を転倒させて、公転面と平行な状態にしてから公転速度を上げてはい かがでしょうか。 どうでしょう? ジャイロ効果があるから地軸を転倒させるのは難しいように思います。それに、地球環境への影響が計り知れません。
(地球へのダメージを最小限に、というのが目標ですので)
野尻抱介 2008年02月04日(月)21時41分52秒
ふー。かれこれ三か月くらい呻吟していた短編の一稿が上がったので浮上します。やっとエレピとJamバンドがいじれる(^^)。 >褐色矮星 やれやれ、1パーセク離れて観測にかかるんじゃ太陽系内に煙幕張る前からバレバレですね。CCDを発明した奴が恨めしい。 恒星間を渡ってくる存在の、発見から到着までが長いのはSF作家の悩みの種です。早川のお堅いSFでも主人公の存命中、ライトノベルなら高校卒業前に到着してくれないと困るわけで。相手が高速だとフライバイになってしまうし、主人公を不老にすると社会や価値観が激変するのでテーマがぶれてくる。 誰か土星軌道あたりに直径5AUくらいの暗幕を張ってくれないかなあ。恒星に対して静止したやつを。 南半球に天文台が少なくても、ハワイの天文台だけで南天がかなり見えてしまう。都合良く天の南極付近から異星人が攻めてくるなんていかにもわざとらしくて、たいていこのへんで投げ出したくなります。『降伏の儀式』みたいな侵略物がもっと読みたいんですけど。
M3 矮星の惑星ではどうでしょうか? 2008年02月04日(月)23時37分29秒
大きな惑星を持つ矮星が通過することにして、矮星そのものは遠く~数AU~を通過するけれども、惑星が地球を掠めるということにすると、軌道の擾乱を小さくできるように思います。 惑星を持つ星はそれほど珍しいことでは無いようですし、矮星は早期に発見されても、惑星の存在認識・軌道確定までに時間がかかるという言い訳も立ちそうです。
山本弘 設定変えました 2008年02月08日(金)09時38分51秒
みなさま、ご意見ありがとうございます。 とりあえず褐色矮星ではなく木星の2倍ぐらい(地球の620倍ぐらい)の質量の惑星ということで設定を考え直しています。 これだと「反物質を大量に投下して爆発で軌道を変える」という対案も出てきそうですが、「太陽系に接近するずっと前に実行しなくてはならないので時間的余裕が短い」「飛び散った大量の金属水素が地球にぶつかるかもしれない」などの説明で却下できると思います。
榎田 オールトの雲に対する散乱の影響は? 2008年02月08日(金)17時44分24秒
褐色矮星の通過経路近傍にある物質も同様の散乱を受けるわけです。 位置関係によって各様の軌道を取りうるわけで、オールトの雲の密度にも よりますが、太陽系内を、彗星なりカロンクラスのものが掃射することも ありえるわけです。 また、スイングバイ加速の程度によっては、矮星自身よりも早く落とし物が 到達することにもなります。あまり速いと地球軌道近傍まで落ちられないかも しれませんが。 EKBO天体の軌道を見ると、黄道面だけにあるとも思えませんから少々軌道傾斜 をいじっても逃れられない可能性が高そうに思えます #ツングースも、前の推定より小さい隕石である可能性も示唆されました。
LH2 ロケットで地球は動かせる? 2008年02月11日(月)00時26分25秒
山本弘さんと皆さんのお話、なかなか興味深いです。 確かに極にロケットを設置しても23.4degの傾きがあれば軌道半径も変えられるかも知れませんね。これは思いつきませんでした。 ところで、「妖星ゴラス」のことを知って以前から少し疑問に思っていることがあるのですが、そもそも地球上にロケットエンジンを設置して、それを噴射させることで、有効な推力ははたして発生するんでしょうか? 通常のロケットと違い地球には重力があるので、ロケットの有効排気速度から地球の脱出速度を引いた速度でガスが地球から離れていく、ということになるのではないでしょうか? もしそうなら、有効排気速度が11200m/s、つまり比推力1141sでやっと推力0というわけで、単純にロケットとして考えた場合よりも全力積が大きく必要になることになりますね。 (あの原子力ロケットNervaでも比推力800sで全然足りません。核融合といっても地上で核パルス推進はさすがにまずいですし、地球上なので真空が必要なミラー型も難しそうですね。気体炉心型原子力ロケットとかが選ばれそうな気がします。)
ki >ロケットで地球は動かせる? 2008年02月11日(月)14時51分28秒
URL: http://ken-ishi.at.webry.info/
LH2
様 確かに、運動量保存則と重力の法則が正しければ、化学ロケットあたりでは有効な推力は発生しそうにありませんね。 まあ、10^-5m/秒^2程度の加速度にせよ、地球(約6x10^24kg)動かすのなら、推力で6x10^-19N、 仮に第二宇宙速度差っ引いた正味の有効排気速度が10^4m/秒あったとしても、 質量流量にして、6x10^-15kg/秒、毎秒6兆トン供給しなけりゃならない勘定のはずですから、 エネルギー源の燃料や推進剤の確保は考慮の外におくとしても、気体炉心型原子力ロケットなんぞにした日には、地球大気圏の放射能汚染は一寸想像を絶するものがありますね。 ところで大したことじゃありませんが、このとき月はどうするんでしょう?? 。 まあ軌道に偏差は生じるかもしれないけど、地球の重力に引かれてついてくるのかな? ?
野尻抱介 2008年02月11日(月)16時43分20秒
>ロケットで地球は動かせる? これは盲点でしたね。宇宙船地球号は結構な引力があるんだ。月も地球の支配下にありますから、両方連れて動かすことになります。もっとも、月の質量は地球の1%少々にすぎませんけど。 いくら妖星ゴラスのオマージュでも、大気圏内でロケットエンジンを噴射するなんてことはしないと思いますけど、噴射速度には要注意ですね。電気推進か、光圧推進か、テザーを使うなどして脱出速度のほうを下げるか。
LH2 軌道計算ソフトならありますよ。 2008年02月13日(水)00時42分44秒
URL: http://www.geocities.jp/space_launches/
忘れていましたが、山本さんが探しておられるようなソフトを持っていました。 http://www.orbitsimulator.com/gravity/articles/what.html からダウンロードできるフリーソフト「Gravity
Simulator」です。 http://www.orbitsimulator.com/gravity/articles/download.html これの、おまけツール「The
Origin of Sedna's
Orbit」 http://www.orbitsimulator.com/gravity/articles/sedna.html はSednaは褐色矮星が連れてきた衛星ではないか?という疑問に答えるツールなのですが、これならぴったりではないでしょうか? (山本さんにはメールでもお伝えしましたが、届かないこともあるということなのでこちらにも掲載させていただきました。) このなかで特に面白いのが、Moonbuilderです。 http://www.orbitsimulator.com/gravity/articles/moonbuilder.html 100個の岩から次第に月ができていきます。Create
Objectでいくらでも新天体を増やせるので、逆回転の円盤があるときや、すでに月があるときのシミュレーションも出来て大変面白いです。
山本弘 『妖星ゴラス』の基本設定 2008年02月15日(金)12時41分15秒
L2さん、ありがとうございます。メールはちゃんと届きました。 『妖星ゴラス』の設定では、南極に設置されるのは重水素と三重水素の核融合を利用したロケットです。理想的な条件なら噴射速度は26000km/sぐらいになるはずなんで、脱出速度についてはほとんど考慮する必要はないと思います。 ちなみに総推力は「660億メガトン」、加速度は「1.10×10のマイナス6乗G」、噴射口の総面積は「600平方キロ」という数字が劇中に出てきます。 ただ、柳田理科雄氏も指摘しているように、これだと1平方mあたり1.1億トンの圧力がかかることになって、南極が陥没しちゃうんですよねー(^^;)。 あと、地球は剛体じゃないから、たとえ100万分の1Gでも変形したりしないのかとか、そんな膨大な熱量を大気圏内で解放したら地球の気候がめちゃくちゃになるだろとか、中性子は出ないのとか、ツッコミどころは山ほどあります。 とりあえず、ロケットで地球を移動させるのは無理! と最初から分かってるんで、ぜんぜん別の方法を考えています。 あと、ゴラスは恒星としての寿命を終えた「黒色矮星」だと説明されています。これは設定ミスじゃなく、当時はまだロッキャーの収縮説が信じられていたからでしょうね。
ki >『妖星ゴラス』の基本設定 2008年02月16日(土)08時42分42秒
URL: http://ken-ishi.at.webry.info/
山本 様 劇中の『妖星ゴラス』の基本設定に突っ込んでもしょうがない(そんなんなら、妖星ゴラスそのものにお前が突っ込め、と言われそう)ですが、 660億メガトンの総推力で、1.10×10^-6Gの加速度は、一桁少ないんじゃないかと... それとも、地球の質量(約60億メガメガトン)が一桁増えたのかな? 加速度は1マイクロGとしても、地球の直径は12000km(12メガメートル)ありますから、 10mの水柱で1気圧の圧力として、北極側では1.2気圧の水圧となる勘定のはずで、 地殻の変形を無視すれば、北極の海面が6m低下し、南極のそれが6m上昇するはず、 でいいのかな?
野尻抱介 2008年02月17日(日)13時58分22秒
>妖星ゴラス
噴射速度がおよそ1/10光速ってことは、核融合反応で推進剤を加熱するのではなく、核爆発そのものを噴射に使うんですね。重水素と三重水素、足りるかなあ? 三重水素は海水からリチウムを抽出して原子炉で転換するんでしょうけど、その設備も相当なものになりそうですね。
でも、よく練られた設定だと思います。
Wikipedia によると、東大理工学部が協力したんですね。
大気への影響については、ある高さまで『物体O』みたいな壁を作れば、案外軽微かも、と思ったりします。他の問題に較べれば、ですけど。なんにしても大気を巻き上げるようじゃ有効な噴射速度が出せないでしょうし。高度30kmくらいあればいいのかな?
#どうでもいいけど、うちの近所に「三重酸素」という会社があって、看板を見るたびにどきっとしてしまう(^^;。横浜から引っ越した当初はなかなか「みえさんそ」と読めなくて。
平山寛 2008年02月17日(日)23時48分02秒
URL: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88:%E5%A6%96%E6%98%9F%E3%82%B4%E3%83%A9%E3%82%B9
妖星ゴラス>Wikipediaによると、東大理工学部が協力したんですね。 この掲示板で「妖星ゴラス」の話題がでたときWikipediaで調べ、気になったのでそこの「ノート」欄にも書き込んだのですが、(1月31日) 東大に「理工学部」はなかったはずなので、「理工学研究所」(「航空研究所」が戦後の一時期そういう名前だった。後の宇宙科学研究所。)の誤りではないかと思うのです。ただ、妖星ゴラスのほうのいきさつを詳しく知らないので、確証が得られず、本文を修正するよりもノートに書き込んだ次第です。 どなたか、分かりませんか?
かも
ひろやす 東京大学理工学部 2008年02月18日(月)04時07分34秒
推理小説だと、わざと「東京大学理工学部」を出して、まわりくどい「これはフィックションです。登場の団体は実在しません」宣言にかえることがあるのですが、これは、それとは違うようですね。
ちなみに、「妖星ゴラス」公開当時、理工学部をもつ国立大学は全国でも一つしかありませんでした。現在でも三つだけです。