今朝の新聞を見て腹が立ったニュース。
http://www.sankei-kansai.com/01_syakai/sya042801.htm
>硫化水素自殺 大阪で相次ぐ
> 27日正午ごろ、大阪市東淀川区南江口の市営住宅1階の無職男性(38)方で、浴室で男性が倒れているのを帰宅した長女(10)が見つけた。男性は病院に搬送されたが間もなく死亡した。
> 同日午後1時45分ごろには、大阪府和泉市箕形町のマンション3階の私立大学4回生の女性(21)方で、マンション管理人の女性から「異臭がする」と119番通報があった。女性がトイレ内で女性が倒れているのが見つかり、搬送されたが死亡が確認された。
> いずれの現場でも硫化水素の反応があり、搬送時には付近の住民ら計約100人が避難した。大阪府警は、2人が硫化水素を発生させて自殺したとみて調べている。
>(2008/04/28 12:23)
日曜の正午、おそらくは朝からどこかに遊びに行っていた女の子が帰宅したら、浴室で父親が硫化水素自殺していたというのである。
この男は帰宅した娘が硫化水素を吸ってしまう可能性をまったく考慮していなかったのだろうか。
それ以前に、「家に帰ったら父親が自殺していた」というシチュエーションが、10歳の子供にどんなトラウマを与えるか、想像はしなかったのだろうか。
連日のように報じられる硫化水素自殺。4月だけで50件を超えたのだそうだ。
巻き添えで救急隊員や近所の人まで被害を受けているというニュースを見ているはずなのに、それでもやってしまう奴が跡を絶たない。
そもそもなぜ硫化水素なのか? 手間という点では、飛び降りや列車への飛びこみや首吊りの方が、はるかに簡単なはずではないか。硫化水素自殺が特に楽なわけでも、美しいわけでもない。
無論、飛び降りとかも迷惑は迷惑なのだが、少なくとも硫化水素ほどではあるまい。なぜこいつら、飛び降りずに硫化水素を選ぶんだ?
理由なんかない。単なる流行である。
こいつら、流行に踊らされている。
僕は自殺志願者がこんなに多いことよりも、「他人の迷惑を考えない奴」「自分の死という重大な問題なのに、流行に乗って安易な選択をする奴」がこんなに多いことに驚いている。
あんたらにとって、自分の人生ってその程度のもんだったの?
70年代、コインロッカーに子供を置き去りにするという事件が続発したことがあった。コインロッカーは決して子供の捨て場所として適しているわけではないのに。
最初に誰かがやった。それが新聞でセンセーショナルに報じられた。すると模倣する奴が続出した。
あれもブームだ。
どうも世の中には、どんな非人道的なことや不合理なことでも、誰かがやっているのを見たら「自分もやっていいんだ」と思ってしまう人間が、少なからずいるらしい。
ちょっと前、apjさんとこのブログで、「ゲームの悪影響」を主張する風潮に対して、こういう冗談を書いたのだが、
http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/blog/index.php?logid=8568
>■ニュース禁止
>・無差別殺人事件が報じられると、それを模倣する奴が現われる。マンガやゲームがバーチャルな体験なのに対し、現実の出来事であるだけに影響力も大きい。
>・オレオレ詐欺などの、新しい犯罪の手口を教えている。
>・テロや大災害など、多くの死傷者を出した事件の報道は、児童に深いトラウマを植えつける。
>・政治家のスキャンダルに関するニュースは、国民に政治不信を植えつける。
>・新聞やテレビのニュースがなかった時代は、爆弾テロもオレオレ詐欺もなかった。ニュースのせいで悪質な犯罪が増えたのである。
>・世界には報道の自由のない国も多い。報道規制は世界の趨勢である。日本も見習わなくてはならない。
もちろん現実問題としてニュースを禁止するなんてできるわけないのだが、ゲームやマンガの影響なんか比べものにならないほど、ニュースが犯罪を誘発していることは間違いない。
やっぱり、
「ニュースに踊らされるな」
「もっとよく考えろ」
と地道に訴えるしかないのかなあ。
飛び降りや、電車への飛び込みも、もちろん、めいわくであるし、ガス自殺(最近は、一酸化炭素が入っていないと宣伝しているから、する人はほとんどいないが。)のように、爆発被害をもたらす訳でもないけれど、それでも、周囲は、避難騒ぎやら、営業停止やらで、大騒ぎになること、必死。(じゃない、必至)
思うに、飛び降りや、飛び込みは、かなりの決断が必要なのに比べて、H2S は、簡単すぎるんでしょうね。
影響の一つかもしれませんが、私が担当する「化学」の講義で、毎回課す小レポートで、
「人体を構成する元素として、知っている物を書きなさい。」という小レポートに、
他の元素に加えて、 H2S と書いてきたやつが居た。
もちろん、「元素」じゃないから、不正解なんだけど、それにしても、H2Oや、C2H5OH なんて、間違いなら、笑ってすませるけど、 H2S は、ちょっっと、、、、驚きました。
H2Sが人体に含まれるのであれば自分の分泌物で自宅で硫黄温泉ができないかなあ(←あほ)。
昔「自殺マニュアル」という本が発行された時に著者は「自殺する自由と権利を確保するために」という感じの論を張っていましたが、この時にはこれに気持ちでは反対でも、反論する持論をもてませんでした。
しかし、今ならはっきりとこれに反論したいです。
そして、この行き着く先がネットで簡単にまるで「小学五年生の科学」なみに図解入りで「硫化水素自殺の方法」が検索できること。
http://jisatsu.yi.org/
これを見たら、首吊りとか、轢死とか、飛び降りのような「他人にはそれほど迷惑をかけないけれどもかなりの度胸と苦痛を伴う」方法を考えた時に起きる躊躇とそれに伴う精神の葛藤などとは無関係な世界ですねえ。
実のところ、ちょっと調べれば硫化水素よりマシな方法はいくらでもあるというのに。
したことがあり、その結果、若い世代の自殺が減少したそうです。
ニュース規制は確実に効果、あるのですね。
そうか! という思いと共に、流行ってないと自殺も出来ないのか
今の若いのは、という思いも……。
いや、硫化水素もそこそこ面倒だと思いますけどね。材料買ってきたり、浴室に目張りしたり。
単に「目新しさ」が受けてるだけなんじゃないかって気がします。
『「環境問題のウソ」のウソ』でも書いたけど、はた迷惑な自殺方法を選ぶ人間って多いんですよ。
総務省の発表によれば、平成18年度(1~9月)の火災による死者1552人のうち、
放火自殺 466人 30.0%
放火自殺巻添 14人 0.9%
なんと、自殺のために放火した人が9か月間に400人以上もいるんです。月平均約50人!
しかも14人がその巻添えになって死んでる!
www.bousaihaku.com/bousai_img/kasaigaiyou/B310_014.pdf
つまり、硫化水素自殺は確かに最近になって急増してるけど、はた迷惑な自殺方法を選ぶ奴や、その巻添えになって無関係な人が死ぬ事件は、以前から頻繁に起きていたのです。
新聞は硫化水素ばかり騒ぎ立てるけど、今年も放火自殺している人はたぶんすでに何十人もいるはず。おそらく硫化水素で死んでる人より多いですよ。ただ、新聞が大きく取り上げないから、目立たないってだけでしょう。
結論:硫化水素自殺だけ阻止したって意味がない。
仮に入浴剤を販売禁止にしても、別の自殺方法が選ばれるだけです。自殺そのものを思いとどまらせるか、さもなきゃ「はた迷惑な死に方を選ぶな」と徹底するしかありません。