山本弘 |
レビュー |
小説に無知な読者なら「そうだったのか!」「目からウロコが落ちた!」などと感心するかもしれないが、プロの作家として言わせてもらうなら、全編間違いだらけ! 七転八倒の悪書である。
タイトルからしてウソである。前にも書いたことがあるが、どこの新人賞も競争率は数百倍である。つまり数百人に1人しかデビューできないし、デビューしても1作だけで終わることも多い。小説家というのは東大よりも狭き門なのだ。
「東大なんて誰でも入れます」「才能なんて要りません」と豪語したら、頭を疑われるだろう。それと同じだ。
内容も間違いだらけだ。以下、特に問題のある主張をピックアップする。
・オリジナリティは重要ではない。オリジナリティあふれる良作を書く作家は、一作で消える可能性が高い。(オリジナリティがあってなおかつ生き残っている作家なんていくらでもいる)
・売れている小説にはオリジナリティなどはなく、あるのは「専門知識」である。(反例多数)
・ネットとかで拾った知識を元に小説を書けば、審査員を騙せて、新人賞なんか取るのは簡単だ。(著者は「参考資料」という概念すら根本的に理解していない。第一、審査員はそんなバカではない)
・自分の好きなものを書いてはいけない。「市場の要請」に従わないと小説家は生き残っていけない。(実際には、1万人も読者がいれば、十分に食っていける。つまり日本人全員を相手に商売する必要はない。1万人に1人にアピールできればいい)
・読者は、最初の5ページから10ページでおもしろくないと思ったら読むのをやめる。言いかえれば、「竜頭蛇尾はOK!」である。(竜頭蛇尾な小説なんか書いたら、一発で読者に見捨てられるぞー)
中でも、小説好きな人間なら激怒するくだりがここ。
>「対象読者を『虫』に設定する」(87ページ)
ジョークではない。著者は本気だ。
> しかし、読者対象を「虫」「小学生」に設定すれば、「虫が読むんだから、もっとわかりやすくしないとダメだな」とか「小学生はこんなこともわからないよな」と、書き手はわかりやすくわかりやすく書こうとします。
> それが、良い効果を生むのです。(88ページ)
生まねーっ!!
そうですか、若桜木(霧島)氏の小説は虫向けに書かれていたのですか。
確かに分かりやすく書くことは大切だが、だからといって読者を「虫」などと見下すことが許されるわけがないだろう。
要するにこの人、「本をいかに売るか」しか考えてなくて、いい小説を書こうという意志がまったくないのだ。 よくぞここまで読者をバカにした文章を書いて、平然と公にできるもんである。
この『すべてのオタクは小説家になれる!』という本を読んで感心しているあなた、気がついてますか? 「虫」と見下されているのは、他ならぬあなたなのですよ?
いちばん笑えるのが第4章。題して、「小説家になるための「弟子入り」大作戦!」。
プロの作家(または業界人)に弟子入りしろというのである。しかもカルチャースクールに通うとかいうんじゃなくて、自分で師匠を探して弟子になれと。
……あのー、僕、現代の作家で、誰かの弟子からデビューしたなんて人は一人も知らないのですが? 「作家に弟子入り」って、いつの時代のセンスですか。そりゃ昭和の時代にはよくあったかもしれないけど、今は21世紀ですよ。
若桜木氏自身は実際に何人も弟子を持っており、常に弟子を探しているという。それで他の作家もみんなそうだと思ってるのだろう。
冗談じゃない。この本を本気にして、「弟子にしてください!」とか言ってくる奴がいたら、全力でお断りさせていただく。 |
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異星Z(改) |
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今日向かった『本厚木』の本屋さんで見かけた本。
興味ある方はどうぞ。 |
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なかちん |
レビュー |
「小説を書く方法」ではなく「売れる(これ重要)プロ小説家になる方法」の本。
文章を書く以前の問題である、何を書くか、誰に書くか、どうモチベーションを維持するか、どんな技術が必要か、そういった内容が濃~く書き綴ってあります。
どの内容も非常に具体的で説得力があり、読むだけでやる気がわき出す本です。
「オリジナリティーは重要じゃない」「エア小説家では作家になれない」「小説は筋肉で書くもの」などの金言がちりばめられています。
ただし。この本は読み物として面白すぎる。ああ面白かったと読み終えて、それで終わってしまう可能性があります。
もちろん本は面白くなければ読まれないし、本気で小説家になりたい人以外読んじゃダメ!って事でもないので、これはこれでいいんですよ。
逆に、本気で小説家になりたい人は、いつも手の届くところに本書を置いて、何度も読み返すべきでしょう。そのたびにやる気が出るだろうし。
唯一の欠点は、巻末に参考資料がないこと。せめて本文内でお勧めしている本だけでもまとめるべきなのでは。
そうでなくても、タイトルだけ出てくる本がたくさんあるというのに。
あと、欠点と言うほどではないですが。
この手の本って、紙の下2割くらいが空白になっていて、注釈が入ったりするじゃないですか。
この本、注釈少なすぎ。最初の注釈が10ページ目。途中でも10ページくらいの空白は珍しくなく、最後の注釈から60ページほどずっと真っ白。
もったいないよなあ。オタク向けなんだから。
注釈は多ければ多いほどオタクは喜びます。改版時には、もっとゴチャゴチャと脚注いれましょうよ。 |
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