山本弘トンデモ資料展
2011年度版7-A


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山本弘のSF秘密基地BLOG
2011年07月10日 20:15

星雲賞受賞






「そうか、星雲賞か。いいなあ……」
「あなたも受賞してるでしょ?」
「『トンデモ本の世界』と『トンデモ本の逆襲』でな。でも、あれは僕一人が書いた本やないし、ノンフィクション部門やし。やっぱり小説で獲りたいよ」
 それから僕は、ずっと気になっていたことを――未来の僕が教えてくれなかったことを訊ねた。
「なあ、『神のメッセージ』――じゃない、『神は沈黙せず』か。あれは星雲賞、獲れたんか?」
「正直に答えていいの?」
「というと、あかんかったん?」
「二〇〇四年度の星雲賞日本長編部門受賞作は、小川一水さんの『第六大陸』」
「小川さんかーっ!?」
 僕は思わず、その場にしゃがみこんでしまった。〈ソムニウム〉で親しく話していたが、まさかライバルだったとは。
「『神は沈黙せず』もノミネートはされたんだけどね」
 僕は顔を上げた。「じゃあ……じゃあ、日本SF大賞は?」
「押井守監督の『イノセンス』」
「『SFが読みたい!』は?」
「一位は冲方丁『マルドゥック・スクランブル』。二位は『第六大陸』。『神は沈黙せず』は三位」
「ウブカタ……?」
「一九九六年に一九歳でデビューした人。今はライトノベルを書いてる」
「まだ二〇代? そんな新人にまで負けたんか!?」
 ショックだった。あの小説は面白いという自信があって書きはじめたはずだった。結局は中断したものの、途中までずいぶん苦しんで書いた。完成したら星雲賞ぐらい獲れて当たり前だと思っていたのに。
――『去年はいい年になるだろう』11章「雨の松江城」

 いつもはSF大会で発表される星雲賞ですが、今年は大会の2か月前に発表になりました。

http://www.sf50.jp/award.html

【日本長編部門(小説)】
『去年はいい年になるだろう』
著者:山本弘 発行:PHP研究所

【日本短編部門(小説)】
『アリスマ王の愛した魔物』
著者:小川一水発行:早川書房「SFマガジン2月号」掲載

【海外長編部門(小説)】
『異星人の郷』
著者/訳者:マイクル・フリン/嶋田洋一 発行:東京創元社

【海外短編部門(小説)】
『月をぼくのポケットに』
『宇宙開発SF傑作選 ワイオミング生まれの宇宙飛行士』(ハヤカワ文庫SF)収録
著者/役者:ジェイムズ・ラヴグローヴ/中村融発行:早川書房

【メディア部門】
『第9地区』
監督:ニール・ブロムカンプ
製作総指揮:ケン・カミンズ、ビル・ブロック
製作:ピーター・ジャクソン、キャロリン・カニンガム

【コミック部門】
『鋼の錬金術師』
著者:荒川弘
発行:スクウェア・エニックス

【アート部門】
加藤直之

【ノンフィクション部門】
『サはサイエンスのサ』
著者:鹿野司
発行:早川書房

【自由部門】
探査機「はやぶさ」(第20号科学衛星MUSES-C)の地球帰還
独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

 というわけで、「星雲賞が獲れなくて悔しかった」という想いをぶつけた『去年はいい年になるだろう』が、今年の星雲賞を受賞してしまいました(笑)。長いこと小説を書いてきたけど、初めての星雲賞で、感無量です。
 正直言って、『SFが読みたい!2011版』での順位が低かったもんで、「今年は無理だろうな」と思ってたんですけど、意外にも逆転してしまいました。
 2004年度は日本長編部門を受賞、作中にも登場していただいた小川一水さんが、今回は日本短編部門で受賞というのも、面白い縁であります。
 言うまでもなく、この作品は僕一人の力で書けたものではありません。小川一水さんをはじめ、作中への出演を許諾いただいた、あるいはアイデアを提供していただいた方々、みなさんのご協力のおかげです。執筆中に亡くなられた志水一夫氏、出版後に亡くなられたはぬまあん氏も含めて、ここにあらためて感謝の意を表します。

 秋田みやび、石原美紀子、植木不等式、小川一水、開田あや、開田裕治、葛西伸哉、加藤ヒロノリ、かに三匹、唐沢俊一、桐生祐狩、酒井和彦、シ、篠谷志乃、志水一夫(故人)、主藤雅章、白山隆彦、杉並春男、田中公侍、友野詳、中川善之、新田五郎、はぬまあん(故人)、原田実、稗田おんまゆら、松尾貴史、松岡秀治、皆神龍太郎、眠田直、森本有美、安田均、山本真奈美、山本美月(アイウエオ順・敬称略)

 ありがとう! そしてありがとう! 
\宣/
この記事へのコメント
おめでとうございます!
Posted by ろぼ at 2011年07月10日 20:22
星雲賞受賞おめでとうございます!

「去年はいい年になるだろう」は途中から怒涛の展開で悲劇的な事もあって、やっぱりハッピーエンドじゃないんだなぁと思ってたら最後の最後の作中での山本先生の愛情あふれるメッセージに感動しました。
Posted by ひろあき at 2011年07月10日 21:12
おめでとうございます!!

高校時代に、図書室や古本屋にあった妖魔夜行やソードワールドノベルから山本先生の小説を読むようになった私も本当にうれしく思います。
グループSNE時代から応援していた私ですがこれからも応援します!!本当に本当におめでとうございます!!
Posted by ドードー at 2011年07月10日 21:22
おおお!おめでとうございます!
ファンとしてうれしいです!
先生の作品は、
いつも、サイエンスとしての裏付けがありつつ、
燃えや萌えが大切にされているところが大好きです。

また面白い作品、楽しみにしています。
Posted by けんたろう at 2011年07月10日 21:25
 おお、おめでとうございます!
私はTRPG直撃世代で、ゲームブック専門雑誌『ウォーロック』誌上で山本さんが漫画家としての能力を求められて苦悩していた頃からのファンであります。
 作品のすべてはチェックしきれておりませんが、と学会ものやSF解説本、小説などは目についたら即買っております。
今後も1ファンとして応援しておりますので、どうか良い物を書いて下さい。喜んで読みます。
Posted by wyrem at 2011年07月10日 21:30
星雲章受章、おめでとうございます。
「神は沈黙せず」はとても楽しく読ませていただいたので、受賞できなかったときはとても残念でした。
「去年……」はまだ読んでなくて、申し訳ないのですが、これから読む楽しみが増えました。
これからも素晴らしい作品をよろしくお願いします。
Posted by ABYSS at 2011年07月10日 21:51
>山本さん
>ありがとう! そしてありがとう!

 やはり出ましたなスカイハイ。それにしてもおめでとうございます!
 本日、失礼にも国際ブックフェアに行っていたせいで受賞作発表に立ち会えませんでしたが、遅れながら心よりお祝い申し上げます。何より真奈美さんや美月さんと一緒にお喜びください。01山本一家の苦労の甲斐があったと(これが一番失礼ですね)。
Posted by toorisugari at 2011年07月10日 22:07
おめでとうございます!!
先生の作品で小説は全作品読みましたが、やっぱり一番おもしろかったのが今作品でした。去年の暮れに先生を知ったばかりのニワカファンですが、読みやすさと深さ広さには脱帽です。。
もちろん先生にとってはこんなにやって、やっと「土俵入り」といったところでしょう。ハリウッドデビューしたパフュームのファンと同じくらい感激もひと潮です!!!(やっと認められた!!)
Posted by わらリン at 2011年07月10日 22:28
星雲賞受賞おめでとうございます
次は暗黒星雲章ですね!
Posted by 万場 at 2011年07月10日 23:36
おめでとう、そしておめでとうございます!

しかし、未来なんてわからないもんですねぇ。
Posted by hoge at 2011年07月11日 00:31
星雲賞受賞おめでとうございます!
「去年はいい年になるだろう」を拝読させて頂いて、ひしひしと先生の受賞への思いが伝わってきました。
私も子供を持つ身で、よくもあの作品を書き上げられたものと感服しておりましたが、その作品での受賞は大変嬉しく感じられた事と存じます。
私も自分の事のように嬉しくて思わずコメント差し上げてしまいました。失礼いたしました。
Posted by めすくりん人 at 2011年07月11日 11:59
おめでとうございます!『去年はいい年になるだろう』で受賞されたのは本当に面白い結果ですね(笑)
Posted by yama_ at 2011年07月11日 14:18
地球移動作戦じゃなくてそっちですか!

おめでとうございます。
Posted by Xbeta at 2011年07月11日 18:29
おお! おめでとうございます。
Posted by サイバーナイトあたりからのファン at 2011年07月11日 19:22
初受賞おめでとうございます!
とっくに受賞しているものと思っていました。

これからも楽しい小説で楽しませてください。
Posted by なざろふ at 2011年07月11日 19:39
おひさしぶりです(何と掲示板以来……)。そしておめでとうございます。
個人的には『フェブラリー』が取っていてもよかったのに……と思いつつずっと応援しておりました(応援だけとも言いますが(^^;;)
ご迷惑でなければ、また時々書き込ませていただきます。
それでは。
Posted by あまね at 2011年07月11日 20:39
山本先生、星雲賞受賞おめでとうございます。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110711/plc11071121050010-n1.htm

うーん。気象兵器が常識かぁ。
Posted by 犬も歩けばトに当たる at 2011年07月11日 22:44
星雲賞受賞おめでとうございます。今回を嚆矢として、さらに受賞回数を伸ばしていただくことを期待しています。
Posted by まるさん at 2011年07月11日 23:10
おめでとうございます。

これで、『去年はいい年になるだろう』の第一版第一刷にプレミアが付くでしょうか?

今後ともご活躍ください。
読者として楽しみに待っております。
Posted by さる at 2011年07月11日 23:14
わぁ、おめでとうございます。
『剣と魔法と竜の国』からの一ファンとして、うれしい限りです。
Posted by あしゃま at 2011年07月12日 09:56
スカーイハーーイ!!
Posted by 渡辺八幡太郎景綱 at 2011年07月12日 17:41
おめでとうございます。
きっとカホとジムノフの神に祝福されたのでしょう。
「来年もきっといい年になる。」
とのイ・ネフプが私にも聞こえてきました。

変わらずのご活躍を願います。
Posted by annponn at 2011年07月13日 21:17
ただ一言。


“おめでとう御座いますッ!!”

…まぁ、“後夜祭”の方は行かれそうにありませんが…それが残念!!恐らく、あの会場でも、山本先生のこの受賞の件で、大いに盛り上がるでしょうけど…
Posted by DRAKO(ドラーコ) at 2011年07月13日 23:56
おめでとうございます。好きな作品なので我が事のようにうれしいです。読むといつも悲しくなるのですけれど、それでも名作です。

関係ないですけど、つい最近、『1000年女王』を読み返していたら、『火星ノンストップ』と同じ状況が地球とラーメタルの間に生まれていてノケゾリました。松本さんも昔あれを読んでいたのかもしれないですね。
Posted by 九郎政宗 at 2011年07月14日 12:57
祝!
そして、自由部門がはやぶさとは粋ですね。
はやぶさとの同時受賞、おめでとうございます。
Posted by 理力不足 at 2011年07月14日 21:13
おめでとうございます。「去年は~」は、志水一夫さんのエピソードが個人的に心に残りました。
Posted by Rick=TKN at 2011年07月15日 01:47
だはー
おめでとうございます
Posted by m at 2011年07月15日 23:47
山本さん、受賞おめでとうございます。
先日、下手なレビューですが、アマゾンにレビューを書かせて頂きました。
ですが、SF秘密基地BLOGを読む前だったので青雲賞受賞のことは書けなかったです。ごめんなさい。
知ってたら、絶対に書いて推奨してましたよ。
Posted by 小口和宏 at 2011年07月19日 00:39
・・・そうそう、奥様の名前が上に出てきたから思い出したのですが、『水戸黄門』がシリーズ終了だとかで、さぞかしがっかりされてるのではないかと心配しています。
『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』http://www.amazon.co.jp/dp/4309018297 に入っている「大阪府で三番目ぐらいに幸せな家」で、いかに奥様が『水戸黄門』マニアであるかを書かれてたので(@∀@)
そういう熱烈な固定ファンのいるドラマは、たとえ年に1クールであっても続けた方がいいと思うのですけどもねえ・・・
Posted by 九郎政宗 at 2011年07月19日 05:31
んおおおぉぉぉ…おめでとうございますぅぅぅ(≧ω≦)b。

『SFが読みたい』や星雲賞にはライトノベルが入んないのか知しませんが、『戦慄のミレニアム』や『さようなら地獄博士』、『滅亡の星、来たる』とか、星雲賞取ったっておかしくない作品もあるのになぁ。

『SFが読みたい』にも毎年確実に入って来てますし、こっちの一位ももうすぐですよね。

もしかして、そろそろオールタイムベストをやり直すと、山本作品がぐいぐい入ってくるかも(*^皿^*)
Posted by ギルス at 2011年07月19日 11:46
 ここで書き込むことでは無いのかもしれませんが、更新がまだなので失礼します。
 山本さん、大型台風が来ましたが、御家族共々大丈夫でしたか?私は先日、偶々突風に遭い、飛来した段ボールにビンタを食らいました。それで済んで良かったのですが。
Posted by toorisugari at 2011年07月20日 16:37
 みなさま、ありがとうございます!
Posted by 山本弘山本弘 at 2011年07月20日 22:11
 言い忘れていたことがあったので失礼します。

>秋田みやび、石原美紀子、植木不等式、小川一水、開田あや、開田裕治、葛西伸哉、加藤ヒロノリ、かに三匹、唐沢俊一、桐生祐狩、酒井和彦、シ、篠谷志乃、志水一夫(故人)、主藤雅章、白山隆彦、杉並春男、田中公侍、友野詳、中川善之、新田五郎、はぬまあん(故人)、原田実、稗田おんまゆら、松尾貴史、松岡秀治、皆神龍太郎、眠田直、森本有美、安田均、山本真奈美、山本美月(アイウエオ順・敬称略)

 に加えて、

 山本さんのお母様&兄上・柳田理科雄・水野良・冲方丁、以上の方々にも

 ありがとう! そしてありがとう!\宣/ ですね。
Posted by toorisugari at 2011年07月28日 12:14
はじめまして、本日「去年は・・・」読み終わりました。
ゆっくり読んで行くつもりで置いてたんですが、中盤から後半にかけての展開に、ついついペース配分を忘れて一気に読みふけってしまいました。
でも実は「アイの物語」を未読なので、これからこっちも買ってきて、またもう一度読み返したいと思っています。
これからもますますのご活躍を期待しております。受賞おめでとうございます!
Posted by tetuo_kcy at 2011年08月12日 02:29
星雲賞受賞おめでとうございます!

挨拶が遅れてしまい失礼しました。

このお話を聴いた時はまるで己の事のように嬉しく感じました。

これ以上述べてもありきたりな祝辞にしかならない自分のスピーチの向かなさっぷりを悔いつつ、1言。

本当におめでとうございます。
Posted by 沖峰ゆいき at 2011年09月02日 14:24
 別に柳田理科雄にありがとうは要らないのではtoorisugari。
 しかし、『去年はいい年になるだろう』では、結構ページ食ってたしな。
Posted by 宣/^ at 2011年09月26日 10:26

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