不正アクセス禁止法違反?
唐沢俊一検証blogのこのエントリーで、と学会の会員専用MLの一部と称する内容が掲載されている。
問題は2点。
メールの真偽は、たとえば裁判所に証拠として出す場合に問題になったりする。電子データの改ざんは容易なので、どうするかが悩みの種なのだが、メールヘッダに記載された配送経路まで含めて示して初めてある程度の信憑性を伴うと行ってよいだろう。少なくとも、送受信の組み合わせが本当かどうかはチェックできる。From, To, Subject程度の情報だけなら、内容はいくらでも偽造可能である。例えば、私も、クレームのメールを大学経由で受け取ったことがあるが、事務に連絡して、必ず、全ヘッダ情報をつけて転送してもらうようにしている。後日、トラブルに発展した場合のためである。もっとも、私もヘッダ公開無しにウェブコンテンツに引用したこともあるが、ヘッダ情報付きのメールは保存した上で、相手にも公開の連絡を送って、間違いが無いことを確認できる状態にしている。
当該エントリーの議論では、少なすぎる情報しかなく、フェイクが混じりうる状態のものを真実であると考えて議論しており、ガセを踏む可能性があるが、そのことを全く意識していないように見える。次に書いたように、blog主がと学会員でない限り、MLの内容を直接知ることは無いわけだから、内容がと学会MLのものだと主張するのであれば、まずは、メールヘッダを全文公開すべきだろう。でなければ、読んだ第三者が作り話かどうかを判断することができない。【追記】伝聞なので不確かで不完全なものだという前提で話をするのなら、本物であることの証明は不要となる。
と学会MLだが、会員同士の情報交換用であり、非公開である。ログも会員しか見ることができない。各自のメーラーで受信した後は、普段使っているパソコンのメールボックスにその内容が入るし、普通は、パソコンそのものやメーラー起動にはパスワードが設定されている。
ということは、流出した内容が真実であり、かつ、会員が自発的に出した場合やパソコンへのウイルス感染等が原因の事故による流出でなかった場合
・MLを運用しているサーバーから盗んだ
・会員個人の(パスワードロックしている)メーラーのメールボックスから誰かが盗んだ
・会員がパソコン修理等を依頼した業者がHDDから盗んだ
といったものが考えられる。つまり、当該エントリーに引用された資料入手には、不正アクセス禁止法に違反する行為が伴っている可能性がある。「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」の対象になる、立派な刑事事件なのだが……。
ちょっと調べたのだが、不正アクセス禁止法って、親告罪ではない。ということは、通報や告発は誰でも可能で、被害者が訴えようが訴えまいが罪に問われる。現状で最も疑われても仕方がない立場に居るのが、内容を公開しているblog主ということになる。別の人からの情報提供の場合は、情報提供者をかばえば今度はblog主の犯人隠避が問題になる。つまり、当該エントリーは「皆さん刑事手続で告発よろしく」と触れ回っているのに等しい。情報の入手経路が違法でないことを十分確認しているのならともかく、よくそんな危険な内容(というか犯罪自慢になりかねない内容)を公開しているなあ、と。なお、刑事訴訟法250条より公訴時効は3年。立件して公判を維持する時には、犯罪事実を立証するのは検察の仕事になるが、疑わしければ捜査の端緒にはなり得る。MLの内容の入手経路が完全に合法だということくらい、さっさと示した方が、blog主にとっては安全だろう。【追記】あるいは、メールの内容が伝聞に過ぎず未確認であることを明示する、というのでもかまわない。そもそもツクリの場合にはその必要もない。あくまでも一般論としてだけど。
以下は一般的な注意事項。
本人が公開した情報に対する意見論評は自由に行って構わないが、もともと非公開の情報に基づいて他人を中傷すれば、裁判で勝つのが難しくなることは知っておいた方がよい。真実性や真実相当性の立証ができないからである。また、これまでの判例から「虚名も保護の対象」である。これを知らない人が意外に多い。つまり、本当のこと(客観的事実)を述べた場合でも、それが他人の社会的評価の変動をもたらす場合は、公益性がなければ負けることになる。免責される条件である「公益性・公共性」と「真実性・真実相当性」は両方満たさないといけないので、結構厳しい。神戸の裁判では、これが両方とも決まって、原告の請求が棄却されることになった。
【追記】検証blogの書き方をみて、あれで安全だと思う人が出てくるとまずいので一応注意を喚起しておく。政治家や芸能人、作家の作品内容に対する批判をする場合と、一個人の(公共の利害に関係のない)言動への批判は同じ扱いにはならないだろう。
※流出したと称する内容が本当にMLの内容と一致しているかどうかについては、相手に余計な情報を与えたくないので、私からはノーコメントである。
問題は2点。
メールの真偽は、たとえば裁判所に証拠として出す場合に問題になったりする。電子データの改ざんは容易なので、どうするかが悩みの種なのだが、メールヘッダに記載された配送経路まで含めて示して初めてある程度の信憑性を伴うと行ってよいだろう。少なくとも、送受信の組み合わせが本当かどうかはチェックできる。From, To, Subject程度の情報だけなら、内容はいくらでも偽造可能である。例えば、私も、クレームのメールを大学経由で受け取ったことがあるが、事務に連絡して、必ず、全ヘッダ情報をつけて転送してもらうようにしている。後日、トラブルに発展した場合のためである。もっとも、私もヘッダ公開無しにウェブコンテンツに引用したこともあるが、ヘッダ情報付きのメールは保存した上で、相手にも公開の連絡を送って、間違いが無いことを確認できる状態にしている。
当該エントリーの議論では、少なすぎる情報しかなく、フェイクが混じりうる状態のものを真実であると考えて議論しており、ガセを踏む可能性があるが、そのことを全く意識していないように見える。次に書いたように、blog主がと学会員でない限り、MLの内容を直接知ることは無いわけだから、内容がと学会MLのものだと主張するのであれば、まずは、メールヘッダを全文公開すべきだろう。でなければ、読んだ第三者が作り話かどうかを判断することができない。【追記】伝聞なので不確かで不完全なものだという前提で話をするのなら、本物であることの証明は不要となる。
と学会MLだが、会員同士の情報交換用であり、非公開である。ログも会員しか見ることができない。各自のメーラーで受信した後は、普段使っているパソコンのメールボックスにその内容が入るし、普通は、パソコンそのものやメーラー起動にはパスワードが設定されている。
ということは、流出した内容が真実であり、かつ、会員が自発的に出した場合やパソコンへのウイルス感染等が原因の事故による流出でなかった場合
・MLを運用しているサーバーから盗んだ
・会員個人の(パスワードロックしている)メーラーのメールボックスから誰かが盗んだ
・会員がパソコン修理等を依頼した業者がHDDから盗んだ
といったものが考えられる。つまり、当該エントリーに引用された資料入手には、不正アクセス禁止法に違反する行為が伴っている可能性がある。「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」の対象になる、立派な刑事事件なのだが……。
ちょっと調べたのだが、不正アクセス禁止法って、親告罪ではない。ということは、通報や告発は誰でも可能で、被害者が訴えようが訴えまいが罪に問われる。現状で最も疑われても仕方がない立場に居るのが、内容を公開しているblog主ということになる。別の人からの情報提供の場合は、情報提供者をかばえば今度はblog主の犯人隠避が問題になる。つまり、当該エントリーは「皆さん刑事手続で告発よろしく」と触れ回っているのに等しい。情報の入手経路が違法でないことを十分確認しているのならともかく、よくそんな危険な内容(というか犯罪自慢になりかねない内容)を公開しているなあ、と。なお、刑事訴訟法250条より公訴時効は3年。立件して公判を維持する時には、犯罪事実を立証するのは検察の仕事になるが、疑わしければ捜査の端緒にはなり得る。MLの内容の入手経路が完全に合法だということくらい、さっさと示した方が、blog主にとっては安全だろう。【追記】あるいは、メールの内容が伝聞に過ぎず未確認であることを明示する、というのでもかまわない。そもそもツクリの場合にはその必要もない。あくまでも一般論としてだけど。
以下は一般的な注意事項。
本人が公開した情報に対する意見論評は自由に行って構わないが、もともと非公開の情報に基づいて他人を中傷すれば、裁判で勝つのが難しくなることは知っておいた方がよい。真実性や真実相当性の立証ができないからである。また、これまでの判例から「虚名も保護の対象」である。これを知らない人が意外に多い。つまり、本当のこと(客観的事実)を述べた場合でも、それが他人の社会的評価の変動をもたらす場合は、公益性がなければ負けることになる。免責される条件である「公益性・公共性」と「真実性・真実相当性」は両方満たさないといけないので、結構厳しい。神戸の裁判では、これが両方とも決まって、原告の請求が棄却されることになった。
【追記】検証blogの書き方をみて、あれで安全だと思う人が出てくるとまずいので一応注意を喚起しておく。政治家や芸能人、作家の作品内容に対する批判をする場合と、一個人の(公共の利害に関係のない)言動への批判は同じ扱いにはならないだろう。
※流出したと称する内容が本当にMLの内容と一致しているかどうかについては、相手に余計な情報を与えたくないので、私からはノーコメントである。
posted by apj (apj's web)
カテゴリー:トンデモ
タグ:
posted at 2009/07/31 11:57:32
update at 2009/07/31 16:40:57
update at 2009/07/31 23:35:00
lastupdate at 2009/08/01 01:05:08
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を読んで思ってたのですが,どうなんでしょう? 非公開情報と知っててコピペしたとすれば別の罪に該当するのかもしれませんが,知らなかったとすれば,せいぜい削除要求ぐらいしかできないような気がするのですが。
ガセであれ真実であれ,一度Webに乗っちゃうと,ここでも話題になった無実の方の誹謗中傷のように,かなり長時間残っちゃうってことを考えると,こういう情報は慎重に扱わないといかんですね。