このHPの創竜伝批判の論述から考えると、創竜伝という作品は、キャラクターの心理描写が浅く、時代考証がいいかげんで、SF設定が間違っていて、物語が破綻しており、とてもじゃないが、評価に値しない作品ということになります。
しかし、このように仮定すると、ある疑問が出てきます。
それは、少しばかり知識があれば誰でも書けそうな作品でも大ヒットするという、この不況の中でとびきりの美味しい事実を目の当たりにしているのに、なぜ、「創竜伝」と類似した作品が他に出てこないのでしょうか。(実は出ているかもしれません。僕が知らないだけかも)
まさか、他の作家の作品をまねるのは仁義に反するなどという気概が、出版界にあるとは思えません。エヴァの謎本が売れれば、猫も杓子も類似本を出すのが出版業界であるのだから、どっかの小才のある編集者が、政治、軍事、歴史にある程度精通した作家志望の若者を捕まえて、「創竜伝」みたいな小説を書いてくれと依頼しそうなものです。
しかし、それがないとなると、創竜伝には、田中芳樹氏しか書けない魅力が込められていると考えられなくもありません。
余談かもしれませんが、平井和正氏の「地球樹の女神」という作品をご存知でしょうか。あの作品は、キャラの性格はころころ変わるし、物語はあきらかに行き当たりばったりで、ある意味作者の人格を疑うような内容なのですか。僕の感想としては、綺麗にまとまった優秀な小説よりも、面白いと感じましたし、何となく創竜伝と作風が似ている気がします。
創竜伝には矛盾と破綻を含みながらも、読者を魅了する力があるのでしょう。でなければ、他の作家や編集者が真似してるはずです。
> 創竜伝には矛盾と破綻を含みながらも、読者を魅了する力があるのでしょう。でなければ、他の作家や編集者が真似してるはずです。
“平井和正”や“田中芳樹”という名前そのものに魅了する力があるの
でしょう(苦笑)。
他の(しかも若手が!)あんなモン書いたら、速攻で編集者から没を食
らうだろうし、よしんば出版されても読者からは無視されるのがオチです。
過去のネームバリューがあってこその事でしょう……。
その意味では田中芳樹の過去に対する成功報酬みたいなモンですかね。
> 他の(しかも若手が!)あんなモン書いたら、速攻で編集者から没を食
> らうだろうし、よしんば出版されても読者からは無視されるのがオチです。
> 過去のネームバリューがあってこその事でしょう……。
>
ところがそうでもないと思うのですよ。
創竜伝はビジネスとして十分に成功を見込めることが読める作品なんです。
「主人公たちが美形で、性格がバラバラ」
古い作品ですが聖闘士聖矢やガンダムWなんかがそうですね。複数の性格の異なる美形キャラを用意して、どれかにひっかかるようにする。ジャニーズもまた然り。
「わかりやすい辛口な政治社会批評」
決して社会を誉めてはいけません。今の若者というか、昔から若者は社会に対して不満を持っていますから、社会や政治に批判的な記述をすれば、まず間違いなく共感を得ることが出来ます。「ナニワ金融道」の青木雄二の著書がやたらと売れているのは、社会を客観的な目で見たい人間が多いからではなく、自分の不幸な現実を、社会が悪いのが原因と論じてある本を読んで、不幸なのは自分が悪いのではなく、社会が悪いからなのだと信じたい人間が多いからではないでしょうか。(これは違うかも)
(注意)ここで気をつけておきたいのは、できるだけわかりやすく記述すること。新聞を見る人間は多くても、読む人間は少ないですから。難しい専門用語は使ってはダメです。批判の対象である政治家や経済人もできるだけ少年漫画的な小悪党に描く必要があります。
「歴史とオカルトとSFと軍事兵器」
この際「事実」である必要はありません。
大半の読者は事実かどうか調べる意思なんてないですから。
もし、これは違うんじゃかという抗議がきたら、これはフィクションですので、実際の登場人物や団体とは関係ありませんと言えば大丈夫でしょう。
と、いうように、売れそうな気がするんだけどなあ。
こちらは男性ファンを狙い撃ちするために「竜堂四姉妹」に変えて。
長女「温厚なお姉さまタイプ」
次女「クールで知的な美少女」
三女「自分のことを「ボク」という体育会系」
四女「ひとりぐらいはロリコン系」
というように。
冗談抜きで、いけるとは思うんですけど。
なんだ、貴方的には結論は出てるんじゃないですか……。
質問じゃなかったんですね。
まぁ、そう思われるならご自分で試してみてはいかがです?
それが一番答えに近いですよ。
あるいは身をもって真実を知る事が出来ますよ。
もっとも、世の読者をそこまで舐めてるのもある意味スゴイとは思いますが。
結局、作者のネームバリュー無しではビジネスとして十分に成功を見込めないと判断されるからこそ、類似品が量産されないんだと思いますがね……。
まぁ、量産されたら価値がなくなるからやめさせているのかもしれませんが。
> なんだ、貴方的には結論は出てるんじゃないですか……。
> 質問じゃなかったんですね。
>
僕の書き方が悪かったんですか?僕の質問は、創竜伝のような小説が売れる要素があるにも関わらず、誰も真似しようとしないのかというものですよ。前のレスでは、創竜伝にはこういう受ける要素がありますよという箇条書きだったんですが。
> もっとも、世の読者をそこまで舐めてるのもある意味スゴイとは思いますが。
商売というものは世の中の人間を舐めてかからないとできない側面があります。「携帯の着メロ」が世に現れたとき、僕はどんな名曲もチープにしてしまう着メロのどこがいいのかと思いましたが、現実は大流行でした。結局、世の中の大半の人間は音楽を舐めてるんですね。もし、音楽を愛する人間が、着メロのシステムを思いついたとしても、自分の価値観から推し量って、これではチープすぎて世の中に受け入れられないと破棄してしまったのかもしれません。「ときめきメモリアル」も世の中の男を舐めてますよ。ヒットしましたが、製作している最中に、二次元の女の子とデートして面白いのかという疑問が当然のように出てきましたから。
舐めすぎるのも悪いと思いますが、あまりに消費者を過大評価しすぎると、かえって業界の衰退を招くのではないでしょうか。でも角川文庫は舐めすぎです。あのアニメ絵表紙では中身がよくても買いにくいです。
> 過去のネームバリューがあってこその事でしょう……。
>
> その意味では田中芳樹の過去に対する成功報酬みたいなモンですかね。
私も以前はそう思っていたんですが、どうもそれだけでは理解不能な部分があるんです。
というのも、『創竜伝』には今なお中高生の新規ファンが加わっているんです。
しかも今年高校生のファンの方々に会ったことがあるんですが、
彼等の中には田中芳樹の作品を初めて呼んだのが『創竜伝』だったとか、
『銀英伝』を読んだことが無いという読者も結構いるようです。
それどころか田中芳樹の名前を『創竜伝』で知ったというファンまでいました。
どうもネームバリューだけでは説明できないものがあるようです。