昨年暮れにまとめて安く買った古い特撮映画を一気に見た。
●『ロスト・ワールド』(25年・アメリカ)
ウィリス・H・オブライエンの出世作。ラストでは、チャレンジャー教授たちが南米から連れ帰ったブロントサウルス(原作では翼竜)が暴れだし、ロンドンの街をちょっとだけ破壊して海に帰ってゆく。おそらく史上初の「怪獣による大都会襲撃」を描いた映画である。
『ロスト・ワールド』は何度も映像化されているが、この映画のチャレンジャー教授がいちばんドイルの原作に近い印象を受ける。
どうでもいいけど、探検隊に女性メンバーが加わるのは、『ロスト・ワールド』映画化の際のお約束であるらしい(笑)。
●『来るべき世界』(36年・イギリス)
30年近く前に上映会で見た作品。日本語字幕がなかったもんで、話がさっぱり分からなかったっけ(笑)。
字幕つきで再見したのだが、原作者のH・G・ウェルズ自身が脚本を書いているにしては、凡庸で退屈な話だった。
ただ、ミニチュア・ワークは素晴らしい。特に後半、21世紀の未来地下都市建設のシーンでは、巨大な掘削機械や工作機械の描写がえんえんと続く。『サンダーバード』を作った連中は、子供の頃にこういう映画を見てたんだろうな。
その未来都市のシーンの合成もすごい。群衆からカメラが上にパンして高層ビル群を写し、そこからさらに左にパンすると、ビルのベランダに子供が出てくる。ワンカットである(写真左)。
ビルがミニチュアなのは間違いないのだが、どうやって人間をそこにはめこんで、なおかつパンができるのか不思議。
あと、この未来都市のシーンに出てくる魚みたいな形のヘリコプターのデザインがしびれるのだ(写真中)。1936年にこのセンス! ローターの半径が小さすぎて飛びそうにないのが欠点だが、しかたあるまい。この時代にはまだ本物のヘリコプターは存在していなかったのだから。(オート・ジャイロはあったはずだけど)
中盤に出てくる逆ガル翼の小型無尾翼機(写真右)もいいんだけど、上からのシルエットがよく分からないのが残念。
●『金星ロケット発進す』(59年・ソ連)
ツングース隕石の正体が金星からの宇宙船だったことが判明。探検隊が調査のために金星に向かう。金星人は地球侵略を計画していたものの、核エネルギーの事故で滅亡していたのだった……という話。子供の頃にテレビで一回だけ見た。
あれ? これ英語版だ。おまけに画面の上下も両端も切れてる。ひどいな。せめてロシアから原版借りてこいよ。
宇宙船の名前が「コスモストレイター」になってるけど、本当は「コスモクラトール」だったはず。アメリカ公開に合わせて名前を変えたのか。
あと、核で滅びた金星人の廃墟を見るシーンで、「何を考えている?」と訊かれた日本人女性科学者(谷育子)が、「地球のこと」と答える場面がある。でも、「地球のこと」じゃ意味を成さない。
僕の記憶では、ここの台詞は「広島のこと」だったはずである。
さて、子供の頃にテレビで見て、ストーリーがよく分からなかったのだが、大人になってからこうして再見しても、やっぱりよく分からん(笑)。ラスト近く、船長がロボットの暴走で負傷したり、主人公格の男が仲間を救出に小型ロケットで発進するも遭難してしまう(事実上、犬死に)という展開に、ドラマ的にどんな意味があるのか。
だいたい、この小型ロケット、人間1人が仰向けに入って操縦するという、棺桶のような代物。これでどうやって仲間を助けるつもりだったのか。
レムの原作は読んでいないのだが、もしかしたら、原作を大幅にダイジェストしたせいで話がつながらなくなってるんじゃないかという気がする。
金星の廃墟には黒いスライム状物質の海があり、それが膨張して探検隊員に迫る。彼らはスライムから逃れるために、らせん状のタワーを必死で昇ってゆく。子供の頃に見た時は非常に印象に残ったシーンだが、あらためて見ると、合成も演出もあまり上手くなくて、スペクタクルに欠ける。
ただ、主役メカであるコスモクラトールのデザインと、その発進シーンはなかなか良い。
人物の遠景にコスモクラトールが立っているカットがいくつかあるんだけど、これは合成じゃない。たぶん大きな書き割りを立ててるんじゃないかと思う。
●『原始惑星への旅』(65年・アメリカ)
これも元はソ連映画『火を噴く惑星』だが、ロジャー・コーマンが買い取って改作したもの。
『火を噴く惑星』も子供の頃にテレビで見た。最後に探検隊員が、金星に人間がいる証拠を見つけるんだけど、もう帰還の時刻が迫ってるもんでロケットは発進せざるを得ない。ロケットが飛び去った後、水たまりに白いドレスを着た女性らしい姿が映る……というラストは記憶の通りだった。
●『黄金バット』(66年・東映)
これと『宇宙快速船』はまだ見ていなかった。
小惑星イカロス(当時はちょっとしたブームだったんだよ)を地球にぶつけようとするナゾー。超破壊光線でそれを阻止しようとする科学者たちに黄金バットが味方する。
特撮に関しては、66年の東映だから『キャプテン・ウルトラ』と同レベル。中田博久も出てる。
最初の方は話がさくさく進むんで、「これはけっこういいいかも?」と思ったんだけど、中盤の超破壊光線砲の争奪戦がもたついて、どんどん気分が萎えてくる。キャラクターたちが研究所とナゾータワーを行ったり来たりするばっかりで、話が進まないのだ。
やっぱりこういうアクションものでは、終盤に向けてストーリーが収束するように構成しなくちゃいかんのだよな、と反面教師として見た。
あと、ナゾーの三幹部の能力や性格が、明確にキャラクター分けされていない。現代のヒーローものの常識からは信じられないことだが、当時は悪役のキャラクター性というのは重視されていなかったのかもしれない。
ちょっと驚いたのは、クライマックス、ドリル状のナゾータワーが地中から出現、東京のど真ん中にそそり立つシーン。庵野版の『キューティ・ハニー』はこれのパロだったのか!
未見なのでどういう絵か分からないのですが、カメラがパンしているならばマスクを使ったカメラ内合成じゃないですね。
丸大ハムの巨人CMと同じ手法で、ミニチュアセットにミラーをはめ込んで撮影したのでしょうか?
記憶ではロケットが出発したあとに溶岩で半分溶けたロボットを女たちが御神体よろしく拝みたてるようなシーンだったような。
「金星怪獣の襲撃」とかだったかもしれません。
ロボットが歩く時の足の指が動いていたことが妙にリアル(笑)だと感心した覚えがあります。
金星人が核戦争で滅んだというのと、コールタールが迫ってくるのと、あと何かゴチャゴチャした毛虫みたいなのが走り回っているシーンしか覚えてませんが、ある意味で私の「SF幼年期の始まり」な映画でしたね。
コメントをいただいたのですが、
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=13072467&owner_id=147483
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=58394794&owner_id=147483
あれからオリジナル復元版(といっても1925年版より11分短い)を、
海外DVD通販ショップから購入しまして、かなり驚きました。
安売り版? ですと、探検隊が南米に渡ってから、
メイプル・ホワイト台地に到着するまでの行程や、
エイプマンと相棒のエテ吉(オレ命名)が、探検隊にちょっかいを出すシーン、
そして何より特撮ファンとしてはもったいないと思うのですが、
クライマックスシーン、火山の大噴火によって、恐竜の群れが逃げ惑う、
大スペクタクルシーンが、ほとんどカットされているのです。
これでもまだカットされたシーンはあるようで、
昔、「求心」のCMで見た、トラコドン(アナトティタン)が蘇鉄を食むシーンは、
このDVDにも収録されていなかったような…。
> 丸大ハムの巨人CMと同じ手法で、ミニチュアセットにミラーをはめ込んで撮影したのでしょうか?
シュフタン・プロセスでしたっけ。昔はそういう手法があったんですよね。
キャプチャした写真を見ていただけると分かりますが、階段の上の方の群衆が少し薄くなって、透けているようにも見えます。このへんに秘密があるかも。
> 反物質さん
>記憶ではロケットが出発したあとに溶岩で半分溶けたロボットを女たちが御神体よろしく拝みたてるようなシーンだったような。
そのシーンはありません(^^;)、たぶんそれはロジャー・コーマンが改作した別の映画でしょう。
>ロボットが歩く時の足の指が動いていたことが妙にリアル(笑)だと感心した覚えがあります。
このロボットはよくできてますね。着ぐるみはかなり重かったことでしょう。
ロビーやフライデーと同じで、倒れたら自力で立ち上がれそうにないのが難点ですが。
> フェイズさん
僕も鮮烈に記憶に残ってたのはコールタールのくだりでした。
> ものぐさ太郎α さん
いいでしょ、ヘリのデザイン? 最初の方に出てくる戦車とか、中盤に出てくる巨大な全翼機とかもいいんですけどね、クラシックだけど古くない。
> はぬさん
ああ、思い出しました。チャレンジャー教授の必殺地獄車!(笑) あれは確かに笑えます。屋敷から外まで転がり出ちゃうんだもんなあ。
http://homepage3.nifty.com/housei/PrehistoricWomen.htm
調べたらやはり金星怪獣の襲撃の方でした。