「確かに。マンガ家にとっては死活問題ですよね」私はうなずいた。「『ドラえもん』、どうすんですかね。しずかちゃんの入浴シーンのある話、みんな欠番にするんですか?」
「修正してパンツ穿かせるとか?」
「『エスパー魔美』も発禁ですよね」
「それは悲しい! 悲しすぎる」
――山本弘『詩羽のいる街』第4話より
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「文化が滅びる」――都条例「非実在青少年」にちばてつやさん、永井豪さんら危機感
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1143152&media_id=32
この記事についてこれまでに書かれた2744件の日記を、タイトルと最初の数行だけだが、ざっと目を通してみた。
ほとんどが規制に反対の意見。「リアル『図書館戦争』」というフレーズもよく使われている。
言うまでもないが、現実が『図書館戦争』を模倣しているのではなく、『図書館戦争』が現実を模倣しているのである。「良識」ある人々による表現規制が暴走したパラレルワールドの日本が舞台で、業界の人間にしてみればものすごく切実な問題を扱っている。「リアル『図書館戦争』」ではなく「『図書館戦争』がリアル」なんである。
他にも『アウターゾーン』の「禁書」というエピソードを連想した人も多いようだ。
一方、規制に賛成している意見は、2744件中、ほんの10件だった。僕の見落としが5件ぐらいあるとしても、全部で15件。全体の0.5%ぐらいである。
その少ない賛成意見を読んでみた。
>でも普通に読める漫画にもあまりに酷い描写が見受けられる事も多いので、多少なりとも規制は必要だと思ってます。
このへんは消極的賛成と言うべきか。
>そんなんで滅ぶ文化ならいらないし
>別の、もっと”ホンモノ”の文化を育てればいいじゃない。
>人間をダメにするような文化なら消してしまえ。
>こんなに狂った世の中には制御が必要なんだよ。
マンガはホンモノの文化ではないから滅ぼして当然、というご意見。まさに暴論。
>改正案見てないが
>正直どーでもいい。
読めよ(笑)。
>それに一部の人間に販売禁止なだけやろ??
違います。マンガ、アニメ、ゲーム界全体に影響が出るから問題なの。
> 強姦ものとか、虐待ものとか、鬱ゲーとか、そういう「行きすぎた」ジャンルしか当てはまらないだろうに。東京都の返答も明らかにそういう内容じゃん。
違います。あの条文には「強姦もの、虐待もの、鬱ゲー」だけがターゲットだなんてどこにも書いてない。東京都の返答を真に受けるなんて、純真すぎる。
まあ、僕もさすがに、いきなり『ドラえもん』が発禁になるとは思わない。運用する側からすれば、まず反対の声が上がりにくそうなところから潰してゆくに違いないからだ。
だが、あの条文はあいまいで、いくらでも拡大解釈が可能である。いちばん過激なエロマンガから規制がはじまって、どこまで広がるか分からないのだ。
>ちなみに「世間は賛成が多い」とする新聞もあることを紹介しておく。
「世間」の人の多くはマンガファン、アニメファンではないし、表現規制の問題にまったく関心がなく、当然、問題点を理解していない。そんな人たちにアンケートを取ったって無意味である。
>いいじゃない。
>最近の猟奇的な犯罪の元凶がなくなるんでしょ?
その「猟奇的な犯罪」が最近になって増えているという根拠も、それがマンガやゲームが原因であるという根拠もないのだが。
この他にも、読んでみようとしたら、すでに公開範囲が変更されて読めなくなっていた日記が2件。さてはコメントが殺到したんでビビったな(笑)。
こういう人たちの文章を読んでみると、やはりマンガやゲームに関心がなく、そんなものがなくなっても困らないと思っていることが分かる。「困るのはアキバのキモオタだけだろう」とか「規制したら猟奇犯罪が減る」とか、本気で信じているらしい。
15日の集会でも、「そういう人たちに対しては『ニーメラーで検索』と言うべきだ」という声があった。まったくである。
すっかり有名になっちゃったね、ニーメラー。
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笑い事ではない。手塚治虫、石ノ森章太郎、永井豪、竹宮惠子といった巨匠の有名な作品でも、少年や少女の全裸のシーンやセクシャルなシーンなんていくらでもあるのだ。それらがすべて違法ということになったら、マンガ界は壊滅的な打撃を受ける。表現規制を唱えている人たちは、そうした事実を認識していないとしか思えない。これだけマンガが日本の文化に深く浸透しているというのに、いまだに「たかがマンガ」と軽んじているのだろうか。
「でも、こわいですよね。日本の文化を揺るがす大問題のはずなのに、マスコミでもほとんど取り上げられないじゃないですか。一部の議員の扇動であっさり通過しちゃいそうで、やばいですよ」
「『マンガなんて自分には関係ない』と思ってる人が多いんですよ」とアオさん。「まず、一般人とマニアの意識のギャップを埋めなきゃだめですね」
――山本弘『詩羽のいる街』第4話より
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【今回の日記は全体に公開します】
全くもってその通りですね。これはもはや締め出し行為にしか見えません。私ももちろん反対派です。根底には児童ポルノがあるみたいですが、それは一部の『現実世界』と『2次元世界』の区別がつかない人間がしてしまうのであり、その他の人もまとめてと言う事が許せません。
(犯罪が無くなるのであれば賛成ですが、規制をかければ増加しそうな予感も…)
もっと他のやるべき事があるのに…
長文、乱文をお許しください。
失礼いたしました。
>こんなに狂った世の中には制御が必要なんだよ。
何を持って今の世が「こんなに狂った」と言えるのか。
昔はもっと良かったとでも思っているのですかね。
ここに乗ってない日記を僕は読みましたが、おそらく読まれているでしょう
晒してしまいたいほど憤りを感じてしまいました。その方は偏見の塊で出来てる人でした
>いいじゃない。
>最近の猟奇的な犯罪の元凶がなくなるんでしょ?
この方はマスゴミに洗脳でもされてんですかね。どうしてそういえるのか不思議でしょうがない
マンガ読んでるけどなくなってもいい。
マンガ必要な人達は周りの子供達を守ってくれるのですか?
私はこの議論を歓迎しています。
これでやっとみんなが真剣に考えてくれるから。反対するのもいいです。同時に犠牲者の事を守りたいという気持ちを少しでいいので世間に示して下さい。
出来ないならまた同じことになると思います
まあ、誰でも考えつくネタですが。
(そう考えると、オリジナルのニーメラーの凄さ
が実感できますね)
『彼らが最初18禁ゲームやロリコン漫画を青少年の健全育成保護の
ためと言って弾圧した時、私は何もしなかった。
私はそんな物に興味は無かったから。
彼らが次にガンダム、エヴァンゲリオン、スーパーロボット大戦を
戦争美化だと言って弾圧した時、私は何もしなかった。
私はそれらに興味が無かったから。
彼らが次にクレヨンしんちゃんやボーイズラブ小説を道徳的に問題が
あると言って弾圧した時、私は何もしなかった。
私はそれらに興味が無かったから。
彼らが次に北斗の拳、男塾、ドラゴンボールを暴力を助長すると
言って弾圧した時、 私はファンだったので立ち上がった。
だが、その時には誰も助けてくれる者はいなかった。』
>『図書館戦争』・『アウターゾーン』の「禁書」
私は星新一の「白い服の男」を連想しました。
あれも怖い話でしたね。
加えて言うなら、最近大ヒットした実写ドラマ、実写映画は漫画が原作の物が多いです。
それらに出演している俳優、主題歌を歌ってるミュージシャンも無関係ではないのですよ。
もし漫画不況に陥って出版社や街の本屋さんが潰れたら、学術書や参考書の類も手に入らなくなります。
漫画は読まないから関係ないというのは楽観論ですね。
実際はいろんなところにしわ寄せが来ます。
>マンガ読んでるけどなくなってもいい。
あなたが「なくなってもいい」と思っても、「なくなったら困る」という人が大勢いることをお忘れなく。
僕は酒を飲みません。だから酒がなくなっても困りません。しかし、酒を禁止する法律を誰かが作ろうとしたら、断固反対しますね。
法律で酒を禁止したらどうなったか、「禁酒法」で検索してください。
>マンガ必要な人達は周りの子供達を守ってくれるのですか?
「守る」というのは過激なポルノコミックから守るということでしょうか? だったら、そういうものはすでに18歳未満販売禁止です。
それとも変質者から守るということでしょうか? だったら、次の日記でも書いたように、日本はすでに十分すぎるほど性犯罪の少ない国です。
僕にも13歳の娘がいます。子供のためを思い、今の日本という自由な良い国を未来に残したいと思うからこそ、今回の条例改正案に反対しているのです。
>同時に犠牲者の事を守りたいという気持ちを少しでいいので世間に示して下さい。
もし、表現規制することで犯罪の犠牲者が大幅に減り、それが言論の自由を失うデメリットを上回るという確かな証拠があるなら、僕も規制に賛成します。でも、そんな証拠はどこにもありません。
本当に「犠牲者の事を守りたい」という気持ちがあるなら、データを直視すべきです。
ちなみに、レイプに対する怒りを表明した「暗き激怒の炎」という小説を、昔、書いたことがあります。僕が性犯罪に対する否定の意思を世間に示していないと思われるのなら、それは間違いです。
http://homepage3.nifty.com/hirorin/youma01.htm#kurakigekidono
有り難うございます。
さて、この件で、議論モドキを、規制に親和的なお考えの、複数のお方と致しまして。
しんどかったです。
善意という名の狂信に取り憑かれた人には、なかなか、道理が通用しませんでねえ…。
皆さん、「そういうマンガは、子供に良くない」というお考えが、牢固としてお有りでした。
こちらの上の方にも、おいでのご様子ですね。
先方「そういう漫画を、心身の未発達な子供に読ませるのはまずいという認識は、共有出来ていますよね?」
「すいません、特にそういう認識は無いです」
先方「俗悪漫画に反対しない奴は子供達のことはどうでもいいと思ってるんだ!」
「有害性についての裏付けになるデータを出して。
さもなければ、ガス抜き効果による積極的有益性の可能性も認めてくれないと、片手落ちです。
子供を出汁に、自分の好悪だけ主張したがっているんだって見なされても、しょうがないですよ?」
或る方(結構、暴力的と言われてもしょうがない要素を含んだ作品を描いておいでの漫画家さん)には、こんなことを言われました。
「あなたは、先方の感情や思考をおもんぱかっていない」
「理屈で負けたら人間がしぶしぶでも動くと思ったら大間違いですよ」
『えーと。
遠回しに、当方の理屈は正しいと、認めてくれておいでのご様子ですが。
こっち側には、感情は無いとでも?』
そう、言いたくなりました。
断交になりそうで、言ってませんけど。
SF関係では、多分、ご存知の方の多いであろう評論家さんは、私が、散々、複数の論拠で主張した後で、それらを読んで下さっていなかったかのように、斯様なご質問を下さいました。
「この情報化社会で、どうやって子供達を守るか、考えていますか」
わたくし、それまでの主張を、整理して繰り返した上で、以下の様にも言っておきました。
「無垢な者は、いずれ知恵の実の禁を破らねばならず、そしてそれを唆す蛇が必要なのだ。楽園から出ていき、歴史を始めるために」
「《子供》を《文明人》とするのは、親の躾でも学校の教育でもなく、《文明》それ自体の毒だ」
しかし。 『情報化社会』と来ましたか。
ケータイやネットの普及どころか、テレビも漫画本も贅沢品だった半世紀以上も昔に、「日本子どもを守る会」とやらが、手塚治虫先生の「鉄腕アトム」を、焚書したりしている由ですが。
【2006年11月5日放送 NHKスペシャル『ラストメッセージ第1集「こどもたちへ 漫画家・手塚治虫」』】
【山本夜羽氏 "日本でのマンガ表現規制略史(1938~2002)"
http://picnic.to/~ami/kisei/ryakushi.htm 】
『私の生まれる以前ですが、貴方は、当時、リアルタイムでその状況に立ち会った世代ですよね。
貴方は何とも思わなかったのか。
或いは、貴方は、当時から、規制に賛成していたのか。』
そう、言いたくなりました。
ボチボチ、マイミクを切られて、アク禁になりそうですが、その前に、言っておきましょうかねえ。