野暮かも知れませんが(笑)、もう一つ書いてみたくなりました。
> いや、小規模な武装勢力ほど逆に存在しやすいっていうもんだ。そもそも御宅は帝国軍、さらにいうなら軍隊の能力っていうもんを過大評価しすぎている。
> いくら帝国軍が大兵力とはいえ、2000万程度の兵力じゃおそらく数百はあるだろう友人生計とそれらを結ぶ航行路をおさえるだけで手一杯だろうし、それ以外の無人の星系までには手が回らないはずだ。そうしたところにある辺境の忘れ去られた惑星や、あるいは破棄された同盟軍の基地なんかを利用すればゲリラ部隊の軍事拠点なんかは簡単に作れるはずだ(確かメルカッツもバーミリオン会戦の後そうした軍事基地の一つをアジトにしていたし、地球なんて何百年もの間帝国に忘れ去られ地球狂に支配されていたじゃねーか)。
端的に云って、小規模な武装勢力の存在しえる余地は十分にあるでしょう。
が、その勢力にどの程度の事が出来るのかは判りません。
というより、宇宙空間の広大さを考えれば、ある程度の数を揃えないと、
航路封鎖や惑星攻略は至難の技です。
惑星防衛のために戦闘衛星や、長距離航行能力を持たない恒星系単位の防衛隊を
配備しているのは作中でも描写されています。
小規模な武装勢力があったとして、帝国や同盟の領域の広大さや人口を考えた場合、
多少の掠奪や商船拿捕程度の事は「無視していても問題ない」。
つまり、影響力がないと云うことです。
地球が無視されていたのは表向き軍事力や経済力を持たなかったからであり、
地球教がその存在とテロ活動を知られた途端拠点を破壊されたのは周知の事実です。
武装勢力は存在できても、「上手く活動できない」ような限定条件があれば、
話は破綻せず成立してしまいます。
そして、そのような限定条件はいくらも考えられます(宇宙航行技術の限界、特定の
物資の必要性など)し、作中で特にそう云うことについて触れられていないのは、
「あえて書かずとも読者がそう云う事を気にした場合、補完できてしまう程度の
納得力が他の部分にあれば」話は書けてしまうからではないでしょうか。
> 宇宙空間でゲリラ戦ができるのかっていうところは議論が分かれると思うけど、小惑星地帯とか気象条件の厳しい惑星とかに引きずり込めばオレは十分可能だと思う。
> ゲリラ戦ならば兵器も安上がりですむし、駆逐艦程度が相手なら民間の商戦を改造したものでも十分戦えると思う。
> 大型の戦艦や空母なんて小惑星帯でのゲリラ戦じゃ返って無用の長物だと思う。
小惑星帯の中に戦艦が入る必要は全くないでしょう。
あの世界の戦艦は、戦闘艇の母艦機能も持っています。
小惑星帯に潜んだ敵をいぶりだしたり、叩いたりするのは単座戦闘艇がうってつけ
です。
戦闘艇を十分積めるなら重巡洋艦でもいいでしょうが、作戦の規模に合わせて
戦艦や空母を選んでも、別に不思議ないところでしょう。
・・・あえてシリアスな言い方をするならば、小惑星帯は、別に小惑星が地球上で
思うような規模で「密集」した場所ではありません。
そこに対探知の盾となる小惑星があったとしても、平均距離は人間が作った戦艦が
ゴミにぶつかれるほど狭いものではありません。
実を云えば、銀英伝の戦艦程度のサイズのものが小惑星帯に入ったところで、岩に
ぶつかるとしたら全くの天文学的なバッドラックでしかないでしょう。
当然、戦闘に不利と言う事もありません。
作中でそう云う風に設定されているだけです。
ガンダムに登場する「暗礁空域」は重力平衡点に浮遊物が集まったものと設定されて
います。
本来の小惑星帯にあんなに岩が密集していない事を、富野監督は良く知っています。
> > ゲリラ戦実施に当たっては、どうやって小惑星や不安定星域に引きずり込むか、ですね。もし私が帝国軍の追討部隊指揮官なら、秘密基地周辺に防衛ラインを敷いて、そこに押しこめたまま、あとは相手にしませんよ。引きずり込まれて犠牲をだすくらいなら、自滅を待ちます。
>
> そんなもんこっちだって後方での撹乱活動とか暴動の扇動、はたまた民間船を装った自爆テロ(!)などいくらでも手はあるさ。
実際には「いくらでも手がある」軍事行動はありません。
テロリスト的な「いくらでも手がある」に走った組織は、市民を敵に回します。
ゲリラ戦がゲリラ戦であり、テロリズムと一線を画すことが出来るのは、市民との
連携があり、支持を取り付ける事が出来、素朴なパトリオティズムから、ジオニズム
のような新たな理念まで、運動体としての力を一に出来る指導層がついていての事
です。
(IRA、アルカイダ、群小のテロ組織の例でもある程度その類型は現れています)
皮肉な例を引けば、デラーズ・フリートは結局、ジオン再興はなしえなかった。
彼らはスペースノイド全体に対する反動を生む元となってしまいました。
戦争するなら、敵から政治的譲歩を引き出すまでやらねば意味がないという点を
あえて軽視し、軍事的浪漫主義に(ある程度意図的に)走った彼らの、当然の結末
とはいえます。
ありていに云って、「小規模の独立した武装集団」や、「同盟や帝国に属さない
勢力」をあえて設定したところで、「大きい方の政治的勢力である二つ」に影響を
及ぼせなければ意味がない。
いや、あえて云えば、帝国、同盟両者とも、「自分に属さない勢力を戦争遂行の
邪魔と見なして」壊滅あるいは吸収しようとする可能性も高い。
銀英伝の場合、渦状枝の間は星が少なく、航行しづらいという設定もあるので、
それこそ「長征さらに1万光年」して遠くに別勢力を作れる可能性はあるが、
「それは物語の間、まるっきり帝国・同盟両領域に影響を及ぼさなかった。
なにぶん宇宙空間は広大なので、彼らが発見されたのは500年後だった」
とか、後世の歴史家が語るのも可能でしょう。
> > 結局、清の支配を逃れ辺境である台湾に政権を構築した鄭成功一派の末路を宇宙レヴェルで再現するだけになると思いますよ。
>
> 俺も何べんも言ってるけど「勝てる」とか「長期間戦う」なんて一言も言ってないぜ。あくまでも10年か20年くらいは「持ちこたえることができる」かもしれないし、その間に政治的解決とかで惑星や盛京の一つや二つ独立を認めてもらえるかもしれない(鄭和の政権だって何だかんだいって30年くらいはもっているんだし)。
> それに鄭和の場合は台湾のほかに逃げ場がなかったわけじゃない。でもこっちの場合、宇宙空間は無限なんだし、帝国の目が届かない星系なんていくらでもあるわけだろ。そうしたとこに何十でも軍事拠点を作ってそこを根城にゲリラ的な抵抗運動を続ければ結構何とかなるんじゃないかってことを俺は言ってるんだよ。
可能でしょうが、それが銀英伝が語る期間内に起きるとは限らないと思います。
なにぶん、そう云った組織を作るには時間が掛かりますが、銀英伝は足掛けで10年も
ない期間の話だし、背景の歴史を入れても数百年。
銀河系には1000億以上の星があり、10万光年の直径を持つので、その全容積を
人類が制覇するにはまだまだ長い時間があり、政治的勢力を作ってもそれが接触する
まで、帝国と同盟の場合で150年を要しました。
> そもそもこんな細かいことがどうこういう以前に、無限の領域を持つ宇宙空間において単一の政体が人類を統一して中央集権体制を築くなんていうこと自体が根本的におかしいんだよ。
「ファウンデーション」(アイザック・アシモフ)では、全人類を1つの帝国が制覇
していました。
ペリー・ローダンでも、銀河には幾つもの国家がありますが、他の銀河の場合統一国家
を築いていた例が幾つもあります。
「放浪惑星」(フリッツ・ライバー)では、全宇宙は一つの政体の支配下にあります。
要するに、物語の根幹をなす設定とは「最大規模の嘘」であると云う事です。
それがありえるか、ありえないかという事になると、
「超光速航行も、重力制御も、レーザー水爆も、核融合炉も、サイボーグも、
未来予知も、ESPも、クリンゴンもロミュランもみんなみんな」
存在しないし、存在するはずがないのです。
それが、物理的事実なのです。
> それに宇宙戦争っていうと「艦隊戦」しか思い浮かばないの?戦争っていうともっといろんな形態があるでしょう(例えば宇宙空間での船の監視の問題だってそんなもん隕石に偽装しちまえば一発OKじゃん)。
隕石に偽装した船を探知する技術(質量探知、金属探知、電磁探知など)を構想する
事も非常に簡単です。
対探知技術も当然構想できますが、探知技術が対探知より優っていればOKです。
また、艦隊戦が目立つのも、それが「燃え」だからでしょう。
地獄の陸戦を延々と10巻書いても面白くないし・・・。
まず、昨日の私の書きこみはただの漫然とした反論になっていて論旨が不明確でしたね。大変失礼いたしました。
では、ここで改めて論旨を整理してみます。
「辺境への退避(第二の同盟計画)それ自体は実施可能。しかし実施したところで成果は見こめない。それゆえに同盟当局はこれを実施しなかったのだと考えられる。よって、辺境への退避について描写していないからといって銀英伝を批判する論拠にはならない。」
これが私の立場です。
1.第二の同盟計画の実行可能性
これについては深草の少将さまのおっしゃる通り実施可能です。
ただし、国家レヴェルでの実行があれば、という条件は必要であると判断します。深草の少将さまはこの点につき
<いや、小規模な武装勢力ほど逆に存在しやすいっていうもんだ。そもそも御宅は帝国軍、さらにいうなら軍隊の能力っていうもんを過大評価しすぎている。>
と述べられ、第二の同盟計画に限定せず小規模武装勢力割拠の可能性を主張されています。しかし、以前私が指摘したリスク(基地建設・艦船調達など)をどう克服するかについて言及されていません。
そもそも、深草の少将さまは管理システムとしての行政機関の総体的な能力を過小評価しています。国家のバックアップのない武装勢力が辺境への進出を目論んだとしても、資金収集の段階で財務省や金融当局に目をつけられ、大量の人員(不穏分子ですな)や機材を調達した時点で現地警察や国家警察に監視され、それらを乗船させる時点で港湾当局に怪しまれ、出港してから現地に行くまで航路局に不信感を抱かれ(通常航路を逸脱して何も無いはずの辺境に向かうわけですから)、基地建設中に軍に急襲されておしまいです。
治安維持は軍だけでやっているわけではありませんよ。
また
<確かメルカッツもバーミリオン会戦の後そうした軍事基地の一つをアジトにしていたし、地球なんて何百年もの間帝国に忘れ去られ地球狂に支配されていたじゃねーか>
という二つの事例をあげて反論しておられますが、この二つの事例はこの場合共に不適切です。
まず地球の事例は、単にそれまで当局から「危険なし」と判断されていただけです。その証拠に、危険と判断された途端、当局の鎮圧の前に為すすべも無く撃滅されています。この点、古典SFファンさまのご指摘の通りです。
それからメルカッツの事例。これは逆に国家崩壊という特殊事情があって、かつ極めて少数の(たった60隻)でないかぎり辺境割拠が出来ない事を証明しています。
2.しかし第二の同盟を実施しても成果は望めない
深草の少将さまは
< 俺も何べんも言ってるけど「勝てる」とか「長期間戦う」なんて一言も言ってないぜ。あくまでも10年か20年くらいは「持ちこたえることができる」かもしれないし、その間に政治的解決とかで惑星や盛京の一つや二つ独立を認めてもらえるかもしれない(鄭和の政権だって何だかんだいって30年くらいはもっているんだし)。>
とおっしゃっていますが、まず無理です。政治的解決など望むべくもありません。第二の同盟を建設し、そこに脱出することはできても、そこを包囲されれば身動きがとれなくなってしまうからです。
まず鄭成功の一派が何ら政治的成果をあげることなく敗亡したことは言うまでもありませんね。
帝国の治安指揮官の立場から考えて見れば解る話ですよ。辺境拠点周辺に封鎖線を設定し、そこに国力にモノを言わせて圧倒的な兵力を蓄積すればいいだけですから。「第二の同盟」に対しては封鎖、旧同盟からの密航船(そんなものいれば、ですが)に対しては阻止。これを継続すればいずれ包囲下の「第二の同盟」は捨て身の決戦か降伏かを余儀なくされます。
勝利が確定しているのに、わざわざ政治的譲歩をしてやる必要は、帝国には一切ありません。
問題は「第二の同盟」側がこの包囲を逃れられるか、ですが・・・
<それに鄭和の場合は台湾のほかに逃げ場がなかったわけじゃない。でもこっちの場合、宇宙空間は無限なんだし、帝国の目が届かない星系なんていくらでもあるわけだろ。そうしたとこに何十でも軍事拠点を作ってそこを根城にゲリラ的な抵抗運動を続ければ結構何とかなるんじゃないかってことを俺は言ってるんだよ。>
何十でも拠点作って、とおっしゃられますが、そのための物資は何時まで続くのでしょうか?新拠点の建設途中、どうやって帝国軍の妨害に対処するのでしょうか?ゲリラ戦で時間を稼ぐにしても、帝国軍の兵力は圧倒的ですよ。一回や二回勝っても、数に飲みこまれるのがオチです。地上のゲリラ戦とは違い、ゲリラ側の兵力は極めて限定されていますから(ヴェトナムでの成功は、あくまで人民からいくらでも兵力補充を募れたからです)。
まさか同盟が滅亡前に予め幾つも作っておく、ということはありえませんよ。そんな余力があったらまず継続中の帝国との戦争に回すに決まっています。それに同盟国民が「政府と軍が自分達を見捨てて逃げる準備を整えている」と知れば議会で大問題になります。秘密基地だから秘密予算で、と考えられなくもないですが、幾つもの基地を築く莫大な予算を完全に隠しとおすことはできないでしょう。「個々の基地の位置や規模は国家機密だが、秘密基地建設を計画している」くらいの説明はしなければならないはずです。で、その段階で議会に潰されて終了。
従って、逃げることは出来ません。最初に割拠拠点を築くことはできますが、そこから逃げる事もできず、その周辺を帝国軍に包囲されて終わりです。
さて、この包囲下に旧同盟からの支援が届く可能性については
<船舶の検閲にしたってそんなもん民間の船に偽装するか、さもなきゃいっそ港の役人を買収しちまえばいいんだ。そんなくらい日本の暴力団でもやってるぜ。そもそも港湾局の役人だって普通に考えるなら元同盟の人間だろう。それなら買収だって簡単にできるだろうし、そんなちまちましたことしなくてもさ、巨大企業からの支援とか地方の有力者の支援とか取り付けちまえば物資の横流しや、密航くらいさらには艦船の建造だって簡単だろう(あのアルカイダだってアラブの大富豪や王族の支援を受けていたんだし、コロンビアとかじゃそんなの当たり前だぜ)。
どうも自由惑星同盟が滅亡した後、ロイエンタールの反乱とかあってかなり治安状態は悪化していたみたいだしな。ああいう状態じゃ、果たして帝国の実効支配が果たしてどこまで及ぶのか怪しいもんだ。>
帝国の実行支配が一時的に弱まるのは間違いありません。しかし、そうした時最優先で帝国が掌握するのは航路と港湾でしょう。従って、この時期ですら、密航等の非合法手段による第二の同盟支援は難しいですね。
買収云々については、まぁ成功率がどの程度になるかをじっくり考えて見るべきですね。
それからこれらのリスクをクリアして出港できても、封鎖線に引っかかって拿捕されて終わりです。
よって第二の同盟に旧同盟からの支援は殆ど届かないでしょう。
逃げ出しても包囲され、孤立無援のまま自滅を待つのみ。帝国もそれを知っているからただ待つのみで譲歩など考えない。
3.従って同盟政府はこの計画を実行しなかったものと考えられる
逃げ出したところで成果はほとんど望めない。ならば無駄な事はしない。それだけの話です。
4.よって辺境脱出の話がないからといって銀英伝批判の論拠とはならない。
こういうわけです。
<そもそもこんな細かいことがどうこういう以前に、無限の領域を持つ宇宙空間において単一の政体が人類を統一して中央集権体制を築くなんていうこと自体が根本的におかしいんだよ。いろいろもっともらしいことをおっしゃっているけど、どうもあなたはそうした本質的なことがわかっていないみたいだね。>
まず、細かいことを指摘されて詰まるのは本筋がしっかり立論されていない証拠ですよ。本筋がちゃんとしてればいくらツッコミをくらってもちゃんと反論できるはずです。
単一政体の統一がおかしいとおっしゃいますが、どこがどうおかしいのか、きちんと理由付けて説明して下さい。単にイメージとフィーリングでおかしいといっても説得力がないですし、こちらとしても反論も同意もできません。
<それに宇宙戦争っていうと「艦隊戦」しか思い浮かばないの?戦争っていうともっといろんな形態があるでしょう(例えば宇宙空間での船の監視の問題だってそんなもん隕石に偽装しちまえば一発OKじゃん)>
艦隊決戦以外の宇宙戦争は基本的に大局に影響を及ぼしませんから。少なくとも銀英伝世界では。
色んな形態があるとおっしゃるなら、きちんと例を提示して見せて下さい。こちらを批判されるのは結構ですが、論拠を示して頂かないことには反論も反省も出来ません。
> 小惑星帯の中に戦艦が入る必要は全くないでしょう。
> あの世界の戦艦は、戦闘艇の母艦機能も持っています。
> 小惑星帯に潜んだ敵をいぶりだしたり、叩いたりするのは単座戦闘艇がうってつけ
> です。
> 戦闘艇を十分積めるなら重巡洋艦でもいいでしょうが、作戦の規模に合わせて
> 戦艦や空母を選んでも、別に不思議ないところでしょう。
>
> ・・・あえてシリアスな言い方をするならば、小惑星帯は、別に小惑星が地球上で
> 思うような規模で「密集」した場所ではありません。
> そこに対探知の盾となる小惑星があったとしても、平均距離は人間が作った戦艦が
> ゴミにぶつかれるほど狭いものではありません。
> 実を云えば、銀英伝の戦艦程度のサイズのものが小惑星帯に入ったところで、岩に
> ぶつかるとしたら全くの天文学的なバッドラックでしかないでしょう。
> 当然、戦闘に不利と言う事もありません。
> 作中でそう云う風に設定されているだけです。
じゃあ、あのイゼルローン回廊とかフェザーン回廊とかいう「回廊」っていうのはなんなんだよ。俺はてっきりアステロイドベルトやガス状物質で構成されている危険宙域だと判断していたけど、そういうものが存在しないんなら、あの「回廊」の壁は何でできているんだよ。
> 実際には「いくらでも手がある」軍事行動はありません。
> テロリスト的な「いくらでも手がある」に走った組織は、市民を敵に回します。
> ゲリラ戦がゲリラ戦であり、テロリズムと一線を画すことが出来るのは、市民との
> 連携があり、支持を取り付ける事が出来、素朴なパトリオティズムから、ジオニズム
> のような新たな理念まで、運動体としての力を一に出来る指導層がついていての事
> です。
> (IRA、アルカイダ、群小のテロ組織の例でもある程度その類型は現れています)
> 皮肉な例を引けば、デラーズ・フリートは結局、ジオン再興はなしえなかった。
> 彼らはスペースノイド全体に対する反動を生む元となってしまいました。
> 戦争するなら、敵から政治的譲歩を引き出すまでやらねば意味がないという点を
> あえて軽視し、軍事的浪漫主義に(ある程度意図的に)走った彼らの、当然の結末
> とはいえます。
どんな強力な艦隊や軍隊であっても後方の兵站を断たれればとたんに麻痺してしまう。前線に多くの兵を出してしまえばそれだけ後方はお留守になりそれだけ航路妨害や港湾施設の破壊などの後方撹乱がしやすくなるし、かといって後方の守りを固めればそれだけ前線に出てくる実戦部隊が少なくなり、兵力分散の愚に陥る。
田中芳樹は作中で何度も補給や兵站の重要性を説いているくせに、実際にそれを維持することがどれだけ大変かほとんど書いてないじゃないか。
ラインハルトのラグナロック作戦なんか15万隻の艦隊のうちの大部分が戦闘艦みたいな書きぶりだし、実際に補給を受けたのは1回や2回。
あんないい加減さであんな大軍を引き連れて何千光年も遠征できるわけね―じゃねーかよ(まともに考えるんなら15万隻のうち少なくとも10万隻は補給関係の船でねーとな)。
> ありていに云って、「小規模の独立した武装集団」や、「同盟や帝国に属さない
> 勢力」をあえて設定したところで、「大きい方の政治的勢力である二つ」に影響を
> 及ぼせなければ意味がない。
> いや、あえて云えば、帝国、同盟両者とも、「自分に属さない勢力を戦争遂行の
> 邪魔と見なして」壊滅あるいは吸収しようとする可能性も高い。
> 銀英伝の場合、渦状枝の間は星が少なく、航行しづらいという設定もあるので、
> それこそ「長征さらに1万光年」して遠くに別勢力を作れる可能性はあるが、
> 「それは物語の間、まるっきり帝国・同盟両領域に影響を及ぼさなかった。
> なにぶん宇宙空間は広大なので、彼らが発見されたのは500年後だった」
> とか、後世の歴史家が語るのも可能でしょう。
>
それならなおさらのこと、帝国と同盟以外の政体の存在を肯定することになるだろう。あんたの言ってることなんか矛盾してねーか。
> 要するに、物語の根幹をなす設定とは「最大規模の嘘」であると云う事です。
> それがありえるか、ありえないかという事になると、
> 「超光速航行も、重力制御も、レーザー水爆も、核融合炉も、サイボーグも、
> 未来予知も、ESPも、クリンゴンもロミュランもみんなみんな」
> 存在しないし、存在するはずがないのです。
> それが、物理的事実なのです。
まあ、ウソと言ってしまえばそれまでだがよ。
> 隕石に偽装した船を探知する技術(質量探知、金属探知、電磁探知など)を構想する
> 事も非常に簡単です。
> 対探知技術も当然構想できますが、探知技術が対探知より優っていればOKです。
>
> また、艦隊戦が目立つのも、それが「燃え」だからでしょう。
> 地獄の陸戦を延々と10巻書いても面白くないし・・・。
確かヤン・ウェンリーのエル・ファシル脱出大作戦のとき、同盟軍の船団を帝国軍が隕石群と間違えて取り逃がしたって話しのってなかったか。
輸送船団さえ隕石群と間違えるようなちゃちな探知技術なら武装商戦の十堰や二十隻隕石に偽装していてもそう簡単に見つからんだろう。
あんたらの認める「正史」にもちゃんとこうしたエピソードがのっているんだぜ。
そもそもセンサーを仕掛けるっていったってそんなもんどうやって全宇宙全星系をカバーするんだよ。
> >>じゃあ、あのイゼルローン回廊とかフェザーン回廊とかいう「回廊」っていうのはなんなんだよ。俺はてっきりアステロイドベルトやガス状物質で構成されている危険宙域だと判断していたけど、そういうものが存在しないんなら、あの「回廊」の壁は何でできているんだよ。
はっきり云いましょう。
「作者に都合の良い設定による仮想」です。
私の知る物理学では、光年規模の星間空間に航行障害をもたらすような物理現象は、超新星の爆発や銀河中枢ブラックホール周辺の降着円盤
程度しか思いつきません。
ただし、人類はまだ恒星間航行技術を持っていないので、そのような
技術を獲得した時のみ問題となるような天文現象が発見される可能性はあります。
超光速現象に擾乱を起こすような未知の素粒子の大量放出とか、
局所的な空間の歪みの影響が長距離まで及ぶとかね。
> どんな強力な艦隊や軍隊であっても後方の兵站を断たれればとたんに麻痺してしまう。前線に多くの兵を出してしまえばそれだけ後方はお留守になりそれだけ航路妨害や港湾施設の破壊などの後方撹乱がしやすくなるし、かといって後方の守りを固めればそれだけ前線に出てくる実戦部隊が少なくなり、兵力分散の愚に陥る。
> 田中芳樹は作中で何度も補給や兵站の重要性を説いているくせに、実際にそれを維持することがどれだけ大変かほとんど書いてないじゃないか。
物理的に、それを書くと小説ではなくドキュメンタリーになってしまいますが?
そうなると「白書」とその裏付けとなる大量の電子化した資料が必要と思われます。
それ自体をゲーム化するとさらにメディアミックスで面白いかも知れません(銀英伝ゲームはあったな)。
パラメーターを上手く調整しないと戦えないでしょうが・・。
> ラインハルトのラグナロック作戦なんか15万隻の艦隊のうちの大部分が戦闘艦みたいな書きぶりだし、実際に補給を受けたのは1回や2回。
> あんないい加減さであんな大軍を引き連れて何千光年も遠征できるわけね―じゃねーかよ(まともに考えるんなら15万隻のうち少なくとも10万隻は補給関係の船でねーとな)。
「まとも」とは、それを支える物理的条件により大きく変動する概念です。
例えば、あの世界の核融合炉が1会戦あたり平均してどのくらいの燃料を消費するのか、
単座戦闘艇が消費する推進材の量は、ビーム兵器の補給方法や必要物資量は?
推定は可能ですが、われわれには特定する方法がありません。
数字がないからです。
それに、極端に言えばあの世界の物理法則が微妙にこの世界と
違わないという保証はないからです。
「平均的人間が消費する食糧の量はわれわれの世界ではかれこれ、
ゆえに作中で物資が占めるべき容積からして大きな矛盾がある」
という計算は可能です。
が、「圧縮食糧が十分あったので問題なかった」とされたら終わりです。
私思うに、物語の設定の重要性は納得力であり、数字あわせではありません。
数字合わせも面白いですが、突き詰めれば知識の限界に突き当たって必ず崩壊します。
それが、技術者と作家の向いている方向の違いです。
そして、そう云うものでなければ物語は生まれないでしょう。
> それならなおさらのこと、帝国と同盟以外の政体の存在を肯定することになるだろう。あんたの言ってることなんか矛盾してねーか。
「政体が存在していても、物語の期間中に接触しなかった可能性」を
後段で(直接にではありませんが)指摘しています。
実際、作中の設定だけを借りても、「人類には二つの政体しかない」のではありません。
「作中の人物が知らず、作中で描写されている後世の歴史家も語っていない」のです。
その場合、物語の中の視野はそこまでで破綻を起こしません。
同盟と接触するまでの帝国の人々も、「人類には一つの政体しかない」と思っていたはずです。
「設定上可能な事」が、「作中で全部起こらなくても」物語を
破綻させずに語る方法は十分あると思いますが。
> まあ、ウソと言ってしまえばそれまでだがよ。
物語の本質はもっともらしい虚構です。
人間種族は一般に、祝祭で、劇場で、映画館で、ゲーム世界で、それに入り込んで「遊戯」する事を愉しむものだとおもっていますがね(笑)。
われわれの討論も、人によって許せる線が違うだけでしょう。
> > >確かヤン・ウェンリーのエル・ファシル脱出大作戦のとき、同盟軍の船団を帝国軍が隕石群と間違えて取り逃がしたって話しのってなかったか。
> 輸送船団さえ隕石群と間違えるようなちゃちな探知技術なら武装商戦の十堰や二十隻隕石に偽装していてもそう簡単に見つからんだろう。
> あんたらの認める「正史」にもちゃんとこうしたエピソードがのっているんだぜ。
武装商船が、大きな問題になるほどうろついたら、当然専門の探知技術を開発するのではないですかな(笑)。
何しろ帝国はでかくて金があるから、たっぷりと金をかけて。
エネルギー量の違いを探知するとか、船の構造に着目して構造解析を
行うとか、方法はいくらもあります。
「そうしなかったのは、武装商船が問題になるほどうろつかなかったから」
と云う説明は可能です。
エル・ファシル脱出は「探知されにくい方法を知っていて、それを用いた」と考えても良いし。
こうした事はいたちごっこです。コストに見合うだけのものがあれば、技術はそっちの方向に伸びていく。
ブレイクスルーまでの期間は必要でしょうがね。
> そもそもセンサーを仕掛けるっていったってそんなもんどうやって全宇宙全星系をカバーするんだよ。
全宇宙を見張る必要は全くありません。
ゲリラを捕捉撃滅するのが必須条件ならともかく、
「ゲリラが大勢力なら拠点持ちであるから、拠点を探す」し、
「小兵力で分散しているなら、被害は大した事ないからほっておく」
という戦略だってありえるでしょう。
「ゲリラが居て、いろいろなことをやる」のが問題なのではなく、
「作中で問題になるような活動が出来るか」と云う可能性が、
銀英伝のような作品の場合、破綻を計る目安になる。
偽装や探知の技術のいたちごっこは枝葉末節に過ぎず、ある程度
都合の良い仮定を採用して何一つ問題はないと思うんですが。
> 艦隊決戦以外の宇宙戦争は基本的に大局に影響を及ぼしませんから。少なくとも銀英伝世界では。
> 色んな形態があるとおっしゃるなら、きちんと例を提示して見せて下さい。こちらを批判されるのは結構ですが、論拠を示して頂かないことには反論も反省も出来ません。
あなたはどうも俺の言っていることをまったく誤解しているようだ。
俺が言っているのは「武装勢力による地方割拠」じゃない。「辺境星域および旧同盟本土も含めた広範囲なゲリラ戦」のことを言ってるんだよ。
このような艦隊によるゲリラ戦っていうのは銀英伝5巻で実際にヤン・ウェンリーがやっているんだ。あんただって当然知ってるだろう。
1万隻以上の大艦隊があんな自由に動き回れるて、しかも帝国軍はそれすらも捕捉できなかったっていうんだったら、それ以下の数百隻規模の小艦隊ならなおさら言うまでもないと思わないか。
俺の構想をまとめるとこうだ。
・数十隻から数百隻規模の小艦隊(旧同盟軍が主力)で、旧同盟諒や辺境星域を移動ながら各地にセクトを建設しつつ神出鬼没のゲリラ戦を行う。
・資金や物資、艦艇のメンテナンスなどの問題は支援者、特に旧同盟系の企業や地方都市の有力者などのバックアップを得られることによりある程度は解決する(例えば帝国系の輸送船だけを襲う見返りに同盟系の輸送会社から援助を受けるとかね)。それにそうしたかねや物資の流れを強圧的に取り締まろうとすれば当然市民の生活を圧迫し、帝国への不満は高まることになる。
・たとえ帝国郡の艦隊に発見されても、そのときはヤン艦隊のごとく逃げればよい。帝国軍にしたってすべての星域に大兵力を配備しているわけじゃないし、第一そんなことをすれば財政がパンクする。
・「辺境星域」を「帝国の支配が及んでいない声域」と仮定するならば全銀河系の3分の2に及ぶわけであり、旧同盟領とあわせて帝国よりもはるかに広大な領域を完全に「包囲」することなど不可能である。
確かにこうした活動には大きなリスクが伴うけど、だからといって「まったく余地がない」って決め付けるのはちょっと視野が狭すぎるんじゃね―のか、准提督さんよ。
先日、2600番のレスにおいて、ハイネセンのあるバーラト星系はイゼルローン回廊のすぐ近くにあると書きましたが、銀英伝を読み直してみたところ、イゼルローン-ハイネセン間の距離は約4000光年と書かれていました。
よく読みもせずにいい加減な事を書いてしまい、申し訳ございませんでした。
さて、イゼルローン-ハイネセン間が約4000光年だとすると、新たな疑問が生まれました。
新書の1巻、16ページには「新天地の恒星郡には古代フェニキアの神々の名が与えられた。バーラト、アスターテ、メルカルト、ハダドなどである。」と書かれています。
この記述を信じると、アスターテ星系はバラート星系の近くにある事になります。
そうなりますと、アスターテ会戦のときラインハルトは同盟領内を、4000光年近く(3900光年位かも知れませんが)突っ切った事になります。
果たしてこのような事が可能なのでしょうか、何方かお教えいただけないでしょうか。
初めて投稿いたします。よろしくお願いいたします。
初めまして、深草の少将さん。
どこにレスとしてつけようか迷いましたが一応こちらに。
この後の一連のレスも含めて拝見してですが、宇宙にあるはずの広大な辺境とい
うべきものが本来あるはずで(またそこには多くの、様々な人間もいるはずで)そ
ういう世界を切り捨てて、単純な、ごく少数の英雄が思いのままに舞台を駆けめ
ぐる、そういった設定に無理を感じているのだろうかな、と読解しました。(他に
もいろいろ話題はありましょうがガンダムは見たことありませんし、軍事はトー
シロなのでパスです。)
で、私自身も、上に書いたような舞台設定には無理が多いと感じています。しか
しながらそう感じることによって面白さが色あせたという感覚は特にもっていま
せん。一方深草の少将さんにとってはだんだん色あせてきてしまっているのはど
うしてなんだろうな、となんとなく興味を持ってツリーを読んでおります。
(以降は深草の少将さんへのレスというより、たんなるつぶやきに
なっていまいますが…)
ところで作者の田中芳樹さんご本人はどうだったのだろうか、と考えると、やは
り無理を感じつつやっていたのだろうな、と感じています。それでもなによりも
アイデアの核に、二人の英雄が広大な宇宙空間に覇を競うというのがあってそれ
を実現するための設定だったのだろうと思います。(ご本人が無理を意識していた
のかどうかは分かりません。私はそう推測していますが。)
ただそういう単純な設定のお陰で痛快な、面白い話になったのだろう、とも思い
ます。
一方そういう、銀英伝では切り捨ててしまった部分はやはり作者としても心残り
で(あるいは技量の向上と共にそういう部分こそを書いてみたいと思ったか)、そ
れを「タイタニア」でやろうとしたのではないかな、と想像してます。「タイタ
ニア」は銀英伝的な面白さは減じているけれど、そのかわり、もうちょっと陰影
に富んだというか、襞を感じさせる面白さがあると感じています。
作家というのは、こういう進化というのは比較的よくあることなのではないかと
想像します。そんなにものを読んでいないので、ぱっと適切な例をあげられない
のですが…例えば小松左京の「復活の日」と「日本沈没」と「首都消失」とかか
な。あと妙な例ですが、レオナルド・ダ・ヴィンチの線画を見ていると、初期の
方が「流麗」というのが相応しく、後期にはそれが欠けていますが(そのせいか後
期の方が人気がない気がする)かわりに独特の味わい深さがあります。
(それでも結局、総合的にどっちがすぐれているか、みたいな話になると、こうい
うのって大体初期の作品に軍配があがりますが…)
初めましておじゃきさん。俺も実はタイタニアは結構嫌いじゃないぜ。
二次元的な艦隊戦は相変わらずだけど、銀英伝の「回廊」みたいにあまりにも不自然な設定はないし、ちゃんと複数の国家が存在するしゲリラも出てくるしょ。
それに勢力が二元化されていないから銀英伝よりも政治や外交、人間関係なんかがしっかり描けてると思う。
問題はタイタニアが未完だってことだな。ここに田中芳樹の作家としての「限界」があると思うんだけど。
>確かヤン・ウェンリーのエル・ファシル脱出大作戦のとき、同盟軍の船団を帝国軍が隕石群と間違えて取り逃がしたって話しのってなかったか。
エル・ファシルのあれは帝国軍のヒューマン・エラーです。
脱出を図る船団はレーダーに探知されないように何らかの妨害を行うはずという先入観が帝国軍にはありました。
それが妨害行動をとっていないから船団ではなく隕石群だろうという判断につながっただけです。
帝国軍がそう判断することを読んだヤンの作戦勝ちであって探知機の性能とは無関係です。
日本軍の真珠湾攻撃時にレーダーは日本軍の攻撃機を探知していたがB17が来るという情報を得ていたオペレーターがB17と判断して連絡をしなかったために日本軍の奇襲が成功したという話があります。
これをオペレーターのミスという人はいてもレーダーが役に立たないと言う人はいないでしょう。
エル・ファシルのあれは帝国軍が探知機の反応を隕石群と勘違いしたのであって探知機が隕石群と間違えたのではありません。
したがってあれを探知機の問題にするのは問題点のすり替えです。
<あなたはどうも俺の言っていることをまったく誤解しているようだ。
俺が言っているのは「武装勢力による地方割拠」じゃない。「辺境星域および旧同盟本土も含めた広範囲なゲリラ戦」のことを言ってるんだよ。>
なるほど。了解しました。では2614の書きこみで「宇宙海賊とか反政府ゲリラ」の割拠を主張していることや、2619の書きこみで前段の「帝国にも同盟にも属さないアウトローの集団の割拠」と後段の「旧同盟軍によるゲリラ戦」を分けた上で併記していることは、見なかった事にしましょう。
<このような艦隊によるゲリラ戦っていうのは銀英伝5巻で実際にヤン・ウェンリーがやっているんだ。あんただって当然知ってるだろう。
1万隻以上の大艦隊があんな自由に動き回れるて、しかも帝国軍はそれすらも捕捉できなかったっていうんだったら、それ以下の数百隻規模の小艦隊ならなおさら言うまでもないと思わないか。>
宇宙の3分の2を占める帝国にも同盟にも属さない領域はさておき、「旧同盟領を舞台とした」ゲリラ戦の展開については、私も充分に検討に値すると考えます。「まったく余地ナシ」というつもりはありませんよ。
ただ、一晩考えた上で出てきた私の結論は
「実施の余地は多いにあり、実際同盟軍統合作戦本部でも検討されたであろう。ただし、その成功可能性は正面決戦(マル・アデッタのこと)と同じ位に低い。成功可能性がほぼ同じであったため、どちらを実施するかは宇宙艦隊司令長官たるビュコックの選択に任せられた。ビュコックは決戦を選択し、ゲリラ戦略は幻の作戦案として日の目を見なかった」
というものでした。
<俺の構想をまとめるとこうだ。
・数十隻から数百隻規模の小艦隊(旧同盟軍が主力)で、旧同盟諒や辺境星域を移動ながら各地にセクトを建設しつつ神出鬼没のゲリラ戦を行う。
・資金や物資、艦艇のメンテナンスなどの問題は支援者、特に旧同盟系の企業や地方都市の有力者などのバックアップを得られることによりある程度は解決する(例えば帝国系の輸送船だけを襲う見返りに同盟系の輸送会社から援助を受けるとかね)。それにそうしたかねや物資の流れを強圧的に取り締まろうとすれば当然市民の生活を圧迫し、帝国への不満は高まることになる。
・たとえ帝国郡の艦隊に発見されても、そのときはヤン艦隊のごとく逃げればよい。定刻軍にしたってすべての星域に大兵力を配備しているわけじゃないし、第一そんなことをすれば財政がパンクする。
・「辺境星域」を「帝国の支配が及んでいない声域」と仮定するならば全銀河系の3分の2に及ぶわけであり、旧同盟領とあわせて帝国よりもはるかに広大な領域を完全に「包囲」することなど不可能である。>
確かにこれならば、相当期間にわたって帝国軍を苦しめる事が出来ると思います。同盟軍が組織的に、既存の基地を用いて実行するのであれば、基地建設や人員調達、兵站などの問題はかなり解決されますから。
それに旧同盟領で活動するなら、諸々の支援者からの支援の受け取りも容易になるでしょう。辺境への脱出の場合ゲリラ側は旧同盟領における帝国軍の占領支配・管理の充実を指をくわえて遠くから見ているしかありませんでしたが、旧同盟領内でゲリラを行うのであればその占領政策そのものを妨害できますから。それに何といっても物理的距離が近い。
ただ、まずゲリラを行うにもあくまで一定の数の艦艇が必要です。それを間に合わせるためにはマル・アデッタでの決戦は回避して、その分の艦艇を各ゲリラ基地に分散配備しなければなりません。
そして最大の問題は、帝国軍を苦しめる事は出来るだろうけど、最終的な勝利(別に帝国軍の撃滅に限らず、政治的な妥協を引き出すことも含めて)には至らないであろう、ということです。何故なら、同盟軍に兵力補充がないことには変わりないからです。一撃離脱の襲撃を繰り返すにしても、全く損害を受けないというわけにはいかないでしょう。そして損害の補充は絶望的です。いかに旧同盟領各地の有志の支援を受けても、それはあくまで「占領軍の目を盗んで」の調達になるはずですから。帝国本土から正々堂々次から次へと送りこまれてくる帝国軍の補充の数量に、最終的にはかないません。
ちなみに、松村元陸将補の『名将達の戦争学』(文春新書)によれば、ゲリラ作戦には
1.ゲリラ部隊を受け入れる民衆がある
2.退却できる聖域がある(敵正規軍が手出しできない地域、という意味でしょう)
3.陸続きに大国が武器支援してくれる
4.最終的に近代軍に成長して決戦する
の四つの原則が必要であるとのことです。これはあくまで地上世界でのゲリラの原則なのでそのまま当てはめるわけにはいきませんが、今回の場合1.は充足していても2.は難しく(帝国軍も各ゲリラ拠点に手だしは出来るでしょう)、3.で言わんとするところ、即ち潤沢な補充は達成不可能、4.は見こみ立たず、ということになるでしょう。
従って最終的には同盟軍ゲリラ部隊は帝国軍の数に飲みこまれて姿を消す、という末路になると考えられます。んで、帝国軍もそれがわかっている以上、ちょっと苦しくても我慢して戦い続ける、妥協はしない、と。
まぁ、それを言うならマル・アデッタの正面決戦も「大和特攻」と同レヴェルで、敗北が目に見えていたという点ではゲリラ戦略とどっこいどっこいだと思います。
んで、どっちを採用するかでビュコック元帥が「決戦」と言ったからマル・アデッタになり、ゲリラは実施されなかった、と。ただマル・アデッタの直前にビューフォート准将のゲリラ部隊が黒色槍騎兵艦隊の補給隊を襲撃したという記述がありましたから、案外ゲリラ戦略の方にも未練があったのかもしれません。
さて、これなら原作の記述を合理的に説明できたと思いますが、いかがでしょう。
それからもう一つの問題、単一政体問題については、
<それと単一政体云々という話についてだけど、ごく普通に考えるんなら「銀河帝国」なんて言う専制体制に対抗する政体が同盟だけって言うのも変な話し出し、ゴールデンバウム王朝がそんなに腐敗した国家だったっていうんなら、それこそ第2、第3の「自由惑星同盟」があったっておかしくないじゃない。>
うーん、これは「ごもっとも」と言わざるを得ませんね。ただ、自由惑星同盟の存在が確認されて以降は、帝国の亡命志願者達も「新しく自分達の国を創るのは面倒だから今ある同盟に逃げよう」と考えた、と解釈できます。
そして、ここからは作品の演出上の問題になりますが、作者としては「腐敗した民主主義と理想的な権威主義のどっちがよいか」という命題を描きたい以上、国家は二つでこと足りるわけで。3つ目(フェザーンを含むと4つ目)の国家を出すと、かえって読者にとって解りにくくなるだけだ、と判断したのでしょう。
この点リアルでない、と言われれば「その通り」としか答えようがありませんが、その分主題もハッキリして面白くなっているんだからヨシ、というのが私の個人的な意見です。この点は本当に個人的な好き嫌いの問題ですね。
さて。ここまで議論してきて、銀英伝もそれなりによく練られた話であることは深草の少将さまもご理解頂けたのではないでしょうか。もちろん、私も銀英伝が無謬だと思っているわけではありません。ケチをつけろといわれれば100や200、文句は出てきますよ。何で近代資本主義経済の同盟が封建的経済の帝国に国力で負けているんだ、とかね。でもそれでも銀英伝は「腐敗した民主主義か、清潔な権威主義か?」という主題や、戦略・戦術概念の理論と運用、シヴィリアンコントロールとは?、など、多くの示唆に満ちています。他にこうした示唆を突きつけてくる作品を、ライトノヴェルやらアニメやらゲームやらにおいては他に知りません。
あまり突き放さず、もう一度銀英伝に向き合って見れば、また何か発見があると思いますよ。
准提督殿、丁寧なレスありがとう。俺も何べんも言っているように最終的に帝国軍に勝てるとは思っていない。ただ辺境星域や旧同盟領を股にかけた広範なゲリラ戦を展開すれば数年かうまく行けば10年やそこらは粘れるかもしれないってことを言ってるんだ。
それにゲリラ戦の原則とやらについてだが、例えば大国の支援もなければ近代的な装備もなかったソマリアのアイディード将軍一派が米軍を撃退したように、必ずしも実際の戦史に当てはまるかどうかはわからないと俺は考える(もっとも帝国群が当時の米軍みたいに腑抜けだとは俺も思わないが)。
随分長々と論議をしてしまってたくさんの人たちに不愉快な想いをさせてしまったかもしれないが、結局この論争を通じて俺がなぜ「辺境」というものにこだわったかっていうと、最初に銀英伝を呼んだときに感じた、同盟軍にしろあるいは貴族連合軍にしろあまりにもあっさり滅びすぎる。ホントならもっと戦えるはずなんじゃないかっていう根本的な疑問があったからなんだよね。
たとえば門閥貴族にしたって500年間に渡って積み上げてきた歴史や伝統・それに地盤というものがあるだろうし、同盟にしたってたとえどれだけ腐敗していたにせよ、あの世界においては「民主主義」というものを代表する宇宙で唯一の政体なわけだろ。それが帝国からの侵攻を受けて、ここでも散々議論した辺境でのゲリラ活動とか市民のレジスタンスとかも含めて相当頑強な抵抗があってもいいはずだし、またそうした大規模な民衆反乱に直面したラインハルトやミッターマイヤーたちの困惑とか苦悩とかが描かれてもいいはずなのに、そうしたところがばっさり切り落とされてしまっているというのは、やっぱり小説としてみた場合「欠陥」であると思わざるをえないんだよね(また論争を蒸し返すようだけどさ)。
<随分長々と論議をしてしまってたくさんの人たちに不愉快な想いをさせてしまったかもしれないが>
少なくとも、私はお相手させていただいて楽しかったですよ。稼動停止状態だった脳ミソを久し振りに動かして、いい刺激になりました。
<結局この論争を通じて俺がなぜ「辺境」というものにこだわったかっていうと、最初に銀英伝を呼んだときに感じた、同盟軍にしろあるいは貴族連合軍にしろあまりにもあっさり滅びすぎる。ホントならもっと戦えるはずなんじゃないかっていう根本的な疑問があったからなんだよね。たとえば門閥貴族にしたって500年間に渡って積み上げてきた歴史や伝統・それに地盤というものがあるだろうし、同盟にしたってたとえどれだけ腐敗していたにせよ、あの世界においては「民主主義」というものを代表する宇宙で唯一の政体なわけだろ。それが帝国からの侵攻を受けて、ここでも散々議論した辺境でのゲリラ活動とか市民のレジスタンスとかも含めて相当頑強な抵抗があってもいいはずだし、またそうした大規模な民衆反乱に直面したラインハルトやミッターマイヤーたちの困惑とか苦悩とかが描かれてもいいはずなのに、そうしたところがばっさり切り落とされてしまっているというのは、やっぱり小説としてみた場合「欠陥」であると思わざるをえないんだよね(また論争を蒸し返すようだけどさ)。>
うーん、これはあくまで私の個人的な好悪の話ですが、この辺の記述がなかったとしても銀英伝は充分面白かった(実のところファン歴8年の間、つまらんと思った事は一度もない)ので、積極的には同意しません。「欠陥」とまでは言いません。
しかし、そういった話が付け加えられていたらもっと面白くなっただろうな、とは思います。
ぶっちゃけ、敵(という表現はいささか剣呑ですが)に塩を送るようで何ですが、このあたりガンダムがうらやましいですね。あの作品は1年戦争のメインストリームを本編でしっかり描いて、そして描き足りなかった部分は08小隊や0080できっちりフォローしている。おかげで一つの戦争を多角的に描く事に成功している。
要するに何が言いたいかと言うと、
「田中センセ、外伝書いてください。」
ということでして。
貴族連合の方は、あれ以上の抵抗は正直不可能だと思います。一度階級秩序の崩壊した軍隊は立てなおせないでしょうから。どこかに逃げてゲリラをやるにしても、下士官・兵がついてこないし、肝心の協力者がまず出てこない。いくら貴族が金を持っているとしても、買収に応じた企業・商人・個人は熱狂的にラインハルトを支持する民衆の監視の目に「密告」され、フクロ叩きにあうのは確実ですから。誰もそんなリスクを負ってまであんなしょーもない連中(復権の見こみの立たん連中)に手を貸したりはしません。
問題は先日来議論している同盟の抵抗です。こちらはまだ抵抗運動の発生する余地はある。金がないが、それを支援してくれる企業家や個人は出てくるでしょう。周りの一般人も取りあえずは(取りあえずは!)黙認するでしょうから。国家レヴェルでの抵抗は再起できないでしょうが(財政が破綻している)、反帝国レジスタンスは存在し得るでしょう。地上世界に留まる限り、それこそ100や200も。但し、本編で描かれなければならないほどの、歴史のメインストリームに影響を及ぼすほどにはなり得ないでしょうが。
そして、そういった同盟での、歴史に記述こそされないが(本編には登場しないが)、存在はした抵抗運動を「外伝」で描いてもらいたいわけですよ。素材としては深草の少将さまのおっしゃるように、書けば味のある作品足り得ます。
まぁ、ヘタすりゃ相当鬱な話になってしまいますが。何しろレジスタンスに勝ち目はありませんし、鎮圧側のミッターマイヤー達もひたすら義務感と罪悪感の板ばさみになる話ですから。誰も幸せになれません(^^)