優馬です。お久しぶり。
ロイエンタールってキャラは、作者の中では「生まれついての反逆者」という位置づけがなされていたように思えます。
なにせ、母親の不貞の動かぬ証拠たる金銀妖瞳。そのため片目を実の母親から抉られかけたという、銀英伝世界最大のトラウマ者だからです。
(このエピソード自体は、どこかに似たような歴史上の元ネタがありそうですね。なんとなく中国史的な話なんですが、アジア人では金銀妖瞳は難しかろうしなぁ。)
全体的に屈折の少ない銀英伝キャラの中で(だいたい悪役でも単に人格未熟なために性格が悪いというタイプ=要するに「お子ちゃま」タイプのワガママ人間ばかりが多くて・・・。帝国大貴族のほとんど、フォーク准将その他。)、トラウマ持ちでしかも金銀妖瞳という誰にでもそれと知れるスティグマ持ち。銀英伝世界の「のほほんキャラ」の世界では隔絶した異分子です。ここまで異質だと、物語の構造としては、いずれにせよ反逆とならざるをえなかったのでは、と思います。個人的には、こういうロイちゃんが健全さの塊のようなミッターマイヤーと親友というのが解せないんですけどねー。
ロイエンタールというキャラは、もう少し悪魔的になってもいい生い立ちなのですが、銀英伝世界では「皮肉はキツイけど本当はいい人」的存在に留まっています。だから、私的には「正史」におけるロイエンタールの反乱は唐突な感じがしました。キャラ設定的には強い「自己破壊衝動」を持つアブナイ人格であるはずなのですが、銀英伝を通してのロイエンタールは皮肉屋ではありますが情緒的には結構安定した「大人」の印象でした。(竜堂続とほとんど同じキャラのような気がするんですけど・・・?)
ロイエンタールの反乱は作者としては既定路線だったのだけど、人格破綻者としてのロイエンタールの描写には失敗しているのかな、と。それで反乱が多少唐突な印象を与えるのだと思います。
★フォローになってないかもしれないフォロー
個人的には「健全で安全な」銀英伝キャラは大好きです。
銀英伝って「上質なユーモア小説」という性格も持っていると思います。人物描写がブンガク的には薄くても、エンターテインメントとしては成功しているんでOKです。ロイエンタールが淫虐殺人狂だったりしたら、理屈上のつじつまは合っても、ライト感覚が取り柄の銀英伝物語世界が壊れてしまいます。そういう銀英伝は私もイヤなんで。
以上、思いつき悪役列伝・ロイエンタール編でした。