ここで例によってなんの約にも立たないパロディをば。
夢枕獏風銀英伝、題して「餓英伝」。
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シンプルな艦内であった。
装飾品の類が、極端にすくないのである。
奇妙な、部屋であった。
ブリュンヒルトの司令室--。
皇帝ラインハルトの、部屋であった。
そこには均整のとれた体に、鋭い視線をたたえた男がいた。
部屋の主、ラインハルト・フォン・ローエングラムがいた。
彫刻のような男だった。
何もかもが、美形だった。
指が、美形。
髪が、美形、
棟も足も肩も美形。
目から放たれている、眼光までが美形だった。
この男が、実戦戦争界のドンである。様々な伝説に彩られ、銀河系の戦争技の頂点に立つこの男が、ラインハルトであった。
「陛下。お呼びした彼が来ました」
ロイエンタールが声を掛けると同時に、ドアが開いた。
一見、どこにでもいそうな男であった。
美男子ではない。しかし、自分の肉体に、何か独特の気配をまとわり付かせている。
不思議な、男であった。
--ヤン・ウェンリー。
それが、この男の名前であった。
(続く)
「まあ、座れや、ヤン--」
ラインハルトが、微笑しながら言った。
「聴いてるぜ、色々とな」
「何をだ」
「だから色々だよ、ビュッテンフェルトの事や、ミュラーの一件とかさ--」
初対面のヤンに、ラインハルトはざっくばらんな口調でいった。
以前からの顔見知りであったかと、ふとそんな錯覚に陥りそうであった。
「うれしいねえ、あんたみたいな人がいてさ--。俺はよう、久し振りに血が騒いだぜ」
皇帝が、にっと笑った。そして、周りを見渡した
「こんなごたいそうなものを造っちまってよ、王朝なんてのを持つようになっちゃお終めえだな。戦争屋じゃなくて、政治家じゃねえか。自分で造ったものに振り回されて、大好きな戦争が、できなくなっちまう--」
「戦争が、好きですか」
「おう、好きだよ。派手な戦争も地味な戦争もみな好きだ。多くて強大な敵軍をぶちのめした時なんざたまらねえな。あんただってそうだろう?」
「好きです」
ヤンの口から、ほろりと出ていた。
「その好きな戦争がよ、最近はやり難くなっちまってなあ--これだけ所帯がでかくなっちまうとよ」
「ところでよ、あんた、帰ったあとで、俺を怒らせるような発言はしねえだろうな」
「怒らせる?」
「例えば、帝国に勝ったとか、帝国は弱いだとかさ。ビッテンフェルトやミュラー程度に勝っただけで、そう言われちゃあ困るんだよ」
「しないよ。ただ、ひとつ訊かせて貰えるかい」
「ほう、なんだい」
「誰に勝てば、帝国に勝ったと言っていいんだい?」
「いい質問だ」
皇帝は答え、ぽん、と自分の胸を叩いた。
「この、ラインハルトにさ---」
言った。
P.S--そして、800万人死にましたとさ(笑)。
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「解題」
今回、あまり一般的な知名度があるかどうかに関わらず「餓狼伝」のパロディなんかを書いてしかもノッた(笑)のはもちろん趣味なのだが、それ以外にもノン・イデオロギーで男たちが闘う(だけの)痛快娯楽小説と「銀英伝」にも、かなり共通した面がある、ということを証明したかったということもある。
同じだからといっても、勿論何にも悪くないのだがなんつうか、闘うことのエンターテイメント性、を自覚しつつこういう物語は作るべきであろう、という事です。
>餓英伝
さいこー(><)/(笑)
黒い背景に銀色のイセルローンが浮かんでいる。
そのまわりに無数の艦影が列をなしていた。
帝国軍である。
巨大な戦艦の一群が、さらに巨大なイゼルローンにむかって主砲を撃っている。
イゼルローンの複合装甲が、
みしみし。
みしみし。
言うが、イゼルローンは揺るがない。
イゼルローンの一部分が光った。
光はどんどん大きくなる。
まだ大きくなる。
さらに大きくなる。
トールハンマーの発射である。
イゼルローンはトールハンマーを、
撃った。
撃った。
撃った。
さらに撃った。
では(笑)
前に新Q太郎さんの餓英伝がありましたが一寸便乗させていただきます。
決戦直前、ロイエンタールの恭順を促すべく必死に説得するミッターマイヤー。
ロイエンタール「……これでは泣けない」
ミッターマイヤー「?」
ロイエンタール「友情がある。忠誠がある。しかし……陵辱がないでしょ
ッッッ!!」
トリスタンを皮切りに新領土艦隊一斉放火。
ロイエンタール「さあッ、私から野心を奪い陵辱するのです!!」
会戦後、新領土総督府にて
ミッターマイヤー「何とか言ってくれェェッ、ロイエンタールッ!」
ロイエンタール「ウォルフ、君の手が暖かい」
ロイエンタール絶命。
お目汚し、失礼いたしました。