山本弘トンデモ資料展
「神は沈黙せず」感想&批評集(4)


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『神は沈黙せず』について2

  『神は沈黙せず』について2 White NOVA 2003/11/27 10:45:26 
  キャラクター論 White NOVA 2003/11/27 11:26:13 
  ストーリー論 White NOVA 2003/11/27 12:31:56 
  ここはネタバレスレッドでかまいませんか?... 十一郎 2003/11/28 06:45:05 
  ネタバレ?しているところがあるかもしれませ... tomo 2003/11/28 21:12:08 
  >tomoさん 十一郎 2003/11/28 23:38:53 
  質問です。 北長六功 2003/11/29 00:39:10 
  自分は、時効と思ってます。 White NOVA 2003/11/29 01:03:48 
  答えです>北長さま White NOVA 2003/11/29 01:41:01 
  答えです2 White NOVA 2003/11/29 02:24:57 
  「答えです2」にはネタバレあるので注意 White NOVA 2003/11/29 02:56:56 
  そもそも「実証」などされてませんよね。 NiKe 2003/12/01 10:15:32 
  WhiteNOVA様 tomo 2003/12/01 23:33:27 
  ああ、そういう意味ですか。丁寧な解答、あ... 北長六功 2003/12/02 00:27:53 
  >WhiteNOVAさん 十一郎 2003/12/02 01:57:59 
  長くなったので分割。 十一郎 2003/12/02 02:01:14 
  実証について White NOVA 2003/12/02 03:36:17 
  超常現象について White NOVA 2003/12/02 04:07:38 
  小説のテーマ White NOVA 2003/12/02 05:09:51 
  前回の書き込みで、「全体主義」は「直接民... 十一郎 2003/12/03 04:23:17 
  WhiteNOVA様 影の楽園 2003/12/03 10:42:11 
  ショートレス White NOVA 2003/12/05 12:32:34 
  小説の話はさておき、柳田氏の方は納得して... 十一郎 2003/12/06 01:05:55 
  >小説の話はさておき、柳田氏の方は納得し... いたる 2003/12/06 05:59:12 
  葉月の件について 影の楽園 2003/12/06 16:44:25 
  了解です。 White NOVA 2003/12/07 00:59:09 
  ご無沙汰してます。 水野 縁 2003/12/07 03:23:26 
  >いたるさん 十一郎 2003/12/08 00:57:57 
  十一郎さん いたる 2003/12/08 07:14:26 
  >いたるさん 十一郎 2003/12/09 01:09:55 

  『神は沈黙せず』について2 White NOVA 2003/11/27 10:45:26  ツリーへ

『神は沈黙せず』について2
White NOVA 2003/11/27 10:45:26
「これってSF?」ってのが、最初の感想。
 いや、SFと言えば「宇宙」「ロボット&メカ」などのギミックに加え、「現実科学に根差しつつも、その先を見据えた空想科学理論の解説&物語世界内での実証によるダイナミズム」がポイントかと考えます。
 そして、本小説は「オカルトと神の実在の意味を論理的に構築することがテーマ」なので、ギミック的にはSFというよりも、伝奇ファンタジーに近い。
 で、SFとしての欠陥を先に挙げると、「神の実在」を論理的に解説してはいるものの、実証には至っていない。あくまで、一科学者の仮説と、それを信じるジャーナリストの手記にとどまり、その仮説に基づいたシミュレート世界が描かれていないのが不満点。
 これは、「ジュラシックパーク」に喩えるなら、「恐竜を現代に蘇らせる仮説」は提示したものの、「恐竜が現代に蘇ったら?」のIFワールドを示していない物語と言える。

 もちろん、山本氏は、オカルト超常現象の頻発する近未来IFワールドを描いてはいる。また、現実世界の延長上にあるコンピューターネットワーク重視に傾いた世界観の構築も試みている(NOVAの目からは、短期間の変化としては急進すぎてありえないと思うが、時代設定さえ変更すれば、決して不可能とは言えないだけのリアリズムは感じられる)。
 ただ、それらが結局のところ、「神」とは直接関係ないわけだ。あくまで、「アットランダムな偶発要素の多発」と「人間社会の変化」に過ぎず、結局、山本氏が描いたのは「神」ではなく、「超常現象」と「人間の営み」、その二大要素の関わりということになる。
 「恐竜がいたらこうなる」「人類が宇宙に進出したらこうなる」と、登場人物はいろいろ語るけれど、「実際に恐竜も宇宙も登場しない小説」と考えれば、「SF作品としては微妙な位置付け」と言えるだろう。
 まあ、「怪獣が画面に出ない怪獣映画」というのもあったから、実験作としては面白い試みと言えるけど、メジャーにはなりにくいかな、と。

 はい、ここまでは批判です。では、この小説の魅力は何か?
 それは、山本氏イズムが全編にあふれた小説ということです。山本氏のファンなら、氏の主張がはっきり伝わってくるし、アンチ山本の人なら、ツッコミ要素が少なからず発見できるでしょう。
 NOVAは山本氏の「メジャー路線とは一味違う独自の個性」に魅力を感じているので、この作品を楽しむことができました。ただ、氏の作品としての完成度は……実験作ゆえの粗が目立つかと。その粗も楽しめるわけですがね。

『空想科学読本』『アルマゲドン』『ガンダムSEED』『仮面ライダー555』等同様、
「間違ってるのは分かってるけど、それでも好きだ」と言えるわけです。

 以上が、NOVAにとっての『神は沈黙せず』の位置付け、ということで(ちなみに、NOVAはこのスレッドの文章によって、山本氏を賛美も嘲笑もするつもりはないことは、先に明言と)。
 ここから先は、「山本ファンの、極力、中立的なバランスを重視した作品分析を試みる」つもり。「愛ある批評」と受け取ってもらえれば、幸いです。

  キャラクター論 White NOVA 2003/11/27 11:26:13  ツリーへ

Re: 『神は沈黙せず』について2
White NOVA 2003/11/27 11:26:13
キャラクター論

 この小説の主要登場人物は、以下の5人。

1.和久優歌:主人公にして、本書の語り手。信念もつジャーナリストで、オカルト事象の追跡記事が専門。

2.和久良輔:主人公の兄。理知的なコンピューター技術者。神の実在を、コンピューター理論から証明しようとする。

3.柳葉月:主人公の学生時代からの親友で看護婦(実は在日コレアン)。内気だった主人公に行動力を与えた。はっきり物を言う性格と、他人の内面を感じとる鋭敏さが特徴。ただ、本書の中では、比較的一般人に近いスタンスにあると言える。

4.加古沢黎:ネットを舞台に活躍する小説家。ネットに比重が傾いた世界では、その発言の過激なまでの鋭さが注目されており、世間に与える影響も大きい。主人公の言動を評価しつつも、後に対立関係となっていく。

5.大和田省二:元教師で、超常現象研究家の老人。温厚な人柄で、主人公のオカルト観にも影響を与えていく。

 主人公は、「妖魔夜行」の摩耶と、「ゴーストハンター」のモーガンを喚起させました。ただ、1人称のドキュメンタリータッチの小説では、少し感情的すぎるのが難点かと。結構、偏った性格なのもあって、周辺の世界描写も相当に歪められているように思えてきます。ワトソン役としては、もう少し冷静なキャラであって欲しかった。
 2の兄は、「地味なホームズ」になるかと。ただ、神についての仮説を実証する方法が、あくまでコンピューターシミュレートでしかなく、優歌の思い込みの激しさもあって、ただの妄想にも思えてくるのが何とも気の毒な立場。
 そして4。アクの強さで人気はありそうですね。ただ、最終場面で「自分の計画をいきなり暴露しだす三流悪役」と化してしまったのが残念。こういうのって、主人公(あるいは兄)が抜群の情報収集力や分析力を発揮して追及していくのが、推理物の醍醐味なのに、自分から全部バラしてしまっては興醒めです。ただ、主人公の興味は、加古沢ではなく、神に向けられていたので、加古沢もその程度の扱いになってしまったのか、と。結局、大物なのか、小物なのか、よく分からないキャラになってしまいました。まあ、それがリアリズムと言えなくもないんだけど。

 以上の3人は、山本氏の分身色が濃厚に思えます。
 ただ、それゆえ、NOVAには魅力的には思えませんでした。なぜなら、山本氏の属性が三つに分裂しているので、ネットなどでの山本氏の個性を知ってしまうと、「事実は小説より面白い」ってことで、山本氏の魅力にキャラが負けちゃっているように見えるからです。
 その意味で、NOVAが一番好きなキャラは、「大和田老人」ということになります。自分が年をとったら、こういう「真っ直ぐな信念を持ちつつも冷静で達観した、それでいて枯れてはいない人」になりたいですね。
 葉月は、魅力的と思えます。でも、それだけに、最初に「ウルトラマン」発言で偏見を持っちゃったのが残念かな、と。

  ストーリー論 White NOVA 2003/11/27 12:31:56  ツリーへ

Re: 『神は沈黙せず』について2
White NOVA 2003/11/27 12:31:56
ストーリー論

 まず、超常現象関係の情報量には圧倒されます。ただ、これらの記述が、ストーリー的にも、優歌のキャラ的にも、あまりプラスに作用していない気がします。
 もちろん、こういう情報を集めた山本さんのすごさは分かるんだけど、労力の割に肝心の小説物語に貢献していないのが、いつもの職人技らしくない「気負いすぎ」を感じたわけですね。早い話が「興味の対象を何でもかんでも詰め込みすぎた」と。

 一応、前半に「現実に報告された超常現象」をたくさん列挙することで、後半のIFワールドで「頻発する超常現象」に一定のリアリティを与えた、とも考えられるんだけど、これだけ多いと、じっくり考えるよりも先に、感覚が麻痺してしまうかと。

 そして、これらの超常現象を記述する優歌が、「何だか妄執に満ちたキャラ」に見えてきて、どんどん感情移入を疎外する原因になってます。優歌よりも、背後にいる作者の山本さんが濃厚に見えてきて、いくら「キャラは作者の分身」といっても、やりすぎ感は否めません。
 優歌って、ストーリー部分では、「キレたら怖い面はあるけど、基本的には常識豊かに描かれている」と思えるんですよ。でも、その反面、超常現象マニアの部分がドバッと吹き出して、この小説の形式「優歌による一人称ドキュメンタリー」と相容れないように見えます。
 しかも、山本さんは優歌を魅力的に描こうとするものだから、優歌って「一人称で、自分をどんどん美化する文章をつづっている」ことになります。このため、余計に優歌というキャラの異常さが引き立ってくる、と。
 もし、NOVAが、その世界に生きたとすると、絶対に優歌より加古沢の方を信じてしまうでしょう(笑)。

 その加古沢ですが、ああいう結末を迎えてしまったのがいただけません。死んで退場するのは仕方ないとしても、その後、1年少しで影響力が消えてしまうってのは、まさに「怪人倒したら、ウイルスの被害者も元通り」っていうご都合主義に感じます。
 リアルに考えるなら、加古沢の死後、絶対に「加古沢を神格化するカルト教団」が立ち上がるはず(笑)。「死んだからこそ神格化される」ことって往々にしてありますから。
 逆に、加古沢の影響力が消えるってストーリーにするなら、加古沢を生かしておいて、その発言の粗が次々とネットで暴かれて、権威失墜って形の方がリアルかな、と。「加古沢さんも昔は良かったのにねえ」という声がちまたで囁かれる、と。
 何せ、優歌との対決で、加古沢は精神的ショックを受けていますから、本来の文筆業で、それまでの冴が見られなくなっても、不思議ではないです。生きている人は悪口も言われるけれど、死んでから悪口を言われるケースは、日本人の心情から考えてもありえないのではないか、と。

 加古沢との対決が、ある意味、本書の1つのクライマックスに当たる部分なので、その結末にいろいろ不満を感じました。
 もう1つのクライマックスである、ラストの「神についての考察」は、前述のとおり、「仮説であって、実証をともなわない」ため、優歌のキャラにリアリティを感じる人ならOKで、優歌の言動にミスマッチを感じる人ならしっくり来ない、と思います。

 最後に気になるのは、本書のラスト「2016年」から、本書が出版されたとされる「2033年」まで、一体、優歌は何をしていたのかな? と。原稿は書いたけれど、なかなか発表の機会が訪れなかった、と解釈してもいいのでしょうか。

  ここはネタバレスレッドでかまいませんか?... 十一郎 2003/11/28 06:45:05  ツリーへ

Re: 『神は沈黙せず』について2
十一郎 2003/11/28 06:45:05
ここはネタバレスレッドでかまいませんか?(確認)

>「これってSF?」ってのが、最初の感想。

同感です。超常現象が実在するIFを組み込んだSFとしても、そこから社会が直接的に変化するわけでなし。
構造的にはSFではなく伝奇小説、さらに言えば本格ミステリでしょう。
「論理を構築する」だけの仮説が提出できれば終了で、より実証的な仮説が優位に立つにすぎない。実際、加古沢と優歌の両方ともが互いの説が仮説にすぎないと発言してます。
※実際の物理学の学説も、有力で状況を説明できる仮説にすぎない。だから作中の仮説でも証明できたとしても良いかもしれませんが、それはさておき。

終盤で加古沢が自らの行動理由を明かすのも、犯罪者というより名探偵のような印象がありました(ホームズが事件中に取った奇妙な行動を、最後にワトスンに説明するアレです)。

※まあ、構造がミステリに似たSFは他にも色々ありますが。

  ネタバレ?しているところがあるかもしれませ... tomo 2003/11/28 21:12:08  ツリーへ

Re: 『神は沈黙せず』について2
tomo 2003/11/28 21:12:08
ネタバレ?しているところがあるかもしれません。

前のスレッドは書き込む内容を考えているうちに出遅れた気がします。

作品感想
「クトゥルフハンドブック」の後書きを彷彿?させる内容でした。
素直に面白かったと思います。
人工知能については山本先生の立場がよくわかる内容であると思います。
#丁度、情報処理学会誌で人工知能の特集をやっているので内容もよかったかと

ストーリーへの不満ですが・・・
「サール」という言葉にあそこまで気が付かなかったのはちょっとおかしいかな?
いわゆるゲーム理論的なアプローチが0だったのが私は不満
#個人的には「Deep Blue」について触れて欲しかったと(笑)
##これは先ほど書きましたが、山本先生のアプローチだと思います。

以下細かい突っ込み?

White NOVA様
>  最後に気になるのは、本書のラスト「2016年」から、本書が出版されたとされる
> 「2033年」まで、一体、優歌は何をしていたのかな? と。原稿は書いたけれど、
> なかなか発表の機会が訪れなかった、と解釈してもいいのでしょうか。
ジャーナリストとして活動していたのでは?
#「神は沈黙せず」P9ページに
#私がネットや雑誌に断片的に発表してきた文章をまとめ、加筆修正したものである。

十一郎様
> 構造的にはSFではなく伝奇小説、さらに言えば本格ミステリでしょう。
なるほど、うまいことを言いますね。
#素直に感嘆

犯罪に無関係、探偵がいない、構成は後期クィーン問題と考えることができる
などを考えるとなかなか興味深い考察だと思います。

> 終盤で加古沢が自らの行動理由を明かすのも、犯罪者というより名探偵のような印象がありました
> (ホームズが事件中に取った奇妙な行動を、最後にワトスンに説明するアレです)。
名探偵、初っ端に出てきた罠に引っかかって自滅した、のかな(苦笑)。

  >tomoさん 十一郎 2003/11/28 23:38:53  ツリーへ

Re: ネタバレ?しているところがあるかもしれませ...
十一郎 2003/11/28 23:38:53
>tomoさん
>犯罪に無関係

あえてジャンル別けするなら「非日常の謎」かな?
奇妙な状況を作る事は難しくない。なぜ作ったかが問題になる「日常の謎」。
超常現象を行なう事は(神には)難しくない。なぜ行なったかが問題になる「非日常の謎」。
・・・なんてね。
(「ホワイダニット」の方がよく使われるかな)

>名探偵、初っ端に出てきた罠に引っかかって自滅した、のかな(苦笑)。

途中の推理と附随したアイデアがけっこう魅力的だから、ついそこで安心してしまう半端名探偵、という感じですね(色んな小説の実例を思いだしたり)。実際、加古沢の推理はかなり状況を説明できているし。
実のところ、名探偵の推理のうち、最後から二番目くらいの真実が一番面白かったりするのもよくある事(笑。

(仮の真相を考えるのが気障な名探偵で、本当の真相を当てるのが地味な名探偵というのは「二次元世界の日常」に当てはまりませんか・・・ゲフゲフ)

  質問です。 北長六功 2003/11/29 00:39:10  ツリーへ

Re: ストーリー論
北長六功 2003/11/29 00:39:10
 質問です。
  White NOVA様
>ラストの「神についての考察」は、前述のとおり、「仮説であって、実証をともなわない」ため、優歌のキャラにリアリティを感じる人ならOKで、優歌の言動にミスマッチを感じる人ならしっくり来ない、と思います。
 ここのところを、もしよろしければ、もう少し説明して頂けないでしょうか?
 優歌がどのような人格であろうと、あるいは好かれようと嫌われようと、理論そのものが正しいか間違っているかは関係ないと思うのですが。
 十一郎様も同じようなことを仰っていますが、(作中での)観測された結果をすべて矛盾なく説明できる理論は、「実証をともなっている」と判断して良いと考えます。なにせこの小説は膨大な事象が挿入されてますし。
 もう一つ、よろしければお教えください。
 読書前の「感想」と読後とでは、どのように変わられたでしょうか?
 「リング」との比較など気になります。また前回、私としては真面目に書き込んだつもりだったのに、何度も笑われたのは正直辛かったです。

  自分は、時効と思ってます。 White NOVA 2003/11/29 01:03:48  ツリーへ

Re: ネタバレ?しているところがあるかもしれませ...
White NOVA 2003/11/29 01:03:48
自分は、時効と思ってます。

●十一郎さん

 ネタバレがどこまでOKかは、人によって違いはありますが、発売からそろそろ一月になりますので、感想や考察を試みる上で、最低限のネタバレがあるのは問題ないのでは?

 自分としては、「加古沢は死んだ」は問題なく、「加古沢がどのように死んだ」と書くのは問題ありと考えています。
 前者は感想の文脈上、必要だが、後者はわざわざバラす必要がない、という認識。

●tomoさん

>>最後に気になるのは、本書のラスト「2016年」から、本書が出版されたとされる「2033年」まで、一体、優歌は何をしていたのかな? と。原稿は書いたけれど、なかなか発表の機会が訪れなかった、と解釈してもいいのでしょうか。

>ジャーナリストとして活動していたのでは?

 17年間、書き溜めていたものをまとめた結果ですか。
 自分としては、その17年間の変化の方が気になりますね。兄の説が論争のネタになり、少しずつ受け入れられるようになった過程が。
 あるいは、サイバーウォーで荒廃した直後の日本には、そういう説を受け入れる余裕がなく、本になるまで17年を要したとか。

●ネット世界について

 「紙の本が廃れ、ネットがメインになる世界観」は、現実にそうならないことは承知で、山本さんがついた大ウソとNOVAは推測します。
 そういうIFワールドを設定しないと、加古沢は力を発揮できませんからね。ストーリー構造上、仕方ないと。

 ただ、山本さんも『ここヘン』の後書きでは、「ネットが発達して、みんなが賢くなる社会が理想」のように書いていたけど、
 本作では、うって変わって「ネットの悪弊」を描いてますね。加古沢ごときの煽動に簡単に乗せられてしまう社会の危険性とか。山本さんの描写だと、ネットによる直接民主主義はスピーディーだけど暴走の危険性が大いにあって、双刃の剣であることは明らか。
 こういうネット観の変化って、やはり、ここ2年近くのサイト運営での経験が生きているんだろうな、と、しみじみ。

  答えです>北長さま White NOVA 2003/11/29 01:41:01  ツリーへ

Re: 質問です。
White NOVA 2003/11/29 01:41:01
答えです >北長さま

●まず、「何度も笑われた」について、誤解を晴らしておきます。
 NOVAが「(笑)」表記したのは、以下の3ヶ所ですね。

1.自分としては「読んで頂かないと話が進まないのですが」と言うのは、少し心外だったんですね(苦笑)。

2.読みますよ、買ったんだから(笑)。

3.あの宣伝文を書いたのも、山本さんなんですが(苦笑)。

 1と3の(苦笑)は、主に、自分自身に向けたものです。NOVAはしばしば、自分がミスったときとか、言いたくないことを言わざるを得ないときに(苦笑)を使います。
 北長さんに向けた笑いは「2」だけです。だって、おかしいじゃないですか。「読んで欲しかったのに、無理を申した」って、勝手に誤解しているんですから。こちらは「読まない」なんて言ってないのに。
 そういう変な誤解に対しては、「(真剣に)怒る」か「(冗談交じりに)笑う」しかないと思います。でも、嘲りやからかいの笑いではありません。そういう意図を込めた(笑)は、NOVAは今まで使ったことはありません。

●>読書前の「感想」と読後とでは、どのように変わられたでしょうか?
>「リング」との比較など気になります。

 先に、こっちの質問から答えておきます。
 「宗教」「主人公の特殊能力」については、前述の通りですが、NOVAが予想していたのとは違って、とっつき易かったです。
 前者は、こちらが構えていたより、掘り下げが薄味と言うか、深みにはまってなかったので、エンターティメントとしては正解かと。宗教話にはまると、気分が重くなりますからね。
 後者は、「コントロールできる特殊能力」がなくても、「超常能力」があったので、それなりに楽しめたかな、と。何だか、某RPGの「おおっと表」みたいで。

 「リング」というか「ループ」との比較では、
 「ループ」の方は、それまでの「人間視点のリング&らせん」から、「神視点のループ」に変わって、それまでハマりこんだストーリーから分断されたのが不愉快でした。一種の夢オチみたいなものに思えましたから。
 本作の方は、「人間視点」でストーリーが続きましたので、そういう分断はなし。ただ、あえて言えば、途中の超常現象列挙がストーリー分断になっていたので、ストーリーそのものを楽しむよりも、山本ワールドを体感した感じです。「小説」というより、「山本弘のハマリもの」的な楽しみ方だったので、単純比較は困難かと。

 もう一つの作品内容に関わる質問については、次の書き込みで。

  答えです2 White NOVA 2003/11/29 02:24:57  ツリーへ

Re: 質問です。
White NOVA 2003/11/29 02:24:57
答えです2

>>ラストの「神についての考察」は、前述のとおり、「仮説であって、実証をともなわない」ため、優歌のキャラにリアリティを感じる人ならOKで、優歌の言動にミスマッチを感じる人ならしっくり来ない、と思います。

>ここのところを、もしよろしければ、もう少し説明して頂けないでしょうか?
>優歌がどのような人格であろうと、あるいは好かれようと嫌われようと、理論そのものが正しいか間違っているかは関係ないと思うのですが。

 本書が、「優歌による一人称小説」であることをお忘れなく。
 「優歌の人格」と「優歌の信じる理論」は不可分につながっています。優歌の人格にリアリティを感じるなら、その主張にもリアリティを感じますし、優歌の人格にミスマッチを感じるなら、小説の世界観にも嘘臭さを覚えます。嘘臭い世界の中で、どのような「仮説」が実証されても、それは所詮「作り物」でしかありません。

 さて、では、「理論そのもの」を検証してみましょう。
 作中で一番、問題になっているのは、「神とのコンタクトが可能かどうか」ですが、これは「優歌は不可能」「加古沢は可能」と信じています。その理由は、以下の差にあります。

1.加古沢は「この世界が兄のゲーム『ダーウィンズ・ガーデン』に似ている」と解釈。すなわち、神はユニークな個体に注目。

2.優歌や兄は「続編の『ドーキンズ・ガーデン』に似ている」と解釈。すなわち、神は個体よりもミーム=文化や思想、創造物を重視。

 そして、どちらの解釈が正しいかは、作中では結局、実証されていないわけです。ただ、物語の語り手である優歌が加古沢の信念を揺るがしただけで。
 仮に、これを作品内で実証するには、加古沢の信念が砕かれた後の、彼の変化を描く必要があった、とNOVAは解釈します。でも、山本さんはそうせずに彼を殺してしまった。この時点で、優歌と加古沢の思想対決は、解決しないままになります。
 優歌の思想の多くは、兄の受け売りですので、理論上は「兄と加古沢の再議論」が必要だった、とNOVAは考えます。

 前述のとおり、優歌の人格にNOVAはミスマッチを感じますし、加古沢との最終対決でも、議論の果てに悩み考え込み始めた加古沢に対して、唐突に暴力を振るってます。これで、「優歌の理論が実証された」と主張するなら、「暴力で勝ち得た理論こそ正論」となってしまいます。

 優歌の理論(兄の新理論)と、加古沢理論(兄の旧理論)の差は、「個体」と「ミーム」の差で、それほど大差はないわけです。よって、どちらも作中での観測結果を矛盾なく説明しています。
 そこで、どちらが正しいか、となったときに、それを実証する手段が「暴力」と「一方の死による退場」というのはいただけません。

 まあ、「神のことは気にせず、人間らしく正しく生きる」という、山本氏の信念には、賛成ですけどね。

  「答えです2」にはネタバレあるので注意 White NOVA 2003/11/29 02:56:56  ツリーへ

Re: 答えです2
White NOVA 2003/11/29 02:56:56
「答えです2」にはネタバレあるので注意

 一応、SFギミックの部分のネタバレなので、注意勧告と。

  そもそも「実証」などされてませんよね。 NiKe 2003/12/01 10:15:32  ツリーへ

Re: 答えです2
NiKe 2003/12/01 10:15:32
そもそも「実証」などされてませんよね。
ですから、

> そこで、どちらが正しいか、となったときに、それを実証する手段が「暴力」と「一方の死による退場」というのはいただけません。

これはWhite Novaさんの「勘違い」じゃないですか?

それに元々「実証」は出来ないでしょう。
論理的な検証は出来るでしょうがね。

> 優歌の理論(兄の新理論)と、加古沢理論(兄の旧理論)の差は、「個体」と「ミーム」の差で、それほど大差はないわけです。よって、どちらも作中での観測結果を矛盾なく説明しています。

そんなことはないでしょう。
超常現象の発生を「個体」に対する刺激と考えたら理屈が合わなかったわけですよね。それを「ミーム」に対する、つまり「集団」に対する刺激と考えれば辻褄があう。そういうことだったはずですよ。

  WhiteNOVA様 tomo 2003/12/01 23:33:27  ツリーへ

Re: 答えです2
tomo 2003/12/01 23:33:27
White NOVA 様
> 1.加古沢は「この世界が兄のゲーム『ダーウィンズ・ガーデン』に似ている」と解釈。すなわち、
> 神はユニークな個体に注目。
> 2.優歌や兄は「続編の『ドーキンズ・ガーデン』に似ている」と解釈。すなわち、神は個体より
> もミーム=文化や思想、創造物を重視。

以下は私の解釈です、ばんばん突っ込んでみてください(苦笑)

・1説は、人間の知性や思考、認知等を説明する能力を説明していない。
・そこで、兄はシミュレーションを用いてそれらに対する有力な仮説を提示、
それが「人間はサールの悪魔」であることを前提?とする、2説。
・加古沢は1説を指示していたが、優秀な頭脳を持つが為に2説を聞かされたときに
それを否定しようとする。しかし自分がその説を理解できるが故に絶望感にさいなまれ、
茫然自失してしまった。

2説は、1説の欠点?を補足して発展させたもの、といった感じの解釈です。

ちなみに。私は「サールの中国人の部屋」自体に問題があると考える人です(笑)

  ああ、そういう意味ですか。丁寧な解答、あ... 北長六功 2003/12/02 00:27:53  ツリーへ

Re: 答えです2
北長六功 2003/12/02 00:27:53
 ああ、そういう意味ですか。丁寧な解答、ありがとうございました。
 「笑った」に関して1と3は了解しました。2は私の書き方が悪かったようです。「読む前の感想」はずれているので、早く読んで欲しいという意味でした。
 「実証」は加古沢との対立の方でしたか。私は神が存在するかどうかのことを言っているのだと誤解していました。White NOVA様のお考えは分かりました。
 でも、加古沢は最期に自分の論理に疑問を持っていますよね。
 様々な事象から神は個体に興味を持っていないと判断されるからそうなったわけで、この辺も含めて事例は語り手の主観ではなく、現象として記されている事項が多数出ていますので、やはり優歌の人格がミスマッチだろうと結論に関係ないことだと思いますが。

  >WhiteNOVAさん 十一郎 2003/12/02 01:57:59  ツリーへ

Re: 答えです2
十一郎 2003/12/02 01:57:59
>White NOVAさん

>山本さんの描写だと、ネットによる直接民主主義はスピーディーだけど暴走の危険性が大いにあって、双刃の剣であることは明らか。
>こういうネット観の変化って、やはり、ここ2年近くのサイト運営での経験が生きているんだろうな、と、しみじみ。

いえ、自分は最初期から山本掲示板で書き込んでいましたが、けっこう荒れた時期は何度かありました(一番最初は自分がやらかしていたような記憶も・・・)
しかしその後の『宇宙を僕の手の上に』という短編では、やはりネットの可能性をうたっています。

全体主義を問題としているのはグローバル・ブレインとの関係からではないでしょうか?
個々人はそれなりに良心があっても、それが多数集まれば全体として意図しない方向に向かうという・・・(作中で似たような台詞があります)
ちなみに『宇宙を僕の手の上に』でも、登場するサイトは比較的小さなコミュニティと描写されていました。

>優歌の人格にリアリティを感じるなら、その主張にもリアリティを感じますし、優歌の人格にミスマッチを感じるなら、小説の世界観にも嘘臭さを覚えます。

White NOVAさんが感じたのとは別の部分ですが、自分も優歌には客観性に欠ける部分があると思っています。
超常現象への興味はまだ大丈夫です。両親を失った事から興味を持ったのだし、超常現象そのものに懐疑的な立場でしたから(少なくとも初期は)

疑問に思ったのは兄への傾倒。両親を失うよりも前からのお兄ちゃん子だったので、兄の理論を過剰に信奉する心理があってもおかしくはありません。
(ホームズが名探偵に見えるのはワトソンが信奉者だったためで、実際のホームズはただのコカイン中毒者というホームズパロディもありますね)
(ワトソンの客観性の無さが小説を成り立たせるという逆転した考えもありますが、それはさておき)

>作中で一番、問題になっているのは、「神とのコンタクトが可能かどうか」ですが、これは「優歌は不可能」「加古沢は可能」と信じています。
>1.加古沢は「この世界が兄のゲーム『ダーウィンズ・ガーデン』に似ている」と解釈。すなわち、神はユニークな個体に注目。
2.優歌や兄は「続編の『ドーキンズ・ガーデン』に似ている」と解釈。すなわち、神は個体よりもミーム=文化や思想、創造物を重視。

これは少し違うと思います。むしろ前後が逆ではないでしょうか。
優歌や兄は『ドーキンズ・ガーデン』に似ていると考え、「神が人間に対して意味を持つコンタクトをしていない(472頁)」を根拠としてあげています。

逆に、優歌と兄の説が持っている根拠は「神が人間にコンタクトしていない」という事くらいですね(記号着地問題の解決も、神の意図の証明とは直接関係がない)
つまり、今後神が人間に意味のあるコンタクトをしたら、優歌と兄の説は覆されますね(それこそ優歌と兄が希望していた事というのは、上手いと思います)

それと、加古沢は自説が唯一の証明と考えたからこそ、あそこまでの行動を取れたわけです。
だから自説よりも根拠の強い仮説が出た段階で、敗北したといってよいでしょう。加古沢の行動は、薄い仮説のためにやれるような事ではないでしょうから。
逆に、優歌の行動は自説が間違っていたとしても問題ありません。1説以外にも成り立つ説があると示せば済むのです。

  長くなったので分割。 十一郎 2003/12/02 02:01:14  ツリーへ

Re: ああ、そういう意味ですか。丁寧な解答、あ...
十一郎 2003/12/02 02:01:14
長くなったので分割。
ところで、小説内容の全部が全部、優歌が脳内で作り上げた妄想という説もないではないですが・・・議論しようがないなあ(笑。

>>tomoさん
>1説は、人間の知性や思考、認知等を説明する能力を説明していない。

この説は、神が人間を作った理由と直接の関係がない点が弱いと思います。
1説による知性の正体が正しくても、神がそれを知っていても、神は「ダーウィンズ・ガーデン」を暇つぶしに作ったのかもしれません。
作中で想定されるほど巨大なシミュレートシステムを暇つぶしのために作るなんてといっても、それこそ神の考えはわからないし(苦笑。

  実証について White NOVA 2003/12/02 03:36:17  ツリーへ

Re: そもそも「実証」などされてませんよね。
White NOVA 2003/12/02 03:36:17
実証について

●Nikeさん

>そもそも「実証」などされてませんよね。

 同意です。厳密に言えば、「実証」されていません。

>ですから、
>>そこで、どちらが正しいか、となったときに、それを実証する手段が「暴力」と「一方の死による退場」というのはいただけません。

>これはWhite Novaさんの「勘違い」じゃないですか?

 いや、論理的な意味での「実証」は困難なんですよ、山本さんの提示した命題って。あえて言うなら、作中描写だけでは、証拠不十分と考えるのが妥当でしょう。
 でも、小説では、一応、作者が、どちらの命題が正解か、結論を出さなければなりません。そこで、山本さんは「優歌視点でストーリーを進めること」「加古沢を退場させること」という手段をもって、優歌説を採ったわけです。
 ただ、それはあくまで「論理」ではなくて、「ストーリーの流れ」という手段なんです。「ストーリーの流れ」すなわち「物語世界内での実証」という形になります。
 悪役がどれだけ理屈を並べて、主人公がそれに力のない反論さえできなくても、悪役が倒されてしまえば、それは間違ったことにされてしまう。物語世界では、しばしば論理ではなく、こういう力技での実証が行われます。最近の例では、SEEDの最終話があります。あれを見て、キラがクルーゼを論破したと思う人はいないでしょう。
 幸い、山本さんはSEEDよりは、きちんと優歌に反論させています。よって、加古沢説と優歌説は、説として対等の位置付けを持ってます。ただ、最後の最後で、どちらが正解か明確な「論理的検証」は避けられたわけです。

 本当に「論理的検証」で全てを解決するなら、優秀な頭脳を持つ加古沢が、どういう思考の流れを経て、「加古沢説より兄説が正しいと考え至ったか」、作者は読者に示さなければなりません。しかし、山本さんが描いたのは、動揺した加古沢の姿だけです。つまり、加古沢の思考の流れは読者にとっては、ブラックボックス化されたと言えます。

 これは、「論理的検証」が不可能と見切った山本さんが、物語描写で読者に「作者の考える正解」を伝える、作家ならではのテクニックです。これをもって、「山本さんが完璧な論理的検証を行った」と考える人は、山本さんにきれいに(良い意味で)だまされている、と言えます。
 そして、もしも仮に、この件で、山本さんの採った方法以外で、「明確な論理検証」を行うことができる人がいたら、それは「山本さん以上の作家」になれるでしょう。

  超常現象について White NOVA 2003/12/02 04:07:38  ツリーへ

Re: そもそも「実証」などされてませんよね。
White NOVA 2003/12/02 04:07:38
超常現象について

●NIKEさん

>超常現象の発生を「個体」に対する刺激と考えたら理屈が合わなかったわけですよね。それを「ミーム」に対する、つまり「集団」に対する刺激と考えれば辻褄があう。そういうことだったはずですよ。

 少し違いますね。

1.「個体」に対する刺激と考えたら理屈が合わない。
 これはそのとおりです。

2.「ミーム」に対する、つまり「集団」に対する刺激と考えれば辻褄があう。
 「集団」=「グローバルブレイン」とも言ってますが、これはP488に兄の言葉として書かれていますね。ただ、厳密には、「辻褄があうかもしれない」という可能性に過ぎません。そして、肝心なことについては、兄は「分からない」と述べているんです。

 すなわち、神のメッセージは、「個体には意味がない」が「集団(グローバルブレイン)なら意味がある……かもしれない」です。どんな意味があるか、兄が述べていない、あるいは作中で描かれていない以上、「超常現象が神のメッセージである」とは証明されたとは言えません。
 いや、むしろ、「神のメッセージ」とは関係なく、「アットランダムに起こる事故、あるいはバグ」という可能性すらあります。仮説だけなら、「人類の科学が進みすぎて、神のコンピューターによる処理が追いつかなくなって、神のコンピューターが熱暴走した結果の異常事象」という可能性も十分、妥当性を持っていると言えましょう。

●tomoさん&北長さん

 1説(加古沢説)と2説(兄説)のどちらが正しいかは、前の書き込みで見られるように、論理的検証が為されておりません。
 ちなみに、NOVAはあえて選ぶなら、「兄説」を採ります。元々、「人格を持った神が人間を見ている」ということ自体、信じておりませんし(^^;)。
 そして、実は山本さん自身、1説も2説も信じていないでしょう。

1.人格を持った神が、人間を同格に近い存在として認識している。
2.人格を持った神が、人間を同格に近い存在として認識しておらず、人間の集団の構成するグローバルブレインを認識している。

 これに、山本さんの結論である3説(優歌説)を含めると、物語のテーマ理解は完璧かな、と。

3.人格を持った神が仮にいたとしても、人間個人を認識していないし、グローバルブレインが仮に存在したとしても、個々人には理解不能。結局、そういう上位的存在を気にすることなく、人間は自分の良心にしたがって生きるべし。

 3説を採るなら、1説も2説も、結論のための叩き台(否定するための説)に過ぎず、そういう結論がある以上、1説と2説の論理的検証は、作者の山本さんにとっては、大した意味はないのかもしれませんね。

  小説のテーマ White NOVA 2003/12/02 05:09:51  ツリーへ

Re: >WhiteNOVAさん
White NOVA 2003/12/02 05:09:51
小説のテーマ

●十一郎さん

>自分は最初期から山本掲示板で書き込んでいましたが、けっこう荒れた時期は何度かありました

 そのとき、私は見ていました(笑)。いや、荒れた議論がどう展開するかに、一番興味がありましたから。

>その後の『宇宙を僕の手の上に』という短編では、やはりネットの可能性をうたっています。

 確か、「SFマガジン」でしたっけ? 読み損ねてしまいました(苦笑)。
 まあ、『神は沈黙せず』の中では、「ネット」に限らず、いろいろな物を否定していますので、山本さんの考えというよりも、物語の必然からかも知れませんね。

>>作中で一番、問題になっているのは、「神とのコンタクトが可能かどうか」ですが、これは「優歌は不可能」「加古沢は可能」と信じています。
>>1.加古沢は「この世界が兄のゲーム『ダーウィンズ・ガーデン』に似ている」と解釈。すなわち、神はユニークな個体に注目。
2.優歌や兄は「続編の『ドーキンズ・ガーデン』に似ている」と解釈。すなわち、神は個体よりもミーム=文化や思想、創造物を重視。

>これは少し違うと思います。むしろ前後が逆ではないでしょうか。

 あ、なるほど。物語の中では、そういう順序かもしれませんね。
 NOVAは、「小説のテーマ」から逆算して考えておりました。物語の作り手の側からは、「神とのコンタクトが可能かどうか」を検証するための素材として、『ダーウィンズ・ガーデン』や『ドーキンズ・ガーデン』を出してきたので、そういう順番かと。
 でも、作中人物の中ではどっちなんだろう?
 兄は神の意図を知る目的で『ドーキンズ・ガーデン』を作ったのか、 それとも『ドーキンズ・ガーデン』を作った結果、神の意図が分かったのか。
 「神の意図」が先か、『ドーキンズ・ガーデン』が先か、混乱してきました。検証は、他の人に任せたいです(笑)

>加古沢は自説が唯一の証明と考えたからこそ、あそこまでの行動を取れたわけです。
>だから自説よりも根拠の強い仮説が出た段階で、敗北したといってよいでしょう。加古沢の行動は、薄い仮説のためにやれるような事ではないでしょうから。

 あ、それは同意します。
 加古沢は、小説家だから、作者が常にキャラを見ている発想しかできず、思考停止してしまった。あと、自分は特別な人間でありたい、という意識が強すぎて、周囲を見下して滅びてしまった。

 ただ、それだけに、優歌に新しい視点を示された後の、加古沢の反応が見たかったんですよ。P474にある通り、「それを知る機会は永遠に失われた」んですね。
 「過ちを犯した人間が死んで退場」ってドラマは、見飽きてます。むしろ、その過ちをどう償うか、あるいは過ちを抱えたまま、悪の道を突き進むか、そういう岐路だった場面で幕というのが残念なんです。

 山本さんの描く「ピカレスク(悪漢)ロマン」って見てみたいんだけどなあ。そういうのに今のところ、山本さんは興味がないのかもしれませんがね、ファイズ論争を見る限り。

PS:加古沢を生かしていれば、彼の視点からの続編が書ける、とも思うんですがね。あるいは、彼の説が当たりで、神が彼をセーブ。そこから始まるパラレルワールドってのもありかも。
 既存の価値観が崩壊した世界で、肉体的には弱いけど、自分の才覚だけで危険を乗り越えていく「神に選ばれた男」なんてのは、いいネタだと思ったり。

  前回の書き込みで、「全体主義」は「直接民... 十一郎 2003/12/03 04:23:17  ツリーへ

Re: 小説のテーマ
十一郎 2003/12/03 04:23:17
前回の書き込みで、「全体主義」は「直接民主主義」のミスです。全体主義だと意味が違ってしまう・・・

余談ですが、小説を読む前から個人的に、直接民主主義はせいぜい市町村単位くらいでしか有効でなく、国家を動かすのは問題が大きいと思っていました。
大きく政治を左右する危険ではなく、物理的な問題としてでしたが。
実際、危険性が高過ぎて一国を任すなんてのは不可能でしょう。

>White NOVAさん
>確か、「SFマガジン」でしたっけ? 読み損ねてしまいました(苦笑)。

徳間書店の『SFjapan』です。『SFマガジン』ならたいていの図書館にバックナンバーがありますが、『SFjapan』はちょっときついかなあ・・・収録号は大判に変わった後だし。
作品自体は良作だと思います(とある短編ミステリに似た話があるのが瑕)

>ただ、それだけに、優歌に新しい視点を示された後の、加古沢の反応が見たかったんですよ。

White NOVAさんも考えていられるように、おそらくそれには興味がないのだろうと思います。何となくですが。
それと、あの後に加古沢再生のドラマをはさんだら、テーマが散逸しかねないし。加古沢と兄が議論しあい、さらに新しい仮説を作ったりしては全く別の小説になってしまうでしょう。

>加古沢を生かしていれば、彼の視点からの続編が書ける、とも思うんですがね。あるいは、彼の説が当たりで、神が彼をセーブ。そこから始まるパラレルワールドってのもありかも。

小説家が面白い行動をしそうな世界を神が作り、蘇った加古沢が地獄巡りのような体験をする、『神曲』のような話もできるでしょう・・・が、よほど面白いSF的アイデアがないと売りがないかなあ。
(原作の『神曲』を読んではいませんけど、そこはそれ)

  WhiteNOVA様 影の楽園 2003/12/03 10:42:11  ツリーへ

Re: キャラクター論
影の楽園 2003/12/03 10:42:11
White NOVA様

一点だけ、本質とは関係ない茶々入れをさせていただいてよろしいでしょうか?

柳葉月は看護婦ではなく医者の卵(「研修医」ってやつ?)ではないかと思います(作中、明記はされていなかったと思いますが)。

  ショートレス White NOVA 2003/12/05 12:32:34  ツリーへ

Re: 前回の書き込みで、「全体主義」は「直接民...
White NOVA 2003/12/05 12:32:34
ショートレス

●十一郎さん

>徳間書店の『SFjapan』です。

 ああ、『SFjapan』でしたか。どうりで、『SFマガジン』のバックナンバーを探しても、見つからないはずだ(爆)。
 やはり、雑誌は一度手に入れ損なうと、捜索困難になりますね。いつか、短編集にまとまらないかなあ。

>あの後に加古沢再生のドラマをはさんだら、テーマが散逸しかねないし。加古沢と兄が議論しあい、さらに新しい仮説を作ったりしては全く別の小説になってしまうでしょう。

 はい、そうですね。
 加古沢再生は、「仮・続編」のネタ案かな、と。でも、それをやると、実は『リング』シリーズの高山再生になっちゃうと、後から気付きました。
 まあ、NOVAは「加古沢の死(と、その後の影響力の消失)」に不満があるわけで、やはり、ああいうキャラは「したたかに生き抜いていく」のがリアルっぽさかな、と。殺しちゃったことで、かえって何者かの作為を感じてしまうんですね。
 「兄との再議論」は、論理的検証としては、やはり必要だと考えます。もっとも、兄は優歌と違って、あまり加古沢に関心を持っていなかったようですが。

●影の楽園さん

>柳葉月は看護婦ではなく医者の卵(「研修医」ってやつ?)ではないかと思います

 はい、そうかもしれません。
 「病院勤務」ってことで、どっちかなあ? と思ったんですが、看護婦が無難かなあ、と考えて書き込みました。
 深読みすると、この葉月って、モデルは「山本さんの身内の方?」とも思ってしまったし。

 まちがいが明らかなら、つつしんで訂正したいと思います。

  小説の話はさておき、柳田氏の方は納得して... 十一郎 2003/12/06 01:05:55  ツリーへ

Re: ショートレス
十一郎 2003/12/06 01:05:55
小説の話はさておき、柳田氏の方は納得してくれたかな・・・>いたるさん

>White NOVAさん、影の楽園さん
研修医っぽいですね>葉月
一人で里親になるには看護士資格が必要だけど、それがないという描写がありました。
(探しました。289頁)
同じ頁に「医者になりたかった」という葉月自身の言葉もあります。

>SEEDの最終話があります。あれを見て、キラがクルーゼを論破したと思う人はいないでしょう。

スレ違いですが・・・公式ファンブックで、長谷川裕一氏が「むしろ論戦で勝利したのは、相手を憎しみの連鎖に引きずり出したクルーゼ。最後の微笑みも勝利の笑みだ」といった感じの評を書いています。

  >小説の話はさておき、柳田氏の方は納得し... いたる 2003/12/06 05:59:12  ツリーへ

Re: 小説の話はさておき、柳田氏の方は納得して...
いたる 2003/12/06 05:59:12
>小説の話はさておき、柳田氏の方は納得してくれたかな・・・>いたるさん

いえ、納得はしてませんがNOVA氏の神沈考察も入ったことだし、わざわざスレ汚しをすることもないかと思っただけで。
このスレにとって柳田氏については枝葉ですしね。

あえて一つだけ言うとすれば、
「『ドラえもん』を題材にした子供向け科学啓発本」って、
ただ「ドラえもんが小学生向けに科学の実験とかを紹介してるだけ」で本質的にはドラえもんが「案内役」をしてるだけの本じゃないんですか?
「ドラえもんのマンガにでてくる道具をドラえもんが科学的に分析してる本」じゃあないですよね?
つまり題材はフィクションじゃなくてノンフィクションってことです。
読本とはあまり比較にはなんないように思いましたし、十一郎さんが同種に感じるというなら、根本的な感性が違うようなので、すり合わせは困難でしょう。
まあどのみち私の最初のカキコミ、「『神が沈黙せず』は細かいとこ(経済、法律)に拘って読む類の本じゃない、広い心で楽しもう」の趣旨からすれば枝葉ですから、どうでもいいですよ。




スレ汚しついでに、

山本氏自身が『間違っていることを承知で書いている部分がかなりあります。サイレント・レヴォリューションなんて、100%実現不可能であると確信しています』と書いてらっしゃいます。
作者も100%信じられないんだから、読者があまりの荒唐無稽さに「現実の延長線を舞台としてる小説」という点でのリアリズムを感じられなくなり作品が薄っぺらに思えてしまうのもある意味必然で。
そのへんも承知の上でああいう「ありえない」社会描写を行ったみたいですものね、演出意図は理解できませんが。
でも、できたら同じことをこんなとこや自分のサイトなんかじゃなくて、あとがきに書いて欲しかったかも。
そしたらアマゾンにあんな酷評はのらなかったかもしれませんね。
それとも『乗り越えてこの小説を好きになってくれ、それが本当のファンだ』、という一種の『メッセージ』なのかしらん。

  葉月の件について 影の楽園 2003/12/06 16:44:25  ツリーへ

Re: ショートレス
影の楽園 2003/12/06 16:44:25
葉月の件について

十一郎さんが指摘されていること以前にも、「医大を卒業して」とありますから(76ページ)。
後で入った「小さな病院」では、「研修医」というより「医者」なんでしょうけど。
別にそれほどひっぱるようなことでもないですね(^_^;)

  了解です。 White NOVA 2003/12/07 00:59:09  ツリーへ

Re: 葉月の件について
White NOVA 2003/12/07 00:59:09
了解です。

 では、本スレッドの「キャラクター論」の記事を、こういう形に訂正しますね。

>3.柳葉月:主人公の学生時代からの親友で、医療関係の仕事(おそらく研修医)。在日コレアンでもある。以下同文。

 十一郎さんと影の楽園さんに調べてもらったことで、感謝の意を表明します。ちょっと固い言いまわしかもしれませんが(^^;)。

  ご無沙汰してます。 水野 縁 2003/12/07 03:23:26  ツリーへ

Re: 答えです2
水野 縁 2003/12/07 03:23:26
ご無沙汰してます。
少々まぜっかえします。

>そこで、どちらが正しいか、となったときに、それを実証する手段が「暴力」と「一方の死による退場」というのはいただけません。

「一方の死による退場」すら観測対象とした場合、加古沢が支持する理論は「自らの事故死」によって否定されると考えられませんか?
小説のストーリーの裏でこっそりセーブされていないことが前提ですが、私はそう解釈しました。

  >いたるさん 十一郎 2003/12/08 00:57:57  ツリーへ

Re: >小説の話はさておき、柳田氏の方は納得し...
十一郎 2003/12/08 00:57:57
>いたるさん
本題の前に、少し質問させてください。
いたるさんの事を思い出したのは、書店の神学関係に『神は沈黙せず』が置いてあったという笑い話を目にしたからです。
もしかしたら、『神は沈黙せず』が極めて科学的に正確な小説だとか、そういう紹介をされて期待しつつ読んだのではありませんか?

>ただ「ドラえもんが小学生向けに科学の実験とかを紹介してるだけ」で本質的にはドラえもんが「案内役」をしてるだけの本じゃないんですか?
>「ドラえもんのマンガにでてくる道具をドラえもんが科学的に分析してる本」じゃあないですよね?

どちらもやや違います。実際に手に取らないと分かりにくいでしょうが・・・

一応の説明をすると、『ドラえもん』作中での描写を元にして、それぞれに科学的解説を加えるといった感じですね。
例えば『機動戦士ガンダム』のスペースコロニーを元にして、現実のコロニーを考察するような・・・
(この場合、作中描写と現実の間に差異はほとんどありません)

つまり、題材がフィクションでも、考察の元ネタがノンフィクションになるという事です。

※『ドラえもん』以外にも、SFの設定を科学的に解説しつつ、やはり科学参考書のレーベルに入っている本もいくつかあります。
例としてはこちらの方が適切かもしれません。


>作者も100%信じられないんだから、読者があまりの荒唐無稽さに「現実の延長線を舞台としてる小説」という点でのリアリズムを感じられなくなり作品が薄っぺらに思えてしまうのもある意味必然で。

SF作家は絶対ありえない仮定を小説に持ち込みます(よく勘違いされますが、SFは未来予測小説ではありません)。
仮定ではない設定でも、話の都合で間違いと知りつつ使っているSFもあります。
さらに幽霊を全く信じないホラー作家などもいます。
ミステリ作家の例は、すでに書きましたね。

それでいて、全て現実の延長にある物語であり、リアリティを得る事があるでしょう(微妙な言い回し)。

だから、その「必然」というのは、いたるさんの個人的心情に過ぎないと思います。
もし他の多くのSFにリアリティが感じられるなら、『神は沈黙せず』にリアリティが感じられないのは別の理由があるでしょう。

>そしたらアマゾンにあんな酷評はのらなかったかもしれませんね。

『神は沈黙せず』の宣伝や紹介に「リアリティがある未来社会」といったような文面は見た事がありません(逆に公式サイトの紹介では最初から「これは未来予測小説ではない」と大きく断っていますね)。
あとがきがあってもなくても、酷評を下す人には合わなかったと思いますよ。

※今見ましたが、酷評している方はリアリティばかりを批判しているわけでもないようです。
どちらにしても、あとがきくらいで評価が変わる事はないでしょう。

>水野 縁さん
なるほど。
たしかに、加古沢がセーブされるほどユニークなら、ああいう形で事故死するはずはないですね。

  十一郎さん いたる 2003/12/08 07:14:26  ツリーへ

Re: >いたるさん
いたる 2003/12/08 07:14:26
十一郎さん

>『神は沈黙せず』が極めて科学的に正確な小説だとか、そういう紹介をされて期待しつつ読んだのではありませんか?

いえいえ、科学的にどうかなど、私はこだわりはしませんよ。
ただ、南京大虐殺その他現代社会を下敷きにした小説のつもりで途中まで読んでたもので、「ありえない」経済、法律運営にズッコケただけです。
まさかAVPやサイレントレボリューションなんてものがSFガジェットの範疇になるとは思いませんでしたから。偏りまくりの南京論争も、やっぱりSFガジェットですかね?
ふところが広いですな、ハードSFとやらは。
でも、それなら黒豹シリーズをトンデモ扱いせずともいいのに。
アレのおかしな描写も全部ガジェットってことでいいような(苦笑
あ、ハードSFじゃないからだめなのかな。

>一応の説明をすると、『ドラえもん』作中での描写を元にして、それぞれに科学的解説を加えるといった感じですね。

これは書名を教えていただけませんか?
たとえばどこでもドアに正確な科学的解説を加えられるのか、ちょっと不思議ですし。


>仮定ではない設定でも、話の都合で間違いと知りつつ使っているSFもあります。

それはそうです。そういう「話の都合で間違いと知りつつ」ってのはSFに限らず多くの創作では常套手段なわけで、たとえば「小型の小惑星で風が吹く」なんてのもそうでしょうな。
そういうのをいちいち指摘して創作者を罵倒する人の気持ちはわかりませんし、滑稽ですよね。

>『神は沈黙せず』の宣伝や紹介に「リアリティがある未来社会」といったような文面は見た事がありません

でも、作中、中途半端に「現実社会」がでちゃってますからね。
リアル鬼ごっこのごとき破天荒な世界なら、制度がおかしくても誰もこだわらなかったでしょう。

  >いたるさん 十一郎 2003/12/09 01:09:55  ツリーへ

Re: 十一郎さん
十一郎 2003/12/09 01:09:55
>いたるさん
>南京大虐殺その他現代社会を下敷きにした小説のつもりで途中まで読んでた

なるほど、ある程度は理解できました。
自分が読んだ時は、七角ボルトや“雨”で、どんどん現実が奇妙になっていく描写を楽しんでいたので、加古沢が大活躍する時点では、すでにそう読んでいました。
AVP等で、明らかに現在の社会制度から離れつつある事も分かってましたし。

※入口からの変化はいたるさんが引っかかる以前にいくつもありましたが、そこが気にならなかったのではしかたないと思います。
※しかし、経済や社会よりも超常現象に紙数はさかれているのですが・・・

>AVPやサイレントレボリューションなんてものがSFガジェットの範疇になるとは思いませんでしたから。

?社会制度が変化した近未来SFは山ほどあります。特殊な貨幣が扱われていたりも珍しくないでしょう。

>それなら黒豹シリーズをトンデモ扱いせずともいいのに。

あいやあ、それは全く無関係です(笑。トンデモとは、必ずしも作品としてダメという事ではありませんからね。

>>一応の説明をすると、『ドラえもん』作中での描写を元にして、それぞれに科学的解説を加える

小学館の『ドラえもん不思議サイエンス』等が今でも手に入るかな・・・
※前にも書いたように秘密道具の解説ではありません。作品の描写を元にはしていますが。

>たとえばどこでもドアに正確な科学的解説を加えられるのか、ちょっと不思議ですし。

そういうのを読んでみたいなら『ドラえもんの鉄がく』等があります。『ドラえもん』にこだわらないなら、こんヘンで紹介されている物もありますよ。

>たとえば「小型の小惑星で風が吹く」なんてのもそうでしょうな。

いや、別に小惑星で風吹いたって良いですよ。そういう“世界”であればね。
話を進める都合で御都合主義設定を作り、それをそういう世界だと示しているのは良い。例のSFもそれでした。エクスキューズこそありませんでしたが、その設定のために破綻してはいませんでした。

『神は沈黙せず』も同様に、そういう“設定”でしょう。作品と現実との齟齬は指摘されていますが、それは作品内での矛盾ではないでしょう。
例えば、作中でAVPが流通を握っている時期に、普通の貨幣を説明なしに使う場面はない。また[中途半端に「現実社会」]とありますが、指摘されている南京大虐殺の話は経済等と直接の関わりはありません。
※作品が近未来でなければならないからそうしたといっても、できるだけリアルにすべき、という意見は判りますが。

しかし『アルマゲドン』なんかの場合は話の都合には必要でないどころか、前後の描写と合わさず、基本的にその場の視覚効果しか考えてないでしょう。この時点で単純比較は出来ません。

※完全に余談ですが、小惑星に風が吹いて重力がある世界なら、訓練描写や小惑星上の危機描写もそれに合わせなければならない。描写の矛盾のため、危機が危機と感じられないのでは、上手いとは言えません。
その小惑星だけ特別なら、それに合わせた反応を作中人物に取らせたり、どこかでエクスキューズをしく必要があるでしょう。
※つうか、その場その場の視覚効果、ネタだけ繋げた物を一つの物語と言わないでしょう。

>リアル鬼ごっこのごとき破天荒な世界なら、制度がおかしくても誰もこだわらなかったでしょう。

『リアル鬼ごっこ』で、制度を問題にしている人はいますよ。
(この作品は、設定以前に文章で挫折した人間なので、内容はあまり語れません)


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