先日、チェスの世界チャンピオンと、ドイツのコンピューターの対戦が行われ人間側が引き分けに持ち込むのがやっとと言う結果に終わりました。
以前既に人間が破れているのでリベンジなるかと思いましたが、思いのほかコンピューターは強かったようです。
ところで、銀英伝ではよく3次元チェスが遊ばれているようでしたが
この時代だとどれ位の力量なのでしょう?
なんか、圧倒的な差が出来ているような気がするのですが…
さらにいうと、サッカーの出来るロボットも50年以内に出来るという話も聞きます。こっちの方もどんな感じになってるんでしょうか?
> ところで、銀英伝ではよく3次元チェスが遊ばれているようでしたが
> この時代だとどれ位の力量なのでしょう?
3次元チェスのルールがよくわからないので、今のチェスに似たものと
考えて、駒は取りきりだとすれば、終盤になればなるほど選択肢が減っていくのでコンピュータが人間のチャンピオンに勝てるでしょう。
> さらにいうと、サッカーの出来るロボットも50年以内に出来るという話も聞きます。こっちの方もどんな感じになってるんでしょうか?
そりゃ人間とロボットがサッカーやればロボットが勝つでしょうね。
金属でできたロボットがタックルすれば人間の足の骨が簡単に折れるし、ヘディングが人間の頭にあたれば頭蓋骨が砕ける。
危なすぎて人間とロボットのサッカーなんてできませんね。
ビンス・マクマホン三世さん、こんにちは。(面白いHNですね。もしかしてプロレスファンですか?)
ところで、はじめに断っておきますが、私は、あなたは中学生か、高校生くらいの年齢かな?と勝手に想像しています。(もし違っていて、立派な大人の方でしたら、平身低頭で謝ります。)ですから、大人が子供に、先生が生徒に話しかけるような口調になるかもしれませんが、どうか気を悪くしないでくださいね。
お尋ねの件ですが、銀河英雄伝説は、私たちの時代から約1600年後の未来を舞台にしています。ご質問は、今から1600年も経つと、コンピュータやロボットがどれだけ進歩しているか、という意味でしょうか?それとも、銀英伝の小説またはアニメの中に、人工知能やロボット技術に関する記述があるか、という意味でしょうか?
後の方の意味だとしたら、銀英伝にそのような記述はありません。コンピュータは出てきますが、フェザーン航路局のコンピュータのように、あくまでも「情報の格納庫」としてのもので、「人間の代わりにものを考える」人工知能ではありません。もちろんデータベースがあるなら、検索とかバックアップとかセキュリティ維持とかを「賢く」やるアルゴリズムを持っているかもしれませんが。
ロボットは全く出てきません。ただし、義手とか義眼といった、その系統の技術は出てきます。義手はラインハルトの部下のワーレンと、その部下のリンザーが、義眼はやはりラインハルトの部下のオーベルシュタインが着けています。
ご質問が、一つ目の意味だとしたら、残念ですがまったく分かりません、としか言えません。私たちの時代よりはるかに進んでいるかもしれないし、逆に退歩しているかもしれないのです。いや、銀英伝の世界に限っていうなら、後者の可能性が大きいとすら、私は思っています。
もちろん、銀英伝には超光速飛行に代表される「未来のテクノロジー」が登場します。でも、ワープを行うのに、どれほど優れたコンピュータが必要かとなると、ワープの原理そのものが不明なので、なんとも言えないのです。ヤノーシュ博士が発見した理論が、ニュートンやアインシュタインが発見した理論のように、数学的に非常にすっきりしたものだったら、案外ポケット電卓で計算ができるかもしれません。
「まさか、いくらなんでも今より退歩しているはずがない」と思われるかもしれませんね。確かに、私たちが生きている今の時代には、コンピュータの演算速度が遅くなったり、アルゴリズムがより効率の悪いものになるなんてことはありません。それには、大きな理由があります。それは、いろいろな情報を、世の中に広く知らせるシステムがあって、誰かがある発明や改善をすると、他の人たちがそれを知り、それを基礎にして、さらに改善をすることができるからです。
「情報を広く知らせるシステム」というと、例えばインターネットのような技術的なものもあります。でも、もっと大切なことは、「情報を広く、多くの人に知らせることがよいことだ」という考えが、社会を支配していることなのです。それでは、そういうことが悪いことだ、という考えもあるのでしょうか?実はあるのです。そして、そのような社会では技術や知識が失われた例が、歴史上いくつもあります。
例えば、ここに一人の王様がいます。彼は王様なので、しもじもの者ができない贅沢ができるし、人を殺すような悪いことをしても罰せられません。当然、彼はいつまでも王様でいたいと思うでしょう。それにはどうすればよいでしょうか?
秘密警察を組織して、反対者を片っ端から投獄・処刑するのも一案です。これは、昔の中国やロシアの帝王が最も得意としたやり方です。しかし、そういう組織の維持にはコストがかかるし、民衆の反発も招きます。ですから中国やロシアの帝王には、革命で殺された人もいるのです。
もっと効率のよいやり方があります。それは、「統治」という王様の仕事をするのに必要な情報を独占し、その上で、民衆の生活をある程度は保護してやることです。例えば、王国のある地方が飢饉になり、別の地方が豊作になったとすると、その情報を持っている王様は、豊作の地方から飢饉の地方へ食物を移送して、人民を飢饉から救ってやることができます。救われた人民は王様に感謝し、王の地位は安泰になるでしょう。
でも、この王様にこんなことができるのは、王様が特別に賢いからではなく、他人が持っていない情報を持っているからなのです。ですから、この王様は、情報が広く自由に伝わることを何よりも恐れ、力の限りそれを妨害します。そうなると、情報は伝わらなくなり、知識は失われ、技術は衰えます。
さらに、科学技術の進歩には、もう一つの大切な必要条件があります。それは、技術の進歩に貢献した人が、報われるということです。いくら努力して、すごいコンピュータやロボットを開発しても、一文の得にもならないのでは、大抵の人はやる気をなくします。成果を出した人は出さなかった人よりも豊かになれる、という条件があってこそ、人間は努力をするのです。40年以上も続いた「冷戦」で、ソ連がついにアメリカに屈したのは、「成果を出した人が報われる」社会システムを、アメリカほどには持っていなかったことが、最大の原因です。だから、ソ連は、せっかく高度の教育を施した人材に、大量にアメリカへ逃げられるという悩みを抱えていました。今は、中国が同じ問題で悩んでいます。
銀英伝に話を戻しますと、ゴールデンバウム家の銀河帝国は、上に挙げた理由で、科学技術を進歩させる最も大切な社会条件と、本質的に矛盾する体制をとっています。これでは、技術は衰えるばかりです。特にコンピュータ技術のような、帝国の支配構造を揺るがす性質のものは、決して進歩しないように、二重三重の封印をかけたと思います。
自由惑星同盟は、社会体制としては科学技術が進歩する形を持っています。ただ、同盟はとにかく歴史が浅く、しかも最初はわずか16万人しか国民がいなかったのです。多産を奨励し(一組の夫婦が、平均6人くらいの子供を作ったと、私は推定しています)、270年で130億まで増えましたが、それだけで人類社会全体を長年覆ってきた衰勢を挽回するのは、容易ではないでしょう。
Kenさんと見解の違う点を書いておきます。
> 後の方の意味だとしたら、銀英伝にそのような記述はありません。コンピュータは出てきますが、フェザーン航路局のコンピュータのように、あくまでも「情報の格納庫」としてのもので、「人間の代わりにものを考える」人工知能ではありません。もちろんデータベースがあるなら、検索とかバックアップとかセキュリティ維持とかを「賢く」やるアルゴリズムを持っているかもしれませんが。
この程度のコンピュータでも3Dチェスのルール次第ですが、人間の銀河チャンピオンに勝てるプログラムは組めるでしょう。なお、今回のチェスもそうですが、人工知能が人間に勝ったのではなく、チェスの世界チャンピオンに勝てるプログラムを人間が組んだというのが正しいんです。プログラマー達はチャンピオンを研究し、どうやれば勝てるかプログラムしたわけです。
> ご質問が、一つ目の意味だとしたら、残念ですがまったく分かりません、としか言えません。私たちの時代よりはるかに進んでいるかもしれないし、逆に退歩しているかもしれないのです。いや、銀英伝の世界に限っていうなら、後者の可能性が大きいとすら、私は思っています。
それはないでしょう。もしそうなら星間国家は維持できないと思います。さらにいえばオーベルシュタインの義眼も作れないでしょう。
> もちろん、銀英伝には超光速飛行に代表される「未来のテクノロジー」が登場します。でも、ワープを行うのに、どれほど優れたコンピュータが必要かとなると、ワープの原理そのものが不明なので、なんとも言えないのです。ヤノーシュ博士が発見した理論が、ニュートンやアインシュタインが発見した理論のように、数学的に非常にすっきりしたものだったら、案外ポケット電卓で計算ができるかもしれません。
それも無理でしょう。ワープ理論はさておき、実際にやるとなるとさまざま計算せねばならないものは存在する。恒星の運動、重力場、電磁場の変動、自分の位置、速度etc。これらを計算しさらに数万隻に及ぶ艦隊を統一行動しようと思ったら、数学的にすっきりしたものであれポケット電卓では実用になる時間では計算はできないでしょう。
> 「まさか、いくらなんでも今より退歩しているはずがない」と思われるかもしれませんね。確かに、私たちが生きている今の時代には、コンピュータの演算速度が遅くなったり、アルゴリズムがより効率の悪いものになるなんてことはありません。それには、大きな理由があります。それは、いろいろな情報を、世の中に広く知らせるシステムがあって、誰かがある発明や改善をすると、他の人たちがそれを知り、それを基礎にして、さらに改善をすることができるからです。
いえ、違います。必要だからです。いつの時代でもそうですが科学技術が発展するのは必要だからであって、可能だからではありません。
誰かがある発明や改善をすると、事前には予期していない副作用が出てきてそれを押さえるためにさらに新しい発明や改善をせねばならず、したとしてもまた新しい問題がでてくるので、またやらねばならない。
この繰り返しです。
今回のコンピュータでいえば、演算速度が速くなったのは、ソフトの多機能化、肥大化です。それがコンピュータのハードの高速化をひっぱりました。
だが、それは誰も予測していなかった。ソフトの設計者自身も含めて。
まあ、高速化もアルゴリズムの効率化もソフトの肥大化が食いつぶしてしまったので、あまり向上したわけではないんですが。
> 「情報を広く知らせるシステム」というと、例えばインターネットのような技術的なものもあります。でも、もっと大切なことは、「情報を広く、多くの人に知らせることがよいことだ」という考えが、社会を支配していることなのです。それでは、そういうことが悪いことだ、という考えもあるのでしょうか?実はあるのです。そして、そのような社会では技術や知識が失われた例が、歴史上いくつもあります。
>
> 例えば、ここに一人の王様がいます。彼は王様なので、しもじもの者ができない贅沢ができるし、人を殺すような悪いことをしても罰せられません。当然、彼はいつまでも王様でいたいと思うでしょう。それにはどうすればよいでしょうか?
>
> 秘密警察を組織して、反対者を片っ端から投獄・処刑するのも一案です。これは、昔の中国やロシアの帝王が最も得意としたやり方です。しかし、そういう組織の維持にはコストがかかるし、民衆の反発も招きます。ですから中国やロシアの帝王には、革命で殺された人もいるのです。
>
> もっと効率のよいやり方があります。それは、「統治」という王様の仕事をするのに必要な情報を独占し、その上で、民衆の生活をある程度は保護してやることです。例えば、王国のある地方が飢饉になり、別の地方が豊作になったとすると、その情報を持っている王様は、豊作の地方から飢饉の地方へ食物を移送して、人民を飢饉から救ってやることができます。救われた人民は王様に感謝し、王の地位は安泰になるでしょう。
なお、このようなことをやるのが統治者の仕事です。このようなことをやらない統治者のなんと多いことか。あまつさえそれを正しいと正当化するのですから。
> でも、この王様にこんなことができるのは、王様が特別に賢いからではなく、他人が持っていない情報を持っているからなのです。ですから、この王様は、情報が広く自由に伝わることを何よりも恐れ、力の限りそれを妨害します。そうなると、情報は伝わらなくなり、知識は失われ、技術は衰えます。
これは間違いです。王様のところまで正しい情報が届くには、情報が広く自由につたわらなければなりません。そうでなければ、情報は届かないか、間違ったものしか届きません。さらにいえば、王様のところまで正しい情報が届き、さらに命令を下すためには、その時代最高の技術とインフラが必要です。王様に情報が届きその命令が届く必要がある限り
技術は発展します。力の限り妨害する阿呆はおりません。それは自分自身の力を削ぐことだからです。
だが、王様の力を削いだ方が良い、情報も命令も届かない方が良いと考える人間もいます。良い悪いはともかく、そういう人間が力を持ち始めると情報は伝わらなくなり、知識は失われ、技術は衰えます。
> さらに、科学技術の進歩には、もう一つの大切な必要条件があります。それは、技術の進歩に貢献した人が、報われるということです。いくら努力して、すごいコンピュータやロボットを開発しても、一文の得にもならないのでは、大抵の人はやる気をなくします。成果を出した人は出さなかった人よりも豊かになれる、という条件があってこそ、人間は努力をするのです。40年以上も続いた「冷戦」で、ソ連がついにアメリカに屈したのは、「成果を出した人が報われる」社会システムを、アメリカほどには持っていなかったことが、最大の原因です。
違います。レーガン時代にアメリカが仕掛けた無謀な軍拡競争にソ連が乗ってしまったからです。さらにいえばソ連が負けたとは言いますが
アメリカが勝ったとはいいません。アメリカもこれによって致命的なダメージを受けました。今の惨状の遠因をたどればこの時代にいきつきます。
> だから、ソ連は、せっかく高度の教育を施した人材に、大量にアメリカへ逃げられるという悩みを抱えていました。今は、中国が同じ問題で悩んでいます。
アメリカも実はこれによって大変なことが起こってます。高度な教育を受けた人材は他国から引っ張ってくればいいと。自国でわざわざ教育する必要はないと。その結果、公立校への政府支出は下がるばかりで、アメリカの知的水準が低下している事態がおきています。
なんでも良いことばかりではないんです。
> 銀英伝に話を戻しますと、ゴールデンバウム家の銀河帝国は、上に挙げた理由で、科学技術を進歩させる最も大切な社会条件と、本質的に矛盾する体制をとっています。これでは、技術は衰えるばかりです。特にコンピュータ技術のような、帝国の支配構造を揺るがす性質のものは、決して進歩しないように、二重三重の封印をかけたと思います。
それでは巨大星間国家たる帝国は維持できないでしょう。維持するためには封印などできないと思います。もし衰えるなら、それは文明の崩壊という事態がおきている状況でしょう。
> 自由惑星同盟は、社会体制としては科学技術が進歩する形を持っています。ただ、同盟はとにかく歴史が浅く、しかも最初はわずか16万人しか国民がいなかったのです。多産を奨励し(一組の夫婦が、平均6人くらいの子供を作ったと、私は推定しています)、270年で130億まで増えましたが、それだけで人類社会全体を長年覆ってきた衰勢を挽回するのは、容易ではないでしょう。
私はあの計算は現実ばなれした数学のお遊びだと考えている人間で、どうして増えたのか説明できないと考えてますが、それでも同盟が拡大した以上、科学技術が発展せねば無理だと思います。
基本的に人口増=科学技術発展 人口減=科学技術衰退の公式がありますので。
結構迷ったのですが、投稿させていただきます。
> > 後の方の意味だとしたら、銀英伝にそのような記述はありません。コンピュータは出てきますが、フェザーン航路局のコンピュータのように、あくまでも「情報の格納庫」としてのもので、「人間の代わりにものを考える」人工知能ではありません。もちろんデータベースがあるなら、検索とかバックアップとかセキュリティ維持とかを「賢く」やるアルゴリズムを持っているかもしれませんが。
>
> この程度のコンピュータでも3Dチェスのルール次第ですが、人間の銀河チャンピオンに勝てるプログラムは組めるでしょう。なお、今回のチェスもそうですが、人工知能が人間に勝ったのではなく、チェスの世界チャンピオンに勝てるプログラムを人間が組んだというのが正しいんです。プログラマー達はチャンピオンを研究し、どうやれば勝てるかプログラムしたわけです。
システム屋として、さらに経験10年を超えるプログラマーとしての私見ですが、
ゲーリー・カスパロフを打ち破ったディープ・ブルーの能力と、疑いなく巨大データ
ベースを持ち、静的なデータを多量に、不断に扱わねばならぬはずの航路管制用
コンピューターの能力は、質的に全く違います。
もちろん、速度や容量に十分な余裕があれば、計算機は他の計算機をエミュレートする
事が可能です。
が、コンピュータの場合、ターンアラウンドタイム(見かけの入力から応答までの時間)
と、スループット(単位時間内の情報処理量)、そしてCPUの時間あたり計算量
(MIPS)は全く意味が違います。
ディープ・ブルーはチェスの持ち時間内に、多数ではあるが有限個の指し手を探索し
終え、出力が出来るように設計されているが故に、チェスプレイヤーとして振舞う
事が可能なのですが、航路局のコンピュータにそのような振る舞いが出来るか
どうかは不明です。
ディープ・ブルーと航路局のコンピュータを端的に比較するためのスケールと
なるものが得られないため、ご発言のような意見は賛成するにも反対するにも
いささか根拠薄弱と思われます。
確かにコンピュータの計算量は、それに必要なテクノロジーが満たされれば上限
なく上げる事が出来ます。
しかし、チェスでもある程度ゲームが進行するまでは、最善手となり得る手は一つ
ではなく、複数あるいは多数表れます。
発言で指摘されていますが、もし3次元チェスが作り出す手の数が真の天文学的
スケールであれば、コンピュータの計算量がそれに追いつかないと云うことは、
かなり未来になっても十分にありえます。
現在われわれの手が届く物理学(量子論)では、信号の伝達速度は光速、信号の
キャリアとして使用できる光もしくは電流の分解能電子/光子1個まで、と言う
限界があります。
もっとも、現実にはそれより遥か手前で、熱による揺らぎや不確定性原理の壁に
より、信号はノイズに埋もれて読めなくなるはずですので、一時に計算機が処理
出来る計算量には限界があるはずです。
例え、3次元チェスにおける全ての指し手を事前に予測し尽くす事が可能であった
にしても、プレイヤーが選択した手に合わせて選択肢を間切っていかねばならない
以上、やはり計算量と応答時間の問題は付きまといます。
・・チェスである以上それはないと思いますが、例えば将棋のように取った駒を
使えるルールの場合、多少なりとも指し手を複雑化させるだけで計算量は爆発的に
増加し、予測が困難になるケースはありえるのです。
「人間のプレイヤーに勝てるプログラムを作るのは人間」であり、所詮は舞台を
変えた人間同士の勝負と言う観点も肯けますが、計算機に於いては物理法則も
きっちりとものを云うので、単純にある局面を取って簡単に何かが実現できるか
どうかを判断するにも、踏まえておかなければならない前提が存在すると言うのが、
現時点で私が言える意見です。
> > ご質問が、一つ目の意味だとしたら、残念ですがまったく分かりません、としか言えません。私たちの時代よりはるかに進んでいるかもしれないし、逆に退歩しているかもしれないのです。いや、銀英伝の世界に限っていうなら、後者の可能性が大きいとすら、私は思っています。
>
> それはないでしょう。もしそうなら星間国家は維持できないと思います。さらにいえばオーベルシュタインの義眼も作れないでしょう。
銀英伝の世界には、われわれの目から見て遥かに進んだテクノロジーが存在する
事は間違いありません。
われわれは実用的な核融合炉も、ワープ・テクノロジーも、サイボーグ技術も
持っていないからです。
但し、作品内に関する限り、帝国や同盟の前期となるUSG(銀河連邦)の時代に
高所に達し、以後ある程度衰退したと言う事はありえるかも知れません。
銀河帝国のような体制は、想像し得る限り、テクノロジーの進歩にあまり向かない
からです。
穿ってみれば、帝国時代に人口が減少したのも、テクノロジーの衰退に一因がある
と云う考えも成り立つでしょう。
> > もちろん、銀英伝には超光速飛行に代表される「未来のテクノロジー」が登場します。でも、ワープを行うのに、どれほど優れたコンピュータが必要かとなると、ワープの原理そのものが不明なので、なんとも言えないのです。ヤノーシュ博士が発見した理論が、ニュートンやアインシュタインが発見した理論のように、数学的に非常にすっきりしたものだったら、案外ポケット電卓で計算ができるかもしれません。
>
> それも無理でしょう。ワープ理論はさておき、実際にやるとなるとさまざま計算せねばならないものは存在する。恒星の運動、重力場、電磁場の変動、自分の位置、速度etc。これらを計算しさらに数万隻に及ぶ艦隊を統一行動しようと思ったら、数学的にすっきりしたものであれポケット電卓では実用になる時間では計算はできないでしょう。
現在でも、惑星の公転周期や、重力の影響程度なら、プログラム可能なポケコンが
あれば、高校生程度の知識で計算できるはずです。
惑星大の質量でも、摂動論が入った場合、精密な計測を行わなければ正確な位置と
速度の予測は不可能なのですが(長期予測は相互作用により外れてしまう)、
近似法を使えるような状況であれば、惑星の位置のようなものは全てニュートンの
式に従う(弾道学的な計算の応用編ですから)計算は非常に大雑把に済ませる事が
出来ます。
もちろんワープにおける重力やその他のパラメータの影響は、まだそのテクノロジー
が存在しない以上、全くの空想の域を出ないのですが、宇宙空間には、その種のもので
「危険域」が現れたとしても「避ける」事が出来るだけの広大な余地があると考えても
不自然ではないと思います。
つまり精密な計算が必要ないようなやり方を見つけ出した方がローコストであるかも
知れないと云うことです。
むしろ、そのような計算を、単体でなら近似法で簡単に片付ける事が出来るような
ノウハウを開発する人間は、ワープ・テクノロジーが開発されてからある程度の
期間があれば、必ず出てくると思いますが。
艦隊行動となると、扱う質点や動体が多い事もあり、E.E.スミス(レンズマン
の作者。20世紀初頭のSF作家)の昔から、大艦隊操作用の計算機と要員を積んだ
「電子戦艦」(作中ではディレクトリックス号)を必要とすると云う想定が成されて
いますが、これと単純なワープ計算がポケコン程度で出来るかどうかというのは、
ソフト的にもハード的にも、システム屋の目から見ると全く異質な問題であると
思います。
> > 「まさか、いくらなんでも今より退歩しているはずがない」と思われるかもしれませんね。確かに、私たちが生きている今の時代には、コンピュータの演算速度が遅くなったり、アルゴリズムがより効率の悪いものになるなんてことはありません。それには、大きな理由があります。それは、いろいろな情報を、世の中に広く知らせるシステムがあって、誰かがある発明や改善をすると、他の人たちがそれを知り、それを基礎にして、さらに改善をすることができるからです。
>
> いえ、違います。必要だからです。いつの時代でもそうですが科学技術が発展するのは必要だからであって、可能だからではありません。
> 誰かがある発明や改善をすると、事前には予期していない副作用が出てきてそれを押さえるためにさらに新しい発明や改善をせねばならず、
> したとしてもまた新しい問題がでてくるので、またやらねばならない。
> この繰り返しです。
>
> 今回のコンピュータでいえば、演算速度が速くなったのは、ソフトの多機能化、肥大化です。それがコンピュータのハードの高速化をひっぱりました。
> だが、それは誰も予測していなかった。ソフトの設計者自身も含めて。
>
> まあ、高速化もアルゴリズムの効率化もソフトの肥大化が食いつぶしてしまったので、あまり向上したわけではないんですが。
トーマス・クーン(「パラダイム」と云う言葉を新しい観点で見直し、パラダイムの
シフトによる世界観や科学技術の爆発的変化を研究した)に始まる一連の研究を見ると、
自然科学や、その帰結としてのテクノロジーの進歩は、
「パラダイムを改革する天才の出現」
「そのパラダイムに従って仕事する職人の仕事(スキル)」
の両輪で成り立ちます。
スキルにより極まってゆくタイプのテクノロジーは、資本と時間があれば、
積み重ねにより(おそらく)自動的にレベルを上げていきます。
このタイプのテクノロジーは仰るとおり、必要に応じて発展すると言ってもいい。
ですがパラダイムのシフトは直線的な飛躍でなく、偶然に大きく依存し、
時代状況や、皮肉にもごくごくローカルな、国や地域や文化の状況により突然、
発生する「現象」です。
量子論や相対論はこちらに属します。
量子論なしには電子工学はありえないので、コンピュータの出現自体は、車輪の
発明のように、
「いつかは誰かが成し遂げるかも知れないが、どのくらいの時間がそれに
費やされるか事前に予測する方法はない」
類のものです。
ソフトの多機能化がハードを引っ張ったと言うご意見には一理ありますが、
最近多く使われている工業用の石(PICなどに代表される制御用のCPU)
などは相変わらず低クロックでビット数が少なく、頑丈さが取り柄です。
また、最近の汎用機は、石の高クロック化・チャンネルの高速化・HDDの
高速化のおかげで「部屋一杯のものが大型冷蔵庫ほど」になり、能力はさほど
変わらないというくらいになっています。
そういうもののソフトは、特に変える必要もない(簿記のやり方が大きく
変わったとかいうのでなければ、汎用機のシステムは短期間でさまで変える
必要もない)ので、一昔前のものをアップグレードしている程度です。
目覚しく宣伝されているデスクトップ機と一部のサーバーのみを見ていれば、
仰るようなご意見が出てきてもごく自然だと思うんですが、目立たないが
基幹システムを支えているタイプのコンピュータは、余裕の出来た計算能力を
文字通りの小型化や、計算能力の量り売り(IBMが手がけています)に
振り向ける余裕が出来ています。
そういうものは、こつこつと進歩してきていると言うのが、一応その業界で
仕事している人間の感想です。
目立つほど能力の向上がないと云うのは、文字通りご家庭に回る分にそれが
及ぶのは、もっともっと能力に余裕が出来てからだというだけのことかと
思います。
> > もっと効率のよいやり方があります。それは、「統治」という王様の仕事をするのに必要な情報を独占し、その上で、民衆の生活をある程度は保護してやることです。例えば、王国のある地方が飢饉になり、別の地方が豊作になったとすると、その情報を持っている王様は、豊作の地方から飢饉の地方へ食物を移送して、人民を飢饉から救ってやることができます。救われた人民は王様に感謝し、王の地位は安泰になるでしょう。
>
> なお、このようなことをやるのが統治者の仕事です。このようなことをやらない統治者のなんと多いことか。あまつさえそれを正しいと正当化するのですから。
分けるものがある時に分け与える人は、賢王と呼ばれるでしょう。
ない時に切り捨てる人は、暴君と呼ばれるでしょう。
私には分かりません。
現時点で、どの統治者が「やらない」統治者、「愚かな」統治者であり、どの統治者が
「賢明で民のためを思う」統治者であるか。
なぜなら、論理的に云って、仰るような統治者が存在するならば、その人は情報を
コントロールしており、従って人民(今は私)が判断に用いるべき情報が公開されて
いないであろうからです。
つまり、一見「豊作地方から飢饉の地方へ」物資を移送した賢王と思われた人が、
その実「別の飢饉の地方を冷然と見捨てた」暴君であったと云う事が、情報の公開後に
判明するかも知れない。そのような情報の管制下にあっては。
現在の世界に当てはめて言うのであれば、
「現存するどのような独裁者(あるいは政治的勢力)も、その能力や権力の限界から、
全世界に情報の完全に効果的な統制には成功していない」
と想定して判断する限り、
・指導者に選ばれた人が、傍目から見て合格点に達しない行動を取るケースはままある。
(十分に愚かであるが故に、その情報を隠蔽しえては居ない)
・しかし、そのような状態がいかに批判に値するものであれ、人類史上存在しなかった
ような
「冠絶して賢明で、なおかつ人民のためを考えて行動するような賢王」
を期待したり、作り出せると考えるほどに、私は人間を買い被っては居ない。
ということです。
どの統治者も人であり、愚かな弱者でしかない。
それを批判しているわれわれも(人間全てが)力にも知性にも限界がある、どちらかと
云えば弱い生き物でしかないのです。
相対的愚者や、なかんずく独裁者をその座から追い払うのは当然としても、
そうそう冠絶した賢者が見つかるとは、私には思えません。
現状よりほんの少しましな人を選べる程度の政治システムを、今の民主制から
改良により作り出した方が現実的と思えます。
> > でも、この王様にこんなことができるのは、王様が特別に賢いからではなく、他人が持っていない情報を持っているからなのです。ですから、この王様は、情報が広く自由に伝わることを何よりも恐れ、力の限りそれを妨害します。そうなると、情報は伝わらなくなり、知識は失われ、技術は衰えます。
>
> これは間違いです。王様のところまで正しい情報が届くには、情報が広く自由につたわらなければなりません。そうでなければ、情報は届かないか、間違ったものしか届きません。さらにいえば、王様のところまで正しい情報が届き、さらに命令を下すためには、その時代最高の技術とインフラが必要です。王様に情報が届きその命令が届く必要がある限り
> 技術は発展します。力の限り妨害する阿呆はおりません。それは自分自身の力を削ぐことだからです。
>
> だが、王様の力を削いだ方が良い、情報も命令も届かない方が良いと考える人間もいます。良い悪いはともかく、そういう人間が力を持ち始めると情報は伝わらなくなり、知識は失われ、技術は衰えます。
古来、王朝に「宦官の害」が絶えた事はない。
それは、人間の業病のようなものでしょう。
> > 銀英伝に話を戻しますと、ゴールデンバウム家の銀河帝国は、上に挙げた理由で、科学技術を進歩させる最も大切な社会条件と、本質的に矛盾する体制をとっています。これでは、技術は衰えるばかりです。特にコンピュータ技術のような、帝国の支配構造を揺るがす性質のものは、決して進歩しないように、二重三重の封印をかけたと思います。
>
> それでは巨大星間国家たる帝国は維持できないでしょう。維持するためには封印などできないと思います。もし衰えるなら、それは文明の崩壊という事態がおきている状況でしょう。
設定の崩壊は起きているかも知れません。
実際問題として、銀英伝はそう云うことについて「書かない」技法で貫かれています。
批判には値するかも知れませんが、作中から必要な材料が見つからないように作られて
いる以上、そのような問題(帝国社会でのテクノロジーの取り扱い)は論考しても、遂に
「見方の違い」に帰着されてしまうような気もしますね・・。
いつもながらの「科学解説」をしていただき、ありがとうございます。自分の教養が豊かになってゆくようで、喜んでいます。
コンピュータ能力の「量子論的限界」という話は面白いですね。超伝導を利用したコンピュータも考えられているようですが、不確定性原理の壁はやはり厳存しますからね。
ただ、言われるような意味での計算能力の限界の問題は人間だって持っているはずですから、最初に提議された「コンピュータが人間に勝てるか?」という問題に関しては、コンピュータ側の限界のみを論じて、不可能と結論することもできないのではないでしょうか?もしもチェスの「強さ」が計算能力だけで決まるなら、例えば、ディープブルー1台が人間のチャンピオンを相手に勝ったり負けたりするのなら、ディープブルーを100台つないで、分散処理をさせたら、人間を圧倒する、という考え方はできませんでしょうか?(そもそも、チェスや将棋や囲碁の達人は、「なぜ」強いんでしょかね?短時間に多くの手を読む能力に優れているから強いのでしょうか?)
ただし私の論点は、銀英伝の世界では、優秀なコンピュータが作れないのではなく、「作らせないだろう」というものでした。全体として、古典SFファンさんの発言は、SAIさんの発言に対する回答になっており、それはそれで結構なのですが、私自身としては、
1.科学技術は政治的な事情で、退歩することがある
2.とくに情報技術は、非民主的な権力との、両立が困難である
ということを述べたつもりでした。1に関しては、例えば徳川時代の造船技術が頭にありました。信長や秀吉の時代には、日本の船は東南アジアまで航海していたのに、徳川幕府の政策のために技術が一挙に退歩して、三陸沖の航海すらできなくなってしまいました。なにしろ松前藩の物産を江戸へ運ぶ船が、わざわざ日本海側を南下し、下関を周り、瀬戸内海から大阪を経由して江戸へ向かっていたのですから。
2に関しては、古今東西の政府が大量に「発禁書」を指定したこと、中国政府がインターネット経由で「好ましくない」情報が入るのを規制しているというニュースなどが頭にありました。なにしろ、情報が自由に伝わると、「今の王様よりもっといいリーダーがいるかもしれない」と民衆が探し始めるので、権力者には都合が悪いでしょう。(それにしても、「好ましくない」ネット情報だけ規制するなんて、具体的にどうやるんでしょうか?特定サイトのIPアドレスをもつパケットだけを、ルータにはじかせるのかな?)
いや、他人の国のことを言っている場合ではありません。不良債権を隠し続けた大蔵省、薬害エイズを隠し続けた厚生省、原子炉の事故を隠し続けた通産省・・・「民は寄らしむべし、知らしむべからず」と考える現代の「王様」はいるのですから。こういう人たちは、インターネットなどなくなってほしいと、考えているのでしょうね。
Kenさん:
>いつもながらの「科学解説」をしていただき、ありがとうございます。自分の教養が豊かになってゆくようで、喜んでいます。
いえいえ・・
本来の意味での自然科学的な説明をするには数学的なスキルが不足していますので、
正確なイメージを描写できているかどうか・・・(--;;
>コンピュータ能力の「量子論的限界」という話は面白いですね。超伝導を利用したコンピュータも考えられているようですが、不確定性原理の壁はやはり厳存しますからね。
情報を運ぶキャリアとしての電流や電磁波と、信号に関する問題は、古く石原藤雄
さんの短編集「ハイウェイ惑星」で指摘されています。
計算機の能力の量子論的限界は、色々な資料からですが、小説的には故アイザック・
アシモフの「ファウンデーションの彼方へ」で、自らを改良しつづけたR.ダニール・
オリヴォー(「鋼鉄都市」に登場。SF史上初?のロボット刑事)が遭遇した問題
です。
彼は人間型ロボットで、自分の頭部に陽電子頭脳(笑)を積んでいるため、2万年に
渡って自己改良を続けた挙句、それ以上集積化すると不確定性原理により情報を失って
しまう点まで到達してしまいました。
> ただ、言われるような意味での計算能力の限界の問題は人間だって持っているはずですから、最初に提議された「コンピュータが人間に勝てるか?」という問題に関しては、コンピュータ側の限界のみを論じて、不可能と結論することもできないのではないでしょうか?
> (中略)
> そもそも、チェスや将棋や囲碁の達人は、「なぜ」強いんでしょかね?短時間に多くの手を読む能力に優れているから強いのでしょうか?)
推定になりますが(笑)幾つかに分けてお答えできます。
・私は、「コンピュータは人間に勝てない」とは云っていません。
「航路局のコンピュータが、銀河3Dチェスチャンピオンに勝てるようなシステムを
組めるとは限らない」
というのが、先のレスの要旨です。
・何故そうなるのかという点に関して云えば、
「3Dチェスのルールが天文学的な計算量を要求し、航路局のコンピュータがそれを
チェスの持ち時間内に応答できるようなターンアラウンドタイムを持たない場合」
チェスプレイヤーとしては、航路局コンピュータは負けるかも知れないと云う事
です。
ディープ・ブルーはそもそも通常のチェスで、プレイヤーとしての条件を満たし、
必ず所定の時間で応答するように作られたシステムですから、話がまた異なります。
時間を掛ければ、航路局のコンピュータは必ず最適解に達するでしょうが、
問題を解けると云う事と、プレイヤーとして強いという事はイコールでないと云う
見解です。
が、この問題は、「3Dチェスのルール」が明らかにならないと解けないので、
私の回答可能なのはこんなものです(笑)。
・人間のプレイヤーが何故強いのかというのは、本来私には全く回答不能の問いです。
ご存知の通り(笑)私はシステム屋で、脳の研究者ではありません。
が、興味の種として一つ、以前見た記事を出しておきます。
粘菌は、脳も神経もないのに、迷路の最短距離問題を解決する能力があります。
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2000/000926/
その秘密は、彼らの細胞が計算ではなく、リズムやパターン(物理・化学・
幾何学的な物性)を使って迷路問題を解く能力を持っている事にあります。
ある種の問題は、計算(特にコンピュータに代表されるブール代数的演算や、数学
的演算)を用いずとも近似的に解決する方法があると云う事です。
この例に漏れず、人間(生物)の脳や肉体には、計算によらない、まったく
別種の問題解決システムが備わっているのかも知れないと、私は考えています。
(粘菌と同じ手を使っているとは限らない。もっともっと、驚くべきものを備えて
いるかも知れません)
われわれはまだ、この種のシステムとしては計算機しか知らないので、ついそれだけ
を基準に考えてしまいがちですが、45億年掛けて作られた生物の体は、まだまだ
多くのびっくり箱を用意しているのかも知れません。
>1.科学技術は政治的な事情で、退歩することがある
>2.とくに情報技術は、非民主的な権力との、両立が困難である
江戸時代の例は、よく分かります。
特に銀河帝国には「外部」がなかったため、鎖国状態の日本宜しく、一部の分野に
ついては必ずしも進歩する必要がなかったとはいえます。
が、コンピュータに付いては、それ自体が反逆材料になり、抑圧される対象と
なるかというと、ちょっと違う気もします。
現在も、実際に抑えようとしているのは、特定コンテンツへのアクセスであり。
コンピュータの計算能力などではありません。
広く情報技術というならば、例えば
「帝国標準倫理プロトコル(笑):このコンテンツを見たら死刑」
のようなものを装備したチップが、ありとある情報機器に装備されているかも
知れません。
(中身はフェザーン資本の会社が廉価で量産していたりして・・・)。
> そもそも、チェスや将棋や囲碁の達人は、「なぜ」強いんでしょかね?短時間に多くの手を読む能力に優れているから強いのでしょうか?)
コンピュータのほうは古典SFファンさんが説明したので、私は人間のほうを。
人間はコンピュータと違い、すべての状況を考慮しません。無意識のうちに感情がほとんどのものを弾く。弾かれなかった残りを人間は意識的に考えます。
チェスや将棋や囲碁の達人はもちろん、普通の人に比べれば短時間に多くの手を読む能力に優れてますが、今のコンピュータに勝てるほどではない。が、コンピュータと違いすべての状況を考慮しなくても最適であろう答えの数を3つ、4つぐらいに絞れるわけです。
これは人間ならみんなそうやって生きてます。
> >1.科学技術は政治的な事情で、退歩することがある
> >2.とくに情報技術は、非民主的な権力との、両立が困難である
江戸時代の例については、問題解決法はひとつではない。
人間物事がうまくいっている限り今までのやり方を変えようとは思わない。必要がない技術は発達しない。
の例だと私は思います。
> が、コンピュータに付いては、それ自体が反逆材料になり、抑圧される対象と
> なるかというと、ちょっと違う気もします。
> 現在も、実際に抑えようとしているのは、特定コンテンツへのアクセスであり。
> コンピュータの計算能力などではありません。
> 広く情報技術というならば、例えば
> 「帝国標準倫理プロトコル(笑):このコンテンツを見たら死刑」
> のようなものを装備したチップが、ありとある情報機器に装備されているかも
> 知れません。
> (中身はフェザーン資本の会社が廉価で量産していたりして・・・)。
特定コンテンツのアクセスの禁止も、帝国が繁栄し、自信に満ちていた時代はやらないでしょう。そう言うときは国民が何を見ようが、社会が揺らぐことはないので。情報が自由に伝わると、「今の王様よりもっといいリーダーがいるかもしれない」と民衆が探し始めるわけじゃないです。
社会が安定し、未来に希望があって安心があるならそういうことを考えるのは極少数の異端者だけです。
衰退期に入り、自信がなくなればやると思います。帝国標準倫理プロトコル(笑)を使うのか、もっと巧妙にやるのかは書いてないからわかりませんが。
>計算(特にコンピュータに代表されるブール代数的演算や、数学的演算)を用いずとも
そういえば、ニューロコンピュータなど、どうなったのでしょうね。ひと昔前はエアコンや掃除機まで「ニューロ」だ「ファジー」だと謳っていましたが・・・。イメージ先行のブームが去って、地道な開発プロセスに戻ったのかな?
>45億年掛けて作られた生物の体は、まだまだ多くのびっくり箱を用意しているのかも知れません
コンピュータ技術のブレークスルーの可能性の一つに、生物の仕組みを取り入れる、なんてのもあったのではないでしょうか?ジェネティック・アルゴリズムも、(少なくとも名前だけは)技術者なら誰れでも知ってるでしょうし。0(断電)と1(通電)しかない電子素子の代わりに、DNA塩基のような4つの状態を取りうる素子を用いれば、素子の数は半分、結線の数は3分の1以下になって、「ダニールの死」がずいぶん先に延びるのでは?
理研の記事を読んできました。この記事の通りなら、粘菌は一旦は迷路の隅々まで入り込む(つまりすべての経路を探索する)ので、「巡回セールスマン問題」というのは、吹いているような気もしますが・・・。ただ、コンピュータ型の知能活動を行わずに、最適経路を見つけ出すというのはそのとおりかと思います。(考えてみれば、無生物である水だって、最も効率よく位置エネルギーを減らす経路を「発見して」流れますしね。)
>鎖国状態の日本宜しく、一部の分野については必ずしも進歩する必要がなかったとはいえます
これは、私が言おうとしたことを、ずいぶんと「穏やかに」解釈されたと思います。(慎重になられる気持ちは分かりますが。(笑))幕府は、北海道の物産を下関回りで江戸へ送るという、大変な不便を甘受してまで、造船技術の退化を強制したのです。「技術」というものが、人間の合理精神を刺激し、結局は封建制という非合理な体制の否定につながることを、理解していたのではないでしょうか?「飛び道具とは卑怯なり」という珍妙なせりふをはやらせて、銃火器の技術を圧殺したのもこの時代です。サミュエル・コルトの量産型拳銃が「great equalizer」と称されたように、強者と弱者の立場を、より対等に近づける技術の存在は、デモクラシー以外のどんな体制とも、本質的に矛盾するのでは、と私は思います。(別に、NRAの先棒を担いで、銃器の所有を自由化せよなどと、主張しているのではありませんので、念のため。)
>穿ってみれば、帝国時代に人口が減少したのも、テクノロジーの衰退に一因があると云う考えも成り立つでしょう。
硬直的社会を維持するため科学を弾圧→テクノロジーが衰退→人口減
というパターンなら、私の理解と非常に一致します。
そもそも「権力」とは、人間を意のままに動かす影響力のことであり、機械には通用しませんので(皇帝が操作しようが、Kenが操作しようが、同じ機械は同じように働く)、非民主的権力者が民衆に対する相対的優越を維持しようとすれば、機械が人間に取って代るのを好まないと思います。
> それでは巨大星間国家たる帝国は維持できないでしょう。維持するためには封印などできないと思います。もし衰えるなら、それは文明の崩壊という事態がおきている状況でしょう。
横レス失礼します。
銀英伝式未来の科学技術がどうっているのかは、何とも私には想像が付きません。
ただ科学技術が衰退、もしくは封印されたいう考えは一部では当たっていると思います。
それは人工知能を積んだ自立思考型のロボット技術です。あれはルドルフ大帝が科学技術史から消したとしか思えません。
現在、軍事技術の中においてロボット兵器が開発されつつあり、一部では実用化もされています。将来はそれが応用され、より進化した警備ロボットなどが生まれるでしょう。それがさらに発展してメイド・ロボ(笑)も生まれると思います。
しかし帝国歴5世紀末、銀河帝国のノイエ・サンスーシーには一台の召使いロボもなく大勢の侍従・女官が仕えています。広大な宮殿の警備もまた警備ロボではなく、かつてあった近衛旅団こそないものの衛兵によって行われています。
ノイエ・サンスーシーには、ルドルフ大帝が「自分の足で歩けないような人物が帝国を支えることは出来ない」ということからエスカレーターのような自走機械は置いてありません。(たしか)
そして人による奉仕をルドルフが求めた結果、ノイエ・サンスーシーに大勢の侍従、女官が仕えることになり、メイド・ロボ(笑)は消えていったと思います。
皇帝がロボではなく人による召使いを大量に持てば、貴族も追従します。皇帝・貴族がロボを使わなくなったら富裕市民も使わなくなり、やがてロボ市場が廃れ消えていったのかもしれません。
軍事ロボも、ルドルフが「戦いは人間が行うべきもの!」とでも考えて陸戦兵器から消したのかもしれないですね。まぁ、陸戦がロボット兵器戦ならシェーンコップとオフレッサーに活躍の場がなくなるので丁度良いのでしょう。
私はゴールデンバウム朝銀河帝国は、アイザック・アシモフのファウンデーションシリーズに出てきた銀河帝国にかなり似ていると思います。バランス感覚の無い支配層。疲弊した市民。一部の有能な軍人。皇帝が死ぬと事実上国家が分裂崩壊したところ。軍事力は宇宙艦隊ぐらいで、ロボット兵器が無いこと。
そんなこんなの科学技術力だと仮定しました。
もっともハイテク戦争しかない銀英伝は、面白味に欠けますね。
八木あつしさん、
>それは人工知能を積んだ自立思考型のロボット技術です。あれはルドルフ大帝が科学技術史から消したとしか思えません
ご発言の全体的な主旨には賛同いたします。皇帝や貴族の命令だけをきく人間とはちがい、だれの命令でもきくロボットは、銀河帝国のような体制にとっては、本質的には矛盾する存在です。(それで、思い出しましたが、「スターウォーズ」でもロボット技術の退化が描かれているようですね。ルークの時代のロボットより、アナキンの時代のロボットの方が、どうみてもはるかにハイテクを使っています・・・・って、これはジョークですが。)
ただ、銀英伝にロボットが登場しない理由はもっと単純で、あれはSF小説ではなく歴史小説だからだと、私は思うのですが、いかがでしょうか?ですから、登場人物はあくまでも人間だけでなくてはならず、未来テクノロジーも、宇宙を舞台にする上でどうしても必要な、ワープや重力制御などを除き、できるだけ出さないように努めています。
また、銀英伝がモデルにした(と、私は信じる)アジモフの銀河帝国シリーズにも、ロボットは登場しません。もっとも、アジモフは晩年に作品世界の設定を大変更し、ロボットシリーズと銀河帝国シリーズを融合させて、なぜロボット技術が消滅したのかを詳しく説明した挙句に、最後の最後になって、実は、たった一人のロボットR・ダニール・オリヴォーが人類を導いていたのだということにしてしまいましたが。
> 横レス失礼します。
> 銀英伝式未来の科学技術がどうっているのかは、何とも私には想像が付きません。
> ただ科学技術が衰退、もしくは封印されたいう考えは一部では当たっていると思います。
> それは人工知能を積んだ自立思考型のロボット技術です。あれはルドルフ大帝が科学技術史から消したとしか思えません。
> 現在、軍事技術の中においてロボット兵器が開発されつつあり、一部では実用化もされています。将来はそれが応用され、より進化した警備ロボットなどが生まれるでしょう。それがさらに発展してメイド・ロボ(笑)も生まれると思います。
> しかし帝国歴5世紀末、銀河帝国のノイエ・サンスーシーには一台の召使いロボもなく大勢の侍従・女官が仕えています。広大な宮殿の警備もまた警備ロボではなく、かつてあった近衛旅団こそないものの衛兵によって行われています。
> ノイエ・サンスーシーには、ルドルフ大帝が「自分の足で歩けないような人物が帝国を支えることは出来ない」ということからエスカレーターのような自走機械は置いてありません。(たしか)
> そして人による奉仕をルドルフが求めた結果、ノイエ・サンスーシーに大勢の侍従、女官が仕えることになり、メイド・ロボ(笑)は消えていったと思います。
> 皇帝がロボではなく人による召使いを大量に持てば、貴族も追従します。皇帝・貴族がロボを使わなくなったら富裕市民も使わなくなり、やがてロボ市場が廃れ消えていったのかもしれません。
失業者対策でもあったのでしょう。ロボットは税金を払いませんが、人間は払います。いつでも技術革新すればいいというものではないんです。技術革新すれば、経済、つまり社会にとって有害な状況というのも
存在します。つけくわえるなら、国家の目的は技術革新ではないんです。それは目的を達成するための手段です。
> 軍事ロボも、ルドルフが「戦いは人間が行うべきもの!」とでも考えて陸戦兵器から消したのかもしれないですね。まぁ、陸戦がロボット兵器戦ならシェーンコップとオフレッサーに活躍の場がなくなるので丁度良いのでしょう。
これは軍事的必要があったと思います。以前考察した通り、ルドルフの治世の初期の軍事行動は治安活動が主であり、それにロボットは使えないんです。ロボットはあまりにも高価すぎるので。特に経済が崩壊した惑星や未開発惑星ではロボットは故障しても部品が手に入らずあっというまにスクラップになるか、でなければそこの住民に動く金塊として狙われる事になると思います。
小説的にはロボットが戦うのではかっこよくないですね。
横レスですみませんがKenさん
> 「これは、私が言おうとしたことを、ずいぶんと「穏やかに」解釈されたと思います。(慎重になられる気持ちは分かりますが。(笑))幕府は、北海道の物産を下関回りで江戸へ送るという、大変な不便を甘受してまで、造船技術の退化を強制したのです。「技術」というものが、人間の合理精神を刺激し、結局は封建制という非合理な体制の否定につながることを、理解していたのではないでしょうか?「飛び道具とは卑怯なり」という珍妙なせりふをはやらせて、銃火器の技術を圧殺したのもこの時代です。サミュエル・コルトの量産型拳銃が「great equalizer」と称されたように、強者と弱者の立場を、より対等に近づける技術の存在は、デモクラシー以外のどんな体制とも、本質的に矛盾するのでは、と私は思います。(別に、NRAの先棒を担いで、銃器の所有を自由化せよなどと、主張しているのではありませんので、念のため。)
どうして、ある特定の分野に関してだけ事実とか真実とかではなくて、宗教的信念のようなものを述べるのでしょうか?
私は不思議に思います。
>八木あつしさん
陸戦用ロボットやメイド・ロボが駆逐されてもどこかにはあるでしょう。少なくとも超高温の熱放射が荒れ狂う核融合炉のメンテナンスは人間には不可能でロボットが必要でしょうから。
>古典SFファンさん
確かに本編に記述はありませんね。じゃあ文明の崩壊が起きているとするならば、確実に銀英伝世界の文明を支える核融合を行うための資源が枯渇しているのでしょう。崩壊はもう誰にも止められない。たとえ理想の民主国家ができたとしても。ローエングラム王朝は一時の夢と消えるでしょうね。
文明の崩壊も科学技術の後退も自由民主教の教義と違い、体制とは関係ない、別のものです。そもそも中世的停滞などというものは人類史において存在したことがないのですから。体制と科学技術の発展の関係は恋愛がうまくゆけば科学が発展すると同程度には関係があるでしょう。