田中芳樹の評論検証
3-A

ドラゴンマガジン評論集(1)

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コンテンツの総収録投稿数5件の内、1~5件目の投稿を掲載

収録投稿1件目
board1 - No.941

富士見書房D誌よりの引用・田中氏語る「創竜伝」

投稿者:gatu
1999年03月24日(水) 00時16分

富士見書房「ドラゴンマガジン」1989年6月号より、
田中氏が自らの代表作について語ったコメント部分の引用です。
まずは「創竜伝」から…

----ここから----

創竜伝
一家の団欒を乱す奴等に容赦はしない-
天下無敵の竜堂兄弟!

(gatu注:上のはアオリ文句です。一家団欒^^;;)

この作品は、読者の方のリアクションが非常におもしろいんです。物語の中で新宿の都庁ビルを炎上させたり、政治家の悪口を書いたりしていますが、これがけしからんと言う花井夫人のような人が実際いるんですね。でも、僕は実際にビルに火をつけて回ってるわけではないし、世の中に悪い人はいません、特に政治家の皆さんは日夜国民のために働いています、という設定で現代アクションを書けと言われてもちょっと……ねえ?
あと、『こんなこと書いて捕まりませんか』という人もいます。捕まるわけはないんですが、どうも本気で心配してくれているようでして……そう思わせるような状況があるんでしょうか? 案外、愛知県あたりの学校(管理教育の厳しさで有名)では、『創竜伝』が禁書になっていたりするかもしれませんね。
嬉しかったのは、年配の方からの『私には男の子がいないから、こういう元気な子が出てくる本は楽しい』というお手紙でした。あんなのが四人いると親は大変でしょうけれど。

----ここまで----

うーん何というか、「予想通りの田中氏」って感じで、
こうして読み返してみるとイマイチ新しさがないですね(笑)
明日は「銀河英雄伝説」の部分を引用します。

収録投稿2件目
board1 - No.944

いいかげんにせぇよ(大人げない)

投稿者:石井由助
1999年03月24日(水) 01時57分

>政治家の悪口を書いたりしていますが、これがけしからんと言う花井夫人のような人が実際いるんですね。

自分でも判っているじゃないですか。そう、田中芳樹の政治家に対する表現は、「批判」じゃなくて「悪口」なんですよ。「悪口」と書くと子供っぽくて軽そうに見えますが、「誹謗」「中傷」と同義語ですからね。図らずも、彼は自分の口で自分がイエロージャーナリズムの低俗俗悪な文章を書いていることを告白しています。
 自分にまともな批判ができないから、批判と悪口の区別が付かないのでしょうか。「けしからん」というと、花井夫人のようなダメ思想の持ち主しか想起できないのでしょうかね? 花井夫人は、田中芳樹本人のネガですね。正反対に思えるけど、形態は全く一緒。

>世の中に悪い人はいません、特に政治家の皆さんは日夜国民のために働いています、という設定で現代アクションを書けと言われてもちょっと……ねえ?

 単刀直入に言えば、「だったら現代アクションなんか絶対に書くな」でしょうか。別に政治家の悪口を書かなくても、創竜伝よりも優れた現代アクションを書いている人は腐るほどいます。自分の未熟を反省するどころか、得意げに語る精神は「作家」と呼ぶことすら躊躇われます。
 「現代アクション」でなく「プロレタリア文学」なら、まさにその通りですが…

>あと、『こんなこと書いて捕まりませんか』という人もいます。捕まるわけはないんですが、どうも本気で心配してくれているようでして…

こういう人が世間知らずで妄想症の花井夫人みたいな人だとは、少したりとも考えなかったのでしょうか。

>……そう思わせるような状況があるんでしょうか?
>案外、愛知県あたりの学校(管理教育の厳しさで有名)では、『創竜伝』が禁書になっていたりするかもしれませんね。

 こうやって自分に都合良く相手を過小評価し、事実無根の悪評判を公言することしかできないんですね。あれだけ嫌っている関東軍と全く同じ愚を犯していますね。この人。

収録投稿3件目
board1 - No.953

続、富士見書房D誌よりの引用

投稿者:gatu
1999年03月25日(木) 03時05分

前回に続いて、
今度は「銀河英雄伝説」について氏が語った部分の引用です。

----ここから----

この作品の前身である『銀河のチェス・ゲーム』は、典型的なスペースオペラだったんです。この冒頭の、本編に入る前の銀河の歴史という三〇枚ほどの章の中にラインハルトとヤンの戦いという記述がありまして、これが巡り巡って『銀河英雄伝説』になりました。
このタイトルは一時間で私が決めました。本当はもっとおとなしいタイトルでいくつもりだったのですが、編集さんが電話で、『銀河三国志でいきましょう!』といきなり強烈なタイトルを提案してきまして、慌てた私が時間をもらって、死にもの狂いで考えたのが、このタイトルです。緊急避難的な性格が強いタイトルなんですね。『タイトルが恥ずかしくて今まで読めませんでした』とかいったお手紙をいただくと、正直だねえ、と。
キティフィルムさんはアニメ版の方で、ファンの集いなどを利用して、アフレコに参加してもらうということをやっているようです。自由惑星同盟の国歌や、スタジアムの虐殺のモブ・シーンがそれなんですが、皆さん一発でコツを飲み込んで、ツボを押さえたアドリブを出してくれるんですね。原作者としてはうれしい試みです。

----ここまで----

わりあいマトモなことを書いているようですね。
田中氏がエキストラのモブ・シーンでの「コツ」と呼ぶものが
いったい何であるかは、わかりませんけど。
では、ネタが冷めないうちに、
「アルスラーン戦記」についてのコメントも引用してしまいましょう。
これには当時の私も、
「田中芳樹って、結構、偏った人なんだなぁ」
と感じた覚えがあります。

----ここから----

ヒロイック・ファンタジーをやりたいと思っていたんです。ところが、書いているうちにどうも本道から外れていきまして……ファンタジーというよりもチャンバラになっていく。私の場合、人を殺すシーンになると、想像力が妙に活発に働くんです。ラブシーンなんかだとさっぱりなのに。
ご覧の通り、ササン朝ペルシアの神話と歴史をベースにした物語です。ルシタニアには十字軍のイメージがありますが、読者の方のお手紙で、『この本を読んでいたら、キリスト教のある一派に入信している人が、こんな悪い本を読んではいかん、と言ってくずかごに放り込んだ』というのがありました。まあしかし、当時の記録というのは結構残っておりまして、兵士たちは別に悪いこととも思わずに、『今日は異教徒の子どもを三人殺した。これで天国に行けるだろう』とか書いてるんですねえ。黙っていればいいのに。
『マヴァール年代記』の方は、時代劇のノリで書いています。だいそれた言い方をしてしまえば、柴田錬三郎さんや山田風太郎さんの世界に近づければいいと思っています。

----ここまで----

>ご覧の通り、ササン朝ペルシアの神話と歴史をベースにした物語です。

…とはいうものの、ご覧になっても
ササン朝ペルシアのことなどは分からないのが
一般人というものでありまして(笑)
「知ってると思いますけど…」と前置きして
特殊な知識をひけらかされ、遠まわしに嘲られたような気がして
ちょっと反発を覚えましたね。

いや、それよりも問題は、ご覧の通り(笑)その後なんです。
現代の(宗派すら明記してない!)キリスト教信者の
明らかに極端で、一般的とは思えないような行動を紹介してから、
何百年も前の、現代とはモラルも文化も違っていた
十字軍の記録を併せて紹介する…という、
非常に不適当で、読者の誤解を招くような書き方に、
当時の私は「田中芳樹=偏っている」という印象を強くしました。

しかも、「まあしかし…」と切り出しておきながら、
彼がキリスト教に関して言いたかったことは
結局、最後まで不鮮明なままです。
私はそれまで田中芳樹に
「優れたストーリーテラー」という評価を持っていましたから、
このような文章にいささか驚き、幻滅したのも事実です。

収録投稿4件目
board1 - No.955

最後の富士見書房D誌よりの引用

投稿者:gatu
1999年03月25日(木) 03時13分

ここまで書いちゃったら、もう勢いです。
「灼熱の竜騎兵」に関する氏のコメントも紹介しましょう。

----ここから----

中南米の歴史を少々かじったことがありまして、これをネタに何か書けないかと思っていたんですね。ドラゴンマガジンの創刊にあたって、惑星独立戦争というテーマで連載してみませんか、というお話があったときに、これは使える、と。だけど、革命、独立というと一般に想像されるような暗い話にはしたくありませんでした。というより、はたから見て暗い話でも、当事者たちはそう思っていただろうか、という命題ですね。
ところがドラゴンマガジンの場合、文庫の第一巻のあとがきにも書きました、ビジュアル・イメージという問題がありまして……高校の図書委員という方がインタビューにみえられたことがありまして、そのときの質問というのが、キャラクターの血液型とか星座とかいったことばかりでしたね。カタログというものがないと、イメージが湧かないのかな。
マンガなんかは、細かく決めておいた方がやりやすいのでしょうけれど、小説は違いますからね。『続の髪は長いんですか短いんですか』なんて質問には答えられないが、『なぜ続は<ぼく>で弟の終が<おれ>なんですか』といった質問になら答えられます。
さて、第三部ですが(gatu注:このD誌六月号で「灼熱の竜騎兵」は第二部最終回を迎えた)……最初の予定では二部構成の物語だったんです。ところがどうやら三部でも終わりそうにない。これからはもう少し大きい舞台の中での深紅党がメインになってくるでしょうが、そのあたりをどうやって描くか、今考えているところです。第二部まではキャラクターの数を抑えていたのですが、これも増えていくかもしれません。

----ここまで----

さて、田中氏のコメント、いかがだったでしょうか。
政治家蔑視、宗教蔑視、インテリの奢り、三国志嫌い…などなど、
「田中芳樹を撃つ!」でも批判されるような姿勢の凝縮されたエッセンスが、
小説の登場人物にではなく、田中氏自らの言葉で語られている
けっこう貴重な資料だと思います。

最後に一言だけ…。

>最初の予定では二部構成の物語だったんです。ところがどうやら三部でも終わりそうにない。

たたむ気のない大風呂敷ひろげるなぁ!!(怒)

収録投稿5件目
board1 - No.977

超まとめレス

投稿者:石井由助
1999年03月29日(月) 01時50分

 キリスト教と田中芳樹について

 もし、「キリスト教はこのように残酷だから否定されるべきものなんだ!」という主張を通すのなら、それは一つの偉大な思想だと思います。キリスト教が生んだ文化、科学、民主主義、身近なところではマザーテレサやシュバイツァーなど、全て否定していただきたい。
 でも、そうではないですよね。田中芳樹は「キリスト教は独善的で残酷だ」といってその思想を否定しておきながら(更に創竜伝では牛種の陰謀)、その思想から派生した素晴らしい行為(例えば民主主義)には肯定的な評価を与えるわけです。
 ちょっとまとまってないので言葉足らずになってしまいましたが、私はこれを田中芳樹の欺瞞であり矛盾撞着だと思っています。これについては、考えがまとまったら、また書きます。

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