ヴェスターラント虐殺黙認を原因として暗殺未遂事件が起きた際、オーベルシュタインは責任の所在とテロの標的は自分だと発言していますが、これはおかしくないでしょうか?
オーベルシュタインは、どれほど階級が高かろうが一介の参謀に過ぎません。決断した責任は司令官たるラインハルトにのみある筈です。であるのにオーベルシュタインが責任の所在は自分にある等と言うのは司令官たるラインハルトは自分の操り人形に過ぎないと言っているも同然の事です。
ラインハルトは上記の台詞をオーベルシュタインが言った際には、「卿は私が卿の操り人形であったとでも言うのか!!卿は参謀として進言したのみだ。その意見を採用したのは私であり、その結果起きたことも全て私の責任だ!!」と激高すべき、いや激高しなければならなかったと思います。
その時のオーベルシュタインの発言ってこんなものでしたよね↓
銀英伝9巻 P43下段
<「皇帝をお怨みするにはあたらぬ。ヴェスターラントに対する熱核攻撃を黙認するよう、皇帝に進言したのは私だ。卿は皇帝ではなく、私をねらうべきであったな。妨害するものもすくなく、ことは成就したであろうに」>
これって、オーベルシュタインは別に皇帝の責任を自分で肩代わりしているのではなく、自身の「ラインハルトにヴェスターラント黙殺を直接進言した者としての責任」を提示しているだけなのでは?
最終的な決定権は皇帝にあるにしても、オーベルシュタインの進言者としての責任も決して無視できるものではありませんし、その後にヴェスターラント黙殺の正当性をテロリスト相手に長々と説いているわけですから、別に自分と皇帝を含めた「罪の責任」を「なかったこと」にしているわけではないでしょう。
守りの厚い皇帝ではなく、周囲から嫌われ守りも薄い自分を狙えば簡単に復讐(の一部)を果たせただろうに、というオーベルシュタインなりの皮肉もあったと思いますが、オーベルシュタインの発言自体は特に矛盾したものではないのでは?
> 決断した責任は司令官たるラインハルトにのみある筈です。
確かに明確に阻止命令を出さず、結果としてヴェスターラントへの核攻撃を黙認した責任自体はラインハルトに帰結するものではあります。
しかし、ラインハルト自身が積極的に決断したと言うよりはむしろ黙認に近いですし、ブラウンシュバイク公の非道を政治宣伝の道具として使うよう進言し、ラインハルトに黙認するよう促したのはオーベルシュタインです。
ラインハルト自身、ギリギリまで阻止艦隊を派遣するかどうか迷っていましたし。
その意味ではオーベルシュタインもヴェスターラント虐殺の責任の一端を担っていると思うのですが。
ですから、テロリストに対してオーベルシュタインがラインハルトに核攻撃を黙認するよう促したのは自分であり、復讐の対象として自分を狙うべきであったと言ったのは、ラインハルトには一切の責任がなく、自分が全ての責任を負うという意味ではなく、進言した者としての責任は自分にある。ヴェスターラント虐殺の恨みを晴らすなら警備の厚いラインハルトより、自分を狙った方が確実だっただろう、と単純に事実を述べているに過ぎないと思います。
> ヴェスターラント虐殺黙認を原因として暗殺未遂事件が起きた際、オーベルシュタインは責任の所在とテロの標的は自分だと発言していますが、これはおかしくないでしょうか?
> オーベルシュタインは、どれほど階級が高かろうが一介の参謀に過ぎません。決断した責任は司令官たるラインハルトにのみある筈です。であるのにオーベルシュタインが責任の所在は自分にある等と言うのは司令官たるラインハルトは自分の操り人形に過ぎないと言っているも同然の事です。
既に管理人さんとダイスさんさんが仰っておられるようにオーベルシュタインの発言は「ヴェスターラントの惨劇の責任は私『にも』ある」と言っているだけで誰を免罪しているわけでもないでしょう。
むしろ逆に「自分たちで起こした戦いを、『お願い』で救ってもらえなかったからといって他者を詰り自身の非力と浅慮を免罪する卿は一体何様であるのか。皇帝にせよ私にせよブラウンシュバイク公ですら少なくとも自らの為自ら戦う事はしていたのだぞ」と暗殺犯のヴェスターラント出身の男の『罪』を糾弾していたのではないかと思います。
> ラインハルトは上記の台詞をオーベルシュタインが言った際には、「卿は私が卿の操り人形であったとでも言うのか!!卿は参謀として進言したのみだ。その意見を採用したのは私であり、その結果起きたことも全て私の責任だ!!」と激高すべき、いや激高しなければならなかったと思います。
「正当に無情な正論を遂行できる」オーベルシュタインと「人道的見地から無情な正論に対し思い悩まずにいられない」ラインハルトの純粋な精神的強度の差ですね。
ヒルダが「覇王の魂に純粋で繊細な少年の心が同居している」と形容するところのラインハルトは「いやいやヴェスターラントを見殺しにした事をキルヒアイスに嘆かれて八つ当たりをし、その果てに親友たる彼の死因を作り、最愛の姉の心を自ら傷つけ自分から遠ざけてしまったのは何もかも自分のせいだ」まで確実に認識していますし、それを口にするというのは精神的自殺に近いものになるでしょう。
ここは暗殺未遂犯の処遇で「彼を殺すな」と言えただけでも誉めるべき所です。
個人的な考えなのですが、参謀は進言した内容に責任を取るものではない職であると思っています。参謀は司令官の構想に基づき作戦案を立案、提示する事が職務であり、極端に言ってしまえば、司令官の入力した内容に対し、それぞれが最良と思う回答を返す有機コンピュータみたいなものの筈です。
> 個人的な考えなのですが、参謀は進言した内容に責任を取るものではない職であると思っています。参謀は司令官の構想に基づき作戦案を立案、提示する事が職務であり、極端に言ってしまえば、司令官の入力した内容に対し、それぞれが最良と思う回答を返す有機コンピュータみたいなものの筈です。
そういう見解でしたらあの時のオーベルシュタインの発言を意訳しましょう。
「ヴェスターラント核攻撃の怒りのやり場というだけなら、進言者であり守りも薄い私オーベルシュタインを狙っておけば成功の確率も高く少しは卿の気晴らしにもなったろう。責任を問うのであれば、当時公爵であられた陛下のローエングラム軍は自軍の将兵と大局的見地からの帝国に対し責任があったのであり、私の提言である『ヴェスターラント核攻撃看過』は『ゴールデンバウム王朝門閥貴族軍と帝国臣民の人心との致命的な乖離』と『半年早い門閥貴族軍の瓦解とそれによる帝国臣民推定約一千万人の犠牲の回避』という有効な成果を挙げたのだ。従ってこの件について公的にとるべき責任は採択者たる陛下にも提言者たる私にも全くない」
そして心理的動揺によってラインハルトがこの点を言及できないのであれば、代わってその点を犯人と、それ以上にその場の将兵と民衆に告知し通達するのはローエングラム王朝臣下たるオーベルシュタインの立派な『職責』です。
あくまでラインハルトが言及すべきと筋論を持ち出すなら
「敵の敵が味方でなかったから何だと言うのか。ヴェスターラント領民の都合で起こした叛乱はヴェスターラント領民の力量と責任において収拾するべきだろう。『勝手に勝って生き残ってくれた』からといってローエングラム軍としては『恩に着せるでも襲撃するでも援助しなかった事を謝罪するでもなく』という意味で『全く構わなかった』のだから」
と言われて当然という事になります。
「司令官の構想に基づき作戦案を立案、提示する事が職務」ならば、参謀はすくなくともその「職務」に対しては責任を取らなければならないのでは?
当然、自分が良かれと思って司令官に進言した内容については、それが正当なものであると証明する責任と義務が参謀には発生します。
参謀の「司令官に進言する責任」と、司令官の「参謀の意見を採用し実行する責任」は、別に対立するものでも何でもありません。
司令官と参謀の関係だけでなく、一般企業における上司と部下の関係についても同じことが言えますし、それが何故「進言した内容に責任を取るものではない職である」ということになるのでしょうか?
> 参謀は進言した内容に責任を取るものではない職であると思っています。参謀は司令官の構想に基づき作戦案を立案、提示する事が職務であり、
であれば、自らの職務に対しては当然に責任が発生するでしょう。
『私は最良と思って作戦を立てた。採用したのは司令官だから、成功しようが失敗しようが後は知らない』では、無責任にもほどがある、というものです。
あなたの論理では「作戦の成功・失敗の全ての責任は司令官にあるのだから、参謀はどんなに愚劣な作戦を立てても、司令官が採用しさえすればその責任を問われることはない」ということになってしまいますが。
同盟側で言えば、イゼルローンを橋頭堡として、帝国領に遠征するという作戦をアンドリュー・フォークが立案していますが、あれがどれだけ愚劣で無謀な作戦であったか、誰もが知っています。まあ、責任を問われる前に本人が病院送りになっちゃいましたけど、あのまま軍にいれば、作戦参謀として無謀で愚劣な作戦を立てた何らかの責任は問われたでしょう。
勿論、その作戦を用いるかどうかの判断、それによって生じた結果に対する責任は司令官に帰結しますが、それは司令官がその作戦を用いるように作戦を立案・提示し、進言した参謀の責任を免除することにはならないと思います。