銀英伝の中では、銀河帝国はドイツ語、自由惑星同盟は英語を使用している、という設定がされているようです。もともと同じ国の国民だったのが、わずか300年程度で、なぜ別の言語を話すようになったのか不思議で、これはこれで一つのトピックになるかもしれませんが、それよりも作品の随所に、銀英伝の人物たちは、英語でもドイツ語でもなく、実は日本語を話しているとしか思えない部分が出てきます。
例えば、フリードリヒ4世の死を報じるオーベルシュタインが、敬語を使わなかったことで、諸将が驚く場面がありますが(黎明篇、第10章-2)、そもそも「敬語」などドイツ語に存在するのでしょうか?非常に疑わしい。
とはいえ、ドイツ語に関しては、こちらの知識も皆無で、自信を持っての発言はできないので、ここでは取り上げません。それよりも、「英語」を使っているはずの同盟人の会話に、英語では絶対言えない表現が現れます。銀英伝には、漢字に英・独語のルビをふった言葉が輩出し、作者の外国語好きがうかがわれますが、その割には作者の英語の知識は貧弱なのでは。
(その1)
「こいつはおどろいた。君はかなり過激な無政府主義者らしいな」
「ちがいます。私は菜食主義者です」
(雌伏篇、第5章-4)
「無政府主義者」と「菜食主義者」。どちらも「主義者」を含むのを利用して、ヤンがネグロポンティをからかったわけですが、それは日本語だからできることで、「anarchist」と「vegetarian」では、そんな言葉遊びもできないでしょう。
(その2)
「こんにちは、ヤンおじちゃま、フレデリカお姉ちゃま」
(飛翔篇、第2章-4)
ヤンを傷つけたこの言葉を、シャルロットは正確にはどう言ったのでしょう。彼女がヤンを「Uncle Yang」と呼んだのなら、すごく自然なことです。子供が大人に親しく呼びかけるとき、敬愛を込めて「Uncle」、「Aunt」と言うのはごくありふれた言い方だからです。しかし、その場合、相手の老若は関係ありません。シャルロットにとっては、ビュコックもヤンもユリアンも「Uncle」だし、ビュコック夫人もフレデリカもカリンも「Aunt」です。つまりヤンとフレデリカを、呼び方では「差別」できない。
もし、「ユリアンお兄ちゃま」や「フレデリカお姉ちゃま」を「Brother Julian」とか「Sister Frederica」と言えば、二人は修道僧か、もしくはアメリカの黒人になってしまいます。(しかも、その場合でも、年齢は関係ない)
(その3)
「いつが誕生日だ」
「十五月三十六日」
「せこいうそをつくな!悪あがきをしやがって」
(落日篇、第2章-1)
英語の「月」は、一月、二月、三月・・・というカウントアップではなく、January、February、March・・・と、それぞれ固有の名前がついています。だから、ポプランが「15番目の月」と言おうとすれば、新しい語を発明し(例:Trecember とか)、それが15番目の月のことだと、アッテンボローに説明する必要があります。
これまでに気づいたのは上の3点で、もし銀英伝が英訳されることがあれば、必ず翻訳者を苦しめます。
結論:ヤンもラインハルトも、ユリアンもオーベルシュタインも、みんな日本語を話していたのです。
> これまでに気づいたのは上の3点で、もし銀英伝が英訳されることがあれば、必ず翻訳者を苦しめます。
>
> 結論:ヤンもラインハルトも、ユリアンもオーベルシュタインも、みんな日本語を話していたのです。
以前ネット上で、米国人ファンが翻訳した銀英伝の英語版を見たことがあります。
確か、二巻相当部分までしかなかったような気がするのですが、
「二〇代の将官」という部分を「二〇代で准将かそれ以上の階級の軍人」というように訳していたりとか、苦労の跡が見えました。
敬語とか呼びかけとかの意味をこめて訳すのは、確かに大変でしょうね。
特に、ラインハルトの一人称「私」と「予」と「俺」の使い分けは
非常に重要なので、翻訳者を死ぬほど苦しめると思われますな。
Kenさん、こんにちは。ご指摘、非常に興味深く拝見しました。言われて見ればまったくおっしゃるとおりで、無政府主義者と菜食主義者の対比、お兄ちゃんとお姉ちゃんという言い回し、十五月という言い方などは確かに日本語でしか不可能で、どうして今まで読み流してきたか、衝撃を受けました(笑)。
田中芳樹さんの文章は構文的に英語的な感じがするなあと思っていたものですから、翻訳者は仕事がやりやすいだろうと考えていたのですが、このような落とし穴があったのですね。これは翻訳者を相当苦しめそうですね。特に、お兄ちゃん、お姉ちゃんなんか、頻繁に出てきますし、割と重要な部分ですから。
お姉ちゃんについては例えば「ジェーンお嬢様」というような時、年齢や独身・既婚に関係なく Miss Jane ということがあります(まあ既婚者対しては滅多に用例はないですが)。ですから、独身時代からの流れで、シャルロット・フィリスがフレデリカを Miss Frederica と呼ぶことは可能です。ただ、基本的には大時代的な言い方なので、なかなか考えにくいのですが。「ユリアンお兄ちゃん」なんかはちょっとどういう言い方をしたのか、思いつかないですね。
銀英伝の時代は一度、銀河連邦時代を経由していますので、ドイツ語がそのままの形で共通語として残っているとは考えにくいですね。帝国で用いられているのは、一部の単語や固有名詞がドイツ語風に装飾された英語ではないでしょうか。で、同盟で用いられているのはそうした装飾を排した英語なのでしょう。
その英語自体も現代の米語とは大きく違うものと考えられます。例えば中国語などとのフュージョンの過程で、シンタクスや単語の影響が多言語から侵入したのではないでしょうか。
例えば英語しか用いない中国人同士が身内で集まれば、どうしても英語で目上、目下を区別しなければならなくなりますね。その必要性の中から、「お兄ちゃん」などという言い方もうまれていったと推定できます。
英語が共通語となっていく過程でピジンと言って、単純化が現に進行していますし、これからも加速するでしょう。今後、「~主義者」はすべて -ist 、暦月の名前はすべて序数で呼ぶ(これは septemmber,october,november,decemberがあるのでなかなか厄介ですが)ということが考えられます。
> 例えば、フリードリヒ4世の死を報じるオーベルシュタインが、敬語を使わなかったことで、諸将が驚く場面がありますが(黎明篇、第10章-2)、そもそも「敬語」などドイツ語に存在するのでしょうか?非常に疑わしい。
>
> とはいえ、ドイツ語に関しては、こちらの知識も皆無で、自信を持っての発言はできないので、ここでは取り上げません。
Ken様、敬語とは微妙に違うのですがそれに類似した物があります。
英国海軍軍艦の事を一般にHMSと言います、これはHis(Her) Majestys Shipの略で、意訳すると「国王陛下(女王陛下)の船」という事になります。
このように国王陛下の事を英語では、His Majesty the King(偉大なる王)と言い、ドイツ語ではEuer Majestat der Konigになります。
欧州でも皇帝を呼び捨てた場合は、不敬に当りますので注意しましょう。
> (その3)
> 「いつが誕生日だ」
> 「十五月三十六日」
> 「せこいうそをつくな!悪あがきをしやがって」
> (落日篇、第2章-1)
>
> 英語の「月」は、一月、二月、三月・・・というカウントアップではなく、January、February、March・・・と、それぞれ固有の名前がついています。だから、ポプランが「15番目の月」と言おうとすれば、新しい語を発明し(例:Trecember とか)、それが15番目の月のことだと、アッテンボローに説明する必要があります。
このようなギャグは欧米にもあります。
英語の「月」は、そのほとんどが固有の単語ですが、九月以降はラテン語で七番目の月(九月)、八番目の月(十月)、九番目の月(十一月)、十番目の月(十二月)という意味になります。
ラテン語は欧米の上級階級、知的階級に属する人々が知っておかなければならない知識の一つです(この辺は、戦前、日本の知的階級に漢語が普及していたのに似ています)、そして日本人には中々理解してもらえませんが、将校も知的階級に属します。
十五月の場合は、ラテン語で「十三番目の月」と言えば通じます。
もっとも、遥か未来までラテン語が生き残っているかは知りませんが(笑)。
> 銀英伝の中では、銀河帝国はドイツ語、自由惑星同盟は英語を使用している、という設定がされているようです。もともと同じ国の国民だったのが、わずか300年程度で、なぜ別の言語を話すようになったのか不思議で、これはこれで一つのトピックになるかもしれませんが、それよりも作品の随所に、銀英伝の人物たちは、英語でもドイツ語でもなく、実は日本語を話しているとしか思えない部分が出てきます。
Kenさん、どうも。
Kenさんの言われる銀英伝世界の言語は日本語というのはその通りだと思います。ある意味、未来まで残る日本語は偉大です。
ところで銀英伝の世界の言語について、帝国=ドイツ語・同盟=英語を使用しているという記述はありましたっけ?
私の記憶では、「ファイエル」と「ファイアー」と帝国人のドイツ風名しか思いつきませんでした。
むしろ外伝4巻で、ヤンと帝国軍捕虜の老人が帝国公用語と同盟公用語
を使い、会話をしたことが問題だと思いました。
この場面が出てきたが為に、本伝で帝国人と同盟人が会話したときの言葉は、何語でどのように話したのか? ヤンは帝国語が苦手なのに、ラインハルトとの会談ではどのように会話をしたのか…、など本伝随所に疑問符がつきました。
結局私は、帝国語も同盟語も連邦時代の公用語が、方言のように変わっただけで、根幹は同じなのだろうと自分を納得させましたが。
しかし本伝では、両国の公用語に関する会話は出てこなかったのに、外伝4でそれを強調してどうするんでしょう?
田中氏は、外伝4の公用語を使ったシーンを本伝への影響を何も考えずに書いたのかな~としか思えなかったです。(^^;;)
> 結局私は、帝国語も同盟語も連邦時代の公用語が、方言のように変わっただけで、根幹は同じなのだろうと自分を納得させましたが。
昔「母を訪ねて三千里」のマルコ君がイタリア人であるにも関わらず平気でアルゼンチン(スペイン語圏)を一人旅するのを不思議に思ったことがあります。機会があったので、ラテン系言語に詳しい方に尋ねてみたところ、フランス語、イタリア語、スペイン語どうしでは「お互いに自分の言語でしゃべれば、だいたい何を言っているかはわかる」ということでした。マルコはきっとイタリア語で押し通していたんですね。(アニメではえらく流ちょうに喋っていたような気がしますが)
帝国公用語も同盟公用語も根は同じ言葉なんでしょうから、お互いに「言っていることはわかる」状態なんでしょうね。
(で、お互いに言葉について悪口を言い合っているんです、きっと。
「帝国ことばの尊大で時代遅れなこと!」
「同盟のことばってなんて野卑で汚いのかしら」
このへん、英語と米語の関係に似ているのかも。)
皆様、
いろいろ勉強になるレスをいただき、ありがとうございます。
はじめに八木あつしさんの提議された問題についてですが、
>帝国=ドイツ語・同盟=英語を使用しているという記述
>はありましたっけ?私の記憶では、「ファイエル」と
>「ファイアー」と帝国人のドイツ風名しか思いつきませんでした。
アニメでは、帝国のドイツ語と同盟の英語が、はっきりと出てきますが、原作には、明確な記述はありません。ただ、「ファイエル」以外にも、
*アンネローゼがラインハルトへの手紙の末尾に「アウフ・ヴィーダーゼーン」といっている
*ラインハルトがヒルダを「フロイライン」と呼んでいる
*グリューネワルト伯爵夫人の「伯爵夫人」が「コンテス」ではなく「グラフィン」
*オーベルシュタインが「A」「B」を「アー」「ベー」と発音している
*黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>
*疾風ウォルフ<ウォルフ・デア・シュトルム>
*禿鷹の城<ガイエスブルク>
等が、帝国がドイツ語を公用していることの証拠(?)だと思います。(はじめに書いたように、私のドイツ語知識はゼロなので、これらがどこまでドイツ語なのか、確信はできませんが・・・少なくとも英語でないことは分かります)
もちろん、IKさんが言われるように
>一部の単語や固有名詞がドイツ語風に装飾された英語
である可能性もあります。ただ、私の記憶が正しければ、「変異性劇症膠原病」になんだか馴染みのない、しかし英語でないのは確実な、ルビがふってあり(英語なら「variable ferminant collagen disease」)、こういう科学用語には、装飾は入らないはずなので、帝国の公用語はやはり英語とは違う何か、おそらくはドイツ語であるように思われます。
>欧州でも皇帝を呼び捨てた場合は、不敬に当りますので注意しましょう。
すると、オーベルシュタインは、「皇帝は後継者を定めぬまま死にました」と言ったのではなく、「フリードリヒは後継者を定めぬまま死にました」とでも、言ったのでしょうね。
それで思い出しましたが、故ダイアナ妃のことを英米の新聞が「ダイアナ」どころか、時には「ダイ(Di)」などと呼んでいましたが、あれは彼女が離婚して臣籍に戻ったからだったのでしょうか?
>十五月の場合は、ラテン語で「十三番目の月」と言えば通じます。
実は私もそう思って、最初の書き込みで「Trecember」などと例をあげてみました。私はラテン語は知りませんが、近縁関係にあるスペイン語で8は「Ocho」、9は「Noevo」、10は「Diaz」と英語の10月、11月、12月と関連しているので。スペイン語の13は「Tresse」です。
ポプランとアッテンボローのやり取りですが、私なら直訳でなく、多少アレンジして「翻訳」すると思います。
「いつが誕生日だ」
「十五月三十六日」
「せこいうそをつくな!悪あがきをしやがって」
"What is your birthday?"
"Trecember thirty six."
"Tres...what do you say? What’s that?"
"Trecember. Fifteenth month of a year."
"Oh, stop it! Don’t you see you’re just making a fool of you?"
ぼくも、他の掲示板でこの話題が出た際に考えたことがあります。
基本として、恐らく銀河連邦時には英語ベースの「公用語」が定着
していたのではないかと思います。
そして、今ある言語くらいはローカルで残っているのではないでしょうか?
帝国建国時に、いちローカル語(恐らくドイツ語ベース)が「帝国公用語」
として採用されたとか。
ちょっと個別に。
(その1)
実は「超訳」だったりして・・・(^^;
言葉遊びのできる我々の知らないやり取りがあったんですよ、きっと。
冗談はさておき、IKさんの「『~主義者』はすべて -ist 」辺りが
しっくりきますね。
(その2)
この辺りは、文面で「ヤン」に呼びかけてると分からせるために
「ヤンおじちゃま」と表記しているだけで、
本人は「おじちゃま(Mister or Uncle)」と呼びかけてるだけかも。
で、その呼びかけに「年取った」ニュアンスがないと分かっていつつ
自分の原語イメージ(中国?)で違和感を憶えたのかもしれません。
#そういえば中国的には老成化はマイナスイメージなのかな?
プラスな気もする・・・
あ。もしや、ユリアンやフレデリカはファーストネームで、
自分は「名字」で呼ばれることに疎外感を感じたのかも!!
・・・違うか。おじちゃま、おねえちゃまになんの関係もないし。
>むしろ外伝4巻で、ヤンと帝国軍捕虜の老人が帝国公用語と同盟公用語
>を使い、会話をしたことが問題だと思いました。
読んでいない分際でご返答するのも気が引けるのですが、
「通訳がいた」可能性は皆無でしょうか?
スタートレックのような、「翻訳装置」とか無いのでしょうしね?
>>欧州でも皇帝を呼び捨てた場合は、不敬に当りますので注意しましょう。
>すると、オーベルシュタインは、「皇帝は後継者を定めぬまま死にました」と
>言ったのではなく、「フリードリヒは後継者を定めぬまま死にました」とでも、
>言ったのでしょうね。
オーベルシュタインは肯定に対して敬意を抱いてないのでそのままで良いのでは?
だからこそ、周りがおどろいたのですし。
ちなみに他国民に「不敬」って適用されるのでしょうかね?
「失礼」なので気を付ける、なら納得いくのですが。
敬語について気になったのは、キルヒアイスのラインハルトへの言葉遣い
の変化に「ラインハルトが気付かなかった」と記述があった所です。
呼び捨てが、「さま」付けになれば幾ら何でもわかるだろ?、と。
実際のやり取り的には、文面全体やニュアンスで敬語的表現が
有ったのだろうと、自分では落とし所を決めましたが。
帝国におけるドイツ語表記といえば「三元帥の城」などもそうではないでしょうか。ちょっと調べるのが面倒なんですが、なんかいっぱいルビがついていたような気が。
それと前から思っていたのですが、「発射!」はファイエルではなくフォイエル、またはフォイアーではないでしょうかね。これも訛っているという可能性はもちろんあるのですが。
ロイエンタールが死んで、ミッターマイヤーが泣いているのをバイエルラインが目撃した時、「疾風ウォルフが泣いてるぜ…」と呟きますね。OVAではこの疾風ウォルフがドイツ語になっていたのです。いくらなんでも…と思いましたよ(笑)。英語ならまだしも、ドイツ語に堪能な日本人がそんなにいるんかいな(笑)。
英語とドイツ語というのは確かに同じゲルマン語に属するんですが、ロマンス語間のように疎通は簡単ではありません。それは英国がノルマン人の征服を受け、フランス語の影響を多大に浴びてしまったからなんですね。英語しか話さない英国人が普通のドイツ人の会話をそのまま理解できることはまずないのではないかと思います。
だから英語で話している国民に対していきなり今日からドイツ語を話しなさいというのはかなり無理があるんですね。というか殆ど不可能だと思いますが。ルドルフ大帝の強権を以ってしても、出来ますかねえ。支配者層でさえ最初はおそらく話せないんですから。
膠原病について言えば、カルテにはドイツ語で記載するという伝統がずっと続いている可能性があります(自分で言っていてかなり馬鹿馬鹿しい)。医師という特殊なギルドの秘められた符号として生き残っているのでは。あるいはドイツ語は生活語ではないにしろ、教養語として用いられている可能性もあります。帝国支配階級は民衆の前で、民衆に話を聞かれたくない時、ドイツ語を用いている(これはかなり妄想が入ってますね)ということも有り得ないことではないかと。
ところで銀英伝の英訳ってあるのでしょうか。ネット上でも構わないんですけど、あったら読んで見たいです。
田中芳樹さんは銀英伝をプロに英訳させてアメリカで売ればいいんですよ。あれだけの作品ですから、かなり売れるんじゃないでしょうか。そうすれば、新作を書かずとも、「らいとすたっふ」を食わせる経費くらいは充分捻出できるんじゃないでしょうか。「灼熱の竜騎兵」であんなセコい真似をしなくても。
>「三元帥の城」
「ドライグロスアドミラルスブルク」でしたね。英語の「fleet admiral」をドイツ語で「グロスアドミラル」というのか・・・と思ったことがあります。
>ところで銀英伝の英訳ってあるのでしょうか。ネット上でも構わないんですけど
KURさんが紹介された英訳ですが、
http://www.ocf.berkeley.edu/~mac/translate.html
で、読むことができます。ただし、翻訳のレベルはあまり高いとはいえません。(どうも、間に中国語を挟んでの重訳のようです。)「敬語」を省いたオーベルシュタインの言葉ですが、
(原文)
「皇帝は後継者を定めぬまま死にました」
公然と敬語をはぶいたその言いかたに、ラインハルトとキルヒアイスをのぞく他の諸将が一瞬、愕然と息を呑んだ。
(英訳)
"The emperor had died without appointing a successor."
Under all these watchful eyes he had publicly omitted the respectful title; other than Reinhard and Kircheis, all the other admirals were amazed by his audacity.
いったい、どういう「respectful title」を省いたのでしょうね?
>「発射!」はファイエルではなくフォイエル、またはフォイアー
「fire」を翻訳ソフトにかけると「feuer」と出ました。「Reuenthal」が「ロイエンタール」なのだから、たしかに「フォイアー」の方がそれらしいですね。
>OVAではこの疾風ウォルフがドイツ語になっていたのです。
私は、原作を読む前にアニメを見たので、この部分はなんと言っているのか、分かりませんでした。:-)
>英語で話している国民に対していきなり今日からドイツ語を話しなさいというのはかなり無理がある
私は、台湾のことを思い出しました。台湾人はもともと台湾語しか使えなかったのが、日本の統治下では日本語が強制され、皆日本語が完璧にできたそうです。戦後の国民政府の支配下では北京語が強制され、今度は全国民が北京語をマスターしたことも聞きました。政府の強権をもってすれば、こういうこともできるのだと・・・。(ただし、台湾語が忘れられたわけではありませんが)
>支配階級は民衆の前で、民衆に話を聞かれたくない時、ドイツ語を用いている
そういえば、ロシア帝国の貴族は、日常フランス語を用いていた、と聞いたことがあります。また徳川幕府の旗本が使った「山の手言葉」も、本来の関東弁とはまったく別系統で、明らかに当時の京都弁をベースにしていますね。関東の庶民は、旗本同士の話が理解できなかったのでは。
>銀英伝をプロに英訳させてアメリカで売ればいいんですよ。
私は、銀英伝はアメリカでは商品化できないだろう、と現時点では考えています。理由を詳細に述べると、非常に長くなりますが、要点をいうと、
1.ラインハルト陣営の風俗・習慣・用語が、ナチスを連想させる
2.帝国はともかく、同盟まで人種的にかたよりがある
3.地球教とキリスト教の類似点
となります。
> ちなみに他国民に「不敬」って適用されるのでしょうかね?
> 「失礼」なので気を付ける、なら納得いくのですが。
ご指摘有難うございます、仰るとうり不敬は少し違いますね、礼儀知らずあたりの方が適切でしょうか。
ちなみに戦前の日本のように不敬罪という形で法整備されている場合は、たとえ外国人でもその国で何かやらかした時は捕まります(今の欧州に不敬罪を採用している国があるかは知りませんが)。
ある人が対談で言ってたんですが(誰だったかなあ)、その人が昭和史に関するアメリカでの講演に参加した時のことです(まだ昭和天皇存命の時ですね)。
アメリカ人がしきりに Hirohito と呼び捨てするのをむっとしてその人は自分の番の時、His majesty と言ったそうです。そうしたら次のアメリカ人の講演者たちは一様に His majesty と言い出したそうです(笑)。
ビートルズのホワイトアルバムだったかなあ、Her majesty うんぬんという曲があって、私、最初、「彼女の威厳? 意味わかんねえなあ」と思っていました。女王陛下という意味だったんですね。だから多分、オーベルシュタインの台詞を敬意を込めて表すのだとしたら、
His majesty has gone without leaving the successor.
とでもなるのだと思います。die という表現は直接的すぎてちょっと敬意に欠けると思われるかも知れませんね。
台湾の人たちは生き延びるために確かに言語能力を鍛えてきました。しかし日本語や北京語は、それを強要した支配者たちにとっては日常語だった訳です。銀河連邦から銀河帝国へと移行した時、ドイツ語を日常語とする人がどれだけいたでしょうか。
エスペラントが普及しないのも、それを日常語にする人がいないからではないでしょうか。
だいたいルドルフはなんでドイツ語を話せたんでしょうかね。
> 「ドライグロスアドミラルスブルク」でしたね。英語の「fleet admiral」をドイツ語で「グロスアドミラル」というのか・・・と思ったことがあります。
Grossadmiralは海軍元帥であってます。
でもこの手のSFに出てくる軍隊は何で海軍の影響を受けているんでしょうか、普通に考えれば空軍の流れになりそうなんですが、不思議です。
> >「発射!」はファイエルではなくフォイエル、またはフォイアー
>
> 「fire」を翻訳ソフトにかけると「feuer」と出ました。「Reuenthal」が「ロイエンタール」なのだから、たしかに「フォイアー」の方がそれらしいですね。
銀英伝の「ファイエル」は、「フォイヤーだと誤植と間違われるかもしれないのでドイツ語ぽい言葉を作った」と以前、田中先生はどこかのインタビューで答えていたと記憶しています。
余談ですが、従来ドイツ語の「er」は「エル」と発音します、Feuer(フォイエル)Panther(パンテル)Tiger(ティーゲル)などです、しかしアメリカ文化の影響からここ数十年の間に、フォイヤー、パンター、ティーガー等、英語風の発音に変わりました。
既にIK様が述べていますが、臣下の者が公の場でEmperorという言葉を使うのは適切ではありません。
あとマスコミですが、故ダイアナ妃だけではなくチャールズ皇太子も呼び捨てにする事があります(女王を呼び捨てている物は見た事がありませんが、おそらく有ると思います)。
ただ米国のマスメディアの方が遠慮がなく、英国のマスメディアはまだ気を使っています、特に大手は名前のみの記事をのせる事は滅多に有りません(でもこないだBBCもダイアナ妃を呼び捨てにしていたな・・・)。
この辺がどうゆう感覚なのか、はっきりした事は分かりませんが、失礼な事なのは間違いないでしょう。
ダイアナ妃について言えば離婚して王室を離れても、もともと伯爵令嬢ですのでLadyDianaと書いた方が良いでしょう。
オーベルシュタインが省いた「敬語」についてですが、こういう解釈はどうでしょう?
戦中・戦後に活躍した英国人作家C.S.ルイスの児童文学に、「The Chronicle of Narnia」という作品があります。Narniaという架空の国の年代記です。この物語にCalormenという「悪の帝国」が登場し、帝王の名前をTisrocといいますが、Calormenの民はTisrocの名を唱えるとき、文脈に関係なく、必ず「may he live forever」と付け加えねばなりません。例えば、
“But in the same year in which the Tisroc (may he live forever) began his august and beneficent reign,...
といった具合に。
自由の民Narnia人がこの「may he live forever」を省くと、Calormen人はショックを受けます。もしかすると、ゴールデンバウム朝銀河帝国にも似たような習慣があり、オーベルシュタインはそれを省いたのかもしれませんね。
帝国におけるドイツ語の普及についてですが、ロシアの事例と台湾の事例が合わさった、という解釈はどうでしょう?
つまり、ロシア貴族がフランス語を使ったように、最初は門閥貴族がドイツ語を使い始めた。理由は、IKさんが書いておられるように、民衆に話を聞かせないためです。しかし、それでは貴族たちは仲間内の言語(ドイツ語)と民衆に命令する言語(英語)の双方を習得せねばならない。帝国創業期の貴族たちならともかく、怠惰に流れた後継者たちには、この負担は耐えられなかった。そこで、自分たちの言葉を民衆に強制して覚えさせたのだと・・・
> 銀英伝の中では、銀河帝国はドイツ語、自由惑星同盟は英語を使用している、という設定がされているようです。もともと同じ国の国民だったのが、わずか300年程度で、なぜ別の言語を話すようになったのか不思議で、これはこれで一つのトピックになるかもしれませんが、それよりも作品の随所に、銀英伝の人物たちは、英語でもドイツ語でもなく、実は日本語を話しているとしか思えない部分が出てきます。
公用語=全国民が日常会話で使用と考えるので話がどんどん難しくなっているのではないでしょうか?現在でも、いろいろな国から集まる国際会議などでは英語が会議共通の言語として使われていることが多いですが、別に会議の出席者が全員、日常生活でも英語を使っているわけではありませんよね。
おそらく銀河連邦時代には、それぞれの民族が固有の言語を日常生活で使い、役所の公文書や議会の討論、軍隊の指揮などでは便宜上、英語が共通言語として使われていたのではないでしょうか。
ところが、銀河帝国の発足によって、一地方言語(方言扱い)であったドイツ語が公用語に採用され、英語が一方言に転落してしまったのでしょう。しかし、官僚や軍人以外の一般庶民はそういうこととは関係なく、自分たちの固有の民族言語を使い続けたのでしょう。ただし、官僚や軍隊の将校になろうとする者にはドイツ語の習得が必修であったと思われます。また、ドイツ語以外の言語を使用する民族がいる地域を領地に持つ貴族は現地語とドイツ語の両方が扱える執事を雇って、自分の命令を翻訳してもらっていたのでしょう。軍隊内でもドイツ語使用地域以外から徴兵された兵士に対しては「撃て」「突撃」などの最低限度のドイツ語を教え、細かい命令は現地人の将校が現地語に翻訳して伝えていたと考えると合点がいくと思います。
> 例えば、フリードリヒ4世の死を報じるオーベルシュタインが、敬語を使わなかったことで、諸将が驚く場面がありますが(黎明篇、第10章-2)、そもそも「敬語」などドイツ語に存在するのでしょうか?非常に疑わしい。
「崩御」を「死んだ」と表現して、敬意がないことを表すというのは確かにおかしいですね。私は銀河帝国では旧ソ連のスターリンや北朝鮮の金日成のように、皇帝を1巻のラインハルトの元帥杖授与の場面のように「全人類の支配者にして全宇宙の統治者、天界を統べる秩序と法則の守護者、神聖にして不可侵なる銀河帝国フリードリヒ4世陛下」と呼ばなくてはいけなかったのを「フリードリヒが」とオーベルシュタインが言ったので周囲が驚いたとしたほうがよかったと思います。
> とはいえ、ドイツ語に関しては、こちらの知識も皆無で、自信を持っての発言はできないので、ここでは取り上げません。それよりも、「英語」を使っているはずの同盟人の会話に、英語では絶対言えない表現が現れます。銀英伝には、漢字に英・独語のルビをふった言葉が輩出し、作者の外国語好きがうかがわれますが、その割には作者の英語の知識は貧弱なのでは。
>
> (その1)
> 「こいつはおどろいた。君はかなり過激な無政府主義者らしいな」
> 「ちがいます。私は菜食主義者です」
> (雌伏篇、第5章-4)
>
> 「無政府主義者」と「菜食主義者」。どちらも「主義者」を含むのを利用して、ヤンがネグロポンティをからかったわけですが、それは日本語だからできることで、「anarchist」と「vegetarian」では、そんな言葉遊びもできないでしょう。
以前も指摘されていますが、おそらく銀河連邦時代に「主義者」を表す言葉は「ist」をつけると統一されたのでしょう。
> (その2)
> 「こんにちは、ヤンおじちゃま、フレデリカお姉ちゃま」
> (飛翔篇、第2章-4)
>
> ヤンを傷つけたこの言葉を、シャルロットは正確にはどう言ったのでしょう。彼女がヤンを「Uncle Yang」と呼んだのなら、すごく自然なことです。子供が大人に親しく呼びかけるとき、敬愛を込めて「Uncle」、「Aunt」と言うのはごくありふれた言い方だからです。しかし、その場合、相手の老若は関係ありません。シャルロットにとっては、ビュコックもヤンもユリアンも「Uncle」だし、ビュコック夫人もフレデリカもカリンも「Aunt」です。つまりヤンとフレデリカを、呼び方では「差別」できない。
>
> もし、「ユリアンお兄ちゃま」や「フレデリカお姉ちゃま」を「Brother Julian」とか「Sister Frederica」と言えば、二人は修道僧か、もしくはアメリカの黒人になってしまいます。(しかも、その場合でも、年齢は関係ない)
私は中国語はまったく知らないのですが、ヤンは英語と中国語が話せて(小さいころは中国語を使っていた)、いたずら好きのキャゼルヌが娘に「ヤンのご先祖様が使っていた言葉」だとか言って、おじさんにあたる中国語を教え、何も知らない娘が無邪気にそれを使って、ヤンが傷ついたという解釈はどうでしょう?
> (その3)
> 「いつが誕生日だ」
> 「十五月三十六日」
> 「せこいうそをつくな!悪あがきをしやがって」
> (落日篇、第2章-1)
>
> 英語の「月」は、一月、二月、三月・・・というカウントアップではなく、January、February、March・・・と、それぞれ固有の名前がついています。だから、ポプランが「15番目の月」と言おうとすれば、新しい語を発明し(例:Trecember とか)、それが15番目の月のことだと、アッテンボローに説明する必要があります。
銀河連邦時代に非英語圏の人も理解できるように、1月・2月・・・をFirst Month・Second Month・・・というように表記すると改められたという解釈はどうでしょう?
そう言えば、ヤンと帝国軍の捕虜がどうやって会話したのか。ヤンとラインハルト、ユリアンとラインハルトがどうやって会話したのかという問題が出ていましたが、ヤンと帝国軍の捕虜に関しては、帝国軍の捕虜が帝国の英語圏出身者であったと考えれば問題ないのでは?
それに敵軍の捕虜を取り調べる必要から軍の学校では当然、敵国語を教えているでしょう。ですから、ヤンも帝国公用語を当然使用することが出来るはずです。ユリアンは士官学校に通っていませんから、帝国公用語を十分身につける時間が少なかったと思われますが(ユリアンはラインハルトと意思疎通がはかれたか不安がっていますし)、おそらく業を煮やしたラインハルトが、幼年学校で習った同盟語で会話を補ったのではないでしょうか?あるいは会話は苦手でも文法は出来るという可能性はありますから、筆談で意思疎通をはかった可能性もあると思います。
> ご指摘有難うございます、仰るとうり不敬は少し違いますね、礼儀知らずあたりの方が適切でしょうか。
> ちなみに戦前の日本のように不敬罪という形で法整備されている場合は、たとえ外国人でもその国で何かやらかした時は捕まります(今の欧州に不敬罪を採用している国があるかは知りませんが)。
えー、この点、日本人は海外に行った時は本当に気をつけて欲しいです。グラウンド・ゼロでピースサインをしながら写真を撮って、ニューヨーカーの不興をかっている日本人もいると聞きます。一般に現在の日本では特定のシンボルに対する敬意が薄いですが、大抵の国では通用しないですね。
王室がある国では当然、公では王室に対して相応の言動を維持するほうが無難です。ちなみにタイでは映画館などで、上映の前に国王夫妻の映像が流れるそうですが、そのような時は起立しなければなりません(法で定められています)。
相手の国旗や国歌を笑ったり、相応の敬意を態度で示さなければ殴られても、同情してくれる人はいないでしょう。
国家という存在が外国(欧米も含めて)では日本と違って「マジ」なんです。案外、知らないとか冗談ではなかなか済ませて貰えません。
> Grossadmiralは海軍元帥であってます。
> でもこの手のSFに出てくる軍隊は何で海軍の影響を受けているんでしょうか、普通に考えれば空軍の流れになりそうなんですが、不思議です。
膨大な数のSFによって「宇宙軍」=「海軍」と言うアナロジーが人々の頭に刷り込まれた結果。実際に宇宙軍を作るとき海軍用語が大量に採用されたというのはどうでしょうか?
確か似たような例が「月世界旅行」と実際の宇宙開発の間にあったと記憶しています。
>でもこの手のSFに出てくる軍隊は何で海軍の影響を受けて
>いるんでしょうか、普通に考えれば空軍の流れになりそうな
>んですが、不思議です。
>膨大な数のSFによって「宇宙軍」=「海軍」と言うアナロ
>ジーが人々の頭に刷り込まれた
まあ、いくらワープ航行技術があっても、宇宙を移動するのに数週間~数ヶ月を要し、その間は基本的に無給油、という設定がスタートレックでもヤマトでも銀英伝でもされているので、どうしても「フライト」よりは「航海」のイメージになりますよね。「乗り物」のサイズと乗務員の数、武装の多彩さも航空機よりは船を連想させるものです。ただ、銀英伝に限っていうと、一回の戦いに参加する「乗り物」の数が数万単位で、これだけは「艦隊」より「航空編隊」のイメージに近い。(実際には航空編隊でも、こんな無茶苦茶な数はないでしょうが)
それよりも気になるのは、シェーンコップやオフレッサーやリューネブルクも「admiral」なんでしょうか?彼らは、現代でいえば、NavyよりはMarine(陸戦隊)にはるかに近いし、それなら陸軍式に「general」でないとおかしいのでは・・・。でもシェーンコップやリューネブルクは、AdmiralヤンやAdmiralグリンメルスハウゼンの部下だしなあ・・・
>軍隊内でもドイツ語使用地域以外から徴兵された兵士に対しては
>「撃て」「突撃」などの最低限度のドイツ語を教え、細かい命令
>は現地人の将校が現地語に翻訳して伝えていたと考えると合点が
>いくと思います。
そういえば、漢やローマや唐のような、古代・中世の帝国、特にその軍隊はどうしていたのでしょうね。全国民に公用語を習得させるような教育制度が整備されていたとは到底思えないし。結局は将校だけが長安語やラテン語に通じ、部下に翻訳して伝えていたのでしょうか。必然的に、将校と部下は同郷人にならざるを得ず、それが私的な連帯感につながり、軍団が軍閥化して、ついには大帝国を内部から崩していったのかもしれません。
<それよりも気になるのは、シェーンコップやオフレッサーやリューネブルクも「admiral」なんでしょうか?彼らは、現代でいえば、NavyよりはMarine(陸戦隊)にはるかに近いし、それなら陸軍式に「general」でないとおかしいのでは・・・。でもシェーンコップやリューネブルクは、AdmiralヤンやAdmiralグリンメルスハウゼンの部下だしなあ・・・>
Kenさん、はじめまして。お気になっている件ですが、小説の2巻(徳間ノベルズ)P124上段でヤンがユリアンに、
「私はこれから昼寝をする。二時間ばかり誰も通さないでくれ。提督だろうが将軍だろうが追いかえすんだ」
と言っていますので、多分シェーンコップらは「general」で良いのではないでしょうか?
> そういえば、漢やローマや唐のような、古代・中世の帝国、特にその軍隊はどうしていたのでしょうね。全国民に公用語を習得させるような教育制度が整備されていたとは到底思えないし。結局は将校だけが長安語やラテン語に通じ、部下に翻訳して伝えていたのでしょうか。必然的に、将校と部下は同郷人にならざるを得ず、それが私的な連帯感につながり、軍団が軍閥化して、ついには大帝国を内部から崩していったのかもしれません。
参考になるかどうかわかりませんが、近代オーストリアでは軍隊で使う言葉を「前へすすめ」「撃ち方やめ」など簡単な命令の指揮語(ドイツ語)・軍隊の専門用語である服務語(ドイツ語)・兵士が会話で用いる連隊語(現地語)に分け、一般の兵士は指揮語(約80語)さえ知っていれば、あとは現地語で軍隊生活が送れるようになっていました。しかし、そのためには配属された将校が連隊語を知っている必要があり、ドイツ語しか知らない将校が現地語の使用を制限して、紛争のもとになることが多かったようです。
多民族国家の場合、被支配民族から将校を登用する方法と支配民族の将校に被支配民族の言語を学ばせて、各連隊に派遣する方法がとられると思います。
ちなみに自衛隊の前身である警察予備隊が設置されたとき、旧軍の将校は全員、公職から追放されていたため、米軍将校の命令を通訳が翻訳して、日本人隊員の訓練をおこなったそうです。こういう方法がとられた可能性もありますね。
ヤンのジョークを説明するために、「主義者」は「-ist」に統一されているのではという話が出てきましたが、それをみて、ジョージ・オーウェルの「1984年」を思い出しました。この小説ではニュースピーク法というのが使われていて、名詞と動詞は同一とされ(たとえば、切るを表す言葉はKnifeに統一される)形容詞は名詞・動詞に-ful,副詞は-wiseをつければ良いと単純化されています。(このほかにもいろいろあるのですが・・・)このような言語の単純化がすすんでいれば、銀英伝の矛盾も解決するのでは?1984年では言語の単純化は人間の思考範囲を縮小し、洗脳しやすくするために行われましたが、使用者が増えた場合に新参者がなじみやすいように単純化が行われる場合もあるそうです。
> 膨大な数のSFによって「宇宙軍」=「海軍」と言うアナロ
> ジーが人々の頭に刷り込まれた
そう言えば、アポロも宇宙船でしたね、すでに人類にとって宇宙は海なのか。
> それよりも気になるのは、シェーンコップやオフレッサーやリューネブルクも「admiral」なんでしょうか?彼らは、現代でいえば、NavyよりはMarine(陸戦隊)にはるかに近いし、それなら陸軍式に「general」でないとおかしいのでは・・・。でもシェーンコップやリューネブルクは、AdmiralヤンやAdmiralグリンメルスハウゼンの部下だしなあ・・・
海兵隊大将=Generalは米語です。
つまり海兵隊が海軍から独立しているのはアメリカだけで、他国の海兵隊、陸戦隊、海軍歩兵などは海軍の所属になります、当然、それらを指揮する将官は提督と呼ばれます。
銀英伝に出てくる陸戦部隊は、宇宙軍から独立しているようには見えませんので、提督でよろしいのではないでしょうか。
> 以前ネット上で、米国人ファンが翻訳した銀英伝の英語版を見たことがあります。
> 確か、二巻相当部分までしかなかったような気がするのですが、
> 「二〇代の将官」という部分を「二〇代で准将かそれ以上の階級の軍人」というように訳していたりとか、苦労の跡が見えました。
すごいファンがいますねえ。
しかも2巻まで??
どれだけの苦労があったのやら、想像もつかない。RPG「ウィザードリー」が日本に来たときも熱心なファンが翻訳をアマとしてやったと聞きますが、こういうサブカルチャー文化交流は、幾多の無名人に支えられているのでしょうね。
そういえば、「銀英伝」「創竜伝」は韓国語訳があるんでしたっけ?
台湾ではどうですかね。イゼルローン共和政府が他人事でなかったりして(笑)
> 台湾ではどうですかね。イゼルローン共和政府が他人事でなかったりして(笑)
台湾では翻訳が正式に出ているそうですよ。
ヤン・ウェンリーは楊威利となっており、ああ、こう書くのかと思いました。