優馬です。
自分で提案しておきながら、続編が続かなくてすみません。
せっかくレスをいただいておりながら・・・。
一月、ちょっとシャレにならず忙しかったもので、申し訳ありません。
(ザ・ベストに編集していただいているのを見て気づくという不明さ!)
で、遅まきながら第二弾です。
卑怯者という空虚/アーサー・リンチ
銀英伝を代表する卑怯者、アーサー・リンチ。エル・ファシルで民間人を見
捨てて逃亡し、ヤンが世に出るきっかけを作る。さらには帝国の手先となり、
グリーンヒル大将らのクーデターを使嗾、ヤンのクーデター鎮圧の際、殺され
る。
この人ってとにかく「ヤンの引き立て役」という人生なんですな(笑)。
実はリンチ氏のキャラ造形に強烈な違和感を抱いたのは道原さんのマンガ銀英伝の描写からです。
リンチ登場。(酔っぱらっている。)
同盟に潜入してクーデターをそそのかすように強要される。(最後まで酔っぱらっている)
・・・・・・・・・
クーデター計画を語らうグリーンヒルたち。(リンチ、その隣で相変わらず酔っぱらい。)
・・・・・・・・・
おいおいおいおいおい! フレデリカの父ちゃん、頼むからこんな情けないヤツに踊らされんでくれー。命がけの陰謀やっとるんとと違うんかー。カンベンしてくれー。
実際、クーデターとかの陰謀ごとって、仲間内の「信頼関係」がすごく大事ですよね。なんせ、裏切り者が出ればみなクビが飛ぶ。血判とかおどろおどろしいことしたくなるのも当然。私がグリーンヒルなら、「エル・ファシルの卑怯者」と聞いただけで拒絶します。そんな筋金入りの裏切り者を仲間にしていては危なくて仕方ない。(しかも「帝国帰り」!)さらにクーデターが成功した後、こんなヤツが仲間にいたとわかればクーデターの正統性がメチャメチャ傷つきます。例え、潤沢に資金を持っていたのだとしても、それならそれで怪しすぎます。帝国から戻ったリンチが大金をひけらかしたら、こりゃあもう帝国の密偵だと自白しているようなものです。
実は、この間のリンチの工作というのは具体的にまったく描かれていないんですよね。同盟に帝国内の内戦に乗じられないように、クーデターを起こす。こういう結論が先にあって、そのために帝国と同盟を結ぶキャラクターとして、リンチが使われています。ストーリー展開上の道具として使い捨てにされているわけで、リンチのキャラクターって「卑怯者」の「飲んだくれ」という以外にはまったく与えられていません。人間・リンチの苦悩とか懊悩とか、キャラクターを形作るエピソードは一切なし。道原さん、絵にするときにさぞや困ったことであろうと想像します。このへん、非常に作劇が安易であると思います。「同盟への謀略工作」→汚れ仕事→そう言えば保証書付きの「卑怯者」がいたな→こいつに謀略の汚れ仕事をさせよう。・・・というような心理が、作者の中で無意識のうちになかったとは言えないのではないかと思います。その結果、アーサー・リンチは「卑怯者という空虚」とでも呼ぶしかない、非常に矛盾に満ちた存在になってしまいました。
ある種の「事件」が起きる必要があるため、「原因」を後から考える、というのは架空歴史譚づくりの手法としてはOKなのでしょうが、ときどき矛盾を来すことがあります。リンチ氏(<ひょっとして「私刑」から命名?)はその典型的な例で、ついに一貫したキャラクターを与えられないまま使い捨てにされてしまいました。
※実は「銀英伝」の原テキストに当たれないまま、この文章を綴っています(<無謀)。記憶違いによる間違い等ございましたらご叱正ください。
こんにちわ、優馬さん☆
悪役列伝の続編、首をながぁくしてお待ちしておりました(笑)
> リンチ登場。(酔っぱらっている。)
> 同盟に潜入してクーデターをそそのかすように強要される。(最後まで酔っぱらっている)
> ・・・・・・・・・
> クーデター計画を語らうグリーンヒルたち。(リンチ、その隣で相変わらず酔っぱらい。)
> ・・・・・・・・・
> おいおいおいおいおい! フレデリカの父ちゃん、頼むからこんな情けないヤツに踊らされんでくれー。命がけの陰謀やっとるんとと違うんかー。カンベンしてくれー。
アハハハハハ!(^o^)
漫画版の銀英伝は読んだことありませんが、ここのシーンを想像してみて、とても笑えました。
> 実際、クーデターとかの陰謀ごとって、仲間内の「信頼関係」がすごく大事ですよね。なんせ、裏切り者が出ればみなクビが飛ぶ。血判とかおどろおどろしいことしたくなるのも当然。私がグリーンヒルなら、「エル・ファシルの卑怯者」と聞いただけで拒絶します。そんな筋金入りの裏切り者を仲間にしていては危なくて仕方ない。(しかも「帝国帰り」!)さらにクーデターが成功した後、こんなヤツが仲間にいたとわかればクーデターの正統性がメチャメチャ傷つきます。例え、潤沢に資金を持っていたのだとしても、それならそれで怪しすぎます。帝国から戻ったリンチが大金をひけらかしたら、こりゃあもう帝国の密偵だと自白しているようなものです。
今考えると、確かに滑稽ですよねぇ(^-^;)。
せめて、グリーンヒル大将もリンチが帝国に何らかの関係があるということは感づいていたけど、それを承知の上であえてクーデターを決起し、成功の暁にはリンチを証拠もろとも口封じに殺すつもりだった…という設定ならまだ良かったのかなぁ?、なんて思います。グリーンヒル大将は人格者として描かれていましたが、クーデターに乗っかるほど精神的に追い込まれていたのだから、意外にそこまで非情なことも考えていた、ということで。
でも、わたしも記憶がちょっとあやふやなんですが、最後にリンチが「お前らは帝国(ラインハルト)に踊らされていたんだよ!」というようなことを告白したとき、全員が「な…?!」と素で驚いていたような記憶があります。今にして思えば、リンチの素性を最初からほとんど疑わない素直なクーデター決起者の方々に「ちょっとちょっと、今頃気がついたの?!」と言いたくなるのも仕方ないかもしれませんね(^-^;)。
※ごめんなさい、わたしも自分の記憶にちょっと自信がありません(原本も手元にない状態です)。勘違いしている点がありましたら、ご指摘くださいませ。
てんてんdwpです。
> せめて、グリーンヒル大将もリンチが帝国に何らかの関係があるということは感づいていたけど、それを承知の上であえてクーデターを決起し、成功の暁にはリンチを証拠もろとも口封じに殺すつもりだった…という設定ならまだ良かったのかなぁ?、なんて思います。グリーンヒル大将は人格者として描かれていましたが、クーデターに乗っかるほど精神的に追い込まれていたのだから、意外にそこまで非情なことも考えていた、ということで。
> でも、わたしも記憶がちょっとあやふやなんですが、最後にリンチが「お前らは帝国(ラインハルト)に踊らされていたんだよ!」というようなことを告白したとき、全員が「な…?!」と素で驚いていたような記憶があります。今にして思えば、リンチの素性を最初からほとんど疑わない素直なクーデター決起者の方々に「ちょっとちょっと、今頃気がついたの?!」と言いたくなるのも仕方ないかもしれませんね(^-^;)。
お二人とも、記憶どおりです(^^;実はちょっとした理由で漫画版銀英伝を読みなおしたばかりで。
ずっと酔っ払ってましたし、素で驚いていました。なんかペンダントみたいなのの中の命令書?を見せられて。
確かに私もあれには「おいおい」と思いましたよ。誰がどう考えたって怪しいに決まってるだろって。
てんてん
dance with penguin
優馬です。
ほんと、あのクーデターって絵空事っぽいですよね。
最初に読んだとき「この人たち、なんのためにクーデターとか起こしたの?」ということがどうしても納得できなくて、多少興ざめした覚えがあります。
そもそもクーデターとか命がけでやるんだから、首謀者たちには相当切羽詰まった理由がないとオカシイんですよね。特に同盟は一応民主主義やってるんで、クーデターの大義名分とともに「已むに已まれず非常の手段を取った」という一種追いつめられた心情が必ずあるはずなんですが。二・二六事件の将校たちは、東北の飢餓、兵の幼い妹が女郎に売られるという悲惨、そしてそれらに対する政府の無能、これらに対する正当な怒りに立脚して決起したわけで、その心情は十分に理解できます。(やったことには全然賛成しないけれど。)
というわけで、私の中ではフレデリカの父ちゃんもまた、なんとなくお人形っぽいキャラクターになっちゃってます。リンチと同様、作者の都合でつじつまの合わない行動させられて「キャラ立ち」しそこなった可哀相なキャラクターです。
本来、「銀河一の卑怯者」なんてキャラクター、ある意味おいしいと思うのですが。彼の屈折と葛藤を描くことにより、非常に面白いキャラクターが立ち上がったのではないかと。でも、やっぱり「葛藤」が書けない人なんだなー。
アーサー・リンチに関しては、読めば読むほど何か違和感を感じます。
で、結局思ったんだけど、彼ってまったく卑怯者ではない可能性があった
んじゃないか、と。
彼の心理描写を全てとっぱらって行動だけを追い、心理面を考え直してみ
ましょうか。
・エルファシル
エルファシルは陥落間違いなし。帝国は支配した星の住民を皆殺しにす
るわけではない。とすれば軍さえ無事ならまた取り返せる可能性が高い。
であれば軍を逃がすのは当然です。降伏も兵の命を考えればまた当たり
前。つまり彼は人命重視という点では最も高く評価されるべき行動をと
りました。
別の考え方として、彼はヤンに民間人の脱出を任せ、自らは軍として注
意をひきつける盾となりました。彼の台詞は照れ隠し(まさか自分たち
が盾になって民間人を逃がす、などと周りの軍人に語るわけには行かな
いでしょう)の可能性があります。
ヤンをエルファシルの英雄として売るためには彼の存在は邪魔ですから
同盟の宣伝工作として彼は卑怯者にされてしまいました。
・クーデター
彼は英雄になるチャンスがありました。それはラインハルトの命令書で
す。あれを公開することで、帝国が同盟の内乱を煽っていることを証明
できます。内乱も起こらない可能性がありました。しかし、彼はそれを
しませんでした。何故でしょう。
それは敵であるラインハルトが自らを信じ、自らの致命的証拠となる命
令書を渡すという行為で彼を信用しているという態度を見せたから、と
考えることができます。そして彼はそれに応えました。
最終的にヤンにラインハルトによる扇動だと看破された時点で証拠とな
る命令書をクーデター派に見せつけることにより、証拠隠滅に成功して
います。そう考えると彼の行動には何ら矛盾がありません。
酔っ払っているのも、いくら信頼された、そしてそれに応えたとはいえ
自らの母国である同盟に対する背信行為であるのは間違い無く、そのた
め酔っ払っていなければできなかったと考えれば納得できます。
いかがでしょう。
てんてん dance with penguin
優馬です。
てんてん dance with penguinさん、
> で、結局思ったんだけど、彼ってまったく卑怯者ではない可能性があ
> ったんじゃないか、と。
> 彼の心理描写を全てとっぱらって行動だけを追い、心理面を考え直し
> てみましょうか。
現実の歴史であれば、資料をそういうふうに「深読み」することで新たな人物像を浮かび上がらせることができます。隆慶一郎が「影武者徳川家康」等一連の作品で見事にやってみせてくれたように!
ただ、惜しむらくは(?)「銀英伝」ってもともと小説なんですよね。「実は愛国者のリンチ」というようには、どうしても読めないと思うのですが・・・。
「愛国者・リンチ」を登場させるとしたら、これまた一種の「反銀英伝」ですね(笑)。(<銀英伝の出来事を「史実」として捉える。)不沈戦艦さんの「逆転!!」にはスケールの点で及ばないもの、渋い佳品になる可能性はありますな。タイトルは「苦渋」、文体は藤沢周平ふうということで如何?
割り込み失礼します。
アーサー・リンチ少将のクーデター煽動についてですが、小説2巻中の描写と合わせて
「グリーンヒル大将の元に(ラインハルト作の)計画書と軍資金を持ちこみ、後の細かい人員調達や調整はグリーンヒル大将が主導して行った」
という所で、割とリンチ少将の実行時における役割は軽かったのではないでしょうか(飲んだくれですし)。
グリーンヒル大将がクーデターに荷担したのはアムリッツァ会戦を強行した同盟の現体制への不信感が主体だと思います。
後、グリーンヒル大将本人がリンチの自白後に述懐していますがリンチ少将に対し過去の業績か何かで個人的信頼を持っていたのも理由の一つでしょう(グリーンヒル大将の幕僚時代に余程優秀だった等)。
とはいえクーデター立ち上げの面子にフォーク准将も入っているあたりは、リンチ少将の捨て台詞ではありませんが
「人を見る目に欠ける」
との謗りはまぬがれようもない気がしますが。
結論としては
「グリーンヒル大将の『いい人』ぶりにリンチ少将(を介したラインハ
ルト)がつけこんだ」
というのが2巻のクーデターの実像だと思っております。
確かに大雑把もいい所な計画ですが、話的には面白かったですしラインハルトも「うまくいけば御の字」程度の期待しかしていなかった様ですし、まああれはあれでいいかなと。
そういえばOVA版でも飲んだくれでしたね・・・。
ま、いくら酔いどれ親父といえども、最初にグリーンヒル大将のところに計画を持ち込んだときくらい素面だったんじゃないでしょうか。
そのくらいの知恵はあるでしょう。
で、計画を伝えて役目は終わり、と。
あとはグリーンヒル大将の厚意でクーデター派に加わっているだけで、
実質的役目は無し。そんなところじゃないかと思います。
まあ、リンチ少将も四十代そこそこで少将になった位ですから、素面であればそれなりに有能でしょうし、グリーンヒル大将の二級下の後輩でもあったそうですから、グリーンヒル大将を騙すだけの能力とコネは持っていたと考えてもおかしくは無いと思います。
ただ自分がグリーンヒル大将に言いたいのは、
「酔っ払いと銃で撃ち合って負けるな!」
の一言ですね(笑)。