はじめまして、熱狂的田中芳樹ファン(笑)の神海です。今日初めて、このページにアクセスしました。まだざっとしか見ていませんが、全面的に賛成するご意見も多々あります。特に創竜伝の様々な矛盾について。
これに少し関係して、小説家としての田中芳樹氏について一つ。
特に「銀英伝」に対し、政治や社会設定に対する意見が幾つか出されていましたが、その中に、設定の不備によって作品の「完成度」を批判するようなものが、もしあるとすれば、そのような批判自体に、私は賛成できません。
一時期問題になった、艦隊行動の矛盾についての議論はその最たるものでしょう。艦艇がどうやって超光速を実現しているかとか、ルドルフやラインハルトが具体的にどのような経済政策をとって帝国を再建させたか、など、物理的、経済学的な理論は、「田中芳樹の作品」に必要なものではないのです。
作家として、田中芳樹氏の最も「恐い」ところは、氏が、作品内の舞台設定やSF設定というものを、人物描写や背景描写のための「雰囲気づくり」程度にしか見做していないように私には思えます。
たとえば、自由惑星同盟の議会は一院制、二院制、どちらなのでしょうか。原作では説明されていません。ですが、同盟がどのような建国を経、どのような現在にいるかを描写するのに、意識してか否か、田中氏はそのようなものを必要としないのです。
考えてみれば、世に優れた(と評価される)エンタティメント小説とはそのようなものだったのではないでしょうか。専門的な予備知識を事前に用意しなければならない物語は、マニアにはうけても決して一般化しません。氏が大きな影響を受けたと言われる「三国志演義」についても然りです。
私のように未熟な同人作家から見ると、これは本当に「恐い」事です。いったい、自分が精魂込めて創り上げた「宇宙」に対して、満足な組織機構の説明も行わず、逆にそれをエンタティメントとしてプラスの方向へ結実させるということが、どうして出来るのでしょう。作家というものは多少あれ「設定魔」であり、求められない解説を長々と続けてかえって娯楽性を損ね、読者から見放されるという危険と常に背中合わせで書いています。
最近流行のシミュレーション小説の大部分や、「エヴァンゲリオン以後」に多発している的外れな心理描写、問題提起を売りにするアニメ(この辺りの悪口なら幾らでも出てくるのですが、それは後日)とは比較になりません。勿論、「それが求められているから売れるのだ」と言われれば、それまでですし、銀英伝にもゴールデンバウム王朝の歴史に関する数ページに渡る文章もあります(第六巻第四章等。この時機の説明は娯楽性を深めるものであり、決してマイナスになっていないと私は判断しますが)。創竜伝については一言もありません。
そういうわけで、田中氏の思想や心理も含めて、今述べたようなものを想像や議論の対象にするのは楽しいのですが(私も好きですし)、作品の完成度に対する批判に用いる事には、反対します。勿論、説明不足が気に食わないとおっしゃる方も多いのでしょうけれど。
……我ながら贔屓が過ぎるかとも思いますが、とりあえずこれでしめさせて頂きます。長々と失礼しました。ご意見、ご反論、お待ちしています。
では、今日からよろしくお願いします。
「マニアなファン」の一人
こうみ あきら
>神海氏へ
私はけっこうこのHPでは、田中芳樹に対する批判じみたことばっかりやっていますけど、「銀英伝の完成度」について批判しようとはしていないつもりですけどね。やはり田中芳樹のモノの考え方に対する批判が一番大きいですよ。それと、そんな思想をジャンジャン広められたらたまったもんじゃない、という事です。「銀英伝」に関しては、「反銀英伝構想」のように、ファンサイトと変わらないような、面白がって進めた論もありますし。「銀英伝の完成度が低い」とか「銀英伝は下らない」という意見は、他の人でもあまり見たことがないと思いましたが。管理人さんもそうですが、
「銀英伝はいいけど、創竜伝はひどい。早くあんな馬鹿げた話は打ち切って、銀英伝のようなもっと面白い小説を書いて欲しい。中国モノももういい。まっとうなSF作家に戻ってくれ」
ってのが、ここで田中芳樹に批判的な書き込みをする人の、最大公約数的な考え方だと思いますがどうですかな。銀英伝の内容についてあーだこーだ言ったりするのは、面白がっている面が非常に大きいですね。矛盾点を言ったりするのもそうです。「突っ込まないのがお約束」じゃ、面白みに欠けるでしょう?それだけの話ですよ。
>神海さん
>作家として、田中芳樹氏の最も「恐い」ところは、氏が、作品内の舞台設定やSF設定というものを、人物描写や背景描写のための「雰囲気づくり」程度にしか見做していないように私には思えます。
まさにその通りで、銀英伝に対するSF的科学理論のツッコミというのは、田中芳樹という作家にとって、彼の掌の上で反論しているようなものでしょうね。
おそらく、銀英伝に本質的にダメージを与えられるのは、ザ・ベスト所収の「個人の自由と権利に比べれば・・・」のような批判だと思うのですが、ヤンすらも相対化されている銀英伝においては、これさえも掌の上での反論になるのかも知れないですね。
この相対性に貫かれた物語が
>銀英伝という大傑作小説(断言)-小村さん-
たるゆえんなのかも。それにしても、その後に書く「創竜伝」がこれでもかって言うくらい絶対性(作者の意見=評論部分)に貫かれているってのも、わからんものですね。
はじめまして。
このHP来て、はじめて銀英伝の批判を見ましたよ。
ここは銀英伝ファンとして、何か書いておかねば成るまい。
過去ログをざっと見ただけなのでよくわからないのですが、批判している人たちは、銀英伝の中身を現実として捉えた場合、おかしな点が多いと言っているのか、それともひとつの小説としてその内容を批判しているのかによって、わたしがこれから書き記すことの受け止め方に違いが出てくるでしょう。
タイトルにもかきましたが、銀英伝は商品です。
車やテレビやカップラーメンと同じです。
当然売れなければなりません。
売れないと作者失業、出版社倒産、印刷所閉鎖、町に失業者が溢れ、暴動が起きるかもしれません(起きませんが)
よって、当時、無名に等しかった田中先生は、売れなければならないという前提を背負いながらも、自分の好きな物語を書かなければ成らなかったはずです。故に、商品に魅力を与えるためには、多少の嘘も必要だったのです。
過去ログに登場人物が階級に比較して若いというネタがありましたが、理由は至極簡単。若い読者がほとんどの銀英伝なんだから、登場人物が若い方が感情移入しやすいし。まあ、ガンダムやヤマトだったら、主人公のその周辺はパイロットか、地位が高くてもせいぜい艦長だったから、若くても問題なかったけど、艦隊戦が魅力の銀英伝だと、やはり主要キャラが将官クラスになってしまうのが、設定として難しかったでしょうね。
もうひとつ、なぜヤンは降伏しないのか。ラインハルトはバーミリオンのとき、わざわざ互角の兵力で戦わなくても他に方法はあったのではというネタ。
そんな野暮なことは言わないで。見たいでしょ。ヤンとラインハルトが死力を尽くして戦うところを。できるならば、お互いの戦力が互角という状況で。降伏なんかしたらストーリーが盛り下がる。売れなくなる。倒産、失業、暴動・・・
結局、わたしが銀英伝でもっとも評価している点は、多数が少数に勝つというつまらないが現実的な常識をみせつけながらも、なおかつ、少数が多数に勝ついう絵空事を描いて見せたことである。
え? 創竜伝は少数が多数が勝ちまくり?
まあ、人間なんてそんなもんでしょ。
鳥羽茉理(字はこれでよかったかな)がかわいいので許す。
はじめまして。こんにちは。
銀英伝に関しては、ここの人は誰も批判はしてもバカにはしていませんよ。
いわばホームズにおけるシャーロッキアンのようなものです。
同じ田中作品でも、作品を認めた上で、その完成度の高い作品の設定で遊ぼうというのか(銀英伝)、そもそも作品自体が批判の対象であるのか(創竜伝)で、受け止め方に違いが出てくるでしょう。
> タイトルにもかきましたが、銀英伝は商品です。
> 車やテレビやカップラーメンと同じです。
> 当然売れなければなりません。
> 売れないと作者失業、出版社倒産、印刷所閉鎖、町に失業者が溢れ、暴動が起きるかもしれません(起きませんが)
> よって、当時、無名に等しかった田中先生は、売れなければならないという前提を背負いながらも、自分の好きな物語を書かなければ成らなかったはずです。故に、商品に魅力を与えるためには、多少の嘘も必要だったのです。
> 過去ログに登場人物が階級に比較して若いというネタがありましたが、理由は至極簡単。若い読者がほとんどの銀英伝なんだから、登場人物が若い方が感情移入しやすいし。まあ、ガンダムやヤマトだったら、主人公のその周辺はパイロットか、地位が高くてもせいぜい艦長だったから、若くても問題なかったけど、艦隊戦が魅力の銀英伝だと、やはり主要キャラが将官クラスになってしまうのが、設定として難しかったでしょうね。
> もうひとつ、なぜヤンは降伏しないのか。ラインハルトはバーミリオンのとき、わざわざ互角の兵力で戦わなくても他に方法はあったのではというネタ。
> そんな野暮なことは言わないで。見たいでしょ。ヤンとラインハルトが死力を尽くして戦うところを。できるならば、お互いの戦力が互角という状況で。降伏なんかしたらストーリーが盛り下がる。売れなくなる。倒産、失業、暴動・・・
> 結局、わたしが銀英伝でもっとも評価している点は、多数が少数に勝つというつまらないが現実的な常識をみせつけながらも、なおかつ、少数が多数に勝ついう絵空事を描いて見せたことである。
失礼ですが、このような擁護が銀英伝に対する最も強力な批判になってしまうことを自覚されていますか?
盲従するだけの擁護は、その最も有効な活用すら妨げます。
>
> え? 創竜伝は少数が多数が勝ちまくり?
> まあ、人間なんてそんなもんでしょ。
> 鳥羽茉理(字はこれでよかったかな)がかわいいので許す。
わたしは全然かわいいとは思えませんし、許せません。