さて、色々議論が出てきていますが、整理する必要がありそうですね。
まず、これまでの議論は
Ⅰ.同盟においては亡命者に対する差別意識が発生する
Ⅱ.その差別意識は帝国における農奴・奴隷階級に対するそれに匹敵するほどに強度のものである
Ⅲ.その結果、同盟経済も帝国経済と同様の硬直に陥っている
というSAIさまの2915番の見解に対し、私こと准提督が2925版の書き込みにおいて政治面からⅠ.Ⅱ.を否定し、それゆえⅢ.の結論には達しない、との意見を表明して進んでまいりました。
つまり、この議論はⅠ.Ⅱ.の政治学的・社会学的考察とⅢ.の経済学的考察が結びついて初めて意味のあるものになるのです。スレタイも「経済学的に見た銀英伝」ですしね。
ところが2946においては、SAIさまはⅠ.の成立を政治学的に証明しようとしたものの、今度は経済的な視点、即ちⅢ.に関する考察がすっぱり抜け落ちてしまっているのです。
このことは図らずもSAIさまご自身が2946の書きこみの末尾において
>今回は経済学じゃなかったですね。
とおっしゃっていることからも明らかです。
ここでの論点は差別問題そのものではありません。差別問題が同盟経済にどのような影響を及ぼしたか、です。
現段階における私のスタンスは
「亡命者差別は発生した可能性は認められる。しかしその程度は決して苛烈なものではなく時間の経過と共に解消に向かったであろう。従って身分制による経済の硬直は発生しない。」
です。理由は、要約するなら、
1.同盟の民主政国家としての風潮
2.同盟憲章を頂点とする立憲民主政
3.貴重な人口確保のため差別政策は有害
4.亡命者は人数が圧倒的
の4点です。以下、詳しく見て行きましょう。
なお、考察を簡明にするため、「法的・政治的差別」と「社会的差別」を分けて進めます。この二つが密接に関連している事は言うまでもありませんが、混同する事によって議論が不分明になることを避ける必要があるのです。
まず同盟への亡命者の流入の時期ですが、私はダゴン星域会戦直後の宇宙歴640年からの約10年間に集中したと考えています。理由は二つ、この時期が同盟の存在のインパクトが最も激しく帝国に伝わり(大勝利ゆえ)、かつ帝国も発見と大敗の衝撃から立ち直っておらず亡命阻止の各種措置も充分ではないはずだからです。従って、この時期同盟は「元々の同盟市民」とは比較にならない圧倒的な数の亡命者を受け入れたものと思われます。これを仮に「640年組」と呼びます。
さて、かかる状況においてSAIさまとイッチーさまは、この亡命者に一定の「法的・政治的差別」が課されるとしています。これは私もありえると考えました。従ってこの部分については私は謹んで自説を修正させていただきます。
問題は、その「法的・政治的差別」の程度です。この点につき私は相当限定された差別になると考えます。何故なら、まずこの時期の同盟は「古きよき民主主義」の時代であって、「元々の同盟市民」の国民性は安易な差別を許容しないと考えられるからです。アーレ・ハイネセン以来の伝統に従って自由と平等の素晴らしさを教育されてきた彼らには、全く後ろめたさ無く亡命者を差別することは出来ないでしょう。さらに重要な点は、同盟が憲法(憲章)を持っていることです。そこには当然自由・平等が銘記されているでしょう(民主主義を称しているのですから)。従って亡命者に「法的・政治的差別」を課すためには、その差別が帝国出身である事による合理的な差別であるとの論理構成が取られる事になるでしょう。しかし、この種の差別立法を無制限に制定する事には「元々の同盟市民」の間からも猛烈な反発が出ると思われます。このような立法の暴走を許せば、次は何時自分たちに降りかかってくるか判ったものではない、同盟憲章が骨抜きにされてしまう、とね。アーレ・ハイネセン一派の子孫である彼らにはその恐ろしさは解るはずです、自分たちの先祖が何故自由惑星同盟を建設しなければならなかったかくらいは理解しているはずですから。議会でも大問題になります。従って立法によって制限される人権はせいぜい参政権のみであって、場合によっては表現の自由に一定の制限が加わるかもしれませんが(帝国的な言論・思想の伝播を阻止するため、と称して)、経済的自由や人身の自由、社会権などは同盟市民と全く同程度が保障されると思われます。しかも立法の根拠は「帝国出身であるから」ですから、この差別立法の効力は一世代のみに限定されるでしょう。
もし限定されなかったら大変なことになります。その点も含めて時代を進めてみましょう。
「640年組」の亡命者達の子供の世代、即ち同盟で生まれ育った彼らは同盟の民主主義礼賛の教育を受けて育っています。親が亡命者であるだけに「元々の同盟市民」の子弟が受けるそれよりもさらに激しい、洗脳とすら言ってよいほどの自由・平等教育です。それゆえに彼らは自分たちが何故参政権を持っていないのかについて、強い不満を抱くようになります。圧倒的な人数の彼らの不満は当然「法的・政治的差別」の全廃を求める運動を全同盟において引き起こすでしょう。
そして同盟の立法当局は彼らの要求を拒否できません。何しろ差別立法の根拠となった「帝国出身」という理由が存在しませんから。立法府が頑なに拒否しても、司法サイドから違憲判決がでるのがセキのヤマです。
それにもまして重要なのが、人口確保という観点から見た時の差別政策です。もし堂々と「法的・政治的差別」が同盟において亡命者に課されていた場合、それは帝国にどう伝わるでしょうか?「見ろ、奴らは奇麗事を口にしているが実際は差別主義者だ」と帝国政府が喧伝するに決まっています。その結果亡命者が減ってしまったらどうなります?ただでさえ圧倒的に不利な人口差を埋める最大の手段が大幅に効果を減ずることになります。同盟政府は帝国から亡命者を呼びつづけるため、同盟を理想的な民主政国家という体面を維持しなければならないのです。
従って、初期の最大勢力を誇る「640年組」の亡命者一族に対する「法的・政治的差別」は、その子供の世代には完全に消滅しているはずです。
で、これまで議論してこなかった「社会的差別」も、時を同じくして大幅に解消します。SAIさまはこの「社会的差別」につき、職差と文化・慣習の差を根拠として発生するとしていますが、同盟においてはこれは長続きしないでしょう。何しろ人数が圧倒的ですから、ありとあらゆる職種が亡命者と子孫達を必要としています。職差など一瞬で消滅してしまいます。それに文化的な違いについては、そもそもそれほど存在するとは思えません。これについては文化面の記述が本編に少ないので言い出したら水掛け論になりますが、少なくとも1619年のピルグリム・ファーザーズの子孫達と1714年のジョージア植民地建設者達の間に重大な文化的差異があって対立抗争が発生したという話は聞いた事がありません。それと同じことでしょう。そして仮にあったとしても、「法的・政治的差別」が上記のように解消されますから、亡命者子孫組は参政権を回復します。圧倒的な票数を有する亡命者子孫組に対し「元々の同盟市民」は勝ち目がありません。「亡命者を排除せよ」と呼号するハイダーのような人物は選挙で確実に負けます。結局、「元々の同盟市民」の方が亡命者サイドに歩み寄らなくてはならなくなるのです。「社会的差別」など、圧倒的な数の差で逆にカウンターされます。
次の問題は、「640年組」以外の亡命者(「後期亡命者」と仮称)についてです。彼らは圧倒的な人数を有しているわけではありません。おそらく、マンフレート二世のような開明的な指導者が帝国に登場した時に出入国の自由が若干緩和され、そこに集中するでしょう。彼らに対しては「法的・政治的差別」が加えられるでしょうが、既に慣習化した一世代のみの参政権制限措置だけです。それですら、もはや民主主義を知っている人数(「元々の同盟市民」と「640年組の子孫」)が揺るぎ無い以上、以前のような「民主主義を転覆される」という危機感に満ちたものではなくなります。彼ら「後期亡命者」は少数派で、それこそ一般同盟国民のいやがる仕事に集中するでしょう。職差が生じます。しかし、その子孫には同盟市民と同様の人権が保障されているわけですから、職業選択は自由ですし、「社会的差別」を受ければ参政権・表現の自由を駆使してその撤廃を求めればよろしい。SAIさまはアファーマチヴ・アクションの効果を疑問視されていましたが、現実に今全世界で拡大しつつある事から見ても全く効果を否定する事はできないと思います(この点恥ずかしながら私の知識は不充分なので、残念ながら明言はできません)。いずれにせよ、彼らとて差別され放題ではありません。
以上のように、同盟では差別は一定の範囲で発生し、また残留するものと考えられます。ではここで、Ⅱ.「同盟における差別は帝国並か?」を考えて見ましょう。明らかに「ノー」ですね。参政権や表現の自由はおろか、経済的自由もない帝国の農奴とは、「後期亡命者」ですら雲泥の差です。
従ってⅢ.「同盟経済も帝国経済と同様に硬直している」という命題は完全に否定できます。職業選択の自由を有する全同盟市民は労働者を必要とする業界に柔軟に移動しますし、その結果充分なサラリーをもらって同盟各産業の財・サーヴィスを消費します。農業に縛り付けられ最低限の給料すら手に出来ない帝国の農奴とは経済主体としての価値がかけはなれています。供給サイドにしても、必要に応じていくらでも労働者を雇用・解雇できる同盟の企業と、いくら好況の時でも労働力を貴族が抱えていておかげで生産を拡大できない帝国の企業では雲泥の差です。同盟資本主義経済は帝国封建的経済に圧勝するでしょう。
さて、これが経済学的に正しい銀英伝です。
そもそも現実世界において民主政が何故これほどまでに全世界に広がっているかと言えば、その一つに「他国に勝てるから」ということが挙げられると思います。戦争でも経済でも、民主政国家は、その柔軟性故に、非民主政国家に対し優位に立っているのです。
もちろんこの優位は絶対ではなく、従って例外もあります。例えば1940年にナチス・ドイツに負けた民主政フランスとかね。
しかし、日本とアメリカの戦時体制を比較して見れば、日本の敗北が単なる国力の差であったなどとは口が裂けても言えなくなります。またアメリカとソヴィエト、1945年には対等にすら近かった両国のうち、今一極的に世界に覇を唱えているのは果たしてどちらでしょうか?
田中先生は、民主主義を礼賛しながら、その民主主義が有する最大の長所「民主政国家は強い」という真実を理解していなかったのではないでしょうか。
> 私もそうであってほしいと思いますが・・・
> 例えば、インドの下級カーストや中国の客家なども、同一民族内差別の犠牲者ではないでしょうか?ジプシーは、その起源は異郷からの流民ですが、すでに数百年にわたって、「差別する側」と同じ顔になり、同じ言語を話しているのではないでしょうか?
・・・またやってしましました。誠に恥ずかしい。自分の差別問題に関する無神経さに穴があったら入りたい心境です。いずれにせよ、ここでの議論は差別問題について考えるいい機会になりました。勉強してきます。
>准提督さん
>経済的な視点、即ちⅢ.に関する考察がすっぱり抜け落ちてしまっているのです
以前書きましたよ。そうしたらあなたが政治的的側面を無視しているというから政治的側面を書いたまでです。まあいいや、繰り返しになる部分もありますがもう一度書きますか。
まず最初に言っておくことがありますが、資本主義経済は利己主義です。 『人それそれが「得をしたい」という自分の欲望に素直にしたがって行動していけばウマくいくはずだ』これが資本主義の教義です。
第2にいつの時代でも政治的理想と現実の間には距離がありました。
第3にアメリカは第二次世界大戦のころも南北戦争のころも民主制で戦争を遂行したわけではないということです。事実はむしろ逆で大統領への非常特権の付与、合衆国憲法に定められた人身保護令の停止、任期付ではありますが、事実上大統領独裁制です。経済の面では物価統制、生産割当てといった戦時統制経済をドイツや日本よりもうまく運営したから勝利できたわけです。
第4に50年代、60年代のアメリカ、70年、80年代のドイツや
日本が経済的に繁栄していたときは現在よりもはるかに不自由で規制が多かったのです。
この4つを頭にいれておいてください。
>ありとあらゆる職種が亡命者と子孫達を必要としています。
無論必要としますが、そのときにやっぱり古くからの同盟市民達が安楽で見返りの多いいわば日のあたる仕事を独占します。決して渡しません。人間既得権益を自分から手放すことなどないのです。無論同盟のためにはなりませんが、資本主義は利己主義ではなかったですか?利己的に行動するのが良いとしている状況で利他的な行動を求めるのは矛盾しています。
>圧倒的な票数を有する亡命者子孫組に対し「元々の同盟市民」は勝ち目がありません。
それが亡命者に同盟がのっとられた状況です。そんな状況になるのを座してみてる馬鹿はおりません。
>結局、「元々の同盟市民」の方が亡命者サイドに歩み寄らなくてはな>らなくなるのです。「社会的差別」など、圧倒的な数の差で逆にカウ>ンターされます。
結局彼らの、帝国の価値観にのっとられることになります。彼らは別に民主主義が好きだからきたわけじゃないんですよ。帝国では搾取していた連中なんですから。同盟に行けば一旗あげられるからきたんですよ。
皇帝がだめだからとかそう言うことは思うでしょうが、帝国の体制そのものに疑問をもっていたわけじゃない。
この場合、「640年組」の亡命者達の子供の世代、即ち同盟で生まれ育った彼らは同盟の民主主義礼賛の教育を受けて育ちません。むしろ帝国の価値観に近くなったものを教育されることになります。
>司法サイドから違憲判決がでるのがセキのヤマです。
でません。彼らも同盟市民です。同盟市民に有利な判決をくだします。合憲判決がでるでしょう。政治的理想と現実の間には距離があるのだということをお忘れなく。
ブッシュ父が大統領だったころ起きたロス暴動がどうしておきたか覚えてませんか?
あと、自由平等博愛を掲げ、差別禁止法があるフランスでは、アルジェリア人をフランス人が殺しても無罪になるという現実もあります。
>洗脳とすら言ってよいほどの自由・平等教育です。
それこそ、同盟憲章に違反する教育でしょう。思想良心の自由はどこにいきました?
さらにいえば学校でどう教育しようとも現実社会で差別があれば無駄です。
>それにもまして重要なのが、人口確保という観点から見た時の差別政策です。
もう一度言いますが彼らはこの時代、拡大期にある同盟にゆき一旗あげたいのであって、それができるなら差別など気にしません。そもそも彼らは差別そのものを疑問に思っているわけではないのです。
>亡命者一族に対する「法的・政治的差別」は、その子供の世代には完全に消滅しているはずです。
いいえ、消えません。たとえ差別禁止法をつくり、公的に禁じたとしても必ず残ります。差別問題は不合理なものです。だからこそ合理的方法ではなくならないのです。
>職差が生じます。しかし、その子孫には同盟市民と同様の人権が保障>されているわけですから、職業選択は自由ですし、「社会的差別」を>受ければ参政権・表現の自由を駆使してその撤廃を求めればよろしい
職業選択の自由などありません。同盟市民がいやがる仕事以外では門前払いされます。参政権・表現の自由を駆使してその撤廃を求めればよろしいといいますが、それこそ理想論です。彼らには経済力がなく政治的には無力な存在です。以下の理由から彼らの訴えは無視されます。
政治献金。大した公職ではなくても、財界からの巨額の選挙献金が必要である。従って亡命者には政治家を政界に押し上げる後ろ盾にはなれないのである。
公益の消滅。いつのころからか政府が象徴する社会の共有財は自由企業を抑制するという考え方を頭に叩き込まれてきた。その結果、同盟の社会的抑制機能は働かなくなってしまった。「やれやれ、政府が企業と同じだけ効率的でありさえすれば」と皆が考えている。
冷笑。組織的不正行為に対して亡命者は無力だと感じている。なぜならば権力を持つ人々がほとんど誰も、それを間違っているといわないからである。
恐れ。非情な文化が自分の身にふりかかり、社会が、貧困に同情するのではなく、個人の責任と見なすようになると、労働者階級は居場所を失うのを恐れて、多くの冷遇を受け入れるようになる。
>職業選択の自由を有する全同盟市民は労働者を必要とする業界に柔軟>に移動しますし、その結果充分なサラリーをもらって同盟各産業の>>財・サーヴィスを消費します。
これは経済が通常の状態、需給ギャップが無いときなら成立します。需給ギャップが開いたときには同時に貧富の差も開いていきます。さらにいえば経済全体縮小してゆくため労働者を必要とする業界などないのです。この場合職業選択の自由はフィクションとかします。
経済全体の効率は悪化してゆきます。失業者は失業保険=生産性0の仕事をやるか、でなければ犯罪=生産性ーの仕事をやるしか生きる方法はなくなります。この状況はほうっていても終わりません。歴史上一番長かった時は25年間ずっと不景気のままだったという例があります。それは人間の寿命と比べれば永遠に等しい長さです。
さらに言えば資本主義の歴史はバブルと、大恐慌の歴史でもあります。バブルと大恐慌の時代は資本主義経済は不幸率極まりない状況です。
バブルの時に、家計からつまり庶民から資産家に富が移動します。この場合の資産家とは売れる資産を持っている人間のことです。損は国民全部、利益は資産家だけという状況で貧富の差が開いて行きます。そしていつかバブルは終わります。その後の景気後退、大恐慌局面では企業はどう行動するのが正しいかは前説明しました。無論そのように行動するのは経済をますます縮小させ同盟全体にとって有害なんですが、資本主義の行動原理は利己主義です。同盟全体のためにという利他主義的な行動をとりません。もっといえば、全部の企業が利他主義的な行動をとれば景気は回復し、みな幸せになれます。ところがそのなかで利己主義的なこうどうをとる企業が存在すれば、その行動をとった企業が利益を得て利他主義的な行動をとった企業が破滅します。全部利己主義的行動ををとればとるほど貧富の差は拡大し、景気は悪化、経済は縮小し奈落のそこに落ちて行きます。選挙でどうにかならないかというかもしれませんが、どうにもなりません。ならない理由は政治献金から恐れの部分の理由です。
資本主義だから効率的なわけではないということです。最後にもうひとつ、現在世界最強の国アメリカは民主主義のくにではありませんよ。あの国の現状は建国の父たちの理想から遠く離れてしまってます。
SAIさん、こんにちは。(今回は長文です。)
これまでの経緯を整理させてください。
始まりは、3000億あった帝国の人口が、250億になったことを説明できるか、でした。このとき、
SAIさん:説明はつかない。これでは文明が崩壊し、帝国を維持できない。
Ken:現在の先進国並みの低い出生率が持続すれば、可能。
これらの主張の背後には、
SAIさん:人類全体の出生率は下がらない。
Ken:人類全体の出生率が下がることはありうる。
という、認識の違いがありました。この時、中世初期に起こった世界人口の減少が問題になり、
Ken:人間が大量に死ぬ要因が、他の時代に比べて、この時代により多いわけではない。
SAIさん:人間が大量に死ぬ要因が、他の時代に比べて、この時代には集中して発生した。
という点が、現在の論点になっています。(誤りがあれば、ご指摘ください)
始めに、私が発言した内容をどこからもってきたかですが、典拠は堺屋太一著「知価革命」にあります。少し長文の引用をお許しください。
[引用:第2章]
ところが、紀元前一世紀はじめからは、先進地域で人口が急減、周辺の後進地域で増加する逆現象が起こる。世界人口は紀元後一世紀の小さな谷を経て再び増加、同二世紀に二番天井を築くが、内容的にはこんな入れ替わりがあったのだ。そしてそのあとは約四百年間、猛烈な減少を続ける。
(中略)
技術の進歩と資源供給の拡大に限りない信頼があれば、物財の豊富さを求める人々も人口の増加を厭いはしない。より多くの働き手はより多くの余剰生産を生むと無邪気に信じることができるからだ。しかし、資源供給の限界を感じ出すとそうはいかない。限られた資源供給の中で、自分自身がより豊かな物財に恵まれるためには、分配してやらねばならない家族を少なくするのが手っ取り早い。
こんな発想から、モノの豊かさを求める思想のもとでは、フロンティアが失われると共に産児制限が流行する。
[引用終り]
[引用:第3章]
古代文明を崩壊消滅させたのは、北方蛮族の無知と凶暴さによる文明破壊などではない。それ以前に進行していた人々の美意識と倫理観の変化なのだ。だからこそ、巨大な経済力と高い文明と圧倒的な人口を誇った大帝国が、貧しく野蛮な北方民族などに打ち負かされたのである。
[引用終り]
(私はこれらの箇所を読むたびに、「銀河系史概略」の、「やがてガン細胞が増殖を開始した。人類社会の上に、いわゆる「中世的停滞」の影が落ちかかってきたのだ。」「生命を軽視し、モラルを嘲笑する傾向は深まるいっぽうだった。」という記述を思い出します。)
ここから自前の検証をしてゆきます。
「蛮族による殺戮」
SAIさんは、蛮族による侵略が、人口減少の「原因」(の一つ)であると、言っておられます。私は堺屋氏に同調し、蛮族の侵略は、むしろ先進地域における人口減少の「結果」であると思います。鮮卑族やヴァンダル族は、千年後の蒙古のような、数に勝る敵を圧倒する軍事的切り札を持っていたわけではありません。漢軍もローマ軍も、鮮卑軍もヴァンダル軍も、主力は歩兵で、弓矢と剣と矛と楯で武装していたはずです。してみると、長期的な勝敗を決するのは、動員力のはずです。その基礎になるのは人口であり、徴兵システムですが、この点で、蛮族に対する帝国の優位性が「あらかじめ」失われたからこそ、帝国が敗れたのではないでしょうか?
もう一つ。20人の集団が80人を殺して50人に増えるシナリオを挙げていただきましたが、中世初期に起こったことがそうだと言われているのでしょうか?私は、この時期に入れ替わったのは、一部の支配層だけだと思っていますが、人口の大半を占める庶民の構成にまで、変化があったのでしょうか?それにしては奇妙な現象がありませんか?征服者たる北方民族は、言語や文化に関しては、自分たちが倒した帝国のそれにたちまち同化しましたが、殺しつくした相手の言語を話し、文化を採用するでしょうか?対立する民族を殺しつくすというのは、鮮卑族やヴァンダル族よりはるかに圧倒的な力を持っていた、後世の蒙古ですらやっていません。それをやったのは、(中世初期がそうでないとすれば)新大陸を征服したヨーロッパ人だけです。SAIさんの言われるとおりなら、スペイン人がアズテク語を学び、カソリックを捨ててケツアルクワトル信仰に転向するようなものではないでしょうか?
「寒冷化」
ヨーアンネス、プロコピオス、カッシオドース、北史、南史、日本書紀の記述を紹介いただきありがとうございました。いずれも私が知らなかったものです。ちなみに「南京」というのは、現在の中華人民共和国南京市のことですが?中世初期には「建業」または「建康」と称したはずですが。
この中で、北史、南史、日本書紀の三つは気候の寒冷化に直接言及していませんので、検証対象から除かせていただきます。そうではなく、「平均気温が下がった」ことを言っているのでしたら、今少し直接的に関連した記述を紹介いただけませんでしょうか?
ヨーロッパ側の三つの記述ですが、太陽が4時間しか照らないとか、月のように暗くなったとか、こんなことが本当に数世紀も続いたのですか?当時の記述以外に、何か科学的な証拠をご存知でしょうか?数百年の単位で、しかもワールドワイドに、気温が下がったのなら、植物相の変化に現われ、(例えば、イネの生育地域が全体に南下するとか、)放射性炭素を用いて検証できるかと思いますが、そういうことに言及した資料はありますでしょうか?
私のもう一つの疑問は、寒冷化の原因です。短期かつ局地的な寒冷化なら、地球の対流圏の微妙な変動でも起こりうると思います。「エル・ニーニョ」は一部の海面温度が上昇する現象ですが、それによって冷夏になる地域もあるのですから。しかし世界中が数世紀にわたって寒くなるとすると、考えうる理由は一つしかありません。成層圏まで飛ばされた粉塵が大気中を浮遊し、日光をさえぎることです。(「本物」の氷河期は、地球の公転と自転の歳差運動で起こりますが、数十万年に一度の現象で、一度起こると一万年ほど続くので、ここでは該当しません。)1991年のピナトゥボ火山(フィリピン)の噴火では、3年近くにわたって世界の平均気温が0.5度低くなったという観測結果があります。(http://wrgis.wr.usgs.gov/fact-sheet/fs113-97/)逆に言えば、ピナトゥボ級の噴火でも3年で0.5度ですから、数世紀にわたって世界人口を減らすほどの寒冷化をもたらす噴火(隕石でも結構ですが)とは、どのようなものでしょう。ピナトゥボ級数百回ではないでしょうか?当時の記録は、日照時間に言及する前に、この火炎地獄の現出について悲鳴を上げているはずではないでしょうか?
なぜこんな疑問を延々と述べたかというと、ご紹介いただいた古典の記述が、いかにも中世的な誇大表現のように思われるからです。「三国志」や「太平記」では、呉を攻めた曹操軍や千早城を攻めた鎌倉幕府軍は「百万」だそうですが、吉良国さんあたりから「そんなに動員できるはずがない!」と声がかかりそうです。同様に、ヨーアンネスやプロコピオスが述べたような現象が数ヶ月続いたというなら、まだ分かりますが、数百年では・・・・・・
あまりの長文になったので、一旦はここで失礼します。
続きです。
>高度に文明化された社会は実は損害に対して弱いんです。なぜなら人間も含めてあらゆる社会の機能は微細かつ限定的になり、さらに他のあらゆる機能と依存しあうようになるからです。そしてどの機能が一つ失われただけでもシステム全体が麻痺することがあります。先進地帯の文明国の人口はシステムが正常に作動することのみで維持できます。
これは鋭い指摘ですね。このような先進文明の対極にあるのが、村落ごとに自給自足する社会でしょう。ただ、漢やローマの場合は、当時の先進国といっても、私たちに馴染みの産業革命以後の社会ではなく、あくまでも人口の大半が農民の農業社会です。経済的には各農村は自立しており、ただ生産力が増大したので、余剰分を供出して帝国を維持していたのではないでしょうか?帝国の存在理由は、防衛と労働力確保(奴隷狩り)と新たな耕作地(領土)の獲得で、人民の生活を助けるサービスやインフラ整備をしていたわけではないだろう、というのが私の考えです。そうではないなら、実際に、どのような「機能が一つ失われ」てシステム全体が麻痺したのか、具体例を挙げることは可能でしょうか?
銀河帝国はどうか?各機能が微細かつ限定的になった社会なのでしょうか?科学技術の結晶たる宇宙艦隊を有することからして、確かにそのようです。ただ、大半の人民を「農奴」にしたという記述は気になります。農奴が実際に「農業」奴隷だとすれば、圧倒的に多数の人民が農業に従事するわけですから、産業革命以前の社会と同じになり、各村(各惑星)は経済的に自立し、一、二の機能が失われても帝国のシステム自体の崩壊にはつながらず、せいぜいオーディンの帝室と門閥貴族が没落する程度で、別の皇帝が後に座るだけでしょう。その程度のことなら、ローマだって何度も皇家は変わったし、中国でも前漢から新、新から後漢への変化がありました。
もう一つの可能性は、実際にSAIさんが言われるような文明の崩壊が進行していた、というものです。
>万の単位の宇宙艦隊というものは存在できないと思います
と、言われましたが、例えば銀河連邦時代や帝国の初期には、数十万の単位の艦隊が存在したかもしれません。それが激減して、数万単位の艦隊しか作れなくなり、新技術の開発も停滞した・・・。ただ、過去に開発された艦艇製造技術はどうにか継承されている、という状況が考えられます。古代帝国が消滅し中世になったとき、エネルギ危機もあって、鉄の生産量は減ったでしょうが、精錬・鋳造・鍛造技術自体が忘れられ、青銅時代に逆戻りしたわけではありません。
さらなる可能性として、人間の減少を自動化が少なからず補い、文明の崩壊を食い止めたことも考えられます。SAIさんは、
>まず機械を作らねばならず、作るにしても資源を掘り出し、資源を輸送し、加工して、組み立ててはじめて収集が可能になるわけです。ここまで莫大な資源とエネルギーが必要なわけです。できることといえば、人間がやればすぐ終わるような仕事です。こんな資源的、エネルギー的に非効率なこと社会全体ではできません。さらに機械ですから不断のメンテナンスが必要です。メンテナンスも機械にやらせるにしてもメンテナンスをやる機械のメンテナンスはどうするのかということになります。
と書かれましたが、いくらなんでも暴論ではないでしょうか?ひょっとして、世界一のロボット技術を誇る日本が、人件費の安い中国に、負けつつあることから出された結論でしょうか?しかし実際には、日本でも中国でも、工場へ行けば人間の数百倍の速さで働く自動機が仕事をしているし、輸送手段は車や列車や飛行機だし、日々大量の情報処理をしているのはコンピュータです。機械のメンテナンスは人間がやりますが、それに必要な工数は、その機械の仕事を人間にさせる場合の比ではありません。
以前に、銀英伝の艦艇は乗務員が多すぎる、という議論がここでありましたが、自動化技術の進歩で、帝国の初期よりは少なくなったのかもしれないのです。あの時、私と古典SFファン様は、射撃制御を自動化できるかを議論し、結局、「前提条件次第でどちらの結論も出る」という結論に終わりました。しかし、人間を介在させることの大切さを説かれた古典SFファンさんも、自動化技術が無意味だなどと主張されたわけではありません。(もし無意味なら、私も古典SFファンさんもとっくに失業です。:-)
SAIさま、ご質問いただき誠に有難うございます。それでは及ばずながらお答え申し上げましょう。
まず結論から申し上げましょう。2964番の書きこみは拝見いたしましたが、私は2958番で説明した自説を訂正する必要を全く認めません。理由を以下に示します。
その前提として、「法的・政治的差別」と「社会的差別」を分けた上で論を進めることを改めて申し上げます。
まず冒頭の
>この4つを頭にいれておいてください
ですが、無論のこと存じております。私の書きこみもそれらの事柄を当然の前提として進めたのですが、伝わっていないようですね。
では続いて、640年のダゴン星域会戦直後の同盟における差別立法の成立過程を考察して見たいと思います。
まず法案が議会に提出されるに至った理由は「民主主義を知らない帝国出身者に政治的権利を付与すると同盟の民主政そのものが損なわれる」というものです。従ってこの法案(亡命者人権制限法)によって制限される人権は、参政権と表現の自由が想定されます(他の人権も制限されるというなら、その制限される人権とその法的理由付けを提示して下さい)。
さて、この法案について「元々の同盟市民」は諸手をあげて賛同するでしょうか?答えは「ノー」です。理由は二つあります。一つは同盟の民主主義教育を受けて育った人々の良識。もちろんこれだけでは充分ではありませんが、この要素を無視する事はできません。二つ目は、SAIさま好みの「利己的」な理由、即ち立法の暴走に対する恐怖です。今回はたまたま規制されるのが亡命者だからいいものの、これで味を占めた立法者たちが今度は自分たちの人権を制限しようとするのではないか、と考えるのです。
結果、議会は大荒れに荒れるでしょう。「亡命者は不気味」という不安、「自分たちは民主主義の継承者である」という良識、「次に立法は自分たちの人権にも牙を剥くのではないか」という恐怖、の三つが「元々の同盟市民」の間に複雑な葛藤を生じるでしょう。
それゆえ、亡命者人権制限法は、亡命者の参政権のみを制限した形で修正可決される、そんなところでしょう。
亡命者に対する「法的・政治的差別」は、利己的・利他的双方の心理的要因から制約を受けるのです。
では続いて、「640年組」の子供の世代、680年前後の社会情勢について分析してみましょう。
ここでの論点は3つ、
1.同盟における教育はどのように行われているか
2.亡命者人権制限法は違憲判決を受けるか
3.人口政策上、亡命者差別は問題ないか
です。では順に考察しましょう。
1.同盟における教育はどのように行われているか
まず一般的な教育権の主体に関する議論から説き起こしましょう。
教育権の主体は3つ、「親」「教師・私学」そして「国家」です。前二者を重視する立場を「国民教育説」、後者を重視する立場を「国家教育説」といいます。どちらも極端で、通説は折衷説です。
では同盟においてはどうなるか。帝国との戦争を前提として国家が形成されているため、国家教育説が有力であると考えられます。国民全体の意思統一が重視されるからです。
無論SAIさまのように国民教育説の立場から反発する動きはあるでしょう。だから「半」洗脳教育。完全な洗脳教育にはなりえないでしょう。
さて、このスレをご覧になっている皆様(いれば、ですが)はおそらく疑問に思っているのではないでしょうか?「この問題と差別問題と、どう関係しているのだ」と。
要するに、同盟国民は「640年組」の子女も含めてみな、民主主義礼賛の教育を受けている、という当たり前の事を延々と証明して見せただけです。
2.亡命者人権制限法は違憲判決を受けるか
まず、亡命者人権制限法の効力が存続している状態とは、亡命者の子女にまで同法が適用されている状況を指します。従って、このような状況で違憲審査の対象となるのは、同法の存在そのものよりも、まず亡命者の子女への適用となるでしょう。
この場合、制限法の立法理由が「帝国出身者が民主主義を破壊するのを阻止するため」である以上、同盟において生まれ育った「640年組」の子女に対する適用の理由は存在しません。従って司法府は少なくとも適用違憲判決を出すでしょう(ひょっとすれば差別法そのものの違憲判決も)。
>合憲判決が出るでしょう。
とおっしゃるならSAIさま、逆にお尋ね申し上げますが、その場合同盟の司法府はいかなる法的理論によって合憲判決を下すのでしょうか?それを提示して頂かない事には、あなたの説は全く説得力がありません。
また、違憲判決を出さざるを得ない、SAIさまお待ちかねの「利己的」理由も存在します。極めて簡単な話で、もし合憲判決が出たらどうなるかをちょっとばかり想像して見ればよいのです。同盟全土で亡命者が大暴動を起こすでしょう。労働力の圧倒的多数を占める亡命者が全土で無期限のゼネストに移行するでしょう。結果、経済と社会は大混乱に陥ります。帝国軍はこの絶好の機会を逃さず大挙侵攻してくるでしょう。そしてそれを阻止すべき同盟軍は、やはり将兵の圧倒的多数を占める「640年組」のほとんどが士気喪失して、まともな勝負にならないでしょう。この点、2638番のKenさまの見識に私は全面的に賛同します。
以上、少なくとも「640年組」の子女に対する亡命者人権制限法の適用については、違憲判決が出る事が証明されました。
3.人口政策上、亡命者差別は問題ないか
この点についてSAIさまから
<彼ら(亡命者)はこの時代、拡大期にある同盟にゆき一旗あげたいのであって、それができるなら差別など気にしません。>
との反論を頂きました。
これは暴論ですね。理由は二つ。まず、亡命者がみな一旗組であるなどと決めつけるのは極めて乱暴な話です。亡命者が帝国において一定の社会経済的地位を有する階層の出身であろう、というSAIさまの2915番での説に対し、私は2925番の書きこみで賛同しました。従ってこれを前提とします。であるならば、高い教育水準(社会経済的地位が高ければ教育水準も高い、ということは一々証明しなくてもいいですよね?)をほこる彼らには共和主義にかぶれた者も少なくないはずです。共和主義者の亡命者は控えめに見積もって、一旗組と同数はいるでしょう(違う、というならその証明をどうぞ)。そこに「同盟には亡命者に対する差別が強く存在する」などということが報じられれば、共和主義者たちは幻滅し、亡命してこないでしょう。第二に、一旗組についても、彼らは一定の社会経済的地位を有する以上、同盟においてもそれと同等、いやそれ以上の地位を得ようとするでしょう(それが「一旗挙げる」ということでしょう?)。ところが同盟では亡命者は差別される、亡命者は高い地位になれないシステムにされている、と知れば、彼らはやってくるでしょうか?わざわざ帝国でのそれよりも低い扱いを受けるために地位をなげうち密航のリスクを犯してまで亡命しようとするでしょうか?もちろんそんなわけありませんね。
共和主義者たちにアピールし、一旗組に成功の機会が埋まっているように見せるためには、少なくとも「法的・政治的差別」を消し去る必要があります。さもないと、同盟は亡命先として全く魅力がありません。
以上、人口確保政策上からも、差別(「法的・政治的」「社会的」双方の意味で)を撤廃し同盟を理想的民主政国家に仕立て上げなければならないことが証明されました。
大体一旗組だけなら、同盟よりもフェザーンに取られてしまうに決まっているではありませんか(あ、もちろんフェザーン建国後の話ですが)。
以上で、同盟政府が「法的・政治的差別」を撤廃することが証明されました。
では、今度は「社会的差別」について分析してみましょう。(以下、続く)
では、今度は「社会的差別」について分析してみましょう。
この点につきSAIさまは
<「元々の同盟市民」が安楽で見かえりの多いいわば日の当たる仕事を独占します。決して渡しません。人間既得権益を自分から手放す事などないのです。無論同盟のためにはなりませんが、資本主義は利己主義ではなかったですか?利己的に行動するのが良いとしている状況で利他的な行動を求めるのは矛盾しています。>
とおっしゃいました。
おかしいですねぇ。私は何も「元々の同盟市民」が良識と自己犠牲の崇高さに満ち満ちていて嬉々として日の当たる仕事を明渡すだろう、などとは一言も申し上げておりませんよ。
物理的に不可能なのです。人数差が圧倒的過ぎて。
例えば、モデルケースとして惑星オシアナ(仮称)を考えて見ましょう。この惑星は640年のダゴン星域会戦直前には人口100万人(「元々の同盟市民」)、内公務員が4万人(日の当たる職の一例として)だったとしましょう。ところが会戦後、あっという間に900万人がここに亡命してきました。人口1000万人、この社会を維持するためには公務員は40万人必要です。では、この40万人をすべからく100万人の「元々の同盟市民」から出せるでしょうか?もちろん無茶です。それまで惑星開発企業で鉄骨運びをしていたにーちゃんにある日突然「君は『元々の同盟市民』だから明日から惑星地方裁判所の検事に任命する」とかいっても無理でしょう?
従って職差はあっさり消滅するでしょう。
よって職差を根拠とする「社会的差別」は発生し得ないのです。
では、今度は「後期亡命者」について論じて見ましょう。
まずこの時期の「法的・政治的差別」ですが、亡命者人権制限法がもし存続していれば、亡命してきた帝国出身者には以前として適用されているでしょう。しかし少なくともその子女に対する法律上の人権制限は存在しません。むしろ、「反差別法」が制定されているでしょう。これは(SAIさんのおっしゃるところの)一旗組に対して成功の機会が法的にも保障されているとアピールするためのアファーマティヴ・アクションを定めたものです。同盟に行っても地位の高い職業が俺達を待っている、と彼らに思わせ、また共和主義者には同盟が差別と闘っていることをアピールするためのものです。
何しろ795年頃ですら同盟の人口は帝国の半分ですから、同盟滅亡のその日まで亡命者を呼び寄せるための政策が高い優先順位を与えられていたはずです。
このように、同盟政府はこの「後期亡命者」とその子女に対する差別について熱心に取り組まざるを得ないのです。
それにこの頃には同盟の権力者たち内かなりが「640年組の子女」となっているでしょう。彼らは自分たちの若い頃の経験から「差別は間違っている」との認識に立ち、「後期亡命者」とその子女が法律上有している職業選択の自由を現実に行使できるよう、力を尽くすでしょう。人間は少なくとも自分に損が生じない限りにおいては利他的になるのです。
大体SAIさまのおっしゃる通りであれば、今アメリカの議会に黒人議員は一人もいないことになりますよ。
では最後に
>資本主義だから効率的なわけではありませんよ。
百も承知です。私も平成不況の中で生活している日本人ですから。
私が申し上げているのは、「資本主義経済と封建的経済、どちらが効率的(or非効率的)ですか」という点です。
SAIさまは2964番の書きこみにおいて2658番で私が指摘したところのⅠ.についてはあれこれ述べておられますが、結局Ⅱ.Ⅲ.については全く言及がありませんでした。同盟側と資本主義の話に終始し、ここでの最重要論点である「帝国との比較」という視点が完全に欠如しておられます。
Kenさまとの間に人口学についての論争をお抱えのようですので、二正面作戦を強いられて厳しいのは解りますので、その点については今回はこれ以上突っ込みません。
では、お時間がおありでしたら反論を期待します。
もちろん、このスレをご覧の他の方の飛び入り参戦も、もちろん私は大歓迎です。
SAIさん、
人口論議で考えをまとめるのに没頭し、ここ数日他のスレッドをじっくり読みませんでしたが、#2964のご発言を拝読し、ひと言申し上げたくなりました。ここでのご発言は、親米派(であることを認めます)の私としては、看過できません。
この中でSAIさんの論点を整理すると、
1.アメリカは資本主義の国である。
2.資本主義は利己主義である。
3.故に、アメリカでの差別はなくならない。
4.自由惑星同盟は、アメリカがモデルである。
5.故に、同盟は帝国からの亡命者を差別する。
ということを、述べておられるのだと思います。(誤解があれば、訂正をお願いします。)
「アメリカは資本主義の国である。」
確かに資本主義の国ですが、資本主義「だけ」の国ではありません。キリスト教の信仰が大きな影響を持つ国でもあります。国民の9割が神を信じ、日曜日の教会は老若男女で埋まります。日本のお寺やヨーロッパの教会のように老人ばかりの場にはならず、若夫婦が幼児を連れてやってくる光景が、普通に見られます。牧師さんの話も皆、まじめに聞いています。また、人々の信仰の指標として、教会の持つ巨大な集金力があり、教会の運営する学校、病院、地域サークル等が社会の重要な機能を担います。なお、人々が教会に行う寄付は、日本の檀家組合が集める組合費とは異なり、払ったこと(払わなかったこと)が他人に知られることはありません。皆、「世間体」を気にして、払っているのではないのです。(檀家組合費が世間体だけで払われている、と言っているのではありませんよ。念のため。)
「資本主義は利己主義である」
利己主義は資本主義の産物ではなく、人間の普遍的な通弊でしょう。資本主義にあっては、利己主義が資本主義的な表れ方をするだけで、社会主義では社会主義的な、絶対主義では絶対主義的な、封建主義では封建主義的な形をとって表れます。むしろ、資本主義のユニークな特徴は「自由競争」と「実力主義」にあります。そして、自由競争と実力主義は、差別、つまりある人間が別の人間に対して、生まれながらに持つ特権と戦うためには、人智がこれまでに考え出した中では最強の武器ではないでしょうか?100万ドルの損失を出す白人経営者と、100万ドルの利益を出す黒人経営者がいる場合、前者を社長に迎えるのが差別であり、後者を迎えるのが資本主義です。たしかに「資本主義国」と称される社会でも、「差別」や「談合」や「縁故主義」はあります。しかし、それは資本主義が未完成なために、前近代の習慣が根絶されずに残っているのだ、というのがアメリカの考え方です。そして、アメリカ自身にも前近代の習慣があることをアメリカ自身が承知しています。ただ、他国よりもずっと少なく、世界のどこよりも自由だとも考えており、この点は、私も同感です。
「故に、アメリカでの差別はなくならない」
人々の中の差別感情はなかなか根絶できず、アメリカ自身も苦しんでいるし、建国の父たちも天国で泣いているでしょう。私の5年の滞米中にも、いくつかのニュースが世間を騒がせました。例えば、ある白人男性がアパートを借りようと管理事務所で話をし、合意ができたので、本契約をしようと妻を伴って赴いたら、その妻が黒人であるのを見た管理者側が、入居を拒否した、などというのもありました。もっとひどいのは、3年ほど前に全米を騒がせたある私学のニュースでした。そこの学長は、入学生を白人に限定し、しかも異人種とはデートをしないことを誓約させた上で入学を許していたのです。逆説的ですが、自由の国には自由に反対する自由もあるのです。この私学が方針を変更したというニュースは今に至るまで耳にしません。
一方、このような例もあります。私は現地の日系企業で、情報システム部門の責任者を勤めましたが、部下にアフリカから移民してきた黒人女性がいました。私は彼女の仕事ぶりに不満をもち、更迭まではゆかなくとも、彼女のジョブの一部を自分でやろうとしたことがあります。ところが、その途端に人事部に呼びつけられ、人事部長(白人男性)から「危険なことをするな」と注意されました。人事部長が言うには、もしその女性が訴えを起こし裁判になったら、会社が負け、数百万ドルの賠償金を取られるかもしれない、というのです。私は自分の判断の正しさを説明しようとしましたが、人事部長は耳を貸さず、「要は陪審員が君と彼女のどちらの言い分を聞くかだ。そして、彼女は黒人であり、それだけで君にも会社にも勝ち目はない」と言いました。ちょうどY2Kを始め、情報部門の問題が山積していたころで、私は非常に悩み、会社とは無関係の数人の友人に相談しました。この時の相談相手は皆60歳以上の白人男性で、私のことを息子のように面倒をみてくれた人たちでしたが、話を聞くと一様に難しい表情をし、「それは人事部長の言うことが正しい」と忠告してくれました。結局、私はその黒人女性の仕事ぶりと、それに伴う問題を甘受せざるをえませんでした。
これは私の個人的体験ですが、人事部長や友人たちが私に言ったことは、もっと一般的な社会の状況を表しているのだと思います。
実は、この一件があった数ヵ月後に、NPRという公共放送ラジオが、問題のある黒人社員をもつ企業の苦悩について語っていました。事情は私自身の体験と全く同じで、私はそれを聞いて、あ、みんな同じ悩みをもっているのか、と思ったものです。ちなみに、NPRは9/11の後でもアラブを擁護するなど、非常にリベラルなスタンスをとり、通常は黒人の側に同情することが多い局です。
何を言いたいかというと、アメリカには差別があるが、アメリカ人は白人を含めて、そのことを問題だと考えており、決して「自分は損はしないのだから」と、差別を放置してもいない、ということです。SAIさんは、
> 司法サイドから違憲判決がでるのがセキのヤマです。
という准提督さんの発言に、
> でません。彼らも同盟市民です。同盟市民に有利な判決をくだします。
と、回答されましたが、「同盟市民」を「白人」と置き換えると、前期の人事部長や友人たちが言ったことと、大変に矛盾します。
「自由惑星同盟は、アメリカがモデルである」
「故に、同盟は帝国からの亡命者を差別する」
私は、建国から150年くらい、第一次大戦までのアメリカは、自らを「辺境」と考えていたと思います。世界情勢はヨーロッパの諸帝国が動かしており、アメリカにはどこにもない自由があるが、この自由をヨーロッパの帝国に侵させないためには、アメリカは辺境で孤立しているべきだという考えです。ダゴン以前の自由惑星同盟と同じ状況というべきでしょう。皮肉なことに、アメリカの多くの差別は、この時代に作られ、人々の意識に刷り込まれました。第一次大戦後のアメリカは、既に世界最強の国力を有していましたが、アメリカ人の意識はその変化に追いつかず、孤立を求め、世界情勢に関与しようとするウィルソンやローズヴェルトの試みを常に掣肘しました。そして、黒人や移民は依然として差別され続けました。
第二次大戦後、アメリカ人は孤立主義を捨てます。増大する共産主義の脅威に立ち向かう、自由のチャンピオンとしての自己を認識したからです。まさにダゴン以後の同盟の姿です。かつてアメリカを抑圧したヨーロッパは衰退し、アメリカの援助と保護がなければ、そのまま共産主義に呑み込まれる、という意識が隅々まで浸透します。
そして、差別との戦いも、この時大きな転換点を迎えます。自由のチャンピオンとして、世界を導く国が、国内に差別を抱えてよいのか、という声が(白人を含めた)多数の支持を集めたからです。これを60年代の「Civil Right」運動と称し、黒人の参政権が保証され、ヨーロッパ以外からの移民が解禁されました。「白黒共学」に抵抗する南部州を屈服させるべく、軍隊が動員されたのもこの時です。
今回の発言は、アメリカの弁護をするのが目的でしたが、このスレッドの本題に関して発言しますと、
同盟は帝国からの移民を受け入れ、様々な差別問題を抱えながらも、差別の解消に努力し、その努力は多数派の支持を集めただろう。特に帝国との戦いの中にあっては。
と、私は考えます。
では准提督さん、はじめましようか。
まず結論から申し上げましょう。私も自説を訂正する必要を全く認めません。理由を以下に示します。
> >この4つを頭にいれておいてください
> ですが、無論のこと存じております。私の書きこみもそれらの事柄を当然の前提として進めたのですが、伝わっていないようですね。
そうなんですか?あなたがそう言うならそうなんでしょう。私は全然そう思いませんが。
> では続いて、640年のダゴン星域会戦直後の同盟における差別立法の成立過程を考察して見たいと思います。
> (他の人権も制限されるというなら、その制限される人権とその法的理由付けを提示して下さい)。
なんでも制限されます。法的理由ですか?そんなものは同盟市民の帝国からやってきた連中に力を与えて自分達の生活を脅かされたくない、亡命者は不気味。
この感情を正当化するためならなんとでもつけられますよ。感情と理性が戦えば感情が勝つんです。理性とか理念ではありません。
> さて、この法案について「元々の同盟市民」は諸手をあげて賛同するでしょうか?答えは「ノー」です。理由は二つあります。一つは同盟の民主主義教育を受けて育った人々の良識。もちろんこれだけでは充分ではありませんが、この要素を無視する事はできません。二つ目は、SAIさま好みの「利己的」な理由、即ち立法の暴走に対する恐怖です。今回はたまたま規制されるのが亡命者だからいいものの、これで味を占めた立法者たちが今度は自分たちの人権を制限しようとするのではないか、と考えるのです。
良識派は常に少数派です。さらにほとんどの人間はそのようなことは決して考えませんし、行動しません。現実世界でも、暴力団対策法ができたとき、そんなこと考えました?何か行動しましたか?組織犯罪法の時は?盗聴法の時は?民主主義を自認するアメリカでも事実上の治安維持法で、人権を制限するテロ対策法は圧倒的賛成多数で成立しましたよ。
もちろんその法律は後々同盟市民の人権を制限するために使われます。
そのときになって後悔することになりますが、成立するときはほとんど何の抵抗もなく成立します。
> さて、このスレをご覧になっている皆様(いれば、ですが)はおそらく疑問に思っているのではないでしょうか?「この問題と差別問題と、どう関係しているのだ」と。
> 要するに、同盟国民は「640年組」の子女も含めてみな、民主主義礼賛の教育を受けている、という当たり前の事を延々と証明して見せただけです。
現実に差別があり、教育されている理想と現実が乖離していればいるほど亡命者達の反発は強まり、教育を信じなくなります。
あるものをないといい、ないものをあるといって民主主義礼賛の教育をするならそれは北朝鮮の洗脳教育と本質的に変わりません。
理想と現実の間には距離があるって本当にわかってますか?
> >合憲判決が出るでしょう。
> とおっしゃるならSAIさま、逆にお尋ね申し上げますが、その場合同盟の司法府はいかなる法的理論によって合憲判決を下すのでしょうか?それを提示して頂かない事には、あなたの説は全く説得力がありません。
前述しましたが、亡命者を排除したいという感情を正当化するために法的理論を作り上げるんです。もとから結論は決まっている。ただ、おまえらは不気味で、俺達と同じ立場にたつなんて耐えられないと本当の理由を面と向かって言えないから、それらしいものをでっちあげるだけです。
これと同じようなものが今現実にどれほど横行しているか知らないとは言わせませんよ。言うなら不勉強です。
現実にそういう事態があまたある以上、あなたの説は全く説得力がありません。
> また、違憲判決を出さざるを得ない、SAIさまお待ちかねの「利己的」理由も存在します。極めて簡単な話で、もし合憲判決が出たらどうなるかをちょっとばかり想像して見ればよいのです。同盟全土で亡命者が大暴動を起こすでしょう。労働力の圧倒的多数を占める亡命者が全土で無期限のゼネストに移行するでしょう。結果、経済と社会は大混乱に陥ります。帝国軍はこの絶好の機会を逃さず大挙侵攻してくるでしょう。そしてそれを阻止すべき同盟軍は、やはり将兵の圧倒的多数を占める「640年組」のほとんどが士気喪失して、まともな勝負にならないでしょう。この点、2638番のKenさまの見識に私は全面的に賛同します。
そう言う状況を同盟が帝国にのっとられたといい、同盟が帝国化してしまいます。私は何度同じ事を言えばいいんでしょうね。
>彼らには共和主義にかぶれた者も少なくないはずです。
誰が教えるんです?640年の時点で帝国のどこに共和主義者がいるんですか?この時点では帝政が当たり前なのであり、共和制は非常識でしょう。いたとしても極少数です。よって続く議論も否定されます。
>わざわざ帝国でのそれよりも低い扱いを受けるために地位をなげうち密航のリスクを犯してまで亡命しようとするでしょうか?もちろんそんなわけありませんね。
やってきます。この時点においては同盟は拡大期にあたり、亡命者がのし上がるチャンスはいくらでもあった。停滞するのは後の話です。彼らは経済的な力をつけていきます。彼らの社会的地位が向上するとともに今度は彼らが自分達の後にきた亡命者を差別します。
差別の連鎖です。元々の同盟市民→前期亡命者→後期亡命者
私ははじめから同じ事を言ってます。何度も同じ事を言わせないでください。
> 大体一旗組だけなら、同盟よりもフェザーンに取られてしまうに決まっているではありませんか(あ、もちろんフェザーン建国後の話ですが)。
フェザーンではだめです。そもそも物理的に亡命者を受け入れるスペースが同盟よりはるかに小さいんですから。そういう常識以前のことを言わないでください。
続く
>惑星オシアナ(仮称)を考えて見ましょう
それを同盟が帝国にのっとられたといいます。この場合なら一星系にすぎないが同盟の中に帝国ができてしまいます。そうなるまで星系政府はなにもしないでしょうか?星系政府ではどうにもならなくなったとしても、同盟政府がなにもしないとでも?
コソボという地名覚えてますか?どういう現状か知ってます?
>鉄骨運びをしていたにーちゃん
もちろん彼にやれといっても無理です。それでも彼は亡命者がやる仕事には決してつきません。本当になければ彼は社会保障で遊んで生きることになります。これが同盟亡国への道の一歩です。ま、これは余談で直接関係ありませんけど。
このモデル場合どうなるかというと、高級公務員だけが同盟市民、それ以下が亡命者となるでしょうね。もちろんそんな状況非常に危険で亡命者に、つまりは帝国に同盟がのっとられるでしょうが。
そしてそうなれば今度は大多数の亡命者達が少数の同盟市民達を差別することになります。
>反差別法が制定されているでしょう
反差別法が制定され、公的に禁じても差別はなくならないといったはずですが。法律は理性、差別は感情です。法律で感情を規制することなど
できないのですから。
>それにこの頃には同盟の権力者たち内かなりが
いえ、決してそれはありません。むしろ権力中枢に近いほど長征一万光年の子孫で占められることでしょう。彼らは閨閥で結びつき、異分子を排除します。
>大体SAIさまのおっしゃる通りであれば、今アメリカの議会に黒人議員は一人もいないことになりますよ
彼らはいわばアメリカは自由の国だということを示すためのショーウインドー的存在です。決して実権はあたえません。今の国務長官のコリンパウエル氏とてほとんど実権はなく、ラムズフェルドやチェイニー副大統領ら極右派が実権を握っているという状況です。
>私が申し上げているのは、「資本主義経済と封建的経済、どちらが効率的(or非効率的)ですか」という点です。
それは最初に言いました。同じ程度に不効率だと。資本主義経済も封建的経済も似てくると。
経済が効率的でないかどうかは、ひっきょう必要な物が必要なところに
あるかどうかです。資本主義経済も封建的経済も運営を間違えると、必要なところに必要なものが届かなくなり、不効率になると。
そしてそれはよく間違うと。なぜ間違うのかは今まで散々説明しました。
Kenさん、アメリカ体験記どうもです。
> 「資本主義は利己主義である」
>資本主義のユニークな特徴は「自由競争」と「実力主義」にあります
実はこれを進めると金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏になることがわかっています。これは経済学的にも社会学的にも有害なんですが、権力を握っている金持ちたちはやめようとしません。
この状況では数少ない例外以外生まれたときに生涯が決まってしまうということになり、むしろ差別と戦うには最悪の武器なんです。
>世界のどこよりも自由だとも考えており
その前にお金がある人間にとってはという形容詞をつければそれは正しいです。
>一方、このような例もあります
その場にいたわけではないからひょっとしたら違うのかもしれませんが、話を聞く限りでは厄介ごとにかかわりたくないから、見てみぬふりをしようという風にかんじられました。それは差別ではないでしょうか?
>回答されましたが、「同盟市民」を「白人」と置き換えると、前期の人事部長や友人たちが言ったことと、大変に矛盾します。
矛盾しません。アメリカは陪審制だからです。アメリカの陪審員というのは一日わずか4ドル程度の薄給で、裁判終了まで外界から隔離されます。一般のアメリカ人はそんなのに時間をとられるのがいやで、簡単に終わる極小さな事件の裁判の陪審員になりたがります。Kenさんのようないわば普通の裁判の場合、陪審員になるのはその4ドルがほしい人々、つまりは極貧の黒人達で占められるというのが現実です。
そんな状況では人事部長達や友人達がそうKenさんに忠告するのも当然だと思います。
私個人の感想を言わせてもらえばそんなことで数百万ドルをとる社会というのはどこかおかしいとしか思えません。
>同盟は帝国からの移民を受け入れ、様々な差別問題を抱えながらも、差別の解消に努力し、その努力は多数派の支持を集めただろう。特に帝国との戦いの中にあっては。
経済が順調なうちはいいんです。さまざま矛盾があってもなんとかなりますから。その間はKenさんのいうとおりになったと思います。
だが一度おかしくなると普段はでてこなかったさまざまなものが出てきます。文字どおりパンドラの箱が開くんです。特に経済がおかしくなった後、帝国に大敗したとなると非常に危険な状況になると思います。
・・・SAIさま、
ぜひお伺いしたいのですが、SAIさんは、差別をはじめ世の不合理と戦うための武器として、アメリカ型民主主義以上の社会形態があると考えておられるのでしょうか?そうだとすれば、それがどのような社会なのか、具体的にどのように優れているのか、数字を挙げて教えていただけませんでしょうか?何の数字を挙げるかは、お任せします。私自身は、例えば、移民の受け入れ数とか、社会的流動性とか、人種的多様性とかがよいと考えますが、その指標自体がアメリカ式で、間違っていると言われるのでしたら、どうかSAIさん自身が適当と思われるものを挙げてください。それができれば、私たちの議論もずっと具体的で建設的なものになると思います。
陪審員制度の問題点についてご指摘をいただきありがとうございました。
ちなみに、私が勤務したのは、100名程度の小さな事業場でしたが、私の短い滞在中にも、陪審員を勤めるために裁判所から召集を受け、一週間ほど会社に出なかった社員が2名いました。二人とも白人でしたが、少なくともはたから見る限りでは、いやがりもせず、市民の義務を果たしに行きましたが。
そんなことよりも、私がひっかかるのは、SAIさんの言われたことは、私が提議した問題への解答になっているのでしょうか?
陪審員が白人にせよ、黒人にせよ、裁判で決まったことは強制力をもちます。「百万ドルの賠償をせよ」と命令が出たら、百万ドルを支払わねばなりません。その場合、差別をする社会の差別をする側は、そのような重大な影響力を及ぼすポジションに、差別をされる側を着けないように、注意を払います。Civil Right以前のアメリカとくに南部が、まさにそうで、黒人の陪審員などありえませんでした。いま、陪審員が黒人ばかりで、そのために黒人に有利な判決が出るなどということが本当にあるなら、多くのアメリカ人は、それこそアメリカ社会が差別の克服へ向かって進んできたことの結果だというでしょう。
また、SAIさんは、准提督さんへの回答の中で、アメリカの黒人議員はショウウィンドウで、実権がないと、書かれましたが、「実権がない」とは、具体的にどういう事態を指すのでしょうか?黒人議員の投票は、カウントしないのですか?黒人議員の賛成で可決した法律は、施行しないのですか?黒人議員には、質問やスピーチをする時間を割り当てないのですか?
SAIさんがどう思われるか分かりませんが、私にとっては、この問題は人口論議などよりもはるかに重要です。これに比べたら、中世の人口減少の秘密など、知的なお遊びにすぎません。ぜひ、こちらの議論に力を集中しようではありませんか。(ただし、人口論議を続けたい方がおられて、私に疑問や反論を投じられる場合には、できるだけ応じさせていただきますが。)
最後に、管理人様。
この議論は、銀英伝とも田中芳樹先生ともかけ離れた方向へ進む可能性があります。できるだけそうならないようには努めますが、私の関心は、この件に関しては1600年後の自由惑星同盟ではなく、現代のアメリカ及び世界にあることを申し上げねばなりません。よって、本掲示板の主旨と外れるという判断をされる場合には、議論を打ち切りますので、どうかお知らせください。
よろしくお願いします。
銀英伝のテーマの一つである「民主主義は果たして正しいのか?」というテーマを、はからずも原作者の田中氏が意図しなかった方向から照らし出す面白い議論だと思います。
是非続けてください。
一応私からは…
・完全な「自由」「平等」を確立した、つまり純粋な「民主主義」を確立した国家は未だ無い(たぶんこれからもない)
・どんな民主主義国家でも、独裁状態を経ないで成立したことはない。
・そもそも原理的に言えば「指導者」という存在こそが民主主義の理念に反するが、指導者無くして行政は成立しない
を指摘しておきます。
飛び入りすいませんが。
私が2957番の書き込みに書いた亡命者は同盟国籍を持っていないのではないかという意見に対して何か意見はないのでしょうか。
これなら何の問題もなく亡命者を差別できますけど。
> 飛び入りすいませんが。
> 私が2957番の書き込みに書いた亡命者は同盟国籍を持っていないのではないかという意見に対して何か意見はないのでしょうか。
> これなら何の問題もなく亡命者を差別できますけど。
ちょっと時間ないのでまずこの問題についてのみレスします。SAIさまの方はまた後刻。
来るかなぁ、来るかなぁ、と思っていたんですよ、これ(^^)そう、亡命者は入国の時点では同盟国籍を有せず、「外国人」の扱いなのです。
ただ、民主主義国家においては外国人だからと言って無条件に人権を制限する事はできません。これは人権の前国家的権利性(人権は国家や法律によって与えられるのではなく、生まれながらにして持っているのであり、法律はそれを確認しているに過ぎない)によるものです。従って性質上可能な限り外国人にも人権は保障されます。「性質上保障されない」人権としては、参政権(国民主権に反するから)があります。また社会権については、現実世界では「国籍国がまず社会保障の責任を持つsべきである」という理論から外国人には認められていませんが、そもそも同盟の場合「国籍国」たる帝国の存在を認めていませんから、どう扱われるかは微妙です。
いずれにせよ参政権は制限されます。社会権は不明です。他の人権は保障されます。
倉本様、
自由惑星同盟がどのような法律を持っているかに依りますが、常識的には市民でなければ徴兵対象にならないのではないでしょうか?永住者でも、外国籍では、せいぜい義勇兵に志願してもらうくらいでしょう。したがって、自由惑星同盟の置かれた状況を考えると、同盟政府は亡命者の帰化、つまり国籍取得を推進すると思います。
なお、国籍がなければ、「何の問題もなく亡命者を差別できます」というご意見には、私は賛同しかねます。
管理人様、
快く認めていただきありがとうございます。喧嘩の場にならないように心しながら、議論の場として、掲示板を利用させていただきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。
> ・完全な「自由」「平等」を確立した、つまり純粋な「民主主義」を確立した国家は未だ無い(たぶんこれからもない)
ユリアンが引用したアーレ・ハイネセンの言葉にありましたね。たしか「自由、自主、自立、自尊」だったかな。(これもなんだか、日本語でしかできない語呂合わせのような・・・。翻訳者の方、ご苦労様です。)結局、「自由」や「自尊」と比べて、「自主」や「自立」はより大きな努力を伴うため、敬遠する人も多く、それが民主主義の完成を妨げるのでしょうね。
> ・どんな民主主義国家でも、独裁状態を経ないで成立したことはない。
これは、仕方がないのかもしれません。世界のどの国も、1000年以上にわたって封建制の中にいたのだし(アメリカ人だって、先祖をたどれば、例外ではない)、過渡期としての「啓蒙専制君主」は必要なのでしょう。ラインハルトは、それを目指しているのだし、リヒターやブラッケは、疑問を持ちながらも、結局は協力するでしょう。
> ・そもそも原理的に言えば「指導者」という存在こそが民主主義の理念に反するが、指導者無くして行政は成立しない
民主主義の完成度が非常に高くなれば、政治家は、「指導者」というよりも、「税金」という名の代金をもらって、「行政能力を売る」ビジネスマンと見なされるようになるのでしょう。