拝啓 突然メールを差し上げるご無礼、何卒お許し下さい。
陳舜臣氏について伺いたいことがあるのです。わたしは30代のサラリーマンです
が、父が陳舜臣氏
の小説が好きで、「阿片戦争」などいくつか読んでいたようでした。わたしも少し読
んでみたのですが、
どちらかというと、あまりなじめなかったというのが正直なところです。陳舜臣氏に
ついて発言する人は、
作家の田中芳樹氏をはじめ、陳舜臣氏をたたえる人ばかりなのに違和感を感じたわた
しは、
誰かに聞いてみたくなったのです。
たとえば陳舜臣氏のシルクロードについてのエッセイを読んでみると、ウイグル族が
「開放」前はいかに
悲惨な暮らしを送っていたか、「開放」されていかに感謝しているか、というような
ことが書いてあります。
しかし、近年のウイグル族の反体制運動は、もはや隠しようもないくらいになってき
ています。
またわたしは、ダライラマのチベット関係の著作も読んだことがあるのですが、陳舜
臣氏はこういうテーマ
は扱わないようです。どうやら、中国政府のご機嫌を損ねるようなテーマは扱わない
ようなのですが、
こういう点を指摘する人が誰もおらず、賛美する人しかいない、というのが日本の知
的風土の貧しさでは
ないでしょうか。アメリカなら必ず誰か、異議を唱える人が出てきます。
陳舜臣氏は中国本土では、愛国的華僑作家として紹介されているとのことです。こう
いう作家であることを、
今後ともわたしは認識しながら読んでいこうと思っています。私見についてのご意見
・ご批判等伺えれば
幸いです。
敬具
>どうやら、中国政府のご機嫌を損ねるようなテーマは扱わない
>ようなのですが、
本来事実の積み重ねである歴史学ですら、その事実を自分の信じたい真実に解釈してしまう傾向があるほどですから、ましてや真実を描く小説では偏りはいたしかたない部分があると思います。
問題はその自覚があるかどうかですが…
>Yasushi-Ta さん
>たとえば陳舜臣氏のシルクロードについてのエッセイを読んでみると、ウイグル族が
「開放」前はいかに
悲惨な暮らしを送っていたか、「開放」されていかに感謝しているか、というような
ことが書いてあります。
陳作品については『中国の歴史』他数本しか読んでないのですが、非常に面白い本を書く
人には違いないと思います。
このエッセイも読んでませんが、いつ頃の発言でしょうか。
>しかし、近年のウイグル族の反体制運動は、もはや隠しようもないくらいになってき
ています。
中共のウイグル政策についても詳しくは知らないので何とも言えないのですが・・・。
近年になってウイグル人の民族意識が高まってきたことも要因かもしれません。
>どうやら、中国政府のご機嫌を損ねるようなテーマは扱わない
ようなのですが、
大人の事情ってやつですな(^^;;)。
管理人さん、みなさんはじめまして。スナドリネコといいます。
この掲示板は1週間ほど前に見つけて、まだ過去ログの全部に目を通してないので自分なりの意見はまたあとで書きこみしたいと思いますが、今朝、天安門事件10周年のニュースを見て一言言いたくなりました。わざと思いっきり皮肉を込めて言わせていただきます。
「天安門事件で死んだ人の名前を書いた傘をひろげていたただけで警察がその人を公園から追い出すなんて、とっても素敵な国ですね、田中先生」
またそのうちお邪魔しますので、よろしくお願いします。
もう10周年なのだね・・・。
ところで、少し前に書かれていたことでそれはどうだろうかと思う事が有ったので、この10周年に絡めて。
「陳舜臣は、中華人民共和国政府の気に入らないことは書かない」といった感じの意見がありましたが、天安門事件直後の「文芸春秋」89年8月号に陳は寄稿している。
「『血で書かれた事実』は隠せない--歴史に照らして--」と題されたその文章では冒頭に『春秋左氏伝』の「太史の簡」のエピソード(歴史家の家族が、次々に殺されながらもひたすら事実を記録し続けるという噺iを引用し、また6・4の流血事件は五・四運動の続きに見える、と褒め称え、そして最後に方孝ジュがやはり「燕賊、位を簒う」と命を懸けて書いたという(例の「運命」)話を引用しているのだ。
もっとも名指しでトウ小平や李鵬を批判していないので、どれは手ぬるい、という意見もあるかもしれないがリアルタイムでそういう発言をしたことは確認しておきたい。
また第一、陳は司馬と必ずしも歴史観が対立していたわけではなく、「台湾、まだやな」と言って司馬に「台湾紀行」をやらせたのは陳だし、司馬逝去の折には「学業道を同じくす五十余年・・・」という感動的な漢詩を読んでいる。
ただ、司馬氏はなにしろ「国民作家」であるからして、歴史に一家言持つ人は田中氏、陳氏に限らず「司馬史観」に一言異議を申し立てたい、というのはあるのではないかな。
田中氏は「武将列伝」であり陳氏は「河は流れず」(日進戦争を清国から描いた話。坂の上の雲、と対比して読むことを進める)だったのかな、とも思う。うむ、まとまらん。
>もう10周年なのだね・・・
田中芳樹は天安門事件までは多少なりとも中共に幻想を持っていたのでしょうか。(黄老人のセリフからすると明らかか?)
あの事件が無かったら黄老人のキャラももっと違っていたのかな?
複雑きわまる国内事情を抱えた中国の先行きについては簡単に斬ってしまえるものではないでしょう(当の中国の指導者達にもよく分かんないのでは?)から田中センセも不用意なことは言わない方が良いと思ふ。
それにしても「台湾は必ず中国に『復帰』する」ってのは一体何なんでしょうね。
当の台湾の住人にそれを望んでる人がどの程度いるんだか。
そもそも中国の統一政権が台湾を有効支配してたのって実質何年位なんでしょう。(異民族王朝の清は除く)
>それにしても「台湾は必ず中国に『復帰』する」ってのは一体何なんでしょうね。当の台湾の住人にそれを望んでる人がどの程度いるんだか。
ほとんどいないでしょうね。外省人で「俺は中国人」という意識が強い少数派以外は。はっきり言って、台湾人には「中国人」という意識はないと思いますわ。今現在、台湾が独立へ向かわないのは、北京政府が脅しているからでしょう。「もし台湾が独立するなら、武力侵攻する」と。民進党や建国党が政権を取れず、国民党政権が続いているのは、「実質的に北京の支配下にないのだから、無理に独立を叫んで大陸からの攻撃を招くこともあるまい」と台湾人が考えているということでしょう。裏を返せば、北京が台湾の武力解放を諦めたら、すぐにでも独立するということでしょうけどね。この辺は、田中芳樹の願望と現実が違うところでしょう。
へぇ、田中氏の「台湾は必ず中国に復帰する」かぁ、わらわしおる。この復帰って武力併合(中国から見れば併合ではないらしいが)でも復帰っていうつもりなのだろうか?新聞に「台湾で日台交流をめざして財界人組織発足」とでてましたが、台湾としては日本との経済的パイプを強固にすることでいざってときに日本が台湾を見捨てないように布石をおいてるようにしか見えませんが。政治的パイプを表立って強化できないからなぁ。
田中氏もいまの日本のご時世からあまり極端な中国への肩入れはよくよく吟味してからなさったほうがいいのにね(って天安門がおきるとは予想してなかったってことでしょうがないかもしれないが、説得力失うぞ)。それでも、その後の田中氏の作品(主に創竜伝)なんかでは認識あらためているようにはみえませんがなぁ。まあ、田中氏の今後のやり方としては露骨な思想の標榜を避けての読者の深層心理に訴えるって方向しかないでしょうな。