> まず、Kenさんが問題にしている燃費の問題についてですが、そもそもあれほど「補給」というものが地の文とキャラクターの主張によって繰り返し強調されている銀英伝で、実は宇宙艦船の燃費や補給に関する問題が全く語られていない事実をご存知でしょうか? 銀英伝1巻の帝国領侵攻作戦、銀英伝4~5巻にかけての「神々の黄昏」作戦、銀英伝8巻の「回廊の戦い」など、どれもこれも侵攻側は長大な距離を駆って敵領に入って攻撃を仕掛けています。特に帝国領侵攻作戦時の同盟軍と、「神々の黄昏」作戦後半における帝国軍は、どちらも敵によって補給線が寸断されるという事態に陥っており、食糧事情を主とした補給問題が繰り返し語られています。
> ところがですね、このような事態に至ってさえも、補給路を断たれた作中のキャラクター達は「宇宙艦船の燃費の問題」を全く取り上げないどころか、問題視する気配すら全くなかったのですよ。「アレほどまでに」補給を重視する銀英伝で「宇宙艦船の燃費の問題」が誰にも全く語られないという「作中事実」は一体何を意味すると思いますか?
帝国軍がランテマリオで勝って、ヤン艦隊の「正規軍によるゲリラ戦」が始まり、シュタインメッツ、レンネンカンプ、ワーレンと立て続けに撃破された後、占領したガンダルヴァ星系でロイエンタールとミッターマイヤーがワインを飲み交わしながら、語り合う場面がありますよね。そんな状況に至っても、「帝国軍の双璧」ともあろう二人が、飢えることばかりを気にしていて、「宇宙用艦船の燃料不足」について、何も語っていないということは、「燃料については全く心配するに値しない」という説の、有力な傍証であると私も思います。
果てさて、「帝国軍の双璧」の二人は、「燃料不足で艦隊が行動不能になりかねない」ということが予想される場合になっても、それに無関心でいるような設定のキャラクターでしたでしょうか?そんなことは、あり得ませんよね。どう考えたところで。
>田中芳樹が銀英伝のモデルにしたと思われる「宇宙戦艦ヤマト」では「航続距離無限」を誇る「波動エンジン」なるものが登場していること、現代でも(そして田中芳樹が銀英伝を執筆する前にすらも)燃料補給を必要とせずに稼動できる原子力空母などの存在があることなどを挙げて、田中芳樹自身の意図で「銀英伝世界における宇宙艦船の燃費の問題」が削除されていたという具体的根拠としました。
> そしてここから私は、「銀英伝世界における宇宙艦船の燃費の問題」がそんな風に扱われている以上は、いくら艦船や要塞の質量が巨大になろうが、燃費の問題は全く考慮する必要はないだろう、という結論を出したわけです。
ま、私あたりは完全に「ヤマト世代」なもんで、「宇宙用艦船の航続力が無限」という設定には、さほど矛盾は感じません。それに、上にも出ている通り、原子力空母や原子力潜水艦という、現実世界の実例もある(無限という訳ではないが、何年間も燃料補給不要なのは事実)ことですし。田中芳樹が、そのように設定を考えていたところで、不思議とは思いません。
> ただ、八木さんの主張では言及されていないのですが、「シャフトに移動要塞論を提唱された時点で、本来軍事的天才であるはずのラインハルトはその大いなる可能性に気づくべきだった」に関してはいかにお考えでしょうか? もしラインハルトがこれに気づいていれば、そもそも「貴重なガイエスブルク移動要塞が、あんな無意味な戦いで優秀な人材共々無為に失われること」自体が未然に防止できたのではないかと思うのですけど。
はっきり言いますけど、ラグナロック作戦に使えば良かったんですよね。その方が、よっぽど話が簡単です。移動要塞と艦隊が行動をともにして同盟領に雪崩れ込み、同盟軍を撃破してハイネセンまで達し、城下の誓いをなさしめる訳です。「移動要塞のエンジンの弱点」は艦隊戦力でカバーすることができますし、艦隊戦力単独でさえ同盟軍より遙かに強大な訳ですから、帝国軍が敗北することは先ずないでしょう。補給物資もガイエスブルグ要塞に集積しておくことができるので、あまり大規模な補給部隊は要らなくなる、と一石二鳥です。ハイネセン上空まで要塞&艦隊が迫って、「降伏しなければ地上を要塞砲で攻撃する」と同盟政府を脅迫すれば、イチコロでしょう。
ま、こんな話にしてしまうと、「小説としての面白み」は、あまりに失せてしまいますから、そうはする訳にはいかないでしょうけどね。
不沈戦艦さま、
>「『移動した』イゼルローンがエネルギーを持ちこたえることはできない」というのは、
>「既存の物理法則」を基準にした、あなたの推測ではないでしょうか?
>銀英伝中に、「要塞が移動する場合はエネルギーの消費が激しく増加し、外部からの補給
>を受けなければ、動くことも適わなくなる」という記述がない
これはもう主観の問題になるかと思いますが、私自身は、銀英伝が「物理法則」まで否定したファンタジーであるとは、さすがに考えていません。物理法則とは「物体を押せば動く」とか「物体を熱すれば温度が上がる」とか「昨日は、今日から見て、過去である」といった非常に素朴なものだと思います。そして、物体が移動すればエネルギーを費消するというのは、「物体を押せば動く」から帰結される結果です。なぜなら「エネルギー」とは「力」と「距離」の積分に他ならないからです。
確かに「ワープ」は出てきますが、それを持って田中氏が科学的現実性を一顧だにせず、ファンタジーの世界に遊んでいるとまで言うのはいかがなものでしょうか?超光速飛行や超光速通信は、数千光年の広がりを持つ世界を舞台にする上で、どうしても使わざるをえないもので、むしろ異星人も超能力者も、もちろん魔法も出てこない銀英伝は、空想科学としては保守的な部類に入る、と私は考えます。また、本議論の発端となった冒険風ライダーさんの論旨は、「ユリアンやヤンの発言から考えて、要塞とは無限の自給能力を持つ」というものでした。つまり何の脈絡もなく「要塞の活動力は無限ということに決めた!」などと言われたわけではなく、「長期にわたって外部からの補給を受けなくても活動できる要塞には、非常に大きな自給能力があるはず」という論理の筋を辿ったものであり、そこにはやはり、「活動」の背後には、活動の源となる「物質」や「エネルギー」があるはず、という自明の理が基礎になっていると思います。
ちなみに、銀英伝が、物質の移動にはエネルギーが必要で、より激しい移動にはより大きなエネルギーが必要、という物理法則を無視した世界であるなら、冒険風ライダーさんを含む何名かの人が例にあげている「バサード・ラム・ジェット」とても、その存在意義がなくなるのではないでしょうか?
原子力空母や潜水艦の例が出てたので、ちょと書きます。
ん~とこの論説で語られている部分で一番気になるのが、人間の事無視してない?なんです。
確かに原子力空母や潜水艦はハードウェアだけなら無補給で数年稼動しますが、人間は三ヶ月~半年(長くても一年)のサイクルで休息を取ります。移動要塞ともなれば充分な居住空間があるのでしょうが、軍事行動中である、兵器の内部いると言う事実から意識を切り離すのは案外大変で時間と共にストレスは蓄積されると思うのです。
次に要員ですが、普通の軍隊は三交代制で勤務します。銀英の世界も多分そうじゃないかと思います。仮に要塞定員(戦闘人員)が10万人だとして、最初の戦闘で2000人を失ったとします(銀英世界では過少な数字ですよね・・・)。当然ながらシフトは変更しなければならず、どこかにしわ寄せが来ることになります。通常の軍隊なら補充が出来ますが、無補給条件下では狂ったシフトが続行され続けます。それでも頑張って次の戦闘でも100%の力を出せましたが、更に2500人を失なったとします(無理がかかってることで損害率が上がったのです)。こうなるとどこかのシフトに欠員が生じ始める事になります。100%の戦闘力発揮はもう無理でしょう。疲労は蓄積し、戦闘以外の面での被害も出始めます(補修が間に合わなくなる、事故が誘発される等)こうしておそらく5度目か6度目の戦闘で要塞は戦闘力を失っていくと思われます。これが無補給の限界です。
GPMで知る人が多くなりましたが、昔から軍隊では人員が20%の損害を受けると全滅と同じと見なします。部隊が戦闘力を発揮できなくなるからです。移動要塞の場合、損害を受けるのはまず砲塔要員だと思われるので、被害を受けるたびに火力密度が減少していきます。物資によって砲塔が補充されたとしても操作要員が減っていきますし、そうなれな補充担当要員が引き抜かれ、その結果補充能力が低下し、その結果損害が増し・・・と悲惨な連鎖が生じていくでしょう。格納艦隊があったところで人員が補充できないと言う欠点は変わりませんから、結果が先延ばしになるだけです。
結果として移動要塞を無限に運用するためには矢張り拠点と補給路が必要だと言うことになるのではないでしょうか。一回限りの運用ならともかく連続した直接戦闘を伴う作戦行動においては、大艦隊の運用と手間も予算も変わらんとヤンやラインハルトは判断したのかもしれません。重力領域での使い勝手の悪さは艦隊以上だと思いますし(惑星付近での行動は潮汐力の関係で問題になる)。
別に否定でも肯定でもなくてこの面から見たらこうではありませんか?ってことなんですけどね。
冒険風ライダーさん、
懇切なレスをいただきありがとうございます。
銀英伝世界では、宇宙船のエネルギー補給が問題になっていない、ですか。言われてみればそうですね。冒険風ライダーさんは、私などが気づかない、細かいが重要な点を、めざとく発見されるようです。
この移動要塞の件に関する私の立場を明らかにしておきますと、私は、冒険風ライダーさんが言われるような移動要塞の実現可能性を、銀英伝の記述だけで判断することはできないと思っています。できるかもしれないし、できないかもしれない。
私自身は、「できないだろう」という方向に傾いてはおりますが、それはまさに私たちの世界の技術や常識に基づいての判断で、銀英伝の記述にのみ基づいて、できないことの証明はできません。ただ、冒険風ライダーさんとの間に議論が起こる理由は、(私の理解が正しければ、)冒険風ライダーさんは、「できる」と断言し、その論拠に基づいて、要塞を応用しなかったヤンやラインハルトが無能である、と結論づけておられるからです。
たしかに、冒険風ライダーさんが言われるように、銀英伝の各所には、無限の活動力をもつ移動要塞の可能性を示唆する記述があります。しかし、それに疑問の余地があることを示す記述もまたあるのではないでしょうか?
ヤンやユリアンが、孤立したイゼルローンの補給の心配をしていないのは、確かに前者の可能性を示しています。これに対して、彼らが静止要塞の話をしていることは、後者の可能性を示します。
また、艦艇への補給が問題にされていないのは、前者の根拠となります。一方、それが要塞よりもはるかに小さい質量の宇宙船の話である点は、後者の根拠になるようです。
要するに、移動要塞の実現可能性については、それを確信するに十分な材料を、銀英伝は提供してくれていない、というのが私の感想です。
ここから先は、本旨とは離れた細部への「空想科学読本」的突っ込みですので、苦笑しつつ黙殺していただいても結構です。
まず、「バサード・ラム・ジェット」エンジンですが、確かに、実現すれば宇宙空間自体から燃料補給を受けられる、画期的なシステムです。ただし、現実世界で論じられるバサード・ラム・ジェットも、銀英伝世界で実現されているものも、超光速を出すことはできません。あくまでも光速に近づける、だけです。そして、銀英伝世界では、移動要塞で敵の基地を攻撃してまわるにせよ、民主政治の種を植えて回るにせよ、数千光年にわたる活動範囲を要求されますので、バサード・ラム・ジェットを、推進力に使うことはできないでしょう。
次に、イオン・ファゼカスや、その後継たる80隻の宇宙船ですが、確かにまともな補給を受けることなく、イゼルローン回廊を越えて、バーラト星系まで至ったわけですから、銀英伝世界の艦船が無補給で長期間移動できることの、有力な根拠たりえます。
ただ、私は「長征一万光年」が、ヤンやラインハルトからみて、3世紀も昔の話であることを指摘したいと思います。アーレ・ハイネセンの時代には、ヤンやラインハルトの時代よりも、はるかに優れた宇宙船製造技術が存在し、それは逃亡奴隷にすら容易に入手できるほどありふれたものだったが、その後技術が失われたので、ヤンやラインハルトの時代には適用できない・・・。そう述べても、銀英伝の記述と直接矛盾するわけではないでしょう。
これは、今の私たちには奇妙に思える話です。技術とは、後代になるほど進歩するはずだからです。しかし、これこそ私たちの常識を銀英伝に無理矢理当てはめる行為だと思うのです。
冒険風ライダーさんは、過去ログの整理をされているので、(よくもあんな几帳面な作業ができるものと、脱帽しております)ご存知かもしれませんが、私は科学技術の進歩が絶対普遍の現象だとは考えておりません。確かに、我々の世界では、後になるほど技術が進むし、大まかに言って、最近の千年くらいはそれが続いてきた、と考えます。(それでも、細部の例外はあります。例えば、中国の明王朝や日本の徳川幕府は、権力を持って一部の技術を弾圧し、その退化を強制したと、私は考えています。)
ところが、今から1500年ほど前の世界をみると、ユーラシア大陸の東西を通じて、過去の技術が忘れられ、長期にわたって人口が減少し、神秘主義がはびこる時代でした。いわゆる「中世」の特に前半部分がそうだったのです。
そして、銀英伝の世界は、まさにこのような「中世的な世界」を背景にしている、と思います。これは、別に田中氏の専売ではなく、アジモフの銀河帝国シリーズもそうです。
例えば、ルドルフ登場直前の銀河連邦の状況を表すのに「中世的停滞」という表現が使われています。また、帝国の初期に3千億あった人口が、ラインハルトの時代には400億まで減っています。地球教の影響が地球以外にも広がっています。(私個人はキリスト教に親近感を持っていますが。)
こうしてみると、銀英伝には、時代を降るにしたがって技術が低下してゆく背景があり、アーレ・ハイネセンにできたことが、ヤンやラインハルトにもできるとは限らない、というのが私の感想です。
これからも、よろしくお願いいたします。
はじめまして、1年ほど皆さんの議論のすばらしさを観察してましたが、久し振りに熱い議論が起きているので、居てもたっても入られず、参加させてもらいます。宜しくお願いします。
さて、冒険風ライダーさんが指摘した「移動要塞」に関する疑問の発見は的を得ていたと思います。しかし、その後の論理の展開の仕方については、疑問視せざるおえません。これは結局、作者の設定・説明不足によるもので氏の責任とは言えないでしょう。
以下、私の考察について論じます。
①無限の自給自足能力を保有する「永久要塞」について
冒険風ライダーさんが、このような持論を展開するに至ったのは、文章の整合性を求めようとしたためだと思いますが、整合性を求めるあまり「木を見て、森を見ず」となっているのではないでしょうか。
銀英伝で「補給の重要性」は作品の魅力であり、コンセプトの一つだと思います。つまり「無限の自給自足能力を保有する」ことは、このコンセプトをひっくり返してしまうことになります。ここまで言えば、お分かりかもしれませんが、文章に合わせるのではなく、コンセプトに文章を合わせることが建設的で論理的なことなのではないでしょうか?
これをもとに、「移動要塞」の可能性について改めて論じたいと思います。
②「移動要塞」は運用が可能か?
運用は可能でしょう。ただし、兵器としてではなく移動拠点としてです。冒険風ライダーさんは、火力、防御力の絶大さを指摘していますが、イゼルローン要塞が鉄壁なのはもう一つ、イゼルローン回廊という「地の利」を得ているという事を見落としているのではないでしょうか。広大な宇宙空間で運用するとなると、ⅰトールハンマーはほぼ無力。ⅱ物理兵器による損害は免れない。ⅲ通常空間では移動力が戦艦よりはるかに劣る、など。ちょっと考えただけでもこれだけの大きな欠陥が挙げられます。つまり、「要塞」は単独行動に不向きであるといえます。この運用法で参考になるのは「空母」のように艦隊を率いることです。
③なぜ運用がされなかったのか?
・同盟の場合
冒険風ライダーさんが論拠にしている「ヤン、ユリアン、ギャッセルヌ」会話ですが、ユリアンはともかく(笑)、ヤン、ギャッセルヌという二大巨頭がいうのだから間違いないと思う気持ちは分かりますが、私はこの会話は夢物語だと解釈しています。実際問題でたとえ放浪できたとしても動力や水・有機物ならばともかく、金属類についての補給は無理と考えるのが自然だと思います。また、その問題をクリアーしても加工問題が出るでしょう。つまり、この会話の内容は『伊達と酔狂』という風に考えてます。他の理由については、指摘した皆さんのおっしゃる通りです。
・帝国の場合
これは当時の帝国の状況とラインハルトの性格から考察できると思います。まず状況について、ラインハルトはイゼルローンを奪われた後、すぐにフェザーンからの侵入について閃いたのではないかと思われます。その間の小競り合いで、イゼルローン攻略は、彼の理性では超難問だと理解しつつ、闘争心を高めっていったことは想像に難くありません。その後、全権を掌握し実質上最高権力者となった時には、趨勢は決しており、「要塞」の(建設を含め)価値が無くなったといえます。
そして、性格の面から考察すると、「要塞」は基本的に防御、持久戦に優れているものです。このことから、「戦争は短期決戦、機動性重視」する彼が積極的に運用するか?ということや「戦力で圧倒」していること、対費用効果など、から考慮しなかったのではと思います。
ではなぜガイエスブルク移動要塞を運用したのか?という疑問は、ⅰ同盟の目をイゼルローンに向けたかった。ⅱ移動要塞の可能性の実験。ⅲヤンがどのように対応するか?という好奇心(これが一番の理由では?)などが考えられます。
以上のことは私達の世界での物理法則をもとに考察しています。
作者もこの法則をもとに書いていると考えるべきでしょう(笑)
不沈戦艦さんへ いくらなんでもファンタジーは飛躍のし過ぎではないでしょうか、あれでは観察中さんも閉口せざるおえないと思います。(苦笑)
これが私が考えた結論ですけれども、長文&つたない文章で申し訳ないです。以前の論争の経緯はほとんど読んでいないのに恐縮ですけれども、反論・説明不足などありましたら、お手柔らかにお願いします。
こちらこそ、はじめまして
冒険風ライダーさんの大きな論点としては、
最終的にイゼルローン要塞に篭って、ラインハルトとの決戦を期待するという、100%必敗が予測される他者依存的作戦よりも、移動要塞を活用したほうが、はるかにまし、という話です。ラインハルトの心理だけに依存する愚かな作戦よりも、イゼルローン要塞を移動化した方が、はるかに希望が持てたのではないか、という対比だったわけです。
逆に、ラインハルトにしてみれば、プライドにかけて数百万の犠牲を払うような艦隊による要塞攻撃よりも、小惑星でもぶつけてイゼルローンを破壊したほうが、はるかに理にかなっているのでないの、という話です。
移動要塞化の困難は、100%必敗が予測される他者依存的作戦の困難、との比較で論じなければ、意味がありません。
この点がほとんど論じられないのが、私としても残念ですね。
あと、冒険風ライダーさん他、レスを返したいのですが、レスすべき対象が多いので、ご容赦ください。
私の立ち上げたスレッド中でも散見しますが、銀英伝世界において、熱力学第一法則(エネルギー保存則)が満たされてない、かどうかは、私においても気になる点でした。
作者も、まさか永久機関を提示しているわけではあるまい、と思えるからです。
これらの意見の中で、イゼルローン要塞は閉鎖系(外部との物質のやり取りがない)であるので、永久機関は不成立、みたいな推論がありました。それはないだろう、と思うので、前回の投稿(No3507)では、その反論を呈示してみたわけです。
まず、用語の問題ですが、観察中・・・さんの言う「現実の物理学」という表現は、具体的に何を指すのでしょう。21初頭の現在の人類が信じている(仮説を含めた)物理体系、ですかね。例えば、ハザード・ラム・ジェット・エンジンに関しては、「仮説」が存在している、とみなすとして。
ニュートン力学が、相対論の一特殊例として包括されるようになったように、未来において、現在の物理体系がどうなるかは、不明なところです。素粒子に関する物理学などは、将来大きく変遷する部分もあるでしょうし。
そして、銀英伝の世界が、現代からの類推でどの程度説明がつかないのかは、私も興味を覚えるところです。
No3517の不沈戦艦さんの指摘を踏まえると、以下の二つの論点が存在します。
1.銀英伝世界における航行技術一般が、「現実の物理学」と相容れない。
2.戦艦等(銀英伝小説中で航行が実施された物体すべて)の航行技術は「現実の物理学」に対して矛盾がないが、「移動要塞」を「無補給」で航行させることは「現実の物理学」と相容れない。(ガイエスブルグ要塞は航行しましたが「無補給」かどうかは定かでないので)
観察中・・・さんのNo3519の投稿は、1を意図していたので、もはや論ずる点がない、ということであると解釈してよいのでしょうか。そうすると、私としても論ずる点がなくなります。(移動要塞に限らず全部OKもしくは、全部NOTという話になるわけですから)
が、No3510での観察中・・・さんの指摘は、私も興味を覚える点であるので、すこしその内容について論じてみます。
☆以下、No3510に関して
A.要塞は移動可能か
<要塞ほどの質量を、いつでもどこでもスクープ場が使える程の速度に加速するのに、
どれだけの量のエネルギーが必要か、ご存知ですか?
(中略)
戦場においていつでもどこでもそんなベクトルが選べる訳はありません。>
例えば、上の観察中・・・さんの記載から判断するに、取り込んだ星間物質を蓄積する手段は存在しない、ということですね。蓄積する手段とは、核融合炉の燃料タンクのことです。
つまり、太陽電池を家庭用電源としても、バッテリーがないので夜間は真っ暗です、みたいな主張でしょうか。そんなことを言ったら、銀英伝世界の(非自足型の)戦艦にしても、航行中常時燃料補給を受けないと航行できない、みたいな話になりますね。
燃料補給のために、ガス星雲に行っても良いと思いますが。
また、意識されたのは、例の氷塊の話なのでしょうが、あの氷塊は一回飛ばしたら止まる必要がないのですから、燃料タンクはいりませんわね。
結論としては、前記1「銀英伝世界における航行技術一般が、「現実の物理学」と相容れない」ということでしょうか。
B.銀英伝世界のエネルギー源について
<そんな超絶的な技術があれば、移動要塞どころか全ての恒星系にエネルギー補給ポイントを兼ねた防衛要塞を置けるはずです。
幾らでもエネルギーが手に入るのですから、工業的にも経済的にも、
耐用年数さえ延ばせばペイしてしまいます。>
これは、私にとって非常に興味を覚える点です。
というのも、人類の獲得するエネルギーの総量によって、文明の規模が決定されるからです。
○第一は、森林資源を主たるエネルギー源とする段階です。
四大河文明というのは、森林資源に基づく文明であって、今からは想像できませんが、中近東やアフリカ大陸は緑茂る大地だったわけです。中国も今より森林が豊富だったとか。
○第二は、化石燃料を主たるエネルギー源とする段階です。
これは、いわゆる産業革命以来の近代の話ですね。化石燃料の利用以前には、これほどまでに豊かな国々の出現はありませんでした。
そして、恒星間飛行があたりまえとなる宇宙時代では、格融合炉の実現とその燃料の確保くらいができている必要があると考えられます。
つまり、
○第三は、星間物質を主たるエネルギー源とする段階
が、銀英伝世界において、実現されていてもよいのではないか、と考えるのです。
というのもですね、首都星等のなんらかの居住惑星を、艦隊の補給源とした場合でも、こ補給源において補給物資を生産するための手段が必要ですよね。
どっかにエネルギー源がないと、とても艦隊の生産はおろか、艦隊の維持すらが不可能だと考えられるのですよ(航行用のエネルギーも補給源から補給していると仮定した場合)。
だから、観察中・・・さんの言う「エネルギー補給ポイント」(というよりエネルギー生産ポイント、軍事施設に限定しない)が、全ての恒星系にあって、そのエネルギーを利用して宇宙時代の人類の文明が維持されているのではないか、と。
これは、私の推論ですがね。興味を覚えた、というのは、こうゆうことです。
C.論証責任について
<<以上の説明で、「致命的に間違っている」部分がない、ことが明らかでしょう。>
間違っています。
数字が。>
数字がどうだ、と言われるのであれば、観察中・・・さんが論証してみてください。
「破綻」するとすれば、「銀英伝世界」そのものなのか、移動要塞なのか、例の氷塊なのか、等、「破綻」の程度は興味があります。
<工作艦で曳航できる程度のサイズの氷塊ならともかく、要塞ほどの質量を、いつでもどこでもスクープ場が使える程の速度に加速するのに、
どれだけの量のエネルギーが必要か、ご存知ですか?
通常の物理学で引き出そうとすれば、運動量MV^2と、アインシュタイン方程式E=MC^2及び核融合のエネルギー変換効率、これと要塞質量があれば、損失をどのくらい取るかにより答えに幅が出ますが、導き出せる数字です。>
「スクープ場が使える程の速度」ってなんですか。
要は、星間物質を取り込む移動体の断面積(取り込み面の面積)×移動速度が、単位時間当たりの、取り込み可能体積ですよね。この体積に星間物質の存在密度をかければ、単位時間当たりの星間物質取り込み重量が算出されます。
以上は、計算式の補足に。
<<また、例えば太陽なども、完全に無補給の核融合炉ですよね。
無補給で何十億年といった時間の間、光を放射しつづけることができるわけです。>
太陽の質量と核融合燃料の消費率を考えた場合、それは当然です。
しかし、それに比べてイゼルローン要塞の質量は文字通りチリほどです。>
比較すべきは、太陽における消費率と、イゼルローン要塞での消費率でしょう。
要塞での消費率が太陽での消費率より高ければ、太陽ほど長持ちしないということになるわけです。
比較の対象が間違っています。
私も現代の原子力潜水艦との比較の類似でつかっただけで、例えば1000年無補給で済んだら、半永久的だと考えています。
皆さん、はじめまして。皆さんの様々な書き込みを拝見しまして、ちょっと思うところがありましたので、失礼とは思いますが飛び入りさせてください。
もしかしたら、既に過去レスで論じられているものを私が見落としているかもしれませんが、その場合は平にご容赦ください。
1.イゼルローン要塞は本当に移動できるか?
イゼルローン要塞の表面外装は、確か流体金属という設定ですね。いわば、ボールの表面に水が貼り付いている(?)ような状態だと思うのですが、イゼルローン要塞を移動要塞化するときは、当然このボールの部分に航行用エンジンを取り付けることになると思います。
流体金属外装にどの程度引力が働いているのかよく分かりませんが、この状態で、表面に水(?)を貼り付けたままボールを動かす(あるいは止める)ことは非常に難しいのではないでしょうか。
ましてワープなどといった急加速(急減速)を行えば、流体金属の外装だけ通常空間に取り残されてしまうことになると思うのですが・・・。
2.移動要塞で惑星攻撃はできない?
アニメ版で、イゼルローン要塞とガイエスブルグ要塞が、お互いの要塞主砲の射程圏内で正対したとき、イゼルローン要塞の流体金属外装が、潮の干満よろしく、ガイエスブルグ要塞側に引っ張られる、というシーンがありました。また、ガイエスブルグ要塞の方も、イゼルローン要塞の重力波の影響を受けているような(確かルッツの)セリフがあったと思います。
これから考えると、銀英伝に登場する要塞は、実は重力波の干渉に非常に弱いのかもしれません。
惑星よりもはるかに小さい要塞の重力波ですら、このような影響を受けるのですから、実際に惑星攻撃を仕掛けようとしたら、要塞主砲の射程に入る前に惑星の重力圏につかまり、惑星に向かって墜落、ということになるのではないでしょうか。
> ニュートン力学が、相対論の一特殊例として包括されるようになったように、未来において、現在の物理体系がどうなるかは、不明なところです。素粒子に関する物理学などは、将来大きく変遷する部分もあるでしょうし。
これに関してですが・・・
ニュートン力学自体は否定されていませんので、運動方程式などは依然有効です。
慣性制御技術が存在する場合にも、それがエネルギー保存則に反しないのであれば、
加速するために消費したエネルギーとの収支はつりあっていなければなりません。
物理学は、エーテルのような不要な媒質を使った証明を止めたり、
過去の観察結果を包含して進む事はあっても、過去の観察例との整合性を保って
いなければなりませんので、エネルギー保存則やエントロピー増大則を破るような
小道具が存在する場合、通常、必ず理論上の変革の説明はなされます。
「どうなるかは不明」と云っても、われわれが日常見ているような物理現象を
何もなしに否定するものではないからです。
> 観察中・・・さんのNo3519の投稿は、1を意図していたので、もはや論ずる点がない、ということであると解釈してよいのでしょうか。そうすると、私としても論ずる点がなくなります。(移動要塞に限らず全部OKもしくは、全部NOTという話になるわけですから)単純に作中の前提を全て受け入れてしまうと、私には論考不能になってしまうと云う事です。
> 例えば、上の観察中・・・さんの記載から判断するに、取り込んだ星間物質を蓄積する手段は存在しない、ということですね。蓄積する手段とは、核融合炉の燃料タンクのことです。
> つまり、太陽電池を家庭用電源としても、バッテリーがないので夜間は真っ暗です、みたいな主張でしょうか。そんなことを言ったら、銀英伝世界の(非自足型の)戦艦にしても、航行中常時燃料補給を受けないと航行できない、みたいな話になりますね。
> 燃料補給のために、ガス星雲に行っても良いと思いますが。
> また、意識されたのは、例の氷塊の話なのでしょうが、あの氷塊は一回飛ばしたら止まる必要がないのですから、燃料タンクはいりませんわね。
いいえ。
氷塊と要塞では物理的条件があまりにも異なっています。
まず、氷塊の場合前提となる「速度」の問題についてはっきり書いていないので、
「まず亜光速か、ラムスクープ場が使える速度まで加速したはず」と推定していたのです。
要塞の場合、組み立て段階か機能し始めた段階では恒星か惑星の周回軌道を回っているか、
工作艦などと相対的に静止した状態にないと製作困難と考えられるので、その段階から
加速する行程のエネルギー収支を解決しなければなりません。
要塞内に燃料タンクを備えることは当然可能ですし、そう云うものはあるでしょう。
しかしバサード・ラムの場合、取り込みのために進行方向への速度を利用します。
燃料となる水素自体も速度を持っているので、取り込んで内部にとどめようとすると
エネルギーを無駄にしてしまう(速度を減殺するためにまた、エネルギーを使ってしまう)。
あくまでバサード・ラムを使う場合ですが、燃料はあまりそれを使う物体の中に
とどめおかず、融合でエネルギーを得たら推進用に噴射してしまうほうが、収支がいいのです。
バサード・ラム・ジェットを使う場合、そう云うエネルギーの収支の帳尻合わせが、
大質量になるほどどんどん難しくなって行きます。
つまりは
> 結論としては、前記1「銀英伝世界における航行技術一般が、「現実の物理学」と相容れない」ということでしょうか。
・・・と云う事です。
※「ラムスクープ場」と「加速」及び「バサード・ラム・ジェット」については後述します。
> B.銀英伝世界のエネルギー源について
>
> (中略)
> だから、観察中・・・さんの言う「エネルギー補給ポイント」(というよりエネルギー生産ポイント、軍事施設に限定しない)が、全ての恒星系にあって、そのエネルギーを利用して宇宙時代の人類の文明が維持されているのではないか、と。
> これは、私の推論ですがね。興味を覚えた、というのは、こうゆうことです。
>
> C.論証責任について
>
> <<以上の説明で、「致命的に間違っている」部分がない、ことが明らかでしょう。>
> 間違っています。
> 数字が。>
>
> 数字がどうだ、と言われるのであれば、観察中・・・さんが論証してみてください。
> 「破綻」するとすれば、「銀英伝世界」そのものなのか、移動要塞なのか、例の氷塊なのか、等、「破綻」の程度は興味があります。
>
> (中略)
> 「スクープ場が使える程の速度」ってなんですか。
> 要は、星間物質を取り込む移動体の断面積(取り込み面の面積)×移動速度が、単位時間当たりの、取り込み可能体積ですよね。この体積に星間物質の存在密度をかければ、単位時間当たりの星間物質取り込み重量が算出されます。
> 以上は、計算式の補足に。
太陽系内の数字を援用すると、星間物質は一立方センチあたり水素原子0.1個程度の密度です。
この密度では、単に取り入れ口を開いても水素はとても収集できません。
そこで捕獲用の道具として考え出されたのが、ラムスクープ場です。
銀英伝の作中では「バスケット状の磁場」と呼ばれていますが、
バサード・ラム・ジェットについての述語では、「ラムスクープ場」もしくは
「スクープ場」と云う呼称が古くから使われています。
(バサード・ラムは、米国のバサードと言う人が考え出した事から、その名があります。
この人は本当に恒星間ラムジェットの設計要件を考え、それが条件付きで可能と言う
答えを導いた人です)
しかし、エネルギー保存則に従い、そう云うものを展開するとエネルギーを消費します。
展開するために使ったエネルギーよりも手に入る燃料から得るエネルギーが多くなければ、
たちまち燃料タンクはカラッポになってしまいます。
そこで、バサード・ラム・ジェットは、それを効率良く使用するためにまず、「ある程度加速してやる」必要があるのです。
ちなみに、もともとのバサードの構想ではスクープ場の大きさは100km程度です。
このサイズのスクープ場が取り込む水素の量は、貴方の仰るとおりの式に従って計算可能です。
計算を単純にするため、分かりやすい数字に振り替えて式に入れます。
断面積πr^2より
(100(km)×1000(m)×100(cm))^2≒10^14cm。
これにπを掛けた値が開口面積です。
移動速度で1cm毎にこれだけの数の水素原子が手に入ります。
水素原子の「個数」を分かりやすく質量にするには、1モル(6.02×10^23)
を1グラムとして換算できます。
例えば分かりやすく、速度が毎秒1cmの場合、手に入る水素原子の質量は
π(3.14)×10^13個=0.52×10^-10gで、1gより遥かに少ない。
端的に、毎秒0.1gの水素を手に入れるには、
約2×10^9cm/s=10^7m/s=10^4km/s=秒速2万kmが必要です。
取り込み口の断面積次第で、この数字は変わります。
例えば直径1000kmの開口部を持つラムスクープ場を使えば、同じ速度でも100倍の
燃料が手に入ります。
しかし、磁場は逆二乗則に従うので、10倍の大きさの磁場を展開するには、100倍の
エネルギーが必要です。
これでは話になりません。
最初から多量の燃料を積んでおいたほうがマシです・・が、それだとその燃料を
加速するためにまた、エネルギーを使ってしまうので、帳尻が合いません。
この方式の提唱者のバサードが考えたのは、もっと水素が豊富な空間を利用する事です。
太陽近辺では、常に放出される太陽風(水素とヘリウムが主成分)のため、イオン化した
水素が多量にあります。
楽観的な数字で、1立方センチあたり1000個。
この数字だと、燃料の流量は10000倍になります。
先の式に入る数字も変化し、秒速2万kmで手に入る水素は毎秒10kg。
1日240kg、年間90トン近くになります。
もともとのバサード・ラムの構想では、ごく小さい探査機を毎秒1Gで加速するために
これを使うはずでした。
核融合で得られるエネルギーについては、以下のページに計算してくれるJavaスクリプトが
あります。
ttp://www.jex.co.jp/organization/div32/main/fusion/fusion.html
効率がいいほうでも、質量の0.04%程度がエネルギーに変換できる程度です。
故に、この数字で、小さい探査機なら十分に恒星間飛行が出来てしまいますが、
イゼルローンほどのものを動かすにはまるで足りません。
物質変換などを行う事も出来ませんし、取り込んだ物質で補給を成すことも
出来ません。
星間ガスが濃いところに行くと云っても、恒星間空間の広大さからすると、
それは本当に天文学的距離が開いている上、密度が何億倍も違うわけでは
ないのです。
わざわざ取りに行くよりは、最初から積んでおいたほうがいい程度の量しか、
われわれの知る銀河系の星間空間には物質がないのです。
但し。
ここまでの計算でお分かりと思います。
あの世界で星間水素の量が、例えば立方センチあたり、われわれの知る銀河系の
10万倍>100万倍>一億倍であったら、この数字のオーダーは全て変わります。
要は量の問題です。
それを妥当と出来ないのは、同様にわれわれの知る物理学では、星間空間にそんなに
物質があったら、宇宙は自重で収縮に転じ、潰れてしまうからです。
これの帳尻を合わせるには重力定数をいじらねばならず、重力定数をいじると
恒星の生成時期や反応速度が変わり、惑星の生成過程が変わり、われわれの知るような
銀河や宇宙は誕生できないと考えられるからです。
しかし、このような議論はそもそも、全て的外れと云う事なのでしょう。
私のように、人の持つ前提を素直に受け入れずに話が出来ないタイプでは、
こう云った議論を健全に保つことは出来ないようです。
もうしわけありませんが、私にはもう、そのままこれを続ける気力がありません。
勝手ながら、以って最後の発言とさせていただきます。
私は移動要塞肯定派な訳ですが、嘘はつきませんので少々下記の事実を御再考下さい。
1.建設・移動について
科学技官として決してシャフト技術総監は天才ではありません。
汚職一つの発覚で解任してしまえる程度の人材である事は間違いありません。
そんな彼のプランニングでイゼルローン要塞級のガイエスブルグ要塞は2ヶ月で移動要塞に改装された訳です。
これはもう技術的には「事実可能だったんだから仕方がない」としか言えないでしょう。
「同盟には不可能だった論」が持ちあがりましたが、これについては「可能不可能の断言はできない。よって援軍なしの篭城より多分まし」で最終回答になったと思います。
作中事実として国力で劣る同盟が技術まで帝国の「当たり前」が再現不可能だったらラインハルトの登場まで同盟が維持されていた事の方がおかしい事になります。
人材に原因を求めるにせよメルカッツやファーレンハイトのような貴族社会でも認められる出自の名将もいたのですからやはり同盟と帝国にアドバンテージとなる事象は存在しなかったと思うのが妥当でしょう。
2.運用について
これは屁理屈の類ですが「流体金属の外装」はアニメオリジナル設定です。
あえてアニメ版の設定に従っても恒星系内に直径60km程度の物体が存在する余地がないとは思えません。
そうであれば「突如出現した前進基地付き1~2個艦隊」は立派に軍事的脅威になります。
よしんば要塞維持自体に幾許かの補給物資が必要としても、クリティカルヒットで名将の指揮する大規模攻城艦隊が網をはって3倍以上の艦隊戦力で隠密裏に待機していたなどという僥倖がない限り、移動要塞の駐留艦隊が持てるだけの物資をもって遁走、で随分長持ちしそうです。
加工は要塞自体で可能なのがこの場合物資調達の労を多いに軽減しています。
人的資源については、以前のスレッドでは逆にどれだけ参加を遠慮させて帝国統治下での『人民の海』形成に尽力してもらうかで苦慮しそうという意見がありましたが。
正史であれだけ6~7巻に見られる旧同盟の反帝国感情や行動がある以上志願者に困る事態は緊急の物でない事は確かそうです。
生活については「最前線の基地を持つ都市」が原子力艦船のごとく移動しているという状態ですので、国家や共同体として健全かはともかく宣伝如何によっては「民主主義最後の砦」の使命感は住人の大きな支えになるでしょう。
新Q太郎さんの名作ではありませんが北朝鮮だってあの政治形態で半世紀維持されたわけですし、もう少し健全かつ現実路線を歩んだキューバはあるいはカストロ一代は安定あるいは発展もあるかも知れません。
3.その他
「建造までの困難」「移動要塞をめぐるキャラクター論」等結構ありますがやはり一度冒険風ライダーさんが纏められた考察移動要塞論A~Gはひととおりメモを用意してできるだけ既出の疑問や観点を避けるべく吟味した上で再度議論するのが良いと思います。
冒険風ライダーさんの議論姿勢を問われる方もおられましたがこの件に関しては反対意見を集約する労を惜しんだ懐疑論の方々にも責任はあるでしょう。
どうであれ一人でこと細かく大勢の疑問や異論に応える立場の方の労を斟酌する事は議論をする上で大事だと思います。
挑発が目的で罵詈雑言の泥仕合が希望でしたらまた別の話になりますがその時は何をされても言われても仕掛けた側の発言権は犬に食われて仕方ないと私は思います。
では「有益な方向」でこの再議論が進む事を心より願って以後静観いたします。
> 1.イゼルローン要塞は本当に移動できるか?
> イゼルローン要塞の表面外装は、確か流体金属という設定ですね。いわば、ボールの表面に水が貼り付いている(?)ような状態だと思うのですが、イゼルローン要塞を移動要塞化するときは、当然このボールの部分に航行用エンジンを取り付けることになると思います。
> 流体金属外装にどの程度引力が働いているのかよく分かりませんが、この状態で、表面に水(?)を貼り付けたままボールを動かす(あるいは止める)ことは非常に難しいのではないでしょうか。
> ましてワープなどといった急加速(急減速)を行えば、流体金属の外装だけ通常空間に取り残されてしまうことになると思うのですが・・・。
>
> 2.移動要塞で惑星攻撃はできない?
> アニメ版で、イゼルローン要塞とガイエスブルグ要塞が、お互いの要塞主砲の射程圏内で正対したとき、イゼルローン要塞の流体金属外装が、潮の干満よろしく、ガイエスブルグ要塞側に引っ張られる、というシーンがありました。また、ガイエスブルグ要塞の方も、イゼルローン要塞の重力波の影響を受けているような(確かルッツの)セリフがあったと思います。
> これから考えると、銀英伝に登場する要塞は、実は重力波の干渉に非常に弱いのかもしれません。
> 惑星よりもはるかに小さい要塞の重力波ですら、このような影響を受けるのですから、実際に惑星攻撃を仕掛けようとしたら、要塞主砲の射程に入る前に惑星の重力圏につかまり、惑星に向かって墜落、ということになるのではないでしょうか。
めじろぱーまんさん初めまして。八木と申します。
めじろぱーまんさんが示された1の疑問は、2にも書かれていますが同じ流体金属を持つガイエスブルク要塞が移動要塞化した時点で解決しているのではないでしょうか。
ただ小説版とアニメ版では、イゼルローンの設定が変更されています。外壁面や武装面などは、小説版に準拠しつつ適時アニメ版を持ってくるべきかと。
そこで2の疑問点ですが、引力面が心配や主砲の射程距離が足りないのなら長距離ミサイルでも撃ち込めばすむことです。それか艦隊がいる分、衛生軌道上からの攻撃をさせれば良いのでは。
もっともイゼルローンとガイエスブルクは同サイズでしたが、攻撃を行う惑星は要塞の数十から数百倍です。あのような潮の関係が出来るかどうか判りません。また艦隊が引力に引かれて落下しないため、それ以上の出力を持つ要塞は大丈夫ではないでしょうか。
何にしても小説版とアニメ版の違いが一番のネックかも。
こちらこそ、はじめまして
> 最終的にイゼルローン要塞に篭って、ラインハルトとの決戦を期待するという、100%必敗が予測される他者依存的作戦よりも、移動要塞を活用したほうが、はるかにまし、という話です。
この趨勢が決まっている時点では、どちらも違った意味で困難を極めることだと思います。まず移動要塞の運用方法について論じなければならないでしょう。
短期決戦の場合、要塞が決戦兵器として戦術的に有効か?私の結論は、無効・弱点になるのではと思います。要塞の鉄壁さは回廊という地形上、敵の攻撃方向が特定できるという強みを生かした運用でした。しかし、通常空間ではその利は失われます。その中での戦術的運用は全く無いわけです。例えば防御時での艦隊との連携、多方位からの攻撃に対する防御方法などのノウハウが無いわけです。そのような不確定要素を抱えていては戦術として計算が立たないです。
長期戦については、以前ヤン亡命政権レスと多少関わるでしょうが、二通りの運用が考えられます。
①ヤン達の会話のように放浪し、民主主義を絶やさないよう、広める。②帝国の支配外の可住惑星を発見する旅に出るです。
①について、これは行き先の選択として同盟側方面に行くしかないと思います。その理由として、マキャベリーの言葉を借りるなら「平等のあるところでは君主国は樹立し得ないし、平等の無いところでは共和国は成立し得ない」ということです。これを分かりやすくいえば、人民の政治権力に関心があるか、ないか、という違いからくる大きな問題です。このことからヤン達の行動範囲は大きく限られ、追撃を振りきることはきわめて困難だと考えます。
②は、アーレ・ハイセネン達ほど追い詰められた状況ではない人民たちからすれば、かける確率が大きすぎて、参加人数の大幅な減少は避けられず、それに伴い艦隊・要塞の維持に大きな支障をきたします。また、その問題後も人心掌握の困難さが常に付きまといます。
そして、①②共通の問題として、資金不足、実行の検討・実施時間不足という最大の理由があります。そして、人心掌握の方法として「イゼルローン要塞行政長官」というべき立場のヤンが、民主主義維持のために独裁者とならざる得ない皮肉さ、困難さを考えると実行する可能性は極めて低いのではないでしょうか。
以上のような不確定要素と彼の精神衛生(笑)などの理由から考えなかったもしくは、すぐにその考えを放棄したのではないでしょうか。
ヤンとしては、「ラインハルトは、自分が出れば直接対決に持ち込める」というかなり高い確信のもとに、彼を追い詰め講和に持ちこむという方法がよいと考え行動したのでしょう。
> 逆に、ラインハルトにしてみれば、プライドにかけて数百万の犠牲を払うような艦隊による要塞攻撃よりも、小惑星でもぶつけてイゼルローンを破壊したほうが、はるかに理にかなっているのでないの、という話です。
確かに、そうだと言えるかもしれません。
しかし、これこそがラインハルトの深謀遠慮であったと解釈します。
簡単に述べると「背水の陣」の逆用です。
どういう事かと言うと、イゼルローン陥落後、帝国は幾度となく攻め、多大な犠牲を生みました。それによってヤンは「魔術師ヤン」と呼ばれるほどの名声を得たのは周知のことです。
これによって中央政府、人民がどのような心理状況になったかを検討すれば分かります。それは、
「誰もが不可能と思われたイゼルローン要塞を陥落させたヤン&イゼルロ-ン要塞があれば怖くない」という『慢心』です。
この時点で、ラグナロク作戦の成功が80~90%すると考えても良いでしょう。この慢心があったからこそ、惑星ハイセネン電撃攻略が可能になったといえるのではないでしょうか。ラインハルトがここまで考えてやったのかは定かではありませんが、実際上ではこの通りになってます。
余談ですが、これを防ぐことは可能だったか?点については、普通、「人民が作り出した流れは、その流れが完全に立たれるまで止めることは出来ません」(バブルが好例)。しかし、ヤンが同盟人民に対して演説を行えば、ヤンの名声・権威を考えると可能であったと思います。
>他者依存作戦
戦いとは基本的に相手がいて初めて起こることです。
相手の考えや、周囲の状況を考えて勝利を手繰り寄せるしかありません。ヤンは完全に「他社依存」していないことは分かることだと思います。ましてや、この敗勢の状況の中で逆転の可能性を作るのは、相手が決定的ミスを犯す以外にありえません。その状況を作るべく努力したことはご存知の通りだと思います。
> この点がほとんど論じられないのが、私としても残念ですね。
私もきっちりまとめて論じているわけではないので、恐縮です。
また指摘されて気づくということもありますし。
ということでこのように考えてみました。
きちんとした物理学論に基づく論に、「空想科学読本的」とレッテルすることが罵詈雑言ではないかなあと思ってます。あの本は反論材料としている物理、生物、冶金、そもそもの前提に至るまで間違いだらけの本ですから(笑)。
それと人的資源の部分についてですが・・・本当に只の勇敢な民間人が軍事的行動の補充人員たるなんて考えていませんよね?それに民間から無作為な補充を期待するではスパイ侵入(自発的スパイ含む)が容易となり、かつそれこそ状況に期待する受身的作戦にしか思えないような・・・。
結局はハードウェアスペックあるのみ、容れ物だけによる戦争論だったのですかね・・・。何だかとてもつまらなくなってしまったので、私もここで失礼致します。相手してくださった皆様ありがとうございました。
八木さん、こん××は。
レスくださいましてありがとうございます。
> めじろぱーまんさんが示された1の疑問は、2にも書かれていますが同じ流体金属を持つガイエスブルク要塞が移動要塞化した時点で解決しているのではないでしょうか。
> ただ小説版とアニメ版では、イゼルローンの設定が変更されています。外壁面や武装面などは、小説版に準拠しつつ適時アニメ版を持ってくるべきかと。
3530でS.Kさんにもご指摘いただきましたが、確かに小説版を読み返してみると、共に「鏡面処理された超硬度鋼と結晶繊維とスーパーセラミックとの複合装甲」なんですね。
アニメ版の、イゼルローンは流体金属装甲、ガイエは超硬度鋼装甲、というイメージが強かったので、きちんと確認せずに書き込んでしまいました。申し訳ありません。(おまけに、ガイエの指揮官はルッツでなくケンプだ。はずかし・・・)
> そこで2の疑問点ですが、引力面が心配や主砲の射程距離が足りないのなら長距離ミサイルでも撃ち込めばすむことです。それか艦隊がいる分、衛生軌道上からの攻撃をさせれば良いのでは。
まず、長距離ミサイルは難しいのではないでしょうか。60万キロ(地球と月の距離の約2倍)以上離れたところから惑星に命中させること自体難しそうですし、仮に命中させたとしても大気圏突入時に燃え尽きてしまうような気がします。
また、艦隊を展開すれば、その瞬間から要塞は最大の武器である要塞主砲を封じることになりますので、要塞のアドバンテージは補給線の短さのみということになります。
逆に機動性の悪さや物理攻撃に対する脆さ(第3巻第7章では、工作員が外壁に仕掛けたレーザー水爆で、イゼルローン要塞の外壁に直径2キロの大穴が空けられるシーンがあります)から、要塞陥落という最悪の事態を招くおそれすらあると思います。
> もっともイゼルローンとガイエスブルクは同サイズでしたが、攻撃を行う惑星は要塞の数十から数百倍です。あのような潮の関係が出来るかどうか判りません。また艦隊が引力に引かれて落下しないため、それ以上の出力を持つ要塞は大丈夫ではないでしょうか。
ガイエスブルグは月の約10万分の一の質量しかないのに、約60万キロ(地球と月の距離の約2倍)離れているイゼルローンは重力波の影響を受けています。
小説版でも、ガイエスブルグは最後の特攻シーンまで、この60万キロより近づこうとしなかったことを考えると、これ以上近づくと相手の重力波の影響を受けてしまう、とも仮定できるのではないでしょうか。
となると、月の約100倍の質量を持つ地球クラスの惑星からは、かなり離れた距離でも相当の影響を受けてしまうことになると思います。
数百万キロの高度から、惑星に向かって落ちてくる要塞・・・これはこれでまた恐ろしいかも。
> 何にしても小説版とアニメ版の違いが一番のネックかも。
今読み返していて気付いたのですが、イゼルローン要塞の引力は要塞の自転で生じさせ、外壁から10キロの高度まで引力圏が及ぶ、という記述があります。
要塞の自転で引力を生じさせているってことは、いわば遠心力を使っているってことですよね?それなのに、外壁から10キロの高度まで引力が及ぶってどういうことなんでしょう???
いや、この記述をみつけたとき、「そうか、イゼルローン要塞は自転しているから、航行用エンジンを取り付けられないんだ!」とも思ったのですが、そうすると要塞主砲ってどのようにして照準を合わせたり、発射したりするんだろうと、ますます分からなくなりました。(^_^;)
> 以上のことは私達の世界での物理法則をもとに考察しています。
> 作者もこの法則をもとに書いていると考えるべきでしょう(笑)
> 不沈戦艦さんへ いくらなんでもファンタジーは飛躍のし過ぎではないでしょうか、あれでは観察中さんも閉口せざるおえないと思います。(苦笑)
いいんですよ、「閉口」してくれれば。「冒険風ライダー氏の論と、それに対する『反論』は、前提条件がまるで違うにもかかわらず、『反論』した気分になっても無意味だし無価値だ」と、私は言っているんですから。
「剣と魔法のファンタジー」扱いするのが気に入らない、というのであるなら、「星界の紋章」でも思い浮かべて下さいよ。あの作品では、「平面宇宙」なる概念を導入することで、時間を費やさない空間跳躍を可能である、ということにしています。その「平面宇宙」内の戦闘について、「星界の紋章」の設定をベースにして、戦術やら戦略に対して批判を加えているところに、「平面宇宙など既存の物理法則に則ったものではないから、そのような批判は無意味だ」なんて噛みついたところで、何の意味もないでしょうに。
あなたたちのように、冒険風ライダー氏に対して、「既存の科学技術や物理法則の観念からして、冒険風ライダー氏の論は間違っている」と言い張っている人たちがやっていることは、それと同じことです。
もちろん、何度も言っているように、「移動要塞」に関して、「既存の科学技術や物理法則を前提にして、可能だ不可能だと議論をすること」を、私は否定している訳ではありません。そんなことをやっても、「作品世界の設定を前提条件にしている」冒険風ライダー氏の議論に対する反論には、全くなってはいない、と言っているんです。「空想科学読本的ツッコミ」とは、そういう意味でいっている訳で、その言葉だけを取り上げて罵詈雑言だの何だのと考えるというのも、それもずれまくった感性だとしか言いようがありませんね。
<まず、「バサード・ラム・ジェット」エンジンですが、確かに、実現すれば宇宙空間自体から燃料補給を受けられる、画期的なシステムです。ただし、現実世界で論じられるバサード・ラム・ジェットも、銀英伝世界で実現されているものも、超光速を出すことはできません。あくまでも光速に近づける、だけです。そして、銀英伝世界では、移動要塞で敵の基地を攻撃してまわるにせよ、民主政治の種を植えて回るにせよ、数千光年にわたる活動範囲を要求されますので、バサード・ラム・ジェットを、推進力に使うことはできないでしょう。>
これに関しては、前の投稿でも述べた「銀英伝世界における作中キャラクター達が、補給事情が切羽詰っていた時でさえ『宇宙艦船の燃費の問題』を全くと言っても良いほど問題視していない」を前提として述べています。これは当然、通常航行用エンジンはもちろんのこと、ワープエンジンについても「燃費の問題」は全く考える必要がないことを意味します。
バザード・ラム・ジェット・エンジンを例に取り上げたのは、銀英伝世界にはバザード・ラム・ジェット・エンジンに見られるような「宇宙空間自体から燃料補給を受けられる、画期的なシステム」なるものが他にも存在しており、それは当然、前述の「宇宙艦船の燃費の問題」を考慮すれば当然ワープエンジンにも搭載されているであろう、という意味も含めて提示することが目的だったわけです。だからこれはバザード・ラム・ジェット・エンジン「だけ」の問題ではないのです。
何度も繰り返し述べますが、「アレほどまでに補給が重んじられる」銀英伝世界で「宇宙艦船の燃費の問題」が作中キャラクターの誰にも全く触れられていないという「作中事実」の重大性をもう少し考えてみるべきでしょう。
<次に、イオン・ファゼカスや、その後継たる80隻の宇宙船ですが、確かにまともな補給を受けることなく、イゼルローン回廊を越えて、バーラト星系まで至ったわけですから、銀英伝世界の艦船が無補給で長期間移動できることの、有力な根拠たりえます。
ただ、私は「長征一万光年」が、ヤンやラインハルトからみて、3世紀も昔の話であることを指摘したいと思います。アーレ・ハイネセンの時代には、ヤンやラインハルトの時代よりも、はるかに優れた宇宙船製造技術が存在し、それは逃亡奴隷にすら容易に入手できるほどありふれたものだったが、その後技術が失われたので、ヤンやラインハルトの時代には適用できない・・・。そう述べても、銀英伝の記述と直接矛盾するわけではないでしょう。>
残念ですが、その説明でも矛盾はします。前の投稿でも述べた「『ヤンやラインハルトの時代』における作中キャラクター達が、補給事情が切羽詰っていた時でさえ『宇宙艦船の燃費の問題』を全くと言っても良いほど問題視していない」という「作中事実」が厳然と存在するのですから、「長征一万光年」時代の燃料事情は、当然ヤンやラインハルトの時代にも立派に当てはまります。
それに、宇宙艦船に燃費の問題が全くと言っても良いほど存在しないのであれば、質量をいくら巨大化させようが燃費の問題が出現することはありえないでしょう。エンジンを大きくしたり、出力を引き上げたりとかは当然しなければならないでしょうが、燃費の問題に関しては宇宙艦船のケースと全く同じものが当てはめられるのではありませんか? 仮に銀英伝世界に燃費の問題が存在したとしても、宇宙艦船の燃費事情が全く問題になっていないほどに小さなものなのであれば、掛ける係数自体が恐ろしく小さなものとならざるをえないのですから、仮に宇宙艦船の100万倍の燃料を消費したとしても、それは相も変わらず(すくなくとも移動要塞を揺るがすようなことはない)小さな数値にしかなりえないのではないでしょうか。にもかかわらず、銀英伝世界における宇宙艦船に存在しない燃費の問題が、移動要塞の場合にのみ深刻な問題として浮上するという理論は、ちょっと私には理解できません。
それに、もし万が一Kenさんの主張される「要塞が移動する際には、通常よりもはるかに膨大なエネルギーを消耗する」が正しいのであれば、そもそもガイエスブルク移動要塞改造の際にその「燃費の問題」が大々的にクローズアップされていなければならないのではありませんか? 何しろ前述のように、「アレほどまでに補給が重んじられる」銀英伝世界で「宇宙艦船の燃費の問題」が作中キャラクターの誰にも論じられていないほどに問題視されていないのですから、急に移動要塞の燃費問題が浮上したりすれば、それはエンジン同期の問題と並んで無視できない課題として取り上げられなければならないはずです。移動要塞を動かす「だけ」のために、わざわざ大規模な「燃料補給」のための手配をしたりしなければならないのですから、これは当然のことでしょう。
ところが、移動要塞を提唱していたシャフトも「移動要塞の燃費問題」については全く問題視することもなく、ラインハルトもまた、シャフトに対して燃費問題について問いかけるといった行動を全く取っておりません。もちろん地の文も、移動要塞の問題としてひたすら語っているのは「エンジン同期の問題」だけで、「移動要塞の燃費問題」などは微塵も触れられてさえおりません。
さらにガイエスブルク移動要塞は、1月下旬頃のラインハルトの命令から4月10日頃にイゼルローン要塞と対峙するまでに、本来ガイエスブルク要塞が置かれていた宙域→ヴァルハラ星系外縁部→イゼルローン要塞前面へと移動を重ねており、Kenさんの主張に従えば明らかに燃料の壮大な無駄遣いをしているはずですし、「燃費の問題」もこの時点で判明しているはずですが、シャフトもラインハルトもそれを全く問題視している様子がありません。もし移動要塞の燃費が著しく悪いというのであれば、この時点で「エンジン同期よりも深刻な移動要塞の問題点」として大々的にクローズアップされなければならないのではありませんか? ましてや「アレほどまでに補給を重要視する」ラインハルトであればなおのことです。
ガイエスブルク移動要塞に関してもかくのごとく「燃費の問題」が全く語られていないのであれば(何度も言いますが「アレほどまでに補給が重んじられる」銀英伝世界においてですよ?)、結局これに関しても「宇宙艦船の燃費の問題」と同じく「移動要塞の燃費の問題も全く考慮する必要はない」と結論してかまわないでしょう。
結局、「ヤンやラインハルトの時代」においても、燃料問題に関しては「長征一万光年」と全く同じ論理が適用できるわけで、Kenさんの主張は、すくなくとも移動要塞に関しては全く当てはまらないのではないでしょうか。
それこそあのですね・・・・・・と言えますね。
銀英世界は別に現代物理学から逸脱した世界ではないでしょう。
兵器群は根拠の無い魔法兵器ではありませんし、核融合も既存理論には存在します。跳躍航法はSFでは珍しくありませんし、現代物理も否定している訳ではないですよ。
前提が違うと言うのもおかしいですね。前提が正しいかどうかを観察中・・・さんは考察していた訳ですから。
それを否定する論拠として全く違う世界を挙げる方が、余程おかしな事でしょう。銀英世界で平面宇宙は語られていませんよ。
銀英世界でもニュートン力学や相対性理論は姿を見せていますし、宇宙の構造が違うだの惑星や恒星は全く違う法則で成り立っているとは表現されていません。むしろその辺りは現在の常識で成立していると思えます。
一貫したテーマとして補給、修復や人材の大切さが描かれているのですし、無限無補給という言葉に異議が唱えられるのはむしろ当然ではないでしょうか。
あなたの意見は「自分の信じる理論が絶対正義。自分が気に入らない意見は言うな。都合が悪いのはファンタジーだ。物理が違うんだ」と言ってるようにしか見えません。立場こそ逆ですが某柳田氏にそっくりと映ります。余程空想科学読本的です。自己正義を押し通すために都合良く他作品をむしり取ってくる態度は、むしろあなたのような方が支持する側を侮辱するだけでしょう。
論点を捻じ曲げて自分が気に入らないものを排除する意見が出てくる場だとは思ってませんでした。それでは、さようなら。どうぞお望みどおりの反論者のいない世界を満喫してください。
> それこそあのですね・・・・・・と言えますね。
> 銀英世界は別に現代物理学から逸脱した世界ではないでしょう。
> 兵器群は根拠の無い魔法兵器ではありませんし、核融合も既存理論には存在します。跳躍航法はSFでは珍しくありませんし、現代物理も否定している訳ではないですよ。
> 前提が違うと言うのもおかしいですね。前提が正しいかどうかを観察中・・・さんは考察していた訳ですから。
> それを否定する論拠として全く違う世界を挙げる方が、余程おかしな事でしょう。銀英世界で平面宇宙は語られていませんよ。
> 銀英世界でもニュートン力学や相対性理論は姿を見せていますし、宇宙の構造が違うだの惑星や恒星は全く違う法則で成り立っているとは表現されていません。むしろその辺りは現在の常識で成立していると思えます。
> 一貫したテーマとして補給、修復や人材の大切さが描かれているのですし、無限無補給という言葉に異議が唱えられるのはむしろ当然ではないでしょうか。
銀英伝が「科学理論的に問題が多い」なんてことは、今更言うまでもなく、何度もここで議論されてることでしょうに。その「科学理論的に問題が多い」世界を前提にして、銀英伝は成り立っている訳ですよね。そこで「銀英伝世界の作中設定を『事実』とした上で・・・・」と断ってやっている議論に対し、「科学理論としては問題が多いじゃないか!」なんていったところで、何の意味もないでしょう。それでは、そもそも「科学理論的に問題が多い」銀英伝の存在そのものすら、否定してしまっていることになるではないですか。私は、「科学理論ベースで、冒険風ライダー氏の意見を批判することは、議論として全く噛み合ってないので無意味」と、それを理解できずに延々と続けようとしている方々に、忠告しているだけですよ。何でまたここまで、「銀英伝には何が何でも既存の科学理論を適用しなければならないんだ!」という信念を、捨てることができないんですかねぇ。
「論点を捻じ曲げて自分が気に入らないものを排除する意見」という言葉は、そっくりあなたにお返しいたします。
何だかいつの間にか、「空想科学読本的」って表現が、「悪いイメージを与えようとレッテル貼りしている」と、解釈されているようですけど、それこそとんでもありませんよ。
そもそも、「空想科学読本」ってのは、「設定がトンデモ」な作品に、「科学的なツッコミを入れ、笑いを取ろう」って代物でしょ。ここで私は、冒険風ライダー氏の「銀英伝世界をベースにした議論」に対して、「空想科学読本的ツッコミを入れている」と言っている訳ですから、「トンデモな設定」というのは、冒険風ライダー氏が主張している「銀英伝世界の設定」に他なりませんよ。「移動要塞論」なんぞ、「トンデモな設定から出てきた、トンデモない結論」以外の何でもないんです。
ですがね、冒険風ライダー氏は、それは最初から承知の上で「トンデモ世界のトンデモ設定を突き詰めていくと、こうなるはず」と言っている訳です。それに対して、「そんなトンデモな設定は認めない!存在する訳がない!!」と言い張ってるばかりでしょ。「そんなトンデモな設定は存在しない」なんて現実は、冒険風ライダー氏も私も、否定しやしませんよ。
「トンデモな設定」に対して「それはトンデモだから駄目」と言うことは、「空想科学読本的」とでも評するしかないじゃないですか。「空想科学読本的」という表現は、悪い意味で使っているんじゃありませんよ。むしろ、「トンデモ設定にツッコミを入れる、正義の立場」のつもりで使っているんです。「トンデモ」なことをやっているのは、明らかに冒険風ライダー氏の方なんですから。それなのに、「悪のレッテル貼りをやろうとしている」扱いされるってのも、どうも理解できませんね。「トンデモ」な設定を前提にして、「トンデモ」な議論をやっているんですから、「トンデモ」な設定より科学理論を優先してしまうと、何の意味もなくなってしまうということを、いい加減理解して下さいや。
どうも皆さん。八木でございます。
議論が盛り上がっていますね。やはりタナ撃つはこうでなければなりません。これでなければ初レス以来、試験勉強そっちのけでタナ撃つ向けのレスを考えていた私がうかばれません。(^^;)
冒険風ライダーさんには、丁寧なレスをありがとうございます。私の文章は、誤字が多くお目を汚しました。
Kenさんへ燃料問題について返答をされていましたが、銀英伝世界の宇宙艦船の燃料事情には冒険風ライダーさんの説に賛成します。私の考えとほぼ同じですね。私は未来世界の核融合だから、無限のエネルギーなんだろうと普通に思っていましたが(笑)。
冒険風ライダーさんは、ライダーさんの考える銀英伝世界観の範囲で理路整然として説を主張されています。私も私なりに銀英伝世界観を自分なりに解釈(空想ともいう)してお答えします。
< 確かにアニメ版のガルミッシュ要塞は八木さんが仰る通りの形状をしているのですけど……。この場合はどちらの設定を重んじれば良いのでしょうね?>
はい。アニメ版を優先するべきです。別に私の主張だからではないですよ(笑)。理由はアニメ版の方が、原作小説よりも後だからです。それにアニメも「原作田中芳樹」であり、田中芳樹がその設定に反論しない以上、後からの方が強いです。
またアニメ版銀英伝で艦艇や要塞などのメカニック部分を造ったのは、スタジオぬえの加藤直之です。2巻でガルミッシュ要塞の挿絵を描いた加藤直之が、アニメで新しくガルミッシュ要塞を作り直したのであれば、アニメ版を優先していいと思います。
とここまで書きましたが、別にどちらでもいいですよ(笑)。原作とアニメのどちらを優先させるべきかは、ケースバイケースですね。
もし私たちが銀英伝世界の星間地図を思い浮かべるとすれば、アニメやゲームを知っている人は、まずそれに出てきた星間地図を思い浮かべるでしょう。それはアニメ版で原作小説にない部分を補完できるからです。本筋とさほど関係がないかぎりは、各人が決めればいいと思います。
< いや、たとえこれでも立派に役には立つのではないですか? すくなくとも3000隻分の艦船と人員の補給をまかなうことはできるのですし、「ゲリラ戦に使える」という用途も相変わらず存在するのですから。
いっそのこと、この手の小規模要塞を「移動する後方補給基地」として大量に活用して補給事情を一気に解消してしまうという手もできなくはないでしょう。ラインハルトは門閥貴族から没収した豊かな財源があるのですし、要塞改造という「公共事業」を大々的に展開することによって「平民向けの景気対策」とすることだって可能です。
これが「銀英伝の戦争概念を覆す」ことはまず間違いありません。>
帝国内戦でブラウンシュヴァイク公が、ガイエスブクルへの航路に9ヶ所の軍事拠点を設けようとしました。このことからレンテンベルク・ガルミッシュを除き、最低でもあと7個は何らかの要塞があると推測できます。とすると1個か2個は球体要塞がありそうだなぁ。
う~ん難しい。でも銀英伝開始時の銀河帝国全要塞で球体型は、イゼルローンとガイエスブルクだけだったと仮定させてください(笑)。一応理由付けとしては、トゥールハンマー、ガイエスハーケン級のエネルギー集束型要塞主砲を装備するには球体でないと駄目だった。(^^;)
え、駄目? いやいや銀英伝の原作に他の要塞が出てこない限り、私の想像を否定できませんよ(笑)。
それでは帝国軍は、なぜ球体型小型要塞を大量に造り移動型補給基地としなかったのか?
それは要塞を造るための生産ラインが無かったからだと思います。なぜかと言うと、帝国が最後に造ったと思える要塞はイゼルローンだからです。難攻不落の要塞を造り、帝国本土への叛乱軍の侵攻がまず不可能になれば、国内守備用に新たな要塞を造る必然性もなく、ガイエスブルク・レンテンベルク・ガルミッシュなどの既存要塞だけで十分だからです。それならば、要塞生産ラインがあったとしても、艦艇生産ラインに変更するでしょう。
イゼルローン要塞建設から早30年余。当時の要塞建設を行った技術者たちも、すでに第1線を退き隠居しています。多分、「俺たちが造った要塞をよくも奪いやがってこの叛乱軍ども」とでも庭先で茶をすすりながら思っていそうです(笑)。
またガイエスブルク要塞を移動要塞化したとき、数万人の工員動員していましたが、要塞建設には全く足りないでしょう。ガイエスブルクに既存の12個のエンジンを取り付けるだけで、それだけの工員を必要としたとなら、要塞建設には少なくともその10倍から50倍の工員が必要でしょう。厳格な身分制を引いていると思われる銀河帝国では、軍艦建造などに従事できる工員をすぐさま増員できるとはとても思えません。そもそも軍事国家でもある銀河帝国では、工員・技術者は民間よりも軍の方が多そうです。もはや増員しようがありません。
「しかし大型要塞はともかく小型要塞なら建設できるだろう」 この疑問にも答えがあります。
艦隊の再建のため、新艦隊の編成のため、帝国の軍事工場ではせっせせっせと軍艦を造っており、とても小型要塞などを造る余力がなかったからです。
銀英伝2巻の終了時点において、帝国軍の正規編成の艦隊はどれだけあったでしょうか? ラインハルト・ミッターマイヤー・ロイエンタール・ケンプ・ルッツ・ワーレン・メックリンガー・ビッテンフェルト・ミュラー・ケスラーぐらいですか。シュタインメッツは半個艦隊未満ですね。
そしてほぼ1年後のラグナロック作戦時の帝国正規艦隊です。
フェザーン侵攻軍=ラインハルト・ミッターマイヤー・ミュラー・シュタインメッツ・ワーレン5個艦隊
予備兵力=ビッテンフェルト・ファーレンハイト2個艦隊
イゼルローン方面軍=ロイエンタール・ルッツ・レンネンカンプ3個艦隊。
本国兵力=メックリンガー・ケスラー・アイゼナッハ3個艦隊
帝国軍は要塞決戦で1個艦隊を失いないました。しかしそのミュラー艦隊は半年後には再建されました。
また新たにシュタインメッツ艦隊が正規編成になり、さらにファーレンハイト・レンネンカンプ・アイゼナッハの3個艦隊が新設されています。半年~1年で帝国軍は、7万隻余の新造艦で5個艦隊を再建・編成しました。さらにリップシュタット戦役では、国内全艦隊が動員され各艦隊がそれなりの損害を受けています。貴族連合軍の降伏した艦での補充以外にも、新造艦がさらに1万隻近くは必要だと思います。
同盟軍が約1年の間に、要塞決戦後のヤン艦隊の補充、第14・15艦隊の新設で、約2万5000隻の新造艦建設だったことを考えると、帝国軍は同盟の3倍以上である約8万隻の新造艦を造っています。
帝国と同盟の国力は、アスターテ会戦時では6:5でした。艦艇建造のレベルも似たようなものでしょう。しかし同盟はアムリッツア敗戦で社会体制がガタガタになりました。それに対して帝国は内戦が起こったものの社会体制はどうにか現状維持を守りました。しかも内戦の勝利で貴族財産を奪ったことで、財政赤字が解消され社会インフラの整備に資金を回せるようになりました。だからといって、早急にインフラ整備資金や軍事費の増加で、すぐさま新しい軍事工場が次々と出来るわけはありません。これまでの工場をフル稼働させはじめたのでしょう。帝国の急速な艦艇建造は、資金が出来たのことで資金難から動かせなかった生産ラインが可動しはじめた結果だと思っています。もともと艦艇生産ラインだから、要塞は無理だった。それに帝国軍の艦隊編成要求を満たすためには、他のことをやるだけの時間も手間もなかった。
え~、ちなみに5巻のバーラトの和約以降ですが、この後も要塞の建設は無理です。
同盟軍のヤン艦隊の手によって大損害を被った艦隊の再建がまっているからです。シュタインメッツ艦隊・レンネンカンプ艦隊・ワーレン艦隊・ミュラー艦隊・ラインハルト直属艦隊の5個艦隊。またランテマリオ会戦でも一番被害を受けたビッテンフェルト艦隊を始めとして、全ての艦隊が大小の損害を負っています。造ったそばから破壊されてはキリがありません。
ラグナロック作戦前に1年間で5個艦隊相当の艦艇を建造したのに、またも5個艦隊相当の艦艇を建造するはめになった帝国軍事工場。2年近くも休日返上で働かせられる工員たちの涙と苦しみは、如何ほどだったでしょうか。(T T)
と言うわけで、帝国の軍事工場は常に艦艇を建造せざるを得ず、要塞を造るだけの余力は全くなかったと私は確信しています。
これが帝国軍が移動要塞を造れなかった真相なのです。(人物面の理由ではなく、国内設定面での理由ね) 軍事工場に余力が出来たときには戦争は終結し、移動要塞は無用になっているでしょう。
< 前にも引用しましたが、銀英伝外伝2巻P41の記述によると、イゼルローン要塞は4年ほどで建造できたようですので、豊かな財源を持つラインハルト政権が、大規模な公共事業として複数の要塞を一度に建造させてしまえば、遅くとも5年以内には5~10前後のイゼルローンクラスの要塞を建造することも不可能ではないのではないでしょうか。それこそイゼルローン要塞の設計図でも使って同一規格の要塞でも建造してしまえば良いわけで。あるいは前述のように、小規模の「移動する後方補給基地」を大量に建造するという手段も考えられます。兵器も水準レベルの武装でも搭載させておけば、ある程度は敵の奇襲などにも対抗できるでしょうし。
まあこれでも銀英伝のストーリー展開に追いつくのは難しいでしょうが、すくなくとも長期的視野に基づいてこのような計画を検討するなり発動させるなりくらいは、ラインハルトも絶対やるべきだったのではないかと思うのですけど。>
イゼルローン要塞の建設期間は、私の思い違いでした。頭の中では20年ぐらいかかったと思いこんでいまして……。きちんと確認をするべきでした。ここは全面的に私の間違いです。m(_ _)m
要塞建設部分は、上記の私のレスが回答となります。大規模も小規模も長期的にも短期的にも工場には造る余裕はありません。指示をしたところで、「艦艇建造が大幅に遅れますよ」と回答されて、指示を撤回するしかないでしょう。
もし要塞建設を強行すれば、今度は艦艇が不足するため、アイゼナッハやシュタインメッツあたりは正規艦隊を編成できなくて活躍の機会がなかったかも(笑)。
< ただ、八木さんの主張では言及されていないのですが、「シャフトに移動要塞論を提唱された時点で、本来軍事的天才であるはずのラインハルトはその大いなる可能性に気づくべきだった」に関してはいかにお考えでしょうか? もしラインハルトがこれに気づいていれば、そもそも「貴重なガイエスブルク移動要塞が、あんな無意味な戦いで優秀な人材共々無為に失われること」自体が未然に防止できたのではないかと思うのですけど。>
確かにラインハルト・フォン・ローエングラムは、戦争の天才です。一瞬のことから、軍事に関しては何でもすぐに見抜くかも知れません。しかしここで考えてもらいたいのは、ラインハルトという人物についてです。冒険風ライダーさんや他の皆さんもラインハルトの性格・態度が、実はおかしいことを何度も主張されております。いわゆる「皇帝失格」だと。例えば、イゼルローン要塞に籠もるヤン一党を倒すべく大艦隊をもって回廊内で闘い、数百万将兵を無駄に殺しました。全てはラインハルトの戦争したい病のためです。第2次ラグナロック作戦時のマル・アデッタ星域の同盟艦隊も無視して良かったはずです。そして第1次ラグナロック作戦でも、ヤン艦隊を放っておいて首都ハイネセンを真っ直ぐ突けば、ラインハルト直属艦隊とミュラー艦隊将兵の7割近くが死なずにすんだかもしれません。
このように政治的に解決出来ること判りつつ、敢えて軍事的に解決しようとして死者を大量生産したのがラインハルトです。自分の戦争したい病が満足できれば、将兵がいくら死んでも「後で」後悔すればいいのです。
しかしこれは仕方がないことです。ラインハルトは戦争の天才であると同時に、「軍事的ロマンチシズム」の塊なのですから。キルヒアイスが死んでから、この「軍事的ロマンチシズム」を止めることが出来る人物がいなくなりました。ラインハルトを敵対視していたフレーゲル男爵が、「帝国貴族の滅びの美学」を完成させようとしたように、ラインハルトも常に自分の戦争美学を追求しているのです。常に戦争で競いたい、より強い敵と戦いたい、美しく敵に勝利したい、などなど。だからこそラインハルトは、ヤン・ウェンリーに「いっそ5個艦隊でも与えてみたいものだな」と、のたまえるのです。
バーミリオン会戦で敢えて1個艦隊対1個艦隊の会戦を挑んだのは、ヤンのような強大な敵とは互角の条件で戦ってみたいという、ラインハルトの願望が戦略・戦術の枠を超えたからでしょう。
軍事的ロマンチシズムで艦隊決戦至上主義者のラインハルトには、移動要塞に確かに戦略性(戦術性は護衛艦隊がないとどうしようもないから駄目)を感じたとしても、むしろ大艦巨砲主義の権化のように見えたのではないでしょうか。自由惑星同盟には要塞がなく(イゼルローンは除く)はなく、無理に使ったところで自意識は満足しません。本人が移動要塞に乗って戦うのはより我慢ならないでしょう。補給面での戦略性も、今まで通りの補給艦による計画の方が「より」美しいではないですか。
もともと移動要塞など無くても同盟は勝てる相手です。相手が移動要塞を持たない限りは、ラインハルトは移動要塞を使う気にはならなかったのでしょう。
実はもう一つ考えがあります。こちらの方が激情家のラインハルトらしいかな。
自らの半身が死んだガイエスブルク要塞、自分から半身を奪ったガイエスブルク要塞。そのようなものは、この宇宙から消えてしまえばいい……。
この考えに支配されたのなら、出来たてほやほやの移動要塞をすぐに運用したのも、ぶつけてしまえと言ったのも納得できます。もしイゼルローンを奪えば、そこにガイエスブルクを置きっぱなしにしておくことで自身の眼に2度と触れることもありません。本人はフェザーンに行くのですから。
とここまで書きましたが、実はラインハルトがどう考えたのかはさっぱり解りません。上記の2つも帯に短し、たすきに長しというところですし。原作の通り、ラインハルトにとって同盟への嫌がらせ程度に考えて出兵したのかな。
今回はここまで。長々と失礼しました。
冒険風ライダーさん、
再び、丁寧な回答をいただきありがとうございます。
レスを返す前に、2つの点を明らかにしておきたいと思います。
1.一つ目は、冒険風ライダーさんのスタンスに関する確認です。ライダーさんは、移動要塞を使用できる「可能性がある」と言われているのではなく、「絶対に使用できる」、言い換えれば「使用できないという可能性はない」と言われていると、考えてよろしいでしょうか?したがって、論争相手に求めるのは、「使用できないことを証明する」ことではなく、「使用できる、という理論に穴を開けること」、言い換えれば、「できるかできないか分からない」という結論へもってゆくことだと?
2.次は、銀英伝世界の設定に関する私自身のスタンスです。私は、銀英伝は、私たちの世界と同じ物理法則が成立する世界として捉えています。「ロード・オブ・ザ・リングス」で描かれるような完全な架空世界でも、「スターウォーズ」の冒頭に現れる「大昔の銀河系、すごく遠いところ」でもありません。私たちの歴史を1600年延長しただけの、宇宙規模では「近未来」に属する世界です。不沈戦艦さんは、銀英伝世界がファンタジーであることの理由として、ワープ航法を挙げられましたが、それだけでは根拠が弱いと、私は思います。そもそも、現代物理は、例えば永久機関を否定するのと同列に、超光速飛行を否定しているわけではありません。相対論は、私たちが高校で教わる「f=ma」つまり物体を押したり引いたりして加速していっても、光速に達することはできない、といっているだけです。
以上の前提をおいた上で、「移動要塞は使えないかもしれない」と考える論拠を述べてみます。
これまでの議論で、私が「要塞の移動には艦船よりも大きなエネルギーを費消する」と言ったことに対し、冒険風ライダーさんが「銀英伝は、宇宙艦船を動かすエネルギーは、問題にならない世界である」と回答されました。根拠とされたのは、「補給を重要視する登場人物が、艦船のエネルギーには言及しない」という点です。ライダーさんはそこから展開し、艦船も要塞も同種のエンジンを使用するから、艦船で成り立つことは要塞にも成り立つ、と言われていると思います。
これに対して、私はやはり、「艦船と要塞とでは質量が異なる」というこれまでの主張にこだわりたいと思います。小質量の物体に関して成り立つことでも、大質量の物体には通用しない、というケースは現実にあるからです。
奇しくも、ライダーさんを含む数名の方が持ち出した「バサード・ラム・ジェット」もその例です。ご存知の通り、これは宇宙船が宇宙空間を進むことで途上の星間物質をすくい取り、それを新たな推進燃料とするものです。問題は、観察中さんが挙げておられるとおり、星間物質の分布密度です。加速対象の物体が大質量であるほど、必要な量の星間物質を確保するのに、より広範囲からすくい取らねばならず、すくい取るためのエネルギーと、すくい取った星間物質から得られるエネルギーが、どこかでかならずクロスします。そのクロスポイントが、宇宙船よりは大きく要塞よりは小さい「どこか」にあれば、艦船の補給を心配する必要がなくても、要塞は事情が異なる、という結論になります。
しかし、ガイエスブルグは宇宙を航行しました。上で述べた理論が正しければ、ガイエスブルグは、燃料を宇宙空間から取り込むのではなく、自分で持っていたことになります。つまり帝国軍はガイエスブルグを補給基地に寄港させて、燃料を入れねばなりません。その燃料が、非常に膨大なもの、あるいは非常に高価なものであれば、ライダーさんが指摘されるとおり、ラインハルトたちが問題にするはずだし、わざわざオーディンまで「寄り道」をさせるのは愚かな行為で、まっすぐにイゼルローン回廊をめざすべきです。
しかし、もう一つの可能性があります。燃料は豊富にあり高価でもないが、ガイエスブルグの積載能力に限界がある、というものです。つまり、燃料補給は簡単ですが、「こまめに」せねばなりません。そしてひとたび帝国本土を離れ、イゼルローン回廊や同盟領へ乗り込むと補給を受けられないので、満タン燃料で航行できる距離を航行したら、そこまでです。その距離が、イゼルローン要塞までの距離よりは大きく、ランテマリオ星域までよりは小さければ、イゼルローン攻略に投入した要塞を、ラグナロックでは使用できなかった理由になります。
ヤンに関していえば、そもそもイゼルローン「移動」要塞に補給をしてくれる基地が存在しません。
以上をもって、「移動要塞が使用できるとはいいきれない」と考える論拠とさせていただきます。
今回の私の発言は以上です。