ここ2~3週間ほど、仕事が多忙につき、投稿が遅れてしまって申し訳ありません。
今更ながら私からのレスです。
>平松さん
<ラインハルトが「戦争の天才」と呼ばれ、それに相応しい能力と業績を示したのは紛れもない作中事実ですが、
「ラインハルトは事前に移動要塞のエンジンの脆弱性を見抜けなかった。あるいは見抜いていたとしても、その点をシャフトやケンプ、ミュラーらに対し指摘しなかった」
「ラインハルトはケンプやミュラーに対し、移動要塞を質量兵器として用いる事を当初から指示しなかった」
という移動要塞作戦時におけるラインハルトの不手際もまた、歴然たる作中事実です。
この二つの作中事実を矛盾なく並存させるため、
「ラインハルトという天才もまた、正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観から完全には逃れ得ていなかったが、それはラインハルトの天才性を全否定するものではないと、銀英伝世界では認識されている」と自分は結論付けたわけです。現実世界でも、歴史上「名将」「名政治家」「天才」と呼ばれる人間たちが、とんでもない失敗、誤断、見落としをしでかした事例など、探せばいくらでもありますしね。
それゆえ、「正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観」から完全には逃れられなかったラインハルトが「移動要塞の火力と装甲」を持ってすれば、要塞には簡単に接近出来るだろう」と考えてしまったとしても、それはラインハルトに対する批判材料にはなり得ても、彼の作中における天才性やキャラクター(および作品)設定を否定する要素にはなり得ない、というのが自分の見解です。>
だからですね、その結論では結局「(ヤンやラインハルトは愚か者であるという)私の主張を全面的に受け入れた上での『開き直り』の類にしかなっていない」というのですよ。第一、銀英伝の作中で行われたような「移動要塞の火力と装甲をもって要塞に対抗する」にせよ、小惑星特攻や質量弾攻撃を行うにせよ、どちらも「静止要塞に近づかなければならない」という命題は変わることがないのですし、何度も言うように、もしその段階で平松さんが仰るような懸念材料があるのであれば、それは「エンジン同期の問題」と同じかそれ以上に対策が検討されていなければならない問題なのです。それすらも全く行っていなかった時点で、ラインハルトは軍事的天才としてあるまじき失態を犯していると言わざるをえません。
しかも、「エンジン同期の問題」に関しては、すくなくともラインハルトにとってはある意味専門外な問題だと言い訳することもできますが、「静止要塞に近づけるか否か」の問題はラインハルトが専門かつ得意分野とする「用兵」のカテゴリーに属するものです。これってむしろ「正統派の用兵家」とやらの方が真っ先に気づきそうなものですし、仮にも「戦争の天才」と呼ばれているラインハルトであれば【なおのこと】、「正統派の用兵家」以上に早く気づき、かつ対策を練らなければならない事項であるはずでしょう。
そんな懸念材料について何も考えることなく、「先入観」だの「固定観念」だので「移動要塞は静止要塞に簡単に接近できるだろう」と何の根拠もなしに楽観的かつ大甘な皮算用でもって作戦を立てるような行為は、かつて救国軍事会議の面々が「アルテミスの首飾り」に対して抱いていたような「ハードウェア信仰」と似たり寄ったりなシロモノでしかないではありませんか。銀英伝という作品でほとんど全否定的に扱われているそんな発想法が「彼の作中における天才性やキャラクター(および作品)設定を否定する要素にはなり得ない」などというのは、相当なまでに作品の世界観およびキャラクター設定を侮辱かつ蹂躙する行為であるとは言えませんかね?
第一、ラインハルトはイゼルローン要塞に対して、平松さんが仰っているような「正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観」など抱いていないことは作中でも明記されているのですけどね↓
銀英伝外伝3巻 P217下段~P218上段
<ラインハルトは部隊をひきいて、イゼルローンへ帰投しつつあった。出撃した全帝国軍が収容をすませるまで、彼と部下たちは、四日半を要塞外で待機させられた。勇戦の、これが報酬であり、彼に対する総司令官の評価のほどがうかがえた。
「雷神のハンマーという、巨人的なハードウェアに頼っただけのことではないか。そんな安っぽい勝利の、どこが嬉しい」
自分がイゼルローン要塞駐留艦隊司令官であったら、「雷神のハンマー」など使用することなく、同盟軍と誇称する叛乱軍を蹴散らしていたのに、と思う。>
つまり、イゼルローン要塞の「巨人的なハードウェア」要素に関しては、ラインハルトもまたヤンと似たり拠ったりな考えを有していたわけです。この作中記述およびキャラクター設定を無視して「ラインハルトが『正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観』を抱いていた」などと規定するのは、銀英伝という作品およびラインハルトというキャラクターに対する侮辱であるとは思わないのでしょうか?
しかもラインハルトには、かつて門閥貴族出身の軍人や同盟軍に対して、以下のごとき酷評を開陳していた前科すら存在するのです↓
銀英伝外伝1巻 P14上段~下段
<「同盟軍、いや、叛乱軍の奴らは戦略を知らんのだ。流血を見ずしてイゼルローン要塞を無力化する方法があるものを」
奴らに教えてやりたいくらいだ、と、ラインハルトは思う。本気で「専制王朝を打倒する」意思があるなら、とるべき手段はいくつでもある。自らの平和と安全だけが願いなら、逆の方向にも複数の選択がある。にもかかわらず、これが唯一の途だとばかり、イゼルローン回廊に攻めこんでは敗退をくりかえす同盟軍だった。ラインハルトとしては、あきれずにいられない。
「なぜ愚劣にもイゼルローンに拘泥する。要塞があれば正面から戦って陥さねばならぬと信じこんでいる。硬直のきわみだ」
「だからこそ帝国にとっては要塞を建設した意義がありましょう」
「ちがいないな」
苦笑してラインハルトは赤毛の友の見解をうけいれた。>
銀英伝外伝1巻 P15上段~下段
<ラインハルトは心から問いたかった。この会戦の目的は何なのか。どのような戦略上の課題を満足させるために、数万隻の艦隊を動かし、数百万の兵士を死地に立たせ、膨大な物資とエネルギーを消費するのか。その根本から目をそらし、課題を戦術レベルに限定してもっともらしく討議したところで、何の益があろう。かわされる会話のひとつとして、彼の感銘を呼ぶものはない。
こいつらは戦争ごっこをやっているだけなのだ、と、ラインハルトは思わずにいられない。「自由惑星同盟」などと称する叛乱軍の輩と、似合いの好敵手と言うべきだ。帝国内での抗争に敗れて同盟に亡命した人々の数を思うと、同席の提督たちは、将来の亡命地を失うことがないよう配慮しているのではないか、とさえ思われる。いや、これは過大評価だろう。貧しい能力のすべてをあげて、この程度なのだ……。>
さらには、あの移動要塞に関しても、ラインハルトは他ならぬ自分自身が命じた「移動要塞を持ってイゼルローン要塞を攻略せよ」という命令の内容も忘却し去った挙句、ケンプの移動要塞運用に見られる固定観念」を嘲笑するような発言まで行っています。
これほどまでに「硬直しきった固定観念を抱く自分以外の人間」を酷評するラインハルトが、平松さんの仰るような「固定観念」だの「先入観」だのといったものを抱いているとしたら、それは他ならぬラインハルト自身の論法でもって「愚かである」と評されるべきですし、そうでなければならないのではありませんかね? それを「彼の作中における天才性やキャラクター(および作品)設定を否定する要素にはなり得ない」などとするのは、銀英伝という作品およびラインハルトというキャラクターに対して、むしろ大変失礼かつ無礼というものでしょう。
銀英伝という作品およびラインハルト自身が結果的に否定している論法でもってラインハルトを擁護しようとするのは止めるべきです。それは最大限贔屓目に見ても、非常にタチの悪い「褒め殺し」以上のものにはなりえないのですから。まあ、「ラインハルトは天才などではない、とてつもない愚か者なのだ」が結論で良いのであればそれでもかまわないかもしれませんが。
<「だとしたらラインハルトやヤンが移動要塞戦略やイゼルローン質量兵器攻撃について検討しなかった事はどうか。これらも、実施出来るのに気付かなかったとしてもラインハルトやヤンの天才性を否定する要素にはなり得ないと思うか」
というご意見もあるかもしれませんが、これらについては「補給の重要性は作中でしばしば語られている」「ヤン自身も質量兵器攻撃を行った実績がある」といった作中事実から考えれば、気付かなければ作中記述に確実に矛盾すると思いますので、自分としては「移動要塞戦略やイゼルローン質量兵器攻撃には実施出来ない理由があったのでは?」という前提の元、懐疑的なスタンスに立ってみたわけです。>
上でも説明したように、ラインハルトが「正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観」を抱いているか否かの問題も、「補給の重要性は作中でしばしば語られている」「ヤン自身も質量兵器攻撃を行った実績がある」と同じくらいに作中で明確に語られていることですので、「気付かなければ作中記述に確実に矛盾すると思います」。だからこそ、質量弾攻撃云々についても、ヤンやラインハルトを擁護したいのであれば、「ヤンやラインハルトはバカだった」的な結論に到達する可能性がない上での合理的な理由でもって説明するべきなのです。
<ただ、アルテナ星系から遠い、回廊内からなどの「遠距離」の場合は、「有人制御航行」や「無人艦の遠隔コントロール」などで回廊を抜けようとしても、イゼルローン要塞へ慣性航行のみで辿り着ける衝突コースのはるか手前で、接近を察知して要塞から出撃してきた艦隊にエンジンを破壊されてしまうのではないか?という事なのです。あるいは姿勢制御システムで公転速度を調節して恒星アルテナの反対側に隠れ、衝突コースの選択肢をを著しく狭めた上で迎撃するといった手も考えられます。>
以前からずっと疑問に思っていたことなのですけど、平松さんは一貫して「接近を察知して要塞から出撃してきた艦隊にエンジンを破壊されてしまうのではないか」という主張を「質量弾攻撃無効」の根拠にしているわけですけど、その一方でラインハルトがその可能性に事前に気づいて対処法を練るべきだったという私の主張を「固定観念で気づけなかったから」という反論で応えておられますよね。この平松さんの主張って、結果的には「俺でも気づけるような懸念材料をラインハルトは結果的に気づけなかった」と言っているも同然なわけで、ある意味上で私が述べた以上にラインハルトをバカにしているようにも取れるのですけど、その自覚ありますか?
それから、平松さんがしきりに出してくる「姿勢制御システムを使った要塞の回避能力」ですが、もし平松さんが述べているようなレベルの行動がこれで取れるのであれば、それが銀英伝の作中で一切使われなかったことと矛盾が生じるのではありませんか? 「姿勢制御システムで公転速度を調節して恒星アルテナの反対側に隠れ」などということができるのであれば、それは限定付きながらも立派な「自力で制御できる【宇宙航行能力】」と呼べるシロモノですし、これを応用すれば、状況に応じて敵艦隊に接近したり遠ざかったりすることだってできるはずでしょう。
それがどんなに速度の遅いものであるにせよ「自力では全く動けない」とは雲泥の格差が存在するわけですし、そんなものがあるのならば敵を要塞主砲の射程圏内に引きずり込んだり、敵の攻撃を回避したりといった用途で大いに役立つことは明白なわけですから、作中の要塞攻防戦などで全く使われない方が不自然です。しかも、この「宇宙航行能力」には、移動要塞が抱える「エンジンの弱点」の問題すらも存在しないときているわけですから、要塞の火力と装甲を武器に敵陣に単体で突っ込むという戦法すら可能となるわけで、ある意味戦術的に無敵のシステムとすら言えます。ますますもって、作中で一切使われも言及すらもされなかったのはおかしな話であると言わざるをえないでしょう。
しかも、イゼルローン要塞に「自力で制御できる【宇宙航行能力】」がないということは、他ならぬ銀英伝の作中描写でも示されていることなのです↓
銀英伝1巻 P128下段
<「シュトックハウゼンだ。事情を説明しろ、どういうことだ」
大股に歩み寄りながら、要塞司令官は必要以上に高い声を出した。あらかじめ連絡があったように、叛乱軍が回廊を通過する方法を考案したとすれば、イゼルローン要塞の存在意義そのものが問われることとなろうし、現実に、叛乱軍の行動に対処する方策も必要になる。
イゼルローンそのものは動けないのだから、このようなときにこそ駐留艦隊が必要なのだ。それをあのゼークトの猪突家が! シュトックハウゼンは平静ではいられなかった。>
ここでシュトックハウゼンが主張している「イゼルローンそのものは動けない」というのは、恒星アルテナの周囲を「自動システム的なもので」公転させることはできても、それを「人為的に制御・調節」することはできないことをも示すものでしょう。それができるのであれば、この箇所における「イゼルローンそのものは動けない」という作中記述自体がおかしいことになります。
以上のことから、平松さんの主張は銀英伝という世界観およびキャラクター設定とはあまり合致しないものであるように思われるのですが、どうでしょうか。
>不沈戦艦さん
<それで、「限りなき報復合戦になってもやむなし」ということですが、「住民殺戮」は戦力的に充実している帝国軍の方が、規模が大きくかつ素早くやれるのではないですか?イゼルローンしか戦力がないヤン一党とは違うんですから。戦力が違うのですから、帝国軍側から先制して「これ以上暴れるのなら、旧同盟領住民を全員抹殺する」との脅迫をヤン一党に突きつけることは可能です。そして、イゼルローン移動要塞がそれに従わないのなら、例えばですが「十分ごと」にでも、一つ一つ「皆殺し星系」を増やして行けばいいんですよ。>
「限りなき報復合戦」という状況下で、「規模が大きくかつ素早くやれる」ということに意味があるのでしょうか? 移動要塞の場合、帝国領および250億の国民を完全に殲滅できる「能力」自体は立派に有しているのですし、その能力を駆使すれば帝国が壊滅的な大打撃を受けることも「事前に」分かりきっているわけですから、殲滅される時期が相手よりも早いか遅いかは、この際あまり問題にならないかと。
この「限りなき報復合戦」で「規模が大きくかつ素早くやれる」ということが問題になることがあるとすれば、それは移動要塞が無差別戦略爆撃を行っている間に、帝国側が移動要塞を100%確実に捕捉および攻略し、自陣営が殲滅される前に「限りなき報復合戦」に終止符が打てるという絶対的な保証がある場合だけです。そして、それがいかに困難を極めるかは、銀英伝5巻でヤンが行った「正規軍によるゲリラ戦」の事例だけでも明白ですし、「無限の自給自足能力」を有するが故に無制限かつ無期限のゲリラ戦が可能な移動要塞が相手であれば、ほとんど不可能とすら言えるほどに絶望的な命題となりうることは誰でも容易に察することができるでしょう。
かつての米ソ冷戦時における「核の報復戦略」でも、それが実行されれば「両陣営共に共倒れ」になることが容易に想定されたからこそ脅威となりえたのであって、その脅威の前では「規模が大きくかつ素早くやれる」というのは、それで自陣営の生存の可能性が模索できるのでない限りはあまり意味がなかったのではないかと思うのですけどね。
<いくら「旧同盟領住民」はもう「新帝国領住民」であって、帝国からすれば自領土だしヤン一党にとっては責任を負うべき相手ではないとは言っても、ヤン一党が求めていることは「帝国と取引して、旧同盟領の一部でいいから民主主義体制を保存すること」なんですから、その為には「旧同盟領の一部星系とその住民たち」が絶対に必要になる訳です。その旧同盟領全てを「人質」にされた場合は、屈伏せざるを得ないでしょうよ。旧同盟領の全住民を抹殺されてしまった場合は、武力抵抗を続ける意味がないんですから。「そんなものはどうでもいい。旧同盟領の住民の安全についての責任まで負えない」と彼らが考えているのなら、暴れる意味が全くありません。だったらそんなものは放っておいて、さっさと逃げ出して「第二次長征一万光年」に入ればいいだけですからね。「旧同盟領の一部領有を目指している」のに「旧同盟領の住民の安全について、責任は一切負う必要はない」と主張するのには、論理的に無理がないですかね?>
<「もし帝国に旧同盟領住民を全員抹殺されてしまったとしても、イゼルローン移動要塞も時間をかければ同じことが可能だから報復できるので、それが抑止力になる」ってのは、なんぼなんでも無理でしょう。「住民抹殺に要する時間の桁が全然違う」ことは、この「チキン・ラン」における帝国軍の絶対的優位を保障するものです。旧同盟領住民が全て抹殺されてしまった後、イゼルローン移動要塞が「報復」だけを目的として、帝国領攻撃を繰り返したところで、そんな行動に意味はないですよ。もう、「目的」は果たせないことが、分かり切っているんですから。また、仮に旧同盟領住民を全て抹殺したところで、帝国軍にとっては「征服の労力が無駄だった」だけで、「目的」が消滅する訳じゃないです。「人類社会の統一」は適いますからね。「逆らうものは皆殺し」になったというだけで。帝国側はヤン一党の「目的」を圧殺できるのに、ヤンには帝国の「目的」を潰すことはできない。これでは、やる前から勝負はついています。いくら何でも、「ヤン一党が手に入れて民主主義を保存する惑星は、帝国領でもかまわない」と言うのは無理がありますし。>
いや、ヤンの構想では、そもそも「旧同盟領の一部領有を目指している」などという項目自体が全く入ってはいないのですよ。何度も引用していますが、ヤンの構想というのは元々こういうものですし↓
銀英伝7巻 P190上段
<「全宇宙に皇帝ラインハルトとローエングラム王朝の宗主権を認める。そのもとで一恒星系の内政自治権を確保し、民主共和政体を存続させ、将来の復活を準備する」
その基本的な構想を説明したとき、エル・ファシル独立政府の首班ロムスキー医師は瞳をかがやかせたりはしなかった。
「皇帝の専制権力と妥協するのですか。民主主義の闘将たるヤン元帥のおことばとも思えませんな」
「多様な政治的価値観の共存こそが、民主主義の精髄ですよ。そうではありませんか?」>
銀英伝8巻 P36下段
<ヤンの構想は、およそ大それたものである。戦術レベルの勝利によってラインハルトを講和に引きずりこみ、内政自治権を有する民主共和政の一惑星の存在を認めさせようというのだ。それはエル・ファシルでもよい、もっと辺境の未開の惑星でもよい。その惑星を除いた全宇宙を専制の冬が支配するとき、ひ弱な民主政の芽を育てる小さな温室が必要なのだ。芽が成長し、試練にたえる力がたくわえられるまで。>
この当時のヤンは「エル・ファシル独立政府」に身を投じていたのですから、本来ならばヤンには「エル・ファシル独立政府」が領有するエル・ファシル星系を死守する義務も存在したはずなのですけど、その首班に対して今後の戦略方針を話す時でさえ、ヤンは「エル・ファシル星系という【旧同盟領にして現行唯一の民主共和政体の領土】」にこだわっている様子が微塵もありません。また、「回廊の戦い」を行う際も、ヤン一派は戦術上の必要性があったとはいえ、本来何が何でも死守しなければならないはずのエル・ファシル星系の無防備宣言を行い、その守りを放棄しています。つまり、作中のヤンの構想でも「旧同盟領の一部領有」などよりもはるかに「民主共和政体の確立」の方が最優先事項なのであり、それが実現されるならば場所はどこでもかまわない、と考えられているわけです。
もちろん、この構想から言えば、たとえその「内政自治権を有する民主共和政の一惑星」が帝国領内にあったとしても何ら問題にはなりません。重要なのは「民主共和政体を有する惑星の存在」それ自体にあるのであって、場所など全く問うてはいないのですから。第一、場所の問題など、移動要塞の人間をその惑星に居住させればそれで済む問題でしかありませんし、「回廊の戦い」当時であれば、エル・ファシルの人間300万人全てを一時的にイゼルローン要塞に退避させた後で他の惑星に移住させる、という手で補えないこともないでしょう。だからこそ私は、ヤンの民主主義存続構想を語るに当たっては、「限りなき報復戦争になって移動要塞に居住する以外の全人類が死に絶えてもかまわない。その後で誰もいなくなった荒野に民主主義を復興しても、それで充分に目的は達成される」と主張できるわけです。銀英伝の作中でも、それこそ「長征一万光年」を遂行した結果、人口たった16万から立ち上げて大国にまでのし上がった自由惑星同盟の事例があるわけですしね。
せめてヤンがほんの少しでも愛国主義的、そこまでいかなくても郷土愛的な執着を旧同盟領に対して抱いており、その奪還を本気で目指している、とでも言うのならば、私もこんなことは言えなくなるのですけどね~。
<繰り返しになりますが、「旧同盟領の住民の安全などどうでもよく、イゼルローンさえ健在ならOK」だというのなら、何でさっさと逃げ出さないのか、全く意味不明で訳が分からない行動でしかないと思いますがどうですか。イゼルローンが健在ならOKであるのに、時間と労力と人命を無意味に費やして、帝国領攻撃をせにゃならんというのでは、帝国に対する嫌がらせか八つ当たりにしかならんでしょうよ。>
旧同盟領云々の件については上で述べたとおりですが、「旧同盟領の住民の安全などどうでもよく、イゼルローンさえ健在ならOK」という考えていてもなお、ヤン陣営が帝国を攻撃しなければならない理由は2つあります。ひとつは、帝国側が第二の長征一万光年を敢行するヤン陣営に徹底的な追撃をかけてくる可能性であり、もうひとつは将来的な脅威です。
要塞を使って第二の長征一万光年を行う場合、帝国がそれを黙認せずに徹底的な追撃を行ってくる可能性は充分に存在します。これは銀英伝作中のアーレ・ハイネセンの長征一万光年でも同じことが発生していますし、またアーレ・ハイネセンの時代と異なり、銀英伝の作中人物達は、長征一万光年の成功によって自由惑星同盟が建国され、帝国と拮抗するだけの実力をつけた「史実」を知っているわけです。第二の長征一万光年の成功によって第二の自由惑星同盟が誕生されたのではたまったものではない。その可能性を憂慮する帝国側が、第二の長征一万光年を阻止することを目的に、移動要塞に対して徹底追撃を行ってくる可能性は決して無視しえるものではないのです。
また、たかだかアーレ・ハイネセンと奴隷階級の集団で長征一万光年が成功するような作中事実から考えれば、ヤン陣営はむろんのこと、帝国側もまた長征一万光年を実行することは可能なわけですし、何よりも「無限の自給自足能力」を持つ移動要塞という存在もあります。これを利用して、第二の長征一万光年を敢行するヤンに対して、帝国側もまた同じことを行って「永久に」追撃をかけてくる可能性も否定できないわけです。もしこれが実行されれば、ヤン陣営はいつまで経っても新天地を見つけることができず(見つかった瞬間にそこは帝国領となってしまいます)、当然のことながら「内政自治権を有する民主共和政の一惑星の存在」を確立することもできなくなります。だからこそ、第二の長征一万光年を敢行するにしても、「もし自分達に攻撃を仕掛けてきた場合は相応の教訓を叩き込んでやる」といった類の「脅しを含めた抑止力」が最低限必要不可欠となるわけです。
もうひとつの「将来的な脅威」というのは、作中における銀河帝国と自由惑星同盟がそうであったように、第二の長征一万光年を敢行・成功した後に発生するであろう、遠い未来に両者が邂逅する可能性です。その際、これまた銀河帝国と自由惑星同盟の関係と同じように「第二の戦争の時代」が始まることもありうるわけです。それを未然に防止するために、あえて帝国に攻撃を行って可能な限りの打撃、場合によって移動要塞に居住する人間以外の人類滅亡をも視野に入れた戦略を打ち出しておくことは、この「将来的な脅威」をも事前に消滅させることに繋がるわけで、ヤンが考えるであろう「民主共和政体の存続」という観点から言えばやっておいて損はないものです。
ここで問題となるのは、ヤン陣営が第二の長征一万光年を敢行する際に帝国側がどのような対応を取ることになるか、これに尽きます。もし「逃げるならば好きにするが良い、未来のことは未来の人間が考えれば良いことだ。そこまでの犠牲を払ってまで追撃を行わなければならない価値はない」と帝国側が早々に折れてくれるのであれば、それこそ不沈戦艦さんが仰るように、帝国領など放っておいてとっとと第二の長征一万光年を敢行するのが懸命ですが、もし「如何なる犠牲を出そうとも、第二の自由惑星同盟を生み出しかねない第二の長征一万光年など絶対に認めない」と考えるのであれば(そして私はこちらの可能性の方が圧倒的に高いと思いますが)、たとえ最終的に第二の長征一万光年を敢行するにしても、私が考えるような戦略構想でもって帝国側に追撃を諦めさせる必要があるわけです。
国家としての矜持から言っても、「人類社会の統一」という帝国およびラインハルトの目的から考えても、「第二の長征一万光年」などを無条件で認めるほど、帝国も「お人好し」ではないと私は考えるのですが、いかがでしょうか。
ぴぃさん、はじめまして
> 2.軌道上を自由に動く一二個の衛星は、たがいを防御、支援するよう機能する。
確かにこのように書かれているので、アルテミスの首飾りを構成する各衛星は、一応の移動能力を持っているのではないか、と推測されます。
しかし、普通に考えると、こういった衛星が、亜光速の質量弾を回避できるはずがないのです。
というのは、これらの氷塊である質量弾は、亜光速、つまりほとんど光速で飛んできているわけですから、戦艦の主砲のような光線兵器からの光線と、ほぼ同じ速度なのです。例えば、戦艦同士の光線の撃ち合いで、戦艦の移動能力を駆使して、光線の命中を避けることができる、と言っているのに等しいのですから。
ここで、氷塊を切り出した惑星からハイネセンまでの距離がどの程度はなれているのかわかりませんが、例えば太陽から地球までの距離が光速で8分程度ですから、発射時点からハイネセンへの到達までに5分や10分の時間が掛かることはありえるでしょう。
また、野望篇第7章ⅢやⅣ、Ⅴ(ノベルズ版2巻P186、189、190)の記載からは、P186には敵の攻撃が始まった旨をクーデタ軍のオペレータがグリーンヒル大将に報告し、P190ではクーデタ軍が12個全部の衛星が破壊されたことを知っている旨の内容が記載されています。つまり、氷塊による衛星の破壊の少なくとも2、3分以上前には、その接近が探知されているように見受けられます。
つまり、ハイネセンの属する星系内の各所に、監視衛星等が配置されていて、数分あるいはそれ以上前に、氷塊の接近を探知し、その探知情報を亜空間通信(普通の電波通信だとこの情報が届くのにも数分掛かってしまう)等の通信手段で、その情報を衛星にもたらされた、と考えられます。
このように、数分間の時間的余裕があれば、あるいは、5分、10分の時間的余裕があれば、衛星に備える「相互に防御・支援するための移動能力」を駆使して、質量弾の衝突コースから、自らの衛星を外すくらいの回避運動くらいはできたのではないか、とも思えるのです。
作中の場合は、衛星に備える兵器で破壊不能な質量弾による攻撃を受けた場合、などの対処が事前に考えられてなかったため、通常の対処、つまり、自らに接近する危険物(氷塊)に単に攻撃を仕掛ける、という対処しか行わず、数分あるいはそれ以上の時間的余裕を利用して、回避運動を行う、といった対処が行われなかったのではないか。当初から、破壊不能な質量弾による攻撃を受けた場合、というものが分かっていれば、衝突を回避することもできたのではないか。
少なくとも、アルテミスの首飾りの実例やケンプの要塞特攻の実例が示された後の世界では、質量弾攻撃に対する対処というものも考慮され、同じ手(亜光速の質量弾)で遠距離「光速で5分や10分はかかる距離」からの攻撃なら、衛星や要塞なら、その姿勢制御システム等を利用して、回避することができたのではないか!
平松さんの指摘も、恐らくこういうことだと思うのですが、これ自体に関しては、平松さんの指摘を全否定する根拠は今のところ、私には上げられません。
> 要するに、アルテミスの首飾りの軍事衛星が、質量兵器を回避できるのだとしても、衛星があえて質量兵器を回避しないことで、システムの目的である危険因子の除去(この場合は、ハイネセンへの氷塊の突入阻止)を達成したとも考えられます。
これはないと思います。
氷塊がハイネセンへの衝突コースにあれば、「衛星があえて質量兵器を回避しない」行動を取ったところで、氷塊のハイネセンへの突入を阻止することはできないでしょう。第一、作品にも、>「3.氷塊が、ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定めた。」という旨の記載があるのですから。
ともかく、要塞が回避するかもしれない問題は、
質量弾を無人の自動誘導式もしくは有人誘導式(操縦者が直前まで操作)としたり、回避運動を行うであろう要塞の未来位置を予測して、多数の質量弾を同時に発射する、などすれば、ぜんぜん解決する問題であろうかと思います。
無人の自動誘導式を明らかに可能とする例が作中にないという反論を考慮して、ケンプの要塞特攻に見られる有人誘導式を提示しているわけでもあります。
まず最初にお詫びいたします。断りもせずに長らく議論を中断してしまい、申し訳ありませんでした。パンツァーさんがお怒りであれば無視してください。
> それから、結局のところ、議論の目的は、どこにあるのでしょうか?
> 質量弾攻撃の否定が目的であるならば、その線に限って議論を展開してもらえると、私の方も考慮する要素が少なくてありがたいのですが。
不必要に「回廊の戦い」に言及したのは、私の誤りでした。議論を必要に拡大して申し訳ありませんでした。
議論の目的は「アルテミスの首飾りへの質量弾による遠距離攻撃は、銀英伝の世界において、例外的に可能だったのではないか」というものです。本当は、別スレッドで議論した方がよいのかもしれません。
> まず、作品に書いてある設定については、これを前提に考える必要があるのです。これを無視するようなことを書かれても困ります\。
>
> > だからこそ、無誘導の氷塊に軍事衛星の側が当たりに行った(=氷塊を回避しない)と考えた方が合理的だと考えたのですが……。
> > この事実から、氷塊がハイネセンへの「突入コース」であることは、氷塊がハイネセンへ「突入する」ことを意味しないと考えられます。よって、衛星が氷塊を回避しない状況に追い込んで破壊したという推論はまだ成立する余地があると考えます。
>
> No6395「アルテミスの首飾りについて」のぴぃさんの記載
> <3.氷塊が、ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定めた。>
>
> 「衛星が氷塊を回避しない状況に追い込」まれ得るのであれば、「ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定め」る必要など、ないのではありませんか。衛星にさえ氷塊が命中すれば、「ハイネセン本星への突入」が避けられるのであれば、「衛星に必ず命中するように発進角度は慎重に定めた」と書かれているのが自然でしょう。
どうしてですか? 作戦会議の目的が、衛星を破壊する事であったのは、文脈から明らかなことです。つまり、衛星を攻撃しない作戦は考慮するに値しない作戦であり、破壊が可能な作戦の内で、最も周囲への影響(例えば、ハイネセンへの影響であるとか、自軍の被害などです)が少ないないし皆無な作戦を選択したと考えるのが自然です。衛星と異なる目標を攻撃し、その結果が衛星に影響して破壊する等といった場合であればともかくとして、ことさらに衛星が攻撃目標であることを示す必要を感じません。
また、作戦会議からは、前回のレスで述べた程度の情報しか解りませんが、その後に続くヤンとシェーンコップの会話を引用すると、
/* 野望篇p188上段より引用
「……何か質問は?」
それに応じて、軽く挙手したのはシェーンコップだった。
「一二個すべてを破壊してかまわんのですか?」
*/
と、あります。この後でも、誰も衛星の回避や破壊の可能性について問題にしていないことから、衛星に必ず命中し破壊できるという文言を直接的に書かなくとも、間接的に解る事だと思います。
> 衝突の結果による氷塊や衛星の破片に関しても、ハイネセン本星に落下するようなことがあれば、十分問題だと思いますが。
> 作品の設定に従うなら、衛星に衝突しようがしまいが、「氷塊がハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定めた」とみなすのが妥当ではないでしょうか。
問題ですよ。だから、「氷塊がハイネセンに『突入したり』することのない」ようにしたんですよね。
> だいたい、「無誘導の氷塊に軍事衛星の側が当たりに行った」などということがあったのなら、クーデタ軍のオペレータが、「衛星が自ら氷塊にぶつかっていきます!」なんて金切り声を上げているはずですが、このような裏設定を裏打ちするような作品中の記載もないですよね。
それを言うなら、衛星が氷塊を、衛星の機動力で回避できなかった、という記載も存在しません。
また、オペレータが、「衛星が自ら氷塊にぶつかっていきます!」と金切り声を上げるかどうかは、オペレータの人格性に関わる問題であり一概には言えません。第一、衛星は一刻も早く氷塊を攻撃するために、軌道上の位置を氷塊のコースにあわせるでしょうし、また、衛星の氷塊に対して攻撃が効かない事実、衛星が完全破壊された事実に比べれば、心理的に動揺させる要素として些末な事象ではないでしょうか。
> > おそらく、秒(1/3600度)単位での射角精度を求められる(1秒ずれると300万km先では15km位ずれます。光速での到達時間が5分であるとすると距離は更に長くなるので精度も落ちる)中で、これは致命的なのでは? つまり、無誘導で目標に当てるのは、事実上の固定目標でなければきわめて難しいと思います。
>
> 現代の常識とやら、からしたら、まったくごもっともな指摘なんですが、「現代の常識」を前提にするのであれば、「ワープ」などといった超絶的な移動航法自体も、ありえるはずがないこと、という面白くもない結論になってしまうのですよ。
>
> 西暦でいえば28世紀くらいに相当する銀英伝の時代では、超高精度な弾道計算や未来位置予測が可能であって、姿勢制御エンジンや方向知覚センサなどなくても、ヤンがまったく命中に不安を覚えることなく、氷塊に命中させることができるだけの技術水準があった、としか考えよう
> がないのです。作品を前提とするのであれば。
なるほど、おっしゃる通り全てを現代の常識で解釈すれば、「ワープの実現」という作中事実と矛盾する結論に至るでしょう。
このような、架空技術を考える上では、架空世界に歴然として存在する現象は、どんなに現実の物理現象とかけ離れていようと、「起こる現象」と捉えねばならないことまでは、パンツァーさんも異論がないと思います。しかし、そのような現象が、どのように起こっているのかは、作者にしか(または誰にも)解らない事だと思います。
この場合で言うと、氷塊を衛星に間違いなく当てることができる、ワープも人為的に発生し制御できる現象である、ということは作中事実です。しかし、なぜ衛星に間違いなく当たるのかや、ワープがなぜ起こり制御できるのかといった事は、作中の記載から各人が解釈せねばならないブラックボックスです。
それを踏まえた上で、あえて光線兵器の命中精度に関する数字を出したのは、銀英伝の世界における遠距離攻撃の難しさを示す補助資料としてでした。なぜなら、作中には、遠距離攻撃、特に誘導兵器(弾道計算や未来位置予測技術を含む)に関する以下の記載があったからです。
/* 黎明篇 p111上段
「ボタン戦争と称された一時代、レーダーと電子工学が奇形的に発達していた一時代をのぞいて、戦場における用兵には(後略)」
*/
この記載から、銀英伝の作品世界においては、少なくとも主戦場である宇宙空間において有効な高精度長距離兵器の類は存在しないと推定するのが自然です。そして、これは、おそらく、作品全体を貫く基本原則だと思います。
また、砲撃は、射撃と異なり、公算学という歴とした確率に基づく攻撃です。私は、艦船同士(おそらく、アルテミスの首飾りの攻撃可能範囲)の近距離であってさえ、数千隻単位の艦船が攻撃しあうのが通常の銀英伝世界から読み取れる範囲では、パンツァーさんの言われるような技術水準に達していないと考えています。
もしも、そのような技術が達成されているならば、艦隊の規模はもっと小さな規模(例えば、現代の艦隊レベル)の方が妥当だと思いますし、作品中での戦闘の描写は異なる物だったと思います。私は、艦隊戦に、数千隻単位が必要というのは、数によって広大な宇宙空間での命中率を有効な域まで向上させる為だと捉えていましたが、パンツァーさんは違うのでしょうか?
また、そのような遠距離攻撃が可能だとすると、例えば、ラグナロック作戦時に、なぜ、同盟軍は、フェザーン回廊から飛び出してくる帝国艦隊を、氷塊もしくは隕石で遠距離攻撃しなかったのかの説明が困難になります。
私は、機動能力のある物体への遠距離攻撃は、原則として効果のない攻撃であり、アルテミスの首飾りでは、例外的に攻撃して効果のある状況が現出したものであったと考えます。
なお、その他の反論については、「アルテミスの首飾り攻撃」とは無関係の問題ですので、こちらから振っておいて身勝手極まりないですが、議論を打ち切らせていただこうと思いますがよろしいでしょうか?
また、お返事できるのも最短で一週間に一回のペースとなりますがご了承ください。
> > 2.軌道上を自由に動く一二個の衛星は、たがいを防御、支援するよう機能する。
>
> 確かにこのように書かれているので、アルテミスの首飾りを構成する各衛星は、一応の移動能力を持っているのではないか、と推測されます。
> しかし、普通に考えると、こういった衛星が、亜光速の質量弾を回避できるはずがないのです。
>
> というのは、これらの氷塊である質量弾は、亜光速、つまりほとんど光速で飛んできているわけですから、戦艦の主砲のような光線兵器からの光線と、ほぼ同じ速度なのです。例えば、戦艦同士の光線の撃ち合いで、戦艦の移動能力を駆使して、光線の命中を避けることができる、と言っているのに等しいのですから。
氷塊と光線兵器は性質が異なる兵器です。
なぜなら、氷塊が攻撃開始から亜光速に達するまでに加速するための助走距離が必要なのに対して、光線兵器は攻撃したその瞬間から光速です。つまり、氷塊が亜光速となるまでには時間的余裕があるのではないでしょうか?
> ここで、氷塊を切り出した惑星からハイネセンまでの距離がどの程度はなれているのかわかりませんが、例えば太陽から地球までの距離が光速で8分程度ですから、発射時点からハイネセンへの到達までに5分や10分の時間が掛かることはありえるでしょう。
> また、野望篇第7章ⅢやⅣ、Ⅴ(ノベルズ版2巻P186、189、190)の記載からは、P186には敵の攻撃が始まった旨をクーデタ軍のオペレータがグリーンヒル大将に報告し、P190ではクーデタ軍が12個全部の衛星が破壊されたことを知っている旨の内容が記載されています。つまり、氷塊による衛星の破壊の少なくとも2、3分以上前には、その接近が探知されているように見受けられます。
> つまり、ハイネセンの属する星系内の各所に、監視衛星等が配置されていて、数分あるいはそれ以上前に、氷塊の接近を探知し、その探知情報を亜空間通信(普通の電波通信だとこの情報が届くのにも数分掛かってしまう)等の通信手段で、その情報を衛星にもたらされた、と考えられます。
>
> このように、数分間の時間的余裕があれば、あるいは、5分、10分の時間的余裕があれば、衛星に備える「相互に防御・支援するための移動能力」を駆使して、質量弾の衝突コースから、自らの衛星を外すくらいの回避運動くらいはできたいのではないか、とも思えるのです。
>
> 作中の場合は、衛星に備える兵器で破壊不能な質量弾による攻撃を受けた場合、などの対処が事前に考えられてなかったため、通常の対処、つまり、自らに接近する危険物(氷塊)に単に攻撃を仕掛ける、という対処しか行わず、数分あるいはそれ以上の時間的余裕を利用して、回避運動を行う、といった対処が行われなかったのではないか。当初から、破壊不能な質量弾による攻撃を受けた場合、というものが分かっていれば、衝突を回避することもできたのではないか。
> 少なくとも、アルテミスの首飾りの実例やケンプの要塞特攻の実例が示された後の世界では、質量弾攻撃に対する対処というものも考慮され、同じ手(亜光速の質量弾)で遠距離「光速で5分や10分はかかる距離」からの攻撃なら、衛星や要塞なら、その姿勢制御システム等を利用して、回避することができたのではないか!
> 平松さんの指摘も、恐らくこういうことだと思うのですが、これ自体に関しては、平松さんの指摘を全否定する根拠は今のところ、私には上げられません。
>
> > 要するに、アルテミスの首飾りの軍事衛星が、質量兵器を回避できるのだとしても、衛星があえて質量兵器を回避しないことで、システムの目的である危険因子の除去(この場合は、ハイネセンへの氷塊の突入阻止)を達成したとも考えられます。
作中では、以下のように記述されています。
/* 原作 野望篇p186下段より引用
スクリーンが作動し、衛星に向かって宇宙空間を突進する物体をとらえた。その正体が判明したとき、室内をざわめきがはしった。
「氷……」
グリーンヒル大将はうめいた。
*/
どのくらいの距離で氷塊を検知したのかや、氷塊が亜光速に達するまでの助走距離ということは解りませんが、原作からはっきりわかる事実はあります。それは、システムの哨戒有効範囲は、グリーンヒル(人間)が質量弾の正体が氷と認識できる(カメラが氷塊を追従して撮影できる)範囲内であったということです。つまり、システムが氷塊を認識して作動開始した時は亜光速ではありません。よって、偵察衛星等から情報を得て軍事衛星は回避行動をとる時間的余裕があったと判断します。
> これはないと思います。
> 氷塊がハイネセンへの衝突コースにあれば、「衛星があえて質量兵器を回避しない」行動を取ったところで、氷塊のハイネセンへの突入を阻止することはできないでしょう。第一、作品にも、>「3.氷塊が、ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定めた。」という旨の記載があるのですから。
これに関しては、以下の事実をまず補充証拠としてあげます。
/* 原作、野望篇p190上段より引用
衝突した。
氷塊は砕けた。衛星も。氷片が乱舞し、太陽光と惑星光を反射して、めくるめく光彩を周囲の空間に投げかけた。(中略)衛星の破片などすでに区別がつかなかった。
*/
これは、亜光速の氷塊と衛星がぶつかった場合、氷塊と衛星はともに砕けて衛星軌道上を漂う、すなわち、ハイネセンに影響が無いことを示していると考えられます。
この事実から、氷塊がハイネセンへの「突入コース」であることは、氷塊がハイネセンへ「突入する」ことを意味しないと考えられます。よって、衛星が氷塊を回避しない状況に追い込んで破壊したという推論はまだ成立する余地があると考えます。
> ともかく、要塞が回避するかもしれない問題は、
> 質量弾を無人の自動誘導式もしくは有人誘導式(操縦者が直前まで操作)としたり、回避運動を行うであろう要塞の未来位置を予測して、多数の質量弾を同時に発射する、などすれば、ぜんぜん解決する問題であろうかと思います。
> 無人の自動誘導式を明らかに可能とする例が作中にないという反論を考慮して、ケンプの要塞特攻に見られる有人誘導式を提示しているわけでもあります。
私は誘導能力のある質量弾による連続的な飽和攻撃の有効性は肯定します。この点に争いはありません。また、近距離から飽和攻撃が実施されてしまえば有効な対抗策は存在しないというのも肯定します。
しかし、アルテミスの首飾りで使用した亜光速質量弾の場合は、加速する必要があり、また、作中からは無誘導の直線運動しかしていないように思えます。
このタイプの質量弾では回廊という特殊な地形が攻撃可能地点を限定する上、機雷によって更に限定したり、あらかじめゼッフル粒子を空間に充満させて待ち構えたり、偵察衛星等を用いた質量兵器輸送の察知が可能であること等から、「質量兵器の素」の攻撃可能地点への輸送作戦の妨害と攻撃阻止をヤンが行うと思い、簡単には成功しないだろうと考えました。
また、私はイゼルローン要塞には公転速度の調整機能と自転速度の制御機能があると考えています(あまりよくない例えかもしれませんが、公転軌道というレールの上を走っている電車がイゼルローン要塞で、電車はある程度速度を加減することができますが、それはレールから脱線しない範囲で制御が可能ということです)。こうした機能まで無いとするとガイエスブルク要塞が自身の要塞砲をイゼルローン要塞に一方的に撃てる位置に移動しないのか疑問になります。なお、イゼルローン要塞はアニメ版の液体金属の外壁+攻撃時に表面に浮上するトゥールハンマーではなく、原作の固体金属の外壁+固定式トゥールハンマーを想定しています。
この推測が正しいと仮定すると、要塞の予測位置と実位置との間に差が生じると思います。なぜなら、攻撃地点に帝国軍が到着したとき、攻撃に必要な初期値である要塞の位置(公転軌道上のどこにいるのかという意味です。星系内を自由に移動できるとすると明らかに「要塞は動かない」という事実に矛盾しますから)と公転速度(目標の移動速度)の観測を行い軌道計算を行うことは可能ですが、その未来予測位置は要塞側が制御できる変数に基づいて行われたものであり実際の位置とは誤差があるでしょう。
おそらく、秒(1/3600度)単位での射角精度を求められる(1秒ずれると300万km先では15km位ずれます。光速での到達時間が5分であるとすると距離は更に長くなるので精度も落ちる)中で、これは致命的なのでは? つまり、無誘導で目標に当てるのは、事実上の固定目標でなければきわめて難しいと思います。
だからこそ、無誘導の氷塊に軍事衛星の側が当たりに行った(=氷塊を回避しない)と考えた方が合理的だと考えたのですが……。
まず、作品に書いてある設定については、これを前提に考える必要があるのです。これを無視するようなことを書かれても困ります。
> だからこそ、無誘導の氷塊に軍事衛星の側が当たりに行った(=氷塊を回避しない)と考えた方が合理的だと考えたのですが……。
> この事実から、氷塊がハイネセンへの「突入コース」であることは、氷塊がハイネセンへ「突入する」ことを意味しないと考えられます。よって、衛星が氷塊を回避しない状況に追い込んで破壊したという推論はまだ成立する余地があると考えます。
No6395「アルテミスの首飾りについて」のぴぃさんの記載
<3.氷塊が、ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定めた。>
「衛星が氷塊を回避しない状況に追い込」まれ得るのであれば、「ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定め」る必要など、ないのではありませんか。衛星にさえ氷塊が命中すれば、「ハイネセン本星への突入」が避けられるのであれば、「衛星に必ず命中するように発進角度は慎重に定めた」と書かれているのが自然でしょう。
衝突の結果による氷塊や衛星の破片に関しても、ハイネセン本星に落下するようなことがあれば、十分問題だと思いますが。
作品の設定に従うなら、衛星に衝突しようがしまいが、「氷塊がハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定めた」とみなすのが妥当ではないでしょうか。
だいたい、「無誘導の氷塊に軍事衛星の側が当たりに行った」などということがあったのなら、クーデタ軍のオペレータが、「衛星が自ら氷塊にぶつかっていきます!」なんて金切り声を上げているはずですが、このような裏設定を裏打ちするような作品中の記載もないですよね。
> おそらく、秒(1/3600度)単位での射角精度を求められる(1秒ずれると300万km先では15km位ずれます。光速での到達時間が5分であるとすると距離は更に長くなるので精度も落ちる)中で、これは致命的なのでは? つまり、無誘導で目標に当てるのは、事実上の固定目標でなければきわめて難しいと思います。
現代の常識とやら、からしたら、まったくごもっともな指摘なんですが、「現代の常識」を前提にするのであれば、「ワープ」などといった超絶的な移動航法自体も、ありえるはずがないこと、という面白くもない結論になってしまうのですよ。
西暦でいえば28世紀くらいに相当する銀英伝の時代では、超高精度な弾道計算や未来位置予測が可能であって、姿勢制御エンジンや方向知覚センサなどなくても、ヤンがまったく命中に不安を覚えることなく、氷塊に命中させることができるだけの技術水準があった、としか考えよう
がないのです。作品を前提とするのであれば。
> しかし、アルテミスの首飾りで使用した亜光速質量弾の場合は、加速する必要があり、また、作中からは無誘導の直線運動しかしていないように思えます。
「亜光速質量弾の場合は、加速する必要があり」というのは、亜光速を発生させるためには加速が必要である、という意味においてはそのとおりですが、別に質量弾攻撃において、亜光速は必須要件ではないとおもいますけど。
ケンプの要塞特攻は、亜光速などでは全然ありませんよ。また、ケンプの要塞特攻は、有人誘導式の質量弾の実例でもありますね。
なぜ、質量弾攻撃を、「アルテミスの首飾りで使用した亜光速質量弾」に限定するのか、理解に苦しみますが。
> このタイプの質量弾では回廊という特殊な地形が攻撃可能地点を限定する上、機雷によって更に限定したり、あらかじめゼッフル粒子を空間に充満させて待ち構えたり、偵察衛星等を用いた質量兵器輸送の察知が可能であること等から、「質量兵器の素」の攻撃可能地点への輸送作戦の妨害と攻撃阻止をヤンが行うと思い、簡単には成功しないだろうと考えました。
No6367「質量弾攻撃のメリットについて」の記載
<要塞の駐留艦隊ももちろん戦力ですが、これにしたところで、敵の艦隊戦力によって相殺されてしまうことも明らかでしょう。戦闘機群に護衛された爆撃機を迎撃しようとしても、迎撃戦闘機の数が敵の護衛戦闘機の数よりも数的に不利であれば、迎撃が不可能となる道理です。>
<「要塞には一個艦隊もの戦力が存在しており」
質量弾攻撃が迎撃されて成立しない、ということですね。
これも、当然上で述べているように、迎撃側の艦船の数量よりも、攻撃側の艦船の数量の方が多いならば、当然、迎撃艦隊が攻撃側の艦隊に拘束されて、有効な迎撃ができなくなるだけの話です。>
No6367で上の引用のように書きましたが、数的に劣勢なヤン艦隊の迎撃は、別にラインハルトの艦隊にとっての障害にはならないでしょう。
また、ヤンの方で、質量弾攻撃の阻止、のために兵力を割く、もしくは主兵力を差し向ける必要性が生じるのであれば、戦場の決定権をラインハルトに譲り渡してしまうことになります。わざわざ、質量弾に随伴するラインハルトの艦隊の待ち受ける地点へ、ヤンが艦隊を率いて出向く必要があるわけですから。「待ち伏せ」するという有利点すら、ヤンは放棄させられてしまうことになります。
ゼッフル粒子の散布は、逆手に取られたら、事前に引火されて、無駄に消費されるだけの結果になると思いますね。
また、質量弾攻撃のメリットは、人命と艦船の無駄な消費を避けることができる点にあります。第一次攻撃用質量弾が敵の見事な迎撃にあって全滅することがあっても、1個艦隊が壊滅する、などの場合と比べたら、無視できるほど軽微な損害なのです。ビッテンフェルトやファーレンハイトの艦隊が大打撃を受け、人命および艦船に著しい損害を受けたようなことに比べれば、質量弾の100や200が破壊されることなど、どうという損害ではないでしょう。
帝国軍に要塞攻略の手数(攻撃方法)が増えるという点からみるだけでも、ヤンがそれに対して対処する必要を迫られる点だけでも、質量弾攻撃には大きな効果があると思いますね。「回廊の戦い」でも、質量弾を帝国軍が動員していたなら、それを撃滅するために、ヤン艦隊が一部の艦隊兵力を割いて質量弾攻撃を強いられたり、帝国艦隊の包囲網を解く結果になったりして、質量弾攻撃はとりあえず防げたが、ヤン艦隊は敵艦隊に側背を曝す結果となって、艦隊戦で壊滅してしまった、なんてことになるかもしれません。ヤン艦隊が壊滅すれば、そのまま降伏を迫るもよし、次の質量弾を用意して、それから要塞攻撃を始めるもよし、ということになるでしょう。
回廊に敷設された機雷源の撤去方法についても、他投稿で述べたので省略します。
それから、結局のところ、議論の目的は、どこにあるのでしょうか?
質量弾攻撃の否定が目的であるならば、その線に限って議論を展開してもらえると、私の方も考慮する要素が少なくてありがたいのですが。
>もちろん、この構想から言えば、たとえその「内政自治権を有する民主共和政の一惑星」が帝国領内に
>あったとしても何ら問題にはなりません。重要なのは「民主共和政体を有する惑星の存在」それ自体に
>あるのであって、場所など全く問うてはいないのですから。
そうだとすると、何故「現在(もちろん、銀英伝世界の話です)の人類の版図」にこだわる必要があるのでしょうか?「場所は旧同盟領だろうと帝国領だろうとどこでもいいし、民主主義政体を構成する市民もイゼルローンの人間が居ればいい」というのなら、「現在の人類の版図」に粘着する必要性なんざ、どこにもないじゃないですか。むしろ、取引がなったとして当然敵対的である帝国軍にいつ攻撃を受けるか分からない(科学の進歩やら何やらで、イゼルローン移動要塞を無力化できるようになったら、即座に発生する事態です)のですから、帝国軍の手の届かないところに逃げるべきなのでは。「さっさと逃げ出して第二次長征一万光年に入れ」としか言いようがないですね。「旧同盟領の一部領有を目指している」のなら、「現在の人類の版図」に「粘着」する必要性はありますけど。「帝国領攻撃」を行うのなら、「帝国領攻撃中止と引き替えの旧同盟領の一部領有」を目指しての行動でなければ、意味がないと思います。
>ヤン陣営が帝国を攻撃しなければならない理由は2つあります。ひとつは、帝国側が第二の長征一万光年
>を敢行するヤン陣営に徹底的な追撃をかけてくる可能性であり、もうひとつは将来的な脅威です。
ひょっとして、「第二次長征一万光年」というのを、十光年か百光年逃げる程度と考えていませんか?
例えばですが「長征二百三十万光年」に出たらどうでしょう。つまり、アンドロメダ星雲まで一気に逃げるということです。「無限の自給自足能力」を持っている「移動要塞」ならそれが可能でしょ。でも、ヤン一党が「立てこもったイゼルローンを移動要塞化して直ぐに逃げ出した場合」の時点では、帝国軍には移動要塞は存在しない訳です。「無限の自給自足能力」をフルに発揮して、二百三十万光年を逃げる移動要塞を、艦隊戦力で追撃できるなんてことがある訳がないでしょう。さすがに「補給切れ」で追撃不能になるのが関の山ですよ。それに、まさか「イゼルローン移動要塞なら、帝国領内(宇宙の広大さに比べれば、限られたエリアでしかないです)を神出鬼没に行動して、延々と攻撃し続けられる」と主張しているのと同じ人が「イゼルローン移動要塞が追撃して来る帝国軍艦隊を撒いて、一時的にでも姿を消す」ことができない、とは主張しませんよね?一時的にでも撒いてしまえばもうこっちのもんです。一気に銀河系の外を目指し、アンドロメダ星雲まで一直線に逃げれば、二度と捕捉される可能性なんざありませんよ。それに、銀河帝国側も一体どこに逃げてしまったのかも分からない。仮に「アンドロメダ星雲に逃げたかも知れない」と気付いて、後々に移動要塞を建造してアンドロメダ星雲まで探索に行くとして、銀河系と同レベルの星雲の一千億の星々の中から、どうやって「逃げたヤン一党」を発見できるというのでしょうか?それに、何ならアンドロメダ星雲を通り過ぎて、更に他の星雲に逃げてもいいんですよ。「無限の自給自足能力」がある「移動要塞」なんですから。長征二百三十万光年どころか、一千万光年でも一億光年でも「その気になれば」可能な筈です。
ということで、「無限の自給自足能力」を持つ移動要塞が、逃げる距離を飛躍的に伸ばせば、帝国軍がいくら探し回ったところで、捕捉される可能性なんか全くありません。「将来的な脅威」はゼロです。ヤン一党側も「ハイネセンは一万光年だったから百数十年で銀河帝国に捕捉されてしまった。その距離を百倍以上に伸ばせば、百年どころか一万年以上捕捉される可能性はない」と、簡単に「歴史の経験則」で判断できますよ。
>これを利用して、第二の長征一万光年を敢行するヤンに対して、帝国側もまた同じことを行って「永久に」
>追撃をかけてくる可能性も否定できないわけです。
以上の理由から「長征二百三十万光年(あるいはそれ以上)」をヤン一党が実行した場合、帝国側が追撃するのはほとんど不可能なので、そんな危険は無視できます。後からヤン一党を捜索する帝国軍の移動要塞は、何の手がかりもないままに、延々と広大な宇宙をさすらう羽目になりそうですね。
<例えばですが「長征二百三十万光年」に出たらどうでしょう。つまり、アンドロメダ星雲まで一気に逃げるということです。「無限の自給自足能力」を持っている「移動要塞」ならそれが可能でしょ。でも、ヤン一党が「立てこもったイゼルローンを移動要塞化して直ぐに逃げ出した場合」の時点では、帝国軍には移動要塞は存在しない訳です。「無限の自給自足能力」をフルに発揮して、二百三十万光年を逃げる移動要塞を、艦隊戦力で追撃できるなんてことがある訳がないでしょう。さすがに「補給切れ」で追撃不能になるのが関の山ですよ。それに、まさか「イゼルローン移動要塞なら、帝国領内(宇宙の広大さに比べれば、限られたエリアでしかないです)を神出鬼没に行動して、延々と攻撃し続けられる」と主張しているのと同じ人が「イゼルローン移動要塞が追撃して来る帝国軍艦隊を撒いて、一時的にでも姿を消す」ことができない、とは主張しませんよね?一時的にでも撒いてしまえばもうこっちのもんです。一気に銀河系の外を目指し、アンドロメダ星雲まで一直線に逃げれば、二度と捕捉される可能性なんざありませんよ。それに、銀河帝国側も一体どこに逃げてしまったのかも分からない。仮に「アンドロメダ星雲に逃げたかも知れない」と気付いて、後々に移動要塞を建造してアンドロメダ星雲まで探索に行くとして、銀河系と同レベルの星雲の一千億の星々の中から、どうやって「逃げたヤン一党」を発見できるというのでしょうか?それに、何ならアンドロメダ星雲を通り過ぎて、更に他の星雲に逃げてもいいんですよ。「無限の自給自足能力」がある「移動要塞」なんですから。長征二百三十万光年どころか、一千万光年でも一億光年でも「その気になれば」可能な筈です。>
確かに「無限の自給自足能力」を持つ移動要塞をもってすれば、「長征二百三十万光年」だろうが一千万~一億光年だろうが、文字通り永遠に逃げ続けることも可能でしょう。ただし、それは「安全性と宇宙航行上の障害を無視しても良い」という前提付きで良いのであれば、の話ですけど。
そもそも、「第二次長征一万光年」を実行する際は、「第一次長征一万光年」もそうだったように、これまで誰ひとりとして踏破したことがなく、当然のことながら航路図や航法データが何も存在しない「未知の宇宙空間」を航行することになるのですよね? そういう世界に足を踏み出すというのに、銀英伝本編で展開されているような一般的な宇宙航行のような感覚で「長征」が行えるとはとても言えたものではないでしょう。
銀英伝世界における宇宙航行で「整備された航路図」や「航法データ」がいかに重要であるかについては、以下の引用箇所に記載されています↓
銀英伝外伝2巻 P146下段~P147上段
<船団の位置や航路に関するデータは、航法士官が集中管理しているのだから、もしそのデータがまちがったものだとしたら、船団はどんどんまちがった方向へ行ってしまうことになる。
「でも、あまり航路を逸脱するようだったら、どこかの航路管制センターが気づいて警告するんじゃありませんか?」
「うん、だけど船団のほうから、あらかじめ、予定航路変更の事前報告がはいっていたら、いちいち警告はしないんじゃないかな」
たとえば、船団司令部に帝国軍のスパイが潜入していて、わざとまちがった航法データをコンピュータに入れつづけたら、そして、航路管制センターのほうへ予定変更の情報を送りこんでいたら――船団ごとまるまる誘拐できるのではないか。まあ、長時間はむりだとしても、一週間か一〇日くらいは。
「話としてはおもしろいが、事実だったらちょっとたまらんなあ」
リンツ中佐が言ったが、じつはよく似た事実が過去にあるのだ。七〇年前、帝国の猛将バルドゥング提督に苦しめられた同盟軍が、一計を案じて、彼を誘拐した、そのころ統合作戦本部の情報参謀だったマカドゥー大佐という人が、二年がかりで計画をたて、バルドゥング提督の旗艦の航法士官を買収したのだ。前線視察に出たバルドゥング提督は、いつのまにか同盟軍の勢力宙域にはいりこんでしまい、どうすることもできず、つかまってしまった。八年後、捕虜交換式の直前に収容所内でなくなったが、事故か自殺か、はっきりしない。
いまでは回廊にイゼルローン要塞があるから、いつのまにか帝国領にはいりこんでいるはずもないけど、考えてみればこわい話だ。航法計算でしか自分の位置が分からないのだから。そしてその計算が、もしちがっていたとしたら……。>
銀英伝外伝2巻 P149上段~下段
<ぼくたちは、いまさら言うまでもないけど、パルス・ワープ航法でハイネセンへ向かっている。ところが、航法コンピューターのデータをぬきうちで再検査したところ、このままの進路をたもつと、昨日の夕食時には、惑星のない恒星マズダクに突入することになっていたという。
大あわてで航法コンピューターの回路を切って、船団はどうにかマズダクから六〇〇〇万キロの宙域にとどまったのだという。たった二〇〇光秒である。
助かりはしたものの、ぼくたちはハイネセンから一三〇〇光年も離れた方角へ来てしまっていたのだ。航路を算定しなおして、ハイネセンへ到着するのに、最低でも一週間はかかるという。陰謀だか事故だか、いまの段階ではわからないけど、とにかく、たいへんなことだ。>
銀英伝外伝2巻 P157上段
<とにかく、前の日から事態は全然よくなっていないのだった。正しい航法データを、ドールトン大尉の手で破棄されてしまったら、船団は外部に救助を求めないかぎり、この宙域で動きがとれなくなる。ワープしたとたんに、今度こそどこかの恒星のなかに飛びこんでしまうかもしれないのだ。>
これらの記述を読めば分かるように、銀英伝世界では「すでに航路図が整備されている【既知の】宇宙空間」においてさえ、「正しい航法データ」がなければまともな宇宙航行すらできない、いやそれどころか自分達の居場所を把握することさえも満足に行えなくなることが明示されています。
ましてや「第二次長征一万光年」は、銀英伝世界の距離感から見てさえ途方もなく長大な距離を持つことになるであろう「全く未知の宇宙空間」を、それも相当な長期間にわたって航行し続けることになるわけでしょう? そこで遭難などしたくないのであれば、進む先の入念な航路調査を行い、精緻な航路データを作成しつつ、安全を確認しながら慎重に航行する、といった手順を踏む必要が当然生じることになるわけです。
しかも、もし進行先の航路上に「宇宙の墓場(サルガッソ・スペース)」のような障害が存在した場合、これまた「第一次長征一万光年」がそうだったように、たとえそれが(銀英伝世界では比較的短い距離と目されているであろう)数十~数百光年程度の距離であったとしても、そこを通過ないしは迂回するだけで数十年もの歳月がかかる、下手をすれば遭難する危険性が発生することすら考えられます。「安全性」という観点から考えれば、未知の宇宙空間での航行はいくらでも慎重に慎重を期す必要性があるわけで、航行速度も航行距離も、すくなくとも「すでに航路図が整備されている既知の宇宙空間」を進むほどのスコアを叩き出すことはほとんど不可能に近いと言えるのです。
そういう状況では、当然「長征」も著しい鈍行速度でしか進むことができなくなるわけで、そうなれば帝国軍が移動要塞を(たとえ一時的に撒かれたとしても)捕捉する可能性は決して無視できないものとならざるをえないでしょうね。何しろ、常に移動を行える「移動要塞を使ったゲリラ戦略」とは異なり、「全く未知の宇宙空間」の事前調査を行うとなれば、そのために長期間一箇所に留まらなければならないケースも当然想定されるわけですし、すくなくとも最初の段階ではそこは「既知の宇宙空間」となるのですから、帝国側の捕捉の網に引っかかる可能性はそれなりに存在するのです。かといって準備不足のまま「長征」など行おうものなら、それこそ原作でも書かれているように「ワープしたとたんに、どこかの恒星のなかに飛びこんでしまうかもしれない」などという笑えない結末を迎える危険性すら存在するわけで、最初はかなりジレンマを抱え込まざるをえないでしょうね。
前門の「未知の宇宙空間」と後門の「敵の執拗な探索および追撃」、銀英伝世界の宇宙航行事情では、片方だけならばともかく、両方を一度に相手するのはかなりきつくはないでしょうか?
<ということで、「無限の自給自足能力」を持つ移動要塞が、逃げる距離を飛躍的に伸ばせば、帝国軍がいくら探し回ったところで、捕捉される可能性なんか全くありません。「将来的な脅威」はゼロです。ヤン一党側も「ハイネセンは一万光年だったから百数十年で銀河帝国に捕捉されてしまった。その距離を百倍以上に伸ばせば、百年どころか一万年以上捕捉される可能性はない」と、簡単に「歴史の経験則」で判断できますよ。>
そんな「歴史の経験則」など、銀英伝世界には存在しえませんね。というのも、銀英伝世界では、時代が下るにしたがってワープ航行技術および跳躍距離が長くなっていることが明示されているからです。
たとえば、銀英伝の作中には、銀河連邦成立前の旧地球時代における恒星間航行について以下のように書かれている箇所が存在します↓
銀英伝6巻 P16下段
<恒星間航行は技術と距離の壁を前にして、無限の発展という甘美な夢をしぼませかけていた。二四八〇年に、人類の生存圏は地球を中心とする半径六〇光年の球体をなしていた。二五三〇年には半径八四光年、二五八〇年には半径九一光年、二六三〇年には半径九四光年で、停滞の状況は明らかだった。>
旧地球時代におけるワープ航行技術による人類の生存圏が上のような状況なのに対して、銀河連邦時代は一気に数千光年単位まで生存圏を拡大し、そして銀英伝本編の時代には銀河系全体の5分の1(1万光年以上?)までを人類の支配圏とするまでに至っているわけです(銀英伝1巻 P152)。旧地球時代と銀英伝本編の時代とでは、ワープ航行技術について、単純に光年単位で比較すると実に2桁レベルもの格差が存在しているわけです。
銀英伝世界におけるこの事例を基にした「歴史の経験則」から考えれば、距離を100倍に伸ばしても、時間が必ずしもそれに正比例するわけでないことは自明の理というものでしょう。上の例を基に考えれば、4000~6000光年を航行するだけで20日~1ヶ月近くもかかる銀英伝本編のワープ航行技術をはるかに凌ぐ、たとえば1万光年を1日で走破できるワープ航行技術が将来帝国側に出現して、せっかく数十年かけてちまちま稼いだ距離を一気に詰められてしまう、という事態すら想定されるわけです。これは「長征一万光年」のような「【数十年単位のスパンで】遂行される宇宙航行」であれば、当然想定されるべき話ですし、単純に距離を稼ぎさえすれば良い、ということにはならないのですよ。
また、上でも述べたことですが、銀英伝世界では「整備された航路図」および「正しい航法データ」がなければ「ワープしたとたんに、どこかの恒星のなかに飛びこんでしまうかもしれない」と言われるくらいにワープ自体が安全に行えなくなってしまう宇宙航行事情が存在するのですから、「未知の宇宙空間」を航行する際にはワープを使用するだけでも多大な時間と手間がかかるわけで、そんな状況で「数百万光年を長征する」となると、下手すれば数百年~数千年以上もの時間を必要とせざるをえない可能性すらも考えられます。実際、銀英伝の「長征一万光年」でさえも50年以上もの時間を要しているわけですし、長征の距離を単純に延ばす、というのは、ワープ航行技術の将来的な発展の可能性と併せ、正直「割に合う」「現実的な」選択肢とはとても言えたものではないでしょうね。
「第二次長征一万光年」には、「【無限の自給自足能力】を持つ移動要塞」という要素とは全く別に存在する、上記のような「銀英伝特有の宇宙航行事情」をも同時に考慮しなければならないわけで、だからこそ「帝国側の追撃、および将来発生するであろう邂逅の可能性をいかにしてかわすか」という方策が必要不可欠になると私は考えるのですが、どうでしょうか。
> これらの記述を読めば分かるように、銀英伝世界では「すでに航路図が整備されている【既知の】宇宙空間」においてさえ、「正しい航法データ」がなければまともな宇宙航行すらできない、いやそれどころか自分達の居場所を把握することさえも満足に行えなくなることが明示されています。
> ましてや「第二次長征一万光年」は、銀英伝世界の距離感から見てさえ途方もなく長大な距離を持つことになるであろう「全く未知の宇宙空間」を、それも相当な長期間にわたって航行し続けることになるわけでしょう? そこで遭難などしたくないのであれば、進む先の入念な航路調査を行い、精緻な航路データを作成しつつ、安全を確認しながら慎重に航行する、といった手順を踏む必要が当然生じることになるわけです。
> しかも、もし進行先の航路上に「宇宙の墓場(サルガッソ・スペース)」のような障害が存在した場合、これまた「第一次長征一万光年」がそうだったように、たとえそれが(銀英伝世界では比較的短い距離と目されているであろう)数十~数百光年程度の距離であったとしても、そこを通過ないしは迂回するだけで数十年もの歳月がかかる、下手をすれば遭難する危険性が発生することすら考えられます。「安全性」という観点から考えれば、未知の宇宙空間での航行はいくらでも慎重に慎重を期す必要性があるわけで、航行速度も航行距離も、すくなくとも「すでに航路図が整備されている既知の宇宙空間」を進むほどのスコアを叩き出すことはほとんど不可能に近いと言えるのです。
> そういう状況では、当然「長征」も著しい鈍行速度でしか進むことができなくなるわけで、そうなれば帝国軍が移動要塞を(たとえ一時的に撒かれたとしても)捕捉する可能性は決して無視できないものとならざるをえないでしょうね。何しろ、常に移動を行える「移動要塞を使ったゲリラ戦略」とは異なり、「全く未知の宇宙空間」の事前調査を行うとなれば、そのために長期間一箇所に留まらなければならないケースも当然想定されるわけですし、すくなくとも最初の段階ではそこは「既知の宇宙空間」となるのですから、帝国側の捕捉の網に引っかかる可能性はそれなりに存在するのです。かといって準備不足のまま「長征」など行おうものなら、それこそ原作でも書かれているように「ワープしたとたんに、どこかの恒星のなかに飛びこんでしまうかもしれない」などという笑えない結末を迎える危険性すら存在するわけで、最初はかなりジレンマを抱え込まざるをえないでしょうね。
> 前門の「未知の宇宙空間」と後門の「敵の執拗な探索および追撃」、銀英伝世界の宇宙航行事情では、片方だけならばともかく、両方を一度に相手するのはかなりきつくはないでしょうか?
それでは「銀英伝世界の宇宙航行事情」が、「逃げるイゼルローン移動要塞とヤン一党」にとっては決定的障害となって立ちはだかるのに、「追う帝国軍艦隊」にとっては障害とならない点について、ご説明願います。逃げるヤン一党にとっては障害になると力説する一方で、追う帝国軍艦隊にとってその条件がどう働くのかについて、一切説明がないのはどうしてですか。
要は、「未知の宇宙空間での宇宙航行における障害」は、「イゼルローン移動要塞だろうと帝国軍艦隊だろうと同じでしょ」ということですが。何故、この両者に「差別的に適用」せねばならないのか、さっぱり理解できません。私は「未知の宇宙空間における航行」について、イゼルローン移動要塞と帝国軍艦隊の間に、「速度差」を勝手に付けて考えるべきではないと思いますがね。「移動要塞では小回りが利かない」という点については、駐留艦隊の艦船を使用して主に前方の偵察行動を行い「移動要塞の巨体であっても十分進める空間」を確認した上で前進していくことで、特に問題はないと思いますが。
>そんな「歴史の経験則」など、銀英伝世界には存在しえませんね。
使った文言に過剰反応されても困りますね。そんなに意地になって否定せねばならないようなことですか?これは。「一万光年逃げたら百数十年で捕捉された」ということを「歴史の経験則」と言っているだけなんですけど。
>未来の航行技術の発達の可能性について
「詭弁の特徴のガイドライン1:事実に対して仮定を持ち出す、及び3:自分に有利な将来像を予想する」を、思い出してしまいました。
それに、これはどちらかと言うより「(事実上無限の広さを持つと言える)広大な宇宙空間の、どこに紛れてしまったのかも分からない相手を、どうやったら捜せるの?」ということなんですがね。銀河系内に居るのかアンドロメダ星雲なのか、それとも他の遙か遠方の島宇宙なのか、どこに行ったか分からない相手を、どうやって捜し当てるというのでしょうか。その方法を、「銀英伝世界」の「作中記述」から、是非探し出してみて下さい。でも、「自分に有利な将来像を予想する」のはお断りしますがね。「自分に有利な将来像を予想する」がOKだというのなら、「科学技術の発展の可能性」を根拠に、何でも主張できるんじゃないですかね。
これを「OK」だとすると、あまりに「ご都合主義」なのではないかと思うんですが。それはいくら何でもマズイでしょう。
それと、根本的な話ですけど、冒険風ライダー氏は「移動要塞による第二次長征一万光年」には、反対はしていなかった筈ですよね。今、私が言っているのは「移動要塞論の否定」じゃないんですよ?「移動要塞で暴れ回って攻撃中止と引き替えに帝国と取り引きし、可住惑星を一つ得る」ことを目的としているのなら、「旧同盟領を貰うつもりだろ。そうじゃないと攻撃なんかする意味がないし」と私は考えていたので、「旧同盟領の惑星住民を人質に取られたらお手上げでは?」という疑問をぶつけた訳ですが、「そうではない。帝国領だろうとどこでもいいし、住民なんかイゼルローンの人員が居れば要らない」という「極論」だったものですから、「だったら現在の帝国と同盟の版図にこだわる意味が全く不明ではないか。どこでもいいのなら、帝国の手が届く範囲から逃げる方が、遙かにマシでしょ。ヤン一党が無差別攻撃を嫌う云々別にしても、逃げる方がより有利で将来性のある選択じゃないの。『どこでもいい』のなら、帝国領攻撃なんかする意味がない」と言っている訳です。「移動要塞論」をベースに、「より有利な選択」について主張している訳ですから、何が何でも否定しなきゃならん必要性はないと思いますがね。
> 議論の目的は「アルテミスの首飾りへの質量弾による遠距離攻撃は、銀英伝の世界において、例外的に可能だったのではないか」というものです。本当は、別スレッドで議論した方がよいのかもしれません。
了解しました。以下、その趣旨に応じて、回答いたしましょう。
(1)氷塊の発射角度について
> > 「衛星が氷塊を回避しない状況に追い込」まれ得るのであれば、「ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定め」る必要など、ないのではありませんか。衛星にさえ氷塊が命中すれば、「ハイネセン本星への突入」が避けられるのであれば、「衛星に必ず命中するように発進角度は慎重に定めた」と書かれているのが自然でしょう。
>
> どうしてですか? 作戦会議の目的が、衛星を破壊する事であったのは、文脈から明らかなことです。つまり、衛星を攻撃しない作戦は考慮するに値しない作戦であり、破壊が可能な作戦の内で、最も周囲への影響(例えば、ハイネセンへの影響であるとか、自軍の被害などです)が少ないないし皆無な作戦を選択したと考えるのが自然です。衛星と異なる目標を攻撃し、その結果が衛星に影響して破壊する等といった場合であればともかくとして、ことさらに衛星が攻撃目標であることを示す必要を感じません。
> また、作戦会議からは、前回のレスで述べた程度の情報しか解りませんが、その後に続くヤンとシェーンコップの会話を引用すると、
>
> /* 野望篇p188上段より引用
> 「……何か質問は?」
> それに応じて、軽く挙手したのはシェーンコップだった。
> 「一二個すべてを破壊してかまわんのですか?」
> */
>
> と、あります。この後でも、誰も衛星の回避や破壊の可能性について問題にしていないことから、衛星に必ず命中し破壊できるという文言を直接的に書かなくとも、間接的に解る事だと思います。
1 衛星に氷塊が100%確実に命中する
2 命中後の破片が、ハイネセンに影響しない
上の二点が共に必ず達成されるのであれば、そもそも「発射角度」を調整する必要などないのです。この作品設定を無視しない限りは、
1と2が同時に達成されないことが作品において前提となっている、としか解釈せざるをえません。作品を無視しないのであれば。
No.6400ぴぃさんの記載
<この事実から、氷塊がハイネセンへの「突入コース」であることは、氷塊がハイネセンへ「突入する」ことを意味しないと考えられます。よって、衛星が氷塊を回避しない状況に追い込んで破壊したという推論はまだ成立する余地があると考えます>
私が問題にしたのは、そもそも上の記載です。
ヤンが「氷塊の発射角度」を、氷塊がハイネセンへの「突入コース」にあるように設定したから、(ハイネセンへの氷塊の突入を防止すべく自ら衝突しようと)「衛星が氷塊を回避しない状況に」追い込まれた、と言っているわけでしょう。
ハイネセンを餌にして衛星を釣るような、そんな馬鹿なことはないでしょう、と言っているのです。
はっきり言いますが、命中精度の低い氷塊を衛星を自ら衝突させるべく、わざわざ「氷塊の発射角度」を、氷塊がハイネセンへの「突入コース」にした場合に、その破壊による破片は、まちがいなくハイネセンへの落下コースにあると思いますが、この破片については、どうやって対応するのですか?
氷塊の発射角度が、衛星による衝突があろうがなかろうが、ハイネセンへの突入コースから外れていることが、絶対条件となりませんか。そもそも「慎重に発射角度を定めた」とする作品中の記載と矛盾しませんか?
(2)衛星の機動力について
> > だいたい、「無誘導の氷塊に軍事衛星の側が当たりに行った」などということがあったのなら、クーデタ軍のオペレータが、「衛星が自ら氷塊にぶつかっていきます!」なんて金切り声を上げているはずですが、このような裏設定を裏打ちするような作品中の記載もないですよね。
> >
>
> それを言うなら、衛星が氷塊を、衛星の機動力で回避できなかった、という記載も存在しません。
> また、オペレータが、「衛星が自ら氷塊にぶつかっていきます!」と金切り声を上げるかどうかは、オペレータの人格性に関わる問題であり一概には言えません。第一、衛星は一刻も早く氷塊を攻撃するために、軌道上の位置を氷塊のコースにあわせるでしょうし、また、衛星の氷塊に対して攻撃が効かない事実、衛星が完全破壊された事実に比べれば、心理的に動揺させる要素として些末な事象ではないでしょうか。
「それを言うなら、衛星が氷塊を、衛星の機動力で回避できなかった、という記載も存在しません。」なんて書いていますが、読者があたりまえに納得するからではありませんか。「要塞主砲(トールハンマー)に撃たれる戦艦が、戦艦の機動力で回避できなかった」とか「戦艦の主砲で撃たれる駆逐艦が、その駆逐艦の機動力で回避できなかった」などという記載もまったく存在しませんが、読者があたりまえに納得できる内容だからでしょう。氷塊による攻撃の場合も、亜光速で突入する、と書いてあるのですから、それを回避することなど思いもつかない、というのが、まず常識的な解釈だと思いますね。こういう常識的な解釈を打ち破っておく必要がある場合に、作者は解説をつけるのですよ。いちいち何もかも、1~10まで説明することなど、事実上できないですし、読みにくくてしようがなくなるでしょうから。
「衛星は一刻も早く氷塊を攻撃するために、軌道上の位置を氷塊のコースにあわせるでしょうし、また、衛星の氷塊に対して攻撃が効かない事実、衛星が完全破壊された事実に比べれば、心理的に動揺させる要素として些末な事象ではないでしょうか」
別に、攻撃に当たって、衛星が「軌道上の位置を氷塊のコースにあわせる」必要などないでしょう。そもそも、自らを狙って氷塊が飛んできている(既に氷塊のコース上に位置している)わけですし、もし、ずれた位置にあるとしても、斜めから攻撃を掛けることは当然可能ではありませんか。
また、ぴぃさんの推論「衛星が自ら氷塊に衝突する」という前提の下では、わざわざ氷塊が衛星にぶつかっていかない限り、衛星は氷塊との衝突を回避できるのですよ。「衛星が氷塊にぶつかっていく」=「衛星が完全破壊される」なのですから、わざわざ「衛星が自ら氷塊にぶつかっていきます!」(衛星が自殺しようとしている)と金切り声を上げることになりませんか。わざわざぶつかっていかなければ、破壊されることなど、ないのですから。
(3)銀英伝の技術のあつかい
> /* 黎明篇 p111上段
> 「ボタン戦争と称された一時代、レーダーと電子工学が奇形的に発達していた一時代をのぞいて、戦場における用兵には(後略)」
この話は、非常に面白いので、いつか取り上げてみたいテーマだと思っています。
この話は、要は、無人艦、無人兵器の出現を、極力押さえるための作者の予防線ですね。電子制御兵器が有人兵器よりも一般に使えるものとなってしまったら、艦隊にたくさんの人員を乗せる必要も無く、戦闘で多数の艦が破壊されても、人命が失われることが無く、銀英伝の主題の一つであろう「戦争の悲惨さ」が、まるで描かれなくなってしまうことになるでしょう。
だから、極力、電子制御による兵器が、有人兵器よりも劣るように、書いているのです。
さて、アルテミスの首飾りと称される自動衛星は何者であったか。
これこそ、通常の戦艦よりも高性能な自動兵器なのです。なにせ、普通に攻撃したら艦船に被害が出ると、ヤンもクーデタ軍の将校も考えているわけですから。「作品全体を貫く基本原則」からしたら例外的ですね、例外的。
だから、「作品全体を貫く基本原則」がどうあっても、作者自身が「例外」を設けている部分に関してはしたがうより他無いので、氷塊の命中精度に関しても、例外だとして、作品で設定されている通りに解釈する必要があります。
> もしも、そのような技術が達成されているならば、艦隊の規模はもっと小さな規模(例えば、現代の艦隊レベル)の方が妥当だと思いますし、作品中での戦闘の描写は異なる物だったと思います。私は、艦隊戦に、数千隻単位が必要というのは、数によって広大な宇宙空間での命中率を有効な域まで向上させる為だと捉えていましたが、パンツァーさんは違うのでしょうか?
落ち着いて考えて欲しいのですが、これは単に戦争は数だ、というだけの話ですよ、これは。命中精度が100%だろうが、1%だろうが、性能が同じであれば、数が多い方が勝つに決まっているでしょう。それ以外に何か理由があるとでも思っているのですか?
(4)質量弾攻撃の可能性
> また、そのような遠距離攻撃が可能だとすると、例えば、ラグナロック作戦時に、なぜ、同盟軍は、フェザーン回廊から飛び出してくる帝国艦隊を、氷塊もしくは隕石で遠距離攻撃しなかったのかの説明が困難になります。
> 私は、機動能力のある物体への遠距離攻撃は、原則として効果のない攻撃であり、アルテミスの首飾りでは、例外的に攻撃して効果のある状況が現出したものであったと考えます。
これも作品設定を前提とする上で、可能性のある手の一つと言えるでしょうね。
同盟軍に時間的余裕があったかどうか、という問題はあるとおもいますが、面白い手だと思いますよ。
念のためにお伺いしますが、本ホームページにある<考察シリーズ>の
銀英伝考察3銀英伝の戦争概念を覆す「要塞」の脅威(冒険風ライダーさん)をお読みになっていますか?
質量弾攻撃うんぬんの元ネタは、ここにあります。
質量弾攻撃を利用しないヤンはラインハルトは愚か者だ、というような話もでてきますので、「フェザーン回廊における質量弾攻撃」による迎撃、についても、質量弾攻撃を活用できない作中人物の愚かさ、を示す一つの根拠に追加されることになるでしょう。
この話については、「銀英伝の戦争概念を覆す「要塞」の脅威」をお読みいただいてからの方が良いかと思います。
> また、お返事できるのも最短で一週間に一回のペースとなりますがご了承ください。
その辺はお構いなく。