本論とは関係ないですが、興味がありますのでちょっとレスを。
> あーーーー。どうして話がすれ違うのかわかりました。
> すいません、説明不足でしたが私は「在日米軍基地内に居住する米国民間人」の話をしていたんです。
> 将兵の家族とか、軍に委託された民間施設の勤務者とか、
> 故郷を遠くはなれて異国の軍事基地に居住する人たちのことです。
> イゼルローン居住の民間人に近いのは、おそらくそういう立場の人たちだと思います。
> 「彼らの指揮権は基地司令官に属するんだろうか?」というのが私の疑問だったわけです。
>
> 米軍の将兵が10万人いるわけだから、軍関係の民間人も相当の数が日本の軍事基地内に居住していると思うんですが、
> 彼らの政治的権利やら住民としての権利やらの扱いがどうなっているのか興味あります。
在日米軍基地内には多数の民間人(主として将兵の家族)が居住しています。アメリカでの住環境そのままに、ゆったりした環境で緑の芝生の瀟洒な住宅に住んでいます。どれくらい「米国内そのまま」かというと、例えば三沢基地内には「バーガーキング」のお店があるくらいです。
で、この人たちは「普通の生活」をしています。地方参政権はともかく、国政への在外投票権はありますし、基地司令官による基本的人権の制限とかは基本的にありません。物理的に外界とある程度遮断されてはいますが、なんせ住民の数が多いし、アメリカの生活を可能な限り再現することで、できるだけ住民にストレスをかけないようにできています。
こういうことができるのは、在日米軍基地が基本的に「後方基地」だからです。艦隊や飛行隊が出撃し、帰投して整備補給を行う基地です。ドンパチを実際に行う「前線基地」ではない。当たり前の話ですが、前線基地に非戦闘員たる将兵の家族を置いたりしません。
また、米軍の歴史には少ないことですが、非戦闘員の住む基地が戦闘に突入した場合(そして運悪く非戦闘員を退避させられなかった場合)、非戦闘員も基地司令官の指揮下に入ります。でも戦況が許す限り、第一優先で非戦闘員を逃がすことになります。
実は、イルゼローン要塞に数百万人も人間が住んでするという設定自体が、いささか非現実的な気がしております。いくら巨大でも制御や管理は自動化が可能なんだから、基本的に軍人だけで運用することはできるはず。そのかわり、遠くない安全な場所(ベトナム戦争時のバンコクのように)に補給と将兵の休息のための基地を別途設けて、ローテーションで兵を後方に下げて休息させるのが米軍の用兵思想です。後方基地設営と輸送のコストはかかりますが、こうやって交代させる方が士気や練度を維持するのに有利だということでしょう。家族は後方基地に置いた方が実際に安全ですし、戦う将兵にとっても断然安心田だと思います。また、指揮官も含めて「出し入れ」することで、前線基地の「軍閥化」を防げるという、有史以来の政治的難問も解決できますし。
最前線に大量の非戦闘員を置いて平然としている銀英伝の用兵感覚は、軍隊の後ろから鍋・釜を下げた家族がぞろぞろついてくるという、中国の伝統的軍隊を思い出しますねー。ハードは超ハイテクでも、ソフトがむちゃくちゃ古臭いという・・・まぁそれが銀英伝をすごくわかりやすい物語にしているわけで、個人的にはあまり気にしていないんですが。私は、「上手にだましてくれれば嬉しい」というタイプの読者なもので。つまり、話がおもしろくなるのであれば、多少設定に矛盾が生じても、それがバレバレで興醒めにならない限りOK!なんです。
横レス、失礼しました。ではまた。
索敵・観測能力に関しては確かに、ヴェスターラントの虐殺状況映像記録の際、オーベルシュタインは高速先行艇を出してますね。
あれがどの距離によって可能かの描写がないので推測しかできないですが、隠密利に作業というのは意外に容易だったかもしれないですね。
ただ、よしんば設置作業が可能だったとしても、やはり運用面での不安要素が多すぎだと思います。
それは、先に記述した「技術面の不安定性」
例えば、昨今話題になっているみずほ銀行の他システムとの連動なども「理論的」には問題なく動作するはずでしたが、実際運用してみると現在のていたらくです。
また、打ち上げ失敗が続いた日本の「ロケット」なども、技術理論は確立しているし、他国で成功している実状がありますが、それは日本より技術的に特別優れているという訳でもないでしょう。下手すると、基礎技術は日本の方が優れて・・・ないのかな?
そして、「要塞を移動させる為のエネルギー消費量と、それを再蓄積できる時間」
大出力であればある程、そのエネルギー消費量が増大しますが、要塞に収容している艦艇(2万位)がほぼ永久に行動できるエネルギーは蓄積出来ても、要塞自体が移動するエネルギーを常に補充しきれるのかという事です。
また、移動速度のやワープ距離の問題もあります。
果たして、戦闘するにしても逃走するにしても満足する数値が得られるのか疑問です。
ただ、これは実数が示されていない訳で、「出来る」「出来ない」は主観によるかもしれません。
ちょっと気になるのが、「要塞を移動させるという構想が現代の何かに置き換えられるレベルなのか?」ということです。
「スパルタニアン・ワルキューレ」は戦闘機、「航宙戦艦」は空母くらいに想定するとして、「要塞」は何でしょう。人工浮島?要塞の移動を、開いた口が塞がらないレベルのばかばかしさと感じていた辺り、こんなイメージでしょうか。
軍事的な話ではないにして、「アメリカの西海岸にディズニーランド島を作って、興行するために東京やヨーロッパに移動させよう」って言われてる様なモノでしょうか。
もしかしたら、「要塞移動構想」自体は選択肢には入ってたかもしれませんが、特に優先順位が高くなかっただけかもしれません。ヤンにしてみれば、「移動要塞」の有用性を示してしまったら(示せるかは別にして)、帝国側でもガイエスブルグ要塞の失敗で二の足を踏んでいる移動要塞を増産する可能性が出てきます。
「長期戦で帝国攪乱」より、短期に局地戦でも戦果をえて、後は外交交渉でなんとか民主共和制が小なりとも残ればよかっただけと考えていたハズです。
ラインハルト政権の確立後は、ヤンとしては彼(帝国)に勝利するより、民主主義の種を残す事に腐心していた感があります。実際、腐敗政権を打倒した後の政権はその腐敗土壌を嫌って綱紀が比較的厳粛で、民心を得て安定する事が多いですし、ラインハルトの人となりから暫くは共存が可能と考えていたのでは?
「作中史実」は、かなり綱渡りでしかも(後で考えれば)その時々で最高とも言うべき結果を都合よく残しています。
一方の雄であるラインハルトはトントン拍子に帝国を覆しましたし、他方のヤンはラインハルトの権力が巨大になった故に直接対決せず、その部下との戦闘をする故に「不敗」でいられる状況を設定出来、それはラインハルトの黒星にもならない。
なかなか考えたバランスですよね。
あ、結構批判的な意見ばかりですが、この様な視点での考えというのは興味深いです。
ちょっと脱線すると、僕が気になったのは、「宗教」の扱い。
たしか、ラインハルトは「宗教に関心がない」とかいう描写があった気がしますし、何か、無宗教感が漂い、未来世界で宗教がなくなってカルトだけが登場している感じの世界設定に見えましたが、帝国側で「大神オーディンの恩寵~」とか「ヴァルハラで~」とか、「宗教心バリバリやんか」と突っ込み所満載(^^;
この辺りは、典型的な戦後日本人が書いた作品だなぁ、と思いました。
#宗教心は否定するのに、宗教感覚はある。
まぁ、どんな素晴らしい作品でも完璧にとはいかないのは当たり前なのでご愛敬(^^
#宗教は扱うの難しいし・・・
> 理屈では安全と分かっていても、やはりガイエスブルクの悲劇的な最期は感情的に尾を引き、万一の事を考えればやはり将兵は家族を居住させるのはためらうのではないかと個人的には思うのですが、まあ、この辺りは認識の違いでしょう。
同感です。
人間が理屈だけで物事を理解できるなら以前に田中芳樹が書いたように硬式飛行船はもっと発展していると思います。
>技術問題
>1.帝国と同盟の技術水準に明確な格差が存在しない
これは同意します。
>2.移動要塞の技術自体が今までのワープ・航行エンジン技術の応用で開発できる
ここは注意すべきでしょう。
「既存の技術の応用である」ということと、「技術の集積体としての完成物(製品)」ということは、イコールではないのですから。
例えば、ソニー製ラジオがコンデンサや可変抵抗などの既存のトランジスタ技術の応用だからといって、
同じ部品を調達したからソニー製とまったく同じラジオが作れるということにはなりません。
個々の技術があるということと、それらを束ねて一つのシステム(製品)として完成させるということは、違う次元の話なのです。
>3.ヤン自身が移動要塞の秘密を完全に掌握できている(これが銀英伝3巻のあの戦術につながった)
逃走する車のタイヤを、警官が銃で打ち抜き首尾よく止める・・・映画などでよくあるワンシーンですが、
ではこの警官は車の原理を完全の掌握できていると言えるのでしょうか?
警官はエンジンの仕組みからサスペンションの動作原理にシャーシ構造に・・・そういうものに通暁していたからタイヤを打ち抜くという戦術に繋がったのでしょうか?
答えは否です。
動いている物体の足を壊せば止まる。こんなことは原理を知らなくても、少しの観察力で誰でも思いつくことです。
ヤンが採った戦術もしかり。
それはタイヤを銃で打ち抜くという話でしかなく、移動要塞の秘密を完全に掌握している証明にはなりません。
どうも私には冒険風ライダーさんが、技術というものに対して非常な思い違いをしているとしか思えません。
既存の技術の応用だから簡単にできると繰り返されますが、ではZeroさんが挙げられたみずほ銀行のトラブルはどう解釈するのでしょう?
自動決済システムなんて既存の技術の応用に過ぎず、しかも合併前の各行で運用されていたものですから、それを繋ぎ合わせて一つにするだけのこと、こんな簡単なことはないはずですね。
にも関わらずこれだけ酷いトラブルが出ています。
冒険風ライダーさんの応用技術論によればあり得ないと思いますが?
>それから、もしあくまでもイゼルローン要塞の改造に時間がかかると言うのであれば、
>かつて私が「銀英伝考察1」のスレッドで論じたように、ヤンが時間稼ぎのための対外外交・謀略活動を帝国に対して行っていけば良いだけの話でしょう。
やはりこれも技術に対する認識の違いから、結論が違うものになる話なので私の結論のみ記しておきますが、いつまでという期限(移動要塞がシステムとして完成する時期)が明確でない時間稼ぎは、ジリ貧に至るだけです。
>工事秘匿の問題
陵雲さん、ご指摘ありがとうございます。
漠然と「索敵」というものを考えていました。確かに(天体)観測と索敵
は違いますね。
陵雲さんの指摘のもと、もう一度論を組み直してみたいと思います。
私が言うところは観測ができれば充分なんですね。
つまり、イゼルローン要塞表面に何らかの異常が見られるかどうかが入手すべき情報であって、
索敵すなわちレーダー等を使って未確認の相手を探知することではないんです。
それはそうでしょう。
イゼルローン要塞は既に両軍にとって周知のものであり、「未確認の相手」ではないんですから。
銀英伝世界の天体望遠鏡がどのくらいの性能を持っているかは分かりませんが、
ハッブル宇宙望遠鏡のようなものを回廊出入口に設置しておけば、
観測できるでしょう。
仮に光学的に捉えることができなくても、電波望遠鏡ならば大規模工事に伴う電波の変化を捉えますから、必要な情報は充分得られます。
さらに先行偵察衛星まであるのですから、観測は可能です。
そして小説中の記述。
この年からヤンが回廊各処に設置した監視衛星郡は、ケンプ艦隊来襲に際してほとんどが破壊されてしまい、予算不足のまま補充されず、索敵に関してはいちじるしい機能低下をきたしていた。
(4巻、194P)
帝国方面へ進出した情報収集衛星が、帝国の民需用通信波をキャッチしたとかで、帝国の国営放送の画像を見ることができた。
(外伝2巻、61P)
つまり、偵察衛星を用いた情報収集がごく当たり前に行われています。
したがって、イゼルローン要塞の工事秘匿は不可能です。
ついでに冒険風ライダーさんから出されているいくつかの疑問点も、簡単に説明できることです。
>たかだか500~1000光秒程度の索敵機能を使って、一体どうやってイゼルローン要塞を「遠距離」から、
>しかも「要塞外面の詳細」を撮影することができるわけなのですか?
これは陵雲さんの指摘の索敵と観測の混同ですね。
>もちろん現実には、派遣した先行偵察衛星なり強行偵察艦なりは、アルテナ星系に到達するどころか、
>その遥か手前で要塞側の哨戒部隊に捕捉され、撃滅されてしまうのがオチでしょう。
>大規模な艦隊派遣でもあれば話は別ですが。
偶発的な接近遭遇戦が起こる程度の索敵能力で、艦船よりも小さい衛星がことごとく捕捉できるはずがありません。
だいいち、原作の記述にあるではないですか。
「不完全ながらも」一定の索敵が可能だと。
>もし、イゼルローン回廊出口付近から直接イゼルローン要塞や駐留艦隊の内情などが正確に掌握できるのであれば、
>あのような偶発的な接近遭遇戦が発生する道理がそもそも存在しえないではありませんか。
イゼルローン表面にどのような変化が現れたかを「観測」することと、
出撃した艦隊がどこをどう通って侵攻してくるか「索敵」することは違います。
そもそも哨戒部隊が存在するのは、監視衛星などの手の届かない範囲をカバーするためでしょう。
これは現代戦に置き換えれば容易に理解できます。
どれだけスパイ衛星や航空写真が高精度でも、地上の偵察部隊は存在しつづけるのと同じ理屈です。
(湾岸戦争の際、スパイ衛星によりイラク軍の部隊単位の動きすら筒抜けでしたが、だからといって地上部隊は索敵をしなかったのですか?)
>また、観測装置がイゼルローンのような小惑星クラスの小さな要塞をすらはるか遠方から捕捉する能力を持つのであれば、索敵があくまでも「観測能力重視」である以上、
>それを宇宙船に積み込んでしまえば、はるかに長射程の索敵圏内を持つ偵察艦を作り出すことも可能となってしまいます。
>そしてそれは移動要塞と同様、銀英伝の戦争概念を根本から覆してしまいかねないほどに脅威なシロモノです。
これも索敵と観測の混同です。
特定座標を観測する能力と、不特定座標から移動物を発見する能力は違います。
天体望遠鏡で星は見られても、移動する艦船が見られるわけないでしょう。
銀英伝世界の索敵事情は、断片的な記述しかないので完全な検証は不可能ですが、しかしそれら記述と現代の索敵事情とを考え合わせれば、おおよそ納得のいくディテールは浮かび上がってきます。
偵察衛星を利用した情報収集と宙域の監視、プラス哨戒部隊による宙域の監視。
それはずばり現代の軍事衛星と地上の偵察任務と同じ関係にあると言えるでしょう。
したがって、
>たかだか500~1000光秒程度の索敵機能を使って、一体どうやってイゼルローン要塞を「遠距離」から、
>しかも「要塞外面の詳細」を撮影することができるわけなのですか?
というような認識は、イージス艦の索敵能力でどうやって隠れた化学兵器工場を遠距離から撮影するのですか、と言っているにも等しいことと思います。
それからもはやこれは枝葉末節のことですが、
>このシャフトの言動を移動要塞の要素を抜きにして普通に解釈すると「イゼルローン要塞および駐留艦隊の索敵圏内、
>下手をすると主砲射程圏内で要塞の建造を始める」と言っているようにしか聞こえないのですけどね。
それは牽強付会に過ぎますね。
いくらシャフトが俗物だといっても、要塞の索敵圏内や主砲射程圏内で悠々工事ができると思うほど馬鹿ではないでしょう。
だいいち、前面がどの程度「前」なのか、特に言及が無い以上、通常の常識で考えられる範囲でしょう。
>シャフトは「要塞の火力と装甲をもって要塞に当たらせる」と言っているのですからなおさらのことです。
違います。
その台詞はケンプ以下に移動要塞の趣旨を説明する際に出たものですから、勝手に「移動要塞の要素を抜きにして」、前面に繋げてはいけません。
>だからこれは索敵云々とは何ら関係ないどころか、むしろ私が主張している
>「イゼルローン要塞に接近してその様子を詳細に撮影するのは無理」の補強にしかなりません。
いいえ。
偵察衛星に関する記述と合わせて、私の説を補強するものになりこそすれ、冒険風ライダーさんの説を補強することにはなりません。
>移動要塞最強論
これについては後ほどまとめます。
とりあえず技術&隠蔽の話が一段落つかないと。
こちらも量的に大きくなりそうですので。
冒険風ライダーさん
<これを見れば、艦艇の整備事情だけでなく、2割強も存在する新兵の存在と、急激に膨張した軍組織の混雑振りが、戦力編成の著しい妨げとなっていたことが判明するではありませんか。特に「新兵の練度を高める」というのは、艦艇の整備などよりもはるかに時間がかかるものです。言うまでもないことですが、そのような事情を無視して艦艇の整備のみをひたすら最優先して行っても意味がありません。
むしろ、戦力の充実を図るというのであれば、全技術力を全て移動要塞改造に投入し、工事の完成と要塞の宇宙航行の安全が確認された時点でイゼルローン回廊を離脱して、敵を無制限の持久戦に引きずりこんだ方がはるかに懸命な選択だったことでしょう。新兵の訓練も艦艇の整備もその過程でゆっくりと行うことができますしね。>
例え艦に搭乗する兵士がいなくとも、無人艦隊があればかなり戦術の幅が広がると思うのですけどね。例えば10巻でユリアンは全艦艇の一割を無人にして予備兵力に見せかけ(P154~155)、自爆させて黒色槍騎兵を混乱させる(P171)という策を使っています。
それに8巻(P60)で回廊内に進入してきたメックリンガー艦隊をヤンは戦わずして後退させる為に全兵力を挙げて迎え撃っていますが、この時も無人艦隊を後方において兵力を水増しすれば成功率も高まったはずです。
このように無人艦隊があれば戦術の幅の拡大や敵への欺瞞工作や威圧の材料として使えるという利点があるのですから、艦艇の整備・修理を優先して行なうのには大いに意味があったと思います。にも関わらず、現実には戦場に現れたヤン艦隊は20000隻程度だったという事実は、どう考えても奇妙で、やはりイゼルローンにいて艦の修理・整備にあたった技術者や工兵の絶対数及び熟練度が著しく劣悪な状況にあったと考えざるを得ないのではないでしょうか。こういった人的資源という面から考えても、やはり要塞改造は困難だったのではないでしょうか。
<あくまでもイゼルローン要塞改造に時間がかかると言うのであれば、ヤンは自分達の陣営を有利にするためにも、外交や謀略を巧みに駆使した徹底的な時間稼ぎ戦法に打って出るべきだったのではないのですか? あの当時帝国内でイゼルローン遠征をひたすら訴えていたのはラインハルトひとりだけで、しかも穏健派の大半は回廊封鎖を基本とした持久作戦ばかり訴えていたわけですから、ヤンが本気でやろうと思えば簡単に行えたはずでしょう。地球教などとも手を組んで帝国の後方を効果的に揺さぶってしまえばさらに貴重な時間を大いに稼ぐ事すらも可能だったはずです。>
そうなった場合、当然ラインハルトもヤンの時間稼ぎに気付くでしょうし、やすやすとその手には乗らないでしょう。また、そういった謀略や外交を行なうにはロムスキーを筆頭とする革命政府のお歴々を通さねばなりませんが、果たして彼らがヤンの献策をそのまま受け入れるでしょうか?個人的には革命政府の外交能力など「ヘンスロー以上、オーデッツ以下」が関の山だと思いますし、かといって軍人であるヤンがあれこれ指図すれば外交・渉外の権利の侵害だと反発し、かえってヤンへの不信感を増幅しかねません。謀略にしても同様でしょう。外交や謀略を実行するにしても革命政府自体が色々な意味で足かせになるのではないかと。
それに地球教やルビンスキーと一時的にせよ手を結ぶのは危険なのではないでしょうか。特に地球教はキュンメル事件でラインハルトを暗殺しようとした前科がありますし、万一関係が発覚すれば帝国との外交の選択肢が狭まってしまうのでは?そもそも彼らと接触する為の手段はどうやって確保するのでしょう?
<仮にラインハルト個人が信用できたとしても、帝国全体としてはそれほど信用できるものでもないですよ。帝国内にはオーベルシュタインもいるのですし、また「反逆者の家族」というだけで周囲の社会から排斥されてしまう可能性だって存在します。これでは外部の家族が危険であることに変わりはありません。
まあ、将兵達の家族は「エル・ファシル政権に自分達の家族の一員(父親とか息子とか)が参加した」と聞いただけで、家族に会いたい一心からも自分達の身の安全のためにも、自分達の方から積極的にイゼルローン回廊へとやって来ざるをえないことでしょうから、将兵の家族に関してはあまり問題は生じないようには思いますけど。>
旧同盟領ではヤンの声望は圧倒的なものだったのですから、その元で戦う将兵達の家族が社会から排斥される可能性は低いのではないでしょうか。小説にもそんな記述は探した限りではありませんでしたし。
また、将兵の家族が各星系からイゼルローンに大量に流入するのを看過するほど、ラインハルトはお人よしではないでしょう。各惑星の宇宙港において管理・統制を行なわせたりするなどの対抗策ぐらいは取ると思いますが。
<それに、民間人の大量移民なんてそんなに難しいことでも何でもないでしょう。すでに銀英伝5巻におけるイゼルローン要塞放棄に伴う500万人もの脱出劇という前例が存在するのですし、第一、仮に帝国側が大量移民を察知したところで、すぐさま帝国軍が妨害しにやってこられるわけでもありません。帝国軍が現場に駆けつけてきたときには、すでに大量移民作業が終了してしまった後でしかないしょう。エル・ファシルの人口は、過去にヤンが引き連れていた民間人の総数から推察して約300万人弱でしょうから、脱出も楽なものですよ。
これもヤンの軍事行動の際の障害となる可能性はありません。>
工事の終了が遅すぎればそれ以前に帝国軍がイゼルローン回廊に到達してしまい、エル・ファシルへの移動は不可能になってしまいまうという事もありえますし、またエル・ファシルからの住民の移動中を見計らって攻撃を受ける可能性もあります。結局はこの問題も移動要塞がいつ完成するかで決まるという事でしょう。
<それで、件の銀英伝10間の話ですけど、元々あの当時のイゼルローン陣営があえて出撃した目的は「帝国軍と一戦して勝利する」ことにあったのですから、自軍に有利なイゼルローン回廊内に敵を引きずりこんで戦うために、あえて「不穏な様子」やら「出撃」やらを敵に見せびらかしていた可能性の方が高いでしょう。
それに「不穏な様子」と言っても、基本的には出撃の兆候となるような現象は全て「不穏な様子」とみなされるわけですから、たとえばイゼルローン周辺宙域の哨戒活動が活発になってきたとか、大規模な艦隊演習が繰り返されるようになってきたとかいった内容でも、帝国側にとっては充分に「不穏な様子」とみなすことができるわけです。そしてそれに警戒心を抱いた帝国側が哨戒活動を活発に行いだしたところで、これみよがしに「出撃」を見せつけ、帝国側の出動を促したというわけです。
こんなところで大体の説明はできるのではないでしょうか。>
うーむ、この辺りの反論はもう自分ではきついですね。
まあ、悪あがきをさせてもらえれば、イゼルローン回廊には索敵システムの死角になる宙域というものが存在するらしく、10巻のP56ではメルカッツの別働隊がそこに潜んでワーレン艦隊の側面を奇襲する事に成功しています。別働隊の艦艇数は具体的に記載されていませんが、ヴァーゲンザイル艦隊と対峙したユリアンの本隊が6600隻であった事(P52)と、シヴァ星域でのイゼルローン軍の総兵力が9800隻(P152)であった事から考えて、およそ3000隻前後であったと推測出来ます。それだけの艦隊が隠れる事が出来るだけの宙域が存在するのですから、小回りの利く強行偵察艇が哨戒艦隊の目を盗んでそれらの点在する大小の宙域に隠れつつ移動し、近づいてある程度の距離から要塞の動向を探っていた、というのはどうでしょうか?
偶にしか書きこまない不精者ですが、非常に面白い考察であると思いますので、私の意見を書いてみたいと思います。ご笑覧ください。
1:要塞は本当に無補給の拠点足りうるか
私は「要塞は無限の自給自足能力を持つ」と言う前提自体に大きな疑問を抱いています。はたしてそんな便利なものが実在しうるかどうか?
結論から言うと私は不可能だと思います。まず、要塞の動力源である核融合炉。核融合炉だってエンジンの一種である以上は燃料を必要とします。「核融合は無限のエネルギー」と言われているのは、要するに燃料である水素が地球の海水中に無尽蔵と言えるほど豊富に含まれており、全人類の使うエネルギーを全て核融合でまかなっても数百億年分は持つ、と言われているからです。
従って、要塞の核融合炉が必要とする水素、ないしヘリウムはやはり外部からの補給に頼らざるを得ないのではないでしょうか?
要塞を機動化すると、この問題は加速度的に大きくなります。直径数十キロ、質量数十兆トンもの巨大な構造物を移動させるのに必要なエネルギーはどれほどのものになるのでしょうか?私はそれが外部からの補給無しに賄える程度で収まるとは到底考えられません。ガイエスブルグのように「とりあえず一回イゼルローン回廊まで運べれば良い」と言うならともかく、恒久的にそれを移動拠点として運用できると考えるのは無理があり過ぎではないでしょうか。
さらに、ワープではなく通常航行用のエンジンを考えなくてはなりません。銀英伝世界の通常航行用エンジンは、おそらく融合炉の熱で推進剤を反応させ、そのガスを噴射して反動で航行するタイプであると推測されます。
要塞に通常空間航行用エンジンを取り付けると言う事は、必然的にその内部に膨大な推進剤タンクを搭載する事に繋がります。この推進剤も補給の対象であり、しかもその労力は艦隊への補給とは比較にならない手間を要するものとなるでしょう。何しろ一個艦隊をまるごと収納して移動できる要塞です。艦隊全部の何倍の推進剤を消費するのか、考えるだに恐ろしいものがあります。
問題はエネルギーだけではありません。「同時に400隻を修理できるドック」「1時間に7500発のレーザー水爆ミサイルを生産できる」工廠施設。それ自体は素晴らしい能力なのですが、艦艇の修理、ミサイルの生産には資材が必要です。この資材もイゼルローン内部で自給できるものなのでしょうか?
資材の問題は、要塞の補修・整備にもつきまといます。どんなに頑丈でも、要塞の施設が経年劣化で使い物にならなくなる部分は当然出てくるでしょうから。食料や衣服、水に関しても、相当程度リサイクル可能にしても、そのパーセンテージを100に上げる事は不可能でしょう。これらの損失分はやはり外部から補給する必要があります。
以上の点を考えると、無限の補給能力を持つ要塞と言うのは実現不能だと思います。
では、なぜユリアンとキャゼルヌは50年の孤立を話題にしたか。これって、一種の冗談話なのではないでしょうか?普通直径60キロしかない要塞に閉じ込められて孤立無援になったら、どんなに自給自足可能でも、50年も経つ前に内部の社会は自滅すると思います。ありえない話だからこそ逆に誰もツッコミを入れなかったのでしょう。
2:機動要塞の技術的問題
次に、要塞を機動化する場合の技術的問題点です。ガイエスブルグは12基のエンジンを搭載して機動要塞へ改装されましたが、このエンジンはどういった代物なのか考えてみましょう。
質量40兆トンの要塞を移動させるエンジンなのですから、単純に計算して1基あたり3.3兆トンの質量を動かす出力が必要です。
しかし、考えてみて下さい。その辺にある一般的なエンジンは戦艦用が最大のものでしょうが、戦艦の質量はどう考えても3.3兆トンもありません。銀英伝世界の戦艦は1000メートル級。質量がどの程度かは不明ですが、100万トン単位ではかられると思います。
100万対3.3兆。絶望的なまでの数字の差です。300万倍以上違います。ここまでくると、「単純な技術の量的拡大」で済む話ではありません。相当の技術的ブレイクスルーを必要とする話です。
もっとも、これは「要塞に戦艦と同等の機動力を持たせる」事が前提の話です。「とりあえず通常航行をさせられる」程度ならそれほどの出力は不要でしょう。それでも、エンジン1基辺り並みの戦艦用エンジン数千~数万基分の出力はいるはずです(これでも甘い見積もりかも…)。まだまだそう簡単に作れる代物とは思えないですね。
もうちょっと現実的に考えてみましょう。それは、高出力エンジンを多数束ねて大出力エンジンにすることです。
まず、技術の限界として普通の戦艦用エンジンの5~10倍程度の出力を持ったものが出来ると仮定します。これを数百基ひとまとめにして要塞用エンジンとします。同じ物を12基作り、要塞に設置すれば、出力的には要塞を何とか動かせる程度の航行能力が付与できるかもしれません。
しかし…まともに航行しようと思ったら、実質的に何千基もの大出力エンジンを同一のタイミングで制御すると言う大変高度なソフトウェア技術が必要になります。もちろん、ハードウェアとしても安全係数を取っても故障は10パーセント以下に抑えねばならないでしょう。
正直言って、こんな代物を2ヶ月以内で実用化しろと言われたら私は逃げます(笑)。機動要塞と言うのは既存技術の集大成と言うより、シャフトの何かと紙一重(爆)の天才と、それを実現する事を許可したラインハルトの巨大な度量(連爆)によって具現化されたものではないのかと思いたくなります。どっちも持っていない同盟が機動要塞建造を真似るとは思えません。
また、要塞用に新型エンジンを実用化し、かつそれを一個艦隊分調達する予算的措置がどうなっているのかについては考えたくもありません。
従って、そもそも要塞の機動化と言う技術とその実現性そのものにも疑問符がついてしまうと私は考えます。
3:機動要塞の軍事的価値
まぁ、できないできないと言うだけなのも悲しいので、数々の困難を乗り越えて機動要塞が完成したとしましょう。では、これは軍事的に見て価値のあるものなのでしょうか?
銀英伝世界の場合、要塞の価値は、一つには軍港機能―艦隊の保守・整備・補給の拠点としての物があります。しかし、機動要塞化によってエンジンとその推進剤タンクと言う巨大なスペースを必要とするものが後から組み込まれた場合、それらの機能が圧迫される事は明白です。肝心の軍港機能が低下していては駐留艦隊の戦闘継続能力の低下をもたらし、拠点と共に移動しているにもかかわらず長期戦が出来ないと言う笑えない自体に陥ります。別の要塞を、最初からイゼルローン級の能力を持ち、なおかつ機動性を持たせることを念頭において完全新造すれば話は別でしょうが…
では、もう一つの価値――強大な火力と装甲を活かす事を考えてみましょう。イゼルローンとガイエスブルグが要塞主砲で撃ち合ったように、機動要塞を要塞攻略用の自走砲と考える訳です。
しかし、これについても機動要塞の不利が明らかになります。何故かというと、それは要塞を防衛する上で要塞を自転させると言う事が重要な要素になると考えられるからです。
要塞を自転させるのは、恒星の周りを公転しているため、恒星に面している部分に熱がたまらないようにする事などが考えられますが、最大の利点はダメージコントロール上の問題です。
つまり、相手の攻撃で損害を受けた個所を、要塞を自転させる事で敵の攻撃に対する死角に入れ、その間に修理を行う訳です。普通の艦砲射撃でもレーダーや対空砲台などの比較的脆弱な施設は損傷してしまうはずですから。ましてや要塞主砲の一撃を食らったら一ブロック丸ごと壊滅してしまうのは作中にある通りです。
しかし、一面に航行用エンジンと言う致命的弱点を抱える機動要塞は、常にエンジンとは反対の面を敵に向けなければなりません。つまり、一個所に攻撃を受け続ける危険を冒さねばならない訳です。
では、冒険風ライダーさんがおっしゃるようにエンジンを収納式にしたら…これも弱点の解決にはなりません。この場合、要塞にはエンジンの収納スペースと言う航行時にはデッドスペースでしかないものを抱える事になり、また巨大なエンジンを格納するための機構と言う複雑な可動部分を持つ事になります。どんなに防御しても、その収容部分は穴が開いているわけですから構造上の弱点になりうる上、要塞の重要な機能である軍港機能が更に圧迫されるのは確実です。
また、収納式だろうと露出式だろうと、エンジン搭載部には砲台を設置できないでしょうから、火力密度がそこだけ低下する事になります。要塞のクセに火力に死角があるなどと言うのは笑い事では済まされません。しかも、そこは要塞の防御力が最も低い場所なのです。
4:まとめ
いろいろと考えてきましたが、機動要塞に対する私の結論は
1、そもそも要塞が完全自給自足できるとは思えない。
2、機動要塞の建造にはとてつもない手間と資金と技術が必要である。
3、機動要塞を建設してもその価値は低いと言わざるを得ない。
の3点です。
そもそも、軍事的な経験則としては兵器は単機能なほど使い勝手が良いとされます。要塞は「要地防衛」「補給拠点」に機能を限定しているからこそ、無視し得ない脅威となりうるのです。そこに直接侵攻機能と言う全く反対の機能を付与したところで、通常要塞に攻防能力で劣り、艦隊に機動性で劣る欠陥兵器にしか成り得ず、ちまたに溢れる「戦艦空母の出てくる駄作架空戦記」を笑えない愚行となるのがオチでしょう。
おまけ
「ヤンはイゼルローンを機動要塞化すべきだった」と言う主張には全く同意できません。
何しろガイエスブルグが「史上初の機動要塞」として投入され、同行する艦隊戦力の9割を巻き添えに撃破された後です。ここから導き出される戦訓が「機動要塞の有用性」となるでしょうか?普通なら「通常要塞の機動要塞に対する優位」が戦訓となるはずです。
軍事と言うのは保守的な分野で、なかなか新技術が採用される事はありません。例えば戦艦に対する航空機の優位は太平洋戦争における真珠湾攻撃、マレー沖海戦までなかなか信じられませんでした。
イギリス海軍がイタリアのタラントを空爆して戦艦3隻を無力化した戦訓があったにもかかわらず、です。
ましてや出兵戦力の9割を失う歴史的大敗を喫した戦いで、負けた側の主力であった機動要塞が有効な戦力と認められる可能性など無いと思います。
なんか否定的意見ばっかりですが、私の主張は以上です。
>Zeroさん
<そして、「要塞を移動させる為のエネルギー消費量と、それを再蓄積できる時間」
大出力であればある程、そのエネルギー消費量が増大しますが、要塞に収容している艦艇(2万位)がほぼ永久に行動できるエネルギーは蓄積出来ても、要塞自体が移動するエネルギーを常に補充しきれるのかという事です。
また、移動速度やワープ距離の問題もあります。
果たして、戦闘するにしても逃走するにしても満足する数値が得られるのか疑問です。
ただ、これは実数が示されていない訳で、「出来る」「出来ない」は主観によるかもしれません。>
「要塞自体が移動するエネルギー」と言っても、要塞が移動する際に使用するエネルギーというのは、要塞に設置するそれぞれ12基のワープエンジン&通常航行エンジン、合計24基分の量でしかありえないでしょう。しかもそのエンジン自体、別に特注品でエネルギーを通常より大量に消費すると言うわけでもありませんので、消費するエネルギーなど取るに足りない程度の量でしかないのではないかと。
移動速度・ワープ距離に関しては、手がかりになる資料がひとつありまして、ガイエスブルク移動要塞を使ったイゼルローン攻略作戦が決定したのが3月17日で、移動要塞がイゼルローン側に探知されたのが4月10日です。この期間が24日で、しかもイゼルローン-オーディン間は1ヶ月近くは確実にかかるので、どちらかと言えばやや速い方なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
>Merkatzさん
>技術問題
<「既存の技術の応用である」ということと、「技術の集積体としての完成物(製品)」ということは、イコールではないのですから。
例えば、ソニー製ラジオがコンデンサや可変抵抗などの既存のトランジスタ技術の応用だからといって、
同じ部品を調達したからソニー製とまったく同じラジオが作れるということにはなりません。
個々の技術があるということと、それらを束ねて一つのシステム(製品)として完成させるということは、違う次元の話なのです。>
<逃走する車のタイヤを、警官が銃で打ち抜き首尾よく止める・・・映画などでよくあるワンシーンですが、
ではこの警官は車の原理を完全の掌握できていると言えるのでしょうか?
警官はエンジンの仕組みからサスペンションの動作原理にシャーシ構造に・・・そういうものに通暁していたからタイヤを打ち抜くという戦術に繋がったのでしょうか?
答えは否です。
動いている物体の足を壊せば止まる。こんなことは原理を知らなくても、少しの観察力で誰でも思いつくことです。
ヤンが採った戦術もしかり。
それはタイヤを銃で打ち抜くという話でしかなく、移動要塞の秘密を完全に掌握している証明にはなりません。>
シャフトの「移動要塞技術」ってそれほどまでに理解の難易度が高い新技術なのですか? あの「移動要塞技術」の秘密を把握することなど、銀英伝世界におけるワープ航法技術の基礎理論と、ガイエスブルク移動要塞外部に剥き出しに晒されながら設置されている、それぞれ12基のワープエンジン&通常航行用エンジンを一目見れば、誰でも簡単に思い浮かびそうな低難易度の課題であるようにしか見えないのですけどね。
それにヤン自身、一応下のような理論に基づいて要塞特攻を撃破していますし↓
銀英伝3巻 P214上段~下段
<宇宙船のエンジン推進力は、厳密に船体の重心をつらぬいていなければならない。大小を問わず、宇宙船の形状が円または球形を基本とし、左右・上下が対象となっているのは、そのためである。もしこの法則を守らなければ、宇宙船は進む方向を見失い、重臣を中心としてスピン回転をつづけることになる。そのときは動力を停止すればよいわけだが、停止しても惰性で回転はつづくし、その間は全ての管制機能がマヒしてしまうのだ。>
これって「動いている物体の足を壊せば止まる」という程度のレベルで片づけられてしまう理論なのですか? 本来技術系の人間ではないはずのヤンですら知っているこの理論を逆に考えてガイエスブルク移動要塞に当てはめてみれば、移動要塞の秘密など誰でも簡単に掌握することができるでしょう。ましてや、あの当時における宇宙空間のワープ・航行関連技術に従事する技術者たちであればなおさらのことです。誰もが理解できず、真似もしにくい新技術にしては、あまりにも理論が簡単すぎる上にお膳立てがありすぎるのですが。
また、あのガイエスブルク移動要塞の改造工事&運用テストなどを実際に指揮していたのは、本来技術関係に無関係な叩き上げ軍人でしかないはずのケンプとミュラーであって、言いだしっぺのシャフト自身はただ「技術的には不可能ではない、エンジンの同調こそが全てである」とがなりたてていただけで、移動要塞の工事に関しては、直接的にはほとんど何もしていなかったと言っても過言ではなかったのです。エンジンの完全同調に関しても、シャフトは何かケンプ・ミュラーらに対して特別な技術を提言していたわけでもありません。エンジン同調がそれほどまでに難しい運用技術であるのならば、よくこの状況で運用テストを通過したものですね。
その上ガイエスブルク移動要塞は、1月下旬頃のラインハルトの命令から4月10日頃にイゼルローン要塞と対峙するまでに、本来ガイエスブルク要塞が置かれていた宙域→ヴァルハラ星系外縁部→イゼルローン要塞前面へと移動する過程で、すくなくとも20~30回近くは「実際に」ワープを繰り返しているのです(私があの移動要塞建造で矛盾に思ったのがここなんですよね。特に3月17日のヴァルハラ星系外縁部到達時が「初のワープ実験」であるという点)。Merkatzさんはこれを「大きな穴」と呼んでいたわけですが、私に言わせれば、シャフトの突発的な提言から、しかもあれほどまでに短期間の改造工事&運用テストを行っただけで、これだけのワープ回数を一度の事故も起こすことなく無事にこなすことができるという事実こそが、逆に「移動要塞技術」の実現が比較的容易であることを立派に実証しているわけです。またそう考えないと、今度は銀英伝における「移動要塞技術の実現に関する描写」それ自体に対する疑問が出現してしまうではありませんか。
以上のことから私は「移動要塞技術の発想」を「コロンブスの卵」に近いものだと考えています。すなわち「実はとんでもなく簡単な理論で、気づいた瞬間に技術的にも簡単に実現できるものだが、その『気づくまで』がなかなか容易なことではない」というのが「移動要塞技術」の実態であると考えたわけです。そして、この論法であれば帝国側がシャフトの提言からたった2ヶ月弱の工期&運用テストで移動要塞を簡単に実用化できてしまった理由もあっさりと説明できるのですよ。一度完璧に理論が実証されてしまえば「何でこんな簡単なことに気づかなかったのだろう?」と後で述懐してしまう類の問題というわけで。
Merkatzさんは運用面をも含めた移動要塞技術の難易度が高いと述べておきながら、帝国側があれほどまでに簡単に移動要塞技術を実用化してしまった理由を説明できておりません。もしこれが帝国と同盟の技術運用格差の問題であると言うのであれば、帝国と同盟の国力格差は銀英伝本編で現れている数字よりもはるかに巨大なものであったと言わざるをえず、帝国・同盟・フェザーンの勢力均衡が140年近くにもわたって続いていたという設定自体が崩壊してしまいます。銀英伝の設定を擁護するために私に反論しながら、それによってより巨大な矛盾を自らの主張から出現させてしまっては意味がありますまい。
すくなくとも私の考えならば、帝国側があれほどまでの短期間に移動要塞を実用化できた理由が説明できるかと思いますが、その辺りに関してはいかがでしょうか?
>工事秘匿の問題
<私が言うところは観測ができれば充分なんですね。
つまり、イゼルローン要塞表面に何らかの異常が見られるかどうかが入手すべき情報であって、
索敵すなわちレーダー等を使って未確認の相手を探知することではないんです。
それはそうでしょう。
イゼルローン要塞は既に両軍にとって周知のものであり、「未確認の相手」ではないんですから。
銀英伝世界の天体望遠鏡がどのくらいの性能を持っているかは分かりませんが、
ハッブル宇宙望遠鏡のようなものを回廊出入口に設置しておけば、
観測できるでしょう。
仮に光学的に捉えることができなくても、電波望遠鏡ならば大規模工事に伴う電波の変化を捉えますから、必要な情報は充分得られます。
さらに先行偵察衛星まであるのですから、観測は可能です。>
これは無理ですよ。こんな論法で「数百光年単位の遠距離観測が可能」などという結論を出してしまったら、今度は「その遠距離観測を駆使した戦術が銀英伝で何故使用されないのか?」と言う疑問が出てきてしまいますし、ストーリーにも結果的に重大な悪影響を与えてしまいます。
いくつか例を挙げますと、たとえばZeroさんが挙げられていた「ヴェスターラントの虐殺」関連の映像ですが、あれは惑星ヴェスターラントの成層圏辺りから地上を映したものであると、キルヒアイスに尋問されたブラウンシュヴァイク派の兵士が証言しています(銀英伝2巻 P171~P172)。もしあれを何百光年もの遠距離から撮影することができる技術が銀英伝世界に存在するのであれば、ラインハルトやオーベルシュタインもわざわざ危険を犯すことなく遠距離から「観測撮影」していたでしょうし、この兵士の証言が元で発生したラインハルトとキルヒアイスの確執も、それが起こる前に消えてなくなってしまっていたかもしれません。つまり銀英伝世界では、惑星表面の映像というのはそれほどまでに接近しないと収録できないシロモノであるわけです。
また、遠距離観測技術のようなシロモノが出現すると、後方が前線よりもはるかに戦場の情報を入手することが可能となってしまい、銀英伝の戦闘スタイルが激変してしまう可能性も高いでしょう。数百光年先の小惑星を精緻に観測できるのであれば、座標や星系を特定さえしてしまえば、艦隊同士の戦いが行われている戦場全域をはるか遠方から「観測」することすらも、観測装置の倍率とかを調節すれば可能となってしまいます。敵味方の動きがはるか遠方から逐一掌握することができるという、まさに夢のようなシステムが出現するのです。たかだか「イゼルローン要塞を外部から隠蔽するのは不可能」という理論を構築するだけのために、このような設定破綻をわざわざ自分の手で作り出してしまうわけなのですか?
光年単位の観測能力。これは銀英伝世界の戦争概念にとってあまりにも深刻な脅威です。
そもそもあの銀英伝世界で、索敵・哨戒部隊が敵艦隊をどのような姿で発見するのかご存知ですか? 基本的には「艦隊が放つ無数の光点の数」を索敵・哨戒部隊が「目で発見」し「コンピュータがその数を特定する」ことによって敵の存在を認識するのです。「目」というのは当然のことながら偵察艦などに搭載されている「観測装置」のことで、ならば「索敵」の元となる「観測装置」の性能こそが、銀英伝世界における「索敵」と「観測技術」の双方を司っているといっても過言ではないでしょう。そしてその「観測技術」を駆使した「索敵圏内」がたったの500~1000光秒弱しか存在しなかったからこそ、私は「光年単位の遠距離観測こそが不可能」と述べていたのですし、またその論こそが銀英伝世界の戦争概念やストーリーの流れとも一致するものなのです。
私が一連の議論で「索敵」にこだわったのも、「索敵」自体が問題だったわけではなく、「索敵」で使用する「観測装置」の「視界」を基にして「イゼルローン要塞を遠距離撮影するのは不可能」という理論を構築したかったからです。それで「索敵」についてあれこれ述べていたのですが、今にして思えばZeroさんが挙げられていた「ヴェスターラントの虐殺」の映像関連の記述を最初から引用していれば、このような無用な混乱を招かずに済んだわけで、この辺りは私も「失敗だったかな」と思っています。
まあとりあえずこれで「観測技術」に関しても決着はついたでしょう。いくらMerkatzさんが現実世界の理論に基づいた銀英伝世界の索敵・観測事情を構築しようと、それは銀英伝世界の戦争概念とは明らかに相反したシロモノとなってしまいます。それは作品擁護どころか、むしろ全く反対の方向性しか持つことはありえないでしょう。
それとこちらも蛇足ながら、下の引用に関する議論に関しては、私の方からMerkatzさん側の発言の撤回を求めます。
<それは牽強付会に過ぎますね。
いくらシャフトが俗物だといっても、要塞の索敵圏内や主砲射程圏内で悠々工事ができると思うほど馬鹿ではないでしょう。
だいいち、前面がどの程度「前」なのか、特に言及が無い以上、通常の常識で考えられる範囲でしょう。>
<違います。
その台詞はケンプ以下に移動要塞の趣旨を説明する際に出たものですから、勝手に「移動要塞の要素を抜きにして」、前面に繋げてはいけません。>
Merkatzさんが引用したあの文章の左横と下段をもう少しよく読み返して見て下さい。ページの前後を見ればすぐに分かると思ったのに、ここまで引用しないと満足できないのですか?
銀英伝3巻 P40下段~P41下段
<「……つまり、イゼルローン要塞の前面に、それに対抗するための拠点となるわが軍の要塞を構築するというのか」
「さようです、閣下」
重々しく、科学技術総監はうなずいた。あきらかに賞賛を期待していたが、彼が若い帝国宰相の秀麗な顔に見出したものは、にがにがしい失望の色であった。わずか15分でも、時間を浪費したと言いたげなラインハルトである。
「構想としては悪くないが、成功するにはひとつ条件が必要だな」
「それは?」
「わが軍がそれを構築する間、同盟軍の奴らがだまってそれを見物し、けっして妨害しない、という条件だ」
科学技術総監は沈黙でラインハルトに報いた。返答に窮しているように見える。
「いや、総監、そいつは魅力的なアイデアではあるが、実際的とは言いがたいな。改良すべきを改良した上で、いずれあらためて提案してもらうとしよう」
ラインハルトはしなやかな動作で立ちあがりかけた。これ以上、この尊大で不快な男に対面していると、神経がたかぶって、罵声のひとつも浴びせてやりたくなりそうだった。
「お待ちください。その条件は不要です。なぜなら私の思案は……」
科学技術総監は演技力たっぷりに声を高くした。
「すでに構築された要塞を、イゼルローン回廊まで移動させるというものです」
ラインハルトの視線は、自信を練り固めたようなシャフトの顔を正面から射とおした。蒼氷色の瞳に、興味の影がゆらめいた。彼は浮かした腰をふたたびソファーに落ちつけた。
「くわしく聞こうか」
科学技術総監の血色のよすぎる顔に勝利の色が一段と艶をつけた。ラインハルトにはそれが気に入らなくもあったが、興味が上まわったのである。>
後半の文章をよく見てください。一連の説明の中で、シャフトは移動要塞技術のことを「最後に」述べていますよね? つまり、それまでのラインハルトは、シャフトから移動要塞関連のことを何も知らされることもないままに、シャフトの「要塞をもって要塞に当たらせる」という構想を聞いていたわけです。
そして、移動要塞技術を使うことなく「要塞に要塞を当たらせる」というのであれば、必然的に要塞の主砲射程圏内に要塞を建造するという結論に到達せざるをえないはずでしょう。そうでないと、こちらの要塞主砲が敵の要塞に届かず、「要塞に要塞を当たらせる」という構想自体が破綻してしまうのですから。だからラインハルトはシャフトの言を「要塞の索敵圏内ないしは主砲射程圏内で要塞の建造を行うのか」と「解釈」し、あのようなシャフトを半ば馬鹿にしたような言動を吐いていたわけです。私がMerkatzさんの言う「勝手に『移動要塞の要素を抜きにして』、前面に繋げて」いたのは、この文章の流れを汲んだものだったのですけどね。
いくら何でもあの反論は引用した文章全体の流れを読まなさすぎです。ラインハルトがシャフトの言動から「移動要塞技術」を完璧に読み取れるほどの読心術を心得ていたなどといった類の珍説を披露するのでなければ、この文章関連の反論は撤回していただきたく思います。
>平松さん
<例え艦に搭乗する兵士がいなくとも、無人艦隊があればかなり戦術の幅が広がると思うのですけどね。例えば10巻でユリアンは全艦艇の一割を無人にして予備兵力に見せかけ(P154~155)、自爆させて黒色槍騎兵を混乱させる(P171)という策を使っています。
それに8巻(P60)で回廊内に進入してきたメックリンガー艦隊をヤンは戦わずして後退させる為に全兵力を挙げて迎え撃っていますが、この時も無人艦隊を後方において兵力を水増しすれば成功率も高まったはずです。
このように無人艦隊があれば戦術の幅の拡大や敵への欺瞞工作や威圧の材料として使えるという利点があるのですから、艦艇の整備・修理を優先して行なうのには大いに意味があったと思います。にも関わらず、現実には戦場に現れたヤン艦隊は20000隻程度だったという事実は、どう考えても奇妙で、やはりイゼルローンにいて艦の修理・整備にあたった技術者や工兵の絶対数及び熟練度が著しく劣悪な状況にあったと考えざるを得ないのではないでしょうか。こういった人的資源という面から考えても、やはり要塞改造は困難だったのではないでしょうか。>
これはむしろ温存する方が懸命です。というのは、なまじ無人艦を戦闘に活用して敵に破壊されてしまっても、ヤンは艦艇の調達が満足にできない環境にあるからです。現在手元にある最大戦力で、ヤンの戦力は打ち止めだったわけです。
なまじ戦力の少ないヤンとしては、補充の利かない貴重な艦艇は大切に扱わなければなりません。それを考えれば、むしろ新兵の訓練が終了して前線に出られるようになった頃に艦艇を使用できるようにした方が、戦力の堅実な向上という観点から言えばベストなのです。
ユリアン達の場合は、艦艇数以上に人員の方が圧倒的に不足していた状態にあったので、「やむをえず」無人艦を使用していたというのが実情でしょう。しかしヤンの場合は待機している予備役新兵が全体の2割強ほど存在していたわけですから、それらの戦力化を待った方が懸命なわけです。
これで説明は可能かと思いますが。
<そうなった場合、当然ラインハルトもヤンの時間稼ぎに気付くでしょうし、やすやすとその手には乗らないでしょう。また、そういった謀略や外交を行なうにはロムスキーを筆頭とする革命政府のお歴々を通さねばなりませんが、果たして彼らがヤンの献策をそのまま受け入れるでしょうか?個人的には革命政府の外交能力など「ヘンスロー以上、オーデッツ以下」が関の山だと思いますし、かといって軍人であるヤンがあれこれ指図すれば外交・渉外の権利の侵害だと反発し、かえってヤンへの不信感を増幅しかねません。謀略にしても同様でしょう。外交や謀略を実行するにしても革命政府自体が色々な意味で足かせになるのではないかと。>
そのような場合は、とっととロムスキーらエル・ファシル独立政府のお歴々をまとめて始末する方法を考えるべきですね。外交面でひたすらロムスキーらを前面に押したて、ラインハルトらに嘲笑されながらの外交交渉を展開させ、機が熟したところでロムスキーらを無視して帝国に攻撃を仕掛け、「死間」としてロムスキーらを帝国側に殺させ、「民主主義の殉教者」に仕立て上げてしまうとか。私の感覚では、あの連中はヤン・ファミリーの足を引っ張る単なる邪魔者でしかないですし。
<それに地球教やルビンスキーと一時的にせよ手を結ぶのは危険なのではないでしょうか。特に地球教はキュンメル事件でラインハルトを暗殺しようとした前科がありますし、万一関係が発覚すれば帝国との外交の選択肢が狭まってしまうのでは?そもそも彼らと接触する為の手段はどうやって確保するのでしょう?>
同盟というのは何も「対等な関係」で結ばなければならないものではありません。一方的に服従させ、狂信的な性格を利用してテロに走らせ、全ての責任を押しつけ、帝国との取引材料として犠牲にしてしまうのも立派な「同盟関係」です。もっとも、一方的に利用される地球教側としてはいい面の皮でしょうが。
それから地球教やフェザーン関係の面々と接触する方法としては、銀英伝8巻で「地球教によるヤン暗殺」という情報を携えてきたボリス・コーネフがそれ関連の情報を握ってそうですし、銀英伝本編では考えられないことでしょうが、フェザーンに在住しているトリューニヒトに頼るという方法も考えられます。彼なら地球教やフェザーン残党との太いパイプを持っていることでしょうし。
地球教やフェザーンの残党なども、ヤンと手を組むことによって一定の利益を得ることはできますから、それほど不可能な選択肢でもなかったのではないかと。まああの「重度の潔癖症」に汚染されていたヤン・ファミリーの面々がそれを行うのはまず不可能な話だったことでしょうがね。
<旧同盟領ではヤンの声望は圧倒的なものだったのですから、その元で戦う将兵達の家族が社会から排斥される可能性は低いのではないでしょうか。小説にもそんな記述は探した限りではありませんでしたし。
また、将兵の家族が各星系からイゼルローンに大量に流入するのを看過するほど、ラインハルトはお人よしではないでしょう。各惑星の宇宙港において管理・統制を行なわせたりするなどの対抗策ぐらいは取ると思いますが。>
いえ、むしろヤンの声望が圧倒的だからこそ、却って将兵の家族を「売る」ことで帝国に媚びへつらおうとする輩がいないとは限らないですし(もちろんラインハルトはそんな行為を激しく嫌悪することでしょうが、そんな輩がいなくなることはありえません)、また、ラインハルトに代表される帝国の「寛大な」体制がいつまで続くかも分かりません。だからやはり将兵の家族が外部にいては危険であることに変わりはないわけです。
また、将兵の家族の移動に関しては、例によってそれ専門の密航業者が手引きしている可能性も高いですよ。需要はたくさんあることでしょうしね。
<工事の終了が遅すぎればそれ以前に帝国軍がイゼルローン回廊に到達してしまい、エル・ファシルへの移動は不可能になってしまいまうという事もありえますし、またエル・ファシルからの住民の移動中を見計らって攻撃を受ける可能性もあります。結局はこの問題も移動要塞がいつ完成するかで決まるという事でしょう。>
いえ、私の構想では、むしろイゼルローン占領が完了した時点で、移動要塞の有無にかかわらず、とっととエル・ファシル全住民をイゼルローン要塞へと移転させてしまうというものなのですが。
それに関する住民の感情など知ったことではないですよ。それぐらいしないと、帝国側が無防備宣言したエル・ファシルを襲撃してヤンを誘き出すというシナリオも考えられますし、そうなればラインハルトとの戦争に勝つことも、有利な講和条約を締結することも夢のまた夢でしかありませんので。帝国の脅威とエル・ファシル襲撃の可能性を示唆して戦時体制に移行してしまえば、エル・ファシルの住民も納得せざるをえないはずです。
「ラインハルトはそんなことを許しはしないだろう」というのは単なる希望的観測でしかありません。「勝つためならどんなことでもする」それが戦争なのですから、個人の性格などに依存した希望的観測などはとっとと捨ててしまうべきなのです。
優馬です。
論もたけなわの「要塞論戦」に参加する実力も気力もないのですが、ちょっと気になることがありましたので質問させてください。
えーっと銀英伝世界では「超光速通信」というのは実用化されていましたよね、確か。それでないと何光年も離れた星域とリアルタイムで連絡とることは不可能。帝国も同盟も、そもそも成り立ち得ない。
登場人物が超光速通信で画像を送りあって会話しているシーンもたくさんあったような気が。(すみません、テキストを参照する気力がありません。)
とすれば、超光速通信を利用した光年単位の超長距離観測は、理論的には可能なのだと思います。「超光速望遠鏡」で焦点を結ばせるのはすごく難しそうな気はしますけど。少なくとも、光学的に撮影した映像を超光速通信で送るのは可能かと。
ただし、それは観測対象の座標がはっきりしていないととても難しいでしょうね。「そこにあることが分かっている」ものを観測することはできても、「どこにあるかわからない」ものを探す=索敵するのにはほとんど役に立たないとは思います。
冒険風ライダーさん
<これはむしろ温存する方が懸命です。というのは、なまじ無人艦を戦闘に活用して敵に破壊されてしまっても、ヤンは艦艇の調達が満足にできない環境にあるからです。現在手元にある最大戦力で、ヤンの戦力は打ち止めだったわけです。
なまじ戦力の少ないヤンとしては、補充の利かない貴重な艦艇は大切に扱わなければなりません。それを考えれば、むしろ新兵の訓練が終了して前線に出られるようになった頃に艦艇を使用できるようにした方が、戦力の堅実な向上という観点から言えばベストなのです。
ユリアン達の場合は、艦艇数以上に人員の方が圧倒的に不足していた状態にあったので、「やむをえず」無人艦を使用していたというのが実情でしょう。しかしヤンの場合は待機している予備役新兵が全体の2割強ほど存在していたわけですから、それらの戦力化を待った方が懸命なわけです。
これで説明は可能かと思いますが。>
うーむ、自分としては艦艇を温存するにせよ、兵士の補充が利かない状態である以上はせめて1000~2000隻程度の無人艦隊を使う事を視野に入れておけばヤンの戦術の幅も広がるのではないかとも思うのですが、これもまた見解の相違ですね。
<そのような場合は、とっととロムスキーらエル・ファシル独立政府のお歴々をまとめて始末する方法を考えるべきですね。外交面でひたすらロムスキーらを前面に押したて、ラインハルトらに嘲笑されながらの外交交渉を展開させ、機が熟したところでロムスキーらを無視して帝国に攻撃を仕掛け、「死間」としてロムスキーらを帝国側に殺させ、「民主主義の殉教者」に仕立て上げてしまうとか。私の感覚では、あの連中はヤン・ファミリーの足を引っ張る単なる邪魔者でしかないですし。>
いや、単純に実利的な面から言えば全く冒険風ライダーさんのおっしゃる通りなのですが…(^^;;)やはりヤンには無理でしょうね…。それに下手をすればロムスキーらを犠牲の羊に仕立てた事を策謀家としては第一人者であるオーベルシュタイン辺りに逆用されてヤンの名声が地に落とされるという事もありえますし、必ずしも最善の策とは言えないのでは?
<同盟というのは何も「対等な関係」で結ばなければならないものではありません。一方的に服従させ、狂信的な性格を利用してテロに走らせ、全ての責任を押しつけ、帝国との取引材料として犠牲にしてしまうのも立派な「同盟関係」です。もっとも、一方的に利用される地球教側としてはいい面の皮でしょうが。
それから地球教やフェザーン関係の面々と接触する方法としては、銀英伝8巻で「地球教によるヤン暗殺」という情報を携えてきたボリス・コーネフがそれ関連の情報を握ってそうですし、銀英伝本編では考えられないことでしょうが、フェザーンに在住しているトリューニヒトに頼るという方法も考えられます。彼なら地球教やフェザーン残党との太いパイプを持っていることでしょうし。
地球教やフェザーンの残党なども、ヤンと手を組むことによって一定の利益を得ることはできますから、それほど不可能な選択肢でもなかったのではないかと。まああの「重度の潔癖症」に汚染されていたヤン・ファミリーの面々がそれを行うのはまず不可能な話だったことでしょうがね。>
地球教はこの時点ではド・ヴィリエが実質的な指導者になっていますし、そう簡単には一方的に利用は出来ないでしょう。ロムスキーらであればなおさら、ド・ヴィリエに手玉に取られる可能性が高いですし。
それとボリス・コーネフが携えてきた情報は「地球教によるヤン暗殺」ではなく「フォークがヤン暗殺の為に精神病院を脱走した」(P117)であって、その背後に地球教の存在を察知してはいなかったので「ボリス・コーネフが地球教についての情報を握っているかも」という推測は成立しないのでは?かつての地球の教団本部での一件もある上、巡礼者を地球まで運んだ経歴もあるコーネフの面は地球教団に割れている可能性が高く、彼が地球教と接触するのは危険なのでは?それとこの時期トリューニヒトはフェザーンではなくオーディンに居住しています(8巻P197)。オーディンに到達するのも大変でしょうし、ケスラーの監視下にあるであろうトリューニヒトと接触するのはちょっと無理ではないかと。
<いえ、むしろヤンの声望が圧倒的だからこそ、却って将兵の家族を「売る」ことで帝国に媚びへつらおうとする輩がいないとは限らないですし(もちろんラインハルトはそんな行為を激しく嫌悪することでしょうが、そんな輩がいなくなることはありえません)、また、ラインハルトに代表される帝国の「寛大な」体制がいつまで続くかも分かりません。だからやはり将兵の家族が外部にいては危険であることに変わりはないわけです。
また、将兵の家族の移動に関しては、例によってそれ専門の密航業者が手引きしている可能性も高いですよ。需要はたくさんあることでしょうしね。>
ラインハルトに媚を売るためにレベロを暗殺したロックウェル大将らが処刑された事は知れ渡っているでしょうし、それを知っていて「売り」に出るような輩が多くいるとは思えないので、大した問題にならないのでは?
「寛大な体制」云々については、ヤンというカリスマを抱いた外敵がいる以上、帝国もそう簡単に「寛大な体制」を捨てる事が出来ないという事くらい、一般の兵士も理解するのでは?
密航業者云々については、前に行なった議論が再燃しそうなのでパスさせて頂きます(^^;)。
<いえ、私の構想では、むしろイゼルローン占領が完了した時点で、移動要塞の有無にかかわらず、とっととエル・ファシル全住民をイゼルローン要塞へと移転させてしまうというものなのですが。
それに関する住民の感情など知ったことではないですよ。それぐらいしないと、帝国側が無防備宣言したエル・ファシルを襲撃してヤンを誘き出すというシナリオも考えられますし、そうなればラインハルトとの戦争に勝つことも、有利な講和条約を締結することも夢のまた夢でしかありませんので。帝国の脅威とエル・ファシル襲撃の可能性を示唆して戦時体制に移行してしまえば、エル・ファシルの住民も納得せざるをえないはずです。>
一つ疑問なのですが、エル・ファシルから全住民を移住させたとして、別の諸星系が独立政府への参加を希望し、「私達も移動要塞に移住させて下さい」と次々と申し入れてきたらどうするのでしょうか?無論直径60km程度のイゼルローンでは収容人数に限界があるでしょうから、ある程度の人口に達したらそこで移住をストップせざるを得ませんし、移動要塞を複数作るのも経済的・時間的に見て至って困難でしょう。残った多くの移住希望者に「もう入れませんので、申し訳ないがあなた方は帝国の脅威にさらされ続けて下さい」などと言えば、エル・ファシル独立政府やヤンへの民衆の期待は地に落ちてしまうのでは?
> 思ったんですが、イゼルローンって惑星なみのでかさなんですよね。
> で、それを移動できるわけですよね。
> ここから、「ということは、イゼルローンを破壊する大きさの惑星を動かす事も可能だから、それを使って破壊せいっちゅーねん」、と冒険風ライダーさんは論を運んでいます(?)。
> もちろんこれには賛成です。
> でもふと思ったんです。
> これってすごくないですか?
> 惑星を移動できるんですよ?
> もし惑星が移動できるとしたら・・・。
> 戦争なんてしてる場合じゃないんじゃない!?
イゼルローン要塞の大きさについて、冒険風ライダーさんの書き込みに
>ちなみに、銀英伝世界の中で一番大規模な要塞と定義されているのはイゼル
>ローン要塞(直径60km)で、規模においてそれに対抗しうるとされているのがガ
>イエスブルク要塞(直径40~45km、質量約40兆トン)となっています。その他の
>レンテンベルク・ガルミッシュといった帝国内に存在する要塞は、これよりもさらに
>小さい規模の要塞でしょう。
ってのがあるのを見ると、惑星じゃなくて、よくて衛星以下の大きさしかないみたいですね。
月の直径が約3500Kmですし、それと比べても遙かに小さいです。
でも理論的には将来は十分可能になるんでしょうね>惑星移動
コストは天文学的数字になるんでしょうが
>優馬さん
<超光速通信を利用した光年単位の超長距離観測は、理論的には可能なのだと思います。「超光速望遠鏡」で焦点を結ばせるのはすごく難しそうな気はしますけど。少なくとも、光学的に撮影した映像を超光速通信で送るのは可能かと。
ただし、それは観測対象の座標がはっきりしていないととても難しいでしょうね。「そこにあることが分かっている」ものを観測することはできても、「どこにあるかわからない」ものを探す=索敵するのにはほとんど役に立たないとは思います。>
「光学的な映像を『遠距離から詳細に』撮影する」と「光学的に撮影した映像を超光速通信で『遠距離へと』送る」では全然違うでしょう。ヴェスターラントの虐殺関連その他の記述を見る限り、後者は可能でも前者は不可能としか言いようがありません。
それに前にも言いましたが、もしそのような驚異的な能力を持つ「観測装置」があるのならば、そもそも銀英伝世界における宇宙会戦で使用されないはずがないでしょう。「観測対象の座標がはっきりしていないととても難しい」ということは、逆に言えば「観測対象の座標さえはっきりしていれば何でも観測することができる」ということを意味することになります。この理論で行けば、宇宙会戦が行われている星系を「特定」してその全域を「観測」することで、敵艦隊とおぼしき「光点の集団の移動」を「発見」し、その動きを前線に教えるといった芸当も可能となりますし、「ヴェスターラントの虐殺」関連の映像だって、わざわざ「観測対象の座標がはっきりしている」惑星ヴェスターラントに高速先行艇など派遣せずとも、はるか遠方から楽かつ安全に撮影できたはずでしょう。
また、索敵で見つけた後の敵の行動の詳細を「観測」するにも便利ですよ。たとえば銀英伝5巻のバーミリオン会戦では、ラインハルトの縦深陣形を見破ったヤンが多数の隕石群を囮にしてレーダーを騙す事で敵主力艦隊を引きつけ、その隙にラインハルトの本隊に肉薄するという奇策を使ったことがありましたが、それにラインハルト麾下の諸提督が気づいたのは囮艦隊を射程圏内に捕捉しかけるほどに肉薄した時です。この時の囮艦隊の位置はラインハルト側に察知されていましたので、もしこの時この囮艦隊をその驚異的な能力を持つ「観測装置」で「遠距離から観測」していれば、その時点で囮艦隊の詳細がもろバレになってしまい、ラインハルトがヤンの奇策にかかるというシナリオ自体が崩壊することによって、バーミリオン会戦の趨勢は大幅に変わってしまっていたはずです。そして、そういった描写が銀英伝の作中に全く存在しないこと自体、「光学的な映像を『遠距離から詳細に』撮影する」ことが銀英伝世界では全く不可能であることを完全に立証してしまっているわけです。
繰り返しますが、光年単位もの遠距離から対象物の詳細を全て観測できるシステムは、銀英伝の作品設定とは完全に相反する存在でしかありえないのです。
>平松さん
<いや、単純に実利的な面から言えば全く冒険風ライダーさんのおっしゃる通りなのですが…(^^;;)やはりヤンには無理でしょうね…。それに下手をすればロムスキーらを犠牲の羊に仕立てた事を策謀家としては第一人者であるオーベルシュタイン辺りに逆用されてヤンの名声が地に落とされるという事もありえますし、必ずしも最善の策とは言えないのでは?>
一体どうやって逆用するのですか? その辺りをもう少し具体的に述べてもらわないと、私としては反論のしようがありませんが。
それに私の策は、すくなくともロムスキーらにヤン・ファミリーの行動を邪魔されるよりははるかにマシな選択でしょう? それだけでも「最悪の策」でないことは確かですし、銀英伝本編のアレよりもはるかにマトモな結果が得られることも確実でしょう。あの当時のヤン・ファミリーにアレ以上の「最悪の策」などありえないのですから、それだけでも充分すぎるほどだとは思いませんか?
<地球教はこの時点ではド・ヴィリエが実質的な指導者になっていますし、そう簡単には一方的に利用は出来ないでしょう。ロムスキーらであればなおさら、ド・ヴィリエに手玉に取られる可能性が高いですし。
それとボリス・コーネフが携えてきた情報は「地球教によるヤン暗殺」ではなく「フォークがヤン暗殺の為に精神病院を脱走した」(P117)であって、その背後に地球教の存在を察知してはいなかったので「ボリス・コーネフが地球教についての情報を握っているかも」という推測は成立しないのでは?かつての地球の教団本部での一件もある上、巡礼者を地球まで運んだ経歴もあるコーネフの面は地球教団に割れている可能性が高く、彼が地球教と接触するのは危険なのでは?それとこの時期トリューニヒトはフェザーンではなくオーディンに居住しています(8巻P197)。オーディンに到達するのも大変でしょうし、ケスラーの監視下にあるであろうトリューニヒトと接触するのはちょっと無理ではないかと。>
あの面々(特にド・ヴィリエ)は、銀英伝10巻でユリアンとポプランに正面から再会のご対面を果たした時でさえ、2人のことを全然知らないような対応を取っていましたから、特に問題が生じそうには思えないですけどね~。第一、ユリアン達が反地球教的な行動を取ったのは、ワーレン艦隊による地球攻撃が行われて教団自体がゴタゴタになっていた時で、しかもそれまでのユリアン達は従順な信者のフリをして黙々と働いていただけなのですから、帝国軍の大規模攻撃に比べればあまりにも小規模な諍いを引き起こしていただけにすぎないユリアン達のことを覚えているような余裕など、当時の地球教には全くなかったのではないかと。
それに「地球教と手を組め」と言っても、何も私は地球教と「対等の立場で話し合い」「対等の同盟を締結する」ことで目的を遂行しろと言っているわけではないですよ。ヤン・ファミリーには、ユリアン達が採取してきた、地球教の詳細な秘密情報が記されている光ディスクの存在があるではありませんか。アレを使って地球教を脅迫し(具体的には「地球教の秘密を帝国に教える」というやり方がベスト)、無理矢理にでも自分達の味方にするというのが私の考える謀略構想です。あの光ディスクには外部に知られては色々とマズイ情報がたくさん詰め込まれているでしょうから、地球教やド・ヴィリエが何を考えていようが、この脅迫には屈するしかないでしょう。拒否すれば地球教は名実共に破滅してしまうのですし。
それから地球教との連絡手段に関しては、地球で奉仕活動を行う過程でユリアン達は地球教の教団支部とかをある程度は把握してはいるでしょうし、光ディスクの存在を裏情報で少しずつ流し、向こうから食いつかせるという手もあるでしょう。その気になれば方法はいくらでも存在すると思いますけどね。
それと、確かにトリューニヒトが当時住んでいたのはフェザーンではなくオーディンでしたね。これに関しては訂正しておきます。
<ラインハルトに媚を売るためにレベロを暗殺したロックウェル大将らが処刑された事は知れ渡っているでしょうし、それを知っていて「売り」に出るような輩が多くいるとは思えないので、大した問題にならないのでは?
「寛大な体制」云々については、ヤンというカリスマを抱いた外敵がいる以上、帝国もそう簡単に「寛大な体制」を捨てる事が出来ないという事くらい、一般の兵士も理解するのでは?>
少し歴史を見てみれば、当初は占領民に対して「寛大な体制」を取っていた占領軍が、ある日突然一転して占領民に牙を剥き、大量虐殺や強制連行・奴隷政策などを行ったりした事例などいくらでもあります。帝国軍も旧同盟市民にとっては所詮占領軍に過ぎない以上、「あのラインハルトだから」とか「綱紀粛正が行き届いている帝国軍だから」というのは、旧同盟市民、特にイゼルローン陣営に所属する将兵の家族にとっては何ら安心できる理由にはなりません。
現に同盟が帝国に完全併合された後でさえ、何度も反帝国を掲げた暴動の類が起こっていたではありませんか。アレこそが帝国に対して旧同盟市民が抱く一般的な認識といっても良いのですから、彼らが帝国軍に不信や反感を抱かない方が変と言うものです。
また「ヤンというカリスマを抱いた外敵」の存在は、むしろ反対に帝国側に将兵の家族を人質に取るという策に走らせてしまう危険性があるでしょう。それほど危険ではなかったはずの銀英伝10巻当時のイゼルローン陣営に対してさえ「オーベルシュタインの草刈り」が行われたと言う実例だって存在するわけですし、ましてや正面から戦えば莫大な損害を出すことが分かりきっているヤンに対してならば、帝国軍の損害を避けるためにも、人質策の可能性を模索する人間は必ず出てくるでしょう。
平松さんの主張は、帝国側の事情に対してあまりにも楽観的過ぎるのではないかと思うのですが。
<一つ疑問なのですが、エル・ファシルから全住民を移住させたとして、別の諸星系が独立政府への参加を希望し、「私達も移動要塞に移住させて下さい」と次々と申し入れてきたらどうするのでしょうか?無論直径60km程度のイゼルローンでは収容人数に限界があるでしょうから、ある程度の人口に達したらそこで移住をストップせざるを得ませんし、移動要塞を複数作るのも経済的・時間的に見て至って困難でしょう。残った多くの移住希望者に「もう入れませんので、申し訳ないがあなた方は帝国の脅威にさらされ続けて下さい」などと言えば、エル・ファシル独立政府やヤンへの民衆の期待は地に落ちてしまうのでは?>
銀英伝本編の中でさえそのようなことを言ってきた星系など存在しなかったのに、なぜイゼルローンにエル・ファシル住民を移住させただけで、それに呼応しようとする星系があると言えるのですか? しかもエル・ファシル以外の星系は、別にヤンやイゼルローン要塞に頼らずとも当面は安全を確保することができると言うのに?
イゼルローンを移動要塞に改造した後、巨大な戦果でも上げて旧同盟市民から歓呼の嵐で迎えられるといったような事態にでもなれば、そういうシナリオもありえないことはないと思いますけど、ロクな戦果も上げていないあの時点ではまず無理でしょう。他の星系にしてみれば、下手にエル・ファシル独立政府側につけば、それこそ報復措置として帝国からの直接攻撃や経済制裁などを受ける危険性があるわけですから、当面は帝国に臣従の意を示しつつ、心の中でヤンを応援するにとどめておくのが賢明な判断と言うものです。エル・ファシル以外の星系の指導者達は、すくなくともロムスキーのような「お調子者」よりは賢明な判断で傍観に徹していたのですよ。
すくなくとも当面の間は、このような心配をする必要はありますまい。