冒険風ライダーさん
<これほどまでの超巨大宇宙船を航行させられるだけの技術が、本来技術系出身であるはずもないアルタイル星系の無学な奴隷階級ごときの手によって確立され、しかも船体自体の問題はともかく、宇宙航行に関しては何ら問題がないらしいことを考えれば、それよりもはるかに小さな銀英伝世界の要塞クラスが宇宙を航行する技術の実用化に、実は大した障害など全く存在しなかったということがお分かり頂けるでしょう。250年近くも前にすでに確立している技術を模倣するなどそれこそ難しいことではないですし、燃料問題も質量問題も全て解決してしまいます。
一連の議論で懸案となっていた「移動要塞技術確立の問題」はこれで全て解決しますね。>
「材料となったドライアイスの巨大な塊の大きさ」=「イオン・ファゼカス号の大きさ」とは必ずしも言えないでしょう。そもそも、直径60kmのイゼルローンにすら500万人以上が居住出来るのに、どうして40万人を乗せるのにそんな巨大な宇宙船が必要なのでしょうか?動力部や船体の厚みなどを考慮に入れても無駄なスペースがあり過ぎるのではないかと思います。
3巻のP214には、
<宇宙船のエンジン推力軸は、厳密に船体の重心をつらぬいていなければならない。宇宙船の形状が円または球形を基本とし、左右・上下が対象となっているのは、そのためである。もしこの法則を守らなければ,宇宙船は進む方向を見失い、重心を中心としてスピン回転をつづけることになる。>
とありますので、第一にそのドライアイスの塊を円や球を基本として表面を加工しなければならず、これだけでもかなりの重量が削られると思われます。しかし、惑星上にいる監視者(1巻P15)の存在を考えれば、これだけの巨大な塊を加工している時点で監視者に露見する可能性が高く、そのまま加工を行なうのは無謀です。そこで、そのドライアイスの内部を掘削して空間を作り、ドライアイスの塊の外部を工事隠蔽の為のシェルターとし、その中で内部のドライアイスの塊を加工して宇宙船を作ったというのはどうでしょう?そうすればイオン・ファゼカス号それ自体の大きさは少なくとも当初の塊の半分以下にはなりますし、更に内部をくり貫き、表面を円や球を基本として削って加工すれば重量は更に軽くなります。また、40万人を一定期間居住させるだけなら、ガイエスブルクより小さくても問題はないでしょうし、「イオン・ファゼカス号はガイエスブルク要塞より遥かに小さかった」という可能性も考えられるのではないでしょうか。
また、「無学な奴隷階級」というご意見にも、Zeroさんのおっしゃる通り疑問を感じます。1巻のP14下段には、「帝国暦一六四年、叛徒の眷属として奴隷階級に落とされ、苛酷な労働を課せられていた」とあり、彼らが一代で奴隷階級に落とされたと解釈出来ます。そうである以上,40万人の中にはかつては技術者であり、宇宙船を飛ばす高度な知識を有していた人達も相当数存在したのではないかと。第一彼らがそれ程無学なら、同盟が100年程度でダゴン星域で帝国と対峙出来るだけの科学力や国力を持っていた事の説明がつかないのでは?これらは高い教育水準を最初の市民達が有していたという証拠になるのではないでしょうか。
<また、アルタイル星系を脱出して後、無名の惑星の地下にて新たに建造された80隻の恒星間宇宙船に至っては、イゼルローン要塞とほぼ同レベルの「自給自足能力」を保有していた可能性が極めて高いのです。彼らは自らの根拠地を捨てて流浪しながら、50年以上にもわたって孤独な旅を続けていたわけなのですから(その点では銀英伝本編のイゼルローン陣営と同等ないしはそれ以下)、彼らの艦船自体に食糧・燃料等を全て自前でまかなえる一定規模の自給自足能力が存在しなければ、そもそも「長征一万光年」自体が補給の問題に直面して全く成り立たなくなることにすらなってしまいます。そしてこの事実は、銀英伝世界で「移動しながらの自給自足」が技術的に可能であることをも立証するのです。>
実際50年後に彼らが新天地に到達した時、彼らは当初の四割に過ぎない16万人にまで減少しています(1巻P16下段)。この人口減少の原因としては、事故や老衰、連続してワープせざるを得ない環境下での出生率の低下の他に、食料の確保困難による栄養失調も大きな理由だったとは考えられないでしょうか。
詳しい記述がない以上、「長征一万光年」における自給自足体制が万全なものだったと断定するのは早計で、要塞のそれと安易に比較は出来ないのではないかと。
Zeroさん
<アルタイル星系が何処にあるかは分かりませんが辺境でしょう。
想像するなら、イゼルローン回廊に比較的近い星系だと思われます。>
アルタイルは実在する恒星で、わし座の一等星で日本では彦星と呼ばれています。地球からの距離は16~17光年ですので、銀英伝の艦船事情からすればすぐ近くと考えていいでしょう。オーディン=地球間の距離は、七月一〇日に地球教討伐に向かったワーレン率いる高速艦隊が太陽系外縁部に到達したのが二四日ですので(6巻P158下段)、およそ2週間程度ということになります。ハイネセン=イゼルローン間の距離は約4000光年で(3巻P129上段)、ヤンが査問会出頭時に乗った巡航艦レダⅡで3~4週間程度(3巻P115上段)必要でしたので、オーディン=アルタイル間は2000光年前後と推定出来ます(実際は「航路=星系間の直線距離」という訳ではないので多少なりとも誤差はあるでしょうが)。そしてオーディン=イゼルローン間は約6250光年(1巻P113)であり、これから考えればアルタイル=イゼルローン間は最低でも直線距離で4000光年近く離れていると考えられますので、アルタイル星系がイゼルローン回廊に近いという可能性はないかと(もっとも、作中のアルタイル星系が、名前が同じなだけで実在のアルタイルとは全く別な恒星系だという可能性もありますけど)。
それにしても「長征一万光年」についての記述は至って少ないですね。この少ない記述のみを元にして仮説を立てても、強い説得力を持たせるのは難しいのではないでしょうか(自分の説もそうですが)。
>平松さん
<「材料となったドライアイスの巨大な塊の大きさ」=「イオン・ファゼカス号の大きさ」とは必ずしも言えないでしょう。そもそも、直径60kmのイゼルローンにすら500万人以上が居住出来るのに、どうして40万人を乗せるのにそんな巨大な宇宙船が必要なのでしょうか?動力部や船体の厚みなどを考慮に入れても無駄なスペースがあり過ぎるのではないかと思います。>
そりゃ純粋に居住部と動力部のスペースのみを考慮すれば確かにイオン・ファゼカス号の大きさは無駄もいいところでしょうが、しかし「船体の維持」という観点から見ると、あの巨大さは決して無駄と呼べるようなものではありません。
そもそもドライアイスは二酸化炭素を圧縮して固体化したものであり、冷却材などによく使われる物質であるわけですが、そのドライアイスが固体から気化する際の「昇華温度」は何とマイナス78.9℃と非常に低いため、その維持には氷と比べても絶対的に低い温度を必要とするのです。
こんな絶望的な条件を満たすことが果たしてできますかね? 確かに作中でも言われている通り、常に絶対零度を維持している船体外側に関しては何の問題も生じないでしょうが、絶対的に熱を必要とする動力部と居住部でマイナス80℃以下などという「バナナで釘が打てる酷寒の世界」を維持できるはずもないでしょう。特に動力部などは周辺に放つ熱だけでも数千~数万度もの高い温度が存在することは疑いありません。また作中でも「『動力部や居住部からの熱を遮断させることさえできれば』、かなりの長期間にわたって飛行が可能である」という『』の条件付きで航行が可能と明記されており、「そしてその間に、星間物資や無人惑星に恒星間宇宙船の材料を求めればよいのだ」と述べている辺り、『』内の条件を永続させることは銀英伝世界でも不可能であることを逆に物語っています。単純に考えても、居住部の居住環境の維持と動力部から発生する熱だけでドライアイスの維持に必要な温度を簡単に上回ってしまうわけですから、短期的にはともかく、長期的には船体の維持が困難な話であることは想像に難くありません。
これから考えれば、なぜイオン・ファゼカス号があれほどまでに巨大な図体を誇っていたかの理由も説明できるでしょう。あの巨大な船体は、内部に物資を格納するためのものではなく、船体の維持それ自体が目的であるわけです。また建造者達も、このことを想定したからこそあえて巨大なドライアイスの塊などを宇宙船の材料として選択したのでしょう。ドライアイスの特性から、イオン・ファゼカス号は航行するにしたがってドライアイスの体積&質量の絶対量が減少していきますので、その辺りも考慮した上で船体の建造を行わなければならないわけです。
これでイオン・ファゼカス号の巨体の謎についての説明はつくのではないでしょうか。
<第一にそのドライアイスの塊を円や球を基本として表面を加工しなければならず、これだけでもかなりの重量が削られると思われます。しかし、惑星上にいる監視者(1巻P15)の存在を考えれば、これだけの巨大な塊を加工している時点で監視者に露見する可能性が高く、そのまま加工を行なうのは無謀です。そこで、そのドライアイスの内部を掘削して空間を作り、ドライアイスの塊の外部を工事隠蔽の為のシェルターとし、その中で内部のドライアイスの塊を加工して宇宙船を作ったというのはどうでしょう?そうすればイオン・ファゼカス号それ自体の大きさは少なくとも当初の塊の半分以下にはなりますし、更に内部をくり貫き、表面を円や球を基本として削って加工すれば重量は更に軽くなります。また、40万人を一定期間居住させるだけなら、ガイエスブルクより小さくても問題はないでしょうし、「イオン・ファゼカス号はガイエスブルク要塞より遥かに小さかった」という可能性も考えられるのではないでしょうか。>
こんなことをするくらいならば、そもそも最初から件の巨大なドライアイスよりも体積&質量の小さなドライアイスなり氷なりの塊を船体に選んで宇宙船を建造する方がはるかに手っ取り早いですよ。その方が掘削の手間も大幅に省けますし、全体的な工期もはるかに短くて済みますから。第一、件のドライアイスに関しては「その中心部を刳貫いて動力部と居住部を設け、宇宙船として飛ばそうというのである」とはっきり書かれていますので、平松さんの仰るような拡張解釈は不可能なのではないかと。
それに惑星上なり衛星軌道上なりに敵の監視の目が光っており、その監視下の元で奴隷労働に従事しなければならない状態で、しかもたった3ヶ月ほどで、イオン・ファゼカス号ほどの巨大な宇宙船が建造できるわけがないでしょう。それにシェルターなどを使ったところで、ドライアイス以外の莫大な物資の搬入や人員の移動などは絶対に必要不可欠ですから、それが惑星上の監視員なり空からの監視なりに捕捉されたら一巻の終わりです。敵の監視下にある場所で巨大な宇宙船建造などという大規模工事を行っているのに、たかだかシェルターごときでそれを完全に隠蔽することができると考える方がどうかしているでしょう。
あの奴隷階級の面々がイオン・ファゼカス号を建造するためには、一時的にせよ惑星上から帝国側の勢力を完全に駆逐ないしは無力化させ、しかもそのことを外部に一切悟られないようにするしかないでしょう。少しでも計画が敵側に露見すれば、奴隷階級にとってはそれで全てが終わるのですから。
<また、「無学な奴隷階級」というご意見にも、Zeroさんのおっしゃる通り疑問を感じます。1巻のP14下段には、「帝国暦一六四年、叛徒の眷属として奴隷階級に落とされ、苛酷な労働を課せられていた」とあり、彼らが一代で奴隷階級に落とされたと解釈出来ます。そうである以上,40万人の中にはかつては技術者であり、宇宙船を飛ばす高度な知識を有していた人達も相当数存在したのではないかと。第一彼らがそれ程無学なら、同盟が100年程度でダゴン星域で帝国と対峙出来るだけの科学力や国力を持っていた事の説明がつかないのでは?これらは高い教育水準を最初の市民達が有していたという証拠になるのではないでしょうか。>
あの記述の後に、
銀英伝1巻 P15上段~下段
<彼らの計画は幾世代にもわたって周到に練られたものではなかった。そのような計画は立てられた数だけ失敗に終わっていた。共和主義者の墓標が増え、挽歌に代わって社会秩序維持局の嘲笑が響き渡る。際限ない、その繰り返しだった。>
<それまでの計画の難点は宇宙船の材料の入手法にあった。非合法な資材の入手には必然的に無理が生じ、それが社会秩序維持局にかぎつけられると、容赦のない弾圧と殺戮の暴風が吹き荒れることになるのだ。>
という、いかにも「昔から現地の奴隷階級の間ではそのようなことが頻繁に画策されていた」と言わんばかりの記述があったので、彼らは「ルドルフの死後の叛乱で農奴階級に突き落とされた共和主義者の末裔」であると私は解釈したわけですが、この辺りは解釈の違いでしょうね。
まあこの主張に関しては、別に平松さんの主張に沿った内容でも別に私も異論はないですよ。別にそれで作品設定に抵触するわけでもありませんし、彼らが宇宙船を建造できた理由がとにもかくにも説明できるわけですから。
ただ、彼らが奴隷階級であるが故の不利というものは相変わらず存在するでしょう。たとえば宇宙航行技術を生かすための道具や設備の問題とか。奴隷階級しか存在しない資源採掘目的の惑星に、削岩系の道具ならともかく、たとえばエンジン開発のための設備や環境といったものがあの惑星上に存在するようにも思えないですしね~。
<実際50年後に彼らが新天地に到達した時、彼らは当初の四割に過ぎない16万人にまで減少しています(1巻P16下段)。この人口減少の原因としては、事故や老衰、連続してワープせざるを得ない環境下での出生率の低下の他に、食料の確保困難による栄養失調も大きな理由だったとは考えられないでしょうか。
詳しい記述がない以上、「長征一万光年」における自給自足体制が万全なものだったと断定するのは早計で、要塞のそれと安易に比較は出来ないのではないかと。>
そんな問題が存在するのであれば、そもそも「長征一万光年」が成功する事自体、全くもって奇怪な話と言わなければならないでしょう。いつ終わるとも知れない長征を行うというのに補給の問題が全く考慮されないなどということはありえないですし、補給も自給自足も満足にできない状態では、件の共和主義者達の間で同士討ちや内乱・敵との密通などが生じてもおかしくありません。補給問題ほど、人間の士気を下げてしまうものはないのですから。
人口減少の原因としては、平松さんが提言している「事故や老衰、連続してワープせざるを得ない環境下での出生率の低下」だけで充分に説明できるのではないのですか? 何しろ、彼らの恒星間宇宙船1隻につき単純計算で約5000人が搭乗しており、それが大事故に巻き込まれれば搭乗している人間のほとんどが死亡するわけですし、「宇宙の墓場(サルガッソ・スペース)」内の航行は事故率も相当高かったことでしょうしね。
こんな過酷な「長征一万光年」が成功するためには、最低でも「万全な自給自足体制の確立」くらいは必要不可欠ですし、またそうでなければ「長征一万光年」がとにもかくにも成功してしまうこと自体、疑問視せざるをえなくなるのではありませんか?
ずっと興味深くロムさせていただいたが、基本的には要塞賛成派も反対派も解釈の違いであり、両者に妥協の余地は無さそうに思える。もう、この辺でやめにされてはいかがだろうか。
ただ、一つだけ言わせていただくならば、解釈と言うものは所詮原作を超える立場にはない。
冒険風ライダー殿の意見は面白いが、その辺の配慮に欠けている。解釈である以上、それでキャラクターを攻撃しても意味はない。
貴殿の意見を見ていると、「自分はこんな凄いことを思い付いたぜ」というただの自慢にしか見えない。
むろん、これは私が貴殿の意見を見て解釈した結果なので、貴殿が「そんな意志がない」と言うならばその通りであり撤回する。
要は、解釈とはその程度のものなのである。
自分の考えに自信を持ち、それを何らかの形で発露する行為は良い事だが、それを他者への攻撃と言う形で表しては尊敬も共感も得られまい。
私の意見は以上である。
私もROMさせていただいていた者です。
とても高度な議論で、理解力が追いつかない部分も多々ありましたが、私は、移動要塞は技術的に可能だったという説の方が説得力がある、と感じてます。
ストーリーをストーリーとして楽しむのと、一歩話から離れた視点から変なところを突っ込んで「これじゃあみんなバカだぞ」と言うのは全く別の楽しみ方だと思いますので。
だから矛盾点を突っ込んで楽しむ場面で、特にキャラクターたちがバカと呼ばれるのに抵抗も感じてませんでした。
議論の途中で多少、語尾がきつくなる場面もありましたが、国会や国際会議ではもっとキツイ物言いが普通に存在してますし、白熱する議論の中で、ある程度攻撃的な表現が出て来るのは、自然のことと捉えてます。
ですから、今まで高度な論戦を展開して、その議論を参加しなかった者も楽しませてくださった皆さんには、楽しませてもらった者として感謝してます。
特に、今まで気づかなかった変な点を指摘して、数々の反論に説得力ある説明を返されていた冒険風ライダーさんは凄いと思ってます。
以上、掲示板の趣旨に反するかも知れませんが、茶々や終戦勧告まで出て来るようになった今、論者の皆さんに感謝と感想を伝えたくて書き込みさせていただきました。
冒険風ライダーさん
<そりゃ純粋に居住部と動力部のスペースのみを考慮すれば確かにイオン・ファゼカス号の大きさは無駄もいいところでしょうが、しかし「船体の維持」という観点から見ると、あの巨大さは決して無駄と呼べるようなものではありません。
そもそもドライアイスは二酸化炭素を圧縮して固体化したものであり、冷却材などによく使われる物質であるわけですが、そのドライアイスが固体から気化する際の「昇華温度」は何とマイナス78.9℃と非常に低いため、その維持には氷と比べても絶対的に低い温度を必要とするのです。
こんな絶望的な条件を満たすことが果たしてできますかね? 確かに作中でも言われている通り、常に絶対零度を維持している船体外側に関しては何の問題も生じないでしょうが、絶対的に熱を必要とする動力部と居住部でマイナス80℃以下などという「バナナで釘が打てる酷寒の世界」を維持できるはずもないでしょう。特に動力部などは周辺に放つ熱だけでも数千~数万度もの高い温度が存在することは疑いありません。また作中でも「『動力部や居住部からの熱を遮断させることさえできれば』、かなりの長期間にわたって飛行が可能である」という『』の条件付きで航行が可能と明記されており、「そしてその間に、星間物資や無人惑星に恒星間宇宙船の材料を求めればよいのだ」と述べている辺り、『』内の条件を永続させることは銀英伝世界でも不可能であることを逆に物語っています。単純に考えても、居住部の居住環境の維持と動力部から発生する熱だけでドライアイスの維持に必要な温度を簡単に上回ってしまうわけですから、短期的にはともかく、長期的には船体の維持が困難な話であることは想像に難くありません。>
三〇〇〇年以上も未来の銀英伝世界ならば、優秀な断熱材も存在するでしょうから、それを用いて動力部や居住区からの熱を遮断してしまえばある程度の期間は問題ないのでは?酷寒のアルタイル第七惑星ならば、居住区などに用いる断熱材も怪しまれずに入手しやすいでしょうし、そうであれば船体維持の為にドライアイスの船体を巨大なものにしなければならない理由はありません。また、動力部(多分核融合炉)の冷却システムなどの性能も不明な以上、動力部の周辺に数千~数万度もの高い温度が発生しているとは断定出来ないのではないでしょうか。イオン・ファゼカス号の航行が期限付だったのは、温度よりもむしろ所詮ドライアイスである船体の強度に問題があったからなのではないかと思います。
<こんなことをするくらいならば、そもそも最初から件の巨大なドライアイスよりも体積&質量の小さなドライアイスなり氷なりの塊を船体に選んで宇宙船を建造する方がはるかに手っ取り早いですよ。その方が掘削の手間も大幅に省けますし、全体的な工期もはるかに短くて済みますから。第一、件のドライアイスに関しては「その中心部を刳貫いて動力部と居住部を設け、宇宙船として飛ばそうというのである」とはっきり書かれていますので、平松さんの仰るような拡張解釈は不可能なのではないかと。
それに惑星上なり衛星軌道上なりに敵の監視の目が光っており、その監視下の元で奴隷労働に従事しなければならない状態で、しかもたった3ヶ月ほどで、イオン・ファゼカス号ほどの巨大な宇宙船が建造できるわけがないでしょう。それにシェルターなどを使ったところで、ドライアイス以外の莫大な物資の搬入や人員の移動などは絶対に必要不可欠ですから、それが惑星上の監視員なり空からの監視なりに捕捉されたら一巻の終わりです。敵の監視下にある場所で巨大な宇宙船建造などという大規模工事を行っているのに、たかだかシェルターごときでそれを完全に隠蔽することができると考える方がどうかしているでしょう。>
シェルター云々の件は確かに拡張解釈と言えるものですが、そうでも考えないと、どうやって40万人が乗れる巨大宇宙船の製作を3ヶ月もの間隠蔽し切れたのかという説明がつかないんですよね。まあ、リンチ少将が収監されていた辺境の矯正区の記述で「徴兵制をしいているといっても人的資源には限界があり、じつのところ辺境星区のすみずみまでは手が行き届かないのである」(2巻P37)とあるので、実際の所監視員の数もやる気も少なく、監視の目はかなり粗かったと考える事も出来ます(それでも全長120キロもの宇宙船製作を3ヶ月も隠蔽し切れるとは思えませんが)。
<そんな問題が存在するのであれば、そもそも「長征一万光年」が成功する事自体、全くもって奇怪な話と言わなければならないでしょう。いつ終わるとも知れない長征を行うというのに補給の問題が全く考慮されないなどということはありえないですし、補給も自給自足も満足にできない状態では、件の共和主義者達の間で同士討ちや内乱・敵との密通などが生じてもおかしくありません。補給問題ほど、人間の士気を下げてしまうものはないのですから。
人口減少の原因としては、平松さんが提言している「事故や老衰、連続してワープせざるを得ない環境下での出生率の低下」だけで充分に説明できるのではないのですか? 何しろ、彼らの恒星間宇宙船1隻につき単純計算で約5000人が搭乗しており、それが大事故に巻き込まれれば搭乗している人間のほとんどが死亡するわけですし、「宇宙の墓場(サルガッソ・スペース)」内の航行は事故率も相当高かったことでしょうしね。
こんな過酷な「長征一万光年」が成功するためには、最低でも「万全な自給自足体制の確立」くらいは必要不可欠ですし、またそうでなければ「長征一万光年」がとにもかくにも成功してしまうこと自体、疑問視せざるをえなくなるのではありませんか?>
あるいは不安に駆られた一部の人間による叛乱なども人口減少の原因の一つだったかも知れません。そう言えば三代目掲示板の過去ログNo.373(ザ・ベストの「反銀英伝・設定検証編1-C」に収録)で管理人さんが、
<意図的にか、ハイネセンとその一派は理想的共和(民主)主義者として描かれていますね。だから、あたかも孔子が周公の時代を理想の引き合いに出すがごとく、先程のヤンのつぶやきが出てくるのです。
「恣意的な歪んだ歴史」というのなら、ヤンが拠り所にしていた歴史自体が恣意的に変更されていた可能性が高いと私は考えます。
ハイネセン一派が理想的共和主義だったというのが相当怪しい。
ロンゲストマーチのような非常にシビアな状態では、強烈な専制的なリーダーシップが無いと絶対に目標は達成できないこと、そのためにパルチザンはセクト的になること(もちろん粛正もつきもの)が必然的なのは、それこそ「歴史が証明」しているからです。
たぶん、ロンゲストマーチの最中に、ちょっと執行部に異論を挟んだために「貴様の思想は帝国主義的だ!」「この帝国シンパめ!」「総括しろ!」とか言われて粛正された人は多かったんじゃないでしょうか。逆にそうでなかったら帝国の策謀によって壊滅していたんじゃないでしょうか。>
と書いておられましたね。食糧不足に悩まされつつも長征が成功したのは、ハイネセンやグエン・キム・ホアらが「強烈な専制的なリーダーシップ」で40万人を支配していたからかも知れません(^^;;;)。
まあ、いずれにせよ銀英伝内における科学技術の詳細が分からない以上は、これらに関して議論を続けても千日手にしかならないと思いますし、この辺りで終わりにしたいと思うのですが(他の人からの勧告もあった事ですし)。
私から見ると寧ろ反対論の方が説得力がありましたね。
冒険風ライダーさんの論はこじ付けすぎるように感じました。
そもそも銀河英雄伝説のifを考えるとき、
いわゆる行間を埋める作業がほとんどになり、
本文記述が役に立たないという制約が存在します。
つまり、点と点を結んで線にする作業なのですが、
銀河英雄伝説においては点と点の間隔が広いうえ不規則・相互矛盾であり、
読者の解釈次第でどうとでも結べてしまうんですよね。
だから同じ記述を読みながらまったく正反対の結論が出てしまう。
Zeroさんが「オレ設定」と言ってましたが、
まさにそうで、結局のところどちらの「オレ設定」が説得力があるかという話に過ぎません。
そこで両者の「オレ設定」を並べてみるとき、
冒険風ライダーさんはあまりに自説の無謬性を信じすぎて、
都合よく点と点を結びすぎだと感じます。
そもそも発端のあの解釈がいただけません。
「どのみち、急速に事態が変わるとは思っていません。
国父アーレ・ハイネセンの長征一万光年は五〇年がかりでした。
それぐらいの歳月は覚悟しておきましょうよ」
「五〇年後には、おれは九〇歳になってしまうな、生きていれば、だが」
この会話が無限補給の根拠の一つにされていますが、
これは世間話のレベルだと解釈するのが普通でしょう。
ハイネセンの故事を引き合いに出して、物事は困難を極めるから長い時間かかるだろう。ああ、そうだね、と。
もっともこういう解釈論を言い出せば、
この記述だって冒険風ライダーさんは、
補給の専門家が50年のお墨付きを与えたと根拠にされてしまうくらいですから、
他にもそのように読み取った人が居ないともかぎりません。
それから、作中人物をバカにしたという話については、
これは一方的に冒険風ライダーさんに非があります。
どなたかがシャーロッキアンに喩えられていましたが、
シャーロッキアンがあのようなことをするのは作品を愛しているからです。
けっしてホームズはこの程度のことも分からなかったから馬鹿だとか、
俺の方が利口だとか、そんなことを自慢するためにやっているんじゃないですね。
ですから、「オレ設定」でもって作中人物を無能呼ばわりするなんてもってのほかです。
こういう行為は初級のシャーロッキアン以下ですね。
まあ色々勝手なことをいいましたが、
全体的に反対派の人たちはよく頑張っていたなと思います。
賞賛だけのファンサイトなら、感情的な非難で終わっていたでしょうから。
全体としては非常に質の高い議論を楽しませてもらいました。
ありがとうございました。
初めまして。少し説明させてください。
> とても高度な議論で、理解力が追いつかない部分も多々ありましたが、私は、移動要塞は技術的に可能だったという説の方が説得力がある、と感じてます。
冒険風ライダーさんの「移動要塞論」に反論している論の多くは
「技術的」というよりも、その「恒常運用」に重きを置いています。
「ガイエスブルグ」という事実がある以上、技術的に全く不可能とは
断じる事ができないからです。
只、「帝国で出来た事が同盟で全く問題なくできたか?」
「ガイエスブルグの一回の航海は、イゼルローンの半永久的航海
の根拠になり得るか?」辺りがメインだった訳です。
あ、「冒険風ライダーさんの論の方が説得力がある」という考えに
掣肘を加えようと言う意図は全くありません。
念のため。
1/nのif論としては充分評価できうるものでしょう。
賛同できるかどうかが別、というだけですね。
> ストーリーをストーリーとして楽しむのと、一歩話から離れた視点から変なところを突っ込んで「これじゃあみんなバカだぞ」と言うのは全く別の楽しみ方だと思いますので。
> だから矛盾点を突っ込んで楽しむ場面で、特にキャラクターたちがバカと呼ばれるのに抵抗も感じてませんでした。
これが、「仲間内の会話」であれば、特に問題ないのでしょうが、
ある意味公共の場でのこういう意見は、投稿者の意図が完全に
分からない分、判断が難しいですよね。
特に今回の冒険風ライダーさんの投稿は「正史の代案」とした論を
根拠にしたキャラクタへの攻撃(と僕は感じた)ですから。
> 特に、今まで気づかなかった変な点を指摘して、数々の反論に説得力ある説明を返されていた冒険風ライダーさんは凄いと思ってます。
確かに、着眼点はおもしろいとは僕も思いました。
普通のif論であれば、もっと建設的な議論が出来たと感じます。
只、以前にも書きましたが、彼の論の肯定イコール、キャラクタ
攻撃への追随と解釈され兼ねないので安易に賛成できませんでした。
やはりifはifとして楽しむべきで、ifを根拠に作品を貶めるのは
どうかと思います。
>平松さん
<三〇〇〇年以上も未来の銀英伝世界ならば、優秀な断熱材も存在するでしょうから、それを用いて動力部や居住区からの熱を遮断してしまえばある程度の期間は問題ないのでは?酷寒のアルタイル第七惑星ならば、居住区などに用いる断熱材も怪しまれずに入手しやすいでしょうし、そうであれば船体維持の為にドライアイスの船体を巨大なものにしなければならない理由はありません。また、動力部(多分核融合炉)の冷却システムなどの性能も不明な以上、動力部の周辺に数千~数万度もの高い温度が発生しているとは断定出来ないのではないでしょうか。イオン・ファゼカス号の航行が期限付だったのは、温度よりもむしろ所詮ドライアイスである船体の強度に問題があったからなのではないかと思います。>
確かに核融合炉が成立している銀英伝世界であれば「優秀な断熱材」なるシロモノは当然存在するでしょうが、問題なのは「それらの材料を奴隷階級の面々がどのようにして手に入れられるのか」ですよ。第一、自分達に反抗した奴隷階級など平民階級にも劣る虫けら以下の存在としか思っていないであろう帝国政府が、惑星外部からの物流の流れを自由化したり、自由に物資を獲得することが可能な経済的環境を保障したりしてやるほどに「お人好し」な組織だったとはとても考えられないのですがね。
奴隷階級の生活に関しては、「矯正区」に収容される同盟軍捕虜とほぼ同じないしはそれ以下というのが実態に近いのではないでしょうか。具体的に言うと、惑星内部では乏しい食糧しか自給できず、物資に関しては必要最低限な生活必需品(衣類や医薬品など)しか供給せず、少数の監視員が監視装置・監視衛星などを使って過酷な労働に従事させつつ、定期的に生存者と死亡者のチェックを行う、といったところでしょうか。前にも述べたように帝国政府にとっては奴隷階級など「死んでくれればありがたい」ゴミ以下の存在でしかないのですから、その生活環境が同盟軍捕虜以下であっても何の不思議もありますまい。
この環境では宇宙船の材料どころか、そもそも食糧や生活必需品の充分な確保にすら四苦八苦し、その獲得をめぐって奴隷階級同士互いに相争うほどの苛酷な惨状が予想されます。少量ならばともかく、巨大宇宙船の動力部や居住区を全て覆いつくせるだけの断熱材の確保はほぼ不可能に近かったことでしょう。
それと動力部の熱に関しては、あのドライアイスがエンジンや核融合炉の冷却材としての機能も担っていた可能性が高いと私は考えています。これならば、あのドライアイスの膨大な量が何故必要だったかの説明にもなりえますからね。
<シェルター云々の件は確かに拡張解釈と言えるものですが、そうでも考えないと、どうやって40万人が乗れる巨大宇宙船の製作を3ヶ月もの間隠蔽し切れたのかという説明がつかないんですよね。まあ、リンチ少将が収監されていた辺境の矯正区の記述で「徴兵制をしいているといっても人的資源には限界があり、じつのところ辺境星区のすみずみまでは手が行き届かないのである」(2巻P37)とあるので、実際の所監視員の数もやる気も少なく、監視の目はかなり粗かったと考える事も出来ます(それでも全長120キロもの宇宙船製作を3ヶ月も隠蔽し切れるとは思えませんが)。>
これに関しては前にも言いましたが、やはり惑星内部の監視員達全てを武装蜂起なり懐柔工作なりで完全制圧してしまい、かつそのことを徹底した隠蔽工作によって一切外部に洩らさなかったというのが実情に近いのではないでしょうか。そもそも監視員を一時的にせよ制圧しておかないと、隠蔽問題もさることながら、奴隷階級全体が彼らによって奴隷労働(例の第七惑星ではモリブデンとアンチモニーの採掘)を強制させられてしまうため、宇宙船建造に専念することができなくなってしまうのですから。彼ら全てが竜堂兄弟レベルの超人でもない限り、奴隷労働に従事しながら、あれほどまでに巨大な宇宙船を、しかもたった3ヶ月で建造できるはずがないでしょう。
数年単位もの長期間ならばともかく、3ヶ月程度の間ならば、余程の不運にでも遭遇しない限り、惑星内の監視員を完全に制圧してしまい、情報統制を巧みに駆使することで、宇宙船の建造を外部の目から完全に隠蔽してしまうことは可能でしょう。それこそ帝国政府にだって「人的資源には限界があり、じつのところ辺境星区のすみずみまでは手が行き届かないのである」わけですし。
宇宙船建造が敵側の監視の目に晒される危険性があるのであれば、無理に隠蔽するよりも監視の目そのものを消してしまった方がはるかに効果的だと思うのですが、いかがでしょうか。
<まあ、いずれにせよ銀英伝内における科学技術の詳細が分からない以上は、これらに関して議論を続けても千日手にしかならないと思いますし、この辺りで終わりにしたいと思うのですが(他の人からの勧告もあった事ですし)。>
とりあえず私としては、「長征一万光年」を取り上げることで「同盟側にも要塞クラスの体積&質量を移動させられるだけの技術は存在した」「無限の自給自足能力は実在し、かつ移動しながらの自給自足システムも技術的に可能である」ことを立証するという目的はある程度達成されたわけですから、そちらにそれ以上の意見がないのであれば、この件に関する議論は終了してもかまいません。
というか、私は平松さんのNo.1939の投稿があるまでは、「長征一万光年」関連の議論どころか、当スレッドにおける議論それ自体がその前の投稿で終結したとすら考えていたのですけどね。
>No.1949
<そもそも銀河英雄伝説のifを考えるとき、
いわゆる行間を埋める作業がほとんどになり、
本文記述が役に立たないという制約が存在します。
つまり、点と点を結んで線にする作業なのですが、
銀河英雄伝説においては点と点の間隔が広いうえ不規則・相互矛盾であり、
読者の解釈次第でどうとでも結べてしまうんですよね。
だから同じ記述を読みながらまったく正反対の結論が出てしまう。
Zeroさんが「オレ設定」と言ってましたが、
まさにそうで、結局のところどちらの「オレ設定」が説得力があるかという話に過ぎません。>
何を言っているのですか。私に対して反論してきた人達のすくなくとも半分ほどは、私の主張への反論を優先するあまり、銀英伝の作品設定との整合性に対する配慮どころか、そもそも銀英伝の作品設定そのものに対する知識すらもおざなりにしたまま、その場しのぎの裏設定をでっち上げていただけではありませんか。そのようなやり方では、たとえ私の主張をその場限りで覆したとしても、銀英伝の他の設定と確実に矛盾をきたすことになってしまい、作品擁護論としては絶対に成立しないと、私はこれまでの投稿で手を変え品を変え何度も繰り返し述べてきたはずですが。
そしてこれまた私は何度も述べてきたことですが、作品擁護論というものは作品批判論の何倍も難しく、そもそも作品設定すらもロクに掌握できていないような人が手軽に作成できるようなシロモノなどではないのです。作品擁護論では、その作品を構成する世界設定やキャラクター設定といったもの全てをことごとく知り尽くした上で、それらの設定のいかなる箇所にも一切抵触することのない、作品世界の世界観にも綺麗に合致した裏設定を、全く矛盾のない理論で完璧に説明する必要があるのです。これは作品設定の矛盾点を検証し、それを指摘すれば良いだけの作品批判論とは比べ物にならないほどに難易度が高いのです。
また、作品論を語る際には、作品のテーマやそれを書いた作者自身の意図および思想的背景、さらには他の作品の執筆姿勢などについても同時に考慮していく必要性があるでしょう。作品のテーマや創造主である作者の考え方といったものと全く相容れない裏設定で作品を擁護するような行為は、作品に対しても作者に対しても失礼極まりないことですし、他の作品と照らし合わせることによって、作者の考え方や作品の共通点・相違点などがおぼろげながら見えてくることもあります。そういったささやかなことが、意外と作品論を語る際に色々と役立つことが多いのです。
これまでに私に対して反論してきた人達の「作品擁護論」と称するもののすくなくとも半分以上は、ただ私の作品批判論をひっくり返すことのみに血道を上げているだけで、作品擁護論にとって最も重要な「作品設定の整合性」や「作者の意図や思想的背景」に対する配慮ないしは考察が根本から欠如してしまっています。そして作品批判論は、そういったものに対する考察はともかく、配慮に関しては一切必要がないわけですから、どちらが論を展開するに際して容易であるかなど、考えるまでもなく自明の理な話でしょう。
作品擁護論は作品批判論の何倍も難しく、その検証には作品批判論以上の設定踏襲と設定配慮に基づいた理論的説得力が必要である。今回私に反論してきた人の大半に欠如していた認識がこれなのでしょう。あまりにも作品設定に反した、安易かついいかげんに作成したとしか思えない破綻した「作品擁護論」モドキが次から次に出現し、そんなもので擁護されるのでは銀英伝も田中芳樹もたまったものではないだろうと考えたからこそ、今回私は孤軍奮闘で「作品擁護論」モドキに片っ端から反論していったのですよ。
下手な作品擁護論は、下手な作品批判論よりもはるかに作品と作者に対する深刻なダメージになりえるということをもう少し自覚した上で、作品設定に基づいたきちんとした作品擁護論を、私に反論した人達には是非とも展開してもらいたかったところなのですけどね、私としては。
<そもそも発端のあの解釈がいただけません。
「どのみち、急速に事態が変わるとは思っていません。
国父アーレ・ハイネセンの長征一万光年は五〇年がかりでした。
それぐらいの歳月は覚悟しておきましょうよ」
「五〇年後には、おれは九〇歳になってしまうな、生きていれば、だが」
この会話が無限補給の根拠の一つにされていますが、
これは世間話のレベルだと解釈するのが普通でしょう。
ハイネセンの故事を引き合いに出して、物事は困難を極めるから長い時間かかるだろう。ああ、そうだね、と。
もっともこういう解釈論を言い出せば、
この記述だって冒険風ライダーさんは、
補給の専門家が50年のお墨付きを与えたと根拠にされてしまうくらいですから、
他にもそのように読み取った人が居ないともかぎりません。>
今更こんな周回遅れな反論を展開されましてもね~。私はこれと全く同種の質問に対してNo.1896ですでに反論を書いていますよ。しかも銀英伝の記述付で。
そちらをもう一度読み直してみることですね。何度も同じ内容の反論を繰り返し書くのも疲れますし、ソースの無駄でしかないでしょう。
<それから、作中人物をバカにしたという話については、
これは一方的に冒険風ライダーさんに非があります。
どなたかがシャーロッキアンに喩えられていましたが、
シャーロッキアンがあのようなことをするのは作品を愛しているからです。
けっしてホームズはこの程度のことも分からなかったから馬鹿だとか、
俺の方が利口だとか、そんなことを自慢するためにやっているんじゃないですね。
ですから、「オレ設定」でもって作中人物を無能呼ばわりするなんてもってのほかです。
こういう行為は初級のシャーロッキアン以下ですね。>
私は銀英伝の記述に基づいた批判を行っているだけなのですけどね。私に言わせれば、作品検証に耐えられない、デタラメかつ作品設定に著しく反した裏設定に基づいて作品を擁護するような行為こそが「作品と作者に対する冒涜行為」とすら言えるものなのですが。
銀英伝を題材にしたヤオイ系同人誌を製作し、田中芳樹の怒りを買った同人作家達も、さぞかし銀英伝という作品を愛していたことでしょうね。それがどれほどまでに作品と作者を貶めることになるかも知らずに。下手な作品擁護論とは、本質的にはこれと同レベルな事を結果として行っているシロモノでしかありえないのですよ。だからこそ、作品擁護論というものは作品批判論以上に完璧なものである必要があるのです。
ちなみに「下手な作品批判論」で一番傷つくのは、下手な作品批判論を展開した人自身と、その論を信奉した人達だけであって、作品にも作家にも傷が及ぶことは全くありません。作品擁護論と作品批判論、どちらがより作者と作品に対して重大な責任を負うことになるのか、答えは歴然としているのではありませんか?
>> <アルタイル星系が何処にあるかは分かりませんが辺境でしょう。
>> 想像するなら、イゼルローン回廊に比較的近い星系だと思われます。
> アルタイルは実在する恒星で、わし座の一等星で日本では彦星と呼ばれています。
※※以下略※※
細かい補足ありがとうございます。
言われてみれば、そんな気もしますね。
地球自体が「辺境」と呼ばれてますから、充分納得できます。
#架空星域という変な先入観がありました。
> それにしても「長征一万光年」についての記述は至って少ないですね。この少ない記述のみを元にして仮説を立てても、強い説得力を持たせるのは難しいのではないでしょうか(自分の説もそうですが)。
宇宙歴800年前後で、2~3ヶ月で移動できる区間に
50年から掛けた理由が、航行技術に限定しても「どれ位の迂回を
したのか」「どれ位の技術的差違があるのか」等々いくらでも解釈の
余地がありますしね。
冒険風ライダーさん
<とりあえず私としては、「長征一万光年」を取り上げることで「同盟側にも要塞クラスの体積&質量を移動させられるだけの技術は存在した」「無限の自給自足能力は実在し、かつ移動しながらの自給自足システムも技術的に可能である」ことを立証するという目的はある程度達成されたわけですから、そちらにそれ以上の意見がないのであれば、この件に関する議論は終了してもかまいません。>
お疲れ様でした。
それにしても、冒険風ライダーさんが示された移動要塞関連の問題提起は予想以上の反響がありましたね。銀英伝という作品の持つ奥深さを改めて実感しました。
Zeroさん
初めまして。お返事ありがとうございます。
> 冒険風ライダーさんの「移動要塞論」に反論している論の多くは
> 「技術的」というよりも、その「恒常運用」に重きを置いています。
すみません、表現が不適切だったようです。
冒険風ライダーさんが論じられてるような移動要塞の使い方もできるだろう、というのも含めてこちらの方が説得力あるかな、と感じたんです。
そう感じた理由ですが、移動要塞戦法は、このままじゃあ100%敗北という絶望的な状況に置かれたヤンたちが打つ、一か八かの大博打になりえるかどうか、と解釈したんで、ちょっとでも成功の可能性があれば論は成り立つと思ったんで。
どうなれば「成功」かについても、別に本当に何十年も何百年も戦いつづけなくても、帝国軍が降参…はしなくても、うんざりして折れてくれる気になれば良いということ、と見ました。
だから、移動要塞戦法が100%不可能だという証拠が出てこない限り、Zeroさんの表現で言えば、「1/nのif論」として成り立っていればいいと思いましたんで、この議論は冒険風ライダーさんの説の方が説得力あるなと感じたのです。
それから、キャラ批判についてですが、あれは本当にキャラを攻撃したくてなさったものでしょうか。「キャラをバカにしている」ではなくて、「(こんな戦法が成り立つようでは)キャラがバカに見える」とおっしゃっているのでは?
移動要塞説全部を含めて「このように、作中で天才と描かれているキャラがバカに見えてしまう矛盾を含む、物語の設定ミスに対する批判」だと解釈しました。それで「田中芳樹を撃つ」ホームページさんらしい議論だなぁ、と私は感じたんですが……。
【キャラ批判云々について】
NO.1726以降のこのスレッドを見れば一目瞭然ですが、冒険風ライダー
さんは「移動要塞論」を前提として「移動要塞があるのに使わない
(気づきもしない)のはバカだ」と結論づけられています。
少なくとも、僕にはそう読めました。
何で、そんなことをするのか意味不明でしたが。
mnkさんの言い方をお借りすれば、
>「(こんな戦法が成り立つようでは)キャラがバカに見える」
というより、
>「こんな戦法が成り立つのに、気づきもしないキャラはバカだ」
と論理展開されている訳ですね。
只、以前にも書いたのですが、小説はある程度限られたモノですし、
記述する設定にも限度があると思います。設定をタラタラと書き連ね
られても面白くない事もあり得ますし。
はっきり言ってしまえば、ネガティブなスタンスで作品を解釈しよう
とすれば、いくらでも重箱の隅をつつくことは可能だと思います。
#絶対に矛盾のない作品があるというならご教授願いたいくらいです。
ですので、設定ミス(記載されない事による補完の難しいモノも含
めて)をあげつらって持論の通りに動かないキャラクタや、ひいては
作者を批判する事の意義が分からないのです。
冒険風ライダーさんは、少なくとも持論を展開する部分に於いては
意欲的に様々な設定補完をされますが、いざ、作品を肯定する部分
に至ってはその意欲が全く発揮されていないのです。
また、そういう意見を片っ端から否定されてますよね。
自分の「if」は肯定し、他人の「if」は否定する、という傾向を顕著
に感じます。
本スレッドの趣旨である「要塞移動がガイエスブルグやロングマーチ
によって設定的肯定が裏付けられる」というのであれば、その方策が
「正史」で採用され得なかった「理由」を考察すべきではないですかね?
そっちの方が楽しいと思うのですが。
ただ一度の成功を以て、「その後の恒常運用問題なし」というのも、
奇異に感じますが。
#そういった意味で反論した人の多くは「技術」でなく「恒常運用」
を問題視した訳ですし。
更にいうなら、ifを以て作品否定までするのなら、そのifを用いて
エンターテイメントとしておもしろい作品が出来るのかも検証が
必要ではないでしょうか?
正直言って、冒険風ライダーさんのifを用いたその後の展開は特に
おもしろいモノではありませんでした。
ロングマーチの記述が極端に少ないのも、「同盟の起源」としての意義
以外は特になかったのでしょう。もしかしたら歴史の闇に埋もれた
ロングマーチがあるかもしれませんけど、言い出したらキリがありませんし。
今回の一連のやりとりは、お互いがお互いの「オレ設定」を基準に
して発言し、互いが相手の発言を「オレ設定」に照らして意見のやり
とりが行われた感があるので、結局は平行線だった気がします。
相手の「オレ設定」に踏み込むと、論理展開が難しいので・・・
#まぁ、議論とはそんなモノなのでしょうが
只、「作品や作者に対して失礼なのは半端な擁護をする方だ」と
言われてるのですが、そのロジックがよく分かりません。
まぁ、批判は矛盾をつつくだけで良いが、擁護は作品設定を無理なく
纏めろとかいうのは「ちょっと都合良くないか?」とおもいましたが。
特に「記載部分の明らかな設定ミスでなく、未記載部分を脳内補完し
た批判」と認識してましたから、その批判に正当性があるのかなとか
も思ってましたし、ガイエスブルグでやったことをイゼルローンで
やらなかったことが設定の矛盾とはとても断言できませんので。
正直な所「~の目的はある程度達成されたわけですから」とか
「~については立証済み」とかよく書かれてますけど「そうかな?」
とか未だに思っている部分も多々あります。
まぁ、ご本人がそう思うのはご自由なのでそれ以上は何もいいません
でしたが、それ以上の議論が成立すると感じられませんでした。
で、引いてしまいましたが。
僕は「田中芳樹を撃つ」為には、撃つべき部分とそうでない部分を
「撃つ」者が厳密に識別しなくてはならないのではと思うのです。
冒険風ライダーさんの投稿は「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」とばか
りに見えてしまいます。
#ご本人の意図は別にして。
あ、あまりmnkさんへのご返事に書くべき事ではないですね。
まぁ、「冒険風ライダーさんの投稿に対する認識がこれくらい違う者
もいる」程度に受け止めておいて下さい。
どうも、はねだみずきです。何か言う気力がなくなってしばらく引っ込んでましたが、終戦勧告も出てますし、最後に私の小説の読み方に対するスタンスだけ言って終わりにしようと思います。
私も小説を書いているのでわかるのですが、そもそも、文章を書く時は「自分の言いたい事」と「説明しなきゃわからない事」を書くのが普通です。このうち、後者は重要です。つまり、文章として明記されてないことは「存在しない」のではなく、「誰もが知っている」事であるのが普通です。多分、これは田中芳樹氏も同じだと思います。Zeroさんが「給油シーンのない自動車小説・漫画があったとしても、それはその世界で給油をする必要がない事を意味しない」と言うことを仰っていましたが、それは「自動車は給油をしなきゃ動かない」と言う常識を作者も読者も持っているからですね。
ですから、小説を読んでいて特に明記されていない事柄に関しては、作者と読者の共通に持っている「常識」で説明がつくことが大半です。銀英伝の場合、現在の常識で説明がつかないので、ちゃんと説明が書かれている事柄としては超光速航行・通信の存在、世界背景としての帝国と同盟の存在と、そこに至る歴史などが挙げられます。
一方で、質量保存の法則が打ち破られたと言う記述はありませんから、「私たちの知る常識としての質量保存則の存在」は、銀英伝世界においても健在だと考えます。
もちろん、冒険風ライダーさんも膨大な作中の記述を拾い出して「無限の自給は成り立つ」と判断されたのでしょうが、私には暗黙の了解としての質量保存則を打ち破る証拠としては弱く見えたのです。
まぁ、犯罪捜査にたとえれば「(無限自給を肯定させるような)状況証拠はある。しかし、アリバイ(質量保存則)は成立しているから犯人(無限自給)とは断定できない」みたいな状況でしょうか。ちょっとわかり辛いですが。
よって、私の場合、無限の自給能力に関しては「銀英伝世界においても質量保存則は成り立つだろう」と言う判断の元に、否定側に回らせていただきました。
ただ、あくまでもこれが重要なのですが…これらの作品に対する解釈、読み方の方法論はあくまでも私のものです。冒険風ライダーさんには独自の方法論がおありでしょう。ですから、結局は第三者の目でどちらがより説得力があるか、と言う判断を待つしかないのでしょうね。それが分からなかったばかりに、雰囲気がちょっとトゲトゲしいものになってしまったのは残念でしたが、いい経験をさせていただきました。それについては感謝しております。
私は「天然の要害(危険宙域)」という利点はあるにせよ「圧倒的多数を相手に援軍の見こみ無しの篭城戦」をやらかすよりは賢明な方策だと判断します。
幾許か物議を醸したキャラクター論についてもまあ、例えて言えば熱狂的な長嶋ファンが「何故あんな訳の判らない采配をするのかっ!」と憤る事もあるだろう程度の物だと思いますが。
何せ外で見ていて結果を知っている人間は当事者より遥かに正解に近い位置にいられるのですから。
要塞の改造についてはあまり問題を感じませんでした。
確かに特別な機材は必要としないのですし、3巻でヤンが「ああやれば要塞は移動できるのか」くらいの概論は充分把握できた様でしたし。
あえていうとするなら、人材の払底した同盟のこれまた不正規脱走兵集団の中の技術士官達にガイエスブルグを改造した実務担当の帝国技術士官のレベルを期待できるかどうかが不安の種ですね。
索敵によるバレたバレないは、実は私には大問題とは思えません。
回廊への兵力集中、会戦準備に帝国はそれなり以上の時間(おそらくガイエスブルグなら儀装完了出来たほどの)をかけたと思われますし、それを待たずにアッテンボローの挑発に乗って先攻をかけてしまった黒色槍騎兵艦隊とファーレンハイト艦隊は要塞に損害を与える事なく艦隊戦で大敗しておりますし。
さて、運用面についてですが、これは私も「長征一万光年再び」に賛成したい所です。
ヤンの基本理念として「民主主義の擁護」と同程度に「民衆が苦しまない限り、治にあって乱は起こさない」というのはあるだろうと考えますので。
「タイタニア」のドクター・リーじゃないんですからわざわざ命拾い出来るところでテロ行為に走る必要はないでしょう。
増して個人としてあれほどにヤンはラインハルトを「稀代の逸材」と評価しているのですから(でも流石に多少過大評価のきらいはないかとラインハルトが割と好きな私でさえ思いますが)。
最後に1個だけ難点を。
イゼルローンの生産供給システムを「魔法」とまで表現したのはいささか暴走ではなかったでしょうか。
「一定密度の星間物質がある宙域から比較的容易かつ短期に原材料として必要な物資の収集が可能」「ヤン一世代の間くらいは困らないだけの備蓄設備が直径60㎞の人工天体内に(御都合主義でもなんでもどうしてか)存在している」とでもしておいたほうが作品世界まで含めても“現実的”な説明という事で納得が得やすかったのではないでしょうか。
もう一件落着の様でしたが「悪くない」という意見が少なかったようなのですこしばかり後付けで多少みっともなく意見を表明してみました。
しかし……「一対多数」と冒険風ライダーさんはお嘆きの様でしたが、冒険風ライダーさんに賛意を示す意見を「同等の精度で尻馬乗りにならない様に」というのは結構な難題でして、割に「ああ、尤もだ」で黙ってしまっている移動要塞戦術賛成派も少なくはないのではないでしょうか。
これはあくまで個人的見解ですが。
とりあえず、双方互いに意見は出尽くしたようですし、これ以上議論しても平行線なのは確実でしょうから、私も終戦勧告に従い、この投稿をもって当スレッドにおける私からの投稿は最後とさせて頂きます。
>Zeroさん
<NO.1726以降のこのスレッドを見れば一目瞭然ですが、冒険風ライダー
さんは「移動要塞論」を前提として「移動要塞があるのに使わない
(気づきもしない)のはバカだ」と結論づけられています。
少なくとも、僕にはそう読めました。
何で、そんなことをするのか意味不明でしたが。>
<はっきり言ってしまえば、ネガティブなスタンスで作品を解釈しよう
とすれば、いくらでも重箱の隅をつつくことは可能だと思います。
#絶対に矛盾のない作品があるというならご教授願いたいくらいです。
ですので、設定ミス(記載されない事による補完の難しいモノも含
めて)をあげつらって持論の通りに動かないキャラクタや、ひいては
作者を批判する事の意義が分からないのです。>
そんなの極めて簡単明瞭な理由なのですけどね。今回私が展開した作品批判論は、単なる設定ミスなどで収まる話などではなく、銀英伝という作品のテーマそのものを崩壊させかねないほどの内容だと考えているからです。第一、銀英伝のみならず他の田中作品でも散々取り上げて説明するほどに作品中の重大なテーマとされている「補給の概念」が、他でもない作者自身が作った作品設定によって崩壊してしまうというのは、自らが訴えようとしている主要テーマに対する配慮が作者自身に欠けていることを意味します。それほどまでに重大なミスを「単なる設定ミス」として片づけてしまうことは、声を大にして自らの主要テーマを訴えたがっている作品と作者に対して大変失礼な話でしょう。「あんたが訴えたがっているテーマなんて、作品中に必要のないどうでも良いことでしかない」と結果的に公言しているも同然なのですから。すくなくとも私の方では「補給の概念」を銀英伝の中でも重要なテーマのひとつと認めた上で作品批判論を展開しているというのに、作品擁護派が「補給の概念」を「つまらない設定ミス」と切り捨てるほどに作者の意図をないがしろにしてどうするのですか?
今回に限らず、考察シリーズで私が作品批判論を展開する際には「その作品の主要テーマないしは作者が特に声を大にして訴えたがっていること」が、作品論的にいかに破綻していることを明確に示すことを常に心がけているつもりですよ。銀英伝考察シリーズに限定しても、「1」で取り上げているのがヤンの抱いている思想的矛盾、「2」がヤンのシビリアン・コントロールと民主主義思想の認識および行動の実態、そして今回の「3」が要塞の特性から発生する「補給の概念」や「移動要塞戦術」の破綻および「ヤンの独裁権力者的側面」と、どれもこれも「こんなものが存在したら銀英伝という作品が訴えるテーマそのものが崩壊する」といったものばかりです。そして、そのような作品および作者の主要テーマにまで深く踏み込んだ批判こそが、作品に対しても作者に対しても致命的なダメージを与えられるだけの作品批判論となりえるのではありませんか?
設定ミスに関しても、たとえば「ガイエスブルク移動要塞ハイネセンワープ論」とか「ゼッフル粒子自爆特攻論」とかいった、それが作品の主要テーマと直接的には関係しない形で存在するものについてならば、私も作品擁護をやってみようかと考えなくもないのですが、今回はそんな生易しいレベルの話ではないわけです。そして前述のように、そのような作品の主要テーマと密接にかかわる設定破綻を安易な論法で擁護することは、結果として作品と作者に対して大変失礼な行為に繋がると考えるからこそ、私は今回のスレッドでは一切作品擁護論を展開しようとは考えないのです。
むしろ今回のような問題に関しては、作品の設定・思想的破綻を素直に指摘することこそが作品および作者に対する最高の敬意の証である、とすら私は考えているくらいですよ。すくなくとも、作者の意図も作品設定も全く尊重しない安易な作品擁護論などよりも、はるかに作品と作者を尊重していると思いますけどね。
そして何故私が作品批判論を展開する際にキャラクター批判にこだわるかと言えば、そのような批判手法こそが「フィクションだから許される」だの「キャラクターと作者の思想は違う」だのといった「赤錆のついた反論」の類を事前に封じ込め、かつ作品や作者が作中で一番訴えたがっている主要命題に対して致命的な大ダメージを与えることを可能とする唯一の手段だからであると答えますね。
「フィクションだから許される」「キャラクターと作者の思想は違う」などといった類の思考停止的な発想は、何も創竜伝だけの専売特許ではなく、フィクション作品全てに適用できる最も普遍的かつ陳腐な反論なのですから、それに対する対処法は事前に打っておく必要があったわけです。この類の反論はタナウツ掲示板初期にも何度か見られましたし、私自身、初期に創竜伝考察シリーズを展開していた際に何度か同じ事を言われたことがありましたからね。
で、その対処法として私が考えたのが「フィクション部分はあくまでもフィクションとして認めた上で、あえてそのフィクションの土俵に立って『フィクションとしては許されない』作中の描写矛盾やキャラクターの破綻した言動・行動をいちいちバカ正直に取り上げて批判する」という方法です。作中のキャラクターをあえて批判の矢面に晒すことで、フィクションとしての作品設定や主要命題が持つ矛盾と破綻を明確にし、さらにそれによって、そのような「致命的な作品設定および思想的な破綻」を作ってしまった作者の責任をも無言のうちに問いかけるといった効果が期待できるわけです。そして私はこの方法に基づいて考察シリーズという膨大な作品批判論を展開してきましたし、今回もその路線から大きく逸脱していたわけではないのです。
銀英伝考察だけに限定しても、今回だけでなく前回「2」でも前々回「1」でも私は全く同じような方法で作品批判論を展開していたのであって、今回だけが特別だったわけでもなかったのですけどね。
<冒険風ライダーさんは、少なくとも持論を展開する部分に於いては
意欲的に様々な設定補完をされますが、いざ、作品を肯定する部分
に至ってはその意欲が全く発揮されていないのです。
また、そういう意見を片っ端から否定されてますよね。
自分の「if」は肯定し、他人の「if」は否定する、という傾向を顕著
に感じます。>
<本スレッドの趣旨である「要塞移動がガイエスブルグやロングマーチ
によって設定的肯定が裏付けられる」というのであれば、その方策が
「正史」で採用され得なかった「理由」を考察すべきではないですかね?
そっちの方が楽しいと思うのですが。>
そういう類のことは作品擁護派の面々こそが積極的に行うべきことなのであって、全く反対の立場にある私に対してそれを要求するのは筋違いもいいところでしょう。私には自分の主張の正当性を立証する責任と義務はあっても、自分の意見と全く正反対の主張にまで配慮した設定補完を行わなければならない理由も余裕もどこにも存在しないのですから。
議論において相手の主義主張に不満があるのであれば、相手の主張を完全に覆せるだけの理論構築を自らが積極的に行うべきでしょう。それもせずに相手の議論姿勢のみを云々しても意味がありますまい。
<更にいうなら、ifを以て作品否定までするのなら、そのifを用いて
エンターテイメントとしておもしろい作品が出来るのかも検証が
必要ではないでしょうか?
正直言って、冒険風ライダーさんのifを用いたその後の展開は特に
おもしろいモノではありませんでした。>
シミュレーションとエンターテイメント性とは何の相関関係もないでしょう。そもそも私が展開していたシミュレーションは「どうすれば銀英伝がより面白くなるのか?」ではなく、当時のキャラクターの状況を推察した上で「自分ならばどうやって現状の困難な状況を打破しようとするのか?」というテーマに基づいて行なっていたわけですから、それでエンターテイメント性がどうなろうが私の知ったことではありません。そのテーマで議論すべきなのはエンターテイメント性云々などではなく、私が考えたIFの有効性や危険性などであるはずでしょう。
それに、この論法では「銀英伝世界におけるヤンやラインハルトは、エンターテイメント性を求めるために作戦を立案していた」などという、戦略家としては本末転倒もはなはだしい結論が導き出されることになってしまいますが、それで良いわけなのですか?
>はねだみずきさん
<私も小説を書いているのでわかるのですが、そもそも、文章を書く時は「自分の言いたい事」と「説明しなきゃわからない事」を書くのが普通です。このうち、後者は重要です。つまり、文章として明記されてないことは「存在しない」のではなく、「誰もが知っている」事であるのが普通です。多分、これは田中芳樹氏も同じだと思います。Zeroさんが「給油シーンのない自動車小説・漫画があったとしても、それはその世界で給油をする必要がない事を意味しない」と言うことを仰っていましたが、それは「自動車は給油をしなきゃ動かない」と言う常識を作者も読者も持っているからですね。
ですから、小説を読んでいて特に明記されていない事柄に関しては、作者と読者の共通に持っている「常識」で説明がつくことが大半です。銀英伝の場合、現在の常識で説明がつかないので、ちゃんと説明が書かれている事柄としては超光速航行・通信の存在、世界背景としての帝国と同盟の存在と、そこに至る歴史などが挙げられます。
一方で、質量保存の法則が打ち破られたと言う記述はありませんから、「私たちの知る常識としての質量保存則の存在」は、銀英伝世界においても健在だと考えます。
もちろん、冒険風ライダーさんも膨大な作中の記述を拾い出して「無限の自給は成り立つ」と判断されたのでしょうが、私には暗黙の了解としての質量保存則を打ち破る証拠としては弱く見えたのです。>
正直、そんな曖昧な定義に基づいた「私たちの知る常識」などを使って作品擁護論を展開していたとは思いませんでしたよ。道理で作中の記述や作品設定と著しくかけ離れた作品擁護論モドキが展開されていたはずですね。
そもそも、この「私たちの知る常識」なるものは一体どうやって定義するのでしょうか? 一口に「常識」と言ってもたくさんありますし、対象によって適用される「常識」が全く異なる場合もあります。せっかくですから燃費の例で見てみると、「自動車は給油をしなきゃ動かない」という「常識」は確かに存在するわけですが、その一方では「原子力空母は何年も無補給で稼動することができる」も存在します。「燃費」と言う観点から見ると、この2つは全く相反する「常識」ですが、この場合、どちらの「常識」を使用するかは使用者の主観的な価値観や判断によって左右されることになってしまい、使用者にとって都合の良い内容の「常識」のみが恣意的に使われてしまう恐れがあります。
また「自動車は給油をしなきゃ動かない」という「常識」自体、決して永久不変的なものではなく、燃料無補給で稼動する自動車というものが将来出現して「常識」が覆されるかもしれません。このように、「常識」とはたくさん存在し、かつ常に動き続けるものであるということをまず考えなくてはなりません。何しろ、はねだみずきさんの論法に従えば、「常識」を立証するのに作中の記述は必要ないのですから、どこからでも「常識」を持ってくることができるわけで、下手をすればそれによって作品そのものが捻じ曲げられてしまう危険性もないとは言い切れないでしょう。実際、はねだみずきさんの主張は銀英伝の作品設定に基づかない内容が非常に多かったように私には見えました。
さらに、田中芳樹は古今東西のSF作品に色々と精通しているようですし、銀英伝も「スタートレック」「宇宙戦艦ヤマト」「スターウォーズ」などといった「SF作品の常識」や設定をベースにして作品設定が構築されているようなので、銀英伝で特に記載されていない事柄が必ずしも「作者と読者の共通に持っている常識」で解決するとは限りませんし、仮に「私たちの知る常識」で説明できたとしても、「SF作品の常識」という全く別の「常識」でそれが覆されている可能性もありえます。実際、銀英伝世界にさも当たり前のように存在する「超光速通信」だの「3次元チェス」だの「立体TV(ソリビジョン)」だのといったものは、その詳細が作中でほとんど説明されていないにもかかわらず、実は「SF作品の常識」の中でしか存在し得ないシロモノなんですよね。銀英伝世界における要塞の自給自足システムも、これと全く同じ類のものだと私は思いましたよ。
以上のことから、作中に書かれていないことをもって、どこからともなく持ってきた「常識」を当てはめることは、作品論を語る際には不確実かつ極めて危険な行為であると考えます。作品を語る際には、やはり誰もが絶対的に理解できるほどに明確に定義されている作品設定および作中記述を基盤にした上で、それらの内容と矛盾をきたすことなく綺麗に合致する批判論なり擁護論なりを展開するべきでしょう。記述が存在しないからと言って、作品設定や作中記述と矛盾した「常識」を整合性も何も考えずに勝手に引っつけてしまっては、作品論としては本末転倒もはなはだしいではありませんか。
少しだけ突っ込みを。
問:同程度の技術力を有する勢力が、片方の技術を見ただけでコピー出来るか。この技術は大規模工業プラントと資源、テクノロジスト、エンジニア、レーバーを必要とする。
答:無理。一、類推による設計は失敗の元であり、可能な限り無傷の現物が必要とされる。二、帝国と同規模のテクノロジスト、エンジニア、レーバーを確保できない。イゼルローン内にはそれだけの人間がいないし、同盟の人的資源は社会維持に支障を来たすほど枯渇している。三、作業中のレーバー等を完全に防衛するのは不可能。帝国は遠距離から実体弾を嫌がらせ的に投射するだけで妨害可能であるから。補足・イゼルローン要塞の質量はガイエスブルグより大きい。従って、エンジンは大型化するか増やす必要がある訳で、工期短縮などとんでもないし、同調が失敗する可能性も大きい。潮汐の影響もより大きい点が問題を更に難しくする公算がある。
工業を勉強しない人間は簡単にコピー出来るとか言いますよね。ビバ、未来。同盟の技術力は帝国より50年は抜きん出ているらしいです(笑)。それなら簡単にコピー出来るでしょう。
20世紀の冷戦時代「核兵器」「ジェット機」「超音速機(ジェット機と区別したのは“音速の出ないジェット機”があるからです。念の為)」「人工衛星」「宇宙探査ロケット(月までの)」はほぼ同時期に東西両陣営で実用化されて一方の寡占領域にはなりませんでした。
「同水準の技術であろうと新規技術のコピーは容易ではない」のも一つの事実でしょうが、絶対の真理とも言えますまい。
余談ですが「遠距離からの妨害射撃」ですが、確かに帝国が「イゼルローンの哨戒システムとヤン・アッテンボロー・メルカッツ・シェーンコップの警戒警備体制を出し抜けるステルスシステム」もしくは「トールハンマーおよびイゼルローン周辺宙域に展開した艦隊の艦砲の射程を遥かに凌駕する超長距離砲」の開発に成功していれば可能でしょうし、翻って「ヤンに移動要塞の構築は無理。何故なら帝国の開発能力は同盟の発想を遥かに凌駕しており、まず同等の発想に基づく科学的見地に立つ事が一朝一夕では難しいから」と言っても確かにその時は説得力を認めましょう。
ただ、「本隊到着までのイゼルローンの不審な挙動の監視と牽制」がおそらく主任務であったはずの黒色槍騎兵艦隊及びファーレンハイト艦隊の2個艦隊は前述の技術の欠片さえ持っていた形跡はありませんでした(本編の描写にないのはもちろん、先の「超ステルス」があればそれによる偵察でビッテンフェルトの激発後もアッテンボローとヤンの仕掛けに対して最小限の被害で撤退が可能だったでしょうし、それ以前に「超長距離砲」があれば要塞改造があろうがなかろうがビッテンフェルトが威嚇兼挑発に使用しない道理も理由もありません)。
え?上げられた技術はエレクトロニクスにおいてとんでもない差が開いていると思いますけどね・・・。基礎工業力部分の差や材質についても相当の差が開いてますよ?
設計をする能力があっても、設計を実現する能力があるとは限らないんですが・・・。F-15は今でも強いでしょう?同等のレーダーサイトを搭載できる機体がないからです。30年以上も最強の座の一角を寡占してますがねえ(溜息)。ま、これには資金の差もあるのですが。
全方位ドップラーレーダーを開発できたのは日本だけですよ。他の国が真似できましたか?アメリカでも出来ないから独占契約したんでしょうに。その日本はラインメタルの120mm砲を越えられないからライセンス契約したんですよ?何故なら冶金技術が未だドイツに及んでいないからです。ジェット機なり超音速機なりが同じ性能の訳ないでしょうに。カタログスペックが優れていても耐久性が乏しかったり、工業的信頼性がなかったりでね。技術力は総合力であるという事実ぐらいは説明する手間を省きたいものですね。
超遠距離砲云々・・・妨害されない限り飛んでいくんですよ、宇宙では。撃破目的ではなく妨害目的であれば、座標だけ計算して撃てば済むことなんですけどね。実は宇宙って真空なんですよ。抵抗がほぼ0(惑星や恒星付近ではそうでもないですが)なんです。時間がかかって良いならいくらでも遠くから撃てるんですよ。別に亜光速ミサイルを放てと言ってる訳ではないのだし(溜息)。ああ、でも亜光速ミサイルはヤンも使ったのか(アルテミスの首飾り撃破時)。つまり帝国もやる気になれば出来るレベルの武器ですね(笑)。ふう(溜息)。
>カタログスペックが優れていても耐久性が乏しかったり、工業的信頼性がなかったりでね。技術力は総合力であるという事実ぐらいは説明する手間を省きたいものですね。
F-4ファントムもいい機体ですよ。
20年以上も前から旧式扱いされつつ実の所2002年の今でも使い道があると聞きますし、何か宇宙世紀0080年代のガンダム群にも対抗していたザクみたいで格好いいですね。
余談はさておき、ともあれ片方の陣営の何かがパチモンと仰りたい訳ではないでしょう。
数が揃ってかつ対抗可能な機能を有していれば良くはないですか?
現に「西側諸国にF15が行き渡ったので東側との最終戦争を始めよう。奴らのMigだのミサイルだのは論外な代物で充分我々は無力化も迎撃も自由自在である」と言いきった人間はアメリカにもいなかったでしょうし、すくなくとも史実は万一いても黙殺された方向で進みましたよね?
移動要塞に話を戻して「要塞に移動能力を設置する」なら前段「東西両陣営ともほぼ同時期にジェット機を作れた」のレベルで同盟にも不可能ではないでしょう。
件のイゼルローンが「数百万光年単位のワープが可能で危険宙域でも航行可能なエネルギーフィールドを全面に展開でき、惑星制圧用にロボットに可変する」なら「ソ連にF15が作れたか、馬鹿」で構いませんが。
> 超遠距離砲云々・・・妨害されない限り飛んでいくんですよ、宇宙では。撃破目的ではなく妨害目的であれば、座標だけ計算して撃てば済むことなんですけどね。実は宇宙って真空なんですよ。抵抗がほぼ0(惑星や恒星付近ではそうでもないですが)なんです。時間がかかって良いならいくらでも遠くから撃てるんですよ。別に亜光速ミサイルを放てと言ってる訳ではないのだし(溜息)。ああ、でも亜光速ミサイルはヤンも使ったのか(アルテミスの首飾り撃破時)。つまり帝国もやる気になれば出来るレベルの武器ですね(笑)。ふう(溜息)。
つまりそれでやらなかったんですからよほど迎撃が容易で効果が薄かったのでしょうね。
なにせ帝国及び同盟の2方向からでもそれぞれ最大2個艦隊づつの展開が精一杯の重力波と障害物、宇宙線の嵐がとびかう“危険宙域”ですから。
別段イゼルローンにダメージを与えておく有効性は移動要塞に改造していようがいまいが存在するんですからやらなかった手は打てなかったのと同義でしょうね。
ちなみに「要塞外壁」と「剥き出しの航行用エンジン」を狙う有効性の差について言及なさるなら、「危険宙域方向の外壁を改造する」手段がある事をお忘れなく。
ちなみに遠距離射撃到達のタイムリミットは一応3か月(前提としてのイゼルローン改修期間)ですのでこれにも御留意あられたく願います。
極端に戦闘方法が変化しない限りは旧来の兵器にも充分な使い道があるし、F-4は私も好きですという余談はさておいて、論点をずらしているようですが、西側が最終決戦を行わなかったのは仮に勝ったとしても得るものが全く無いというかリスク大きすぎな上、戦後の勢力範囲を懸念したからであるし、近代以後の戦争は兵器の優劣だけでは起きたりしないでしょう。事実そんな理由で起きてませんしね。それに結局、戦争の回避が核の撃ち合いを避けるために行われたのであって、だからこそ粗悪兵器の陳列で虚勢が維持可能だったわけです。ゴラン高原の(湾岸では差がありすぎるので)の例をみれば対等だと思われていた兵器が実際どの程度だったかは実証済みですしね。
でね、私は三ヶ月で作れるという前提がそもそも無理だと申し上げているわけですよ、これが。民主主義は動員の決定から発令まで時間がかかることを差し引いても、必要とされる人員は集まらないとまず挙げたのですがね。さらに材料の加工にも時間がかかるでしょうし、大型のエンジンの設計作業も必要です。戦艦のエンジンをただ大きくしただけですと、間違いなく強度不足問題を引き起こしますよ。工業生産とは設計に合わせたプラントの建設を行い、資材と人員の管理を決め、それを適切に配分し、作業工程を決定しつつ、作業者の訓練を行い、膨大な工数をスケジュール管理しながら完成させていく作業なんですよ。
まあ、つまり、あなた方の言い分を実現しようと思えば、ただちに設計図(絶対間違いのない)が出来上がる素晴らしい装置と、たちまち何にでも簡単に変化する素敵な星間物質と、何の道具も必要とせずに全てを作り上げるイカス技術者、さらには不眠不休で一人で千人分働くガッツな作業員は最低必要でしょうね。あ、勿論、湧いて出る無限の資金を忘れてはいけません。なるほど、確かに魔術師ヤン、奇跡のヤンですね(笑)。
で、そんなことが出来るのなら喪失艦艇の補充なんか1ヶ月ぐらいで済むんじゃないですかね?一年もあれば100万隻ぐらいは簡単に作れるでしょうに。なんで同盟は資源問題や人材問題で悩んでたりしたのでしょうね?ヤンが無能だからですか?
> 極端に戦闘方法が変化しない限りは旧来の兵器にも充分な使い道があるし、F-4は私も好きですという余談はさておいて、論点をずらしているようですが
前段は嬉しいですが後段は誤解でしょう。
といいますか貴方が「同列の技術水準があれば、即座に片方の新兵器の複製が出来るというものではない」と仰りたい様にお見受けしたので「『丸ごと同じもの』はともかく、『同一の機軸に則った対抗兵器』は開発可能だろうし、事実出来ていた」と具体例を挙げて証明しただけで。
銀英伝3巻で文中描写と自らの言説でシャフト技術総監は「特別な技術も機材も不要。相応の予算と改修後の調整期間があれば十分可能で後は運用の問題」と主張していたと解釈できましたし、であればこそラインハルトも「ものは試し」で乗っても良いと判断して許可を出して人員を割いたのでは?
> でね、私は三ヶ月で作れるという前提がそもそも無理だと申し上げているわけですよ、これが。民主主義は動員の決定から発令まで時間がかかることを差し引いても、必要とされる人員は集まらないとまず挙げたのですがね。さらに材料の加工にも時間がかかるでしょうし、大型のエンジンの設計作業も必要です。戦艦のエンジンをただ大きくしただけですと、間違いなく強度不足問題を引き起こしますよ。工業生産とは設計に合わせたプラントの建設を行い、資材と人員の管理を決め、それを適切に配分し、作業工程を決定しつつ、作業者の訓練を行い、膨大な工数をスケジュール管理しながら完成させていく作業なんですよ。
> まあ、つまり、あなた方の言い分を実現しようと思えば、ただちに設計図(絶対間違いのない)が出来上がる素晴らしい装置と、たちまち何にでも簡単に変化する素敵な星間物質と、何の道具も必要とせずに全てを作り上げるイカス技術者、さらには不眠不休で一人で千人分働くガッツな作業員は最低必要でしょうね。あ、勿論、湧いて出る無限の資金を忘れてはいけません。なるほど、確かに魔術師ヤン、奇跡のヤンですね(笑)。
> で、そんなことが出来るのなら喪失艦艇の補充なんか1ヶ月ぐらいで済むんじゃないですかね?一年もあれば100万隻ぐらいは簡単に作れるでしょうに。なんで同盟は資源問題や人材問題で悩んでたりしたのでしょうね?ヤンが無能だからですか?
上記の反論の続きで、だから機材に関しては既存の物(大型戦艦用、小惑星運搬用など)の流用が可能であり、資金についても(まあ3巻当時の新帝国が多少金持ちだった事情は考慮しますが)「国庫が傾く」レベルではなく可能であるのは作品記述上確かでしょう。
期間と人員の問題については私も以前「多少の不安材料」として挙げましたので「総工期3ヶ月」については「絶対とは言えない」までの譲歩は私個人はしても構いません。
ただし、ご懸念の動員については「戦りたい奴はイゼルローンに行け」と7巻当時の同盟軍最高責任者であるビュコックも後押ししておりましたし、これも前に書いたんですが「その中で要塞改造の実務能力のある技術者および技術士官が必要数いるかは博打」という事になるでしょう。
博打である以上「絶対無理」「必敗確実」と断言はできません。
「分が悪い」と評するのは妥当ですが。
まず「移動要塞ガイエスブルク」が“あり物ででっち上げた急造品でありながらとにもかくにも実用面において一定の成果を挙げた”という「作中事実」をご認識ください。
その上で「移動要塞イゼルローン」に求められている物がそれ以上のものでないと主張している事をご理解ください。
その上で「実はガイエスブルクには地球教とフェザーンから極秘のロストテクノロジーの供与が行われていた(悪いですがイゼルローン改修に限って特注エンジンだのスーパー技術者だのを要求するのはこのレベルの話ですよ)」などの作外設定や、「まぐれにも成功が覚束無いほどイゼルローンの当時の技術力、作業力は論外な代物に成り果てていた(の割にはヤン艦隊約3万隻がマシントラブルで『回廊の戦い』に苦しんだ描写は殆どありませんでしたが)」と仰るならそれはまあいいんじゃないですか。
正直作中の描写やそこから作中事実を基に推測できる事以外にまでは私に知りうる範疇を超えておりますので黙って伺うに留めさせていただきます。
最後に、「一定時間をかけた帝国艦隊集結前にイゼルローンへの有効な打撃は不可能」は納得いただいたと思ってかまいませんか?
仰りたい内容は分かりました。
ただ対抗兵器としては西側の5倍の定数が必要とされた(それでも危険)物を対抗兵器と呼ぶのは質的にやはり難しいでしょう(戦場対決兵器としては残念ながらその役には立ちませんでした。あくまで威嚇兵器でしたから)。が、それは本筋と関わりないので置いときましょう(笑)。
問題のシャフトの台詞ですが、彼の人物像から鑑みれば予算を引き出すための方便で、実際には相当数の予算と人員を使ったと考えられます。現実にもよくあることですしね。シャフトが常に真実のみを口にする男なのだとしたら、私にはそれは読み取れませんでした。「現在の技術で実現可能」は嘘ではないでしょうが、戦艦のエンジンでは小さすぎますし、大型のエンジンを同様の構造で制作すれば、重量比に対する強度及びエンジン熱に対する強度は間違いなく見直しが必要です。さらにエンジンを複数配備するためには、振動問題や各エンジンのリンク問題が発生します。でっち上げに近いものであり、移動中は整備兵が必死に修理しながら運用していたという場合がむしろ考えられますね(戦史に例がありますし)。作者の工業生産に対する知識はさておき(苦笑)、肯定的に見るなら、戦艦のエンジン基部を多重に並べたものにカバーと作業通路を設けただけのものならば、制作は可能だったのでしょう。しかし、それは奇跡によって守られたものであると言わざるをえません。整備兵の超人的努力と奇跡によって、いつ暴発するとも分からない構造から逃れている代物を戦場に投入する、あるいは戦略プランとして採用する指揮官は信じられない無謀な精神の持ち主ですね(ずれまくったなあ)。考察してみると要塞を動かす事自体が単なる博打であり、ヤンが採用しなかったのも当然であるように思えます。あ、勿論、先に上げたスーパー技術が同盟軍にあるなら、採用しなかったヤンはとんでもないアホですね(笑)。あるいはご指摘のスーパー技術が帝国軍に存在し、既存の技術で極めて短期間に複数の巨大エンジンを作ることが可能だったとするなら、銀英伝における技術的突っ込みはするだけ無駄と言う事になりますか(既に呆れて諦めつつありますが)。
> 最後に、「一定時間をかけた帝国艦隊集結前にイゼルローンへの有効な打撃は不可能」は納得いただいたと思ってかまいませんか?
可能だとは思います(イゼルローンへの有効打撃ではなく妨害)。イゼルローンには戦艦の生産プラントがあるという描写は記憶にありませんし、超大型エンジンの生産プラントは外部に建設しない限り不可能だと思うので、それに対する妨害は充分に可能でしょう。あるいは設置作業が始まってからでも妨害はできると思いますよ。イゼルローンの砲台に投射された砲弾を迎撃出来るという描写もありませんでしたしね。狭いと言っても大艦隊にとって狭いだけでしょうし。
ここまで書いておいてなんですが・・・S.Kさんとの討論はかなり面白いのですけど、銀英伝を題材に取るのが馬鹿馬鹿しくなってきてしまいましてね・・・。まあ、なんというか、肯定であれ否定であれ、もっとマシな題材がいいかなと(泣)。始めたのは私ですから、続行なさるならば継続する努力はしますけど、ええ、しますとも・・・多分。
いや、やまそさんに「面白かった」と言っていただけて光栄です。
他の方々が議論しつくして「終戦」した話題でもありますし、楽しいうちに幕引きするのに私も賛成です。
また何か別の話題での顔合わせの折にはよしなにお願いいたします。
ではお元気で。