A.1250億立方光秒について
1250億立方光秒の空間を、単純に立方体と考えると、一辺が5000光秒の立方体ということになります。球体で比較すれば、半径の長さはもう少し大きくなるでしょう。
転じて、冥王星までを含めた太陽系の半径は、約5.5光時(19800光秒)
直径は約40000万光秒といったところでしょうか。
直径5000光秒、太陽系に比して小ぶりですが、これが、バーミリオン星系の規模ではないでしょうか?
銀英伝5巻(風雲篇)P175上段9行
<双方の前哨戦は、無言の偵察競争という形で、ごく静かに開始された。同盟軍はバーミリオン星系の一二五〇億立方光秒におよぶ宇宙空間を(以下略)>
つまり、索敵の対象としたバーミリオン星系の規模が、1250億立方光秒なのであって、索敵の限界能力を指しているとはどこにも書いておりません。
ある艦船が短距離ワープをしたからといって、そのワープ能力の限界が、その距離に限定されるものでもないでしょう。
B.索敵方法について
銀英伝1巻(黎明篇)P23上段2行目
<(略)索敵は友人偵察機や監視衛星など、古典的な手段に頼るしかない。それらによって得られた情報に、時差や距離的要素を加算して敵の位置を知る。これに熱量や質量の測定を加えれば、不完全ながらも一応の索敵が可能となるのだ。>
索敵は、以下の二つの方法により行うとなっています。
1友人偵察機や監視衛星などの観測(時差や距離的要素を加算)
2熱量や質量の測定
バーミリオン星系には、恒星や惑星、その他、小惑星等の質量体が存在するでしょう。
1に関して言えば、これらの質量体はまず、1「観測」の障害物です。天体の影に隠れれば、観測は不能でしょう。また、
2に関して言えば、艦隊以外の質量体の存在自体が、質量の測定を阻害するでしょう。
また、エンジンを停止して待機した状態であれば、熱量の測定も阻害されることになるでしょう。
(ラインハルトの艦隊は星系内で停止しているのでしょう。既に戦場予定地に到着しているわけであるし。また、チェイス大尉の報告中でも「敵主力部隊移動中」の表現が見当たらない。)
銀英伝世界の索敵方法では、星系に潜む敵を探知するのは、より一層の困難が生じるといえるわけです。
Kenさんの記載
> ともあれ、「双方が相手との遭遇を目指した」バーミリオンでさえ、ヤン艦隊は一二五〇憶立方光秒の探索をしました。つまり、そこまでしか探索範囲の絞り込みはできなかったのです。そして、全能力をかたむけて索敵していたはずのFO2がついに相手の実体を発見したのは、40光秒まで接近してからでした。
以上の理由から、質量体に囲まれた中で、停止した目標の索敵を行う上で、今回は「40光秒まで接近してから」索敵に成功した、というわけです。
別に、40光秒が索敵限界距離ではないでしょう。
もしそうだとしたら、チェイス大尉が「四〇・六光秒・・・至近です」と言うこと自体がおかしな話です。索敵限界距離が「至近」のはずがありません。
Kenさんの記載
<しかし、私が上で述べたことには、私の主観的な解釈は入っておりません。「きわめて直接的な」作中記述をもとに数字を計算しただけです。>
しかしながら、「40光秒」を索敵限界距離とした後のKenさんの推論は、Kenさんの「主観的な解釈」によるものです。
C.遠距離探知が行われたとしか考えられぬ場合の一例
銀英伝1巻(黎明篇)のアスターテ会戦における両軍配置で、
ラインハルト率いる帝国艦隊は、約2000光秒ずつの距離をおいた同盟の三艦隊に三方から接近されています。
同盟軍が、事前にラインハルトの帝国艦隊の移動を把握したのでなければ、見事に三方からの同時接近などできないはずです。
D.500~1000光秒の索敵範囲
これは、冒険風ライダーさんにお伺いしたいのですが、この索敵範囲の引用もしくは判断は、どのようにして行ったものなのでしょうか。
直接に引用した記載部分があるのでしたら、是非とも教えていただきたいです。
☆イオン・ファゼカス号に関して
E.イオン・ファゼカス号がレーダーで捕捉される可能性
銀英伝1巻(風雲篇)P22下段19行
<反重力磁場システムを初めとする各種のレーダー透過装置や妨害電波の発達、さらにレーダーを無効化する材料の出現により、レーダーが索敵装置として用をなさなくなって数世紀が経過している>
つまり、以下の三つがレーダーが索敵装置として用をなさない理由です。
1.レーダー透過装置
2.妨害電波
3.レーダーを無効化する材料
ここで、イオン・ファゼカス号は、ドライアイス製なので、3「レーダーを無効化する材料」では建造されてないわけです。
また、2「妨害電波」は、レーダーを妨害はしても、妨害電波を発生させること自体で、存在を明らかにしてしまうデメリットがあるでしょう。つまり、敵方に索敵範囲を絞り込ませる効果があります。
F.亜光速船の皆無
銀英伝の作中では、亜光速で航行する艦船の記述は、皆無なのではないでしょうか?
もし、そのような記載個所がありましたら、お教えください。この節の記載内容を取り下げます。
アルテミスの首飾りを破砕した氷塊には、通常エンジンではなく、バサード・ラム・ジェット・エンジンが搭載されました。通常エンジンでも亜光速を問題なく発揮できるのであれば、なぜ通常エンジンを搭載しないのか、疑問です。作品中の他の個所で、用いられている記載がないと思われるバサード・ラム・ジェット・エンジンを、わざわざ、この場合だけ用いる理由が、不明なのです。
調達の程度から言えば、通常エンジンの方がありふれた存在なのですから、はるかに容易なはずです。
銀英伝1巻(黎明篇)P22下段11行
<「赤い矢印がわが軍、緑の矢印が敵です。わが軍の正面に敵軍の第四艦隊が位置し、その兵力は艦艇一万二〇〇〇と推測されます。距離は二二〇〇光秒、このままの速度ですと、約六時間後に接触します>
アスターテ会戦時の帝国軍の艦隊の速度は、同盟第四艦隊が停止していたとしても、光速の10%程度の速度です。
(二二〇〇÷(3600秒×6))
また、第四艦隊の撃破後に、第六艦隊に肉薄するのに要する時間が「四時間弱」となっています。(キルヒアイスの台詞)
亜光速が出せるものであれば、戦闘の展開が全然違うと思いますね。
(もっとも、アスターテ会戦に関しては、そのうち別に論じてみたいテーマです。ラインハルトおよびヤンがいかに「作られた天才」であるかが、如実に示されている部分だからです。一つ参考になる点を述べておくと、帝国の将軍は皆事前退却を検討している(気がついている)のに、同盟の将軍には一人も敵の事前退却を予測している人間がいない(気がついていない)のです。そして、ラインハルトもヤンも、同盟の将軍が敵の事前退却を予測していないことを、当然のように考えているのです。各個撃破されることに関しては晴天の霹靂であったとしても)
横レスになるかもしれませんが、一点だけ。
> E.イオン・ファゼカス号がレーダーで捕捉される可能性
>
> 銀英伝1巻(風雲篇)P22下段19行
> <反重力磁場システムを初めとする各種のレーダー透過装置や妨害電波の発達、さらにレーダーを無効化する材料の出現により、レーダーが索敵装置として用をなさなくなって数世紀が経過している>
>
> つまり、以下の三つがレーダーが索敵装置として用をなさない理由です。
> 1.レーダー透過装置
> 2.妨害電波
> 3.レーダーを無効化する材料
>
> ここで、イオン・ファゼカス号は、ドライアイス製なので、3「レーダーを無効化する材料」では建造されてないわけです。
> また、2「妨害電波」は、レーダーを妨害はしても、妨害電波を発生させること自体で、存在を明らかにしてしまうデメリットがあるでしょう。つまり、敵方に索敵範囲を絞り込ませる効果があります。
これは、純粋に技術の問題です。
しかし、上に書いてある「反重力磁場システム」なる代物について、その動作の原理も有効な性能も、私は全く知りません。それはこの掲示板を読んでいる全ての人がそうでしょう。
そのような物が絡んでくる問題についていくら議論しても、有効な結論など得られないと思いますが、いかがでしょうか。
> たしかに、ヤンはラインハルトの本隊がハイネセンを目指していることを知っていました。そしてヤンが「このあたりでローエングラム公を阻止しないと、後がない」といって選んだのがバーミリオンでした。ラインハルトもそれを読んでいました。
>
> ~古来、戦場となるべき地点は、敵と味方との暗黙の諒解のもとに選びだされることが多い。今度の場合、バーミリオン星域がまさにそれで、ヤン・ウェンリーもここを決戦場と目すであろうことを、ラインハルトはなぜか疑いもしなかった。~
> (風雲篇第七章-3)
「怒濤編(7巻)」のマル・アデッタ星域の会戦はどうなります?「ランテマリオに比べれば戦略的価値の低い星域」に布陣したビュコック艦隊二万隻を、あっさりと帝国軍は発見してますよね。
>明らかに「事前予測」として敵軍が特定星域を通行することが予め判明していることを意味するのです。
という「作中事実」が存在するとしか思えませんが。ランテマリオはともかく、「戦略的価値の低い」マル・アデッタが「敵味方の暗黙の了解」で選び出されるというのは、おかしな話です。光年単位の長距離索敵能力が貧弱だと言うのなら、マル・アデッタにビュコック艦隊が居るなどとは、帝国軍に分かる筈もないのでは。
> だめです。ワープをしないイオン・ファゼカスでも、発見することは事実上不可能です。それこそ冒険風ライダーさんのいう「類稀なる僥倖」でもないかぎり。
あのー、何度も言ってることですけど、まるっきり「空想科学読本」を思い出しましたけど。「ゴジラの体重が二万トンなんてことは、科学的にある筈がないんだ~」と絶叫しているかの如くですね。しかし、柳田理科雄とあなたの間には、どうしようもない程「精神的余裕」に差があります。柳田理科雄は、計算した数字を色々出して「科学的考察」を繰り返していますけど、「作品設定に対する強烈な否定」を語っている訳じゃないですよね。「面白いじゃないか。ある筈のないこんなことを考え出すんだから、人間の空想力というのは、こんなにスゴイんだ」と、読者を「笑い」の世界に誘っているのです。ところが、あなたのやっていることは、「科学的な数字」を並べ立てて「強烈な否定」を行うばかり。「こんなやり方はもう止めませんか」と何度も言っているんですが、まだ理解できませんか?
もし、「空想科学読本」が、あなたのような立場で書かれていたら、さほど売れはしなかったでしょうね。つまらないから。
> 神よ、私にはあなたの神殿に詣でる資格も、
> あなたの言葉を理解する知性もありません。
>
> さようなら、アインシュタインにもランダウにも縁なき方。
> 私がここで何かを語る事は二度と再びないでしょう。
>
> PS.
> もう1つ言えば、神の国には私が呼吸できる酸素がないようですので。
> なにぶん、何かを想定するのに許可が必要で、
> 物理を用いるのに無限の証明をする羽目になるようでは、
> そのうち呼吸をする事にも神託が必要になりそうです。
>
> それは私があまりにも邪悪で、知性が不足し、神の言葉を伺っているだけでめまいがしてくるという事と因果関係がありそうですが、
> 聖書にはそれが掲載されていないので、私にはその謎を追求するための資料がありません。
こんな感情むき出しの、「非難の為の非難」なんぞを書き込んで、一体何がしたいんですか。議論でも何でもないでしょ、単に「相手を悪人に見せたい」だけですからね、これでは。
>私のしていた話は、全て「量を測る」試みに基づいています。
って、「銀英伝」という作品は、「理系思想による一貫性を持った、きっちりと設定された作品」ではないでしょうに。それどころか、それとは対極にいるような人物によって書かれた作品です。しかも、そんなことは、最初からはっきりと分かっている話です。どうしてもそういう風に見たい、というのはあなたの勝手ですけど、そのような自説を他人に押し付けてどうするんですかね。「量を測る」試みに基づく解釈をしたいのは別に構わんと思いますが、冒険風ライダー氏がやっていることは、そういうことではありません。前提条件が完全に食い違っているのに、自説が首肯されないからといって、ブチキレてどうするんでしょうか。見苦しいだけの態度としか言えませんよ。まるで泣き喚くガキそのもの、みっともないこと夥しいです。何が何でも冒険風ライダー氏の言っていることをこの掲示板で否定しなければ、あなたの自我が崩壊でもしてしまうんですか?
「剣と魔法のファンタジー作品と同等と考えたらどうか」と前に言いましたけど、それくらいの「精神的余裕」は持って下さい。じゃなければ、無理に参加することはありませんよ。あなたの精神衛生上もよろしくないでしょうし。
<忘れてならないのは、バーミリオンでは、ヤン艦隊もラインハルト艦隊も、相手と戦うつもりでした。双方が相手を探し出して遭遇することを目的としていた、ともいえます。これはイオン・ファゼカス号の場合とは、もちろん反対です。イオン・ファゼカスが帝国軍を探し出して遭遇しようとする理由は何もないのですから。>
<もちろん帝国軍にとっての条件はもっと悪いのです。上述のように、ヤン艦隊が策敵したラインハルト艦隊とは反対に、イオン・ファゼカス号は「逃げよう」としているのです。絞り込める範囲は、1250億立方光秒よりもずっと大きくなるでしょう。>
こういう「間抜けな反論」が来るであろうことが事前予測で充分に考えられたからこそ、私はNo.3787で「軍艦による宇宙船の臨検」「宇宙船や艦隊同士の偶発的遭遇」の事例も同時に挙げておいたのですけど、正直ここまで完全に型にはまった予想通りな反論内容には、さすがに呆れてしまいましたよ。これらの事例は別に「遭遇することを目的」にしているわけではなく、臨検の例に至ってはむしろイオン・ファゼカス号と全く同種のパターンとしてすら考えられるものであるにもかかわらず、広大な宇宙空間の特定星系で何度も発生しているわけですが、そちらに関しては完全に無視するつもりなのですか?
そもそも、Kenさんが主張するほどに銀英伝世界の索敵活動に大穴が存在するというのであれば、銀英伝世界に存在する全ての宇宙船や艦隊がそれを利用しないはずがないではありませんか。ワープを使った航行でさえ捕捉されることが珍しくない銀英伝世界で、たかだか亜光速航行を駆使した程度で軍艦の索敵や臨検を易々と潜り抜けられるというのであれば、作中の軍事作戦でもそれを利用したものがあっても良いはずですし、非合法的な犯罪行為を働く宇宙船などが積極的に利用しようと考えてもおかしくないでしょう。「あの」イオン・ファゼカス号にすら簡単に適用されるものが、銀英伝世界における全ての宇宙艦船に対して適用できない道理は全くないのですから。
だいたい、「宇宙空間の特定星系における艦隊決戦」にしたところで、それは別にバーミリオン星域会戦のみに限定されるのではなく、銀英伝世界で行われている「宇宙空間の特定星系における艦隊決戦」全てに多かれ少なかれ当てはまるものなのですけどね。艦隊の索敵の目を潜り抜けて後方の戦略拠点が叩けるのであれば、別にヤンやラインハルトでなくても、とっくの昔に誰かが実行していてもおかしくないでしょう。いや、ヤンやラインハルトでさえ、それを使って自軍が有利に立てるというのであれば、亜光速航行を使って索敵の目を潜り抜ける戦術のひとつぐらい立案・実行しても良かったはずですし、そうでなければそれこそ「無能で不誠実な軍人の証」でしかありません。
しかし、実際にはそんな「作中事実」などどこにも存在しないばかりか、宇宙を航行する敵味方の艦隊は常に相手側に発見されているという「反証となる作中事実」さえ立派に存在するわけなのですから、その時点で「この裏設定は成立しない」とみなすのが自然なのです。それともまさか「こんな優れた方法があるのに、その有用性に気づきもしなかったヤンやラインハルトは愚かである」という、私の主張の猿真似でも展開するつもりなのですか?
作品擁護を行う際には、ただひとつの事例にこだわるのではなく、作品中に存在する全ての記述や設定のバランスなども考慮に入れなければならないことは自明の理というものでしょう。そうでなければ、「作品世界が崩壊させかねないひとつの設定は擁護しえたが、本来存在しなかったはずの別の疑問がそこから新たに発生し、結局別の角度から作品世界を崩壊させてしまう」などという愚劣な結末を迎えることにもなりかねないのですから。「作品との整合性を取る」というのは、こういう事態を防ぐために必要最低限行わなければならないことなのです。
イオン・ファゼカス号とバーミリオンの事例にのみこだわり続けるあまり、Kenさんは重度の視野狭窄に陥っているように見えます。
<冒険風ライダーさんのことですから、「それでは銀英伝の各所に整合のとれない部分が出る」と言われることでしょう。しかし、私が上で述べたことには、私の主観的な解釈は入っておりません。「きわめて直接的な」作中記述をもとに数字を計算しただけです。このような考察を覆すには、作品の他の部分との不整合をいうのではなく、当の考察自体を否定証明する必要があります。>
作品批判論としてはともかく、擁護論としては全く意味がありませんね、そんな数値計算は。作品擁護論の場合、論の成立条件として何よりも重要なのは「作品との整合性」にあるのですし、それを立証できない状況に追いやれば立派に「否定証明」たりえるのですから。
そもそも、どんなに精密かつ正しい計算を行おうが、たったひとつの作中記述がその計算結果を否定するだけで全てが無意味となってしまうのが「作品論におけるルール」というものなのです。いくら「現代世界の物理法則」に基づいて「無限の自給自足システムは考えられない」というテーマを「物理論・科学論的に」完璧に立証しても、その存在を示す作中記述ひとつで「作品論としては」完全に否定されてしまうように。そして、これは作中記述に書かれている数字をベースにしてさえ決して例外ではないのです。
第一、SF設定的な数値算出が、銀英伝だけでなく田中作品全般でいかに当てにならないシロモノであるかなど、今更改めて言うまでもない事実でしかないでしょう。「あの」田中芳樹が「一貫性のある理系思想」をベースにして作品を作ってなどいるはずもないのですから。そんな作品で、しかも「作品との整合性」を無視して、厳密な数値を厳格に算出した結果をベースに作品中にない裏設定を一方的にでっち上げても、そんなものは不沈戦艦さんも仰っているような「空想科学読本的ツッコミ手法による【精神的余裕のない】作品否定論」にしかなりえないでしょう。
「亜光速航行の船を発見するのは不可能である」という説では、「宇宙空間の特定星系における艦隊決戦」「軍艦による宇宙船の臨検」「宇宙船や艦隊同士の偶発的遭遇」がなぜ銀英伝世界で多発するのかという理由の説明が全くできませんし、また作中でそれほどまでに有効であるはずの亜光速航行手法を使った作戦がなぜ行われないのかという謎も残ってしまいます。このスレッドで私は一体何度同じことを述べたか分かりませんが、私の論を否定するあまり、「作品との整合性」を無視した裏設定をでっち上げることによって「新たな矛盾」を自らの手で作成してどうするのです?
Kenさんが自らの計算能力を自慢するのは勝手ですが、「作品との整合性」を無視した論と数値計算に基づいた裏設定では、作品擁護論として全く無意味であるばかりか、最も忌むべき「作品否定」にすら堕してしまうという事実をもう少し自覚するべきです。
それと、あなたは以前、私に対してこんなタワゴトをほざいていたはずですよね↓
No.3681の投稿
<繰り返しますが、冒険風ライダーさんは、無限の自給自足システムに基づく恒久移動要塞を、「ひとつの」可能性として提唱されたのではありません。「唯一」の可能性として提唱されたのです。そして、そのことを根拠にして、銀英伝の二人の英雄を「愚か者」呼ばわりされたのです。このような主張をされる以上は、自分の仮説が銀英伝の記述と矛盾しないことを論ずるだけでは不十分です。自分以外の仮説が決して成立しないことまでも立証する責任があります。>
もちろん、私はこんな「愚論」に賛同するつもりなど最初から毛頭ありませんが、この論法に従うのであれば、「亜光速航行の船を発見するのは不可能である」という説を「唯一の可能性」として提唱・支持するKenさんもまた「自分の仮説が銀英伝の記述と矛盾しないことを論ずるだけでは不十分」で、かつ「自分以外の仮説が決して成立しないことまでも立証する責任」があるはずでしょう。そして、数値計算に基づいた裏設定「だけ」では「作品との整合性」が全く取れず、作品擁護論たりえないことも、実際に様々な「作中事実」と数値計算に基づいた裏設定との整合性が全くと言っても良いほど取れていないこともまた、上記で主張した通りです。
議論相手に対しては、本来求められる筋合いもない「自分以外の仮説が決して成立しないことまでも立証する責任」まで求めるのに、これだけ作品との整合性が全く取れない「否定証明」が成立している杜撰な自分の論については「作品の他の部分との不整合をいうのではなく、当の考察自体を否定証明する必要があります」などと、よくも抜け抜けとのたまえたものですね。結局、あなたはとことん自分に甘い「ダブルスタンダードの詭弁屋」でしかないではありませんか。自分に適用せず、自分でさえ信じていないような詭弁論を他人には強要して、相手の論を悪戯に貶めようというのですから。
正直、No.3810の投稿を読んで、私は今後あなたを相手に議論を行う意志そのものが完全になくなってしまいましたよ。人並の文章読解能力すらない「ダブルスタンダードの詭弁屋」などを相手にしても「時間の無駄」でしかありませんしね。そんなわけで、私は今後あなたからレスがあったとしても、一切の返答を拒否することをここに宣言させて頂きます。
<これは、冒険風ライダーさんにお伺いしたいのですが、この索敵範囲の引用もしくは判断は、どのようにして行ったものなのでしょうか。
直接に引用した記載部分があるのでしたら、是非とも教えていただきたいです。>
これはまず、パンツァーさんも引用なされていたアスターテ会戦の事例を参考にしています↓
銀英伝1巻 P22下段~P23上段
<「赤い矢印がわが軍、緑の矢印が敵です。わが軍の正面に敵軍の第四艦隊が位置し、その兵力は艦艇一万二〇〇〇と推定されます。距離は二二〇〇光秒、このままの距離ですと、約六時間後に接触します」
画面を指すキルヒアイスの指が動いた。左方向には敵軍第二艦隊がおり、兵力は艦艇一万五〇〇〇隻、距離は二四〇〇光秒。右方向には敵軍第六艦隊がおり、兵力は艦艇一万三〇〇〇隻、距離は二〇五〇光秒。
反重力磁場システムを初めとする各種のレーダー透過装置や妨害電波の発達、さらにレーダーを無効化する材料の出現により、レーダーが索敵装置として用をなさなくなって数世紀が経過している。索敵は有人偵察機や監視衛星など、古典的な手段に頼るしかない。それらによってえられた情報に、時差や距離的要素を加算して敵の位置を知る。これに熱量や質量の測定を加えれば、不完全ながらも一定の索敵が可能となるのだ。>
この段階ですでに、銀英伝世界における「艦隊」には、すくなくとも2400光秒先の敵を発見できるだけの索敵能力があることが判明するのです。ただし、これは上記引用にも書かれているように「有人偵察機や監視衛星」、それに駆逐艦などを先行派遣して索敵しているものと考えられますので、その先行距離分を差し引いた上で、有人偵察機や監視衛星や駆逐艦「単体」の最大索敵能力を考慮する必要があります。
そして、有人偵察機や監視衛星や駆逐艦「単体」の最大索敵能力については、銀英伝3巻に以下のような記述が存在します↓
銀英伝3巻 P139上段
<「前方の空間にひずみが発生」
オペレーターが報告した。
「何かがワープアウトしてきます。距離は300光秒、質量は……」
オペレーターは質量計に投げかけた視線を凍結させ、声を飲みこんだ。声帯を再活動させるまで数秒間を必要とした。
(中略)
「急速後退しろ、時空震に巻きこまれるぞ!」
グループの指揮官ギプソン大佐も、全艦に急速後退を命じていた。16隻はエンジンの出力が許すかぎりのスピードで、異変の生じつつある宙域から遠ざかった。巨大な時空震の波動が彼らを追い、空間自体がひずみ、揺動して、彼らの心臓を見えざる手でしめあげた。コーヒーカップが操作卓の端から床に落下して砕け散った。それでも、彼らは索敵の義務を忘れず、スクリーンをにらみつづけていた。やがて、彼らの目に衝撃が走り、声のない悲鳴があがった……。>
この描写では、移動要塞のワープアウト座標を確認した後、時空震に巻き込まれるのを避けるために一旦遠ざかった後、改めて目視を含めた索敵活動を行うことによって移動要塞を発見しているわけです。この事例から、有人偵察機や監視衛星や駆逐艦「単体」の最大索敵能力がすくなくとも300光秒よりは上であることが判明します。
さらに忘れてはいけないのが、銀英伝世界でしばしば行われている「軍艦による巡視や臨検」の存在です。これらは広大な宇宙空間を、一隻の軍艦ないしは複数艦艇の集団が決められた宙域をパトロールすることによって機能しており、それがしばしば宇宙船や敵艦隊を発見するのに貢献しているわけです。
これは索敵にもある程度応用されているらしく、ドーリア星域会戦時の索敵では、ドーリア星系の隣の星系にまで偵察に出た「一隻の」駆逐艦が、敵艦隊を発見するという成果を挙げています↓
銀英伝2巻 P121下段~P122上段
<はりつめた状況のまま、カレンダーは五月に変わった。三〇〇〇光年を超す宇宙空間を、第一一艦隊が接近してきつつある。その点に関しては、バグダッシュの情報が正しかったことが確認されていた。
ヤンはドーリア星系まで艦隊を進め、情報の収集と分析に目を送っていたが、五月一〇日、隣接するエルゴン星系まで偵察にでた駆逐艦が、大艦隊を発見、急報の後、通信が途絶した。会戦に先だつ最初の犠牲だった。ヤンはさらに思考をかさねた。正面から戦っても勝つ自信はあるが、彼は広大な宇宙空間の要所要所に潜めた偵察艇からのある報告を待っていたのだ。短期間に完勝しなければ、クーデター全体を鎮定することは困難になる。>
銀英伝の作品中でこういったことが実際に行われているわけですし、No.3787でも触れた銀英伝7巻P59には、同盟政府から逃亡したヤンの「不正規隊」(言うまでもなく、「不正規隊」は全て「索敵防御能力を持つ軍艦」で構成されています)を、巡視中の同盟軍艦艇が発見するエピソードまで存在しているのですから、たとえ単艦でもその索敵能力はそこそこにはあるのではないかと考えられます。そしてここから私は、アスターテ会戦と第8次イゼルローン要塞攻防戦で算出されていた数値300~2400光秒をプラスマイナスして、単艦当たりの最大索敵能力を500~1000光秒程度と推測したわけです。
私が提示した索敵能力の根拠は大体こんなところですが、いかがでしょうか。
それと余談ですけど、「亜光速船の皆無」については、アスターテ会戦関連の記述以外にも、以下のような記述が存在します↓
銀英伝2巻 P125下段
<彼の旗艦の前には、グエン・バン・ヒュー少将の指揮する三〇〇〇隻の集団が息を潜めて攻撃命令を待っている。左右と後背に展開する味方も。
「彼我の距離、六・四光秒、キロにして一九二万……」
オペレーターの声も、ささやくように低い。
「敵はわが軍と垂直方向、右から左に移動しつつあり、速度は〇・〇〇一二光速、キロにして一秒間に三六〇〇、恒星系内速度限界にちかし……」
照明の抑えられた薄暗い艦橋内を、オペレーターの声の他は、わずかな呼吸音だけが支配している。>
一秒間に3600㎞の航行速度ということは、一時間(3600秒)で1296万㎞、光秒に換算して43.2光秒にしかならず、しかもこれが「恒星系内速度限界」などと言われているわけです。
もっとも、「アルテミスの首飾り」破壊に使われた無人の氷塊が光速の99.999%まで加速した実例がありますから、その気になれば亜光速を出すことはできるのでしょうが、アスターテの事例と併せ、すくなくとも艦艇については、何らかの理由で亜光速を出すことができないようになっている、と考えるのが妥当でしょう。
まあ正直言って、この辺りの数値誤謬については、あまり理系に精通しておらず、しかも算術計算が苦手であろう田中芳樹故の矛盾だとは思いますけどね。
☆
> はじめに、冒険風ライダーさんの、以下の発言の解釈ですが、
>
> <これはないでしょう。作品の外から「現代世界の物理法則に基づいた要塞の燃費問題」を持ち出してきたのであれば、その正当性や妥当性の立証責任は100%「持ち出してきた側」にあるのです。そしてその証明が「できるかもしれないし、できないかもしれない」で良いはずがないではありませんか。>
>
> もちろんこの発言の主旨は、パンツァーさんが言われるように、作品の外から設定を持ち込むことには重大な責任を伴うというものです。別に誤解したとは思いません。
>
> 私が言いたかったのは、冒険風ライダーさんは、「恒久的移動要塞」「無限の自給自足能力」といった、銀英伝に直接記述のない設定を持ち出したのであり、上の発言を考えると、そのことに対する立証責任があることをよく理解されたうえで、私が前回引用したような「立証した」という発言を繰り返したはずだ、ということです。つまり、自分の説が唯一の説で、他の説は成立しない、という主張です。
根拠があって、それをもとにして結論を導くという作業を行います。
結論を導くのに利用した根拠がすべて作品中にあるのならば、別に問題はないのです。
根拠の一部でも作品外から引用するのであれば、そのときに立証責任が生じるといっているのです。
もっと分かりやすく言えば、作品外から引用した根拠が、根拠として正当なのか妥当なのかを立証せよ、と言っているのです。
作品に示されていない「現代の物理法則」を適用するのであれば、それを適用できるとする「正当性」「妥当性」を、まず立証せよ、と言うことです。
結論としての「恒久的移動要塞」「無限の自給自足能力」を問うているわけではありません。立証責任の対象としているのは、あくまで「根拠」の方です。無論、立証責任を解決していない「根拠」を前提に結論を導けば、その「結論」も立証責任を要するものとなります。
この点を、Kenさんは、理解しておりません。
☆
> ユリアンは「いまイゼルローンが安泰」であるとし、その事態が急速に変わるとは思っていません。50年程度その状態が持続する、とは、このように帝国との戦争状態がないことを前提にしています。
ここで、Kenさんの側において、仮定を行うわけですね。
作中事実より50年は無補給で自給できる、と。
(私の意見ではありませんので、念のため)
> このように、こちらは要塞が外敵と戦争状態にあることを想定しています。つまり、ユリアンやキャゼルヌの発言とは、前提が異なるのです。大量の物資を消費する戦争状態が「ない」場合の話を「ある」場合に適用した時点で、論理的に破綻しています。
しかし、上の仮定においても、平時と戦時とでは、物資の消費量が異なるので、論理的に破綻する、と。
銀英伝1巻(黎明篇)八章-1
<部下の報告をキャゼルヌはさえぎった。三〇〇〇万人の同盟軍将兵を対象とする補給計画は、キャゼルヌの手によって立てられており、その運営に関しては彼は自信を持っていた。>
<「知っている。どうも過大な要求という気もするが、占領政策上、やむをえんのではないかな」「総司令部(イゼルローン)にそれだけの物資はありません。」「本国に要求を伝えればよかろう。経済官僚どもがヒステリーをおこすかもしれんが(以下略)」>
少なくとも、イゼルローン要塞には、本国からの補給なしでも、三〇〇〇万人の同盟軍将兵(八個艦隊)を支えるだけの補給能力がある、ということです。
また、戦闘の程度が激しく、消費が生産を上回る事態が生じるようなことがあったとしても、それは「移動する補給拠点」としての「移動要塞」を否定することにはならないでしょう。「無限の自給自足能力」というのは、「本国」からの補給がなくても無限に活動できる、の意味なのであって、生産力が無限にある、という意味ではありません。
例えば、毎年作物が取れる田畑を考えてみればよいのです。毎年の収穫量は一定ですが、半永久的に作物を取ることはできるわけです。収穫量を超える消費が発生するか否かは、また別の話です。
それに、イゼルローン要塞が、八個艦隊の補給に対処できる、という作中記載もお忘れなく。
> 純軍事的に見れば、帝国軍の回復力は無限にひとしく、ヤン・ウェンリー軍のそれはゼロに近い。(乱離篇第三章-4)
> (中略)
> *ヤン・ウェンリー軍の回復力はゼロに近い。
> *ヤン艦隊の回復力はいちじるしく劣勢。
>
> これらは、ユリアンやキャゼルヌの台詞から間接的に推測したものなどではありません。そのものずばりの直接記述です。これらの直接記述からして、「無限の自給自足能力」など幻想の産物であることが分かります。イゼルローン要塞に無限の補給力があるなら、すくなくとも前線が「補給物資を費いはたす」ことはないでしょう。いくら使おうが、要塞から補給してやればよいのです。
これは、人的資源に限りがある、ということを示しているだけでしょう。
無人艦隊なるものは、銀英伝中に登場しなかったと思いますが。
> こういう行き違いを生じるからこそ、「50年」を「半永久」と言い換えるようなことをしてはいけないのです。「50年」は、いくら長くても有限の数字です。有限なればこそ、戦争状態の有無のように、条件が変わることで、50年がそれよりもっと短くなりうる、という考察が可能になります。ところが、一旦、無限という設定にすりかえると、いくら物資を費消しても、尽きることがありません。
上でイゼルローン要塞が単独で、八個艦隊を同時に補給できる例を示しました。この八個艦隊が動員された作戦において、作戦の実行期間は限定されておりません。少なくともキャゼルヌは、作戦期間を無前提で、補給計画を立案しております。
また、上の田畑の例を参考にして欲しいのですが、「無限」というのは、生産が限りなく続く、の意味であって、単位時間辺りの生産量が無限だというわけではありません。単位時間あたりの生産量に関しては、八個艦隊の運用は可能、と作中事実は示しています。
☆
> 問題になっているのは、駆動の手段そのものではなく、駆動に必要なエネルギーをどのように確保するか、という点です。同じくワープエンジンを利用するにも、帆船が風を利用するようにエネルギーを外部調達できるか、タンカーのように燃料を自分で運ばねばならないか、です。無補給航行のためには、エネルギーの外部調達が必要です。
>
> そのようなエネルギー外部調達の実例を、「銀英伝に書かれていること」から見つけようとすると、見つかるのは一つしかありません。ヤンが氷塊の加速に利用した「バサード・ラムジェット」です。ただし、厳密な意味でのバサード・ラムジェットではワープはできません。現実世界で論じられるバサード・ラムジェットも、作品中で実現しているものも、ともに亜光速を出せるだけです。「書かれていること」しか持ち込まない、という前提に立つと、「無補給航行」はその時点でアウトになり、登場人物が艦船の燃料補給を問題にしないのは、あくまでも、数ヶ月の作戦期間(帝国領侵攻は約3ヶ月、ラグナロックは5ヶ月継続)なら、積載燃料が余裕でもつから、ということになります。また、イオン・ファゼカスも、アルタイル7で積み込んだ燃料で航行をしたことになってしまいます。
<「書かれていること」しか持ち込まない、という前提に立つと、「無補給航行」はその時点でアウトになり>
なぜですか?
「無補給航行」の原理が不明、というだけの話です。
ワープエンジンの原理も不明ですが、原理が不明なので、アウトにしますか?
論じるに際して、同一の基準を適用してください。
> この方法については、最初に観察中さんが問題を指摘し、私自身が補足説明を加えていますが、艦船が大質量になるほど、エネルギーを確保するため大量の星間物質を引っ張ってくる必要があり、引っ張ってくるのに必要なエネルギーと、引っ張ってきた物質から得られるエネルギーが、どこかで必ずクロスします。
これも、どこかで述べたと思いますが、
ワープというのは、燃費の点から言っても画期的な技術かもしれません。
スタートレックの世界では、そのようになっています。
すくなくとも、アインシュタインの公式を元に、質量欠損エネルギーを運動エネルギーに転化する式の論理は当てはまらないでしょう。
> ということになります。結論として、要塞が無補給航行できるとも。できないとも、証明することは不可能です。恒久的移動要塞の実現性を、我々読者が判断することはできないわけだから、ラインハルトやヤンのような、作中人物の判断を信用するしかなくなります。
作中の記載から言えば、ガイエスブルグ要塞の一万光年にわたるワープに関しても、燃料補給の問題は取り上げられておりません。
一般艦船の場合と同様の扱いです。
元投稿で、敵地であるとかないとか、Kenさんはそんな理由を述べていたように思いますが、それは補給路の切断が容易か否かの問題であって、補給線が必要か否かの問題ではありません。つまり、これは、関わりがありません。
☆
大体問題は、作者である田中芳樹氏が銀英伝に与えた設定のために、ガイエスブルグ要塞のような移動化された要塞が、移動する補給拠点となってしまっている。ということにあります。この事実の指摘を、冒険風ライダーさんが行ったわけです。
移動する補給拠点があるのなら、ラインハルトやヤンの取った戦略も、二流以下の戦略に過ぎない、という結論も必然的に導かれる、という話です。
パンツァーさん、
回答をいただき、ありがとうございます。
最初に、細かい部分の誤解を解いておこうと思います。40光秒という探索限界が適当かどうかは、後で論じます。
まずは、私の方の誤りを訂正します。前回私は、1250億立方光秒を半径40光秒の「球形」に分けていましたが、球形をびっしりと並べても「すき間」ができるので、この仮定は不適当でした。分割ユニットは立方体、正四面体、正八面体等でなければいけません。最も計算の簡単な立方体を使いますと、中心から頂点までが40光秒の立方体の体積は、98,534立方光秒だから、1250億立方光秒の中に126万8592個が入ります。そしてユニット間の移動距離は46光秒となります。
次に、パンツァーさんが指摘されたことですが、
<つまり、索敵の対象としたバーミリオン星系の規模が、1250億立方光秒なのであって、索敵の限界能力を指しているとはどこにも書いておりません。
ある艦船が短距離ワープをしたからといって、そのワープ能力の限界が、その距離に限定されるものでもないでしょう。>
私が「1250億立方光秒」といったのは、探索範囲の「大きさ」の限界ではなく「小ささ」の限界です。直接索敵以外の方法では、そこまでしか絞り込めないから、そこから先は偵察隊を使わねばならないのだ、と考えたのです。もしも、直接索敵をする前に125億立方光秒まで絞り込めたら、偵察隊の数は同じでも十倍の密度で配置できます。
また、バーミリオン星系自体の大きさは、この際関係ないでしょう。探索範囲を星系より小さく絞り込めるならヤンは(ムライは?)そうしたはずだし、星系の大きさまでも絞り込めないなら、偵察隊を星系外にまで飛ばせたと思います。
<(ラインハルトの艦隊は星系内で停止しているのでしょう。既に戦場予定地に到着しているわけであるし。また、チェイス大尉の報告中でも「敵主力部隊移動中」の表現が見当たらない。)>
ラインハルト艦隊は移動していたと思います。風雲篇第七章-3の記述は以下のとおりです。
~彼の視界がとらえたものは、暗黒の宇宙空間を蚕食しつつ拡大する光点の群であった。それはいまや波濤となって、背後の弱々しい星の光をのみこみ、彼らへ向かって音もなく押しよせてくる。
「押しよせてくる」のだから、移動しているのでしょう。
<アスターテ会戦時の帝国軍の艦隊の速度は、同盟第四艦隊が停止していたとしても、光速の10%程度の速度です。
(二二〇〇÷(3600秒×6))>
たしかにそうですね。
ただ、そうだとしても、私が前の投稿で行った考察結果に変化はないと思いますが。イオン・ファゼカス号が光速の10%しか出せないとすると、半径3102光秒の球形を出るのに、31020秒を要します。追跡する帝国軍は、126万8592個の1ユニットにつき0.024秒を割くことができ、ヤン艦隊と同じ2000の偵察隊を投入すれば、1ユニットにつき49秒までかけられます。上述のように探索ユニットは46光秒に1つずつありますので、帝国艦が光速移動できるなら充分です。しかし、光速の10%しか出せないなら、移動に460秒かかるので、やはりイオン・ファゼカスを捕捉できません。要するに、イオン・ファゼカスと帝国艦の双方が光速の10%しか出せないなら、相対的な優位劣位に変化がないわけです。
それでは、本論です。銀英伝世界にて、敵を発見するにはどれだけの距離まで近づく必要があるのでしょうか?
パンツァーさんは、アスターテ会戦の記述を挙げました。
<(略)索敵は友人偵察機や監視衛星など、古典的な手段に頼るしかない。それらによって得られた情報に、時差や距離的要素を加算して敵の位置を知る。これに熱量や質量の測定を加えれば、不完全ながらも一応の索敵が可能となるのだ。>
私は、「時差や距離的要素を加算して」という箇所に注目したいと思います。これは、敵艦隊をリアルタイムで捕捉し続けるのではなく、それまでに報告された結果から、「敵はこのように動くだろうから、現在はこのあたりにいるはず」という推測をしているのではないでしょうか?リアルタイムの捕捉ではないので、敵が予想外の動きをすれば、ただちに狂いを生じます。
それが端的に出ているのが、同盟第六艦隊の場合です。ムーア中将率いるこの艦隊は、ラインハルト艦隊がいきなり「四時半」の方角に出現したので不意をつかれて潰滅しました。これは第六艦隊が、ラインハルト艦隊を「見ていた」わけではないことの証拠ではないでしょうか?
つまり、2000光秒くらい離れていると直接「見る」ことはできないので、敵が予想通りに動くなら位置を掴んでいられるが、そうでない場合は見失うということではないでしょうか?
実はパンツァーさんの投稿を読んだ後で、敵を「発見」したときの距離が明示的に書かれている箇所を探してみたのです。
直接敵を「見る」ことの記述で、最も距離が長いのは、ガイエスブルグがイゼルローン回廊にワープアウトしたときで、同盟軍偵察隊との距離は300光秒です。
~「前方の空間にひずみが発生」
オペレーターが報告した。
「何かがワープ・アウトしてきます。距離は三〇〇光秒、質量は……」
(雌伏篇、第六章-1)
ただし、これはガイエスブルグそのものを「見た」のではなく、ワープアウト時の空間のひずみを感知したものだから、事情が異なると思います。
これの次に距離が長いのは、シヴァ星域会戦のときだと思います。
~「敵影見ゆ!距離一〇六・四光秒、三一九二万キロ。レッド・ゾーン突入は、最短で一八八○秒後と推定」
(落日篇、第七章-2)
こちらは、本当の「発見」ですね。
その次が、FO2の40光秒です。
その次は、捕虜交換の提案をもってきた帝国艦をユリシーズが発見したときだと思います。距離は33光秒です。
~警報が鳴り響き、一四〇名の乗員はアドレナリンの分泌量を急増させた。各部署から声がとびかう--彼我の距離三三光秒、磁力砲異常なし、熱線砲準備よし、スクリーン入光量調整ずみ--艦長はひときわひびく声で、共通信号の発信を命じた。
「停船せよ。しからざれば攻撃す」
(野望篇、第一章-1)
こうしてみると、シヴァ星域での数値が大きくて106光秒ですが、いつでもこれくらいの距離で発見できるわけではなく、バーミリオンでは40光秒、イゼルローン回廊では33光秒だったわけです。
仮に探索可能距離が106光秒だとすると、「探索ユニット」の容積は40光秒の場合に比べ、
(106/40)^3=18.6倍
になり、1250億立方光秒に含まれるユニット数は6万8203個となります。ユニット間の移動距離は122光秒で、移動に要する時間は1220秒です。イオン・ファゼカスを捕捉できるかどうかは、偵察艦の数に依存するでしょう。
偵察艦が1つなら、1ユニットの探索に割ける時間は、0.45秒で捕捉は不可能
100隻を投入すれば、45秒。まだ全然不足。
1000隻なら、450秒。まだだめ。
2000隻なら、900秒。まだだめ。
3000隻なら、1350秒。イオン・ファゼカスを捕らえられる。
ということでしょうか。
要は「銀河帝国軍の執拗な追撃と捜索」なるものが、具体的にどの程度のものか、です。すておけば「のたれ死に」すると思っている逃亡奴隷の追跡に3000隻も振り向けるかどうかとなると、私は否定的なのですが。
<1に関して言えば、これらの質量体はまず、1「観測」の障害物です。天体の影に隠れれば、観測は不能でしょう。また、
2に関して言えば、艦隊以外の質量体の存在自体が、質量の測定を阻害するでしょう。>
バーミリオン星域のような場所は、索敵に向いていないから、索敵可能距離が短くなるのだ、という主張ですね。これについては定量的な判断をする材料がないので、なんともいえません。ただ、そんなに索敵がやりにくいなら、「互いに相手との遭遇を目指した」両艦隊が、なぜそんなところを戦場に設定したのかと、という疑問が発生しますが。
イオン・ファゼカスのエンジンが通常のものか、バサード・ラムジェットかは、それ自体はおもしろい考察ですが、「逃げられるかどうか」の考察には直接関係がないと思われます。すくなくとも私の計算の因子ではありません。
また、イオン・ファゼカスがレーダー透過装置をもっていれば、逃げる確率が高くなるでしょうが、これもこれまでのところ、私の考察には因子として入っておりません。
今回の投稿は以上です。
はじめましてパンツァーさん。1つだけ気になったので、レスしました。そう言えばこれだけ論戦が続いているのに、私たちのバッシングはないですね。
> 銀英伝1巻(黎明篇)八章-1
> <部下の報告をキャゼルヌはさえぎった。三〇〇〇万人の同盟軍将兵を対象とする補給計画は、キャゼルヌの手によって立てられており、その運営に関しては彼は自信を持っていた。>
>
> <「知っている。どうも過大な要求という気もするが、占領政策上、やむをえんのではないかな」「総司令部(イゼルローン)にそれだけの物資はありません。」「本国に要求を伝えればよかろう。経済官僚どもがヒステリーをおこすかもしれんが(以下略)」>
>
> 少なくとも、イゼルローン要塞には、本国からの補給なしでも、三〇〇〇万人の同盟軍将兵(八個艦隊)を支えるだけの補給能力がある、ということです。
> (中略)
> それに、イゼルローン要塞が、八個艦隊の補給に対処できる、という作中記載もお忘れなく。
> (中略)
> 上でイゼルローン要塞が単独で、八個艦隊を同時に補給できる例を示しました。この八個艦隊が動員された作戦において、作戦の実行期間は限定されておりません。少なくともキャゼルヌは、作戦期間を無前提で、補給計画を立案しております。
> また、上の田畑の例を参考にして欲しいのですが、「無限」というのは、生産が限りなく続く、の意味であって、単位時間辺りの生産量が無限だというわけではありません。単位時間あたりの生産量に関しては、八個艦隊の運用は可能、と作中事実は示しています。
パンツァーさんは、イゼルローン要塞が遠征軍3000万将兵の補給(食料のみ)が可能と考えているようですが、果たしてそうでしょうか?
確かにキャゼルヌは、3000万将兵の補給計画の運営に自信をもっていました。しかしイゼルローン要塞の生産設備で遠征軍向けの全ての食料を生産した、という記載はありません。
むしろ出発した各艦隊は、ハイネセンや他の同盟軍基地から、最初から大規模な補給物資を持ってきており、イゼルローンまでの航行で消費した分をイゼルローンで補給して帝国領に侵攻した、と考える方が正しいのではないでしょうか。
もちろんイゼルローン要塞も生産していますが、それは将来の不足分を補うための生産であり、最初から3000万人分を用意できるとは思えません。やはり本国から『当初予算』の範囲内での補給は、受けるのではないでしょうか。
> > 純軍事的に見れば、帝国軍の回復力は無限にひとしく、ヤン・ウェンリー軍のそれはゼロに近い。(乱離篇第三章-4)
> (中略)
> > *ヤン・ウェンリー軍の回復力はゼロに近い。
> > *ヤン艦隊の回復力はいちじるしく劣勢。
> >
> > これらは、ユリアンやキャゼルヌの台詞から間接的に推測したものなどではありません。そのものずばりの直接記述です。これらの直接記述からして、「無限の自給自足能力」など幻想の産物であることが分かります。イゼルローン要塞に無限の補給力があるなら、すくなくとも前線が「補給物資を費いはたす」ことはないでしょう。いくら使おうが、要塞から補給してやればよいのです。
>
> これは、人的資源に限りがある、ということを示しているだけでしょう。
> 無人艦隊なるものは、銀英伝中に登場しなかったと思いますが。
すいません。あの記述は物資補給や人的資源よりも、新規艦艇の補充ができないことを述べているのではないでしょうか。
それではまた~(^^)/~
私への回答はされないということですが、冒険風ライダーさんが書かれたことへの回答ですので、こちらへ書き込みます。(パンツァーさんへの回答に書いたり、ましてや新規スレッドにするのもおかしな話ですし。)回答をされないのはご自由です。
銀英伝には、たしかに逃げようとする艦船が捕捉される記述があります。ベリョースカやニュー・センチュリーがそうでしょう。
しかし監視の目をくぐりぬける例もあるのです。
代表例はボリス・コーネフ船長のアンデューティネスでしょう。帝国の監視を破って何度もイゼルローンへやってきました。しかも、狹いイゼルローン回廊へ出入りするのは、広大な宇宙空間を逃げ回るよりはるかに困難です。あとで理由を述べますが、私はイゼルローン回廊の幅は、せいぜい20光秒程度ではないかと考えています。つまり帝国軍は、そんな狹いところを突破する船すら捕捉できないのです。
アンデューティネスだけではありません。監視を突破してイゼルローン回廊へ逃げ込んだ艦船は他にもあります。それもおそらくは大量に。
それは、帝国から同盟への亡命者たちです。たしかにフェザーン自治領の成立後は、フェザーンの政治的特権を利用するエルウィン・ヨーゼフ二世型の亡命もあったでしょう。しかし、ダゴン星域の戦い(宇宙暦640年)から自治領の成立(同682年)までの42年間に亡命した人たちは、自力で封鎖を突破したはずです。いくらダゴンの後、帝国が弱っていても、国防の最重要宙域に哨戒部隊の一つも置けないはずがありません。その哨戒部隊は、亡命者を捕らえたかもしれませんが、逃げおおせた人たちもいたのです。
また、イゼルローン回廊内ではワープはできません。それは次の記述が示しています。
~もし画期的な技術が両国の軍事均衡を突きくずすことがあるとしたら、一万光年以上の超長距離跳躍技術の出現だろう--そうヤンは考えていた。これが実現すれば、帝国軍はイゼルローン回廊を飛びこえて、同盟の中心部に大艦隊と補給物資を送りこむことが可能になる。
(雌伏篇、第六章-4)
つまり、イゼルローン回廊をワープで越えるなら「一気に飛び越す」必要があり、回廊内の短距離ワープの連続では越えられないことを示します。考えてみれば当然で、もしも回廊内ワープができるなら、雷神のハンマーの射程前でワープ・インし、反対側でワープ・アウトすれば、無傷でイゼルローン要塞を越えられるはずです。
と、いうことは、帝国の哨戒部隊は、通常航行する艦船も捕捉できないことになります。しかも、狹い回廊内で。
こうしてみると、銀英伝世界における「逃げる艦船の捕捉」は「成功もするが、失敗もする」というのが実情であると思われます。イオン・ファゼカス号が通常航行しかできなくても、必ず帝国軍につかまるとは限りません。
[なぜ回廊の幅は20光秒か]
ガイエスブルグとともにイゼルローンを攻略にきたケンプ・ミュラー艦隊は、ヤンの救援軍と戦うため、回廊を同盟側へ向けて進行しますが、ヤン艦隊は「フォーメーションD」で円形陣をつくり、帝国艦隊に砲火を浴びせます。しかも、帝国艦隊がヤン艦隊の「さらに外側」へ回ることは、回廊が狹いので不可能。ということは、ヤン艦隊は回廊の「壁」に近いところにいたはずです。
そして、ヤン艦隊はその位置から帝国艦隊を砲撃します。銀英伝世界の、艦船の射程距離に関する最も直接的な記述は、次の箇所です。
~同日一六時、両軍は一〇・八光秒の距離に接近した。暗黙の了解のうちに、「戦争ごっこ」が開始される距離に達したのだ。
「撃て!」の叫びは、どちらが早く発しただろう。
(外伝1第一章-2。第三次ティアマト会戦の記述)
つまり、射撃が開始される距離は、約11光秒です。また、他の箇所をみても、砲撃が開始される距離は、これより小さいものばかりです。
~五・一光秒にまで接近した両軍が砲戦を開始したのは、その五分後であった。
(風雲篇、第四章-2。ランテマリオの戦いの記述)
~九時五〇分、双方の距離が五・四光秒に接近したとき、半瞬の空白が通信回路をみたし、苛烈な叫びがそれを過去へ押しやった。
「撃て!」「撃て!」
(回天篇、第七章-3。双璧の戦いの記述)
~人工的な光点の群は、たがいに接近し、二・九光秒、八七万キロの距離をへだてて一時停止した。緊張の水位が両軍の胸郭で急激に上昇し、それが臨界に達したのは、同三五分のことである。
「撃て!」
「撃て!」
(落日篇、第二章-4。ヴァーゲンザイル艦隊とイゼルローン艦隊の戦いの記述)
と、いうことは、回廊の「壁」ぎりぎりから、ヤン艦隊がケンプ・ミュラー艦隊を砲撃できたことをもって、両者の距離、つまり回廊の「半径」は大きく見積もっても11光秒程度、直径は20光秒程度ということになります。
横レスになります。
> ところで「天気予報」御存知ですね。
> 惑星上の移動でも大気の揺らぎ、海の潮に左右される事大な訳です。
> 「光速ですっ飛ぶ質量船」は「完全な真空ルート」で「航路上に恒星系が存在する」なんてかなり限定された航路をとらないと星間物質に衝突してまず「遭難」確定ですね。
> ワープよりいくらかでもましな要素といえば一般的ワープの尺度での話で「重力偏差を気にする必要は多少減る」くらいでしょうね。
物体が亜光速で飛ぶ場合に生じてくる問題については、No.3662で古典SFファンさんが解説してくれています。亜光速で飛ぶ場合、星間物質との激しい衝突が問題になるわけですが、ラムスクープ場が「真空状態」を作ってくれるので大丈夫という理屈です。
(2巻の氷塊攻撃の際も、星間物質との衝突は問題になっていません)
> 物体が亜光速で飛ぶ場合に生じてくる問題については、No.3662で古典SFファンさんが解説してくれています。亜光速で飛ぶ場合、星間物質との激しい衝突が問題になるわけですが、ラムスクープ場が「真空状態」を作ってくれるので大丈夫という理屈です。
> (2巻の氷塊攻撃の際も、星間物質との衝突は問題になっていません)
「アルテミスの首飾り」には激突してますね。
人工衛星サイズの物体相手玉砕するようではやはり有人航行の進路
は選ぶのがいいと思いますが、2巻の氷塊って一方的に「アルテミスの首飾り」を爆砕してどこかに飛んでいったんでしたっけ?
それなら安全性についての星間物質分はまあ構わないですけど、他の
「重力偏差」その外については?
色々と考えてみたのですが、私としてはそろそろ「回廊の戦い」に関する議論はお開きにしたいと思っています。
主張したい事は言い尽くしてしまいましたし、議論の核となっているいくつかの問題が解釈、見解の相違の上に成り立っている以上、これ以上細かく議論しても得られるものはないかと思います。古典SFファンさんが仰っていたと思うのですが、討論ならば物別れで終わると言う結末も当然ありだと思いますので。
> 宝くじで一等を当てるレベルの「お手軽感覚」で、自分達の命運を左右することになるであろう「戦略構想」を練られては、ヤン麾下の将兵や部下達、およびヤンの軍事活動に命運を託す国および国民にとってはたまったものではありませんね。そもそも、宝くじのようなほとんど「僥倖」に全てを託すしかない「戦略や戦術を十全に整えることなく、運だの天佑だのに全てを委ねる愚行」を否定するところから、先に引用した「戦略には、勘なんかの働く余地はない」云々から始まるヤン・ウェンリー語録が語られていたのではなかったのですか?
宝くじはあくまで確率論を説明するために、「私が」引き合いに出してきたものであり、ヤンとは関係ありません。
一つ、前回の主張に不備があったとすれば、それは「ある程度の量をまとめ買いする」の「ある程度」とは、売られている全宝くじの3/4とか2/3といった大量のオーダーのつもりで言ったのですが、それが伝わらなかった事です。
> こんな言い分が通用するというのであれば、たとえば銀英伝1巻でフォークが提言した同盟の帝国領侵攻作戦などについても「勝算があった」と認めなければならなくなるではありませんか。帝国領侵攻作戦でも、その立案時点では、たとえば「ラインハルトが突然心臓発作で急死する」だの「ラインハルト以外の人間が迎撃の指揮に当たり、同盟軍に敗北する」だのといった「類稀なる僥倖」に恵まれなかったとは限らなかったのですから。宝くじレベルの「全てを運に任せた当たり外れ」を期待することを「事前予測として勝算があった」とみなしてもかまわないとするのであれば、当然フォークが立案したような杜撰な作戦でも「勝算があった」と考えても良いはずでしょう。あなたの主張を突き詰めてみれば、最終的にはこんな愚劣な結論にまで行き着かざるをえないのですけど。
> 「ヒルダの分析」云々も、論としては非常にバカバカしい限りですね。それは単にラインハルトの「夢の中でキルヒアイスが諌めに来たのだ」などという、下手をすると正気を疑われても文句の言えないラインハルトの脳内で行われた思考過程から推測した心理分析を行った「結果として出てきた仮説のひとつ」でしかなく、「その思考過程【自体】が『類稀なる僥倖』ではなかった」ということの証明には全くなりえないのですから。第一、和平の提案を行った時点におけるラインハルト軍は、むしろ物量作戦の実行によってヤン側を一方的に追い詰めてすらおり、和平を提案しなければならない必然性自体が戦術的にも戦略的にも全く存在しなかったのですがね。
> こんなヤンとラインハルトの身勝手な戦略構想などに振り回される部下や将兵達はいい面の皮でしかありませんよ。彼らは自分達の部下の生命を何だと思っているのでしょうか。
「類稀なる行幸」について色々と考えましたが、私としてはこれ以上議論を進めても意味がないという結論です。
私は、ヤンが善戦した事と、ラインハルトの停戦申し出の間には因果関係が成り立つと考えています。
逆に、冒険風ライダーさんは因果関係などないという考えなのでしょう。
私がそう考える理由は、実際の戦況や、重要なのは状況であってきっかけではないとする考え方、ヒルダの夢分析によります。しかし、それでは冒険風ライダーさんは納得しないのでしょう。
かといって、これ以上細かい議論をしようにも、ヒルダの夢分析の正当性や「もしラインハルトが夢を見なかったら」のような細かいIF論に立ち入らざるを得ず、このどちらに関してもあまりに混沌としすぎていて納得のできる結論は出ないでしょう。
であれば、これはもう解釈の相違として考える他ないと思います。
(ヒルダがわざわざあのような分析をしているのは、それはイコール作者自身の考えなのだろう、とは思うのですが、そのようなメタな議論はお好みでないでしょう)
> 今までのヤンとの戦いで「多大な犠牲を出さなかった話」などほとんどありえなかったことなど、銀英伝の作中キャラクターのほぼ全員が知悉していることでしかないのに、この期に及んでラインハルトが、イゼルローン要塞に2~3万隻の戦力で立て籠もったヤンに対して、未だに「多大な犠牲は出さないであろう」などという希望的観測を前提としていること自体がおかしいのですよ。アムリッツァ、第8次イゼルローン要塞攻防戦、「神々の黄昏」作戦と、圧倒的な戦略的優位を確保していたにもかかわらず、戦術の妙を駆使したヤンとの直接対決で、帝国側がどれほどまでに煮え湯を飲まされたかを、まさかラインハルトは忘れてしまっているわけではないでしょうに。
> それにラインハルトは、ヒルダやミッターマイヤー・ロイエンタールなどから「皇帝がわざわざ出兵する必要はない」と忠告されていましたし、マリーンドルフ伯からは「回廊の両端を封鎖して孤立を長引かせれば良いではありませんか、あえて急戦を求めて解決を図る必要はないように思われます」と進言されており、それらの忠告が政治的には全く正しく、しかも自軍の損害を最小限に抑えられる事をも全て承知の上で、わざわざ親征を強行しているのですし、「イゼルローン要塞に籠もる敵と戦えば、最終的に勝てるにしてもその過程で数百万の将兵の生命が失われる」などという予測くらい、ラインハルトでなくても簡単に立てることができる類のものでしかないでしょう。もしラインハルトがその程度の予測すらも満足に立てられずに親征を強行していたとでも言うのであれば、ラインハルトを「軍事的天才」などと評価している作中記述自体が恐ろしくトンデモなシロモノでしかありません。
> 「回廊の戦い」は、ヤン側・ラインハルト側共に、戦いの前提条件自体が根本的に間違っているのです。愚将同士の愚劣な理由による愚かしい戦い、としか評しようがありませんね。
「当初計画」に関する議論ですが、再度、8巻P96を引用します。これは、御前会議に参加したミュラーの独白です。
> イゼルローン回廊に侵入する以前と較べても、すでにファーレンハイトとシュタインメッツの両上級大将が戦没している。自由惑星同盟を滅亡せしめた後、政治的にはその余喘に過ぎぬヤン・ウェンリーの一党に、これほどの苦闘を強いられるとは、皇帝ですら想像しえたかどうか。双方の戦力差と、戦いの目的とを考慮すれば、これまでのところは帝国軍の敗勢を認めざるをえない。
ミュラーは、『ヤンにこれほど苦戦するとは想像できなかった。それは皇帝も同様だったであろう』と素直に独白しています。彼らが苦戦を想像できなかった理由は、圧倒的多数の兵力による弱小兵力の圧殺という(それ自体は正しい)用兵上の考察だったのでしょう。
ミュラーもラインハルトも愚か者なのだ、と冒険風ライダーさんが仰るなら、それはもう解釈、見解の相違と申し上げるしかありません。
あと、この後にも色々と続くのですが、ほとんどの議論の根底にあるのは「類稀なる僥倖」「当初計画」「ラインハルトの人物像」なので、これ以上続ける意味はないと思っています。
バーミリオンの時の二の舞になる危険については、ヤンは、エル・ファシル独立政府の首脳部をイゼルローンに避難させると言う形で、最低限の保険をかけています。それ以上の措置は兵力からしてしたくてもできなかったでしょう。
冒険風ライダーさんの「書かれていないところからの推論は一切認めない」という宣言については、色々と思うところがあるのですが、それについてはまたの機会があれば、という形にしたいと思います。
> 「アルテミスの首飾り」には激突してますね。
> 人工衛星サイズの物体相手玉砕するようではやはり有人航行の進路
> は選ぶのがいいと思いますが、2巻の氷塊って一方的に「アルテミスの首飾り」を爆砕してどこかに飛んでいったんでしたっけ?
> それなら安全性についての星間物質分はまあ構わないですけど、他の
> 「重力偏差」その外については?
そもそも、氷塊は「アルテミスの首飾り」に激突させるために飛ばされたものなのですが。
ラムスクープ場がどのようなデブリにまで有効なのか、私は数字を持っていないので何とも言えません。また、そのようなデブリにより、銀英伝宇宙におけるイオン・ファゼカス当時のアルタイル星系近辺の「有人航行の進路」がどのように限定されてくるかなど、全く分からないと言うほかありません。
あと、No.3811の投稿を何度か読み直してみたのですが、上の”「重力偏差」その外について”というのが、どのような問題を指しているのかよく分かりません。詳しく教えていただければ幸いです。
> そもそも、氷塊は「アルテミスの首飾り」に激突させるために飛ばされたものなのですが。
つまり「壊れた」訳ですね、「貫通」してハイネセンに落下したりせず。
では「ラムスクープ場」の安全性は推して知るべしですね。
> ラムスクープ場がどのようなデブリにまで有効なのか、私は数字を持っていないので何とも言えません。また、そのようなデブリにより、銀英伝宇宙におけるイオン・ファゼカス当時のアルタイル星系近辺の「有人航行の進路」がどのように限定されてくるかなど、全く分からないと言うほかありません。
「安全とは言いきれない」「抜け道が必ずある手段」での逃避行でなければ「自殺行為」でしょうね。
「他の方法を模索」した方がはるかにましでしょうね、「ワープ宇宙船を作る」とか。
> あと、No.3811の投稿を何度か読み直してみたのですが、上の”「重力偏差」その外について”というのが、どのような問題を指しているのかよく分かりません。詳しく教えていただければ幸いです。
ひとつお詫び、「その外」は「その他」の間違いです失礼。
で、極端な重力偏差例は5巻でシュタインメッツ艦隊に痛撃を与えたあのブラックホールですか。
あとは次元の歪み、中性子星やらが空間に与える通常以上の重力の影響を差しています。
古典SFとまでいいませんから「宇宙航海」の出てくるスペオペか、せめて「宇宙戦艦ヤマト」あたりでも見ましょうよ、聞くより意味合いが理解できますから。
といいますか御自分で「何ともいえない」論拠で横レスって何ですか。
ヤン達が回廊に篭って戦闘する選択が愚かとする冒険風ライダーさんの結論には、私もまったく同意しています。そこで、私が同意する論拠をここで述べてみたいと思います。
「移動要塞」が実現化すると、ヤンの取り得る戦略自由度の点において、大幅な拡大が見られます。
イゼルローン回廊で静止要塞に篭る以上は、回廊でラインハルトが来襲するのを待つ、という選択肢しかありません。
これに対して、要塞を移動化したならば、多くの戦略を取る自由度をヤンは得ることになります。
「移動要塞」をヤンが手にした場合は、要塞と共に一旦イゼルローン回廊を離れた後、再び回廊内で篭ってラインハルトが来襲を待つ、という選択をも可能であるのに対し、「移動要塞」をヤンが手にしない場合は、これ以外の選択肢はないのです。
また、ラインハルトの軍事ロマンティズムとプライドに期待して、ラインハルト軍の来襲を待って勝機を掴む、という点においても、「移動要塞」をヤンが手にしている場合の方が、圧倒的に有利です。
というのも、まず、「移動要塞」を手にしていないヤンは、戦闘宙域の決定権をまったく有するものではなく、必然的に回廊内が予定戦闘宙域となります。
これに対して、「移動要塞」を手にしたヤンは、戦闘宙域の決定権を部分的にではあっても有することができます。つまり、回廊外に予定戦闘宙域を求めることが可能となるのです。
回廊に篭って戦闘するということは、
第一に、敵の十分な戦力集中を招いてしまう、ことを意味します。
第二に、敵の圧倒的な戦力集中を招くがために、ヤンの側は、艦隊運用を事実上不可能化されてしまうことを、意味します。
ヤンが艦隊を運用するならば、つまり篭城戦ではなく野戦であったならば、作中事実で現れているように、ラインハルトの艦隊を各個撃破することも可能なのです。
つまり、回廊に篭って戦闘するということは、圧倒的に不利な戦力比に加えて、その戦力比を覆すような有効活用の道すら、自ら放棄することを意味するわけです。
また、要塞を要塞にぶつければ良い、という要塞攻略法は、ヤンおよびラインハルトが作中において、気がついている事実となっています(氷塊を用いた質量弾による攻撃は、ラインハルトが気が付かないにしても)。
回廊内に篭るヤンを、一旦は艦隊のみで攻略し始めたラインハルトが、途中で要塞を要塞にぶつけるという方策に切換える可能性も無視できないものです。要塞は、ガイエスブルグの他にも8個ほどが存在していたかと思います。
少なくともヤンは、ラインハルトならば要塞を要塞にぶつけるという攻略法を思いつくだろう、と推測しているのですから、ラインハルトがこの戦略を取った場合にはお手上げ状態であることを自覚しているわけです。
ヤンが「移動要塞」を手にしていれば、この種の質量弾攻撃(要塞衝突攻撃)をも、戦略的に避けることができます。「移動要塞」の座標がラインハルト軍の偵察行動により露見次第、直ちにワープして逃避すればよいのですから。要塞を要塞にぶつけるという要塞攻略法(質量弾による攻略法)をも、事実上避けることが可能です。少なくとも、「移動要塞」を手にしていない場合よりは、圧倒的に高い回避率を有するわけです。
まとめると、
「移動要塞」をヤンが手にすれば、アンネローゼを誘拐するもよし、戦略爆撃(?)を帝国の各星系に加えるもよし、その他数多くの戦略を取りうる自由度を得るわけです。
加えて、作中のヤンが取った戦略と同様に、ラインハルトの軍事ロマンティズムとプライドに期待して、ラインハルト軍の来襲の中で勝機を掴む戦略を採用した場合であっても、「移動要塞」を手にすることで、ヤンは戦闘宙域決定の自由度を有することができて、状況が圧倒的不利の状況から大きく改善されるということです。
ラインハルトの軍事ロマンティズムとプライドに期待する戦略を採用する場合でも、「移動要塞」をヤンが手にした方が、手にしない場合に比して、大きく有利な状況となるのですから、この議論の優劣は明白だと思いますが、いかがでしょうか。
> で、極端な重力偏差例は5巻でシュタインメッツ艦隊に痛撃を与えたあのブラックホールですか。
> あとは次元の歪み、中性子星やらが空間に与える通常以上の重力の影響を差しています。
> 古典SFとまでいいませんから「宇宙航海」の出てくるスペオペか、せめて「宇宙戦艦ヤマト」あたりでも見ましょうよ、聞くより意味合いが理解できますから。
上のようなことは分かっています。私が聞きたかったのは、それが今回の議論にどう関わってくるかです。
アルタイル星系の近辺にブラックホールや中性子星や重い恒星があるというような記述には心当たりがありません。また、それらがあったとしても、亜光速船にとってどのような問題があるとS.Kさんは仰りたいのですか。
> といいますか御自分で「何ともいえない」論拠で横レスって何ですか。
そのように思うのは、S.Kさんが、自分自身の主張している事の意味を理解されていないからだと思います。
まず、明らかにしておきたいのですが、「宇宙は危険で一杯である」という主張を始めたのはS.Kさんです。であれば、宇宙が危険であることを立証する責任はS.Kさんにあるのであって、他の誰にあるのでもありません。
では、宇宙が危険であることを立証するとは、どういう事でしょうか。
それは、その危険の度合いを定量化し、説得力をもって説明する事です。
例えば、飛行機は墜落することがあります。しかし、我々は飛行機に乗る事を、格別に危険であるとも、自殺行為であるとも思いません。それは何故でしょうか。
それは、飛行機は確かに墜落する事はあるが、それは何万回にも渡るフライトの中のごくわずかな事例である事を知っているからです。
そのような量の問題を無視して、『飛行機は墜落する可能性がある。だから、飛行機に乗るのは危険で、自殺行為だ』と主張したとしても、失笑を買うだけです。
上を踏まえて、宇宙が危険であることを立証するにはどうすればよいでしょうか。
まず、上に挙げた飛行機の例のような帰納的なアプローチがあります。つまり、以下のような形の主張です。
『アルタイル星系から飛び立った亜光速船を沢山知っているが、そのほとんどは途中でデブリに激突して沈んでしまった。だから、亜光速船を使うのは危険な自殺行為だ』
もう一つは、演繹的なアプローチがあります。
『ラムスクープ場とラムジェットで処理できるデブリの大きさはx立方メートルまでである。しかるに、このアルタイル星系近辺のデブリの散らばり方は惨憺たる物で、そのまま飛び出したら危険なデブリにぶつかる危険がx%もある。だから、亜光速船を使うのは危険な自殺行為だ』
私が「何とも言えない」と言ったのは、上のアプローチの両方とも、主張するのに必要な材料が不足していると考えたからです。分からない事は分からないと認めるしかない。そこで根拠もなく『宇宙は危険である』と断言する事も、『宇宙は安全である』と断言する事も、同じように無責任な発言であると思うからです。
(厳密に言うと、アルタイル第七惑星は「見捨てられた惑星」だそうですから、そのような辺境に危険なデブリが大量に転がっているとも思えないのですが、明確な記述もないので『安全である』と断言することは避けたと言う事です)
S.Kさんは亜光速船を使う事を、危険で、自殺行為と断言しています。では、その結論はどこから導かれたのでしょうか。
上に挙げたような帰納・演繹的なアプローチを用いて結論を導き出したのでしょうか。であれば、その論理の筋道を明らかにした上で、議論を進めるべきです。
そうではなく、思いつきとフィーリングで結論を導き出したのでしょうか。であれば、S.Kさんは自分の主張していることの意味について、自分自身でも良く理解していないのです。それは、上に挙げたような『飛行機は墜落する可能性がある。だから、飛行機に乗るのは危険で、自殺行為だ』と言う主張と大差ありません。
>根拠があって、それをもとにして結論を導くという作業を行います。
>結論を導くのに利用した根拠がすべて作品中にあるのならば、別に問題はないのです。
>根拠の一部でも作品外から引用するのであれば、そのときに立証責任が生じるといっているのです。
パンツァーさんのこの発言自体は理解できます。
ただ、適用のしかたには、納得ができません。
作品中の人物たちが、遠征途上の艦船の燃料補給について論じている記述がない。それに対するひとつの解釈として、銀英伝の艦船が燃料を必要としない、というものもあるでしょう。しかし、燃料を必要とするが、銀英伝に描かれる作戦中の航行距離(1~2万光年)なら積載燃料に余裕がある、という別の解釈だって可能なはずです。なぜ、一方は作中記述からの考察で、他方は外部からの設定持ち込みになるのでしょうか?
<結論としての「恒久的移動要塞」「無限の自給自足能力」を問うているわけではありません。立証責任の対象としているのは、あくまで「根拠」の方です。無論、立証責任を解決していない「根拠」を前提に結論を導けば、その「結論」も立証責任を要するものとなります。>
つまり冒険風ライダー氏は、無限の自給自足能力自体を証明したといっているわけではない、ということですか?でも、私が以前に引用した氏の発言はどうなりますか?
<(#1896)
私は「要塞にはエネルギー、資源を無限に生産する魔法のようなシステムが付いている」と定義しています。これを立証する状況証拠は、件のユリアンとキャゼルヌの会話以外にもたくさん存在しますし、またそう考えなければ説明できなくなる描写もありますので。(中略)これもイゼルローン要塞に半永久的な自給自足能力が存在することを充分に立証するものです。>
<(#1960)
「無限の自給自足能力は実在し、かつ移動しながらの自給自足システムも技術的に可能である」ことを立証するという目的はある程度達成されたわけですから>
どう読んでも、「根拠」ではなく、「結論」の方を立証した、といっているように思えますが。
<また、上の田畑の例を参考にして欲しいのですが、「無限」というのは、生産が限りなく続く、の意味であって、単位時間辺りの生産量が無限だというわけではありません。単位時間あたりの生産量に関しては、八個艦隊の運用は可能、と作中事実は示しています。>
帝国領侵攻時のキャゼルヌの補給計画に関する考察は、八木あつしさんが言われたとおりだと思います。3000万人のための補給物資がイゼルローンで生産されたという記述はありません。
またイゼルローンに拠るヤン艦隊や、八月の新政府軍の物量を示す唯一の指標として、作中に記述があるのは、艦船数ですが、これの推移は次のようになります。
800年4月、回廊の戦いの前:28,840隻(乱離篇、第二章-1)
ビッテンフェルト/ファーレンハイト艦隊との戦闘後:二万隻を割りこみ(同、第四章-2)
801年5月:1万隻強(落日篇、第五章-4、帝国側による推定)
シヴァ星域の会戦:9800隻(同、第七章-2)
シヴァ星域会戦は、回廊の戦いから1年以上経過していますが、上記のようにイゼルローン軍の保有艦艇数は、減るばかりで回復がみられません。
あるいは、艦船というものは簡単には作れないものなのかもしれません。しかし、アーレ・ハイネセンたち逃亡奴隷でも、80隻を建造しています。銀河帝国が国力を傾けて作った軍事拠点なら、ハイネセンたちとは比較を絶した生産能力を擁していても不思議ではないのに、現実は上のとおりです。
こうしてみると、イゼルローン要塞は、無限の自給自足能力どころか、軍事拠点としての基本的な生産能力すら欠けているのではないでしょうか?
ところで、銀英伝には無人艦隊は二度登場します。第五次イゼルローン攻防戦のときと、シヴァ星域会戦のときです。とくにシヴァ星域会戦の部分では、これが同盟軍の伝統的先方であるとの記述があります。
~ラインハルトの体調が万全であれば、ユリアンの詭計を看破しえたかもしれない。いや、おそらく看破したであろう。冷厳に判定すれば、ユリアンの詭計はヤン・ウェンリーの亜流であるにすぎない。ヤンは無人艦をしばしば魔術の素材に使ったし、さらに戦術学史をさかのぼれば、シドニー・シトレ元帥がその戦法によるイゼルローン要塞攻略をこころみた。ある意味で、同盟軍にとって伝統的な戦法であろう。~
(落日篇、第七章-3)
<なぜですか?
「無補給航行」の原理が不明、というだけの話です。
ワープエンジンの原理も不明ですが、原理が不明なので、アウトにしますか?
論じるに際して、同一の基準を適用してください。>
ワープエンジンと同一の基準を適用したら、それこそ、その瞬間に無補給航行はアウトでしょう。
銀英伝世界でワープが実現していることは、いくらでも直接記述があります。ところが、「某艦船が無補給航行した」などという記述はどこにもありません。この点では、無補給航行は、ガイエスブルグの一例がある移動要塞よりも、さらに根拠が薄弱です。演繹を行おうにも、本発言の冒頭に述べたように、別の解釈が可能ですし、帰納を行おうにも、直接記述された例が一つもありません。せめて、無補給航行の原理を説明しそうな作中記述を見つけてきてはいかがでしょうか?
作品記述にのみもとづいて考察する、というスタンスは結構ですが、もうすこし直接記述と、そこから出発した定量的考察に重きをおいてはいかがでしょうか?間接的な推測は、しょせん解釈のひとつにすぎず、根拠として弱すぎます。
<これも、どこかで述べたと思いますが、
ワープというのは、燃費の点から言っても画期的な技術かもしれません。スタートレックの世界では、そのようになっています。
すくなくとも、アインシュタインの公式を元に、質量欠損エネルギーを運動エネルギーに転化する式の論理は当てはまらないでしょう。>
外部からの設定持ち込みを禁じ手にしている人が、スタートレックを持ち込んでどうするのです。
アインシュタインの公式が、無補給航行可・不可議論と、どう関連するのか分かりませんが、冒頭に書いたように、作中記述に対する別の解釈が成立する以上、無補給航行が作中で証明されているとはいえないでしょう。
<元投稿で、敵地であるとかないとか、Kenさんはそんな理由を述べていたように思いますが、それは補給路の切断が容易か否かの問題であって、補給線が必要か否かの問題ではありません。つまり、これは、関わりがありません。>
銀英伝世界に無補給航行が存在すると主張する「根拠」は、登場人物が燃料補給に言及しない、という点にあるのでしょう?しかし、補給が必要でも、それを切断される心配が皆無なら、ラインハルトや提督たちが、それを問題に取り上げなくても不思議ではないでしょう。補給は、帝国内に完成しているインフラを信頼できるのですから。せいぜい中級士官の事務的な懸案事項にすぎないはずです。
たしかに、銀英伝では、本拠を離れて航行するとき、食料や物資の補給の重要性が繰り返し語られています。しかし、もう少し詳しく作品を検証してみてください。自陣営の完全な制圧下にあり、敵の攻撃が考えられない状況でも、登場人物は補給の心配をしていますか?そのような作中記述はありますか?例えば、ウルヴァシー事件の前、ラインハルトがノイエ・ラントのロイエンタールを訪問する航海で、誰かが食料補給に言及していますか?フェザーンからハイネセンまで、数千光年の航行のはずですが。
ところで、パンツァーさんにぜひ尋ねてみたいことがあります。
Nightさんは、イオン・ファゼカス号が大質量ワープなら、ガイエスブルグのワープが新技術ととられるはずがない、という問題を指摘されていますが、これまでのところ、恒久移動要塞を肯定する人たちの誰れ一人として、まともに答えてはおられません。パンツァーさんは、この指摘にどのように回答されますか?
「肯定派」の人たちは、シェーンコップの発言やヤンの発言を引用して、大質量ワープが新技術ではない、という発言はしています。しかし、Nightさんの指摘は、実際に新技術かどうかではなく、新技術と「みなされるか」どうか、です。銀英伝世界の人がイオン・ファゼカスのワープを覚えていれば、ムライの発言はもちろん、シェーンコップの発言すらそもそもなされていないでしょう。皆が常識的にしっていることを解説する必要はありません。
冒険風ライダー氏が引用したヤンの言葉も同様です。
<移動要塞戦術を指して「見た目ほどに衝撃的な新戦法というわけではないが」と評しているわけです。>(#3787)
イオン・ファゼカス号の前例があるなら、「見た目にも」衝撃的な新戦法ではないでしょう。
皆さんご存知のとおり、銀英伝世界では補給が常に問題になっています。大質量のワープができるなら一挙に問題が解決するではありませんか。作者による数値の変更が明らかになった、輸送船のトン数の記述を思い出してください。
~五〇〇○万人の一八〇日分の食糧といえば、穀物だけでも一〇〇〇万トンに達するであろう。二〇万トン級の輸送船が五〇隻必要である。第一、それはイゼルローンの食糧生産・貯蔵能力を大きく凌駕していた。~
要塞でなくても40兆トンをワープさせられるなら、5000万人の72万日すなわち1900年分の食料を運べるではありませんか。
昨年の移動要塞論争の中で、冒険風ライダー氏は、恒久移動要塞は「コロンブスの卵」だと述べています。(#1793)
しかし、コロンブスの卵とは、やってみれば簡単だが、それまでだれも思いつかなかったことを意味します。皆が覚えている過去の事例があるなら、コロンブスの卵とはいいません。
これがコロンブスの卵なら、こういうことが起こったことになります。
昔、卵のはしをつぶして平らにし、卵を立てた人がいました。
このエピソードは、建国の物語の一部になっていて、知らない人はいません。
さて、人々は、卵をどうやって立てられるか、年中、頭を悩ませていました。
ある人が、卵のはしをつぶして平らにし、卵を立てました。
こんなことが本当に起こったと思いますか?とNightさんは尋ねているのです。