私の創竜伝考察2

創竜伝1 超能力四兄弟

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収録投稿1件目
board1 - No.902

私の創竜伝考察2

投稿者:冒険風ライダー
1999年03月18日(木) 02時00分

 石井由助さん、私の投稿を具体的に指摘してくださった感想をありがとうございます。この感想は、今後の「私の創竜伝考察シリーズ」の参考にさせていただきます。
 また、私は中国史は人並みに知っているつもりですが、中国の文献や格言などにはあまり詳しくありませんので、そちらの方の批判は誰か別の方がやっていただきたく思います。
 それと前に誰かがやっていた所の批判は、できるだけ重複しないように努力しますが、私の解釈と違う場合は重複して私も別の批判をやると思いますので、どうかその辺の所をよろしくお願い致します。
 それでは、創竜伝1の批判の続きを始めましょう。

P174下段
<こうも小心者であるくせに、欲ばかり深い叔父に、続は一ミリグラムの同情もいだいていない。
「日本は先進国で自由主義国で民主主義国だと思ってましたよ。少なくとも教科書じゃ創教えている。ところがそうじゃなくて、教科書で嘘を教える国だったのですね」
 痛烈にそう言いつのる続の横で、始は沈黙していた。>

 続さん、もっと寛容になってください。「こうも小心者であるくせに、欲ばかり深い叔父」って、鳥羽靖一郎氏に対してあまりにも酷評かつ一方的な評価だと思いますよ。それに自分達と同じような人間以外は認めないという「イデオロギー絶対主義」が、この主張と態度から透けて見えます。
 「教科書で嘘を教える国」というのは、1982年の教科書問題についてのあてつけですかね? あれは創竜伝で存在自体を否定ないしは無視されている(T_T)朝日新聞の歴史的な誤報ですよ? これが誤報だという事も田中芳樹は知らないのでしょうね。この程度の知識でよく社会評論を展開できるものです。

P181上段
<「日本の社会なんて奥行きが浅いし、特に政界なんて石器時代から進化していないから、(略)」>

 始さん、あんた日本の歴史をどう学んでそんな全否定的な結論をだしてるの? 昨今の「自虐史観派」も真っ青な主張ですね。何しろ「政界なんて石器時代から進化していない」のだそうですから。そもそも始さんは2000年以上の日本の歴史を全て正確に知ってこんな結論をだしているのでしょうか? そうでないとしたらこれは日本に対する誹謗中傷であり、歴史に対する冒涜です。

P183下段
<自衛隊の演習場であれば、広大な、しかも閉鎖された空間で、ほしいままに火力を使用できる。(中略)ここでは、日本国内で最大の物理的な破壊力を思うさま行使して、誰からの批判も干渉も受けずにすむのだ。たとえ竜堂兄弟が砲撃で吹っとんでも、死体が発見されることはないだろう。>

 田中さん、あなたに麻生幾氏の小説「宣戦布告」でもさし上げましょうか? 日本の自衛隊法や、自衛隊の実態を少しは勉強した方が良いと思いますよ。日本の自衛隊が演習で使える火力はかなり制限されていますし、そんな資金もあまりありません。人件費や土地賃貸料などでかなり使っていますしね。しかも自衛隊の演習には自称「市民団体」の皆さんが常に監視の目を光らせていますので、この間も自衛隊員が一人死亡しただけでマスコミが騒いだように、演習場で死体が発見されないはずがなく、「誰からの批判も干渉も受けずにすむ」はずがないではないですか。これは小説ですし、ツッコむべきことではないのかもしれませんけどね。この辺りの知識にもっと詳しい人はいませんか?

P207下段
<「日本が精神的にも軍事的にも完全な再建を果たし、米ソ両国を屈伏させるまで、わしは死ねん」
「日本が世界一の強国になったって、どこの国も喜びませんよ」
ようやく余裕をとりもどして、今度は続が毒づいた。>

 船津忠厳の気概には敬意を払いたいくらいですね。こんな主張をする政治家が日本の主流になってくれれば良いのですが。それはともかく、「日本が世界一の強国になったって、どこの国も喜びませんよ」という続氏の主張は、いったい何が根拠なのでしょうか。お隣の韓国だって「日本が強ければ中国や北朝鮮が軽挙妄動しないだろう」という主張がありますし、台湾やインドネシアなど、中国やアメリカの軍事的・経済的脅威にさらされている国はさらにそうです。むしろ田中芳樹の大好きな中国の方が「世界一の強国になったって、どこの国も喜びません」でしょう。

P212上段
<「虚報の責任をとって、警察幹部の誰かが辞任するだろう。新聞は、おれたちを悪逆非道の人非人と書きたてたスペース、一万分の一ぐらいを使って、人目につかないように訂正記事をのせるだろう――それで終わりさ。ジャーナリズムで誰ひとり責任をとる奴がいない点は、賭けてもいいね」>

 この始氏の主張、この場合はあってますが、新聞についての認識はまだまだ甘いですね。創竜伝世界に存在しない朝日新聞系列の虚報ないし誤報のごまかし方は、そんな生ぬるい手段ではありません。何しろ誤報を正当化するために「自分たちの主張は間違っていたが、もっと問題なのは‥‥」と堂々と主張してどこかに責任転嫁をし、自分たちは知らん顔をするのですから。田中芳樹にはこの朝日新聞の横暴が目に入らないのでしょうか。

 さて、ここからは現実と虚構がかなり入り混じった、船津忠厳に対する論評です。この男は創竜伝の中で結構考えさせられる存在です。結構迷走している論評ですので、飛ばしてくれてもかまいません。
 まず船津忠厳は、戦後から「20世紀の終わりを数年後にひかえた年」まで日本を影から支配しているという設定になっています。また「日本に対する愛国者」として田中芳樹に否定的に扱われています。
 それではこの男を、現実世界の歴史を当てはめた想定で評論してみましょう。

 まず、船津忠厳はアメリカの言いなりになって日本国憲法を制定しました。自分が尊敬している教育勅語を廃止し、日教組の存在を許しました。
 サンフランシスコ平和条約後、船津忠厳がそのアメリカの押し付け憲法を改正しようとすればできたはずなのに、それをやろうとした形跡がありません。また、朝日新聞などの共産圏の礼賛報道にも目をつぶっています。
 日本の発展に尽力した田中角栄をアメリカかソ連の陰謀と言われているロッキード事件で血祭りに上げ、1982年の教科書誤報の時は、内政干渉と一蹴すれば良いものを、宮沢をつかって教科書検定に「近隣諸国条項」なるものを制定させ、日本が中国や韓国から内政干渉を受ける体制を作りました。従軍慰安婦問題の時もろくに調べもせずに河野洋平に「従軍慰安婦強制連行はあった」という河野談話を発表させました。最後には1995年に世界史上最低の愚行とされる「謝罪・不戦決議」を国会で可決させました。

 とまあ、現実と虚構がかなり入り混じった変な歴史を紹介しましたが、これらからの結論を言いますと、
「船津忠厳は愛国者ではなく売国奴だ!」
と断言できますね。田中芳樹や竜堂兄弟は、船津忠厳のどこをみて「愛国者」と断定したのでしょうか。

 なぜこのような論評をしたのかと言いますと、現実世界と創竜伝世界のギャップがあまりにも大きいということを言いたかったのです。田中芳樹の創竜伝世界は、「日本が右傾化する」という全くありえない間違った前提を批判するために、現実世界が「実は左傾化している」ことを無視した社会評論をしています。この辺りに創竜伝の矛盾点が存在するのではないかと、私は考えています。

 非常に長くなってしまって申し訳ありません。次は創竜伝2の批判をしたいと思います。

収録投稿2件目
board1 - No.907

RE.902 >私の創竜伝考察2

投稿者:石井由助
1999年03月19日(金) 02時32分

>P174下段
うーん、続が非寛容なのはキャラクターだから仕方がないのでは? 馬鹿な理論で何得意がってるんだ? という批判ならアリですが。
>「教科書で嘘を教える国」と1982年の教科書問題の関係は推論ですので、これで田中芳樹の知識を揶揄することは避けたほうが無難です。

>P181上段

 まあ、田中芳樹お得意の比喩表現でしょうが、「全否定的な結論」がふざけているというのには賛成です。「社会の奥行きが浅い」ってのは何なんでしょうね。

>P183下段

 確かにその通りですが、これを否定すると「日本の黒幕」という設定自体あり得ないバカらしいものになってしまう(^_^;)ので、フィクションとして微妙な線だと思います。もっとも、そのフィクションを元に現実の批判をされたら堪りませんが。

>P207下段

 うーん、日本を独立国にしようならともかく、米ソ(ソ連はもう無いけど)両国を屈服させようなんて、いまどき右翼でも言わないことだと思うけど。
 あと、日本が世界中から嫌われているという田中芳樹の主張は大嘘ですが、たしかに世界一の強国になって愉快な国はないでしょうね(別に日本だけでなくどこの国だってそうだと思う)。

>P212上段

 むしろ、サリン事件の河野さんのように、絶対弱者になるのではないでしょうか。私は、マスコミの河野さんに対する態度は、謝罪ではなく媚びへつらいだと感じました。

>「船津忠厳は愛国者ではなく売国奴だ!」

 とても面白い視点だと思います。多分、船津氏のモデルは「日本のドン」笹川良平氏だと思われますが、マスコミが彼をどのように扱ったかを考えるとギャップがわかりやすいかも知れません。

収録投稿3件目
board1 - No.913

「黒幕」の変遷

投稿者:北村 賢志
1999年03月20日(土) 00時37分

> 「船津忠厳は愛国者ではなく売国奴だ!」

 こういった「裏の権力者」が実は大したことのない奴である、というのは最近の作品では多いようです。
 かって「男組」の「影の総理」には、いかにも悪党の大物という存在感がありましたし、「ワイルド7」最終章の「大先生こと秘熊防衛大臣」に至っては、何と2000ページに及ぶ戦いの中で、一度として主人公達と直接相対する機会すらなく、最後はワイルド7を全滅させて、国民の圧倒的支持の中、日本の独裁者の地位につきました。秘熊が日本を手中に収めたとき、何もかも失った瀕死の主人公が、敵の下級幹部や悪徳弁護士とかろうじて差し違える(死亡シーンはなし)というこの作品のラストは、本当に驚きでしたね。
 ではこういった作品と創竜伝はじめとする最近の作品の違いは何処にあるかと言えば、やはり「日本の状況に対する見方」でしょう。
 つまり昔(大体昭和60年ぐらいまで)の作品では「日本の現状」に対する怒りが、ある程度まで読者に共通認識として認められており「裏で糸を引いている黒幕のせいだ」との設定がそれなりに説得力があったのに対し、日本が世界屈指の大国になり、国民の「現状維持」意識が強まるに従って、そういった設定は受け入られにくくなっていったものと思われます。
 また実際の政治家や国家権力が余りにも国民一般から等身大に見えるようになった結果、大物の黒幕はかえって「現実の政治屋」よりも立派な存在に見えてしまうようになりました(「影の総理」だったら、私は支持してしまいそうですよ)。
 このため昨今の作品の「裏の権力者」はその人格を矮小に描き「こんな奴が権力の座にある」ことを主人公達の正当性の根拠としているように見えます(大抵、やばくなると恥も外聞も捨てて命乞いをしたり、涙ながらに自分の苦労話をしたりします)。
 船津忠厳がナンセンスなウルトラナショナリズムを「敵」に対して公言するという、とても大物には見えない軽率な人間なのもそんな理由でしょう。
 ですが、そうなるとそもそも「影で糸を引いている」のが悪いのか、それとも「その人格がろくでもない」のが悪いのかがハッキリしなくなってしまいます。
 これまでの田中氏の論理で言えば本来「影の権力者」自体が許されず、そうなると船津忠厳がいかなる人格の持ち主だろうと打倒されるべき存在になるはずです。しかし創竜伝では、船津忠厳がまともな政治感覚の持ち主で、竜堂兄弟など相手にしないのであれば話になりません(まだ「灼熱の竜騎兵」の方が筋が通ってます)。
 このあたり架空戦記で、そもそも対米戦を避けりゃいいものを、それでは話にならないので無理矢理戦争に引きずり込んだ上で「国家戦略がどうの、国際政治がどうの」と訴えているのと似たようなモノを感じてしまいます。

収録投稿4件目
board1 - No.915

レスなど

投稿者:本ページ管理人
1999年03月20日(土) 04時40分

>「黒幕」の変遷

 相変わらず鋭いですね。確かに、あの船津の行動は謎です。始がたとえ右翼的人間だったとしても、自分の祖父にペストを巻かれたと知って「はいそうですか」と言って従うはずが無かろうに。

収録投稿5件目
board1 - No.919

そういえば

投稿者:北村 賢志
1999年03月20日(土) 17時03分

>自分の祖父にペストを巻かれたと知って「はいそうですか」と言って従うはずが無かろうに。

 全部、図書館から借りたのと立ち読みで済ましているので手元にありませんが、確かチフスだったはずです。
 その前の「特高がよく使った手」というのも嘘ですが(どうして「法定伝染病」の菌を警察が自由に使えるんだろう?)確か毛布に菌を仕込ませて、と言う手はむしろネイティブアメリカンに対し白人が使った手ですから、そちらを元にしてるんでしょう。
 しかしその後に「おかげで獄死を免れた云々」と書いてあったのは無理が有りすぎです。
 読んだときに「チフスにかかって死なない人間が、何で数年で獄死するんだ!」とツッコミを入れました。
また、それを恩着せがましく言われていた始がそれについて何も反論しないのも随分不自然でしたが、ひょっとすると田中氏は戦後、日本共産党中枢部を占めたのが戦時中「治安維持法」で獄に入っていた連中だったことを知らなかったんでしょうか。

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