3代目掲示板過去ログ

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投稿ログ10 (No.215 - No.227)

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board3 - No.215

更に別の『反創竜伝』

投稿者:本ページ管理人
2000年12月24日(日) 16時08分

 仙界の連中が「彼らだったら人間であっても権力者と対立しただろう」と言われる竜堂兄弟ですが、彼らに超人的な力がなかったらどうなったでしょうか?
 彼らの言っていることの正当性なんてものは、超人的な力という虚飾と暴力装置を取り除いてはじめて真価が測れるはずです。

 一応、超人的な力がなければ船津老や四人姉妹に狙われることはないですけれどねぇ。別に権力者が目の敵にするほどの危険思想(笑)なんて持ち合わせていませんし、敵対しようがなさそうなもんですが。

 むしろ、人格形成過程で対人関係がまったく変わるでしょうから(超人の時には感じなかった「威嚇」というコミュニケーションが発生する)、全くの別人格になる方が正しそうですね(笑)。

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board3 - No.217

今の私があるのは連中のおかげ&架空都知事選シミュレーション

投稿者:モトラ
2000年12月24日(日) 17時11分

>  現実世界の人間(それもまがりなりにも知識や評論の世界に身を置いている人間)にも結構いますからねぇ。
>  普段自衛隊に反対している人間が震災の時に自衛隊の出動が遅れたのを「人災」だと怒ってみたり、容疑者の人権第一の弁護士が同僚の弁護士を殺したオウムに対しては「死刑にしろ」と言ってみたり。
>  当時は連中の矛盾撞着があらわになって限界を見せたように思われたものですが、今じゃすっかり何食わぬ顔で言論活動してますから。恥ずかしげも無く。

立て続けに発生したこの二つの事件と、それに関する進歩的な人々の発言の数々は、私を左翼的洗脳から解き放ってくれました。その点については感謝(大笑)

>  とまあ、竜堂兄弟に政治参加して貰いたいと来れば、やはり現実世界の「とうちゃん」にその卓越した政治意識を見せてもらいたいなぁ(笑)
>  ちょうど、同じ作家で同じ思想傾向で同じ名字の某氏が知事になったことだし……

仮に田中芳樹が「右傾化を煽る風潮に風穴を」と次期都知事選に立候補、二期目を目指す石原慎太郎と一騎撃ち…という事態になったとして、どのような結果が待ちうけているのでしょうか。
今でも「銀河英雄伝説」「創竜伝」を盲目的にバイブルとする人々の票数だけではムリでしょうね。一般的な認知度が石原慎太郎や田中康夫どころか、今や切手の図柄になるほど市民権を得たアニメの総監督にも及ばず、論壇で保守に攻撃されることも、左翼に褒めちぎられることもないと言う現状では(その点では小林よしのり以下…)。まず「一騎撃ち」の状況を作るには、左翼政党や市民団体に所属する田中芳樹ファンが動いて、政党幹部に候補者擁立を断念させ実質的支持を取りつけ(川田悦子戦法)、市民団体に「田中芳樹的思想」を説いて回り、勝手連的運動を展開させる…いかん、田中知事実現を目指してどうする(^^;)

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board3 - No.218

Re213/214/217:「反創竜伝」第二の強攻策&知事選シミュレーション

投稿者:冒険風ライダー
2000年12月25日(月) 14時11分

>Merkatzさん
> 私が冒険風ライダーさんの論理的な実験に敢えて意義を差し挟んだのもそれを思ったからでして。
> そもそも竜堂兄弟が盛大に論理破綻をやらかしているのは、自分たちの論理が破綻していることに気付いていない無神経さにあるわけで、
> どんなにこちらが理路整然と思考の陥穽について指摘しても、「それがどうした」(byアッテンボロー)という風に返されてしまうのではと思ったんです。
> さすが竜だけあって、人間とは別次元の思考をしているようで(笑)。

>管理人さん
> 結局、彼らは「ちゃんと投票している」という代議制民主主義の欠陥的な権利・責任意識(選挙民の責任なんて問うことが出来ない)を拠り所にしているため、何を言われようと平気なんじゃないかと思います。

 う~ん、やっぱり難しいですかね。あの「お前が戦争に行け論」の社会評論バージョンは、竜堂兄弟の思想面における致命的な欠陥を的確に、しかも連中では絶対に回避不可能な形で突くことができるので相当に有効な戦法だと思ったのですが、竜堂兄弟にそれを理解できるだけの知能と識見がなければ確かに意味を成しませんわな。
 連中は人様をアレほどまでに説教まがいの社会評論を使って非難しているのですから、逆に他人から非難された時、少しは自分達の主張を顧みるぐらいの「自律」や「自省」ぐらいあるのではないかと「若干の期待」をかけてしまった私がどうも間違っていたようですね。普通一般の常識と識見さえあれば私の理論的説得は完璧な効力を発揮するはずですが、やはり感情と病的なプライド意識の暴走で発狂しているようなキチガイ連中相手にそんなものは通用しないか(笑)。
 まあ交渉が成功しようが失敗しようが、交渉によって竜堂兄弟の思想的・政治的正当性を連中自身の手によって完全に破壊させることができますし、「すくなくとも最初の段階では四人姉妹ないし牛種は竜堂兄弟に対して極めて友好的であったにもかかわらず、連中は一方的にこちらの手を振り払って敵対した」という「事実に基づいた宣伝」を展開することによって竜堂兄弟にある程度の思想的ダメージを与えることも可能ですから、ダメもとでも交渉を行ってみる価値は充分にあるとは思いますけど。

 それとアレはまだ「第一の理論的説得策」であって、一応私のシミュレーションの中でも、連中がこちらの主張内容を全く理解することすらなく拒絶してくることは計算の内に入っております。それに基づいてNo.185では「第二の強攻策」も同時に作成しておいたのですが、こちらについての成功率はどうなのでしょうか?
 連中に対して四人姉妹ないし牛種の政治力と経済力に基づいた強大なまでの世界支配戦略の一端を披露しつつ、それを竜堂兄弟に対する強力な脅迫・交換条件提示としての外交カードとして使うという戦法は、むしろ連中が感情に基づく行動原理を持っているからこそ却って有効な戦法たりえるのではないですか? そしてさらに、万が一にも自分達に刃向かってくる場合は、自分達の力で全世界を滅亡させると「脅し」をかけておけば、四人姉妹に対抗できるだけの政治力も経済力も全く持たない竜堂兄弟は、むしろその自分達自身の安っぽいヒューマニズム的な感情によって四人姉妹ないし牛種に逆らうことができなくなってしまいますし、それによって四人姉妹ないし牛種の安全まで確保することすらできるようになるのです。
 連中は「自分達はただ権力者の攻撃に対する正当防衛を行っているだけだ」と口では公言しているものの、実際にはその「正当防衛」の流れに反した行動ばかり取っているのは、創竜伝本編の流れを見れば一目瞭然です。そして連中の感情的発作(笑)の源泉には「安っぽい3流以下のヒューマニズム」というシロモノが確実に存在します。「第二の強攻策」は竜堂兄弟が持つこの思想的破綻を逆手に取ったものであり、竜堂兄弟が思想的に転向するか、連中にイキナリ四人姉妹ないし牛種に対抗できるだけの強大な政治力・経済力が備わったりしない限り、連中にこの「第二の強攻策」を無視・拒絶することはほぼ不可能です。
 しかもこの方法は竜堂兄弟側が政治的・経済的に無為無力である限り、何度でも使用することができます。拒絶すれば人類は四人姉妹ないし牛種の政治力と経済力とによって完全に滅亡させられることになるのですから、力しか能のない竜堂兄弟にはどうすることもできません。この状況ではさすがの竜堂兄弟も少しは政治意識に目覚めざるをえないでしょう。これに先だって「第一の理論的説得策」を実行していればさらに効果的です。
 四人姉妹ないし牛種の竜堂兄弟に対する要求内容は別に何でも良いのですが、「連中に権力を掌握させる」以外にも「天界と仙界に攻めこませ、連中を天界において孤立させる」というのが結構有効な選択肢として存在しますね。そもそも牛種の最終目的は「人界・天界の完全支配」にあるのですし、竜堂兄弟と仙界・天界とを噛み合わせれば、自分達が手を下すこともなしに敵対勢力を弱体化させたり、竜堂兄弟を完全に孤立させたりすることすらできるのです。
 実は創竜伝本編においてもこの策は充分に使用することが可能だったはずなのですが、四人姉妹ないし牛種側の思考水準が、低能な竜堂兄弟のそれをすらはるかに下回っていたために立案されることさえなかったんですよね。ただ単純かつストレートに「染血の夢」計画を竜堂兄弟にバラすのではなく、それを有効な交渉のカードとして使って連中に自らの政治面における無力さを思い知らせてやれば、自分達の安全を確保しつつ、キズひとつ与えることすらなしに連中を屈服させる事だってできたかもしれないのに。
 さすがにこの「第二の強攻策」が竜堂兄弟の知能不足によって失敗することはありえないでしょう。これは理論ではなく感覚的に理解させることができるのですし、「脅迫」という手段は感情で動く連中の方がむしろ簡単に引っかかるような方法なのですから。



>モトラさん
>仮に田中芳樹が「右傾化を煽る風潮に風穴を」と次期都知事選に立候補、二期目を目指す石原慎太郎と一騎撃ち…という事態になったとして、どのような結果が待ちうけているのでしょうか。

 元々が熊本県出身の田中芳樹は、東京都知事ではなく熊本県知事に立候補した方が良いのではないでしょうか? 「地元出身の有名作家」というキャッチフレーズが相当有効な武器として使用できます。東京都で石原慎太郎氏と勝ち目のない選挙戦など展開するよりもはるかに勝算のある方法だと思いますけど。
 熊本県は「保守王国」などと呼ばれる自民党の勢力基盤のひとつでもありますからね~。ここで勝てば、田中芳樹が激しく憎んでいるであろう自民党にも一矢報いることができるわけですから、是非とも本人に立候補してもらいたいところなのですが(笑)。

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board3 - No.220

Re: 知事選シミュレーション

投稿者:不沈戦艦
2000年12月25日(月) 16時11分

> >仮に田中芳樹が「右傾化を煽る風潮に風穴を」と次期都知事選に立候補、二期目を目指す石原慎太郎と一騎撃ち…という事態になったとして、どのような結果が待ちうけているのでしょうか。

> 元々が熊本県出身の田中芳樹は、東京都知事ではなく熊本県知事に立候補した方が良いのではないでしょうか? 「地元出身の有名作家」というキャッチフレーズが相当有効な武器として使用できます。東京都で石原慎太郎氏と勝ち目のない選挙戦など展開するよりもはるかに勝算のある方法だと思いますけど。
> 熊本県は「保守王国」などと呼ばれる自民党の勢力基盤のひとつでもありますからね~。ここで勝てば、田中芳樹が激しく憎んでいるであろう自民党にも一矢報いることができるわけですから、是非とも本人に立候補してもらいたいところなのですが(笑)。



 あの田中芳樹に、知事になるような勤勉さを求めるのは酷なのでは?勤労意欲は相当薄そうですからね~。

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board3 - No.221

Re^2: 知事選シミュレーション

投稿者:日傘
2000年12月25日(月) 17時44分

>
>  あの田中芳樹に、知事になる
> ような勤勉さを求めるのは酷なのでは?勤労意欲は相当薄そうですからね~。

 ま、まさか、ここ最近の著作量の多さは、政界進出に先駆けて出版界に大量にたまっている空手形を清算しようとしているのでは(笑)!?

 田中芳樹知事ですか。でもアノヒト、私のイメージ的ではノンポリっぽいですからねえ。現実に直面すれば意外とあっさり転向するかも……

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board3 - No.222

反銀英伝 大逆転! リップシュタット戦役(49)

投稿者:不沈戦艦
2000年12月26日(火) 16時21分

「親書を手渡すとなると、誰かがガイエスブルグまで行かねばならぬ、という
ことになりましょうか?」

 エターリン大佐が質問した。エターリン大佐は31歳。金髪碧眼だが、容貌
は十人並みである。大きな鷲鼻が特徴だった。しかし性格は派手で、目立ちた
がりなところがかなりある。パーティー好きで、帝都にいる時は連日連夜のよ
うに舞踏会に顔を出し続け、自分でも主催する事が多いのだが、さすがに今回
は非常時なのでそうはいかないようだ。性格からすれば攻勢の方が得意のよう
な気がするのだが、何故か正反対の防衛戦の名手として知られている。

「いや、卿らをガイエスブルグにまで派遣するつもりはない。私の親書は、巡
航艦一隻に運ばせれば充分だ。というか、もう手配は終わっている」

 タンネンベルク伯は言い切り、更に続ける。

「しかし、ガイエスブルグを脱出した部隊の集結地が要る。それの整理と誘導
は必要だろう。レープ准将、それは貴官に依頼する」

 話を向けられ、レープが驚いたような顔をした。

「集結地、と言いますと?」

 意味があまり解っていないようで、問い返すレープであった。

「いや、彼らを直接オーディンへ召集する訳ではないのだ。私としては、挟撃
作戦を行うつもりなのでね。単純化して説明すると、オーディンの兵力でロー
エングラム侯の兵力を引きつけておき、後背からガイエスブルグ脱出部隊が襲
いかかるという寸法だよ。その為には、敵に悟られぬよう、かつオーディンか
らあまり遠くない距離に、ガイエスブルグ脱出部隊を一旦集結し、戦力を再編
しておく必要がある」

 ここで初めて、タンネンベルク伯は自分の構想を告げた。オーディンを囮に
した挟撃作戦、それがタンネンベルク伯の勝利への戦術デザインである。それ
を聞いて周りの幕僚たちは、一斉にどよめいた。かなり危険な要素もある作戦
だ、ということは言うまでもない。後背から襲いかかるガイエスブルグ組が遅
れた場合は、オーディンのタンネンベルク軍は倍の敵と戦い続けることになる。
救援が遅れた時は、タンネンベルク軍は壊滅してしまうこともあり得るのだ。
あるいは逆に、敵が後背の戦力に先に気付くような展開になった場合、ガイエ
スブルグ組の方が単独で戦うことも考えられる。こちらは戦力的に互角とはい
うものの、「戦争の天才」が相手である以上、自分たちの方が有利と云える訳
ではない。いずれにせよ、タイミングが大問題になることは間違いないだろう。

「それはあまりにも危険ではありませぬか?挟撃が上手く行ったら万々歳とは
いうものの、少しでもタイミングが狂った場合、双方が各個撃破される可能性
が高いと思うのですが。もう少し、堅実に戦うべきではないかと。充分な戦力
をオーディンへ集結させてからの方が安全確実です」

 シュリーフェンが異論を挟む。准将は「理を優先する傾向がある」とは言っ
ても、現場を無視するような性格ではない。精緻に組み上げられた作戦が、実
行段階では予定通り行かず、脆いこともあることは充分承知している。

「いや、それは承知しているのだ。短期間に戦役を終結させないと、状況が悪
化する可能性が高いので、やむなくそうするのだよ。何しろ我が貴族連合軍は、
統制が取れているとは言い難い。戦役が長期化した場合、一度や二度でなく分
派騒動が起こり、内部抗争が始まるやも知れぬ。そうなっては我らの敗北だ。
故に、早期に決戦を行って、一気にかたを付けねばならぬのだ。ガイエスブル
グの戦力が全部オーディンに来てしまった場合、ローエングラム侯は決戦を避
け、空になったガイエスブルグを占領して籠もってしまうかも知れぬだろう。
それでは、戦役が長期化するのは必定。そうなれば人心も惑うだろうし、最悪
叛乱軍、いや自由惑星同盟軍の介入まであり得る。その状況では戦局が複雑化
してしまい、どう転ぶか何とも解らぬようになろう。戦いは可能な限り、単純
化せねばならぬのだ。予測不能な因子はなるべく入れてはならぬ。よって、『戦
力が少ないオーディンのタンネンベルク軍に攻め掛かれば、勝てるかも知れな
い』という敵の唯一の希望を絶ってはならぬのだよ。とにかく、撒き餌は美味
である必要がある、ということだな」

 タンネンベルク伯の説明に、シュリーフェンは、更に疑問を投げかける。

「とは言っても、グリューネワルト伯爵夫人がこちらの手にある内は、ローエ
ングラム侯は手も足も出ないのではありませぬか?いかに戦えば勝てると思わ
せたとしても、それ以前の段階で、彼は姉の身を案じて、攻め掛かるのを断念
するのでは、と愚考しますが」

 シュリーフェンには、ローエングラム侯爵が姉の命を無視して攻撃してくる
とは思えなかった。現に、タンネンベルク伯はグリューネワルト伯爵夫人の命
を盾に、ミッターマイヤー艦隊を退却させたではなかったのだろうか。シュリ
ーフェンには、それを無視するようなタンネンベルク伯の物言いが解せなかっ
たのである。


(以下続く)

board3 - No.223

悪役列伝(名無しの男/創竜伝最強の悪役)

投稿者:優馬
2000年12月29日(金) 09時52分

どうも、ご無沙汰しておりました。優馬です。

 たまさか「創竜伝」第一巻を入手できたので、思いついたネタが「悪役列伝」。田中芳樹ワールドの悪役さんたちについて、みなさんと一緒に論じれたらいいな、と思って企画しました。
 「悪役」の定義は、基本的に「やられキャラ」。従って銀英伝のラインハルトとかは除きます。使い捨てにされる消耗品のザコキャラにも、それなりの視点で解析すれば、思わぬ発見があるやもしれません。
 お好みの悪役キャラについてスレッドを立てていただいて、それについてさらにコメントがある方はレスしていただくといいと思っております。
では、とりあえず拙文を。

名無しの男/創竜伝最強の悪役

創竜伝第一巻に登場。全巻を通じて「竜堂兄弟に言うことをきかせた」たぶんただ一人の悪役。「三十代半ばの、石のような質感をもった男」

>「御前のご命令で、あなたさまを賓客としておむかえにあがりました。
>自動車が用意してございます。どうぞ私とご同道いただきたく存じます
>が」
>「いやだと言ったら?」
> そう始が言ってみると、男は石のような顔に笑いに似た表情をたたえ
>た。
>「この場で私は割腹します。御前のご命令をはたせなかった以上、真正の
>日本人として当然のこと」
>「くだらない死にかただな」
> むしろ怒りをこめて始はつぶやいたが、相手の、いわば静かな狂気とも
>呼ぶ態度に、いささか気おされて、皮肉を言う気になれなかった。

 この人、船津忠巌の「次席執事補」なのですが、どうしてどうして、親分より貫禄がある。「御前」に対しては皮肉の言いたい放題の竜堂始が、この人には「気おされて」るんですから。
 「強い子分」を出して「親分はもっと強い」と言わせるのは、バトルものの常道ですが、その点、このキャラは良くその役割を果たしている。名前もつけてもらっていないワリには、やけに存在感があります。
 問題は、ここまで盛り上げてもらった船津忠巌が、あれよあれよと底を割ってしまうこと。というわけで、もう一つ、「悪役列伝(船津忠巌/田中芳樹にもっとも憎まれた男)」というのを書かせてください。
 それでは、みなさん、良いお年を!

board3 - No.224

歌の「出典を正確に言ってみろ」

投稿者:あいばまこと
2000年12月31日(日) 19時17分

銀英伝にはいくつか歌が出てきますよね?
「ミッヘル…シュテーア
ウフ…リヒテルターク」エヴァンゼリン
「へいジャン=ピエール」
ポプラン(長い夜の見張り?)
「愛しい者よあなたは私を愛するか
」カリン(が母親に教えてもらった)
あとは外伝4のリンツの歌(
ドライ・ロットともう一つ恋人との別離を歌った物)があるでしょうか

これらは原典があるのでしょうか。それとも田中芳樹のオリジナ
ルなのでしょうか。ご存じでしたら教えてください。

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board3 - No.225

ちょっとチャレンジしてみました

投稿者:Merkatz
2001年01月03日(水) 21時26分

竜堂兄弟がどのような反論をするか、シミュレートしてみました。
いやー、彼らの思考は単純ですから、結構すらすらセリフが出てきました(笑)。
どんなもんでしょ?



一通り、竜堂兄弟の「社会評論」を聞き終わったあと、四姉妹の幹部、エヌ氏はおもむろに口を開いた。
「なるほど、君らの言うことはいちいちもっともだ。昨今の政治に無関心な大衆に比べて何と素晴らしい識見をお持ちか。小生はほとほと感心した。ならば一度、君ら自身で政治を行なってみてはどうかね。元は天界の竜族の王。現世においても立派な政治家としてやっていけると思うのだが」
エヌ氏は巧妙に竜堂兄弟の矛盾を衝いた。要はそれだけ大言壮語するなら、自分たちでやってみろ、実行の伴わない言葉は無責任だ、というわけだ。
しかし始の口から出た言葉は、エヌ氏の期待を裏切るものだった。
「いや、俺達は政治家にはならない。政治家になりたくて批評をしているんじゃない」
「なぜだ?それだけ批評できるくらいなら、少しは実行を伴って見せてもよいと小生は思うのだがね。口先だけで実行しようとしない輩が卑怯だということは、君ら自身が権力者を非難する常套句ではないのかね?」
今度は遠回りな表現ではなく、直截的に言葉を発したエヌ氏だった。
だが、竜堂兄弟は些かもたじろがなかった。
「そうだ。権力にありながら、有言不実行というのはけしからんと思う。だがそれはあくまで権力者の側の問題であって、俺達の問題じゃない。俺達は有権者、つまりは権力者を選ぶ側だ」
「だから小生は一度、権力者になってみてはと勧めている」
「勘違いしないで欲しい。俺は権力者になりたいんじゃない。ただ、平和に暮らしたいだけなんだ。政治批評は有権者としての当然の行為だ。選ぶ側が選ばれる側をあれこれ批判するのは、より良い代表者を選ぶためであって、自らが権力を握る為じゃない」
竜堂続が相づちを打つ。
「そうです。第一、実行できなければ批判してはいけないなんて、変じゃありませんか。それとも選挙民は何ら自分の頭で考えることなく、権力者を選べとでも?あなたがた四姉妹が考えそうなことですね。愚民は批判をするな。実行者たる自分たちが一番偉いというわけですか」
続の舌鋒は容赦がない。
しかし、この程度の反撃でひるむエヌ氏ではなかった。
「なるほど、批判もまた有権者の権利というわけですか。よろしい。その点についてはこれ以上、議論を重ねても無駄のようだ。だが、現実問題として、我々四姉妹は君らと特に対立点があるわけではないのだよ。小生が見るところ、腐敗政治は困るというのはむしろ一致点ですらないのかね?我々は自分たちのコントロールする範囲で、政治が動いてくれればそれでよい。つまり、君らに日本の政治を任せても、敵対行為さえ働かなければ、あとはどのような善政を布こうといっこうに構わないのだ」
さらにエヌ氏は続けた。
「ようするに君らに日本の政治を任せる。そのかわり、四姉妹に敵対しないで欲しい」
「断ると言ったら?」
「嫌とは言わさんよ。これは命令なんだ。小生としてはまことに心苦しい限りだが、君らが我々の申し出を断った場合、四姉妹の政治力・経済力の総力を挙げてどこかの国が潰れることになる。もちろん、これは「染血の夜」作戦の一環なのだが、少なくとも君らのせいで余計な流血が発生することになるね」
ごく冷ややかにエヌ氏は告げた。竜堂兄弟に選択の余地はない、そう言っているのだ。
「ひでぇ。自分たちの犯罪を俺達のせいにする気かよ。濡れ衣だあ」
非難の声を終があげた。だがどことなく緊張感がないように聞こえたのは終の性格のためだろうか。
「脅迫ですか?つくづくあなた達のやり方には呆れますね。それでよくぼく達と一致点があると言えるものです」
続が凍てつくような視線と共に抗議を送る。
「残念だが、お前達の思惑通りにはさせないぞ。そもそも「染血の夜」自体、お前達がもともと計画してたものじゃないか。それを俺達のせいにするなんて、ペテンも甚だしい。第一、仮にそれを呑んだとして、お前達が約束を守る保証がどこにある?今までさんざん汚い真似をして、今さら権力を餌に懐柔しようなんて虫が良すぎる。お前達の提案は絶対に受け入れない」
「ああ、では我々は罪もない人たちを犠牲にせねばなりませんね。繰り返しますが、君らに選択の余地はないんです。小生の提案にイエスと答えるしかない。信用するしないの問題ではないのですよ」
「どう脅しても無駄だ。お前達の提案に乗る気はない」
「ふう、さすがは天界の竜王は頑固でいらっしゃる。ですが、我々の政治力・経済力にどう立ち向かう気です?権力なくして我々に対抗することは不可能ですよ。いくら竜王の力を持ってしても、為替レートやクーデターに影響力を及ぼすことは不可能でしょう」
エヌ氏は理性的な人間だ。だから権力に対抗するに権力を持ってすると発想するのは、ごくごく当たり前のことだった。
「お前達の野望を阻止するのに、権力なんて必要じゃない。むしろ竜王の力こそ相応しい」
始はきっぱりと言い切った。
「なんですと!?証券市場の操作に竜王の超常力が役立つとお考えですと!?」
「馬鹿を言うな。俺達は力でお前達の野望を叩きつぶすと言ったんだ。四姉妹、つまりは牛種の陰謀に、まともなやり方じゃ反撃できない。竜王の能力こそそれが可能となるんだ」
「いやはや・・・、小生が考えていた以上に君らは愚かなようですね。いいですか?為替レートを弄って一国の経済を破綻させる。そういう類のことを全世界規模で行なうのですよ。そこに竜が吠えたところで、為替レートは1セントも動きませんし、破綻した経済はもちろん戻りません。その程度のことがお分かりにならないとは」
「それはお前達のボスが無事ならば、だろう。俺達は陰謀の本拠地を叩きつぶす。大将の首を取るのが勝利の近道とは、兵法の常道だ」
「四姉妹の息がかかっている所をことごとく潰して回る。そうすれば、嫌でもお前達は俺達を相手にせざるを得ないだろう。竜の力に対抗できるのは牛種のみだ。つまり、自動的にお前達のボスは俺達と戦わざるをえない」
「頭を潰せば体もまた死ぬ。竜の力で四姉妹を壊滅させることができる」
「だから、俺達はお前達の脅迫に屈することはない」
エヌ氏は呆然とした。自信たっぷりに言い切った始を見やりながら、頭を振った。こいつらはまともじゃない・・・。
「しかし、君らは自分たちの平和を確保したいだけだとおっしゃっていたではありませんか。ならば他人がどうなろうと関係ないでしょう。君らが日本の政治を行なえば、君らの平和は保証すると言っているのですよ。なぜ、わざわざ危険に飛び込む必要があるんです?」
なんとか彼らの矛盾を衝こうとするエヌ氏に、続は言い放った。
「今さらご都合主義なこと言わないでくださいよ。ここまでぼく達を巻き込んでおいて、陰謀まで聞かされて黙って見過ごせるわけがないでしょう。ましてや、それが因縁浅からぬ牛種とあってはね」
「安っぽいヒューマニズムかもしれない。自分たちの平和を望むことと反しているかもしれない。しかし、ここまでの戦いでいろいろ恩義を受けた人たちが居る。そういうのをまとめて返したいんでね。牛種を滅ぼすことによって」
始は決意を告げた。エヌ氏にとっては間違いなく自分勝手な理屈に聞こえたが、竜堂兄弟はそう考えていなかった。
「そうそう、やっぱり受けた恩は返さなくちゃね」
「ぼくも陰謀とかよく分からないけど、牛種を滅ぼすことが恩返しになるんなら、戦うよ」
終と余が同調した。
「そういうことだ。悪いがこれで四姉妹、いや牛種と俺達は晴れて敵同士となったわけだ。まあ、もともと敵同士みたいなものだったが・・・」
すっかり意気消沈したエヌ氏を後に、竜堂兄弟は悠然と部屋を出ていった・・・。

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board3 - No.226

Re225:「反創竜伝」第三の焦土戦略

投稿者:冒険風ライダー
2001年01月04日(木) 17時00分

>竜堂兄弟がどのような反論をするか、シミュレートしてみました。
>いやー、彼らの思考は単純ですから、結構すらすらセリフが出てきました(笑)。
>どんなもんでしょ?

 いや~、何度も爆笑しながら読ませていただきました。エヌ氏の主張に対する連中の反論ときたら「思想面における自己破綻の集積体」としか言いようがありませんね(笑)。あんな愚劣極まりない主張を堂々と展開して何とも思わないなどということはマトモな人間であればまずありえない話でしょうが、確かにあの低能兄弟であればあのような反応を返してきても不思議ではないでしょう。エヌ氏が「こいつらはまともじゃない」と匙を投げたくなる気持ちも充分過ぎるほどに理解できますね(笑)。
 それにしても、このシミュレーション小説では「ラスボスを倒せば為替レートが下落することも経済が破綻することもありえない」などと竜堂兄弟は考えているわけですか。こんな簡単な理論で経済の世界が動いているのであれば、世界各国の政府は何であそこまで経済政策に四苦八苦しているのやら(笑)。創竜伝本編の竜堂兄弟も似たような論法で動いていましたが、連中の超低レベルな思考法は、常識で計ることができないだけに却って読みにくいところがありますね。まあ狂人どものキチガイじみた行動を完全に理解できる人間などまずいないでしょうが(笑)。
 しかしこれほどまでに竜堂兄弟の自己破綻が無惨に描かれているシミュレーション小説ですら、現実の創竜伝本編の無惨さにはまだ完全には達していないというのが何とも言えないところですね(T_T)。何しろ創竜伝本編には「牛種を倒した後の事後処理は俺達ではなく世界各国の政府や国際機関がするべきことだ」などというトンデモない無責任発言があるのですから。自分達が四人姉妹ないし牛種を倒して「染血の夢」計画を中途で止めることによって発生するであろう世界的混乱に対する責任意識ぐらい、マトモな一般常識を持っていたら絶対に発生すると思うのですけど。

 さて、Merkatzさんのシミュレーション小説にあまりにも説得力がありすぎるので、私としては第1・第2の策の有効性を立証するだけの理論をこれ以上構築することができなくなってしまいました(T_T)。そんなわけでこの状況からさらに逆転可能な「第3の策」について考えてみました。
 第1・第2の策で竜堂兄弟を説得するのに失敗したとしても、連中の政治的・思想的正当性を完全に破壊してしまうことは充分に可能です。あのシミュレーション小説においてもそれは否定されておりません(というか全面的に肯定されているし(笑))。この政治的・思想的正当性の破綻を万人の目にさらし、竜堂兄弟を全面的な孤立状態に追いこむ。これが「第3の策」です。
 具体的にどうするかと言うと、あのシミュレーション小説内で竜堂兄弟が「ラスボスである牛種をおびき出すために、四人姉妹の息がかかっている所を潰して回る」などと公言していた3流兵法を、こちらが徹底的に逆利用してやるのです。
 まずは竜堂兄弟の行動を逐一監視して連中の動向を把握した上で、連中が破壊しに来そうな「四人姉妹の息がかかっている所」に、あらかじめ何人かのマスコミ関係者を「自然な形で」スタンバイさせます。そして彼らを使って竜堂兄弟の施設破壊シーンや敵に対する残虐行為(笑)を「生中継で」かつ「顔写真もつけて」全世界に向けて報道させるのです。ついでに竜堂兄弟の破壊活動に巻き込まれた被害者の数・施設破壊による悪影響(不況や失業者の発生など)・施設破壊に伴う物理的損害なども積極的に報道していけばさらに効果的でしょう。これによって、竜堂兄弟に「悪の破壊者」というレッテル貼りができる世界的なネガティブ・キャンペーンを展開することができ、竜堂兄弟に対する否定的な世論を世界的規模で醸成することができるのです。
 そもそも「四人姉妹の息がかかっている所」というのは、同時に「世界経済の要所(ウォール街とか中東の油田とか)」でもあるところが大半でしょうし、そういったところを重点的に破壊していかなければ竜堂兄弟の策は実現できないのですから、あの3流兵法を本気で実行しようとするのであれば、否応なしに竜堂兄弟は「人類にとって最悪の脅威となる悪意の破壊神」とならざるをえないわけですが、それは竜堂兄弟の思想形態と根本から矛盾することになってしまいます。何しろ自分達自身の手で「いろいろ恩義を受けた人たち」の生活を破壊してしまうことになるわけですから。いくら何でも今度ばかりは「全ては四人姉妹ないし牛種の責任である」と開き直るわけにはいきますまい。
 これはNo.183で日傘さんがおっしゃっていた「竜堂兄弟の感情に訴える策」の超拡大発展バージョンです。竜堂兄弟に対する否定的感情を世界的規模で醸成し、しかもそれが他でもない自分達自身の行動が発端になっているのであれば、さすがの竜堂兄弟も少しは堪えざるをえないでしょう。
 もちろん、完全に開き直った挙句、徹底した責任転嫁を行ってくる可能性も否定できませんが(笑)。

 それとさらに言及しておくと、そもそも竜堂兄弟が唱える3流兵法は成功の可能性が限りなくゼロであるばかりか、下手をすると竜堂兄弟自身が、結果として四人姉妹に代わって「染血の夢」計画を実行してしまう滑稽な結末にすら至ってしまうかもしれないシロモノなのです。
 前述したように「四人姉妹の息がかかっている所」というのは同時に「世界経済の要所」でもあるわけですが、そこを破壊することによって世界経済が混乱することは、四人姉妹ないし牛種が推進している「染血の夢」計画の主旨からすればむしろ望ましい事ですらあるのです。特に牛種の立場にしてみれば、たかだか「牛種の下僕」にすぎない四人姉妹の経済基盤がいくら破壊されたところで、そんなものは痛くも痒くもないばかりか、そもそも牛種の計画では四人姉妹はいずれ解体してしまう予定だったのですから(創竜伝8巻 P24)、予定が少し速まったというだけの感覚しか持つことはないでしょう。もちろん四人姉妹にとっては大ダメージもいいところですが、四人姉妹にとって牛種の命令は絶対ですから逆らうことはできません。だからあえて竜堂兄弟に四人姉妹の要所を徹底的に破壊させる「徹底した焦土戦略」という選択肢すら牛種は取ることが可能なのです。
 この状況では、牛種と四人姉妹は徹底して竜堂兄弟との交戦を避けるでしょう。竜堂兄弟が近づいてきたら徹底的に逃げまくり、あえて連中に破壊の限りを尽くさせてやれば良いのですし、同時平行して「染血の夢」計画を推進させることも可能です。さらには竜堂兄弟の破壊活動を大きくクローズアップすることによって「染血の夢」計画推進の全責任を竜堂兄弟に押しつけることすらできるのです。自分達の行動が、結果として四人姉妹ないし牛種の世界戦略に手を貸すことになってしまったと知った時、連中は一体どんな顔をするでしょうね(笑)。
 この「第3の焦土戦略」であれば、いやでも竜堂兄弟は自分達の愚かさに気づかざるを得ないでしょう。これでもなおかつ自らの責任や政治的・思想的破綻を全く自覚できないというのであれば、もはや連中をマトモに評する言葉は何もないと言わざるを得ないのですが……。

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board3 - No.227

反銀英伝 大逆転! リップシュタット戦役(50)

投稿者:不沈戦艦
2001年01月05日(金) 16時48分

「ふふふふふふふ。もちろん、それは解っている。ではどうすれば彼が攻めて
くるか、については少々頭を働かせれば卿らなら直ぐに解るだろう。そう難し
いことではない」

 それを聞いて、シュタイナーが得心のいった顔で口を開いた。

「つまり伯爵閣下は、準備が整ったところで、グリューネワルト伯爵夫人をわ
ざと逃がすおつもりなのですな?」

 タンネンベルク伯は無言で頷く。

「しかし・・・・・それよりは、グリューネワルト伯爵夫人を盾にして、こち
らの方から攻め掛かっていった方が良いのでは?仮にローエングラム侯がガイ
エスブルグに逃げ込んだとしても、こちらは彼の姉の命を握っているのですか
ら、彼にはどうしようもなくなるのでは、と思いますが」

 シュリーフェンは更に疑問を投げ掛ける。

「それなのだが、『アクシデント』が起こる可能性はないかな?グリューネワ
ルト伯爵夫人を乗せた艦を先頭に押し立てて攻撃した時、敵の一弾がその艦を
撃ち砕いた場合、どうなる?」

 復讐の鬼となるであろうラインハルトを想像せよ、という方向に話を向ける
タンネンベルク伯である。

「アクシデント、とおっしゃられましても・・・・・・・」

 シュリーフェンは困惑したような顔をして考え込んでしまう。他の人間もあ
まり意味が解らなかったようでほぼ全員が首を捻っているが、シュタイナーだ
けが直ぐに察した。

「なるほど。閣下が言っておられるのは、ローエングラム侯の部下が、主君の
意志を無視してグリューネワルト伯爵夫人を乗艦もろとも攻撃、死なせてしま
うかも知れぬ、ということですな?」

「それが正解だ。はっきり言うとそれをやりそうなのは、ローエングラム侯の
参謀長パウル・フォン・オーベルシュタイン中将だな。彼は、ローエングラム
侯の姉を想う感情を良しとはしまい。グリューネワルト伯爵夫人が彼の陣営の
覇業の障害になると考えた場合、躊躇せず伯爵夫人を抹殺するような男だ。し
かも、主君の承認を得ず、勝手に動く可能性もある。いや、正直言って今です
ら、オーベルシュタイン中将はグリューネワルト伯爵夫人の命を狙っているに
相違ないのだ。彼女を死なせてしまえば、ローエングラム侯は躊躇せず全力で
向かってくるだろう。私やリッテンハイム侯に対する怒りを沸騰させて。それ
では、あまり上手い状況にはならないと私は思う。何しろ人間とは、度の過ぎ
た怒りに駆られた場合、とんでもない底力を発揮したりするものだからだ。そ
のような危険は冒せまい」

 ローエングラム侯ラインハルトが姉もろともと攻撃してくる訳はないが、彼
の部下までそうとは限らない。「閣下の為」「味方の勝利の為」と、侯の意志
を無視して独断で動く者がいないとは限らないのだ。いや、タンネンベルク伯
の考えでは、オーベルシュタイン中将なら間違いなくそうするはず、というも
のである。
 何しろ、グリューネワルト伯爵夫人を死なせてしまった場合、ローエングラ
ム侯はどんな策を取ることもできるようになる。現在の状況は、それを感情的
に受け容れられないというローエングラム侯の心情を利用し、「盾」としてグ
リューネワルト伯爵夫人を使っているだけだ。タンネンベルク伯としては、グ
リューネワルト伯爵夫人の安全は、最大限に確保しておかなければならないの
である。「盾」として前線に出すというのは、伯としては「最悪の選択」と考
えていたのだ。

「そういう訳で、まだ状況はかなり苦しいし、こちらが取る策にも、そう選択
肢はないのだよ。それは、皆も承知しておいてもらいたい」

 ようやく納得するシュリーフェン以下である。

「・・・・・・・・しかし、小官一人で、最終的には十万以上になる兵力を統
括するのは、あまりに困難なような気がしますが。いかにガイエスブルグ組の
シュヴェーリン少将、リュトヴィッツ准将、マントイフェル准将、エーゼベッ
ク大佐が協力してくれるとは言うものの、もう一人か二人、こちらからも指揮
官クラスが必要なのではないか、と」

 レープは簡単に計算した。単純に十万を5人で割って二万、となると一個艦
隊の規模としては少々大きい。少なくとも6人以上で指揮を負担したいような
数量である。

「そうか。卿の言うことももっともだな。では、マッケンゼン大佐。貴官の任
務もそちらだ。あと、シュヴァルツェンベルク少将が帰ってきたら、彼もそち
らに回そう。それで、一人が統括する戦力は、一万五千以下になるな。一個艦
隊のレヴェルだ。これで良いな?」

 レープ准将はそれを聞いて頷く。その規模なら、問題なく統括できる、と自
信があったからである。

「しかし、シュヴェーリン閣下やシュヴァルツェンベルク閣下のように階級が
少将というのであればまだしも、大佐や准将の身で艦隊指揮というのでは、少々
辛くありませぬか?」

 マッケンゼン大佐が疑問を投げかけた。大佐は33歳、黒い髪に黒い瞳の持
ち主で、代々軍人を輩出している家の出だ。「職業軍人を多く輩出した貴族家」
という意味では、マッケンゼン家は家名をラインハルトに下賜される前のロー
エングラム家に近いものがある。さすがに職業軍人の家系だけあって、大佐の
見るからに頑丈そうな堅太りの体格は幼年学校から鍛え上げられたものだった
し、見事な髭をたくわえたいかつい顔つきにも、代々軍人の家系が持つ「凄み」
があった。何も銀河帝国に限った話ではなく、大佐の旧地球世紀時代の遠い祖
先の一人に、第一次世界大戦で東部戦線とバルカン半島の英雄として名を馳せ
た、アウグスト・フォン・マッケンゼン元帥がいる。マッケンゼン元帥がロシ
ア軍相手に勝利した、タンネンベルク会戦の名を持つ人物の下に、今大佐がい
ることは「巡り合わせ」とでも言うべきことであろうか。

「取り敢えず暫定的にだが、私の元帥府昇進とともに、現在少将の階級の者は
中将に、准将と大佐の者は少将に昇進させるつもりだ。艦隊指揮の為の階級は、
それで問題あるまい。ガイエスブルグ脱出組の方は、各人が一個艦隊の指揮に
専念して、総指揮はメルカッツ上級大将に執ってもらうという方針だ。なお、
戦役終了後は基本的に全員中将の階級となる。功績によってはそれ以上も考え
るので、皆にはそれを励みにして戦ってもらいたいと私は思っているが、それ
も良いな?」

 異存はなく、その場の全員が頷いた。タンネンベルク伯は「全員昇進させる」
と言っているので、異存がある者などいるはずもなかった。


(以下続く)

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