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- board4 - No.5578
Re:銀英伝キャラの女性観
- 投稿者:梁
- 2004年04月26日(月) 06時36分
はじめてきたのですが、一番上にあったので読ませていただきました。せっかくですので、失礼ながら、見解を述べさせていただきます。
ラインハルトがロイエンタールに何も言わないのは、自由恋愛だからだと思います。他人の恋愛観に口を出せるほど、ラインハルトは経験をつんでいなしし、また興味もないのだと思います。皇帝からくるのは「命令」であって逆らえませんが、ロイエンタールがするのは「お誘い」であって、決める権利は女性側にありますから、その後どうなろうとかまわないんじゃないでしょうか?
①に対してですが、ロイエンタール自身も、エルフリーデの件に関しては、他の恋愛ごととは「別件」として扱っているのがわかります。わざわざミッターマイヤーに話をしていますし。そこらを歩いている女性を無差別に捕まえて、ってわけでもないですしね。一応、暗殺に来たほうにも責任が生じるでしょう。
②アンネローゼは幾度も、自分の人生をあきらめたような言葉を漏らします。ラインハルトたちは私の分もがんばって生きて、みたいなですね。それにキルヒアイスの件もあるわけですし。もし完全に仮定の話で、「皇帝を愛していたら…」という場合に関してですが、そしたらラインハルトは帝国の転覆なんて考えずに物語りは終了…って気がします。その仮定はちょっと無理すぎでは、と失礼ながら思います。
ミッターマイヤーの態度も、やはり「他人のの恋愛には口出ししない」という姿勢からだと思います。どんなにひどい振りかたをしようと、「強姦」と「恋愛」はやはり区別しないとですね。
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- board4 - No.5579
Re:銀英伝キャラの女性観
- 投稿者:イッチー
- 2004年04月26日(月) 14時09分
梁さま、はじめまして。
権力にものを言わせたフリードリヒ4世と自由恋愛のロイエンタールは違うという反論は予想しておりました。私もそれはわかっておりますが、どうも司令官の立場でありながら、兵士の婦女暴行事件に自ら介入した正義感の強いミッターマイヤーやその他将兵とロイエンタールとのイメージとの齟齬がぬぐいきれないのですよ。
皇帝からくるのは「命令」であって逆らえませんが、ロイエンタールがするのは「お誘い」であって、決める権利は女性側にありますから、その後どうなろうとかまわないんじゃないでしょうか?
ロイエンタールは自ら「お誘い」したことはないと思いますが。向こうから勝手に惚れるというパターンがすべてだと思いますので、その点でロイエンタールの罪はないと思いますが、初めからその気がないのなら(自分で恋におぼれることはないとわかっているのですから)、相手にしなきゃいいだけの話ではないですか?実際に、「モテモテの俺様が相手してやったのだから、ありがたく思え」なんて言う男がいたとしたら、鼻持ちならなくて、世の怒りをかうと思いますが、ロイエンタールだけかえって良く思われているのは理解に苦しみます。
> ①に対してですが、ロイエンタール自身も、エルフリーデの件に関しては、他の恋愛ごととは「別件」として扱っているのがわかります。わざわざミッターマイヤーに話をしていますし。そこらを歩いている女性を無差別に捕まえて、ってわけでもないですしね。一応、暗殺に来たほうにも責任が生じるでしょう。
暗殺しに行ったら、強姦されても仕方がないとでもいうんですか?官憲につきだせばいいだけの話じゃないでしょうか。
> ②アンネローゼは幾度も、自分の人生をあきらめたような言葉を漏らします。ラインハルトたちは私の分もがんばって生きて、みたいなですね。それにキルヒアイスの件もあるわけですし。もし完全に仮定の話で、「皇帝を愛していたら…」という場合に関してですが、そしたらラインハルトは帝国の転覆なんて考えずに物語りは終了…って気がします。その仮定はちょっと無理すぎでは、と失礼ながら思います。
銀英伝はラインハルトの視点で書かれているのですから、アンネローゼが不幸に書かれているのは当然で、それが本当の姿かどうかはわからないではありませんか。
> ミッターマイヤーの態度も、やはり「他人のの恋愛には口出ししない」という姿勢からだと思います。どんなにひどい振りかたをしようと、「強姦」と「恋愛」はやはり区別しないとですね。
ミッターマイヤーがそんな話のわかる御仁だとしたら、上官としてもっと「大人」な態度を部下に対してもとれると思いますが。たとえば、フェザーン進駐の件は、あういう細かい事件は下部に処理を命じるべきであって、自ら乗り込んでいく問題ではないでしょう。(そういうことをしていると、下部で問題が処理されずに、すべて司令官に持ち込まれることになる)
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- board4 - No.5580
Re:銀英伝キャラの女性観
- 投稿者:勇悟
- 2004年04月27日(火) 08時50分
「兵士が占領下の民衆に暴行を働く」事は公の問題です。
軍部の威信にかかわる問題であり、それは留めてしかる問題です。
そのケースを以って非難する為には、
「ロイエンタールが公権力を傘にきて不当な暴行を働いた」
事例をはっきり提示する必要があると思われますが。
ラインハルトの未熟な恋愛観は既に作中でも指摘されているところですが、
全て彼の独り善がりだったとするのも、少々無理があるでしょう。
だとすれば、なんとアンネローゼは主体性の無い女性でありましょう。
「自分は望まぬ婚姻をさせられて不幸だった!」
とアンネローゼが名言する必要があった、そう仰るのでしょうか。
どうも結論先にありきになっている観が否めず、一面的な見方のような気がするのですが。
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- board4 - No.5581
Re:銀英伝キャラの女性観
- 投稿者:イッチー
- 2004年04月27日(火) 09時22分
私が感じている違和感を、うまく説明出来ていないと、私自身、認めます。今後も議論を続けても、うまくかみ合うことはないと思いますので、一旦、取り下げて、自分自身でもう一度、私が感じる違和感がどこから来るのかをよく考えてみたいと思います。梁さま・勇悟さま、貴重なご意見ありがとうございました。
-
- board4 - No.5583
ある掲示板を見て
- 投稿者:トマト
- 2004年04月28日(水) 09時45分
今現在の田中芳樹の執筆状況が書かれていた(爆)
現在三章まで・・・。
全体の構想は10章だそうだ。
今それだと、書きあがるのはいつのなるんだろう?
考えると恐ろしい。
夏なんだろうか。中国物が出るのは、その分他の予定が押すということは・・・。アルスラーンは今年はないのかもしれないな(爆死)
何よりも文体を代えて中国物を書いているらしい
楽しみな半分でどんなものになるのか
少し心配で少し興味津々
長い心でまつことにします。
- 親記事No.5503スレッドの返信投稿
- board4 - No.5584
Re:オーベルシュタインの遺言
- 投稿者:よりこ
- 2004年04月28日(水) 22時07分
こんにちわ、よりこです。
異論や反論が出てくるかな、と思って待っていたのですけど、現時点ではないまま、今回で「オーベルシュタインの遺言」について私の書き込みは終了します。
「オーベルシュタインの遺言」と新参者さんの下記のご意見について、原著の記述を読み直しつつもう一度考えてみました。
< ミッターマイヤやビッテンフェルトが彼を嫌いなのは、彼を理解できてないから。
オーベルシュタインも理解されようとしないので、嫌われるのは当然の結果なのですが(苦笑) >
「オーベルシュタイン閣下が他者に嫌われる」ことについて3つのデータを提示します。
データA
(銀英伝外伝 星を砕く者 第五章 間奏曲 I)
<「あのくたばりぞこない……」
年長の軍務尚書(※エーレンベルク元帥)をののしる司令長官(※ミュッケンベルガー元帥)のうなり声に、陪席の次席副官が奇妙な視線を向けた。
「は、何かおっしゃいましたか、閣下」
「何も言ってはおらん。出しゃばるな」
副官の青白い顔までもが、この時のミュッケンベルガーには不快の種だった。こいつも貴族の出身で、生活や食事には何ら不自由がないはずなのに、なぜこうも栄養の悪そうな顔をしているのだ。しかも、まだ若いくせに頭髪が彼と同じ半白なのである。目つきもよくない。義眼だと聞いてはいるが、同情する気にもなれなかった。ひとたび気になると、この次席副官の存在それ自体が耐えがたいものに思えてくる。
宇宙艦隊司令部に到着して、まずミュッケンベルガー元帥がやったことは、この次席副官を更迭して、統帥本部の情報処理課に転属させてしまったことである。着任わずか一ヶ月で上司の不興──というより、とばっちり──を買った三〇代半ばの大佐は、ごく冷淡に命令を受領すると、未練も残さず、職場を移っていった。
そうなると、自己の存在を軽視されたような気がして、ミュッケンベルガーはまた不快になったが、いつまでも拘泥してはいられなかった。山積する事務が、彼の採決と処理を待っていたのである。 >
[余談]
上記では誰かって明記されてませんけど「ミュッケンベルガーのとばっちりを買って更迭された次席副官」が、オーベルシュタインその人だっていうのは分かりますよね?
(私はこの文章を初めて読んだ時「この次席副官って、オーベルシュタインのことだぁ♪」とウケて大笑いしてしまいました。今でも凄く気に入ってるシーンの一つです)
データB
(銀英伝 落日篇 第四章 平和へ、流血経由 I)
< 「皇妃、予はオーベルシュタインを好いたことは一度もないのだ。それなのに、顧みると、もっとも多くあの男の進言にしたがってきたような気がする。あの男は、いつも反論の余地を与えぬほど、正論を主張するからだ」
ラインハルトの述懐が、ヒルダの脳裏に、ある映像を結ばせた。正論を、正論だけを文章として彫りこんだ、永久凍土上の石版。その正しさは充分に承知されながら、誰もが、近づくことを拒む。幾世紀かが経過して、後代の人々は、その正しさを客観的に、つまりある意味では無責任に、称揚するかもしれない。
(中略)
それにしても、パウル・フォン・オーベルシュタイン元帥は、皇帝ラインハルトの忠臣なのであろうか。
それは深刻で、しかも奇妙な命題であった。
オーベルシュタインが、軍務尚書として、きわめて貴重な人材であることは事実である。彼を嫌悪し忌避している者でも、それは認めざるをえない。表現を変えれば、傑出した才腕にもかかわらず、彼はほとんど誰からも好かれてはいなかった。彼自身、他者から好かれようと思ってはいなかったようである。その結果というべきであろうか、軍務省の官僚たちからは、すくなくとも尊敬と服従を全面的に獲得していた。軍務省の内部は、規律と勤勉と清潔とに支配され、巨大な機構は一ミクロンの狂いも遅滞もなく、帝国の軍事行政を運営しつづけている。ちなみに、軍務省の職員に胃痛患者が多いことは、社会保険局の統計によって実証されている。 >
データC
(銀英伝 落日篇 第四章 平和へ、流血経由 IV)
< 惑星ハイネセンにおける「オーベルシュタインの草刈り」について、イゼルローンが受領した情報は、早く、しかも豊富だった。帝国軍は、この件に関して情報封鎖をおこなわなかったのである。意図するところは明瞭であって、事実を知らせることによってイゼルローン共和政府と革命軍を動揺させようというのであった。開城に応じるのか否か、その議論によってイゼルローン内部が分裂するという計算もあるであろう。
帝国軍、正確には軍務尚書オーベルシュタイン元帥が立てた方程式は、途中までは正確に機能した。イゼルローンは沸騰し、フレデリカ・G・ヤンやユリアン・ミンツをはじめとする政府と軍部の代表者たちは、会議室に顔を並べて、対策を協議した。とはいっても、最初の三〇分ほどは、オーベルシュタイン元帥に対する多彩な悪口雑言が、一〇〇ダースほど記録されたにとどまる。 >
…と、こんな感じでオーベルシュタイン閣下は上役にも同僚にも嫌われ、部下には胃痛になるほど畏怖され、イゼルローンの面々からも多彩な悪口雑言を一〇〇ダースも言われた、と作中では表現されてますけど、ふと思い付いたことがあるんです。
新参者さんが5521で< 死ぬ間際なって遺書のことを話したのは、死期を悟って、自分に尽くしてくれた(なついてくれた)者達が気になったんじゃないかと思います。逆に言えば、オーベルシュタインと仲が良かったのは、この1人と1匹だけ。。。 >と、おっしゃっり、私も5522で< 自分で書いておいててナンですけど…良かった…誰一人も信用できないまま人生が終わる、なんて哀しすぎますから… >と書いたように、田中芳樹氏は「オーベルシュタインにも老犬だけじゃなく、心を通わせた人間が存在していたんだよ。死に至るまで孤独だったわけじゃないんだ」ということを表現しないで終わらせたくなかったのではないか。
それが、あの「オーベルシュタインの遺言」ではなかったか、って。
う~ん、単なる思い付きでハッキリした根拠があるわけじゃないんですけど…(^-^;)
それでは、この辺りでお開きにします。
お題を提供してくださったアサミさん、お付き合いくださった新Q太郎さん、ROMさん、新参者さん、菅根さん、ありがとうございました。m(_ _)m
-
- board4 - No.5585
同盟クーデターについての if
- 投稿者:よりこ
- 2004年04月29日(木) 15時17分
皆さま、こんにちわ、よりこです。
よろしくお願いします。
「何だか近ごろ銀英伝の話題だらけだわ」と言いながらも、私が書き込む話題も銀英伝ネタです…(^-^;)
まずは下の4つの文章をご覧ください。
データA
(銀英伝 野望篇 第一章 嵐の前 V)
< ミハイロフの店──というのは、いささか誇大広告というものだろう。それは労働者の多い下町の一角、コートウェル公園の入口にある終日営業のささやかなスタンドである。
貧しいが若さと希望だけはたっぷりある恋人たちが、この店で食べものや飲みものを買いこんで、常夜灯の下のベンチで話しこんだりしている。そんな場所なのだ。
軍隊でもコックをしていた働き者のミハイロフは、いそがしいときには客の顔などいちいち見ていない。老人と青年と少年という変わったとりあわせの客が来たときも、照明が暗かったこともあって、気にもとめなかった。
白身魚のフライ、フレンチ・フライド・ポテト、キッシュパイ、それにミルクティーを注文すると、三人づれは、ベンチのひとつを占領して、飲んだりたべたりしはじめた。三世代同行のピクニックといったところである。なにしろ、三人ともパーティーでろくに食べていなかったので……。
「やれやれ、こんなふうにこんな場所で人目をさけて話さねばならんとは、不便なことだな」
「私はけっこう楽しみましたよ。士官学校時代を思い出しますね。門限破りの方法に、ない知恵をしぼったものです」
老人が同盟軍宇宙艦隊司令長官のビュコック大将、青年がイゼルローン要塞司令官のヤン大将であることを知ったら、店主のミハイロフも他の客も声を失ったことだろう。ふたりの軍幹部は、それぞれパーティーの座を脱けだして、この場で落ちあったのである。
フィッシュ・アンド・ホテトという軽食の形態には郷愁をそそるものがあった。士官学校時代、ヤンは悪友のジャン・ロベール・ラップと、寮を抜けだしては、安くてうまいこの種のスタンドで青春期の食欲を満たしたものだ。
ワインで満足していればよいものを、シュナップスなどという強烈な蒸留酒を注文し、店をでたとたん、歩道に引っくりかえって動けなくなった。店主からの連絡で、ジェシカ・エドワーズが駆けつけ、厳格な教官たちに見つからないよう、店の奥に運ばせて看護してくれた。
「ロベール・ラップ、ヤン・ウェンリー、目をさまして、しゃっきりなさい。夜明けまでに寮にもどらないと、どうなっても知らなくってよ!」
宿酔[ふつかよい]の若者たちのためにジェシカがいれてくれたコーヒーは、ブラックであったのにもかかわらず、奇妙に甘かった……。
そのロベール・ラップは、昨年、アスターテ会戦で戦死した。彼と婚約していたジェシカ・エドワーズは、テルヌーゼン惑星区から代議員に選出され、反戦平和派の急先鋒として同盟議会に席を占めている。
なにもかも変わる。時がただ時としての歩みをつづけるうちに、子供は大人になり、成人は老い、取りかえしえないものだけが増えていくのだ。
老提督の声が古い夢想を破った。
「さて、ここなら誰に知られることもない。話を聞くとしようか」
「そうですね」
いくつめかの白身魚のフライを、ミルクティーで流しこむと、おもむろにヤンは口を開いた。
「近いうちにこの国でクーデターが起こる可能性があります」
何気なさそうな口調だったが、口もとに運びかけた老提督の手が空中で急停止するには充分だった。
「クーデターじゃと?」
「ええ」
それがヤンの達した結論だったのだ。彼は淡々と、しかし詳細に、彼の洞察したローエングラム侯ラインハルトの意図を説明した。クーデターを起こす者は、自分がローエングラム侯のコントロールを受けているなどとは知らないだろう、ということも。ビュコックは納得し、うなずいた。
「なるほど、しごく合理的だ。だがクーデターなんぞが成功すると、ローエングラム侯は思っとるのだろうか」
「成功しなくてもよいのです、ローエングラム侯にとっては。彼にしてみれば、同盟軍を分裂させること自体に意義があるんですから」
「なるほど」 >
データB
(銀英伝 野望篇 第三章 ヤン艦隊出動 II)
< 三月三〇日・クブルスリー統合作戦本部長暗殺未遂
四月 三日・惑星ネプティスにおいて軍の一部が武力蜂起、占拠
四月 五日・惑星カッファーにおいて武力叛乱
四月 六日・銀河帝国において大規模な内戦発生
四月 八日・惑星パルメレンド、叛乱勢力に占拠さる
四月一〇日・惑星シャンプール、武装勢力の占領下におかれる
……イゼルローン要塞にあって、ヤンはこれらの事件をじっと観察していた。 >
データC
(銀英伝 野望篇 第五章 ドーリア星域の会戦 IV)
< ハイネセン記念スタジアムは、それがある惑星と同じく、建国の父の名をとってつけられた。たびたび国家的な式典がおこなわれる場所であり、国家意識の高揚をはかるうえからもこの名称が与えられたのである。独創性に欠ける名もまたやむをえない。
その日、六月二一日。
三〇万人の観客を収容する大スタジアムに、市民たちが集合した。人々の流れは朝からはじまり、正午には二〇万人に達した。
戒厳令は、多人数の集会を禁止している。公然とそれを無視する行動に、救国軍事会議は驚き、集会の目的を知って今度は怒りに青ざめた。「暴力による支配に反対し、平和と自由を回復させる市民集会」というスローガンの、なんて大胆で挑戦的なことだろう。
首謀者は誰か──。
それを探った結果、彼らはうなり声をあげた。
「あの女か!」
ジェシカ・エドワーズ。テルヌーゼン星区選出の議員で、反戦派の急先鋒。かつて公衆の面前で、当時のトリューニヒト国防委員長を弾劾し、戦争と軍隊の愚劣さを批判してやまない女性なのだ。戒厳令にもかかわらず、それまでに拘禁されずにいたのは、政府と郡部の最高幹部をとらえるまでが実際の限界で、議会内の野党勢力にまで手がまわらなかったからである。
集会を解散させ、エドワーズ議員を拘禁すべし。その命令をうけ、三〇〇〇の武装兵をひきいてスタジアムに急行したのはクリスチアン大佐だったが、この人選を、後刻、救国軍事会議の幹部は後悔することなる。
最初から、クリスチアン大佐は、群衆をおだやかにさとす気がなかった。
武装兵をひきいてスタジアムに乗りこみ、入り口をかため、銃で群衆を威圧すると、クリスチアン大佐はジェシカをつれてくるように部下に命じた。
ジェシカは自分から大佐の前に現われ、妥協のない口調で、なぜ武装兵が平和的な市民の集会を邪魔するのか、と訊ねた。
(中略)
「死ぬ覚悟もないくせに、でかい口をたたきやがって……さあ、いってみろ、平和は軍事力によってのみ保たれる、武器なき平和などありえない、とな。言ってみろ。言え!」
「およしなさい!」
倒れた青年の頭をささえていたジェシカが、青年をそっと横たえて立ちあがった。怒りの炎が両目にきらめくのを大佐は見た。
「死ぬ覚悟があれば、どんな愚かなこと、どんなひどいことをやってもいいというの?」
「黙れ、この……」
「暴力によって自ら信じる正義を他人に強制する種類の人間がいるわ。大なるものは銀河帝国の始祖ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムから、小は大佐、あなたに至るまで……あなたはルドルフの不肖の弟子よ。それを自覚なさい。そしている資格のない場所から出ておいき!」
「……この女!」
あえいだ瞬間、理性の糸が音もなく切れた。すでにふたりの血にまみれたブラスターが、ジェシカの顔にたたきつけられた。三度、四度、力まかせにたたきつける大佐の両眼からは正気の光が失われていた。皮膚が裂け、血が飛んで点々と大佐の軍服を彩る。
市民たちも兵士たちも、大佐の狂乱を呆然と眺めていたが、鮮血にまみれて倒れたジェシカの顔を、大佐がさらに軍靴で踏みつけたとき、爆発するような叫びがおこって、ひとりの市民が大佐に身体をぶつけた。大佐はよろめき、怒りに頬をゆがめながら、男の背に銃を振りおろす。鈍い音は、だが、無数の怒号と、暴れだした人々の足音にかき消された。本格的な衝突になった。大佐の姿は群衆の足下に消えた。 >
データD
(銀英伝外伝 ユリアンのイゼルローン日記 第八章 ベンチの秘密会議)
< 七九七年三月二〇日
昨日はわざわざヤン提督がハイネセンまでやってきた、その重要な用件(※データAのビュコックとの会見)が、ようやくすんだ。明日はハイネセンを発してイゼルローンまでもどらなくてはならない。何となく、今日はエアポケットみたいな一日だ。
と、朝のうちはそう思っていた。ところがそうもいかなかったのだ。
ヤン提督自身も、たぶんのんびりと提督らしく一日の余暇を楽しむつもりだったと思うけど、食後のお茶を飲み終えると、あたふたと身づくろいして飛びだしていった。「お昼は適当に食べておいてくれ」と言い残して。あのジェシカ・エドワーズ女史からTV電話がかかってきたのだ。
その直後だった。フレデリカ・グリーンヒル大尉からTV電話がかかってきたのは。提督の不在を確認した大尉は、すこし失望したようだった。なぜか今日はヤン提督のもてること。二〇代の最後の日々にささやかな栄光というべきかしら。
(中略)
ヤン提督とエドワーズ女史との間では、「おとなどうし」の話があったのだろうか。そうかもしれないけど、亡くなった友人の婚約者に会う暇があったら、グリーンヒル大尉と食事でもした方が、ずっと、何というか、建設的だとぼくは信じる。エドワーズ女史は立派な人だけど、ぼくはもう一方の女性をひいきにしているのだ。
それにしても、グリーンヒル大尉はお父さんのお相手をしなくてもいいのだろうか。ちょっと気になったけど、
「父も何か妙に忙しいらしくてね、今日は振られてばかり」
ということだった。おかげで、ぼくは望外のごちそうと、立体映画と、街の散歩を手に入れることができたわけだ。
……で、今夜は、のこのこ帰ってきたヤン提督に、一昨日におとらず“つんけん”してしまったけど、これは私心に発するものではない。あくまで騎士道精神のゆえだ、と思っている。 >
ご覧になって、おそらくお気づきになった方も多いと思いますけど、上の4つのデータに基づくと、同盟クーデター前、もっと正確には、宇宙歴七九七年三月一九日・ヤンが“ビュコックに同盟内でラインハルトが策謀するクーデターが起こる”ことを話した翌日、そして三月三〇日・クーデターの皮切りとなる“クブルスリー統合作戦本部長暗殺未遂事件”が起きる十日前、さらに六月二一日・死者だけでも市民二万人余、兵士一五〇〇人に上った“スタジアムの虐殺事件”が起きる三ヶ月前の『三月二〇日にハイネセンでヤン・ウェンリーとジェシカ・エドワーズの二人は会っていた』のです。
これに気づいた時、私はこう思ったんです。
「ヤンはジェシカに、クーデターの話をしなかったのか?」
「なぜクーデターのことを言わなかったのか?」
「ヤンとジェシカが連携をとってクーデターに対処するのは不可能だったのか?」
「もしジェシカが、ヤンからクーデターのことを事前に聞かされて知っていたなら、どのように行動していたんだろう? もしかしたら“スタジアムの虐殺”も起きなかったのでは?」
etc etc...
『もしジェシカがヤンからクーデターのことを事前に聞かされて知っていたなら』
という前提で、『同盟クーデターはどのように作中と変わったか』というのは、思考実験のネタにはならないでしょうか?
原作と違うのは、「ジェシカがヤンからクーデターのことを事前に聞かされて知っていること」だけで、他の事柄(黒幕がラインハルトであること、救国軍事会議の議長がグリーンヒル大将であることetc...)は一切変化なし、です。
皆さまのご見解を教えてくださると嬉しいです。
- 親記事No.5585スレッドの返信投稿
- board4 - No.5586
Re:同盟クーデターについての if
- 投稿者:イッチー
- 2004年04月29日(木) 18時03分
よりこさまの書き込みにお返事するのは初めてだと思います。
> これに気づいた時、私はこう思ったんです。
> 「ヤンはジェシカに、クーデターの話をしなかったのか?」
> 「なぜクーデターのことを言わなかったのか?」
> 「ヤンとジェシカが連携をとってクーデターに対処するのは不可能だったのか?」
> 「もしジェシカが、ヤンからクーデターのことを事前に聞かされて知っていたなら、どのように行動していたんだろう? もしかしたら“スタジアムの虐殺”も起きなかったのでは?」
> etc etc...
>
> 『もしジェシカがヤンからクーデターのことを事前に聞かされて知っていたなら』
> という前提で、『同盟クーデターはどのように作中と変わったか』というのは、思考実験のネタにはならないでしょうか?
> 原作と違うのは、「ジェシカがヤンからクーデターのことを事前に聞かされて知っていること」だけで、他の事柄(黒幕がラインハルトであること、救国軍事会議の議長がグリーンヒル大将であることetc...)は一切変化なし、です。
>
> 皆さまのご見解を教えてくださると嬉しいです。
仮に、ヤンがジェシカにクーデターの可能性を話したところで、ジェシカに何が出来たでしょうか?ジェシカに一野党代議士に過ぎないうえに、クーデターの証拠は何もないわけですから、ジェシカがクーデターの可能性を説いたところで、政府や議会の人間に一笑にふされて終わりだと思います。もし、ジェシカがヤンの名前を出してクーデターの可能性を説けば、世論の注目は集めるでしょうが、軍が目の敵にする反戦派に接触したことがばれて、ヤンの立場は苦しいものになると思われます。ヤンはジェシカにクーデターの可能性を話しても、メリットがないうえに、万が一、クーデター派にジェシカが狙われることを心配して、あえて話さなかったのではないでしょうか。
ジェシカに話すぐらいであったら、ネグロポンティ国防委員長かトリュー二ヒト議長に話したほうがよほど効果的だと思われます。
- 親記事No.5585スレッドの返信投稿
- board4 - No.5587
Re:同盟クーデターについての if
- 投稿者:SAI
- 2004年04月30日(金) 07時59分
展開そのものはなにも変わらないと思います。ジェシカがそう
主張しても誰も信じてはくれないでしょう。それどころか、
ジェシカ自身がラインハルトの回し者扱いされる可能性が
あります。
国家存亡の危機に際し反戦平和運動をやり、さらに
軍の中枢を名指しで糾弾する、婚約者が戦死した女闘士。
国民の目にはどう映るでしょうか?しかも確たる証拠もなしに。
名目上と、そしてヤンの理想はともかく、この時点で実質的に
権力をにぎってるのは軍です。激しいネガティブキャンペーンと
でっち上げによって動きが封じられてる間にクーデターの日が来る
でしょうね。
ひょっとしたらスパイ罪あたりでジェシカが投獄され、スタジアムの
虐殺には加われず、生き残るという、まさに人の運命は皮肉なものだ
という結末にはなるかもしれませんが、後の展開は変わらないでしょう
ね。
- 親記事No.5585スレッドの返信投稿
- board4 - No.5588
Re:同盟クーデターについての if
- 投稿者:蜃気楼3rd
- 2004年04月30日(金) 10時48分
> ひょっとしたらスパイ罪あたりでジェシカが投獄され、スタジアムの
> 虐殺には加われず、生き残るという、まさに人の運命は皮肉なものだ
> という結末にはなるかもしれませんが、後の展開は変わらないでしょう
> ね。
>
銀英伝という物語とってはそうですが、ジェシカ・エドワーズというキャラクターにとっては違うと思います。
ジェシカがあそこで死ななかった場合、3巻以降での彼女の立場は非常に苦しいものにならざるをえません。
「講和」という選択肢がない以上「反戦=降伏」ですから。
ジェシカが3巻以降も生き延びた場合転向するか醜態をさらすかのどちらかしかないわけですから、彼女を美しい偶像にするためには2巻のうちに殺すしかありません。
そう考えると彼女を殺したのは作者なのかもしれません。
-
- board4 - No.5589
改名の挨拶
- 投稿者:冬至楼均
- 2004年04月30日(金) 11時05分
旧名(dagger)は色々と縁起が悪いので改名しました。
特に以前とキャラを変えるつもりもありませんので、今後とも宜しく。
- 親記事No.5585スレッドの返信投稿
- board4 - No.5590
心理的な伏線
- 投稿者:冬至楼均
- 2004年04月30日(金) 11時53分
> 『もしジェシカがヤンからクーデターのことを事前に聞かされて知っていたなら』
> という前提で、『同盟クーデターはどのように作中と変わったか』というのは、思考実験のネタにはならないでしょうか?
> 原作と違うのは、「ジェシカがヤンからクーデターのことを事前に聞かされて知っていること」だけで、他の事柄(黒幕がラインハルトであること、救国軍事会議の議長がグリーンヒル大将であることetc...)は一切変化なし、です。
>
> 皆さまのご見解を教えてくださると嬉しいです。
初めまして。
興味深いネタなので混ぜて戴きます。
ヤンはラインハルトによるクーデター煽動を予想していましたが、それがどのような形で起こるかまでは想定出来ませんでした。
あの状況でクーデターが起こるとしたら、反戦派野党による可能性が有ると思います。
実際に起こったものは軍の発言力を強化する方向でしたが、この方がどちらに転んでも損が無いという点で有効な気がします。
されヤンがこのケースを思い描いたとしたら、ジェシカもこのクーデターに組み込まれる公算が高いですから、ジェシカに教えるは微妙です。
さて、よりこさんの仮定を生かすなら、
1)ヤンはラインハルトによるクーデター煽動をほのめかしてジェシカの行動に注意を喚起する。
2)自分が疑われているとは気付かないジェシカは慎重な行動をするが、当然にクーデターは止められない。なにしろヤンから直々に話を聞いていたビュコック提督にすら無理だったのですから。
3)クーデターを止められなかった事に責任感を感じたジェシカは抵抗運動を組織し、結果としてスタジアムの虐殺で命を落とす。彼女は恐らくクーデターを予想していたことで発言力を強めていたであろう。
4)ジェシカの死を知ったヤンは「余計なことを言ってしまった」と考えて沈黙してしまう。
要するに表層的な流れは変わらないのですが、
ジェシカの死に強い自責の念を覚えたヤンは、計画者であるラインハルトに八つ当たり的な恨みを覚えるでしょう。
よってバーミリオンで躊躇うことなくブリュンヒルトを沈めてしまう。
と言うのは如何でしょう。
- 親記事No.5585スレッドの返信投稿
- board4 - No.5591
Re:心理的な伏線
- 投稿者:SAI
- 2004年05月01日(土) 06時13分
> あの状況でクーデターが起こるとしたら、反戦派野党による可能性が有ると思います。
それはさすがにヤンも考えないでしょう。一応ヤンも士官学校を
卒業できた以上、一通りの軍事常識ぐらいは知ってるはずです。
反戦派野党がクーデターを起こしたところで軍の賛同を得られる
わけないですから、首都防衛隊に簡単に鎮圧されるだけ。
その可能性は無いと判断するでしょう。その点を考慮してジェシカ
に教えないとは考えにくいです。
> ジェシカの死に強い自責の念を覚えたヤンは、計画者であるラインハルトに八つ当たり的な恨みを覚えるでしょう。
> よってバーミリオンで躊躇うことなくブリュンヒルトを沈めてしまう。
本編でも 八つ当たり的な恨みを覚えてもおかしくないのですが
やってない以上、やらない可能性が高いとおもいます。そもそも
ジェシカのことをヤンはほとんど思い出してませんし。
私は沈めない可能性が高いと思います。
- 親記事No.5585スレッドの返信投稿
- board4 - No.5592
5586,5587,5590へのレス
- 投稿者:よりこ
- 2004年05月01日(土) 12時02分
こんにちわ、イッチーさん、SAIさん、冬至楼均さん。
やり取りするのは初めての方ばかりですね。
ご参加ありがとうございますm(_ _)m
とっても嬉しいです♪(もしかして全然レスが付かないかも…って思ってましたから、私)
前回、大事なデータを書き込むのを忘れてましたので、追加します。
データE
(銀英伝 野望篇 第三章 ヤン艦隊出動 II)
< 四月一三日になって、ハイネセンから超光速通信がはいり、ドーソン大将からの命令がもたらされた。
「ヤン提督はイゼルローン駐留艦隊をひきい、ネプティス、カッファー、パルメレンド、シャンプールの叛乱を可及的すみやかに鎮定せよ」
「四ヶ所の叛乱すべてを?」
さすがにヤンは驚いた。いずれ出動命令がくだるとは思っていたが、一ヶ所に派遣されるだけで、他の三ヶ所にはハイネセンにいる艦隊が動員されるものと思っていたのだ。
「長期にわたってイゼルローン要塞が空[から]になってしまいますが、それでよいのですか」
「現在、帝国は大規模な内戦状態にある。大部隊をもってイゼルローンに侵攻してくる危険はきわめて少ない。ヤン司令官には、心おきなく軍人としての責任をまっとうされたい」
なるほどね、とヤンは感心した。こういう思考法もあるのか。原因と結果、アクションとリアクションがみごとに逆転している。彼らは何も知らないことではあるが……。
不意におかしくなった。統合作戦本部長代行ドーソン大将は用兵家としては凡庸な男だという評判だが、案外そのほうが、ラインハルトの思惑をはずしてしまうかもしれない。
首都に大部隊が居座ったままとあれば、クーデターをたくらむ連中も計画が狂って困るだろう。動くに動けず、不発ということもありえる。そうなればなったで、別の策[て]を打ってくるであろうが、さしあたって、留守をねらって好き放題に、というわけにはいかないだろう。
もっとも、これらのすべては、結果がそうなるというだけのことだ。ドーソンの意図は、ヤンとその部下たちを可能なかぎりこき使うという点にあるのだろう。 >
データF
(銀英伝 野望篇 第三章 ヤン艦隊出動 III)
<「首都で異変がおこりました。いま驚くべき情報が……」
「どんな異変だ」
ムライがしかるように問うと、士官はつばをのむ音をたて、声をしぼりだした。
「ク、クーデターです」
ヤンをのぞく全員が息をのんだ。パトリチェフなどは巨体をゆるがして立ちあがったほどだ。
画面が切り替わると、首都の超光速通信センターが現われた。ただし、にこやかな、あるいはにこやかさを装ったアナウンサーの顔ではなく、壮年の軍人が傲然として放送席に座っている。
「くり返し、ここに宣言する。宇宙歴七九七年四月一三日、自由惑星同盟救国軍事会議は首都ハイネセンを実効支配のもとにおいた。同盟憲章は停止され、救国軍事会議の決定と指示が、すべての法に優先する」
イゼルローンの高級士官たちは顔を見合わせた。それから、いっせいに若い黒髪の司令官を見つめた。
ヤンは黙って画面に見入っていた。いたって冷静に幕僚たちには見えた。
結局、ドーソン大将の思惑は、クーデター派の計画を変更させる力を持たなかったようだ。というより、ドーソンの反応が、彼らの期待よりずっと鈍かったのか。たぶん、その双方だろう。
「救国軍事会議ね……」
つぶやいたヤンの口調は、はなはだ非好意的だった。
(中略)
「市民および同盟軍の諸氏に、救国軍事会議の議長を紹介する──」
その名を告げられたとき、室内の空気は重い流動物と化したように思われた。
通信スクリーンに映った中年の男性を、ヤンはよく知っていた。白髪まじりの褐色の頭髪、肉づきの薄い端正な顔。この人物とヤンは何度も話したし、彼には娘がいて、その娘は……。
低い叫び声がヤンを振り向かせた。
副官のフレデリカ・グリーンヒル大尉が、蒼白な顔をして彼の後ろに立っていた。
ヘイゼルの瞳が、これ以上はないほど大きくみはられて、スクリーンを見つめている。
スクリーンに映った彼女の父親、ドワイト・グリーンヒル大将の顔を。 >
では、順番に個別で応答させていただきますね。
>イッチーさん
ごめんなさい。
私の最初の文章が分かりにくかった、というか私が余計なことを書いたことと、肝心の事柄について言葉が足りなかったせいで誤解されてしまったみたいです。
「ヤンがクーデターについて事前にジェシカに知らせていなかったのがおかしい」といった主旨の主張を私がしていたのでしたら、< 仮に、ヤンがジェシカにクーデターの可能性を話したところで、ジェシカに何が出来たでしょうか? >や、< ジェシカがクーデターの可能性を説いたところで、政府や議会の人間に一笑にふされて終わりだと思います。 >とか< ジェシカに話すぐらいであったら、ネグロポンティ国防委員長かトリュー二ヒト議長に話したほうがよほど効果的だと思われます。 >とおっしゃるイッチーさんのご意見はよく分かりますけど、私が申し上げたのは
『もしジェシカがヤンからクーデターのことを事前に聞かされて知っていたなら』という前提で、『同盟クーデターはどのように作中と変わったか』という if、
つまり…
「ヤンからクーデターについて事前に知らされていることによって、ジェシカの思考や言動が変わる(例えばもっと慎重になるとか) or 変わらない」
「ジェシカの思考や言動が変わるのなら、それによってどのように変化するか」
「変化してもやはりスタジアムで集会を開く or 開かない」
「スタジアムで集会を開いたとしたらその結果、原作と同じく虐殺事件が起きる or 起きない」
「スタジアムの虐殺事件が起きない場合、その後の情勢はどうなるか」
「クーデターについて事前に知らされていても、ジェシカの思考や言動が変わらないとしたらなぜか」
etc etc...
と、『人物・出来事について後世の歴史家のように考えてみる』といった話──ジェシカ・エドワーズも歴史に名を残したと思いますから──なので、イッチーさんのご意見では話が違ってしまうんです。
すみません、私の言葉が足りませんでしたm(_ _)m
< ジェシカがクーデターの可能性を説いたところで、政府や議会の人間に一笑にふされて終わりだと思います。 >とのことですが、「(ヤンにきつく口止めされていることもあって)他の人間に言わないでおく」という選択肢はあり得ないものでしょうか?
ジェシカはヤンから「これは口外しないでくれ」と言われても話してしまうような人物だとイッチーさんはお考えなのでしょうか?
>SAIさん
データCに記述されているように、「ハイネセン記念スタジアム」という国家的式典が行われる際に使用されるような三〇万人も収容できるような超ド級のスタジアムに、二〇万人も動員することを、六月二二日の集会当日まで救国軍事会議の面々に全然知られることもなく、秘密裏に実行できる──正直言って、この辺りジェシカが、これまでどのように行動して秘密裏に進めていたかの記述もなく「スタジアムの集会」が突然に降って涌いて起きたみたいだなぁ、と私は思ってるんですけど(^-^;)──ジェシカと彼女の支持者・協力者なら「息を殺してXdayに一斉蜂起」ということも可能だと私は考えるのです。
イッチーさんへのレスと少し重複しますけど、「ヤンから口止めされたジェシカが何も表立って主張せず、地道に息を殺してXdayに備える」という選択肢はあり得ない、とSAIさんはお考えなのでしょうか?
>冬至楼均さん
< 初めまして。
興味深いネタなので混ぜて戴きます。 >
初めまして。
「興味深い」っておっしゃっていただけて喜んでます♪
原著とにらめっこしながらチマチマ書き込んだ甲斐がありました(笑)
ありがとうございます。
< ヤンはラインハルトによるクーデター煽動を予想していましたが、それがどのような形で起こるかまでは想定出来ませんでした。
あの状況でクーデターが起こるとしたら、反戦派野党による可能性が有ると思います。 >
「ヤンのクーデター予想」に関して下記のデータを提示します。
データA-2(※前回5585のデータAは以後「データA-1」と呼称)
(銀英伝 野望篇 第一章 嵐の前 V)
<「なるほど」
老提督は空の紙コップを両手でつぶした。
「ただ、クーデターを使嗾するにあたっては、成功させると信じこませる必要があります。緻密でしかも一見、実現性の高い計画を立案して見せたことでしょう」
「ふむ……」
「地方的な叛乱は、よほど大規模で、しかも他の地方への連鎖反応をともなわない限り、中央権力をゆるがせることは不可能です。もっとも効率的な手段は、首都を内部から制圧すること。それも権力者を人質にできれば、この上ありません」
「たしかにそうだ」
「ここでネックとなるのは、権力の中枢はすなわち武力の中枢でもあるということです。蜂起したところで、より強大で組織化された武力に直面すれば失敗してしまう。成功したところで三日天下です」
最後のフライドポテトを、ヤンは口の中に放りこんだ。
「そこで、首都における権力中枢の奪取と、地方的な叛乱とを、有機的にコンビネーションさせる必要が生じるのです」
ヤンの傍に座ったユリアンは、若い司令官の論理の展開に目をかがやかせていた。それは数ヶ月にわたる知的格闘の結実なのだ。
「つまり、首都の兵力を分散させねばならない。そのために辺境で叛乱をおこす。鎮圧のため軍は出動せざるをえん。出かけた留守を本命がおさえる。ふむ、うまくいけば絵に描いたようにみごとになるな」
「さっきも言いましたが、ローエングラム侯にとっては、クーデターが成功する必要はないのです。同盟が分裂と混乱をきたし、帝国内の動乱に介入するようなことにならなければ、目的を達することができないのですから」
「面倒なことを考えたものだな」
「やるほうにとってはね。ですが、やらせるほうは大して労力を必要とするわけでもありません」
不敵な金髪の若者にとっては、こんなものは食後の軽い腹ごなしのゲームにすぎないだろう、とヤンは思う。
「誰がクーデターに加担するかまでは、貴官にもわからんかね」
「それはご無理というものですよ」
「で、わしは、近く発生するであろうクーデターを未然に防がねばならんというわけだな」
「発生すれば、鎮圧するのに大兵力と時間を必要としますし、傷も残ります。ですが、未然に防げば、憲兵[MP]の一個中隊で、ことはすみますから」
「責任重大だな」
「それと、もうひとつお願いがあります」
ヤンの声は心なし低まり、老提督は耳を寄せた。
すこしはなれて座っていたユリアン少年には、話の内容が聴こえない。彼はいささか落胆したが、聴かせていい話なら、ヤンがいずれ話してくれるだろう。今までの会話だけでも、少年の胸の鼓動を早くするのにたりた。
「よろしい、わかった」
ビュコックが大きくうなずいた。
「貴官がハイネセンを離れるまでに、必ず届けさせよう。もっとも、そんなもの、役に立たんにこしたことはないが」
空になったフライドポテトの紙袋に息を吹きこんでふくらませると、ヤンはそれを平手でたたいた。大きな破裂音が、周囲の人々を驚かせた。
「お手数をかけてすみませんが、ことがことで、うっかり他人に話せませんので」>
データG
(銀英伝 野望篇 第五章 ドーリア星域の会戦 II)
<「私は先日、首都ハイネセンに赴いたとき、宇宙艦隊司令長官ビュコック閣下に要請して、叛乱がおきたら、それを討ち、法秩序を回服するように、との命令書を、いただいてある。法的な根拠をえているのだから私戦ではない」
会議室でヤンにそう言われた幕僚たちは、司令官の予見力に声もなかった。もっとも当のヤンの気分は、いささか苦い。予測が正しかったといっても、現在の事態を防止できなかったのだから。ハイネセン市内の公園のベンチで、ヤンがビュコックに求めたものはそれだったのだ。 >
データH
(銀英伝外伝 ユリアンのイゼルローン日記 第八章 ベンチの秘密会議)
< 七九七年三月三〇日
三〇分前にこの日記を書いていたら、「何もなし。平和な航宙」と書いたかもしれない。いまはそうはいかない。大事件がおこった。統合作戦本部長のクブルスリー大将が暗殺されかかったのだ。
とにかく、無事に一日が終わりかけ、夕食をすませたぼくたちは客室にたむろしていた。リンツ中佐とぼくが三次元チェスをやっているところへ、ポプラン少佐とコーネフ少佐が何だかんだと口をだし、チェスだか悪口の交換会だかわからなくなったところへ、ラン・ホー少佐(※駆逐艦カルデア66号の艦長)が青い顔で転がり込んできたのだ。しかもそのときはクブルスリー大将が「暗殺された」ということだった。
むろん、チェスは中断。「ハイネセンへお戻りになりますか」というグリーンヒル大尉の質問に、ヤン提督は首を振った。
「いま引き返しても、意味はない。私はイゼルローンへ帰って、艦隊を手中におさめなくてはならないんだ。でなくては、“奴ら”に対抗できないからね」
奴ら、という台詞を耳にして、「イゼルローン党」の面々はヤン提督のほうをいっせいに見つめた。
「それにしても往路で一〇日間も無駄にしたのが、いまにして思えば痛いなあ」
ドールトン大尉(※往路の輸送船団の女性航法士官)がうらめしい、と口には出さなかったけど、ヤン提督はしみじみとつぶやき、そこで周囲の視線に気づいた。
イゼルローンから同行した五人と、ラン・ホー少佐にだけ、ヤン提督の戦略予測がうちあけられたのは、このときである。その内容は、むろんハイネセンでビュコック提督にだけ知らされたものだ(※データA-2)。提督からあらためて口止めされたこともあるけど、まだその内容を書くわけにいかない。将来の回想録まで待つ必要はなさそうだけど、無事にイゼルローンに帰りつくまでは、書かずにおこう。
話を聞いて、皆、驚きもし、納得もし、自分たちの置かれている状況に緊張もした。しばらく口外しないように、というヤン提督の指示は、むろん心よく了承された。ただ、グリーンヒル大尉は、ちょっと不安そうだ。お父さんのグリーンヒル大将がハイネセンにいるのだから、無理もないと思う。夜の第二報で、クブルスリー大将が一命を取りとめた、とわかり一同やや安心する。
七九七年三月三一日
「退屈しのぎの時間つぶし」に、あたらしい種類が加わった。ハイネセンから送られてくる軍事用、民間用の超光速通信で、クブルスリー事件の続報を聞くことだ。チェスをやっていても、カードをやっていても、皆いまひとつ身が入らず、ちょくちょく通信室にまで顔を出してニュースを知りたがる。いまのところ、目立った続報もない。不安と、それを上まわる好奇心が、イゼルローン組の顔に浮かんでいるのがわかる。ぼく自身もそうだろうと思う。
「さしあたって、情報の統制は行われていないようだな。だとしたら大丈夫、まだ時間がある」
ヤン提督はそう言う。クブルスリー大将を撃った犯人が、アムリッシァの敗戦の責任者であるフォーク准将だと知って、ぼくは驚いたのだけど、そんなことはヤン提督にとっては枝葉のことでしかないらしい。それにしても、これはいよいよ「ヤン艦隊」が出動する時期がせまったのだな、と思わずにはいられない。 >
上の3つのデータから導き出せる「ヤンのクーデター予測」のポイントは下記の通りです。
最初に、データA-2から、七九七年三月一九日にビュコックに話した時点では、クーデターはラインハルトの策謀によるものであり、それはクーデターを企てている面々を動かすのに充分なほどに、緻密でしかも一見、実現性の高い計画を立案し見せていると推測。
上の記述を前提にしたポイントは次の4つ。
1. 中央権力を手中に収める目的達成に最も効率的な手段は、首都を内部から制圧することであり、それも権力者(同盟のトップクラス)を人質にできればベスト。
2. ただし1そのままに蜂起したところで、クーデター側より強大で組織化された武装勢力(軍)と真っ向から対峙したのでは、すぐに制圧されてしまう危険があること。
3. クーデター側にとっては2の事態を防止するために首都ハイネセンにいる武装勢力(特に艦隊や陸戦部隊)を可能な限り遠ざける必要があり、そのために首都から離れた辺境の数ヶ所で武力蜂起・叛乱を起こさせ、首都に駐留している艦隊が対応するために出向くように仕向けること。
4. クーデター側の具体的な実行者・参加者が誰かは不明だが、1,2,3の項目によりクーデター実行者・参加者たちの主要人物は「同盟の軍人」であり、参加者は「軍関係者」と予測したこと。
(データFにある通り、クーデター実行者・参加者たちが「救国軍事会議」という名称の組織で、代表者がグリーンヒル大将だと判明するのは、四月一三日)
次にデータA-2とデータGに基づいて言えるのは、未然に防ぐことに失敗し戦闘に突入した場合に備え、ビュコックから事前に武力蜂起・叛乱に対応するための「大義名分を得ている」こと。
最後に、データHより、クーデターが推進されれば「情報統制が行われると予測している」こと。
これらが原作に明記されている「ヤンのクーデターに関する予測」です。
ですから、< ヤンはラインハルトによるクーデター煽動を予想していましたが、それがどのような形で起こるかまでは想定出来ませんでした。 >は全く該当しませんし、「クーデター実行者・参加者たちの主要人物は同盟の軍人」とヤンは予測しており、実際にヤンの予測どおりでしたので、< あの状況でクーデターが起こるとしたら、反戦派野党による可能性が有ると思います。 >との冬至楼均さんのご意見では、原作の内容から完全に逸脱してしまうと私は思います。
< 実際に起こったものは軍の発言力を強化する方向でしたが、この方がどちらに転んでも損が無いという点で有効な気がします。 >
申し訳ないのですけど、5585で下の文章を書き込みましたように……
< 原作と違うのは、「ジェシカがヤンからクーデターのことを事前に聞かされて知っていること」だけで、他の事柄(黒幕がラインハルトであること、救国軍事会議の議長がグリーンヒル大将であることetc...)は一切変化なし、です。 >
私が申し上げたのは、「銀河英雄伝説の原作に基づいた内容であること」という大前提で、『もしジェシカがヤンからクーデターのことを事前に聞かされて知っていたなら、同盟クーデターはどのように作中と変わったか』という if、なんです。
原作の内容と全然噛み合わない説を持ち出されても困惑してしまいますし、話の筋がズレてしまいますので、この話題については辞退させていただきます。
あしからずご了承くださいm(_ _)m
< 1)ヤンはラインハルトによるクーデター煽動をほのめかしてジェシカの行動に注意を喚起する。
2)自分が疑われているとは気付かないジェシカは慎重な行動をするが、当然にクーデターは止められない。なにしろヤンから直々に話を聞いていたビュコック提督にすら無理だったのですから。 >
ヤンがジェシカに話した理由は、「彼女にビュコックと同じくクーデターを未然に防ぐように行動してもらいたかったから」ではなく、「ビュコックの力が及ばず未然に防せげなかった場合(原作でもそうですけど)クーデターが発生した際に伴うかもしれない“ハイネセン市民のレジスタンス活動”を彼女か行うことを懸念したから」というのはダメでしょうか?
イッチーさん、SAIさん、冬至楼均さんのそれぞれのご意見に対してあえて質問をしたのは、それぞれの方のお考えを更に深く知りたいからなんです。
回答していただけましたら嬉しく思います。
他の方もご意見がありましたら是非お願いします。
それでは今回はこの辺で失礼します。