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board4 - No.8207

薬師寺シリーズ考察7-2

投稿者:冒険風ライダー(管理人)
2009年06月30日(火) 23時32分

薬師寺シリーズ7巻「霧の訪問者」 講談社ノベルズ版P56下段~P58下段
<拍手がおこった、ずいぶん古美術品としての価値がありそうな金屏風の前にタキシード姿の中年男が立ってしゃべりはじめたのだ。TVの午後のワイドショーの司会者として有名な人物だった。
 もう何年も前のことだが、この司会者は自分の番組でこんなことをいった。
「イラクが大量破壊兵器を保有しているということは、これはもうまちがいないようですね。アメリカとしては、これ以上、手をこまねいては世界の平和がそこなわれる。やむをえず、平和を守るために最小限の力を行使するしかないんだ、というわけで、私たちは、平和と民主主義に対するアメリカの強い決意をさまたげてはいけないと思うのですが、いかがでしょう」
 すると、ゲストの大学教授が、きまじめな表情で応じた。
「いや、イラクに大量破壊兵器は存在しないと思いますよ。確たる証拠がまったくありません」
 みるみる司会者の表情がこわばり、ゲストをにらみつけると、話題をそらしてしまった。以後、このゲストは二度と番組に登場することはない。イラクが大量破壊兵器を匿している、というのは、誤報どころか、戦争をしかけるためのデッチアゲだった、という事実がその後、判明した。だがその司会者は、過去の発言を訂正も謝罪もせず、あいかわらず番組の中で自分の考えを他人に押しつけている。
 もっとも、この司会者だけのことではない。戦争や対外強硬論をあおりたてたメディアが、その後、誤りを認めて謝罪した、なんて話は聞いたことがない。私が所属している警察にしたって、ずいぶん誤報の種をまきちらしている。私の上司みたいに、情報や報道をせっせと悪用している問題児までいるしな。>


 そういう泉田準一郎にもまた、薬師寺涼子の犯罪および犯罪隠蔽行為に積極加担したり、「不法入国者と聞いただけで犯罪者と同一視してヒステリーをおこす連中もいるが」などという法律に関する無知丸出しのタワゴトをほざいたりした前科があるにもかかわらず、「過去の発言を訂正も謝罪もせず、あいかわらず作品の中で自分の考えを他人に押しつけている」事実が立派に存在するのですが、それについてはどうお考えなので? 泉田準一郎の立場でこういう発言をするなど、ギロチンブーメランによる自殺行為以外の何物でもないのですけどねぇ~(苦笑)。
 それにしても、本当に田中芳樹は好きなんですね~、イラクの大量破壊兵器ネタ。創竜伝13巻の頃から書き殴られている駄文を何度も延々と読まされている私としてはいいかげんに飽きてきた感も否めないのですけど、まあアメリカ同時多発テロ事件で頭をヤラれた田中芳樹にしてみれば、アメリカ叩きのネタには何であろうがなりふり構わずダボハゼのように食いつかざるをえないのでしょう。たとえその論法が、国際政治の常識から大いに外れるものであったとしても(笑)。
 だいたい、国家が掲げる「戦争の大義名分」なるものを、その国家が100パーセント本気で実行するつもりでいる、などと思い込む方が間違っているでしょう。私の創竜伝考察40でも述べたことの繰り返しになるのですけど、アメリカのみならず、世界中どこの国の外交政策でも、建前上は立派な理念や奇麗事を並べた大義名分を掲げつつ、本音である既得権益や勢力拡張を図っているものです。「戦争の大義名分」というのは所詮「自国の国益を確保するための口実」に過ぎないのですし、国際政治というものは大昔からそういう常識で成り立っている世界です。そういう世界で「戦争の大義名分」がデッチアゲだと分かったところで「ああそうですか」の一言で終わってしまう程度の話でしかない、ということを、アレだけ架空歴史小説で政治を語っている田中芳樹が知らないはずはないのですけどね。
 アメリカの歴史を紐解いても、たとえば日本の真珠湾攻撃などは、その攻撃自体を最初からアメリカが仕組んだのか否かについての議論はあるにせよ、すくなくともその「攻撃の結果」を、アメリカ政府が「リメンバー・パールハーバー」という大義名分の名の下に第二次世界大戦参戦の口実に使ったのは疑問の余地がありませんし、またアメリカのベトナム戦争参戦の際には、北ベトナムのトンキン湾でアメリカの駆逐艦が北ベトナムの哨戒艇に攻撃を受けたとするトンキン湾事件がアメリカの自作自演によってでっち上げられ、戦争介入の口実として利用されています。それらの事例を見ただけでも、イラクの大量破壊兵器ネタなど、ごくありふれた歴史の1ページに過ぎないことは一目瞭然ではありませんか。
 イラクの大量破壊兵器ネタなどというシロモノが効果的なアメリカ批判になりえるなどと、いつまでも考えることができるその貧相な知識と想像力が、私には哀れに思えてしかたがありませんね。そんなものにこだわるよりも、たとえばイラクやアフガニスタンに対するアメリカ軍の軍事介入が、現地のゲリラ組織の活動やテロ行為ために泥沼化していることを「多大な犠牲を出しただけ」「見通しが甘い」などとして指摘する方が、国際政治の常識やアメリカの国益事情などとも合致して、はるかに効果的なアメリカ批判となりえるでしょうに。

 ところで今回、薬師寺シリーズ検証のためにこの泉田準一郎のタワゴトを改めて読んでいた際に、私はふと懐かしい思いに駆られましてね。「そういえば、ここで言われている『ゲストの大学教授』とやらの立場に、私自身も立たされたことがあったな」と。
 アレは忘れもしない2007年5月、創竜伝13巻文庫版が刊行された際に「2006年中に出す」と公約していたにもかかわらず、突然何の脈絡もなく無期限延期された創竜伝14巻の刊行を巡り、私が直接「らいとすたっふ」に乗り込んで質問の投稿を行ったところ、「らいとすたっふ」の社長氏は質問内容に正面から答えることなく「仕事として詳しい事情などを公開できないことがあることもご理解ください」などという不誠実かつ典型的な官僚答弁的対応に終始していたということがまずありました。
 さらにその4ヶ月後の2007年9月には、創竜伝5巻でパチンコ批判を繰り出しておきながら、己の作品である銀英伝をパチンコに売り飛ばした「らいとすたっふ」および田中芳樹の惨状について問い合わせの投稿を行おうとしたところ、これまた何の事前告知もなしにブログがいつのまにか承認制に切り替わっていて投稿不能状態に。そして、そのブログの制限を一時的にでも良いから解除して下さいというお願いメールを「らいとすたっふ」宛に送信したら、「らいとすたっふ」の社長氏は突然ブログのトラックバックおよびコメント欄を一方的に閉鎖した挙句、私の投稿をスパム扱いするなどという強硬手段に出てきてくださいましてね~(>_<)。
 で、自分達の行動に関する問い合わせ投稿に対してこういう対応に出てくる「らいとすたっふ」の社長氏およびそのスタンスを黙認する田中芳樹は、まさにここで挙げられている「ワイドショーの司会者」と同レベルの「過去の発言を訂正も謝罪もせず、あいかわらずブログや作品の中で自分の考えを他人に押しつけている」人間以外の何物でもないのではありませんかね? パチンコへの作品売り飛ばしもそうですが、自分で舌鋒鋭く批判していることを他ならぬ自分自身で実践してしまい、しかもそれに対する批判・反論を問答無用に封殺するというのは、己の言論に対する責任や会社&作家&作品としての信用という観点から見てもはなはだマズイのではないか、と言論封殺された当事者にして一方的な被害者たる私としては考えずにいられないのですけどね~(T_T)。
 何度も何度も言われていることですが、薬師寺シリーズの社会評論って、作者にも作中キャラクターにもギロチンブーメランとして跳ね返ってしまう特性を過大なまでに保持しているんですよね。これもことある毎に現実無視の奇麗事かつ絵空事な社会評論をくっちゃべりたがる、田中芳樹の業というものなのでしょうか(笑)。


薬師寺シリーズ7巻「霧の訪問者」 講談社ノベルズ版P63上段
<何といってもアメリカは世界一の押し売り国家だ。牛肉からミサイルから民主主義まで、何でもかんでも、むりやり売りつける。「買ってください」とは絶対にいわない。「買うべきだ」とお説教し、「買わないのはまちがっている」と息まき、「買わないと両国の信頼関係がそこなわれるだろう」と脅す。誰でもいいから、彼らに、まっとうな商売のしかたを教えてやってほしいものだ。>

 泉田準一郎や田中芳樹が推奨する「まっとうな商売のしかた」とは、こういうやり口のことを指すのでしょうか↓

創竜伝10巻 P81上段~下段
<大英博物館に対しては「世界最大の盗賊の宝物庫」という悪口がある。何しろ世界各地へ出かけては侵略と征服と掠奪とをくりかえした大英帝国の、いわば悪事の証拠品が集められているのだ。エジプト、インド、アフリカ諸国、中近東諸国、それに中国。王宮に火を放ち、王墓をあばいて奪った彫刻、絵画、陶磁器、宝石、金銀細工、織物、古文書の巨大な山。ギリシアやエジプトの政府が、「我々をだまし、あるいは力ずくで奪った財産を返せ」というのも、もっともなことである。
 そういった事情を承知の上で、始はやはり大英博物館の存在に感動する。知識に対する貪欲さ、美に対する執念、文化に対する敬意、それらの人類の精神的な活動が、地球上の一点に集まり、「大英博物館」の名に象徴されているからだ。英国人が奪いとっていくまで、各国の人々が自国の文化や歴史の貴重さに気づかず、砂に埋もれ、朽ちはてるままに放置しておいたのも、残念ながら事実である。もし王宮の奥に隠して誰にも見せないというのなら英国人を弁護する余地はないが、すべてがたいせつに保存され、修復され、展示されており、外国人である竜堂兄弟も無料で見学できるのだから、ある意味で、軍事力と資本力によって世界を制覇した大英帝国が、文化においては敗者におよばないことを自覚した証拠ともいえるのだ。>


創竜伝10巻 P113上段~下段
<話題を変える必要を感じたようだ。ランバートは始の言葉をあえて無視し、自分かってに話を進めはじめた。
「我々は昔、戦いに敗れて東の地を去り、西の涯におもむいた。そして三〇〇〇年近くたってようやく復讐のひとつの機会を得た。一八四〇年の阿片戦争だ」
 阿片戦争。歴史上もっとも醜悪な開戦理由を持つこの戦争について、むろん始はよく知っている。中国との貿易を求める英国は、強引きわまるやりかたで事を押し進めた。
 英国人のあつかましさに、中国人は呆然としたであろう。呼びもしないのに押しかけてきて、「皇帝に会わせろ」と騒ぎたてるのだから。「しようがない、遠くから来たのだから会わせてやる。そのかわり礼儀は守れよ」というと、「そんな礼儀はわが国にはない」と答えて、中国人なら誰でも守る礼儀を守らない。あきれて、「もう来なくていいぞ」というと、「傲慢な中国人は、我々に異常な礼法を要求し、あげくに追いはらった。何という野蛮な奴らだ。こらしめてやる」と喚きたて、軍艦に武器を積んで押し寄せ、砲撃を加える。麻薬である阿片を密輸して巨額の利益をあげ、阿片の害を憂えた中国の役人が密輸品を没収して焼きすてると、「けしからん、この侮辱を赦すわけにはいかぬ」と全面戦争をしかけた。麻薬の密輸を禁じられて相手に戦争をしかけた国は、世界史上、英国だけである。>


創竜伝10巻 P148上段~下段
<すでに夕方に近く、暗い空の下でロンドン塔は黒々とわだかまっている。宮殿と要塞と牢獄とを兼ねる石造りの城は、歴史と武器と財宝との一大博物館である。
 一方では侵略と掠奪によって多くの国々に危害を加えながら、もう一方では自由な議会と自由な大学と自由な新聞とをつくりあげ、多くの亡命者を保護し、人類の文化遺産を保護してきたのが英国の近代史だ。ロシアやドイツや日本で秘密警察が言論弾圧に狂奔していたころ、英国では新聞が堂々と王室の悪口を書きたてていた。これひとつとっても、ロシアやドイツや日本ではなく、英国が世界を支配したのは当然であったような気が、始はする。まったく、ソビエト連邦やナチス・ドイツや大日本帝国が世界を支配するようになっていたら、どのような世の中が出現していたことか。現在よりひどい時代になっていたことはまちがいない。
 始は苦笑した。「そんなひどい時代にならずにすんだのは、四人姉妹が世界を管理していたからだ」と、四人姉妹の味方ならばいうのだろう。単に富や権力を独占するだけでなく、よりよい世界をつくるための無数の人々の英知と努力までも、四人姉妹はひとりじめしようとするのだろう。>


 ここで田中芳樹が絶賛し、なおかつ「日本もこれを見習え」などとお説教しているイギリスを手本にするのであれば、アメリカのやり方は極めて妥当なものであると言えるのではありませんかね? 何しろ、「自由な議会と自由な大学と自由な新聞とをつくりあげ、多くの亡命者を保護し、人類の文化遺産を保護して」「外国人も無料で見学でき」「新聞が堂々と王室の悪口を書きたてて」いれば、「麻薬の密輸を禁じられて相手に戦争をしかけ」ても「世界を支配したのは当然であった」とされるのですから(笑)。
 アメリカには王室はありませんが、元首たる大統領に対する批判は当然自由なのですし、そのことは薬師寺シリーズの作中でも明言されています↓

薬師寺シリーズ7巻「霧の訪問者」 講談社ノベルズ版P83上段
<どんな状況にあっても真相を追究するジャーナリストや政治家が存在するというのは、アメリカ社会のあきらかな美点だ。ただ、彼らの努力や勇気がつねに報われるとはかぎらない。J・F・ケネディ大統領の暗殺事件ひとつとっても、あれほど疑惑を公言されながら、政府の態度は変わらないのだ。>

 そして、ここで挙げられているJ・F・ケネディ大統領の暗殺事件にしても、実際にはアメリカ政府は2039年に全ての情報を公開すると明言していますし、また湾岸戦争を推進したブッシュ(父)大統領およびイラク戦争を遂行したブッシュJr大統領も常に批判の嵐に晒されていたのですから、「新聞が堂々と【政府および大統領】の悪口を書きたてて」の要素は立派に備えていると言えるでしょう。
 さらに、アメリカ最大の博物館であるスミソニアン博物館も、一部の特別展示施設を除き、イギリスが誇る大英博物館と同じく入場料は基本的に無料です。あとはかつてのイギリスのように「世界各地へ出かけては侵略と征服と掠奪とをくりかえした」上で、掠奪品をひとつ残らずスミソニアン博物館に収めてしまえば、アメリカは晴れて「世界を支配したのは当然であった」とされる資格を獲得することができるわけです(爆)。
 しかもアメリカは、田中芳樹的には「右翼の軍国主義者」が蔓延っていた上に「言論弾圧に狂奔していた」戦前の日本に、田中芳樹が奉仕たてまつる日本国憲法と「戦後民主主義」を与え、当の日本からさえも感謝されているという、歴史上誰もなしえなかった「偉業」を達成してすらいるのです。田中芳樹的視点から見れば、ここでの薬師寺シリーズにおける主張とは裏腹に、アメリカには民主主義を「双方の円満合意に基づいて」売り込んでみせた実績もあるわけで、この点に関しては「世界を支配したのは当然であった」イギリスをすら越えていると評価されるべきでしょう(苦笑)。これから考えれば、アメリカが「世界一の押し売り国家」であることはむしろ推奨されるべき事実、ということになるのではありませんかね(笑)。
 いつも思うことなのですが、アメリカもイギリスもどちらも同じ民主主義兼覇権国家であるというのに、何故両者に対する田中芳樹のスタンスにはここまで明確な差が存在するのでしょうか? かつてのイギリスの帝国主義を正当化するならば現行のアメリカも擁護すべきですし、現行のアメリカを批判するのであれば過去のイギリスも同様に断罪することこそが、「ご都合主義的なダブルスタンダード」という非難をかわす唯一の方法だというのに。


薬師寺シリーズ7巻「霧の訪問者」 講談社ノベルズ版P104上段
<「現実世界は、ハリウッド製アクション映画の世界と、すこしばかりちがうからです」
「どうちがうのさ」
「ハリウッド映画では正しい者が勝ちますが、現実世界では強い者が勝つんです」
 だからこそ、イラクやイランが国際ルールを破れば制裁されるが、アメリカを制裁できる者など存在しない。各国軍隊の戦争犯罪をさばくために国際刑事裁判所というものが存在するが、アメリカは参加していないのだ。わが祖国はといえば、もちろん親分にさからうはずもない。>


 これまた創竜伝13巻の頃から使い回しているネタの再登場ですね。「各国軍隊」ではなく「アメリカのみ」の戦争犯罪を裁くため、また、「アメリカと日本」に悪口を叩き込むための道具として国際刑事裁判所を持ち上げている舞台裏が誰の目にも分かりやすい形で露出していて、私としては大いに興醒めしてしまうのですが。
 創竜伝13巻の国際刑事裁判所ネタについては、こちらも私の創竜伝考察38で述べていてその繰り返しになってしまうのですけど、アメリカには元々、巨額の資金を提供しているにもかかわらず、自国に対する反対運動や不誠実かつ非効率で硬直しきった官僚機構的運営を行っている国連およびその関連機関に対する不信感が根強く存在するのですし、また軍に対する悪意に基づく提訴が行われたり、不公正な判決が下されたりする可能性があるために「自国の国益および自国民の安全確保の観点から」反対せざるをえない、という事情があるのであって、それを無視して国際刑事裁判所への不参加についてギャーギャー喚いたところで、何ら問題の解決には繋がらないのです。創竜伝13巻と薬師寺シリーズ7巻の間には3年以上の月日が流れているはずなのですが、田中芳樹の国際刑事裁判所に関する情報量と理解力は、創竜伝13巻当時から何ら変わってはいなかったようですね(>_<)。
 それと、日本が国際刑事裁判所に加入していなかった最大の理由は、アメリカに対する配慮などではなく、日本が抱えていた法的事情にあります。国際刑事裁判所設置条約(ローマ規定)を批准するためには、戦時における捕虜や民間人の扱いを規定しているジュネーブ4条約に対応する国内法、いわゆる「有事法制」の整備が必要不可欠だったのですが、国際刑事裁判所設置条約が採択された1998年当時、日本には有事法制がないも同然の状態にありました。
 有事法制が全く整備されていない状態で国際刑事裁判所設置条約を批准してしまうと、たとえば自衛隊が戦闘で捕虜を捕らえた際、その捕虜が非人道的な扱いを受けたと判断して国際刑事裁判所に提訴すると、日本の国内法で捕虜および自衛隊員を裁くことができないために、唯一存在する国際刑事裁判所の規定に従って、日本は自動的かつ強制的に国際刑事裁判所に捕虜および訴追された自衛隊員を引き渡さなければならなくなる、という事態が想定されるのです。これは簡単に言えば、北朝鮮の拉致事件に相当することが国際刑事裁判所の名によって公然と行われる、ということに他ならず、それは自国の主権維持の観点からも自国民の安全確保の点からも決してあってはならないことであるからこそ、日本は有事法制を整備してから国際刑事裁判所設置条約の批准を行うことになったわけです。
 その後日本は、2003年6月6日に最初の有事法制となる「武力攻撃事態対処関連3法」を成立させたのを皮切りに、有事関連7法、北朝鮮の経済制裁を目的とした「特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法」といった有事法制を次々と成立させていき、国際刑事裁判所による主権侵害の問題が解消されたところで、2007年10月1日に晴れて国際刑事裁判所設置条約の105ヶ国目の加盟国となっています。
 そして、何故日本で有事法制の導入がこれほどまでに遅れたかと言えば、日本国憲法9条を神聖不可侵にして金科玉条であるかのごとく崇め奉り、いもしない右翼の軍国主義者とやらをでっち上げて「軍靴の足音が聞こえる」だの「日本の軍事費は世界第3位(OR2位)」だのと日本と自衛隊を罵りまくってきた田中芳樹のような人間が跳梁跋扈していたことにそもそもの原因があるのですけどね。「もちろん親分にさからうはずもない」などという状況に日本を追い込んできた元凶の一端をささやかながら担っているばかりでなく、その有事法制の整備が進まないがために本来ならば救えるはずの生命と財産を多大に失うことになった阪神大震災に直面するや、己の過去の言動に対する反省も総括もなく阪神大震災をネタにやはり日本を罵り続ける田中芳樹およびその忠実なマリオネットごときが、本来ネタにして良いものではないのですけどね、国際刑事裁判所問題は。
 「ハリウッド映画では正しい者が勝ちますが、現実世界では強い者が勝つんです」などと作中キャラクターに吼えさせるのも結構なことですが、その前に「理由」や「背景事情」についての検証くらいキチンと行った上で反米・反日理論を語っては頂けないものですかね? 田中芳樹や泉田準一郎がアジり倒すレベルの愚劣で杜撰な社会評論では、現実世界におけるアメリカや日本の「強さ」どころか「正しさ」にすら全く太刀打ちできないのですから。



 薬師寺シリーズ7巻「霧の訪問者」は、薬師寺シリーズ考察初となる1巻2考察の構成で論を進めていきます。
 続きは次回の考察で。

board4 - No.8208

サイト更新のお知らせ2009.07.02

投稿者:冒険風ライダー(管理人)
2009年07月01日(水) 15時09分

 サイトの更新を行いました。
 更新内容は以下の通りです。

田中芳樹を撃つ!
・ サイト内検索エンジン(msearch)導入
・ 田中作品タイムカウントに関連議論集追加
・ 田中芳樹を撃つ!ザ・ベストおよび考察シリーズの更新

奇説珍説博物館 ~山本弘トンデモ資料展2009年度版~
・ コンテンツ「山本弘でも小説家になれる! 売れない小説家の心得講座」に過去ログBおよび関連リンクを追加、
・ コンテンツ「著作権蹂躙肯定論者 山本弘大将軍様の暗躍」過去ログA/B/Dに新規投稿追加収録
・ 新規コンテンツ「山本弘版『小説の書き方』指南書」を追加
・ 新規コンテンツ「差別を糾弾する差別主義者の山本弘」を追加

 今回の更新で、田中芳樹を撃つ!サイト内全Webページのキーワード検索が行えるようになっております。
 特定の話題について調べたり、過去ログを参照したりする際などにご活用下さい。

親記事No.8206スレッドの返信投稿
board4 - No.8209

Re:薬師寺シリーズ考察7

投稿者:S.K
2009年07月01日(水) 16時13分

>  薬師寺シリーズ7巻「霧の訪問者」は、「キリスト教狂信者のアメリカ人富豪家」がラスボスとして設定されていることもあってか、これまでで一番アメリカ批判が頻出しまくる巻となっています。

 まあファンダメンタリストがタチの悪いキ印なのは事実なので、ラスボスとしては悪くない選択だとは思います、ただし主人公が
もっとタチの悪いキ印でなければ。

> 薬師寺シリーズ7巻「霧の訪問者」 講談社ノベルズ版P8上段~下段
> <やたらと大きな文字が視界をかすめた。「東京で二回目のオリンピックを!」という政府と東京都の広報広告だ。
>  それにしても、お役所の考えていることは、よくわからない。「東京はまもなく大地震にみまわれる。都民は災害にそなえろ」と騒ぎたてながら、一方でオリンピックを誘致しようというのだから。いつ大地震が来るかわからない危険な都市で、オリンピックを開く気なのだろうか。
>  とまあ、ケチをつけたくなるには理由がある。つい先週、大地震対策と称して、警視庁あげての訓練がおこなわれ、私は練馬区の官舎から警視庁まで徒歩で通勤させられたのだ。大地震であらゆる交通機関がストップし、自動車も使えなくなった事態を想定してのことだが、地下鉄を使えば直行で二〇分のところ、三時間かかった。たしかにいい運動にはなったが、警視庁の全員がクタクタになったところで大地震が発生していたら、どうなっていたことやら。>

>
>  相変わらず「(薬師寺シリーズ世界における)現在の東京都知事」こと石原慎太郎氏を(泉田準一郎も田中芳樹も)徹底的に毛嫌いしていることがよく分かる記述ですね。「東京で二回目のオリンピックを!」と主張しているのも、警視庁どころか自衛隊まで交えた大地震対策ことビッグレスキューを実施しているのも、2009年7月時点までの東京都知事では石原慎太郎氏しかいないのですし。
>  それにしても、「いつ大地震が来るかわからない危険な都市」でオリンピックなど開くべきではない、という主張を大真面目に繰り出してくるとは、泉田準一郎および田中芳樹の発想はいつものことながらギャグセンスに富んでいて笑いを誘いますね。そんなことを言い出したら、そもそも「いつ大地震が来るかわからない危険な都市」で何らかの社会生活や経済活動を営んでいること自体が問題とならざるをえませんし、それ以前の問題として、「いつ大地震が来るかわからない危険な都市」は東京どころか日本に限定されるものですらないので、世界中どこでもオリンピックは開催できない、という極論まで導けてしまうではありませんか。

 昨今オリンピックも相当胡散臭くて生臭い祭典なので、否定的
見解を肯定できなくもないですが、「いつ大地震が来るか
わからない危険な都市」で危機管理に努める姿勢は
「(薬師寺シリーズ世界における)現在の東京都知事」は立派で
あり、むしろ「疲れたから危急の際働けるかわからない」的姿勢の
泉田警部補は反省して見習うべきでしょうね。


>
> 創竜伝10巻 P211上段~下段
> <静かにふけゆく京都の夜に全身でひたっていると、平穏そのものに思われた。だが、日本国内にかぎっても、京都に近い神戸で大地震がおこり、東海大地震に富士山大噴火と、暴走する地殻エネルギーの前に数万人の市民が生命を失っているはずだ。そもそも政府というものは、個人の力で対処しようのない巨大な大災害から市民を守るために存在するのだが、
> 「どうせ現場の努力を無にするようなことばかりしているでしょうよ」
>  と、続が無情に評価を下した。蜃海は苦笑する。大災害時における日本政府の無策ぶりは世界各国の失笑を買っているのだった。>

>
> 創竜伝13巻 P84下段
> <一九九五年、阪神・淡路大震災の直後、アメリカ軍は病院船マーシーを派遣したいと日本政府に申しこんだ。マーシーは最新式の手術室一二とベッド一〇〇〇以上をそなえていたが、日本政府はなぜかせっかくの厚意を拒絶した。そのため、多くの被災者が緊急治療を受けることができず、死に至った。>
>
 で、その「現場で頑張って被災者に多大な感謝を受けた自衛隊」
は褒めるどころか言及すらしてくれませんよね(笑)。


>  もし仮にイエス・キリストが生き返ったとして、そう名乗る人物が本物だと、どうやって証明するのだろう。イエス・キリストの写真など存在しないし、指紋も歯型もDNAも残されていない。>
>
 宗教に野暮を言ってる無粋は置くとして、「イエス・キリストが
生き返ったとして、そう名乗る人物」が所謂「イエスの奇跡」を
全部やってのければ、それは充分「イエス・キリスト」と言って
差し支えないんじゃないでしょうかね、泉田警部補。
 そもそも真っ先に「証明」を求めるのはまず「信者」だと思いますし。


>  他人の作家および作品について見当外れなタワゴトをほざく前に、田中芳樹も作家なのですから、少しは「物語としてはおもしろい」作品を「自分が」執筆するように努めては頂けないものなのですかね。創竜伝や薬師寺シリーズは、「ナルニア国物語」などよりもはるかに「指輪物語」の作者トールキンからボロクソに罵られかねない超駄作なシロモノでしかないのですから(苦笑)。

 こういう話では、実際スタジオジブリのアニメ映画版
「ゲド戦記」に「私の作品でよくここまで愚作にスピンオフ
できましたね」と監督に言ってのけた「正しい事しか言わない怖いオバサン」アーシュラ・K・ル=グウィン女史がダントツに
恐ろしいでしょうね。


>  イラクの大量破壊兵器ネタなどというシロモノが効果的なアメリカ批判になりえるなどと、いつまでも考えることができるその貧相な知識と想像力が、私には哀れに思えてしかたがありませんね。そんなものにこだわるよりも、たとえばイラクやアフガニスタンに対するアメリカ軍の軍事介入が、現地のゲリラ組織の活動やテロ行為ために泥沼化していることを「多大な犠牲を出しただけ」「見通しが甘い」などとして指摘する方が、国際政治の常識やアメリカの国益事情などとも合致して、はるかに効果的なアメリカ批判となりえるでしょうに。

 まあそれだって、前に冒険風ライダーさんが言われた通り、
ベトナム戦争よりは遥かに上手にやってますし、「強いアメリカ」
「テロに屈しないアメリカ」というのは、少なくともアメリカと
いう国にとっては国益あるアピールでしょう、出費や兵士・国民の
モチベーションをさしあたり置けば。


> <何といってもアメリカは世界一の押し売り国家だ。牛肉からミサイルから民主主義まで、何でもかんでも、むりやり売りつける。「買ってください」とは絶対にいわない。「買うべきだ」とお説教し、「買わないのはまちがっている」と息まき、「買わないと両国の信頼関係がそこなわれるだろう」と脅す。誰でもいいから、彼らに、まっとうな商売のしかたを教えてやってほしいものだ。>

 むしろアメリカは商売が下手なんですけどね、第二次世界大戦の
ヨーロッパ連合国へのレンドリース返済で50年ローンとか待って
やったり、件の牛肉も我らが日本が「売って欲しいのでBSE検査させてくれ、費用日本持ちで」と言い、アメリカの畜産家もそう
させてやってくれと要求するのを「我が国の牛肉は安全だったら
安全なのだ」と国が無駄にゴネて輸入再開を延期させてしまったり。

>

>
> 薬師寺シリーズ7巻「霧の訪問者」 講談社ノベルズ版P83上段
> <どんな状況にあっても真相を追究するジャーナリストや政治家が存在するというのは、アメリカ社会のあきらかな美点だ。ただ、彼らの努力や勇気がつねに報われるとはかぎらない。J・F・ケネディ大統領の暗殺事件ひとつとっても、あれほど疑惑を公言されながら、政府の態度は変わらないのだ。>
>
>  そして、ここで挙げられているJ・F・ケネディ大統領の暗殺事件にしても、実際にはアメリカ政府は2039年に全ての情報を公開すると明言していますし、また湾岸戦争を推進したブッシュ(父)大統領およびイラク戦争を遂行したブッシュJr大統領も常に批判の嵐に晒されていたのですから、「新聞が堂々と【政府および大統領】の悪口を書きたてて」の要素は立派に備えていると言えるでしょう。

 ついでにこれも物凄いブーメランで、J・F・ケネディ大統領の暗殺事件で黒幕疑惑の最筆頭はかの薬師寺涼子が「尊敬している」
と公言したFBI長官ジョン・エドガー・フーバーなのを田中
センセイと泉田クン知らないんですかね?

> 薬師寺シリーズ7巻「霧の訪問者」 講談社ノベルズ版P104上段
> <「現実世界は、ハリウッド製アクション映画の世界と、すこしばかりちがうからです」
> 「どうちがうのさ」
> 「ハリウッド映画では正しい者が勝ちますが、現実世界では強い者が勝つんです」
>  だからこそ、イラクやイランが国際ルールを破れば制裁されるが、アメリカを制裁できる者など存在しない。各国軍隊の戦争犯罪をさばくために国際刑事裁判所というものが存在するが、アメリカは参加していないのだ。わが祖国はといえば、もちろん親分にさからうはずもない。>

>
 ハリウッド映画バカにしてますね。
 なら「プログラムに逆らえない苦悩を持ち、なお人間の尊厳と
警官の誇りを傷だらけで保ち続けるロボコップ」や「悪党と同じ
フリークスの孤独を味わいながらクライムハンターであり続ける
バットマン」「子供に慕われても平和を乱さないため一人去る
シェーン」を「勝った」の一言で済ませるつもりかと小一時間
問い詰めたいですね。
 ついでにそもそも「911事件」を筆頭とする対アメリカテロ
は、テロリストサイドにしてみれば「アメリカへの制裁」ではないのかと。
 無論テロが正しいとは思いませんがアメリカとて「蹂躙」して
いるのではなく「戦って」いるのだと思うのですよね。

親記事No.8205スレッドの返信投稿
board4 - No.8210

Re8205:どこの汚職政治家ですか>外伝5巻完結宣言

投稿者:冒険風ライダー(管理人)
2009年07月02日(木) 11時43分

 ……何というか、呆れ果てるほどの「盗人の開き直り」ぶりですね。
 自分から言い出した「外伝6冊分」の公約を反故にして読者を裏切っただけでなく、自分に都合の悪い10巻あとがきの存在そのものを隠蔽する……。自分がかつて創竜伝で罵っていた汚職政治家や、歴史を歪曲する右翼思想家なるものと全く同じことをしているではありませんか、今の田中芳樹は。
 公約を撤回するならするで、20年近くも続巻刊行を待たせた読者に向けて、そのことに関する釈明なり謝罪なりを公式発表すべきでしょうに。

 それにしても、創竜伝14巻刊行無期限延期問題の時といい、何故田中芳樹および「らいとすたっふ」は、自分から公約を宣言しておきながら、このような「騙し討ち」同然のやり方でもって読者を煙に撒こうとするのですかね? これほど読者をバカにした作家の態度というのもそうはないのではないかと思うのですが。

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board4 - No.8211

Re8209:薬師寺シリーズ色々レス

投稿者:冒険風ライダー(管理人)
2009年07月02日(木) 11時44分

<で、その「現場で頑張って被災者に多大な感謝を受けた自衛隊」
は褒めるどころか言及すらしてくれませんよね(笑)。>


 言及すらしていない方が却ってまだ良かったのですけどね。田中芳樹の過去の言動から考えれば、「現場で頑張って被災者に多大な感謝を受けた自衛隊」を賞賛することすらも本来なら許されないことなのですから↓

創竜伝4巻 P173上段~下段
<ところで、世の中には、こういうタイプの人がいる。責任感や使命感が過剰で、自分がやらねば誰がやる、と思いこみ、他人のやることに口を出し、手も出し、結果として事態を悪化させるタイプだ。国家にもときどきあるタイプだが、それはともかく、終に集団KOをくらったレインジャーのひとりが、このタイプだった。彼は浅い失神からさめて、顔に吹きつける強風の存在を知った。降下扉があいて、そこにテロリストの若者が背中を見せて立っているのを見たとき、彼の責任感と使命感がショートした。
「逃がさんぞ、テロリスト!」>


 田中芳樹の論法からすれば、阪神大震災の被災者を迅速に救出するための出動準備を「国からの命令もないのに」せっせと行い、当時の現行法ギリギリのラインで被災者の救出活動に勤しんでいた阪神大震災時の自衛隊は「責任感や使命感が過剰で、自分がやらねば誰がやる、と思いこみ、他人のやることに口を出し、手も出し、結果として事態を悪化させるタイプ」のはずであり、対する村山富一率いる社会党政権は「有事の際にも平時の法律をきちんと守り、自衛隊の暴走を抑制した政府」ということになるわけですから、田中芳樹にしてみれば、阪神大震災時の自衛隊は本来大いに罵倒されて然るべき存在でしかないはずでしてね。
 にもかかわらず、実際には己の主義主張に反するこんなヘタれたタワゴトを口走っているわけです↓

創竜伝10巻 P145上段
<第一線に立つ中間以下の公務員たちはよくやっているのだ。大震災やトンネル事故のとき活動した自衛隊員、東京の地下鉄で兇悪な集団がサリンをばらまいたときには、サリンを車外へ運び出して多くの乗客を救い、自分は亡くなった職員もいた。そういったモラルの高さが、組織の上へ行くほど、反比例して低くなる。罪なき人を何百人も死なせておきながら、薄笑いを浮かべて平然と「記憶にありませんね」と言い放つ厚生省の高級官僚たちの表情は爬虫類めいていて、一般市民を慄然とさせる。おそらく、もっとも慄然としたのは、上司の正体を知った職員たちだろうが。>

 例の地震関連の発言もそうですが、過去の己の言動に対する反省・総括を全く行おうともせず、その場その場のストレス解消発言に終始する田中芳樹が、どのツラ下げて日本を批判できるのか、是非とも知りたいところではあるのですけどね。


<宗教に野暮を言ってる無粋は置くとして、「イエス・キリストが
生き返ったとして、そう名乗る人物」が所謂「イエスの奇跡」を
全部やってのければ、それは充分「イエス・キリスト」と言って
差し支えないんじゃないでしょうかね、泉田警部補。
 そもそも真っ先に「証明」を求めるのはまず「信者」だと思いますし。>


 というか、その「イエスの奇跡」に相当する「非科学的」な現象を、泉田準一郎はこれまで何回も実体験しているはずなんですよね。「妖怪や怪物がいることはすでに証明されているのだから、神だって存在するし、神の奇跡があっても不思議ではないのでは?」とその手の信者から問われた時、泉田準一郎はどう答えるつもりなのでしょうか?
 すくなくとも薬師寺シリーズの世界において、泉田準一郎が信奉してやまない「科学」とやらは、その問いに何ひとつ有効な解答を与えることはないのですけどね~(苦笑)。


<ついでにこれも物凄いブーメランで、J・F・ケネディ大統領の暗殺事件で黒幕疑惑の最筆頭はかの薬師寺涼子が「尊敬している」
と公言したFBI長官ジョン・エドガー・フーバーなのを田中
センセイと泉田クン知らないんですかね?>


 知ってはいると思いますよ。その薬師寺涼子がJ・E・フーバーを持ち上げている際の人物紹介説明に「J・F・ケネディ大統領やキング牧師の暗殺にかかわった疑惑さえある」という記述がありますし(2巻「東京ナイトメア」P12)。
 ただ、その手のアメリカの暗部を非難する一方で、その暗部を担う人物を「それと承知で」尊敬し、かつそれ以上の醜悪な言動に終始している薬師寺涼子を絶賛するのは、確かにブーメランそのものではありますね。田中芳樹も泉田準一郎も、身体中に大量のブーメランが突き刺さりまくっている薬師寺涼子の滑稽な惨状が何故理解できないのか、私も以前から不思議で仕方がないのですが。
 ちなみに薬師寺涼子が推奨するJ・E・フーバー氏は、田中小説版キング・コングでも「ジャック・ドリスコルに高圧的な態度で脅しをかけるFBI職員を束ねるボス」として友情出演しております。田中小説版刊行と同時期に公開されたリメイク映画版には、彼もFBIも作中に登場すらしていないにも関わらず(笑)。


<ハリウッド映画バカにしてますね。
 なら「プログラムに逆らえない苦悩を持ち、なお人間の尊厳と
警官の誇りを傷だらけで保ち続けるロボコップ」や「悪党と同じ
フリークスの孤独を味わいながらクライムハンターであり続ける
バットマン」「子供に慕われても平和を乱さないため一人去る
シェーン」を「勝った」の一言で済ませるつもりかと小一時間
問い詰めたいですね。>


 他にも、「ベトナム戦争を遂行するアメリカ軍首脳部の方針に反する行動を行い、味方と戦った挙句人間不信に陥ったランボー(第一作目)」とか「核戦争勃発の暗い未来が常にのしかかっているターミネーター1~3」などがありますし、アクション映画に限定しなければ、「悲劇的な結末を迎えるタイタニック」「致死性の高い伝染病によるパンデミックの発生と、街ごとウィルスを抹殺しようと画策する軍首脳部との対立を描いたアウトブレイク」などといったものも、ハリウッド映画にはありますね。
 第一、「正しい者が勝つ」などというスローガンは何もハリウッド映画に限定されるものではなく、往年の週刊少年ジャンプのバトル路線漫画などは出版社を挙げて軒並みその路線を踏襲していましたし、そもそも創竜伝や薬師寺シリーズにしてからが「正しい者」に理不尽なまでの圧倒的な力を付与して勝たせるというスタンスで成り立っているのですから、「創竜伝や薬師寺シリーズでは(作者的に)正しい者が勝ちますが、現実世界では強い者が勝つんです」と言い換えても充分に通用してしまうのですが(苦笑)。
 田中芳樹のハリウッド映画に対する理解というのは、どうもインディペンデンス・ディ辺りで止まってしまっているのではないかと私は思うのですけどね。「イギリス病のすすめ」でもこんなことを述べていましたし↓

イギリス病のすすめ・文庫版 P185
<田中:
 政権交代があることを当然と思ってるところと、現実にないところではね、意識が全然違う。ぼくは映画の「インディペンデンス・デイ」に見られるようなアメリカ人のセンスをなにかと言うと笑い話のネタにしてるけども……。(笑)
土屋:
 うん、ぼくもそうだから。(笑)>


 アメリカ人のセンスとやらを嘲笑う前に、読者に嘲笑われかつウザがられている「小説中にストーリーとは全く関係のない評論を大量にぶち込む」「過去の言動やストーリー設定を全く顧みない」己の小説執筆スタンスをどうにかしろよ、とハリウッド映画ファンのひとりとして私は言いたいですね。「ナルニア国物語」に関する評論についても言えることですが「人のことを言っている場合か!」と(>_<)。

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