- 親記事No.1005スレッドの返信投稿
- board2 - No.1188
Re: 反銀英伝 「大逆転! リップシュタット戦役」(18)
- 投稿者:不沈戦艦
- 2000年07月17日(月) 15時34分
更に続き。
------------------------------------------------------------------------------
今回の戦役であっさり消え去ると思えた貴族階級が、意外にしぶとい事にようやく気付いた、といったところであろうか。
「まあよい。いずれにせよ、卿にはオーディンへ急行してもらう。もちろん、タンネンベルク伯よりは先にだ。卿の艦隊運用の速度なら、彼に先んじることができよう」
ラインハルトは、ミッターマイヤーがタンネンベルク伯より先に、オーディンへ到達することに疑いはない、と思っているようである。
「しかし、それは何とも言えないのではありませぬか?侯爵閣下からこちらにいただいた情報では、タンネンベルク伯がいつオーディンへ向かい進撃を開始したか、全く解りませぬ。すでにタンネンベルク伯がオーディンへ到達している可能性も無きにしも非ず、と小官は愚考いたしますが・・・・・」
ミッターマイヤーは、言い難そうに指摘した。
「その場合は、直ちに私に連絡せよ。対処は追って指示する!」
ラインハルトは多少苛立たしそうに返答した。キルヒアイスにとってもそうだが、もちろんラインハルトにとっても「アンネローゼが貴族連合軍の虜囚となる」など、考えたくもない事態であることは間違いない。
「御意。では、小官は直ちに、麾下の艦隊戦力を率いてオーディンへ急行いたします」
ラインハルトの負の感情を刺激した事に気付いたミッターマイヤーは、それ以上何も言わず、敬礼の後に通信回線を閉じた。
「閣下。ミッターマイヤー提督の言う通り、タンネンベルク伯にオーディンに先着される可能性について、検討すべきと思慮いたしますが」
オーベルシュタインは容赦なく、金髪の若者に指摘した。ラインハルトが何を想像して、その可能性についての話を打ち切ったのか、もちろんオーベルシュタインは理解していたからである。
それでも、黙っているラインハルトに、オーベルシュタインは追い討ちを掛けるように告げた。
「この際はっきり申し上げましょう。グリューネワルト伯爵夫人が、貴族連合軍に捕縛された場合、侯爵閣下はいかに対処されるおつもりですか?」
重ねて指摘するオーベルシュタインに、ラインハルトは尚も答えようとはしない。
「敢えて申し上げます。グリューネワルト伯爵夫人一人の命がいかに大事とはいえ、侯爵閣下に付いている者たち全員とは引き換えにはできませぬ。最悪の場合、非情の決断もやむなきと考えますが」
「オーベルシュタイン!卿は、私に、姉上を見捨てろと言うのか!!」
----------------------------------------------------------
<以下続く?>
- 親記事No.1005スレッドの返信投稿
- board2 - No.1189
Re: 銀英伝新キャラ
- 投稿者:Merkatz
- 2000年07月17日(月) 22時58分
速水右近さんは書きました
> 北村氏の書き込みを見て、少々腹が立った。
> 「畜生、面白いじゃないか!」
> こちらも同業として、負けずに考えましたが……。
>
> ラインハルトの戦術の師匠。そして軍人として、また一人の男性として憧れた人物って、どうでしょう? こういうキャラがいると、ラインハルトの人間的魅力も出るのでは……。
>
>
> ・アニメ版の声。個人的には八奈見乗児氏を押したいが、ちょっと濃いかなぁ。無難なところで、大平透氏。あと、内海賢二氏ぐらいか。
>
八奈見乗児氏はゲルラッハ子爵、内海賢二氏はシドニー・シトレ元帥で既に登場済ですので、個人の独断と偏見で「秋元羊介氏」に決定。
師匠といえばこの人をおいて他にいないのだ!
「この馬鹿弟子が!」とかセリフがあれば猶よし!
分かる人だけ笑ってちょうだい。(^^)
- 親記事No.1005スレッドの返信投稿
- board2 - No.1190
新キャラの声優
- 投稿者:平松重之
- 2000年07月18日(火) 02時43分
Merkatzさん
> 八奈見乗児氏はゲルラッハ子爵、内海賢二氏はシドニー・シトレ元帥で既に登場済ですので、個人の独断と偏見で「秋元羊介氏」に決定。
> 師匠といえばこの人をおいて他にいないのだ!
> 「この馬鹿弟子が!」とかセリフがあれば猶よし!
> 分かる人だけ笑ってちょうだい。(^^)
秋元氏もヒルデスハイム伯や憂国騎士団団長などの役で登場していますけど…。
- 親記事No.1074スレッドの返信投稿
- board2 - No.1191
引き続いて要塞の話
- 投稿者:北村賢志
- 2000年07月18日(火) 13時13分
現実の世界においてイゼルローン要塞と同じとまでは言えなくとも、近い要塞としてはかってのジブラルタル要塞が挙げられると思います(他にもっと的確な例があればご指摘下さい)。
双方ともに大艦隊の母港であり、かつ要塞そのものも強大な戦力を有しています。また戦略的には二つの地域・海域(宙域)の接触する交通の要衝に位置しているという点で共通しています。
(大きな違いはジブラルタル要塞自体が直接戦闘をしたことは無い点です)
そこでジブラルタル要塞の第一の意義は当然、艦隊の整備や補給を受け持つ後方支援基地としての存在であり、駐留艦隊による地中海と大西洋の連絡線と両海域の制海権確保という攻撃的役割にあります。
そして第二として駐留艦隊が敗れたときに逃げ込む先であり、そこで周辺海域を要塞の戦力で制圧して敵艦隊を近づけさせず、イギリス本国艦隊の救援を待つ防御的な役割があります。
現実問題としてジブラルタル要塞は第一の働きしかしておらず、要塞機能そのものは特に実績はありません。
では要塞機能は無駄だったのでしょうか?
それは否です。
まず「敗れてもジブラルタルにさえ帰ればどうにかなる」という信頼感は、艦隊の志気を高めます(無論、行き過ぎると今度は積極性が無くなってやはり志気を損ないます。何事も程々が肝心です)。
またジブラルタル要塞の強力な戦力は敵に攻撃をためらわせ、戦闘を抑止する効果を生みます。つまりその存在そのものが敵の作戦を限定する効果があるのです。
要するに要塞は「面(銀英伝では空間ですが)を支配するために、点を絶対に確保する」のが本来の役目と言えるでしょう。
そして確保された「点」を拠点として「面」を支配するのが艦隊だと考えればよろしいかと思います。
言い換えれば要塞はどれ程強大であろうと、面を支配することが出来なければ存在意義はないことになります。
要するに「籠城せねばならない時点で負け」というわけです。
- 親記事No.1074スレッドの返信投稿
- board2 - No.1192
Re: 引き続いて要塞の話
- 投稿者:小村損三郎
- 2000年07月18日(火) 14時59分
北村賢志さんは書きました
> 現実の世界においてイゼルローン要塞と同じとまでは言えなくとも、近い要塞としてはかってのジブラルタル要塞が挙げられると思います(他にもっと的確な例があればご指摘下さい)。
> 双方ともに大艦隊の母港であり、かつ要塞そのものも強大な戦力を有しています。また戦略的には二つの地域・海域(宙域)の接触する交通の要衝に位置しているという点で共通しています。
> (大きな違いはジブラルタル要塞自体が直接戦闘をしたことは無い点です)
山海関&その前衛の寧遠城なんてどうでしょう?
悲劇の名将・袁崇煥の指揮の下、ポルトガルから導入した新兵器・「紅夷大砲」で清の太祖・ヌルハチを爆殺・・・。
その後も女真族の侵攻を阻止し続けますが、背後の北京が李自成の反乱軍の手に陥ちた為、守将・呉三桂は関を開いて清軍を導き入れてしまいます。(敵手に落ちた愛妾を取返す為という話もあり)
- 親記事No.1074スレッドの返信投稿
- board2 - No.1193
Re: Re.1067 銀英伝新キャラ続き
- 投稿者:速水右近
- 2000年07月19日(水) 08時33分
ちょっと、目の具合が悪くて……。
・師は、弟子の期待に見事に応えた。破綻していた後方部門が、一気に活性化したのだ。
・だが師は、それに満足しなかった。彼には、宇宙で、彼一人しか持つことの許されない野望を秘めていたのだ。それは……ラインハルトを歴史に残る、大戦略家にすることだった。
そして彼が選んだ手段は、自分の知るすべてを教えることであり、また彼自身が大きな壁となって立ちはだかることだった。
・海戦が終了するたびに、彼はラインハルトの前に行った。
「あそこは、なぜ、ああいう決断をしたのか?」
「敵がもしこういう変化をした場合、どう応対するつもりだったのか?」
並み居る提督たちを前に、師は弟子を追及する。
大半はラインハルトもすぐ返答したが、ごくまれに、詰まることもあるほど、指摘は辛辣だった。そして、そんな時は、
「閣下、貴方は優秀な戦術家です。
しかし貴方はまだ、貴方より優秀な人と、戦った経験がなかっただけかも知れませんぞ」
と、常に慢心を戒めた。
・そんな追求は、ラインハルトにとどまらなかった。彼の配下も、師の舌鋒の餌食となっていた。
あまり人の陰口を叩かないミッターマイヤーやミューラーさえ、「どうも、あの親父さんだけは苦手だな」
と、苦笑するほどであった。
・一方ラインハルトは、師の野望を見抜いていた。彼は、師の期待に沿うためにも、師から引き出せるものはすべて引き出そうと、心に決めていたのだ。
二人の立場は逆転していたが、師弟の絆は再び強く結ばれた。
・やがて、同盟との決戦が始まった。
前線の無理な要求にも、後方支援部隊は迅速に対応した。それが大勝利の背景にあったのだ。
・しかし、同盟との休戦が結ばれようとする前日、師は突然、ラインハルトの前に訪れた。
「本日を持って、軍を退役したく思います」
ややうろたえるラインハルト。
「何があったのだ?」
「何もありません。
ただ小官が、閣下に教えることがなくなったからです」
師は完全に、弟子に抜かれたことを悟っていた。
「よろしい。だが、私の願いを聞いてから辞めてくれんか」
ラインハルトは師の恩に報いるため、元帥に昇格させようとした。そのほうが、退役後の福利が優遇されるためである。
「それだけは、勘弁して下さい」と、固辞する師。
「なぜだ?」
「理由は簡単です。もし私が元帥になると、閣下と同格になるからです」
そして目を閉じた。「かつて私は、閣下の教師でした。そして私は、閣下にすべてを教え……今日、閣下は、もう私の手など届かぬところまで、上り詰められた。
私の名誉は、閣下を教えられたことだけで、充分です。
そして許されるのなら……、ひとつだけ、老人のわがままを聞いてやって下さい」
「わがまま?」
「はい。もう一度だけ、昔のように、私のことを呼んで下さいませんか?」
「先生」ラインハルトは跪き、師の手を取った。
「私は、不肖の弟子でした」
「いやいや。良くぞ今日まで、精進なさいましたな」
翌朝、師は、人知れず、帰郷した。
・後日談1
師は自宅に戻って旬日も過ぎず、愛用の釣り舟から転落し、死亡。
同盟との交渉中にその知らせを聞いたラインハルトだが、心で悔やみつつも、葬儀には向かわなかった。そんなことは、師が望まないと思ったからである。
しかし後日、護衛も付けず、ただ一人で墓参した。そして未亡人には、元帥と同等の年金を与えたのだった。
・後日談2
ヤンをはじめとする同盟軍残党討伐時、連邦軍は大きな危機を向かえていた。それは後方支援にいい人材がいず、補給が破綻していたのだ。またヤンは、巧みにそこを突いたのである。
全員が、沈鬱な表情の作戦会議で、一言、ビッテンフェルトが漏らした。「こんな時、あの親父さんがいたらなぁ」
彼は師の格好の標的だったが、この時、初めて偉大さを知った。
彼のように、故人の思い出に浸っていた室内に、ラインハルトの声が響いた。「死んだ者のことなど、言うな!」
俺も辛い。師の前には、キルヒアイスも死んだのだから……。
やはりこのキャラは、大平透さんですな、絶対。
- 親記事No.1074スレッドの返信投稿
- board2 - No.1194
Re: 艦船と要塞
- 投稿者:celetaro
- 2000年07月19日(水) 12時25分
とりあえず二度レスいただいた北村さんと、不沈戦艦さんへのレスです。
(とっしーさんへのレスは、長くなるのでまた今度、遅くなるかもしれませんが必ずします)
★まずは不沈戦艦さんへのレス
> > WW2の日本の場合を例にしますが、天皇の詔勅はB-29による原爆の脅威によって強制されたものだから従う必要は無いといって支那派遣軍あたりが徹底抗戦を続けても良いということになります。
>
> これは私も思いました。ヤンが政府の停戦命令を受け入れたのが軍法会議やら死刑に相当する、というのはいくら何でも無理なのでは。支那派遣軍だけではなく、玉音放送があっても、抗戦意欲を失っていない日本軍部隊はあった訳で。「政府の命令の方が間違っている」といって、戦い続けていい、とはならないでしょう。むしろ、そちらの方が軍法会議や死刑になりかねないのでは。まあ、銀英伝の話では、ヤンが交戦を続けてラインハルトを戦死させてしまえば、自動的に帝国軍は撤退する訳ですから、「政府首脳と首都の住民を犠牲にして、同盟を救う」というオプションはありかも知れませんけどね。「同盟を救う」を最優先させるのなら。その場合、ラインハルトを討ったヤンが、その後に立て直された同盟政府に掣肘される、ということは先ずないと思いますし。
たしかに、旧日本軍では天皇の詔勅に反抗して抗戦することは、制度的に見てもやはり違反でしょう。原爆の脅威は天皇や政府首脳や首都の住民だけといった全体からごく限られた人間だけでなく、大部分の国民を人質にされているようなものですしね。
自分の判断で行動するにしても軍司令官の行動は国益にそっていなければいけません。
わたしはバーミリオンのヤンの責任問題が近代国家すべてにあてはまるとは思わないです。ヤン・ウェンリーの所属する同盟がアメリカのような国家であるということを前提にしています(同盟がアメリカに似ているかどうか、というのは数年前に読んだときの印象だけで書いているので厳密にはちがうかもしれません)。
アメリカの場合、議会や大統領は機能や職務であり、特定の建物や特定の個人ではないとは先に書きました。議会や大統領が人質にとられてしまうと、アメリカではその瞬間に、その建物や個人は議会や大統領ではなくなってしまうのです。
つまりそういった人質にとられた人が命令をだすと、大統領が軍に命令を出しているのではなくて、ただの民間の一個人が命令を出しているのと同じことになるのです。つまり、軍司令官が民間の一個人の命令を聞いて行動するのはおかしいというわけです。
日本と違って、アメリカではそういった有事の時におこる可能性のある緊急事態にたいしては、まえもって細部まではっきりときめられています。政府の首脳が人質に取られたときの軍に対する命令権の序列がはっきりと決まっていたはずです。大統領が人質に取られてしまったときには副大統領が命令を出す、その次には誰々(国防長官? このへんは、はっきりと覚えていません)、その次には誰々、……というふうにです。政府と軍の首脳がみんな人質に取られてしまった場合は、軍司令官が自分の判断でアメリカの国益のために行動することになっていたと思います。
このあたりは、国防でもしものときについてのきまりがあいまいな日本とはかなり違うところです。
そういうきまりのもとで、十分勝利できるだけのみこみのある戦力をもった軍司令官が一民間人同然になってしまった人間の命令で降伏してしまったらどうなったかというのが、わたしが先の文章で頭に想定していたシチュエーションでした。
まあ、同盟軍にはこんな規定はなかったかもしれませんけどね。あったらヤンはともかくフレデリカは覚えてるでしょうし、フレデリカがはっきりといえば、ヤンの性格からしてちゃんと従ってたでしょうから。かといって、たとえ人質になっても命令に従わなくてはならないというような規定もないでしょうが……
このへんはよく考えてみると私自身もあいまいです。いろいろな解釈があると思いますが、こんな意見もあるよ、ということで。
上の記述とも関係しますが、普仏戦争を例にあげたところで、『それだけで敗戦になるということはありません』というのは誤解をまねく言いかただったかもしれませんね。『それだけではすぐに戦争は終わらない可能性があります』と言うべきでした。
普仏戦争の重要な意義はなにかというと、国家元首が捕らえられ首都が陥落してもまだ祖国のために抵抗しようとする戦闘集団が存在しうるということが、ヨーロッパ戦史上はじめてはっきりと確認されたということです。このへんは近代国家になることによってめばえてきたナショナリズムとかとも関係するんでしょう。
わたしが、この例をだしていいたかったのは、首都と国家元首が敵の手にわたっても、『まだ負けじゃないよ』ではなくて、『抵抗した人もいるんだよ』ということでした。
まあ結局、最後に負けてしまったことはまぎれもない事実なんですけどね。
> 「銀雄伝」って略は、普通は使いませんよ。一般的には「銀英伝」です。何か「銀雄伝」って言葉に、拘らねばならない理由でもあるのでしょうか?
『銀雄伝』というのは、たんに仲間うちでそう呼んでいただけです。特に他意はありませんし、こだわりもありません。方言みたいなものだと思ってください。どうやら、みなさんに異様な感じを与えているようなので、銀英伝と表記するようにしました。
★北村賢志さんへのレス
北村さんはじめまして。
著作は発売すぐに読ませていただきました。すばらしいできだと思いました。北村さんほどのかたに自分の意見を論評していただけるのは光栄です。
以下が、銀英伝中の要塞と一般艦船の関係についての私なりの考え方です。
書き込みを見ると、みなさんは要塞と一般艦船をはっきりと区別して考えておられるようです。たしかに現実に存在した要塞と一般の艦船はあきらかに違うものです。
その点において、北村さんのご指摘は、すべてごもっともだとおもいます。
ただ、銀英伝中には現実の戦史上には存在しなかった第三の前提があります。
それは、本格的な要塞が移動可能だということです。
わたし一人の考えが特殊なのかもしれませんが、わたしの解釈では銀英伝の作中での移動宇宙要塞は超巨大な宇宙戦艦と基本的におなじだというものです。
そのため、一般戦艦の大きくなったものの象徴として、わたし自身としては超巨大戦艦と解釈しているガイエスブルク要塞を出したわけです。イゼルローン要塞に対抗するためにはガイエスブルク要塞の大きさかそれ以上のものが必要でしょうが、いつでも要塞ほどの大きさのものが必要だと言っているわけではありませんでした。
人が自分と同じように考えているはずだという思いこみと、わたしの文章力の不足のために、このあたりは、移動要塞と戦艦をはっきり区別されている方との間で解釈の違いがあったようです。
戦艦と航空機はあきらかに違う兵器です。戦車と歩兵もあきらかに違う兵器です。
わたしが大艦巨砲主義をいうときに、このような違った目的もしくは環境の元で使用されることを前提とした兵器どうしの大きさや火力を比較しているのではないということをご了承ください。
しかし、銀英伝中の宇宙戦艦と移動宇宙要塞はどうでしょう。
銀英伝では艦船と要塞はあまりにも大きさが違うのではっきりと区別できます。
では、かりに艦船と要塞の間の大きさの火力と装甲をもった移動兵器があったらどうでしょう。
これは果たして小型移動要塞でしょうか? 巨大宇宙戦艦でしょうか?
私の疑問の一つは銀英伝の作中で、なぜ最大の大きさの艦船があの大きさにとどまっているのかというものです。これが前文で書いた作者の小艦多砲主義にたいする疑問です。
艦隊基地と連絡線確保の点においての(移動)要塞と、一般艦船の区別についてですが、たとえば、要塞の一つの機能として艦隊への補給能力をあげることができると思います。
しかし、これでも移動要塞と超巨大戦艦は区別できにくいと思います。
たしかに要塞は艦隊への補給能力を目的の一つとして基本から設計されているのでしょうが、大型艦船もその大きさ自体によって一種の補給基地としての機能を後天的に果たす任務を負わせられる傾向があります。
たとえば現在のアメリカの大型空母は随行する艦船の燃料を積んでいます。これはアメリカの大型空母が一面として艦隊補給基地としての性向をもっているといっていいでしょう。WW2でも長大な航海のときには航続距離の長い大型艦が随行の駆逐艦などに燃料を補給する可能性はありました。
アメリカ空母はせいぜい随行艦船の数倍から二十数倍程度です。が、超巨大戦艦ならば、大きくなるにつれて、一般艦船の完全なメンテナンスが可能になるなど、どんどん現実の艦隊基地に近づいていくでしょう。
以前にも書きましたが、銀英伝の作者は作中にイゼルローン要塞を出すことにより、大火力大装甲の兵器が一般艦船に絶大なる力を発揮するという前提を提示しました。ならば、要塞が一般艦船に絶大な強さをみせるのと同じように、比較的大きな戦艦は一般の大きさの戦艦にかなりの強さをみせるはずだと思うのです。要塞の大きさそのものを動かすのには技術的な信頼性などの問題があるかもしれません。しかし、とにかくそれだけの技術力があの時点で完成しているのであるのならば、それよりずっとずっと以前に、一般戦艦の二倍三倍あるいはそれ以上の大きさの戦艦をかなりの信頼性をもって運用できるようになっていてもいいとおもうのです。
といって、わたしはすべての艦船が大きくならなければならないというのではありません。大型艦の護衛や、地形や環境・目的によっては、小さな艦船のほうが有効な場合もあるでしょう。実際、大艦巨砲全盛の時代でも戦艦よりも小さな艦船は多数建造されました。
そういったこともありますから、小型艦が有効であるということを私は否定していません。しかし、だからといって作中のものよりも大きな艦が存在しなくてもいいとも言いがたいと思うのです。
二倍の大きさのものは遅くなるかもしれません。しかし、ご存じのように、軍艦が大きくなるのは、主に、火力・装甲・速力・航続力を増大するためであって、大きくなっても火力・装甲・搭載燃料がともにかわらないのなら、速度が増大することもあるわけです(つまり推進装置だけを大型化した)。うまく設計すれば高速戦艦のようなバランスのとれたものができるかもしれません。とにかく二倍の大きさの戦艦は、ガイエスブルク要塞よりははるかに普通の艦船の速度にちかい運動ができるのは確かです。また、二倍の大きさの戦艦がたとえ遅いとしても、コストなどの理由によって要塞のおけないような拠点に対する攻防戦、敵の艦隊の進撃を止める遅滞戦術などのときにはきわめて有効な兵器であると思います。
攻撃側に二倍の大きさの戦艦がなく、防御の側にだけ二倍の大きさの戦艦があったらどうなったでしょう。小説中では大火力大装甲が有効であるという前提がある以上、二倍の大型艦をもっていない陣営は、非常に苦しい立場に立たされると思うのです。
やがて、攻撃側も同じように二倍の大型艦、またはそれ以上のものを建造しようとするでしょう。そうなると大艦巨砲主義の到来です。小型の艦船の建造も続けられるでしょうが、両軍の間でより大きな艦を作ろうという建艦競争がはじまるはずです。そうして、戦いが続く限りは、どんどん大きくなり、戦艦から航空機へのような主力兵器の転換がおこらないかぎり、ある過渡期の一時点には戦艦は移動要塞ガイエスブルクの大きさまで到達するというわけです。
- 親記事No.1074スレッドの返信投稿
- board2 - No.1195
なぜ大型化しなかったのか?
- 投稿者:北村賢志
- 2000年07月19日(水) 23時28分
> 北村さんはじめまして。
> 著作は発売すぐに読ませていただきました。すばらしいできだと思いました。北村さんほどのかたに自分の意見を論評していただけるのは光栄です。
ありがとうございます。
celetaroさんのご指摘も決して的はずれとは思っていません。
そこで銀英伝のSF設定を見てみますと、銀英伝で出てくる戦艦は基本的に1気圧、1G下で行動できることを前提としています。
アニメでは惑星上で艦隊が行動するシーンが煩雑に出てきますし、小説でもブリュンヒルトをはじめとして戦艦が各地の惑星に直接降りることが出来ている事を見れば間違いありません。
これは銀英伝では設定上、宇宙空間に「危険宙域」が多々存在し、そう言った空間に近づいてもある程度まで安全性を確保できることもかねていると推測されます。
つまりその環境下で問題なく行動できる艦の最大規模があのサイズということなのではないでしょうか。
また別の理由を考えると、銀英伝の3巻で複数のワープエンジンを同時に動かす技術が確立するまで、船体の大型化よりも必要とされるワープエンジンの大型化の方が勝ってしまっていたとも考えられます。
即ちサイズが2倍の船体を運ぶために必要なワープエンジンは船体の大型化を越えて大きくなり、そのエンジンそのものを運ぶため更にエンジンが大型化し、その結果船体がまた大型化し・・・
という「空想科学読本」的状況を生んでいたのではないでしょうか。
-
- board2 - No.1196
涼子について
- 投稿者:男爵
- 2000年07月21日(金) 04時42分
以前、徳間書店からでた太田忠司の「狩野俊介シリーズ」
に、田中芳樹の推薦文みたいなものが、掲載されてました
そのシリーズは天才型だがどこか一般から離れている若い探偵と
秀才型で堅実な年上の探偵がコンビをくんで、事件を解決するもの
田中芳樹は「まったく新しい探偵の形式」とかなんとか、絶賛
してました
そんでもって、しばらくのちに発売された涼子シリーズ
「設定、そのままやん!」
ゆう感じ
不可能犯罪の変わりに、非現実犯罪を発生させただけのことでした
- 親記事No.1074スレッドの返信投稿
- board2 - No.1197
Re:1180 執筆戦略?
- 投稿者:速水右近
- 2000年07月21日(金) 11時29分
celetaroさんは書きました
>
> 銀雄伝はSFに補給という概念やリアルな戦略・戦術をもちこんだ、と評価する人がいます。もちろん私の軍事的知識はまったくたいしたものではないのですが、その私が見てさえ、田中芳樹氏には近代戦、もしくは民主主義における軍隊の軍事的知識はほとんどないといっていいでしょう。小説の主要キャラクターが作者の反映であるというのはよくあることですが、氏もまさにヤン・ウェンリーと同じで軍事のことが嫌いなのかもしれません。彼の銀雄伝における戦略・戦術などにおける軍事知識の多くは、近代以前、それも三国志以前の古代中国時代の知識がほとんどだと思われます(もちろん、旧日本軍の失敗や、ナポレオンのドレスデンの戦い(アスターテ会戦)などを作品中に取り入れているので、すべてではないですが)。
> たとえば、敵兵力をほうっておいて首都を攻撃する、そして首都が陥落したらその国は戦争にまけるという考え方、戦略的勝利をすれば敵兵力の追撃・撃滅などはやるべきではないという考え方、敵を完全包囲するのではなく逃げ道をあけてやりながら攻めるという考え方、これはとても近代以降の軍隊が戦争でやることではありません。近代以降の軍隊が戦争でやらなければならないことはまず第一に敵兵力の完全包囲による撃滅なのです。
>
> さて、そうまさんが思っておられる問題に話題をうつしますと、日本の戦艦大和は、万里の長城やピラミッドとならべられて、無用の長物と言われたことがありました。田中芳樹氏は旧日本軍に対する批判的な態度がそのせいかどうかはしりませんが、どうも大艦巨砲主義はまちがいだとあたまから決めつけているようなところがあります。『七都市物語』などでもこの傾向は見受けられます。
> 実は現在でも大艦巨砲主義は脈々と生き残っています。
> たとえば戦車を見てください。戦車は新型になればなるほど大きな主砲を搭載しています(戦車の場合は接地圧という問題があっていくらでも大きくなるというわけではないですが)。戦闘機だって、F15とゼロ戦の大きさをくらべればいかに大きくなっているかがわかるでしょう。戦艦はなくなりましたが、正規空母も第二次世界大戦のものにくらべて大きくなっています。第二次世界大戦において、間違いになったのは大艦巨砲主義ではなく、航空機の発達によって戦艦がコスト対効果の悪い兵器になってしまったことなのです。大艦巨砲主義の反対は小艦多砲主義でしょう(田中芳樹氏の銀雄伝や七都市物語がこの小艦多砲主義の有効な世界です)。しかし、太平洋戦争においては、戦艦に対して航空機が圧倒的に優勢なのは現実に証明されましたが、小規模で特殊な戦場でならともかく国家の帰趨をはかるような主要な戦場で、大艦巨砲主義よりも小艦多砲主義が有効だというのは、私の知識のレベルでは聞いたことがありません。
> 田中芳樹氏は大和に象徴される戦艦のアンチテーゼとしての、航空機と小艦多砲主義を混同しているのではないかと思うところが多いです。
>
> 日清戦争の定遠・鎮遠が有名ですが、宇宙船などにおいても数万隻の船をつくるのならそのコストをつかって、大きな船を少数つくったほうがおそらく強くなるはずです。ジュトランド海戦でも高速な船の柔軟な運用よりは強力な装甲の方が有効であるという結果がでています。カルタゴの五段橈ガレー船もそうでしょう。しかし、百歩ゆずって、未来の宇宙では大艦巨砲は有効とはいいきれないと、ここではしましょう。実際、未来の宇宙では現在の私の発想からはうかがいしれぬようなことが起こっているかもしれませんから。
> しかし、それでも銀雄伝は救われません。なぜなら、銀雄伝は軍事面であきらかな矛盾を持っているからです。その一つが、大艦巨砲主義はまちがいであり、比較的小型宇宙船多数による柔軟な運用が有効だというふうな表現をしていながら、大艦巨砲主義の権化中の権化であるイゼルローン要塞を作品中に登場させてしまったことです。
>
> イゼルローン要塞を作者がなぜ出そうと思ったのか、私は知りません。しかし、たとえばスターウオーズを見たのかもしれません。デススターとイゼルローン要塞は形としてもその主砲の能力においても非常によく似ていると私には思えます。もしかしたらスターウオーズを見て、こういうものを出せば作品が面白くなると思って作者は小説の中にいれてしまったのかもしれません。そのへんは私には知りようのないところですが、ともかくイゼルローン要塞を小説中に登場させることによって、大艦巨砲主義よりも比較的小型の宇宙船を多数運用するほうが有効だという、銀雄伝の軍事的側面の蓋然性の一つは自己崩壊してしまったのです。
>
はじめまして。
celetaro氏のおっしゃる通り、「銀英伝」の軍事描写には、様々な矛盾点が見受けられます。
しかし、どうなのでしょう。田中芳樹自身、ある程度、自分に軍事知識がないことを自覚している「部分もある」と思うのですよ。それこそもしも彼がやたらめったら細かくするオタク系作家だったら、かえって「銀英伝」は売れていなかったと思うのですよ。というか、書けなかったのかも知れませんね。
軍事描写の不備についてご立腹される気持ちはよくわかりますが、問題は、そちらではないような気がするのですが。
小生の私感ですが、田中氏は「作家」として、うまく二つの顔を使いわけていますね。ひとつは「軍事戦略に詳しい作家」。もうひとつは、「軍事知識には疎い物語作家」と。これらを交互に入れ替えて、読者を困惑させる、と。
この「執筆戦略」に引っかかった読者は「信者」になり、のらなかった連中は、ここに集まった(爆笑)。
個人的な意見ですが、たとえ作者に軍事知識がなかったとしても、「銀英伝」の物語部分が救われないとは思いません。ただ作者の自己演出のために作品が翻弄され、間違えている部分まで過大評価されているのは、忌々しきことですが。
なお小艦戦略を実現したのは、
・1880年代から、第一次大戦までのフランス
・第二次大戦終結から、ゴルシコフ登場までのソ連
両海軍だけでしょう。
どちらにしても、国家を取り巻く状況が特異な状況だったために、やむなく選択した戦略だと思います。
- 親記事No.1005スレッドの返信投稿
- board2 - No.1198
Re: 反銀英伝 「大逆転! リップシュタット戦役」(19)
- 投稿者:不沈戦艦
- 2000年07月21日(金) 16時34分
更に続き。
------------------------------------------------------------------------------
「オーベルシュタイン!卿は、私に、姉上を見捨てろと言うのか!!」
オーベルシュタインのあまりと言えばあまりの進言に、ラインハルトは再度激昂した。「非情の決断」が何を意味するのか、理解できないラインハルトではない。「アンネローゼを死なせてもやむを得ない」、いかにもオーベルシュタインらしい物言いだが、だからと言って、ラインハルトにそれを受け入れられる訳はなかった。
「あくまで最悪の場合は、ということです。そこまでの御覚悟が必要な場合も起こり得る、と申し上げているのです」
平然と言い放つオーベルシュタインである。
「もうよい!要は、ミッターマイヤーがタンネンベルクに先んじればよいのだ。それで話は解決する!!」
「ですから、それは単なる希望的観測に過ぎない、と再三申し上げております。タンネンベルク伯は、キルヒアイス提督ですら手玉に取られてしまうような始末の悪い相手だ、ということをお忘れではありますまい」
「もうよいと言っているだろう、オーベルシュタイン!!キフォイザー星域よりは、我が軍の現在位置の方がオーディンへは近い。しかも、ミッターマイヤーの脚の速さは、帝国軍随一と言ってもよかろう。卿の心配は、杞憂に終わる可能性が高いのだ」
進言を拒絶するかのようなラインハルトの物言いに、ついにオーベルシュタインは一礼して引き下がった。しかし、オーベルシュタインとしては、決して納得した訳ではない。キルヒアイスを簡単に手玉に取ったタンネンベルク伯のやり口からすると、ここでもラインハルトの思惑が裏切られる可能性は高い、と判断していたが為である。
「何か策を考えておかねばならぬな・・・・・ローエングラム侯と雖も、所詮は人の子か。覇者となるべき人物がそれでは困るのだが」
オーベルシュタインとラインハルトでは、全く視点が異なっている。ラインハルトは、そもそも姉、アンネローゼを皇帝に問答無用で奪われたことで、誰にも命令されない地位、覇者となる志を持ったのだ。その課程で、腐敗し堕落しきった大貴族たちの姿を目の当たりにし、社会革新をも目指すようになった訳である。ラインハルトの志の出発点である、肝心の姉を捨てよ、などというオーベルシュタインの進言を、受け入れる筈もない。極端なこと言えば、アンネローゼとキルヒアイスとの魂の通いあった生活があれば、ラインハルトはそもそも宇宙など必要とはしなかった。その幸せを奪ったのが帝国最大の権力者、神聖不可侵なる銀河帝国皇帝であったからこそ、自らがその地位を凌駕し、姉を取り戻す必要が生じたのだ。「姉さんを奪ったのが皇帝である以上、おれが皇帝より力を持つしかない」それが、ラインハルトの原点である。
オーベルシュタインとしては、ゴールデンバウム王朝を叩き壊すべき新たなる覇者を求め、その結果、その可能性を濃厚に有する、ローエングラム侯ラインハルトに接近したのである。ラインハルトを主君とは仰いでいるものの、その意識としては「契約」に近いものがあった。オーベルシュタインの謀略・諜報など権謀術数に関する能力をラインハルトに提供し、報酬としてゴールデンバウム王朝の滅亡を得る。それがオーベルシュタインの目的だった。あくまでゴールデンバウム王朝を打倒することが優先であって、その為には、アンネローゼの安全は必要がない。いや、アンネローゼを積極的に害することは無論ないのだが、アンネローゼを犠牲にしてゴールデンバウム王朝の打倒がなるのなら、躊躇わずそうすべきだ、とオーベルシュタインは考えてしまう。とは言っても、それは何もアンネローゼに限った話ではなく、誰であろうと同じである。ナンバーワンたるラインハルト以外なら、味方陣営の人間でさえも「必要とあらば、犠牲にすることを厭うべきではない」、その思想がオーベルシュタインのオーベルシュタインたる所以であった。オーベルシュタインは、自分自身ですら、「必要とあらば犠牲にする」中に平然として入れていることが、この男の容赦を知らぬところであろう。
----------------------------------------------------------
<以下続く?>