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投稿ログ235 (No.3818 - No.3823)

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board4 - No.3818

Re3813:索敵能力の根拠

投稿者:冒険風ライダー
2003年03月01日(土) 09時54分

<これは、冒険風ライダーさんにお伺いしたいのですが、この索敵範囲の引用もしくは判断は、どのようにして行ったものなのでしょうか。
直接に引用した記載部分があるのでしたら、是非とも教えていただきたいです。>


 これはまず、パンツァーさんも引用なされていたアスターテ会戦の事例を参考にしています↓

銀英伝1巻 P22下段~P23上段
<「赤い矢印がわが軍、緑の矢印が敵です。わが軍の正面に敵軍の第四艦隊が位置し、その兵力は艦艇一万二〇〇〇と推定されます。距離は二二〇〇光秒、このままの距離ですと、約六時間後に接触します」
 画面を指すキルヒアイスの指が動いた。左方向には敵軍第二艦隊がおり、兵力は艦艇一万五〇〇〇隻、距離は二四〇〇光秒。右方向には敵軍第六艦隊がおり、兵力は艦艇一万三〇〇〇隻、距離は二〇五〇光秒。
 反重力磁場システムを初めとする各種のレーダー透過装置や妨害電波の発達、さらにレーダーを無効化する材料の出現により、レーダーが索敵装置として用をなさなくなって数世紀が経過している。索敵は有人偵察機や監視衛星など、古典的な手段に頼るしかない。それらによってえられた情報に、時差や距離的要素を加算して敵の位置を知る。これに熱量や質量の測定を加えれば、不完全ながらも一定の索敵が可能となるのだ。>


 この段階ですでに、銀英伝世界における「艦隊」には、すくなくとも2400光秒先の敵を発見できるだけの索敵能力があることが判明するのです。ただし、これは上記引用にも書かれているように「有人偵察機や監視衛星」、それに駆逐艦などを先行派遣して索敵しているものと考えられますので、その先行距離分を差し引いた上で、有人偵察機や監視衛星や駆逐艦「単体」の最大索敵能力を考慮する必要があります。
 そして、有人偵察機や監視衛星や駆逐艦「単体」の最大索敵能力については、銀英伝3巻に以下のような記述が存在します↓

銀英伝3巻 P139上段
<「前方の空間にひずみが発生」
 オペレーターが報告した。
「何かがワープアウトしてきます。距離は300光秒、質量は……」
 オペレーターは質量計に投げかけた視線を凍結させ、声を飲みこんだ。声帯を再活動させるまで数秒間を必要とした。
(中略)
「急速後退しろ、時空震に巻きこまれるぞ!」
 グループの指揮官ギプソン大佐も、全艦に急速後退を命じていた。16隻はエンジンの出力が許すかぎりのスピードで、異変の生じつつある宙域から遠ざかった。巨大な時空震の波動が彼らを追い、空間自体がひずみ、揺動して、彼らの心臓を見えざる手でしめあげた。コーヒーカップが操作卓の端から床に落下して砕け散った。それでも、彼らは索敵の義務を忘れず、スクリーンをにらみつづけていた。やがて、彼らの目に衝撃が走り、声のない悲鳴があがった……。>


 この描写では、移動要塞のワープアウト座標を確認した後、時空震に巻き込まれるのを避けるために一旦遠ざかった後、改めて目視を含めた索敵活動を行うことによって移動要塞を発見しているわけです。この事例から、有人偵察機や監視衛星や駆逐艦「単体」の最大索敵能力がすくなくとも300光秒よりは上であることが判明します。
 さらに忘れてはいけないのが、銀英伝世界でしばしば行われている「軍艦による巡視や臨検」の存在です。これらは広大な宇宙空間を、一隻の軍艦ないしは複数艦艇の集団が決められた宙域をパトロールすることによって機能しており、それがしばしば宇宙船や敵艦隊を発見するのに貢献しているわけです。
 これは索敵にもある程度応用されているらしく、ドーリア星域会戦時の索敵では、ドーリア星系の隣の星系にまで偵察に出た「一隻の」駆逐艦が、敵艦隊を発見するという成果を挙げています↓

銀英伝2巻 P121下段~P122上段
<はりつめた状況のまま、カレンダーは五月に変わった。三〇〇〇光年を超す宇宙空間を、第一一艦隊が接近してきつつある。その点に関しては、バグダッシュの情報が正しかったことが確認されていた。
 ヤンはドーリア星系まで艦隊を進め、情報の収集と分析に目を送っていたが、五月一〇日、隣接するエルゴン星系まで偵察にでた駆逐艦が、大艦隊を発見、急報の後、通信が途絶した。会戦に先だつ最初の犠牲だった。ヤンはさらに思考をかさねた。正面から戦っても勝つ自信はあるが、彼は広大な宇宙空間の要所要所に潜めた偵察艇からのある報告を待っていたのだ。短期間に完勝しなければ、クーデター全体を鎮定することは困難になる。>


 銀英伝の作品中でこういったことが実際に行われているわけですし、No.3787でも触れた銀英伝7巻P59には、同盟政府から逃亡したヤンの「不正規隊」(言うまでもなく、「不正規隊」は全て「索敵防御能力を持つ軍艦」で構成されています)を、巡視中の同盟軍艦艇が発見するエピソードまで存在しているのですから、たとえ単艦でもその索敵能力はそこそこにはあるのではないかと考えられます。そしてここから私は、アスターテ会戦と第8次イゼルローン要塞攻防戦で算出されていた数値300~2400光秒をプラスマイナスして、単艦当たりの最大索敵能力を500~1000光秒程度と推測したわけです。
 私が提示した索敵能力の根拠は大体こんなところですが、いかがでしょうか。


 それと余談ですけど、「亜光速船の皆無」については、アスターテ会戦関連の記述以外にも、以下のような記述が存在します↓

銀英伝2巻 P125下段
<彼の旗艦の前には、グエン・バン・ヒュー少将の指揮する三〇〇〇隻の集団が息を潜めて攻撃命令を待っている。左右と後背に展開する味方も。
「彼我の距離、六・四光秒、キロにして一九二万……」
 オペレーターの声も、ささやくように低い。
「敵はわが軍と垂直方向、右から左に移動しつつあり、速度は〇・〇〇一二光速、キロにして一秒間に三六〇〇、恒星系内速度限界にちかし……」
 照明の抑えられた薄暗い艦橋内を、オペレーターの声の他は、わずかな呼吸音だけが支配している。>


 一秒間に3600㎞の航行速度ということは、一時間(3600秒)で1296万㎞、光秒に換算して43.2光秒にしかならず、しかもこれが「恒星系内速度限界」などと言われているわけです。
 もっとも、「アルテミスの首飾り」破壊に使われた無人の氷塊が光速の99.999%まで加速した実例がありますから、その気になれば亜光速を出すことはできるのでしょうが、アスターテの事例と併せ、すくなくとも艦艇については、何らかの理由で亜光速を出すことができないようになっている、と考えるのが妥当でしょう。
 まあ正直言って、この辺りの数値誤謬については、あまり理系に精通しておらず、しかも算術計算が苦手であろう田中芳樹故の矛盾だとは思いますけどね。

親記事No.3625スレッドの返信投稿
board4 - No.3819

Re:とりあえず数点だけ

投稿者:パンツァー
2003年03月01日(土) 12時59分


> はじめに、冒険風ライダーさんの、以下の発言の解釈ですが、
>
> <これはないでしょう。作品の外から「現代世界の物理法則に基づいた要塞の燃費問題」を持ち出してきたのであれば、その正当性や妥当性の立証責任は100%「持ち出してきた側」にあるのです。そしてその証明が「できるかもしれないし、できないかもしれない」で良いはずがないではありませんか。>
>
> もちろんこの発言の主旨は、パンツァーさんが言われるように、作品の外から設定を持ち込むことには重大な責任を伴うというものです。別に誤解したとは思いません。
>
> 私が言いたかったのは、冒険風ライダーさんは、「恒久的移動要塞」「無限の自給自足能力」といった、銀英伝に直接記述のない設定を持ち出したのであり、上の発言を考えると、そのことに対する立証責任があることをよく理解されたうえで、私が前回引用したような「立証した」という発言を繰り返したはずだ、ということです。つまり、自分の説が唯一の説で、他の説は成立しない、という主張です。
>

根拠があって、それをもとにして結論を導くという作業を行います。
結論を導くのに利用した根拠がすべて作品中にあるのならば、別に問題はないのです。
根拠の一部でも作品外から引用するのであれば、そのときに立証責任が生じるといっているのです。
もっと分かりやすく言えば、作品外から引用した根拠が、根拠として正当なのか妥当なのかを立証せよ、と言っているのです。
作品に示されていない「現代の物理法則」を適用するのであれば、それを適用できるとする「正当性」「妥当性」を、まず立証せよ、と言うことです。

結論としての「恒久的移動要塞」「無限の自給自足能力」を問うているわけではありません。立証責任の対象としているのは、あくまで「根拠」の方です。無論、立証責任を解決していない「根拠」を前提に結論を導けば、その「結論」も立証責任を要するものとなります。

この点を、Kenさんは、理解しておりません。



> ユリアンは「いまイゼルローンが安泰」であるとし、その事態が急速に変わるとは思っていません。50年程度その状態が持続する、とは、このように帝国との戦争状態がないことを前提にしています。

ここで、Kenさんの側において、仮定を行うわけですね。
作中事実より50年は無補給で自給できる、と。
(私の意見ではありませんので、念のため)

> このように、こちらは要塞が外敵と戦争状態にあることを想定しています。つまり、ユリアンやキャゼルヌの発言とは、前提が異なるのです。大量の物資を消費する戦争状態が「ない」場合の話を「ある」場合に適用した時点で、論理的に破綻しています。

しかし、上の仮定においても、平時と戦時とでは、物資の消費量が異なるので、論理的に破綻する、と。

銀英伝1巻(黎明篇)八章-1
<部下の報告をキャゼルヌはさえぎった。三〇〇〇万人の同盟軍将兵を対象とする補給計画は、キャゼルヌの手によって立てられており、その運営に関しては彼は自信を持っていた。>

<「知っている。どうも過大な要求という気もするが、占領政策上、やむをえんのではないかな」「総司令部(イゼルローン)にそれだけの物資はありません。」「本国に要求を伝えればよかろう。経済官僚どもがヒステリーをおこすかもしれんが(以下略)」>

少なくとも、イゼルローン要塞には、本国からの補給なしでも、三〇〇〇万人の同盟軍将兵(八個艦隊)を支えるだけの補給能力がある、ということです。

また、戦闘の程度が激しく、消費が生産を上回る事態が生じるようなことがあったとしても、それは「移動する補給拠点」としての「移動要塞」を否定することにはならないでしょう。「無限の自給自足能力」というのは、「本国」からの補給がなくても無限に活動できる、の意味なのであって、生産力が無限にある、という意味ではありません。
例えば、毎年作物が取れる田畑を考えてみればよいのです。毎年の収穫量は一定ですが、半永久的に作物を取ることはできるわけです。収穫量を超える消費が発生するか否かは、また別の話です。

それに、イゼルローン要塞が、八個艦隊の補給に対処できる、という作中記載もお忘れなく。

> 純軍事的に見れば、帝国軍の回復力は無限にひとしく、ヤン・ウェンリー軍のそれはゼロに近い。(乱離篇第三章-4)
(中略)
> *ヤン・ウェンリー軍の回復力はゼロに近い。
> *ヤン艦隊の回復力はいちじるしく劣勢。
>
> これらは、ユリアンやキャゼルヌの台詞から間接的に推測したものなどではありません。そのものずばりの直接記述です。これらの直接記述からして、「無限の自給自足能力」など幻想の産物であることが分かります。イゼルローン要塞に無限の補給力があるなら、すくなくとも前線が「補給物資を費いはたす」ことはないでしょう。いくら使おうが、要塞から補給してやればよいのです。

これは、人的資源に限りがある、ということを示しているだけでしょう。
無人艦隊なるものは、銀英伝中に登場しなかったと思いますが。

> こういう行き違いを生じるからこそ、「50年」を「半永久」と言い換えるようなことをしてはいけないのです。「50年」は、いくら長くても有限の数字です。有限なればこそ、戦争状態の有無のように、条件が変わることで、50年がそれよりもっと短くなりうる、という考察が可能になります。ところが、一旦、無限という設定にすりかえると、いくら物資を費消しても、尽きることがありません。

上でイゼルローン要塞が単独で、八個艦隊を同時に補給できる例を示しました。この八個艦隊が動員された作戦において、作戦の実行期間は限定されておりません。少なくともキャゼルヌは、作戦期間を無前提で、補給計画を立案しております。

また、上の田畑の例を参考にして欲しいのですが、「無限」というのは、生産が限りなく続く、の意味であって、単位時間辺りの生産量が無限だというわけではありません。単位時間あたりの生産量に関しては、八個艦隊の運用は可能、と作中事実は示しています。



問題になっているのは、駆動の手段そのものではなく、駆動に必要なエネルギーをどのように確保するか、という点です。同じくワープエンジンを利用するにも、帆船が風を利用するようにエネルギーを外部調達できるか、タンカーのように燃料を自分で運ばねばならないか、です。無補給航行のためには、エネルギーの外部調達が必要です。
>
> そのようなエネルギー外部調達の実例を、「銀英伝に書かれていること」から見つけようとすると、見つかるのは一つしかありません。ヤンが氷塊の加速に利用した「バサード・ラムジェット」です。ただし、厳密な意味でのバサード・ラムジェットではワープはできません。現実世界で論じられるバサード・ラムジェットも、作品中で実現しているものも、ともに亜光速を出せるだけです。「書かれていること」しか持ち込まない、という前提に立つと、「無補給航行」はその時点でアウトになり、登場人物が艦船の燃料補給を問題にしないのは、あくまでも、数ヶ月の作戦期間(帝国領侵攻は約3ヶ月、ラグナロックは5ヶ月継続)なら、積載燃料が余裕でもつから、ということになります。また、イオン・ファゼカスも、アルタイル7で積み込んだ燃料で航行をしたことになってしまいます。
<「書かれていること」しか持ち込まない、という前提に立つと、「無補給航行」はその時点でアウトになり>

なぜですか?
「無補給航行」の原理が不明、というだけの話です。
ワープエンジンの原理も不明ですが、原理が不明なので、アウトにしますか?
論じるに際して、同一の基準を適用してください。

> この方法については、最初に観察中さんが問題を指摘し、私自身が補足説明を加えていますが、艦船が大質量になるほど、エネルギーを確保するため大量の星間物質を引っ張ってくる必要があり、引っ張ってくるのに必要なエネルギーと、引っ張ってきた物質から得られるエネルギーが、どこかで必ずクロスします。

これも、どこかで述べたと思いますが、
ワープというのは、燃費の点から言っても画期的な技術かもしれません。
スタートレックの世界では、そのようになっています。
すくなくとも、アインシュタインの公式を元に、質量欠損エネルギーを運動エネルギーに転化する式の論理は当てはまらないでしょう。

> ということになります。結論として、要塞が無補給航行できるとも。できないとも、証明することは不可能です。恒久的移動要塞の実現性を、我々読者が判断することはできないわけだから、ラインハルトやヤンのような、作中人物の判断を信用するしかなくなります。

作中の記載から言えば、ガイエスブルグ要塞の一万光年にわたるワープに関しても、燃料補給の問題は取り上げられておりません。
一般艦船の場合と同様の扱いです。

元投稿で、敵地であるとかないとか、Kenさんはそんな理由を述べていたように思いますが、それは補給路の切断が容易か否かの問題であって、補給線が必要か否かの問題ではありません。つまり、これは、関わりがありません。


大体問題は、作者である田中芳樹氏が銀英伝に与えた設定のために、ガイエスブルグ要塞のような移動化された要塞が、移動する補給拠点となってしまっている。ということにあります。この事実の指摘を、冒険風ライダーさんが行ったわけです。
移動する補給拠点があるのなら、ラインハルトやヤンの取った戦略も、二流以下の戦略に過ぎない、という結論も必然的に導かれる、という話です。

親記事No.3581スレッドの返信投稿
board4 - No.3820

Re:Re3791:索敵の実態2

投稿者:Ken
2003年03月01日(土) 15時20分

パンツァーさん、

回答をいただき、ありがとうございます。

最初に、細かい部分の誤解を解いておこうと思います。40光秒という探索限界が適当かどうかは、後で論じます。

まずは、私の方の誤りを訂正します。前回私は、1250億立方光秒を半径40光秒の「球形」に分けていましたが、球形をびっしりと並べても「すき間」ができるので、この仮定は不適当でした。分割ユニットは立方体、正四面体、正八面体等でなければいけません。最も計算の簡単な立方体を使いますと、中心から頂点までが40光秒の立方体の体積は、98,534立方光秒だから、1250億立方光秒の中に126万8592個が入ります。そしてユニット間の移動距離は46光秒となります。

次に、パンツァーさんが指摘されたことですが、

<つまり、索敵の対象としたバーミリオン星系の規模が、1250億立方光秒なのであって、索敵の限界能力を指しているとはどこにも書いておりません。
ある艦船が短距離ワープをしたからといって、そのワープ能力の限界が、その距離に限定されるものでもないでしょう。>


私が「1250億立方光秒」といったのは、探索範囲の「大きさ」の限界ではなく「小ささ」の限界です。直接索敵以外の方法では、そこまでしか絞り込めないから、そこから先は偵察隊を使わねばならないのだ、と考えたのです。もしも、直接索敵をする前に125億立方光秒まで絞り込めたら、偵察隊の数は同じでも十倍の密度で配置できます。

また、バーミリオン星系自体の大きさは、この際関係ないでしょう。探索範囲を星系より小さく絞り込めるならヤンは(ムライは?)そうしたはずだし、星系の大きさまでも絞り込めないなら、偵察隊を星系外にまで飛ばせたと思います。

<(ラインハルトの艦隊は星系内で停止しているのでしょう。既に戦場予定地に到着しているわけであるし。また、チェイス大尉の報告中でも「敵主力部隊移動中」の表現が見当たらない。)>

ラインハルト艦隊は移動していたと思います。風雲篇第七章-3の記述は以下のとおりです。

~彼の視界がとらえたものは、暗黒の宇宙空間を蚕食しつつ拡大する光点の群であった。それはいまや波濤となって、背後の弱々しい星の光をのみこみ、彼らへ向かって音もなく押しよせてくる。

「押しよせてくる」のだから、移動しているのでしょう。


<アスターテ会戦時の帝国軍の艦隊の速度は、同盟第四艦隊が停止していたとしても、光速の10%程度の速度です。
(二二〇〇÷(3600秒×6))>


たしかにそうですね。

ただ、そうだとしても、私が前の投稿で行った考察結果に変化はないと思いますが。イオン・ファゼカス号が光速の10%しか出せないとすると、半径3102光秒の球形を出るのに、31020秒を要します。追跡する帝国軍は、126万8592個の1ユニットにつき0.024秒を割くことができ、ヤン艦隊と同じ2000の偵察隊を投入すれば、1ユニットにつき49秒までかけられます。上述のように探索ユニットは46光秒に1つずつありますので、帝国艦が光速移動できるなら充分です。しかし、光速の10%しか出せないなら、移動に460秒かかるので、やはりイオン・ファゼカスを捕捉できません。要するに、イオン・ファゼカスと帝国艦の双方が光速の10%しか出せないなら、相対的な優位劣位に変化がないわけです。


それでは、本論です。銀英伝世界にて、敵を発見するにはどれだけの距離まで近づく必要があるのでしょうか?

パンツァーさんは、アスターテ会戦の記述を挙げました。

<(略)索敵は友人偵察機や監視衛星など、古典的な手段に頼るしかない。それらによって得られた情報に、時差や距離的要素を加算して敵の位置を知る。これに熱量や質量の測定を加えれば、不完全ながらも一応の索敵が可能となるのだ。>

私は、「時差や距離的要素を加算して」という箇所に注目したいと思います。これは、敵艦隊をリアルタイムで捕捉し続けるのではなく、それまでに報告された結果から、「敵はこのように動くだろうから、現在はこのあたりにいるはず」という推測をしているのではないでしょうか?リアルタイムの捕捉ではないので、敵が予想外の動きをすれば、ただちに狂いを生じます。

それが端的に出ているのが、同盟第六艦隊の場合です。ムーア中将率いるこの艦隊は、ラインハルト艦隊がいきなり「四時半」の方角に出現したので不意をつかれて潰滅しました。これは第六艦隊が、ラインハルト艦隊を「見ていた」わけではないことの証拠ではないでしょうか?

つまり、2000光秒くらい離れていると直接「見る」ことはできないので、敵が予想通りに動くなら位置を掴んでいられるが、そうでない場合は見失うということではないでしょうか?

実はパンツァーさんの投稿を読んだ後で、敵を「発見」したときの距離が明示的に書かれている箇所を探してみたのです。

直接敵を「見る」ことの記述で、最も距離が長いのは、ガイエスブルグがイゼルローン回廊にワープアウトしたときで、同盟軍偵察隊との距離は300光秒です。

~「前方の空間にひずみが発生」
オペレーターが報告した。
「何かがワープ・アウトしてきます。距離は三〇〇光秒、質量は……」
(雌伏篇、第六章-1)

ただし、これはガイエスブルグそのものを「見た」のではなく、ワープアウト時の空間のひずみを感知したものだから、事情が異なると思います。

これの次に距離が長いのは、シヴァ星域会戦のときだと思います。

~「敵影見ゆ!距離一〇六・四光秒、三一九二万キロ。レッド・ゾーン突入は、最短で一八八○秒後と推定」
(落日篇、第七章-2)

こちらは、本当の「発見」ですね。

その次が、FO2の40光秒です。

その次は、捕虜交換の提案をもってきた帝国艦をユリシーズが発見したときだと思います。距離は33光秒です。

~警報が鳴り響き、一四〇名の乗員はアドレナリンの分泌量を急増させた。各部署から声がとびかう--彼我の距離三三光秒、磁力砲異常なし、熱線砲準備よし、スクリーン入光量調整ずみ--艦長はひときわひびく声で、共通信号の発信を命じた。
「停船せよ。しからざれば攻撃す」
(野望篇、第一章-1)


こうしてみると、シヴァ星域での数値が大きくて106光秒ですが、いつでもこれくらいの距離で発見できるわけではなく、バーミリオンでは40光秒、イゼルローン回廊では33光秒だったわけです。

仮に探索可能距離が106光秒だとすると、「探索ユニット」の容積は40光秒の場合に比べ、

(106/40)^3=18.6倍

になり、1250億立方光秒に含まれるユニット数は6万8203個となります。ユニット間の移動距離は122光秒で、移動に要する時間は1220秒です。イオン・ファゼカスを捕捉できるかどうかは、偵察艦の数に依存するでしょう。

偵察艦が1つなら、1ユニットの探索に割ける時間は、0.45秒で捕捉は不可能
100隻を投入すれば、45秒。まだ全然不足。
1000隻なら、450秒。まだだめ。
2000隻なら、900秒。まだだめ。
3000隻なら、1350秒。イオン・ファゼカスを捕らえられる。

ということでしょうか。

要は「銀河帝国軍の執拗な追撃と捜索」なるものが、具体的にどの程度のものか、です。すておけば「のたれ死に」すると思っている逃亡奴隷の追跡に3000隻も振り向けるかどうかとなると、私は否定的なのですが。

<1に関して言えば、これらの質量体はまず、1「観測」の障害物です。天体の影に隠れれば、観測は不能でしょう。また、
2に関して言えば、艦隊以外の質量体の存在自体が、質量の測定を阻害するでしょう。>


バーミリオン星域のような場所は、索敵に向いていないから、索敵可能距離が短くなるのだ、という主張ですね。これについては定量的な判断をする材料がないので、なんともいえません。ただ、そんなに索敵がやりにくいなら、「互いに相手との遭遇を目指した」両艦隊が、なぜそんなところを戦場に設定したのかと、という疑問が発生しますが。

イオン・ファゼカスのエンジンが通常のものか、バサード・ラムジェットかは、それ自体はおもしろい考察ですが、「逃げられるかどうか」の考察には直接関係がないと思われます。すくなくとも私の計算の因子ではありません。

また、イオン・ファゼカスがレーダー透過装置をもっていれば、逃げる確率が高くなるでしょうが、これもこれまでのところ、私の考察には因子として入っておりません。

今回の投稿は以上です。

親記事No.3625スレッドの返信投稿
board4 - No.3821

Re:とりあえず数点だけ

投稿者:八木あつし
2003年03月01日(土) 16時00分

はじめましてパンツァーさん。1つだけ気になったので、レスしました。そう言えばこれだけ論戦が続いているのに、私たちのバッシングはないですね。

> 銀英伝1巻(黎明篇)八章-1
> <部下の報告をキャゼルヌはさえぎった。三〇〇〇万人の同盟軍将兵を対象とする補給計画は、キャゼルヌの手によって立てられており、その運営に関しては彼は自信を持っていた。>
>
> <「知っている。どうも過大な要求という気もするが、占領政策上、やむをえんのではないかな」「総司令部(イゼルローン)にそれだけの物資はありません。」「本国に要求を伝えればよかろう。経済官僚どもがヒステリーをおこすかもしれんが(以下略)」>
>
> 少なくとも、イゼルローン要塞には、本国からの補給なしでも、三〇〇〇万人の同盟軍将兵(八個艦隊)を支えるだけの補給能力がある、ということです。
(中略)
> それに、イゼルローン要塞が、八個艦隊の補給に対処できる、という作中記載もお忘れなく。
(中略)
> 上でイゼルローン要塞が単独で、八個艦隊を同時に補給できる例を示しました。この八個艦隊が動員された作戦において、作戦の実行期間は限定されておりません。少なくともキャゼルヌは、作戦期間を無前提で、補給計画を立案しております。
> また、上の田畑の例を参考にして欲しいのですが、「無限」というのは、生産が限りなく続く、の意味であって、単位時間辺りの生産量が無限だというわけではありません。単位時間あたりの生産量に関しては、八個艦隊の運用は可能、と作中事実は示しています。

パンツァーさんは、イゼルローン要塞が遠征軍3000万将兵の補給(食料のみ)が可能と考えているようですが、果たしてそうでしょうか?
確かにキャゼルヌは、3000万将兵の補給計画の運営に自信をもっていました。しかしイゼルローン要塞の生産設備で遠征軍向けの全ての食料を生産した、という記載はありません。
むしろ出発した各艦隊は、ハイネセンや他の同盟軍基地から、最初から大規模な補給物資を持ってきており、イゼルローンまでの航行で消費した分をイゼルローンで補給して帝国領に侵攻した、と考える方が正しいのではないでしょうか。
もちろんイゼルローン要塞も生産していますが、それは将来の不足分を補うための生産であり、最初から3000万人分を用意できるとは思えません。やはり本国から『当初予算』の範囲内での補給は、受けるのではないでしょうか。

> > 純軍事的に見れば、帝国軍の回復力は無限にひとしく、ヤン・ウェンリー軍のそれはゼロに近い。(乱離篇第三章-4)
> (中略)
> > *ヤン・ウェンリー軍の回復力はゼロに近い。
> > *ヤン艦隊の回復力はいちじるしく劣勢。
> >
> > これらは、ユリアンやキャゼルヌの台詞から間接的に推測したものなどではありません。そのものずばりの直接記述です。これらの直接記述からして、「無限の自給自足能力」など幻想の産物であることが分かります。イゼルローン要塞に無限の補給力があるなら、すくなくとも前線が「補給物資を費いはたす」ことはないでしょう。いくら使おうが、要塞から補給してやればよいのです。
>
> これは、人的資源に限りがある、ということを示しているだけでしょう。
> 無人艦隊なるものは、銀英伝中に登場しなかったと思いますが。

すいません。あの記述は物資補給や人的資源よりも、新規艦艇の補充ができないことを述べているのではないでしょうか。

それではまた~(^^)/~

親記事No.3581スレッドの返信投稿
board4 - No.3822

Re:Re3810:Kenさん向けの最終投稿

投稿者:Ken
2003年03月01日(土) 17時23分

私への回答はされないということですが、冒険風ライダーさんが書かれたことへの回答ですので、こちらへ書き込みます。(パンツァーさんへの回答に書いたり、ましてや新規スレッドにするのもおかしな話ですし。)回答をされないのはご自由です。

銀英伝には、たしかに逃げようとする艦船が捕捉される記述があります。ベリョースカやニュー・センチュリーがそうでしょう。

しかし監視の目をくぐりぬける例もあるのです。

代表例はボリス・コーネフ船長のアンデューティネスでしょう。帝国の監視を破って何度もイゼルローンへやってきました。しかも、狹いイゼルローン回廊へ出入りするのは、広大な宇宙空間を逃げ回るよりはるかに困難です。あとで理由を述べますが、私はイゼルローン回廊の幅は、せいぜい20光秒程度ではないかと考えています。つまり帝国軍は、そんな狹いところを突破する船すら捕捉できないのです。

アンデューティネスだけではありません。監視を突破してイゼルローン回廊へ逃げ込んだ艦船は他にもあります。それもおそらくは大量に。

それは、帝国から同盟への亡命者たちです。たしかにフェザーン自治領の成立後は、フェザーンの政治的特権を利用するエルウィン・ヨーゼフ二世型の亡命もあったでしょう。しかし、ダゴン星域の戦い(宇宙暦640年)から自治領の成立(同682年)までの42年間に亡命した人たちは、自力で封鎖を突破したはずです。いくらダゴンの後、帝国が弱っていても、国防の最重要宙域に哨戒部隊の一つも置けないはずがありません。その哨戒部隊は、亡命者を捕らえたかもしれませんが、逃げおおせた人たちもいたのです。

また、イゼルローン回廊内ではワープはできません。それは次の記述が示しています。

~もし画期的な技術が両国の軍事均衡を突きくずすことがあるとしたら、一万光年以上の超長距離跳躍技術の出現だろう--そうヤンは考えていた。これが実現すれば、帝国軍はイゼルローン回廊を飛びこえて、同盟の中心部に大艦隊と補給物資を送りこむことが可能になる。
(雌伏篇、第六章-4)

つまり、イゼルローン回廊をワープで越えるなら「一気に飛び越す」必要があり、回廊内の短距離ワープの連続では越えられないことを示します。考えてみれば当然で、もしも回廊内ワープができるなら、雷神のハンマーの射程前でワープ・インし、反対側でワープ・アウトすれば、無傷でイゼルローン要塞を越えられるはずです。

と、いうことは、帝国の哨戒部隊は、通常航行する艦船も捕捉できないことになります。しかも、狹い回廊内で。

こうしてみると、銀英伝世界における「逃げる艦船の捕捉」は「成功もするが、失敗もする」というのが実情であると思われます。イオン・ファゼカス号が通常航行しかできなくても、必ず帝国軍につかまるとは限りません。


[なぜ回廊の幅は20光秒か]

ガイエスブルグとともにイゼルローンを攻略にきたケンプ・ミュラー艦隊は、ヤンの救援軍と戦うため、回廊を同盟側へ向けて進行しますが、ヤン艦隊は「フォーメーションD」で円形陣をつくり、帝国艦隊に砲火を浴びせます。しかも、帝国艦隊がヤン艦隊の「さらに外側」へ回ることは、回廊が狹いので不可能。ということは、ヤン艦隊は回廊の「壁」に近いところにいたはずです。

そして、ヤン艦隊はその位置から帝国艦隊を砲撃します。銀英伝世界の、艦船の射程距離に関する最も直接的な記述は、次の箇所です。

~同日一六時、両軍は一〇・八光秒の距離に接近した。暗黙の了解のうちに、「戦争ごっこ」が開始される距離に達したのだ。
「撃て!」の叫びは、どちらが早く発しただろう。
(外伝1第一章-2。第三次ティアマト会戦の記述)

つまり、射撃が開始される距離は、約11光秒です。また、他の箇所をみても、砲撃が開始される距離は、これより小さいものばかりです。

~五・一光秒にまで接近した両軍が砲戦を開始したのは、その五分後であった。
(風雲篇、第四章-2。ランテマリオの戦いの記述)

~九時五〇分、双方の距離が五・四光秒に接近したとき、半瞬の空白が通信回路をみたし、苛烈な叫びがそれを過去へ押しやった。
「撃て!」「撃て!」
(回天篇、第七章-3。双璧の戦いの記述)

~人工的な光点の群は、たがいに接近し、二・九光秒、八七万キロの距離をへだてて一時停止した。緊張の水位が両軍の胸郭で急激に上昇し、それが臨界に達したのは、同三五分のことである。
「撃て!」
「撃て!」
(落日篇、第二章-4。ヴァーゲンザイル艦隊とイゼルローン艦隊の戦いの記述)


と、いうことは、回廊の「壁」ぎりぎりから、ヤン艦隊がケンプ・ミュラー艦隊を砲撃できたことをもって、両者の距離、つまり回廊の「半径」は大きく見積もっても11光秒程度、直径は20光秒程度ということになります。

board4 - No.3823

クレオパトラの葬送に思う

投稿者:坂田火魯志
2003年03月01日(土) 17時41分

 はじめまして、僕は小説家を志す者です。このサイトがあるということを知りこの度書かせて頂きました。今後とも宜しくお願いします。
 この作品を一読して思ったのですが田中芳樹は中南米とフジモリ大統領についての知識は皆無なのではないでしょうか?ホセ・モリタはどう見てもフジモリ大統領ですが彼をモデルとしたならばあまりにもお粗末です。これでは長野県の知事殿や某人権団体ピースクラフトと何ら変わらない左翼の薄っぺらいフジモリ批判です。
 南米はあのポルポトの影響を受けた左翼ゲリラによって多くの人命が失われました。日本人の技術者も殺されているのは有名でしょう。何故彼等が殺されたのか、それは南米を豊かにするからです。原始的共産主義を信奉する彼等左翼ゲリラにとって産業の発展は最も忌むべき物であり、それを助ける者は誰であろうと抹殺すべき対象なのです。この左翼ゲリラこそこの作品における「テロリスト」であるのは言うまでもないでしょう。そして日本のマスコミや知識人の中には彼等に共鳴する輩もおり、それが為にフジモリ大統領への中傷が生まれたのです。
 「クレオパトラの葬送」においてはホセ・モリタは腐敗し傲慢かつ卑しい独裁者として書かれています。異論のある方もおられるでしょうがこれは全くの的外れです。フジモリ大統領が今まで為してきた事、確かに日本人から見れば民主的ではありません。ですがペルーが発展する土台を築いたのはまぎれもない事実です。蓄財もしていなかったのが確かになったではありませんか。フジモリ大統領は韓国の朴大統領と比較されるべきでしょう。
 田中芳樹さん、貴方はひょっとして前述の知事殿やテロ国家北朝鮮との関係も噂される団体の代表の本や発言をそのまま鵜呑みにされてホセ・モリタを書かれたのですか?だとすればあまりにも思想が偏ってますねえ、まあ貴方がどの様な人物や団体を支持しようが一向に構いません。ですがそれが誤った知識と思想に基づきそれが為に作品をつまらないものにしてしまい、かつ読者に偏向思想を吹き込むのは作家として如何なものでしょうか。

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