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Re3643/3645:移動要塞シミュレーション
- 投稿者:冒険風ライダー
- 2003年02月13日(木) 14時56分
<ここを読んで思ったのは、最初から「IFネタにすべきだったのでは」でした。この冒険風ライダーさんの言葉は、あきらかに批判を超えて架空戦記的な事象(反銀英伝)にまでなってしまいますね。
ライダーさんがこのようにいきなり宣言されると、私としても困ってしまいます。私がライダーさんに論戦で勝とうとしても、かなり攻め方が限られてしまいますので。こうなると私としては、軍事の天才であるヤンはとっくにライダーさんの主張を思考しており、その上で全て実現不可能・ないし無意味だと判断して実行をしなかった。つまりライダーさんは今回ヤンを無能・愚劣だと主張していますが、無理難題ばかりを言うライダーさんこそ無能・愚劣だと持っていくしかないのですが……。>
前回もそうでしたが、移動要塞関連のシミュレーションを行うに際してあえて「個人的性格」や「思想信条」といった要素を排除するのは、このシミュレーション自体が「移動要塞の可能性や移動要塞の効果的な使用方法を明らかにする」というテーマを訴えること「のみ」を目的としているからです。純粋に「ヤンやラインハルトならばどうするか」というテーマであれば当然「個人的性格」や「思想信条」といった要素も考慮に含めるのですが、今回のシミュレーションはそれとはやや異なる主旨なわけです。
それに私は、過去の銀英伝考察シリーズで「ヤンの民主主義擁護思想」だの「謀略否定・信念否定思想」だのといったものについても検証した結果、ヤンの思想信条がいかに現実と乖離し、破綻しているかを立証していましてね。そのようなヤンのご都合主義的な破綻思想を尊重しなければならない理由など、私は全く見出すことができませんし、それをベースにヤンを擁護されても「ヤンの思想自体が完全に破綻しているのだから、そんな擁護は無意味だろう」としか反論の返しようがないのです。
そもそも、ヤンが置かれている状況は常に「敗北の一歩手前」に近い状態にあるわけでしょう。ならば手段も問わずどんな卑劣な策でも躊躇なく使い、敵味方を徹底的に欺いてでも、何が何でも自軍が勝利できる道を模索しなければならないはずではありませんか。本来ならば、たかだかヤン個人が抱く「信念」ごときにいちいち拘泥しなければならない必要性など、全くと言っても良いほどにありえないはずなのです。「信念」などのために取るべき策が取れなくなるなど、「信念否定」を是とするヤンの思想信条(←これ自体がすでに矛盾のような気もしますが(笑))にすら明白に反するではないですか。
ですので、「ヤンの個人的性格や思想信条【だけ】の理由で、ヤンが移動要塞を使いこなすことができない」という反論の類は、私にとっては笑止な限りでしかないばかりか、むしろ「ヤンが無能かつ退嬰的である証」とすら判定せざるをえないのですし、それは、「移動要塞の可能性を全く顧みなかったヤンは愚かである」という私の主張を却って補強する結果としかなりえないわけです。
私のシミュレーションを何が何でも覆したいのであれば、ヤンの「個人的性格」や「思想信条」といった要素「以外」の理由を挙げ、なおかつそれが移動要塞実現の可能性を「100%完全に」否定するものでなければならない、そう私は考えています。
<まずこの小惑星攻撃に移動要塞が避けることが出来るか? これが最大の問題点になります。
この小惑星攻撃に近い事例として、アルテミスの首飾りへの氷塊による攻撃が当たります。この作戦でヤンはバーラト星系第4惑星ハイネセンの衛星軌道に展開する12個軍事衛星に対して、バーラト星系第6惑星の氷をくり抜いてエンジンを装着し光速に近い速度まで加速させ、この氷塊を軍事衛星にぶつけることで破壊しました。
バーラト星系外縁部からハイネセンまでの距離は約65億キロ。艦隊にとっては指呼の距離とあります。ハイネセンの救国軍事会議は、アルテミスの首飾りへの攻撃の直前になって初めて氷塊に気付きました。結果はなすすべもなく、軍事衛星は全て破壊されました。
これから判る通り、意外に近距離であっても動く氷塊に気付かなかったのです。そして軍事衛星よりも圧倒的に巨大であり、戦艦よりも速度が遅い(アニメは同速度に見えますが、ゲームは艦隊のほうが速いです)移動要塞が、至近距離でやっと探知して、それから避けられるはずもありません。氷塊ないし小惑星は、艦隊のスピードの何十・何百・何千倍の速度です。遠距離で探知したとしても光速に近い速度で迫ってくる物体を果たして直径60キロのイゼルローンが避けることができますか?
ヤン艦隊がアルテミスの首飾りへの攻撃時に、ハイネセン本星への被害を与えない攻撃軌道を計算しました。常に移動要塞が航行エンジンを使い中途半端に移動していたとしても、すぐに見破られるでしょう。仮に緊急移動で1~2個ぐらいなら避けることが出来ても、10個も同時に撃たれれば無理ですね。>
まず、移動要塞の航行速度を検証するに際して、ゲーム版の設定を重視する必要性は全くないでしょう。ゲーム版ではゲーム性を重視しなければならない必要上、設定を故意にいじくることが少なくありませんからね。原作ではかなり弱い設定となっているはずのスパルタニアンやワルキューレなどの単座式戦闘艇が、ゲームによってはかなり強く設定されていることなどはその典型です。
移動要塞の機動力の実態については、推察できる記述が銀英伝の作中にもあります。ガイエスブルク移動要塞は、ヴァルハラ星系外縁部に到達した3月17日から24日経過した4月10日に、オーディンから約6250光年離れたイゼルローン回廊に到達しています。これがいかに速いかは、ハイネセン-イゼルローン間の約4000光年における艦船移動期間が「通常3~4週間」(銀英伝3巻 P115)と言われていることからも伺えるでしょう。つまり移動要塞の航行速度は、実は通常艦船よりもかなり速いといっても過言ではないのです。
それに、移動要塞が小惑星を避けるのだってそんなに難しくもないでしょう。たとえば、イゼルローン要塞が周回軌道している恒星アルテナを「盾」にできる位置に要塞を移動させても良いでしょうし、いっそのこと、イゼルローン回廊を一旦出て、安全が確認された後にまた改めて戻るという方法もあります。こちらの移動に合わせて小惑星がエンジンを起動させて軌道修正を行うのであれば、その時こそ例のエンジン攻撃によって小惑星を自滅させてしまえばそれで済んでしまう程度の話でしかありません。イゼルローン回廊前面を常に哨戒して小惑星群の早期発見に努めれば、機動力が速いことも併せ、移動要塞はかなりの高確率で小惑星攻撃をかわすことができるでしょう。
そして今更言うまでもないでしょうが、静止要塞の方は小惑星攻撃を自身がかわすことは全く不可能であり、さらにイゼルローン要塞がなくなってしまえば、同盟の国防そのものすら危うくなってしまう……ということを考えれば、私はイゼルローン要塞を移動要塞に改造する必要性は絶対にあったのではないかと考えざるをえないのですけどね。
<ヤンはアルテミスの首飾りを破壊しました。そしてガイエスブルク移動要塞も粉砕しました。そのヤンが、私の考えるようなことに気付かないはずがありません。その上で、ハードウェアの限界を知るヤンだからこそ、イゼルローンはそのままにしていたのではないでしょうか? 第一狭い回廊内では、少々動いたところで意味はさしてないでしょう。それに、4~5巻の時点では要塞が動いても意味がありません。帝国軍の来襲を防ぐためにもイゼルローン回廊から出るわけにはいかないからです。ラグナロック作戦で帝国軍はフェザーンを占領しました。この時点でイゼルローンの戦略的価値は激減しました。しかも3倍のロイエンタール軍に囲まれている状況では、移動要塞が動けるわけはありません。かといってロイエンタール軍が迫る前に同盟領に要塞が引けば、易々と回廊突破、同盟領侵入を招きます。結局、移動要塞にしようがしまいがさしたる意味はありません。改造した分だけ資金と労力の無駄です。>
小惑星特攻によってイゼルローン要塞が破壊されてしまった場合、イゼルローン要塞内に存在する軍民合わせて500万人以上もの人命までもが存亡の危機に晒されてしまう、という可能性については考慮されていますか? 八木さんの主張に従うと、イゼルローン要塞の住民には逃げる時間すら全く与えられないように見えるのですが、彼らの人命を尊重する必要性というものは全く存在しないのでしょうか? もしヤンがこのような危険性をも全て承知の上でイゼルローン要塞をあえてそのままにしているというのであれば、ヤンは単に無能というだけでなく、「戦闘の際に民間人を平気で巻き込む非人道主義者」ということにもなりかねないのではありませんか?
それから、ヤンは移動要塞が出現するかなり前から、帝国側がフェザーン回廊から侵攻してくる可能性を考えていたのでしょう? ならば静止要塞を使ったイゼルローン回廊防衛にこだわる愚も知り尽くしていたはずなのですから、なおのことイゼルローン要塞を移動戦力化する可能性を考慮しても良かったのではないでしょうか? エンジンに弱点を抱え込む移動要塞でも、使い方次第では一発勝負用の強大な戦力たりえますし、そもそも銀英伝本編で見られるような「エンジンの弱点」があるのであれば、構造設計そのものから防御優先で考えるなり、エネルギー中和磁場に強力なものを据えつけるなりして、簡単に破壊されないようにその防御力を強化することによって、ある程度戦闘に使えるようにする手段だって決して考えられないことではないでしょう。ただでさえ戦力的劣勢を抱え込んでいる同盟なのですから、移動要塞というのは単に「戦力」という観点のみから見ても、その戦略的劣勢をある程度挽回してくれたであろう貴重な決戦兵器たりえたはずです。
イゼルローン回廊からの敵軍侵攻など、イゼルローン要塞自体が移動戦力化することに比べれば何ら問題になりません。いざとなれば史実同様の「正規軍によるゲリラ戦」を、移動要塞を使って、しかも同盟領内で派手に行えば良いだけのことですしね。
<積極的にヤンを民主主義の破壊者にしてどうするのですか(笑)。ヤンがあの査問会に耐えたのも、あくまでも制服軍人の上司である国防委員長、それも選挙によって選ばれた代議士であったからです。確かにあれはあまりに不当でした。だからといって、軍人が政治家を脅迫して良いわけではありません。
せめてヤンの権限内で出来る策を考えてください。これでは一方的に私が不利ですよ。>
と言っても、ヤンはあの時の査問会でさえ辞表を叩きつけようとしていましたし、そもそもあのような「政治家の横暴」を結果として黙認してしまうような行為が、民主主義やシビリアン・コントロールのためになるとは、私には全く思えないのですけどね~。それに「移動要塞の改造」自体は、軍事責任者が提示する軍事的要求としては極めて真っ当なものなのですし、ことさら査問会の件を誇示せずとも、査問会を行った政治家側の方でヤンに引け目や「査問会の件をバラされるかもしれない」という恐怖を抱いている可能性もありますから、ヤンの要求も案外すんなり通りそうな気もするのですがね。
あくまで脅迫がダメだと言うのであれば、いっそのこと、査問会の件をヤンが大々的に公表してトリューニヒト政権を瓦解させ、新政権に改めて移動要塞改造案を提示するという手もあります。ヤンにしてみれば、アレほどまでに嫌いぬいているトリューニヒトに一矢報いることができるわけですし、民主主義の「自浄作用」にも合致し、さらには救国軍事会議クーデターで失墜していた軍部の発言権の回復にも繋がって一石三鳥という按配です。これならばヤンの「あの」性格でさえ、実行を妨害する障害など何もないのではないかと思うのですけど。
軍人は政治家の命令にただひたすら盲従するのではなく、軍事責任者として意見を述べ、それが通るように努力しなければならない。それこそが民主主義国家におけるシビリアン・コントロールであると私は考えているのですけど、違いますかね?
<ヤンが2ヶ月でハイネセンを脱出する羽目になったのを忘れたのですか。レベロとヤンが手を組むことはありませんよ。手を組むためには、帝国高等弁務官のレンネンカンプが何も行動しないというのが最低条件です。しかしそれはレンネンカンプの性格上無理でしょう。ヤンはハイネセンから逃げるしかありません。
もしメルカッツ提督達を逃がしていなかった場合、ヤンは巡航艦レダ2号しか手元にありません。イゼルローン再攻略を担った600隻の艦艇と兵員1万6000人はいなくなるのです。レダ2号1隻でイゼルローン再攻略はさすがに無理でしょう。
ヤンと同盟との和解が不可能になった時点で、同盟も民主主義も滅んで終わりです。>
あの~、そもそもヤンがバーミリオン会戦時における無条件停戦命令と同盟の国内法を勝手に無視してメルカッツらを逃した挙句、メルカッツらに戦艦奪取を実行させたことこそが、同盟を崩壊させる最後の引き金となっているのですが、たかだか600隻前後の艦艇と兵員1万6000人を手に入れる程度のことで、それが全てチャラになるとでも言うのでしょうか? レベロとヤンが手を組み、移動要塞の下準備と戦力隠蔽に協力し合っていれば、その程度の戦力など軽く調達することができる程度のシロモノでしかないのではありませんか? これは当時宇宙艦隊総参謀長の地位にあったチュン・ウー・チェンなどが、どれほどまでの戦力を隠蔽できていたかを考えてみれば一目瞭然でしょう。
第一、レベロとヤンが手を組むなど、レベロが政権についた時点から秘密裏に連絡を取り合ったりすることで、いとも簡単に実現させることができますし、それが達成されれば、これまた「バーラトの和約」の条文中にもなかった内政干渉行為を行ってきたレンネンカンプの「言いがかり」の類なども簡単に撃退することができたはずでしょう。それに銀英伝考察2でも述べましたが、あのレンネンカンプの内政干渉に関しては「素直に受け入れる」という選択肢もまたかなり危険な要素を孕んでいるのですから、そんな愚劣な意見を受け入れさせないためにも、ヤンとレベロは手を組むべきだったのです。
八木さんの主張は、単に結果から逆算したヤン免罪論でしかないと思うのですが。
<ここでライダーさんは可能性100%ではないと書かれています。確かに移動要塞完成の可能性はあるかも知れません。しかし失敗の方が確実に高いですよ。中途半端な改造で動きもしないイゼルローン、修理の全く終わっていない艦艇群。これではどうしようもないです。移動要塞という失敗必至の賭けより、ベターを選ぶのは指揮官として当然ですよ。
よく必敗だと言われますが、ヤンは勝つのが目的ではなく民主主義を残すのが目的なのです。なので回廊の戦いはあれで良かったと思っています。
むしろ移動要塞となったイゼルローンで帝国領に侵入してどうするのですか?(同盟領は帝国軍が迫っているので無理) 艦艇は2万隻しか収容できず、その艦艇の補充の当てもない。帝国領内を破壊しながら逃げ回るのでは、民主主義を残せもしません。イゼルローン回廊とフェザーン回廊を固められたら、同盟領に行くことも適いません。>
すいませんが、「回廊の戦い」は「民主主義を残すのが目的」という観点から言っても「最低最悪の愚挙である」としか私は見てはいないのですよ。敵側のラインハルトの胸先三寸に全てを依存しているだけでしかないヤンの方針など、作中記述から見ても必敗100%確実だと私は何度も繰り返し述べていますよね? それとも、あの当時の惨状におけるヤンに何か起死回生の必勝の策があったとでもお考えなのでしょうか? 作中記述を見る限りでは、当のヤンですらそんなことは全く考えついてなどいなかったようなのですけど。
第一、ヤン側にはラインハルトを交渉のテーブルにつかせることのできる外交カードが何ひとつ存在しない状態であったというのに、一体どうやってラインハルトと「民主主義を残すのが目的」の交渉を行うように話をもっていくことができるのでしょうか? ラインハルトと戦い続ける「だけ」では圧倒的物量作戦で圧殺される可能性が濃厚ですし、事実そうなりかけたではありませんか。もしあの時にラインハルトが突然病に倒れ、ラインハルトの側から停戦を申し出るなどという「類まれなる僥倖」に恵まれなかったら、そのままヤンは敗北の道を転がり落ち、民主主義(とヤンが呼んでいるシロモノが本当に「民主主義」という名に値するものなのかどうかは知りませんが)もまた抹殺されていたはずなのですけど、それでも「ベター」な選択だといえる根拠は何なのですか?
確かに私が提案している移動要塞改造も、確かに失敗する要素は少なくないかもしれませんし、懸念される問題もたくさん存在するでしょう。しかしそれでも、成功する可能性は決してゼロにはなりえない以上、障害があるのであれば、ありとあらゆる策を使ってその障害を排除・消滅させる努力を行っていくべきなのですし、またそうしていくことこそが、将兵を指揮統率し、国民を守るべき最高司令官としての責任と義務でもあるでしょう。工員が足りないというのであれば工員を強引にでも調達する術を考えるべきですし、時間が足りないのであれば時間稼ぎの外交手段を模索するべきです。あの愚劣な「回廊の戦い」などで「滅びの美学」でも堪能したいというのでなければ、これこそがあの当時のヤンに与えられた唯一の可能性であり、何物にも勝る「ベター」なのです。
そして、移動要塞を使って「帝国領内のゲリラ戦」を展開し、要所要所を徹底的に破壊する、もしくはそれを辞さない強硬な態度を内外に示せば、それこそがラインハルトを本当の意味で屈服させ、交渉に応じさせる強力な外交カードとなりえるのです。最悪、「交渉に応じなければ、我々は未来永劫戦い続け、帝国および帝国250億の民全てを文字通り『消滅』させる所存である」というくらいの強烈な脅しの類でも行わなければ、あの「戦争狂」のラインハルトを「実力で」交渉のテーブルにつかせるなど、できるわけがないのです。
その後は、銀英伝本編の流れに従ってどこか適当な惑星に民主主義の存続を許してもらうなり、それこそ第二の長征一万光年でも実行するなりすれば良いでしょう。どうせ「回廊の戦い」でヤンが勝てるはずがないことなど、事前予測でさえ一目瞭然だったわけなのですから、可能性がゼロではない限り、移動要塞改造をやってはいけない理由などどこにも存在しません。むしろ、諦めこそが敗北に繋がるのです。
繰り返し言いますが、「回廊の戦い」でヤンが勝てる可能性も、民主主義が生き残れる可能性も、どちらも一片たりとも存在する余地すらありません。可能性が全く存在しない「回廊の戦い」と、とにもかくにも可能性が存在する移動要塞戦略のどちらを取るべきだったか、答えは一目瞭然なのではありませんか?
>追記
いや~、冗談抜きで笑わせてもらいましたよ。よりによって、あの「民主主義」の名に値しない独裁体制を敷いているはずのイゼルローン共和政府が、まさかこんな形で民主主義防衛の旗手たりえるとは(爆)。もしこれが実現された場合は、何か途方もない皮肉的状況が成立したのではないかと思えてなりませんが。
確かに八木さんの仰る通り、移動要塞構想を思いつかなかったユリアンおよび、移動要塞構想をユリアンに語らなかったヤンは批判されて然るべきでしょうね。様々な意味で何とも皮肉な話ではあるのですけど。
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- board4 - No.3651
横から失礼します
- 投稿者:RAM
- 2003年02月13日(木) 16時47分
冒険風ライダーさん、こんんばんは。
横から失礼しますが、質問がありましたのでご高説賜りたく思います。
> まず、移動要塞の航行速度を検証するに際して、ゲーム版の設定を重視する必要性
> は全くないでしょう。ゲーム版ではゲーム性を重視しなければならない必要上、設定
> を故意にいじくることが少なくありませんからね。原作ではかなり弱い設定となって
> いるはずのスパルタニアンやワルキューレなどの単座式戦闘艇が、ゲームによっては
> かなり強く設定されていることなどはその典型です。
> 移動要塞の機動力の実態については、推察できる記述が銀英伝の作中にもあります。
> ガイエスブルク移動要塞は、ヴァルハラ星系外縁部に到達した3月17日から24日
> 経過した4月10日に、オーディンから約6250光年離れたイゼルローン回廊に到
> 達しています。これがいかに速いかは、ハイネセン-イゼルローン間の約4000光
> 年における艦船移動期間が「通常3~4週間」(銀英伝3巻 P115)と言われて
> いることからも伺えるでしょう。つまり移動要塞の航行速度は、実は通常艦船よりも
> かなり速いといっても過言ではないのです。
>
冒険風ライダーさんの数字を信用して考察します。約6250光年もの距離を移動すると
いう事は通常航行では無く、ワープによるものが大部分を占めると推察します。
すると、同盟の4000光年の1.5倍以上である距離を同等もしくはそれより早い日数で
移動した事になります。ということは、ワープエンジンについての銀英伝での同盟と
帝国の技術格差は思った以上に大きいのではないでしょうか?
これはワープ距離だけのものか質量についても同等かはわかりません。しかし、帝国で
出来たから同盟で出来るということを安易には考えられない証左ではないでしょうか?
> それに、移動要塞が小惑星を避けるのだってそんなに難しくもないでしょう。たと
> えば、イゼルローン要塞が周回軌道している恒星アルテナを「盾」にできる位置に要
> 塞を移動させても良いでしょうし、いっそのこと、イゼルローン回廊を一旦出て、安
> 全が確認された後にまた改めて戻るという方法もあります。こちらの移動に合わせて
> 小惑星がエンジンを起動させて軌道修正を行うのであれば、その時こそ例のエンジン
> 攻撃によって小惑星を自滅させてしまえばそれで済んでしまう程度の話でしかありま
> せん。イゼルローン回廊前面を常に哨戒して小惑星群の早期発見に努めれば、機動力
> が速いことも併せ、移動要塞はかなりの高確率で小惑星攻撃をかわすことができるで
> しょう。
> そして今更言うまでもないでしょうが、静止要塞の方は小惑星攻撃を自身がかわす
> ことは全く不可能であり、さらにイゼルローン要塞がなくなってしまえば、同盟の国
> 防そのものすら危うくなってしまう……ということを考えれば、私はイゼルローン要
> 塞を移動要塞に改造する必要性は絶対にあったのではないかと考えざるをえないので
> すけどね。
>
上記で少々書かせて頂きましたが、6250光年の移動のほとんどはワープによる物と考え
られます。そのような状況で通常エンジンでの移動も通常艦船と同等と言えるのでしょ
うか?それとも小惑星攻撃は全てワープで離脱するのでしょうか?
> 小惑星特攻によってイゼルローン要塞が破壊されてしまった場合、イゼルローン要
> 塞内に存在する軍民合わせて500万人以上もの人命までもが存亡の危機に晒されて
> しまう、という可能性については考慮されていますか? 八木さんの主張に従うと、
> イゼルローン要塞の住民には逃げる時間すら全く与えられないように見えるのですが、
> 彼らの人命を尊重する必要性というものは全く存在しないのでしょうか? もしヤン
> がこのような危険性をも全て承知の上でイゼルローン要塞をあえてそのままにしてい
> るというのであれば、ヤンは単に無能というだけでなく、「戦闘の際に民間人を平気
> で巻き込む非人道主義者」ということにもなりかねないのではありませんか?
>
私個人としては要塞に居住していると言う時点で非戦闘員であっても戦闘員に準ずる
のではないかと思っています。ですが、ここで人命尊重等の主張をするという事であれ
ばあえて言います。移動要塞を作ると言うことは最前線での戦闘は戦闘艦の役割であっ
たものを要塞にも負担させると言うことになります。500万人の生命を危険に晒すとい
う事は考えなくて良いのでしょうか?非人道的ではないですか?
さらに人命について言及すれば、見よう見まねで作った移動要塞の試験はどうするので
しょうか?仮に失敗したとすると500万人の人達はそのまま宇宙に放り出されるので
しょうか?ガイエスブルグは当時、不要な要塞でした。イゼルローンは使用真っ最中の
要塞です。無くなってしまっても良いのでしょうか?
> それから、ヤンは移動要塞が出現するかなり前から、帝国側がフェザーン回廊から
> 侵攻してくる可能性を考えていたのでしょう? ならば静止要塞を使ったイゼルロー
> ン回廊防衛にこだわる愚も知り尽くしていたはずなのですから、なおのことイゼルロ
> ーン要塞を移動戦力化する可能性を考慮しても良かったのではないでしょうか? エ
> ンジンに弱点を抱え込む移動要塞でも、使い方次第では一発勝負用の強大な戦力たり
> えますし、そもそも銀英伝本編で見られるような「エンジンの弱点」があるのであれ
> ば、構造設計そのものから防御優先で考えるなり、エネルギー中和磁場に強力なもの
> を据えつけるなりして、簡単に破壊されないようにその防御力を強化することによっ
> て、ある程度戦闘に使えるようにする手段だって決して考えられないことではないで
> しょう。ただでさえ戦力的劣勢を抱え込んでいる同盟なのですから、移動要塞という
> のは単に「戦力」という観点のみから見ても、その戦略的劣勢をある程度挽回してく
>れたであろう貴重な決戦兵器たりえたはずです。
>
イゼルローンの正規の装甲でさえ原作中では傷ついています。その上、エンジン部とい
う弱点を抱えたら更に弱くなるでしょう。しかも、それは1箇所ではなく12箇所ありま
す。その内1つでも失われれば航行不能です。これは全て守り切れるのでしょうか?
「エネルギー中和磁場に強力なもの」という物はどの程度の防御力かは判別不能ですね。それは小惑星特攻でも弾けるのですか?小惑星特攻でなく、無人戦艦の特攻ではどうで
しょうか?
個人的な感想を言えば、一か八かの決戦兵器としては使えるかもしれませんが恒久的に
使用するのはどうでしょう?
稚拙な質問ですがご回答お願いします。
- 親記事No.3581スレッドの返信投稿
- board4 - No.3652
軍事的設定について
- 投稿者:八木あつし
- 2003年02月13日(木) 18時13分
どうもあの追記は、冒険風ライダーさんに大いにウケたみたいですね。これでこそ書いた甲斐もあります(笑)。
ところで私の数ある趣味の一つに共産趣味があります(笑)。そのため、いわゆる革命的左翼、日本の革命運動・学生運動について積極的に調べています。そこで新たに知った趣味的知識をもとに銀英伝を読むと、これまでとは違った見方も出来るようになりました。私も人が悪くなったものです。(^^;)
イゼルローンを奪還したヤン一党には、どちらかというと20世紀初期の中国動乱に乱立した軍閥に近い気がします。しかしイゼルローン共和政府は、中国共産党や日本共産党、日本新左翼の組織システムである民主集中制がハッキリと見られます。もしかしたら田中芳樹はその辺りのことを全て知った上で、敢えて民主主義への皮肉を交えながら行ったのではないか?と現在では思えてしまいますね(笑)。
イゼルローン共和政府は、一般将兵や住民に言論の自由こそあれ、民主集中制の名の下に全ての権限を中央指導部にもってきているわけです。中途半端な民主主義しか知らない旧同盟国民には、それで通じてしまい疑問にも思わないのでしょう(笑)。
そして将来、帝国を打倒し革命が実現したときにこそ、全ての人民に民主主義の全権利を与えるのでしょう。もちろん(党)中央が変質しない限りにおいてですが(笑)。
それでは本題に。
え~、今回は私と冒険風ライダーさんの間で軍事的について違いがあるのでそこについて述べておきたいと思います。意外に違っていたので少し驚きました。
< まず、移動要塞の航行速度を検証するに際して、ゲーム版の設定を重視する必要性は全くないでしょう。ゲーム版ではゲーム性を重視しなければならない必要上、設定を故意にいじくることが少なくありませんからね。原作ではかなり弱い設定となっているはずのスパルタニアンやワルキューレなどの単座式戦闘艇が、ゲームによってはかなり強く設定されていることなどはその典型です。>
実は田中芳樹原作の銀河英雄伝説において「単座式戦闘艇」こそ最大の問題であり、失敗であり、私の最大の不満であります。田中芳樹は「バカ」なのか?と思ってしまうミスです。
艦隊決戦において、単座式戦闘艇の数についての記述はそう多くはありません。
・要塞決戦でミュラー艦隊がワルキューレ2000機を投入した場面。
・バーミリオン会戦ではヤン艦隊が160機のスパルタニアン、ラインハルト艦隊が180機のワルキューレが格闘戦をした場面。
上記の2つぐらいでしょう。
まずここですでにおかしいのです。敢えて言えば作者自身が最初から間違っているのです。
第3巻1章でアイヘンドルフ分艦隊の艦隊編成が書かれています。約1700隻のうち、宇宙母艦の数は30ないし40とあります。
そして第5巻8章でバーミリオン会戦時のヤン艦隊の艦艇数1万6420隻、ラインハルト艦隊の艦艇数1万8860隻とあります。この艦艇数から単純にアイヘンドルフ分艦隊の編成数を10倍してみると、ヤン艦隊には宇宙母艦が約300隻、ラインハルト艦隊には宇宙母艦が約450隻近く配備されていると推測できます。
ここまで書くと分かってもらえると思いますが、バーミリオン会戦での投入された戦闘艇よりも何と宇宙母艦の数の方が多いのです(笑)。異常ですね。まったくもって異常ですよ。
要塞決戦時のミュラー艦隊は8000隻です。そのため宇宙母艦は約130隻というところでしょうか。ワルキューレ2000機を130隻の宇宙母艦で割ると、1隻あたりの搭載機数は15機というところです。これはいくら何でも少なすぎるでしょう。要塞攻撃の為にワルキューレを敢えて多くしたのだとすると、より設定がおかしくなってしまいますね。大体、第2次世界大戦の空母でさえ60~100機の艦載機を搭載できるのです。このことこそ田中芳樹が、宇宙戦争が扱いながらいかに軍事的設定を疎かにして作品を書いたのか判るというものです。
原作で宇宙母艦についてきちんと記述されていないので、代わりにアニメで設定付けされました。それによると同盟軍の宇宙母艦のスパルタニアン搭載機数は100機。同盟軍の巡航艦も3機のスパルタニアン搭載とあります。(徳間アニメージュ文庫「ラインハルトとヤン」より) 帝国軍についてはハッキリと判りませんが、まずこれに準じているでしょう。
そのため私は、原作における戦闘艇の戦闘シーンの描写はともかく、戦闘艇の数については明確な田中芳樹の間違いであり、信ずるに足りぬというスタンスです。この戦闘艇に関してはアニメ版の設定および描写の方が正しいでしょう。
冒険風ライダーさんもアニメ版の銀英伝は見ていると思います。その戦闘シーンでは、戦闘艇が戦艦を単機であっさりと破壊するなど大活躍をしています。そのためゲームで戦闘艇が強いのは、ある意味当たり前なのです。原作の戦闘艇の機数が、宇宙母艦の数に対して完全に間違っているのですから。
しかし私も過去ログを全て読み返したわけではないので判らないのですが、誰か以前に艦隊決戦における戦闘艇の数がおかしいという問題を提唱していましたか? いなかったら私が最初ですね(笑)。何でも一番は気持ちがいいので。(^^)
< 移動要塞の機動力の実態については、推察できる記述が銀英伝の作中にもあります。ガイエスブルク移動要塞は、ヴァルハラ星系外縁部に到達した3月17日から24日経過した4月10日に、オーディンから約6250光年離れたイゼルローン回廊に到達しています。これがいかに速いかは、ハイネセン-イゼルローン間の約4000光年における艦船移動期間が「通常3~4週間」(銀英伝3巻 P115)と言われていることからも伺えるでしょう。つまり移動要塞の航行速度は、実は通常艦船よりもかなり速いといっても過言ではないのです。>
冒険風ライダーさんが通常航行の速度が艦艇よりも速いから早く回廊に着いたと考えています。しかし私は、ワープ距離が普通の艦艇、というか艦隊よりも長いので回廊に早く着いたと考えています。この時点で私たち二人の考えは全く逆ですね。
如何に巨大エンジンが12機あるとは言え、質量が40兆トンもある物体が、宇宙戦艦よりも速いとはとても思えません。むしろ巨大な12個のワープエンジンの力で、より遠くまでワープできると考えた方が私は納得できます。
また宇宙艦隊が、1万5000隻近くの艦艇で同時にワープするのに対して、移動要塞ならば要塞内に艦隊を収容してワープすれば、質量が重くとも1個の物体がワープするだけです。1万以上の複数同時ワープよりも、1個だけのワープの方がワープアウトを考えてみても安全で、しかもより長く遠くへワープできると予想します。
やはり私は、移動要塞の通常航行での速度は、艦艇よりも遅い。よくいって同速度だと思います。
<それに、移動要塞が小惑星を避けるのだってそんなに難しくもないでしょう。たとえば、イゼルローン要塞が周回軌道している恒星アルテナを「盾」にできる位置に要塞を移動させても良いでしょうし、いっそのこと、イゼルローン回廊を一旦出て、安全が確認された後にまた改めて戻るという方法もあります。こちらの移動に合わせて小惑星がエンジンを起動させて軌道修正を行うのであれば、その時こそ例のエンジン攻撃によって小惑星を自滅させてしまえばそれで済んでしまう程度の話でしかありません。イゼルローン回廊前面を常に哨戒して小惑星群の早期発見に努めれば、機動力が速いことも併せ、移動要塞はかなりの高確率で小惑星攻撃をかわすことができるでしょう。>
まず小惑星(ないし氷塊)のエンジンですが、アルテミスの首飾り攻撃時における銀英伝2巻の記述やアニメ版での描写を見る限り、ガイエスブルクのようにリング上にはつなげていません。どちらかと言えば、筒型になっています。また早期に発見して攻撃しても、アルテミスの首飾りの高出力レーザー砲やミサイル攻撃でも防げませんでした。あるいはトゥールハンマーなら破壊できるかも知れませんが、連射が出来ない分、波状攻撃を掛けられれば終わりです。
そして移動要塞が実際に避けられるかどうかです。まず最初に言っておくことがあります。
私はガイエスブルク移動要塞の通常エンジンによる航行は、「前進」と「後進」だけしか出来ないと確信しています(爆)。理由はアニメでガイエスブルク移動要塞が動くときは、常に直線運動だったからです(爆)。
アニメ版で宇宙艦艇の移動(前進)は、核融合炉が動力源と思われる後尾の主機関で行っていると思います。しかし急停止、艦首を敵に向けながらの後退、横への平行移動、回頭などは艦首及び側面の噴射口から推進剤のようなものを噴射して行っています。つまり後尾の主機関は、基本的に前進用だけだと思えるのです。
しかし当然ながらガイエスブルク移動要塞には、エンジンだけでそんなもの姿勢制御用の噴射口はありません。造ろうにもエンジンによる移動ならまだしも、推進剤噴射で40兆トンのスライド移動は不可能でしょう。ガイエスブルクが左に回頭するためには、エンジンを吹かして前進して大回りに左へ向かうしかないでしょう。恐ろしいほどの無駄です。
本当のことを言えば、ガイエスブルク移動要塞は「前進」しか出来ない!としたかったのですが、イゼルローンの要塞主砲の射程圏内に近づいたあと、一旦射程圏外へ後退していました。まさか大回りでUターンしたとは思えないので、艦艇と違いエンジンが逆噴射も出来るように改良していたと推測します。
私はこの仮説から、移動要塞は基本的には構造上、前進後進しかできないと考えています。横移動が出来なければ小惑星(氷塊)攻撃を避けることは無理でしょう。
今回は時間がないのでここまでとさせてもらいます。
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- board4 - No.3654
Re:結局、何が言いたいの?
- 投稿者:Ken
- 2003年02月13日(木) 23時52分
パンツァーさん。
>私は、他の人(冒険風ライダーさんや不沈戦艦さん)が放擲したような、Kenの質問にも、まともに回答してきたのですよ。
ありがとうございます。
パンツァーさんの挙げられたAかBかの二者択一は、すこし単純すぎると思いますが、今回の議論の流れの中では、Bととっていただいても結構です。艦船に比べて、要塞に関する証明のreliability(信憑性と訳すのかな?)が著しく低い、というのが論旨ですから。
[艦隊と要塞の違いについて]
私は、何かを証明する方法として、
1.演繹的に証明する。
2.帰納的に証明する。
3.現実世界の科学手法を用いる。
という3案を提案しました。
この中で、本当の意味での「証明」ができるのは、実は1だけです。この形で何かを証明した人は、天地に向かって「自分の証明は完璧だ。覆すことはだれにもできない」と宣言できるでしょう。ピタゴラスの定理を持ち出したのは、それを明らかにするためでした。
次に2の帰納法ですが、私がG・マーティの言葉を引用したように、これは厳密な意味での証明ではありません。それでも観察例を積み重ねるほど信憑性が増してゆきます。多くの天文家の数十年の観察に支えられたからこそ、ケプラーの法則は受け入れられ、ニュートンの考察にも大きな影響をあたえました。
そして3ですが、これは純然たる帰納の弱点を補うものです。多様なの因子を多様な条件で観察するのは、生身の人間には難しいので、観察例には不可避的に「すきま」を生じます。そのすきまを既知の物理法則で、場合によっては新しい物理法則で埋めようとする作業です。
さて、銀英伝ですが、1の形で「どこへでも行ける」ことを証明するのは、要塞どころか艦隊でも不可能です。演繹法にしたがう限り、ヤン艦隊がフェザーンへ侵攻できることすら証明できません。ここでは、艦隊と要塞には差がありません。それどころか、パンツァーさんが挙げられた「A」、つまり
>A銀英伝に登場するテクノロジー一般が、
>「可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」
という結論になると思われますが、これを持ち出すと、「なにも証明はできない。終わり」と「まったく、面白くない結論」になるので、今はこの立場をとりません。
帰納法ではどうでしょう?上に書いたように、帰納法は純然たる証明ではありませんが、とにかく観察例を積み重ねるほど信憑性が増します。つまり、帰納法とは観察例を積み上げることで信憑性を増大させる作業だといえます。
そして、艦隊と要塞の差はここで生じます。
銀英伝の記述では、艦船(質量数万トン以下の構造物)の宇宙航行は、ヤノーシュ博士以後だけ考えても千年以上の歴史があります。また航行の形態も多様です。移動距離を考えても、「一万数千光年の征旅」もあれば、艦隊間のシャトル連絡もあります。
艦船が航行する環境も一様ではありません。穏やかな宙域の穏やかな航行もあれば、危険に満ちた「難所」の航行もあります。難所の例としては、同盟第2艦隊が入ったレグニッツァの雲海中や、ビッテンフェルト艦隊が横断したランテマリオの気流などがあります。シュタインメッツ艦隊など、ブラックホールの危険にさらされながら、「シュワルツシルト半径ぎりぎりの線へ突進し、双曲線軌道に乗って船の推力にまさる速度」を得るという曲芸をやっています。多様な条件での多様な観察例。つまり、艦船の航行には、帰納を行う上で、なによりも大切な、観察の積み重ねがあるのです。
ところが、移動要塞となると、あとにもさきにも、ガイエスブルグの一例しかありません。40兆トンの質量が、ある条件の中で、イゼルローン要塞の位置まで移動しただけです。
帰納法で証明しようとするとき、艦隊と要塞にはこのような差があるのです。
現実世界の既知の物理法則を利用しての考察は、帰納法の弱点を補う上で、私が最もやりたいことですが、冒険風ライダーさんにも、パンツァーさんにも否定されております。
以上です。