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- board4 - No.3169
ヤン暗殺未遂事件、そしてその後
- 投稿者:イッチー
- 2002年10月29日(火) 10時05分
バーミリオンでラインハルトが戦死した後、帝国の出来事を無理やり同盟にあてはめてみようという私の試みにみなさま、レスをいただき、ありがとうございました。みなさまのご意見をあてはめて作り直してみたのですが、いかがでしょうか?(ユリアンとカリンはどうも帝国キャラに合わないのでヤンとフレデリカにしてみました)
宇宙暦799年末、バーミリオン星域会戦とハイネセン虐殺以来の混乱をようやく収拾した同盟首都ハイネセンでは戦没者追悼記念式典が開かれた。最高評議会議長ジョアン・レベロ、国防委員長ホワン・ルイ、同盟軍最高司令官ヤン・ウェンリーなどをむかえとどこおりなく式典は進行したが、そのとき、事件が起こった。ヤン元帥暗殺未遂事件が発生したのである。
「無能者ヤン!」
それはかって、無条件停戦命令を発する際、故トリューニヒト議長がヤンを評して言った言葉であった。むろん、ヤンが同盟の事実上の最高権力者になった今では、その一語は国家反逆罪にも問われかねない。暗殺未遂という広大な池に、雨滴の一粒がくわわっただけのことであるが。
なおも叫びを放とうとする口元に、ポプランが平手打ちの一閃をたたきつけた。頚椎を捻挫するのではないか、と思わせるほど容赦のない一撃が、さすがに男をたじろがせた。
「不逞なやつめ。きさまも秩序の破壊をたくらむ帝国のスパイか」
「帝国のスパイなどではない」
切れた唇から、血と憎悪をしたたらせながら、男はうめいた。若い最高司令官を焼き殺すかのように、眼光を集中させる。
「ハイネセンの虐殺を忘れたか。たった数ヶ月前の惨劇を、もう忘れたのか!」
男が口にした固有名詞は、石弓から放たれた無形の矢となって、ヤンの耳から心臓へ貫通した。
「ハイネセンの虐殺・・・?」
ヤンのつぶやきは、一瞬のうちに、最高司令官の顔面から生気のかがやきを強奪していた。逆に暗殺者は、活気を回復し、糾弾を開始した。
「何が最高司令官だ。ミラクル・ヤンだ。きさまの権力は流血と欺瞞の上に成り立っているのではないか。おれの妻子は、ハイネセン・ポリスで、帝国軍ときさまとのために、生きたまま焼き殺されたのだぞ!」
ふりかざされたポプランの手が、こんどは空中で停止した。決断なり命令なりを求めるように議長を見やったが、かっての魔術師は、激烈な弾劾の前に、半ば茫然と立ち尽くすだけであった。
「さあ、おれを殺せ。惑星ハイネセンで帝国軍と共謀して無辜の民200万人を殺したように、おれを殺せ。きさまらに何ら害を加えたわけでもない子供や赤ん坊を、ビーム砲の劫火で生きながら焼き尽くしたように、おれを焼け!」
男の、生命がけの怒号に対して、ヤンは答えようともしない。発熱がひいたばかりの頬は、瞳の黒色が拡散したように黒ずみ、ユリアンは最高司令官の身体をささえるように寄りそった。
「生きているやつらは、きさまの戦術の華麗さに目がくらんで、ハイネセンの虐殺のことなど忘れてしまうだろう。だが、死者は忘れんぞ。自分たちがなぜ焼き殺されたか、永遠に憶えているぞ」
ユリアンの手に、最高司令官の身体の、ごく微量な慄えが伝わってきた。そのとき、べつの声が少年の耳に聴こえた。怒号を凍てつかせる冷静な声。
声の主は、統合作戦本部長ワルター・フォン・シェーンコップ大将であった。彼は弾劾の暴風から最高司令官を守るように、暗殺者の前に立ちはだかって言明したのである。
「最高司令官をお怨みするにはあたらぬ。無条件停戦命令を無視するよう、最高司令官に進言したのは私だ。おまえは最高司令官ではなく、私をねらうべきであったな。妨害する者もすくなく、ことは成就したであろうに」
剛毅と呼びうる、それは最低温度の声であった。
「きさまが!」
そうあえいだきり、男は絶句した。見えざる氷壁の前で、怒りと憎悪は、進むべき方向を失って乱気流と化したように見えた。
「バーミリオン星域会戦でローエングラム候を戦死させたことで、帝国軍は撤退した。ゆえに、民主主義は救われ、同盟は滅亡を免れた」
凍結した空気に、さらに冷気をくわえるような、統合作戦本部長の語りようであった。
「もし、同盟が帝国に占領されていたならば、帝国の暴政によって数億を下ることのない人々が虐殺されたであろう。あの会戦でローエングラム候を戦死させたからこそ、数億人の死者は仮定の数字としてすんだのだ」
「きさまら権力者は、いつもそうだ!多数を救うためにやむをえなく少数を犠牲にする、と、そう自分たちを正当化するんだ。だが、きさまら自身がきさまらの親兄弟が、少数のなかにはいっていたことが一度だってあるか!」
男は足を踏みならし、靴のかかとで地を踏みにじった。
「人殺しのヤン・ウェンリー!無能者ヤン!きさまの権力は、血の海に浮かんでいるのだ。一秒ごとに、そのことを思い出せよ。ローエングラム候は、敗北と死によって罪をあがなった。きさまは生きているが、いつかは罪をあがわなくてはならんのだ。おれより手の長い者は宇宙に幾人もいるぞ。おれに殺されていたほうが幸福だった、と、遠からぬ将来に思い知るぞ」
「憲兵司令部につれていけ。私自身が後刻、尋問する。早くつれていくのだ」
ムライ大将がそう指示して、無限に続くかと思われる糾弾の奔流をたちきった。三個分隊を構成するにあたる人数の憲兵が、暗殺未遂犯をとりかこみ、ひきずるようにつれさった。あとには、濃くなりまさる夕闇と、最高司令官一行が残された。ユリアンは、最高司令官の黄色い手が、自らの頭の上に置かれるのを感じた。それは残念ながら、無意識の動作であるようだった。最高司令官の瞳は、少年を見ていなかった・・・。
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- board4 - No.3170
Re:ヤン暗殺未遂事件、そしてその後
- 投稿者:イッチー
- 2002年10月29日(火) 10時34分
人の気配が、酒精分の霧をくゆらせた。ヤンの暗い瞳が、室内を浮遊して一点にとどまった。金褐色の髪がそこにあった。その所有者である副官は、扉の外で半泣きになっているユリアン・ミンツ大尉に頼んで、入室してきたのだ。ヤンは低く笑った。
「フレデリカ・グリーンヒル中佐か・・・」
張りを失った声が、表決した空気の表面をすべっていった。
「あの男の言ったとおりだ。私は人殺しで、しかも卑怯者だ」
「閣下・・・」
「避けようと思えば避けられたのに、私はそうしなかったのだ。悪逆非道な帝国軍は自らすすんで悪をおかした。そして私は、その悪に乗じて、自分が利益を独占した。わかっているのだ。私は卑劣漢だということは。私は、最高司令官の地位にも、兵士たちの歓呼にも値しない人間なのだ」
フレデリカは返答しなかった。無力さに対するにがい自覚は、ヤンのそれに劣らなかった。彼女はハンカチをとりだして、血の色に濡れたテーブルクロスと、最高司令官の手と袖とをぬぐった。ヤンも、自己糾弾の流出をとめ、唇をとざしたが、フレデリカには最高司令官の傷口がきしる音が聴こえた。
自分で望んで入室したというものの、最高司令官の傷心をなぐさめるのは、容易ではなかった。「たかが200万人」という論法は、絶対に使えない。それこそ、まさしく、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム的な力学の論理であるからだ。そのような発想を否定するところから、同盟の歴史は出発したのである。ひとたび権力者が自分の罪を正当化すれば、自己神格化へむけて急坂を転落し、第二の帝国になりさがるだけであろう。
ヤンがそうであるかのように、また故人となったローエングラム候がそうであったように、フレデリカは全能でも万能でもなかったから、このようなとき、最高司令官の精神の傷口にどのような薬をぬるべきか、自信などなかった。だが、濡れた手と袖とテーブルクロスを拭いてしまったので、つぎの行動にうつらなくてはならなかった。ためらいつつ、彼女は口を開いた。
「閣下は、罪を犯されたとしても、その報いをすでに受けておいでだ、と、わたしは思います。そして、それを基調に、同盟の再建に乗り出されました。罪があり報いがあって、最後に成果が残ると、わたしは思います。どうかご自分を卑下なさいませんよう。帝国軍の撤退によって救われた人々はたしかに存在するのですから」
フレデリカが言った報いとは、アレクサンドル・ビュコック元帥の死を意味した。そしてそれはヤンが正確に理解することとなった。彼の瞳は、なお暗かったが、酒精分の瘴気は急速に減少していった。その瞳に、ハンカチをたたんで一礼し、退出しようとする副官の姿が映った。若い最高司令官は半ば椅子から立ち上がりつつ、自分でけっして予期することのなかった声をかけた。
「グリーンヒル中佐」
「はい、閣下」
「帰らないでほしい。ここにいてくれ」
フレデリカは即答しなかった。自分の聴覚をうたがう思いが、潮のように胸に満ち、それが心臓の位置をこえたとき、彼女は、若い最高司令官と彼女自身が一定の方向へ踏み込んだことを知った。
「今夜は、ひとりでいることに耐えられそうにないのだ。たのむ、私をひとりにしないでくれ」
「・・・はい、閣下、おおせにしたがいます」
自分の返答が正しいかどうか、フレデリカには判断がつかなかった。わかっていたのは、彼女にとってその返答が、選択ではなく必然であったということであった。ヤンにとっては、また事情が異なる。フレデリカは自分が波間にただよう一本の藁でしかないことを知っており、今夜はこの人のために、できるだけよい藁になろうと心に決めたのだった。
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- board4 - No.3171
Re:ヤン暗殺未遂事件、そしてその後
- 投稿者:八木あつし
- 2002年10月29日(火) 12時12分
イッチーさん、大変面白く読ませていただきました。
上手く当てはまっているんですが、一部について言わせてもらいます。
> 声の主は、統合作戦本部長ワルター・フォン・シェーンコップ大将であった。彼は弾劾の暴風から最高司令官を守るように、暗殺者の前に立ちはだかって言明したのである。
シェーンコップは、さすがに統合作戦本部長にはなれないと思います。同盟軍陸戦部隊に所属している彼には、軍令の参謀部は畑違いのはずですから。シェーンコップが就任するのは、同盟軍陸戦総監(憲兵総監との兼務もあり)だと思います。
新たな統合作戦本部長には、ムライが就任すると思います。ただ同盟軍最高司令官にヤンが就いたため、事実上の本部長はヤンですから本部長代理もしくは本部次長かもしれません。
>「グリーンヒル中佐」
>「はい、閣下」
>「帰らないでほしい。ここにいてくれ」
>フレデリカは即答しなかった。自分の聴覚をうたがう思いが、潮のように胸に満ち、それが心臓の位置をこえたとき、彼女は、若い最高司令官と彼女自身が一定の方向へ踏み込んだことを知った。
小さいことですが、ここは「グリーンヒル中佐」ではなく「フレデリカ」だと私は思いました。あと「閣下」ではなく「あなた」だと。バーミリオン会戦前のプロポーズからかなり時間が経っていますし、ラインハルトとヒルダよりは仲は進んでいるでしょう。
最初の受け答えは公務の間柄で。次の受け答えでは、私的な間柄の言葉遣いを変化させた方が雰囲気が出てよろしいかと。
しかし、この時に子供が出来ちゃった展開は同じですね(バカ)
- 親記事No.3169スレッドの返信投稿
- board4 - No.3172
Re:ヤン暗殺未遂事件、そしてその後
- 投稿者:僧侶T
- 2002年10月29日(火) 14時53分
どうも、僧侶Tです。イッチーさん、この「ヤン暗殺未遂事件、そしてその後」とても面白いと思いました。そこで、またぞろ批評(あら捜しとも言う)をしたいと思います。ただ、これから拙僧が指摘しようとしているところは、前回の銀英伝1,5部ないし第2部外伝のときにも似たようなところがあったのに、そのときには気がつかなかったところなのでいまさらどうかとも思うのですが。
> 「無能者ヤン!」
> それはかって、無条件停戦命令を発する際、故トリューニヒト議長がヤンを評して言った言葉であった。むろん、ヤンが同盟の事実上の最高権力者になった今では、その一語は国家反逆罪にも問われかねない。
この部分ですが、権威主義的独裁の帝国であればこそ、指導者を公衆の面前で罵倒することが国家反逆罪になるのであって、一応民主主義国家である(ここでは違うのではないか、という議論もなされていますが)同盟では国家反逆罪にはならないのではないでしょうか。第1巻でトリューニヒトを公衆の面前で糾弾したジェシカは、その後何のお咎めもなく議員になっていますし。
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- board4 - No.3173
Re:ヤン暗殺未遂事件、そしてその後
- 投稿者:イッチー
- 2002年10月29日(火) 16時37分
シェーンコップは、さすがに統合作戦本部長にはなれないと思います。同盟軍陸戦部隊に所属している彼には、軍令の参謀部は畑違いのはずですから。シェーンコップが就任するのは、同盟軍陸戦総監(憲兵総監との兼務もあり)だと思います。
> 新たな統合作戦本部長には、ムライが就任すると思います。ただ同盟軍最高司令官にヤンが就いたため、事実上の本部長はヤンですから本部長代理もしくは本部次長かもしれません。
>
原作の記述を生かして、シェーンコップには同盟軍の重鎮という感じを出したかったのですが、シェーンコップは戦略家というタイプじゃないですね。ただ、陸戦総監だけだと印象が薄いので、首都防衛司令官を兼任させるというのはどうでしょう?
私はムライは地味な仕事を黙々とするというイメージが強いので、憲兵総監が適任だと思っています。
> 小さいことですが、ここは「グリーンヒル中佐」ではなく「フレデリカ」だと私は思いました。あと「閣下」ではなく「あなた」だと。バーミリオン会戦前のプロポーズからかなり時間が経っていますし、ラインハルトとヒルダよりは仲は進んでいるでしょう。
> 最初の受け答えは公務の間柄で。次の受け答えでは、私的な間柄の言葉遣いを変化させた方が雰囲気が出てよろしいかと。
これはいいですね。(笑)確かに二人は婚約しているわけですし・・・。(ただし、同盟再建の仕事に忙殺されて付き合うどころじゃないでしょうが)
>
> しかし、この時に子供が出来ちゃった展開は同じですね(バカ)
「しかし、あのふたり、うまくやれたのだろうか・・・」はシェーんコップあたりが言うのでしょうか(笑)?
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- board4 - No.3174
Re:ヤン暗殺未遂事件、そしてその後
- 投稿者:イッチー
- 2002年10月29日(火) 16時40分
> > 「無能者ヤン!」
> > それはかって、無条件停戦命令を発する際、故トリューニヒト議長がヤンを評して言った言葉であった。むろん、ヤンが同盟の事実上の最高権力者になった今では、その一語は国家反逆罪にも問われかねない。
>
> この部分ですが、権威主義的独裁の帝国であればこそ、指導者を公衆の面前で罵倒することが国家反逆罪になるのであって、一応民主主義国家である(ここでは違うのではないか、という議論もなされていますが)同盟では国家反逆罪にはならないのではないでしょうか。第1巻でトリューニヒトを公衆の面前で糾弾したジェシカは、その後何のお咎めもなく議員になっていますし。
帝国の設定を機械的に同盟にあてはめようとすると、こういうところが一番難しいですね。(笑)暗殺未遂犯は同盟軍兵士で、最高司令官に対する冒涜は軍法会議にかけられる可能性があるとでもしましょうか。
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- board4 - No.3175
宇宙暦799年6月1日付 自由惑星同盟国防委員会辞令
- 投稿者:イッチー
- 2002年10月29日(火) 17時59分
先の銀河帝国軍による自由惑星同盟侵略の試みは、バーミリオン星域会戦において、ヤン・ウェンリー元帥率いる同盟軍が帝国軍を打ち破ったことによって阻止された。自由惑星同盟国防委員会はその栄誉をたたえ、ヤン元帥を同盟軍最高司令官に任命するとともに、バーミリオン星域会戦に参加したすべての将兵の階級を1階級上げることをここに決定した。
帝国の野望は阻止されたが、帝国による同盟再侵攻の危険性は未だ去っていない。しかし、悪逆非道なる帝国軍によるハイネセン市民の虐殺などの影響で同盟軍の有能なる指揮官の多くが失われた。そこで、生き残った将兵に新たな任務を与え、同盟軍を再建することを国防委員会は決定した。同盟軍兵士諸君は、新たな任務に邁進し、帝国の再侵攻に備えてもらいたい。
また、ハイネセン市民の身代わりとして帝国軍の銃口に前に倒れたウォルター・アイランズ前国防委員長、アレクサンドル・ビュコック元帥、チャン・ウー・チェン元帥(死後2階級特進)には「自由戦士1等勲章」が授与される。
旧銀河帝国正統政府軍兵士諸君はバーミリオン星域会戦における抜群の働きをここに評価し、正式に同盟市民権を付与するとともに同盟軍に編入されることが決定した。諸君には、新たに同盟軍における階級が付与されるであろう。
なお、国防委員会はロックウェル大将およびベイ少将より提出されていた辞職願いをここに了承し、退役を許可する。
同盟軍の新たな陣容
同盟軍最高司令官(統合作戦本部長兼任) ヤン・ウェンリー元帥
最高司令官主席副官 フレデリカ・グリーンヒル中佐
最高司令官次席副官 ユリアン・ミンツ大尉
統合作戦本部長代理 ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ大将
統合作戦本部長代理副官 ベルンハルト・フォン・シュナイダー少佐
宇宙艦隊司令長官 ダスティ・アッテンボロー大将
宇宙艦隊総参謀長 エドウィン・フィッシャー大将
宇宙艦隊空挺司令官 オリビエ・ポプラン大佐
陸戦総監兼首都防衛司令官 ワルター・フォン・シェーンコップ大将
憲兵総監 ムライ大将
後方勤務本部長 アレックス・キャゼルヌ大将
第13艦隊司令官 フョードル・パトリチェフ中将
最高評議会議長警護室長 バグダッシュ准将
宇宙暦799年6月1日
自由惑星同盟国防委員会委員長 ホワン・ルイ
- 親記事No.3175スレッドの返信投稿
- board4 - No.3176
Re:宇宙暦799年6月1日付 自由惑星同盟国防委員会辞令
- 投稿者:僧侶T
- 2002年10月30日(水) 09時39分
僧侶Tです。バーミリオン戦勝後の軍高官人事ですか。面白いのですが、1人もれている人物がいます。「豪胆な偉丈夫」カールセン提督です。彼もバーミリオン星域会戦に生き残ったつわものの一人であるからには、何らかの職務が与えられるはずです。
が、彼はバーミリオン星域会戦時には中将なので、昇進して大将。アッテンボローが分艦隊指令官だったのに対し、彼は艦隊指令官だったのですから、序列を優先するならば、彼が宇宙艦隊司令長官になるべきなのでしょうが、そうなるとアッテンボローの職がなくなります。アッテンボローが中将のままならば、彼が第13艦隊司令官になればよいのでしょうが、彼も大将なんですよね。多分どちらかが統合作戦本部幕僚総監になればいいのでしょうが、二人とも前線指揮官タイプの人ですし。
でもまあ、序列と「ヤンファミリーによる軍の私物化」との批判を避けることが優先されて、
統合作戦本部幕僚総監:アッテンボロー大将
宇宙艦隊司令長官:カールセン大将
になるかと思います。
- 親記事No.3175スレッドの返信投稿
- board4 - No.3177
Re:宇宙暦799年6月1日付 自由惑星同盟国防委員会辞令
- 投稿者:イッチー
- 2002年10月30日(水) 10時02分
> 僧侶Tです。バーミリオン戦勝後の軍高官人事ですか。面白いのですが、1人もれている人物がいます。「豪胆な偉丈夫」カールセン提督です。彼もバーミリオン星域会戦に生き残ったつわものの一人であるからには、何らかの職務が与えられるはずです。
> が、彼はバーミリオン星域会戦時には中将なので、昇進して大将。アッテンボローが分艦隊指令官だったのに対し、彼は艦隊指令官だったのですから、序列を優先するならば、彼が宇宙艦隊司令長官になるべきなのでしょうが、そうなるとアッテンボローの職がなくなります。アッテンボローが中将のままならば、彼が第13艦隊司令官になればよいのでしょうが、彼も大将なんですよね。多分どちらかが統合作戦本部幕僚総監になればいいのでしょうが、二人とも前線指揮官タイプの人ですし。
> でもまあ、序列と「ヤンファミリーによる軍の私物化」との批判を避けることが優先されて、
> 統合作戦本部幕僚総監:アッテンボロー大将
> 宇宙艦隊司令長官:カールセン大将
> になるかと思います。
>
ヤンとしては、自分の後継者として、アッテンボローを戦略家として育てるという考え方があるでしょうから、上記のような人事になるでしょうね。
というわけで
同盟軍の新たな陣容
同盟軍最高司令官(統合作戦本部長兼任) ヤン・ウェンリー元帥
最高司令官首席副官 フレデリカ・グリーンヒル中佐
最高司令官次席副官 ユリアン・ミンツ大尉
統合作戦本部長代理 ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ大将
統合作戦本部長代理副官 ベルンハルト・フォン・シュナイダー少佐
統合作戦本部幕僚総監 ダスティ・アッテンボロー大将
宇宙艦隊司令長官 ラルフ・カールセン大将
宇宙艦隊司令長官副官 スーン・スール少佐(留任)
宇宙艦隊総参謀長 エドウィン・フィッシャー大将
宇宙艦隊空挺司令官 オリビエ・ポプラン大佐
陸戦総監兼首都防衛司令官 ワルター・フォン・シェーンコップ大将
憲兵総監 ムライ大将
後方勤務本部長 アレックス・キャゼルヌ大将
第13艦隊司令官 フョードル・パトリチェフ中将
最高評議会議長警護室長 バグダッシュ准将
ポプランがやりにくそうですが(笑)
スール少佐はハイネセンの虐殺で殺されている可能性もありますね。
- 親記事No.3142スレッドの返信投稿
- board4 - No.3178
Re:CLAMP版創竜伝ゴールデンで放送決定
- 投稿者:てんてんdwp
- 2002年10月30日(水) 12時48分
すみません、熱く語っていただいた上で言うのは恐縮なんですが・・・
これ、ネタっぽいですよ。
少女漫画板CLAMPスレを見てみましたが、住人が皆「???」状態でした。
その中から一文、紹介しましょう。
「ソースが2chと言い張る所が凄い」
- 親記事No.3175スレッドの返信投稿
- board4 - No.3179
Re:宇宙暦799年6月1日付 自由惑星同盟国防委員会辞令
- 投稿者:僧侶T
- 2002年10月30日(水) 15時22分
どうも、僧侶Tです。
> スール少佐はハイネセンの虐殺で殺されている可能性もありますね。
スール少佐は「正史」ではヤン暗殺事件の際重傷を負い、意識を失ったところを死んだと誤解されて、唯一の現場生存者となりました。今回もそうすればいいのではないでしょうか。
というわけで、あの「生き残ってしまったよ、たった一人だけ・・・」という台詞を聞くのは、ユリアンではなくてヤンになるでしょう。いや、本当に歴史の皮肉というやつでしょうか。
それから、細かいことですがこのときまだ彼は「スールズカリッター少佐」ではないでしょうか。まあ、生き残った後で、故ビュコック元帥との思い出を記念して(?)改名した、とすればいいでしょうが。
余談ですが、拙僧が銀英伝で一番心に残った台詞があのスール少佐の台詞でした。ちなみに、一番好きなシーンはヤンの死後、ムライ提督がイゼルローン要塞を離脱するシーン。
- 親記事No.3175スレッドの返信投稿
- board4 - No.3180
Re:宇宙暦799年6月1日付 自由惑星同盟国防委員会辞令
- 投稿者:イッチー
- 2002年10月30日(水) 17時42分
> スール少佐は「正史」ではヤン暗殺事件の際重傷を負い、意識を失ったところを死んだと誤解されて、唯一の現場生存者となりました。今回もそうすればいいのではないでしょうか。
> というわけで、あの「生き残ってしまったよ、たった一人だけ・・・」という台詞を聞くのは、ユリアンではなくてヤンになるでしょう。いや、本当に歴史の皮肉というやつでしょうか。
> それから、細かいことですがこのときまだ彼は「スールズカリッター少佐」ではないでしょうか。まあ、生き残った後で、故ビュコック元帥との思い出を記念して(?)改名した、とすればいいでしょうが。
> 余談ですが、拙僧が銀英伝で一番心に残った台詞があのスール少佐の台詞でした。ちなみに、一番好きなシーンはヤンの死後、ムライ提督がイゼルローン要塞を離脱するシーン。
私はスール少佐は、帝国軍が撤退して、ヤン艦隊がハイネセンに到着するまでの同盟軍の責任者として生かされる(またはビュコックに託される)可能性が高いと思って、留任説をうちだしました。スール少佐は、ビュコックの副官になったときに、改名したと思っていたのですが、公文書にはスールズカリッターと記載されるかもしれませんね。
私が一番好きなのは、マル・アデッタ星域会戦での「民主主義に乾杯!」の場面なのですが、この場面はロイエンタール、ミッターマイヤーが銃殺を執行する前に、言ったことにすればいいですね。
私的にはこんな最後も考えているのですが。
ビュコックの身柄を拘束しようと帝国軍の部隊がやって来た際、ビュコックは黙って出頭しようとしたが、一部の部下たちが彼の制止にもかかわらず、抵抗した。そのため、ビュコックともども部下の兵士たちも護送車で運ばれ、銃殺されることとなった。
整然と四列にならんだ行列が、堂々とした老人に引率されて到着した。
「これはいったい何なのか」
ミッターマイヤー上級大将が部下に問いただした。
「アレクサンドル・ビュコック元帥とその配下の兵士たちであります」
部下の一人が言った。ミッターマイヤーはその名を思い出そうと努めていた。兵士たちはその間にすでに護送車に積み込まれ始めていた。
「この人がビュコック元帥?同盟軍の宿将として数々の戦いに参加した」
「そうだ。そのことが、なにか、この移送と関係があるのかね」
「いや、しかし、卿の戦いぶりは見事だった。私は士官学校を卒業して以来、卿とは随分戦ってきたものだ」
「・・・・・・」
「あなたは乗らずにここに残ってもよろしい」
「それで、兵士たちは?」
「ああ、それは、不可能だ。彼らは帝国軍に公然と反抗した。ハイネセン市民の反抗を抑えるためにも一罰百戒の見本を見せなければならない」
ビュコックが叫んだ。
「あなたは間違っている!まず兵士たちを-」
彼は自ら護送車へ入っていった。
ポーランドの教育家、ヤヌス・コルチャックの最後をモデルにしました。
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- board4 - No.3181
スールズカリッターって変?
- 投稿者:太郎
- 2002年10月31日(木) 11時12分
前からちょっと気になっていることがありまして久しぶりに書き込みしてみます。
本題。
「スールズカリッター」ってそんなに奇妙で変な姓なのでしょうか?
日本の姓としては確かに奇妙なものですが、果たしてその国でも奇妙な姓として認識される姓なのでしょうか?
あくまで田中芳樹氏の感覚の問題なのか?それとも何か元ネタがあっての描写なのか?
どなたかその辺の事情をご存知の方がおられたらご教授ください。
- 親記事No.3158スレッドの返信投稿
- board4 - No.3182
Re:銀英伝世界で人工知能はどれ位発達しているか?
- 投稿者:古典SFファン
- 2002年10月31日(木) 13時45分
結構迷ったのですが、投稿させていただきます。
> > 後の方の意味だとしたら、銀英伝にそのような記述はありません。コンピュータは出てきますが、フェザーン航路局のコンピュータのように、あくまでも「情報の格納庫」としてのもので、「人間の代わりにものを考える」人工知能ではありません。もちろんデータベースがあるなら、検索とかバックアップとかセキュリティ維持とかを「賢く」やるアルゴリズムを持っているかもしれませんが。
>
> この程度のコンピュータでも3Dチェスのルール次第ですが、人間の銀河チャンピオンに勝てるプログラムは組めるでしょう。なお、今回のチェスもそうですが、人工知能が人間に勝ったのではなく、チェスの世界チャンピオンに勝てるプログラムを人間が組んだというのが正しいんです。プログラマー達はチャンピオンを研究し、どうやれば勝てるかプログラムしたわけです。
システム屋として、さらに経験10年を超えるプログラマーとしての私見ですが、
ゲーリー・カスパロフを打ち破ったディープ・ブルーの能力と、疑いなく巨大データ
ベースを持ち、静的なデータを多量に、不断に扱わねばならぬはずの航路管制用
コンピューターの能力は、質的に全く違います。
もちろん、速度や容量に十分な余裕があれば、計算機は他の計算機をエミュレートする
事が可能です。
が、コンピュータの場合、ターンアラウンドタイム(見かけの入力から応答までの時間)
と、スループット(単位時間内の情報処理量)、そしてCPUの時間あたり計算量
(MIPS)は全く意味が違います。
ディープ・ブルーはチェスの持ち時間内に、多数ではあるが有限個の指し手を探索し
終え、出力が出来るように設計されているが故に、チェスプレイヤーとして振舞う
事が可能なのですが、航路局のコンピュータにそのような振る舞いが出来るか
どうかは不明です。
ディープ・ブルーと航路局のコンピュータを端的に比較するためのスケールと
なるものが得られないため、ご発言のような意見は賛成するにも反対するにも
いささか根拠薄弱と思われます。
確かにコンピュータの計算量は、それに必要なテクノロジーが満たされれば上限
なく上げる事が出来ます。
しかし、チェスでもある程度ゲームが進行するまでは、最善手となり得る手は一つ
ではなく、複数あるいは多数表れます。
発言で指摘されていますが、もし3次元チェスが作り出す手の数が真の天文学的
スケールであれば、コンピュータの計算量がそれに追いつかないと云うことは、
かなり未来になっても十分にありえます。
現在われわれの手が届く物理学(量子論)では、信号の伝達速度は光速、信号の
キャリアとして使用できる光もしくは電流の分解能電子/光子1個まで、と言う
限界があります。
もっとも、現実にはそれより遥か手前で、熱による揺らぎや不確定性原理の壁に
より、信号はノイズに埋もれて読めなくなるはずですので、一時に計算機が処理
出来る計算量には限界があるはずです。
例え、3次元チェスにおける全ての指し手を事前に予測し尽くす事が可能であった
にしても、プレイヤーが選択した手に合わせて選択肢を間切っていかねばならない
以上、やはり計算量と応答時間の問題は付きまといます。
・・チェスである以上それはないと思いますが、例えば将棋のように取った駒を
使えるルールの場合、多少なりとも指し手を複雑化させるだけで計算量は爆発的に
増加し、予測が困難になるケースはありえるのです。
「人間のプレイヤーに勝てるプログラムを作るのは人間」であり、所詮は舞台を
変えた人間同士の勝負と言う観点も肯けますが、計算機に於いては物理法則も
きっちりとものを云うので、単純にある局面を取って簡単に何かが実現できるか
どうかを判断するにも、踏まえておかなければならない前提が存在すると言うのが、
現時点で私が言える意見です。
> >
> > ご質問が、一つ目の意味だとしたら、残念ですがまったく分かりません、としか言えません。私たちの時代よりはるかに進んでいるかもしれないし、逆に退歩しているかもしれないのです。いや、銀英伝の世界に限っていうなら、後者の可能性が大きいとすら、私は思っています。
>
> それはないでしょう。もしそうなら星間国家は維持できないと思います。さらにいえばオーベルシュタインの義眼も作れないでしょう。
> >
銀英伝の世界には、われわれの目から見て遥かに進んだテクノロジーが存在する
事は間違いありません。
われわれは実用的な核融合炉も、ワープ・テクノロジーも、サイボーグ技術も
持っていないからです。
但し、作品内に関する限り、帝国や同盟の前期となるUSG(銀河連邦)の時代に
高所に達し、以後ある程度衰退したと言う事はありえるかも知れません。
銀河帝国のような体制は、想像し得る限り、テクノロジーの進歩にあまり向かない
からです。
穿ってみれば、帝国時代に人口が減少したのも、テクノロジーの衰退に一因がある
と云う考えも成り立つでしょう。
> > もちろん、銀英伝には超光速飛行に代表される「未来のテクノロジー」が登場します。でも、ワープを行うのに、どれほど優れたコンピュータが必要かとなると、ワープの原理そのものが不明なので、なんとも言えないのです。ヤノーシュ博士が発見した理論が、ニュートンやアインシュタインが発見した理論のように、数学的に非常にすっきりしたものだったら、案外ポケット電卓で計算ができるかもしれません。
>
> それも無理でしょう。ワープ理論はさておき、実際にやるとなるとさまざま計算せねばならないものは存在する。恒星の運動、重力場、電磁場の変動、自分の位置、速度etc。これらを計算しさらに数万隻に及ぶ艦隊を統一行動しようと思ったら、数学的にすっきりしたものであれポケット電卓では実用になる時間では計算はできないでしょう。
>
現在でも、惑星の公転周期や、重力の影響程度なら、プログラム可能なポケコンが
あれば、高校生程度の知識で計算できるはずです。
惑星大の質量でも、摂動論が入った場合、精密な計測を行わなければ正確な位置と
速度の予測は不可能なのですが(長期予測は相互作用により外れてしまう)、
近似法を使えるような状況であれば、惑星の位置のようなものは全てニュートンの
式に従う(弾道学的な計算の応用編ですから)計算は非常に大雑把に済ませる事が
出来ます。
もちろんワープにおける重力やその他のパラメータの影響は、まだそのテクノロジー
が存在しない以上、全くの空想の域を出ないのですが、宇宙空間には、その種のもので
「危険域」が現れたとしても「避ける」事が出来るだけの広大な余地があると考えても
不自然ではないと思います。
つまり精密な計算が必要ないようなやり方を見つけ出した方がローコストであるかも
知れないと云うことです。
むしろ、そのような計算を、単体でなら近似法で簡単に片付ける事が出来るような
ノウハウを開発する人間は、ワープ・テクノロジーが開発されてからある程度の
期間があれば、必ず出てくると思いますが。
艦隊行動となると、扱う質点や動体が多い事もあり、E.E.スミス(レンズマン
の作者。20世紀初頭のSF作家)の昔から、大艦隊操作用の計算機と要員を積んだ
「電子戦艦」(作中ではディレクトリックス号)を必要とすると云う想定が成されて
いますが、これと単純なワープ計算がポケコン程度で出来るかどうかというのは、
ソフト的にもハード的にも、システム屋の目から見ると全く異質な問題であると
思います。
> >
> > 「まさか、いくらなんでも今より退歩しているはずがない」と思われるかもしれませんね。確かに、私たちが生きている今の時代には、コンピュータの演算速度が遅くなったり、アルゴリズムがより効率の悪いものになるなんてことはありません。それには、大きな理由があります。それは、いろいろな情報を、世の中に広く知らせるシステムがあって、誰かがある発明や改善をすると、他の人たちがそれを知り、それを基礎にして、さらに改善をすることができるからです。
>
> いえ、違います。必要だからです。いつの時代でもそうですが科学技術が発展するのは必要だからであって、可能だからではありません。
> 誰かがある発明や改善をすると、事前には予期していない副作用が出てきてそれを押さえるためにさらに新しい発明や改善をせねばならず、
> したとしてもまた新しい問題がでてくるので、またやらねばならない。
> この繰り返しです。
>
> 今回のコンピュータでいえば、演算速度が速くなったのは、ソフトの多機能化、肥大化です。それがコンピュータのハードの高速化をひっぱりました。
> だが、それは誰も予測していなかった。ソフトの設計者自身も含めて。
>
> まあ、高速化もアルゴリズムの効率化もソフトの肥大化が食いつぶしてしまったので、あまり向上したわけではないんですが。
>
トーマス・クーン(「パラダイム」と云う言葉を新しい観点で見直し、パラダイムの
シフトによる世界観や科学技術の爆発的変化を研究した)に始まる一連の研究を見ると、
自然科学や、その帰結としてのテクノロジーの進歩は、
「パラダイムを改革する天才の出現」
「そのパラダイムに従って仕事する職人の仕事(スキル)」
の両輪で成り立ちます。
スキルにより極まってゆくタイプのテクノロジーは、資本と時間があれば、
積み重ねにより(おそらく)自動的にレベルを上げていきます。
このタイプのテクノロジーは仰るとおり、必要に応じて発展すると言ってもいい。
ですがパラダイムのシフトは直線的な飛躍でなく、偶然に大きく依存し、
時代状況や、皮肉にもごくごくローカルな、国や地域や文化の状況により突然、
発生する「現象」です。
量子論や相対論はこちらに属します。
量子論なしには電子工学はありえないので、コンピュータの出現自体は、車輪の
発明のように、
「いつかは誰かが成し遂げるかも知れないが、どのくらいの時間がそれに
費やされるか事前に予測する方法はない」
類のものです。
ソフトの多機能化がハードを引っ張ったと言うご意見には一理ありますが、
最近多く使われている工業用の石(PICなどに代表される制御用のCPU)
などは相変わらず低クロックでビット数が少なく、頑丈さが取り柄です。
また、最近の汎用機は、石の高クロック化・チャンネルの高速化・HDDの
高速化のおかげで「部屋一杯のものが大型冷蔵庫ほど」になり、能力はさほど
変わらないというくらいになっています。
そういうもののソフトは、特に変える必要もない(簿記のやり方が大きく
変わったとかいうのでなければ、汎用機のシステムは短期間でさまで変える
必要もない)ので、一昔前のものをアップグレードしている程度です。
目覚しく宣伝されているデスクトップ機と一部のサーバーのみを見ていれば、
仰るようなご意見が出てきてもごく自然だと思うんですが、目立たないが
基幹システムを支えているタイプのコンピュータは、余裕の出来た計算能力を
文字通りの小型化や、計算能力の量り売り(IBMが手がけています)に
振り向ける余裕が出来ています。
そういうものは、こつこつと進歩してきていると言うのが、一応その業界で
仕事している人間の感想です。
目立つほど能力の向上がないと云うのは、文字通りご家庭に回る分にそれが
及ぶのは、もっともっと能力に余裕が出来てからだというだけのことかと
思います。
> >
> > もっと効率のよいやり方があります。それは、「統治」という王様の仕事をするのに必要な情報を独占し、その上で、民衆の生活をある程度は保護してやることです。例えば、王国のある地方が飢饉になり、別の地方が豊作になったとすると、その情報を持っている王様は、豊作の地方から飢饉の地方へ食物を移送して、人民を飢饉から救ってやることができます。救われた人民は王様に感謝し、王の地位は安泰になるでしょう。
>
> なお、このようなことをやるのが統治者の仕事です。このようなことをやらない統治者のなんと多いことか。あまつさえそれを正しいと正当化するのですから。
分けるものがある時に分け与える人は、賢王と呼ばれるでしょう。
ない時に切り捨てる人は、暴君と呼ばれるでしょう。
私には分かりません。
現時点で、どの統治者が「やらない」統治者、「愚かな」統治者であり、どの統治者が
「賢明で民のためを思う」統治者であるか。
なぜなら、論理的に云って、仰るような統治者が存在するならば、その人は情報を
コントロールしており、従って人民(今は私)が判断に用いるべき情報が公開されて
いないであろうからです。
つまり、一見「豊作地方から飢饉の地方へ」物資を移送した賢王と思われた人が、
その実「別の飢饉の地方を冷然と見捨てた」暴君であったと云う事が、情報の公開後に
判明するかも知れない。そのような情報の管制下にあっては。
現在の世界に当てはめて言うのであれば、
「現存するどのような独裁者(あるいは政治的勢力)も、その能力や権力の限界から、
全世界に情報の完全に効果的な統制には成功していない」
と想定して判断する限り、
・指導者に選ばれた人が、傍目から見て合格点に達しない行動を取るケースはままある。
(十分に愚かであるが故に、その情報を隠蔽しえては居ない)
・しかし、そのような状態がいかに批判に値するものであれ、人類史上存在しなかった
ような
「冠絶して賢明で、なおかつ人民のためを考えて行動するような賢王」
を期待したり、作り出せると考えるほどに、私は人間を買い被っては居ない。
ということです。
どの統治者も人であり、愚かな弱者でしかない。
それを批判しているわれわれも(人間全てが)力にも知性にも限界がある、どちらかと
云えば弱い生き物でしかないのです。
相対的愚者や、なかんずく独裁者をその座から追い払うのは当然としても、
そうそう冠絶した賢者が見つかるとは、私には思えません。
現状よりほんの少しましな人を選べる程度の政治システムを、今の民主制から
改良により作り出した方が現実的と思えます。
> >
> > でも、この王様にこんなことができるのは、王様が特別に賢いからではなく、他人が持っていない情報を持っているからなのです。ですから、この王様は、情報が広く自由に伝わることを何よりも恐れ、力の限りそれを妨害します。そうなると、情報は伝わらなくなり、知識は失われ、技術は衰えます。
>
> これは間違いです。王様のところまで正しい情報が届くには、情報が広く自由につたわらなければなりません。そうでなければ、情報は届かないか、間違ったものしか届きません。さらにいえば、王様のところまで正しい情報が届き、さらに命令を下すためには、その時代最高の技術とインフラが必要です。王様に情報が届きその命令が届く必要がある限り
> 技術は発展します。力の限り妨害する阿呆はおりません。それは自分自身の力を削ぐことだからです。
>
> だが、王様の力を削いだ方が良い、情報も命令も届かない方が良いと考える人間もいます。良い悪いはともかく、そういう人間が力を持ち始めると情報は伝わらなくなり、知識は失われ、技術は衰えます。
>
古来、王朝に「宦官の害」が絶えた事はない。
それは、人間の業病のようなものでしょう。
> >
> > 銀英伝に話を戻しますと、ゴールデンバウム家の銀河帝国は、上に挙げた理由で、科学技術を進歩させる最も大切な社会条件と、本質的に矛盾する体制をとっています。これでは、技術は衰えるばかりです。特にコンピュータ技術のような、帝国の支配構造を揺るがす性質のものは、決して進歩しないように、二重三重の封印をかけたと思います。
>
> それでは巨大星間国家たる帝国は維持できないでしょう。維持するためには封印などできないと思います。もし衰えるなら、それは文明の崩壊という事態がおきている状況でしょう。
>
設定の崩壊は起きているかも知れません。
実際問題として、銀英伝はそう云うことについて「書かない」技法で貫かれています。
批判には値するかも知れませんが、作中から必要な材料が見つからないように作られて
いる以上、そのような問題(帝国社会でのテクノロジーの取り扱い)は論考しても、遂に
「見方の違い」に帰着されてしまうような気もしますね・・。
- 親記事No.3175スレッドの返信投稿
- board4 - No.3183
Re:宇宙暦799年6月1日付 自由惑星同盟国防委員会辞令
- 投稿者:僧侶T
- 2002年10月31日(木) 14時51分
> 私はスール少佐は、帝国軍が撤退して、ヤン艦隊がハイネセンに到着するまでの同盟軍の責任者として生かされる(またはビュコックに託される)可能性が高いと思って、留任説をうちだしました。
「ロックウェル大将とベイ少将からの辞表を許可する」というからには2人とも生き残っているはずではないでしょうか。少佐では位階が低すぎて同盟軍の責任者になれないでしょうから、彼らが同盟軍の責任者になるはずです。そもそも、「ハイネセンの虐殺」はかなり発作的な行動なのだから、(だからこそ、指導層だけ抹殺するはずが虐殺になったのですし)帝国軍は後始末のことなど考えないと思います。
スール少佐は、ビュコックの副官になったときに、改名したと思っていたのですが、公文書にはスールズカリッターと記載されるかもしれませんね。
文庫版第5巻のP137には、「この戦い(第1次ランテマリオ星域会戦)のとき、まだ彼はまだスーン・スールズカリッター少佐である」との記述があります。
> 私が一番好きなのは、マル・アデッタ星域会戦での「民主主義に乾杯!」の場面なのですが、この場面はロイエンタール、ミッターマイヤーが銃殺を執行する前に、言ったことにすればいいですね。
これを実現させるために少し考えてみました。
宇宙艦隊司令部ビルに戻ったビュコックは部下たちから逃亡を進められたがそれを拒否し、逆に部下たちに逃亡するように命じた後、チュン大将とともに執務室へと引きこもった。部下たちの多くは命じられたとおり逃亡したが、スール少佐をはじめとする部下たちは玄関ロビーなどに陣取り、帝国軍を阻止しようと試みた。
だが完全武装の陸戦部隊にかなうはずもなく、激しいが短く一方的な戦いの後、重傷を負い意識不明となったスール少佐を除いて全員戦死を遂げる。抵抗を排除した帝国軍はロイエンタール提督(別にミッターマイヤーやヒルダでもいいですが)を先頭に執務室へとなだれ込んだ。そこではビュコックとチュンが、泰然としてブランデーを酌み交わしていた・・・。
といったところでしょうか。
> 私的にはこんな最後も考えているのですが。
> ビュコックの身柄を拘束しようと帝国軍の部隊がやって来た際、ビュコックは黙って出頭しようとしたが、一部の部下たちが彼の制止にもかかわらず、抵抗した。そのため、ビュコックともども部下の兵士たちも護送車で運ばれ、銃殺されることとなった。
>
> 整然と四列にならんだ行列が、堂々とした老人に引率されて到着した。
> 「これはいったい何なのか」
> ミッターマイヤー上級大将が部下に問いただした。
> 「アレクサンドル・ビュコック元帥とその配下の兵士たちであります」
> 部下の一人が言った。ミッターマイヤーはその名を思い出そうと努めていた。兵士たちはその間にすでに護送車に積み込まれ始めていた。
> 「この人がビュコック元帥?同盟軍の宿将として数々の戦いに参加した」
> 「そうだ。そのことが、なにか、この移送と関係があるのかね」
> 「いや、しかし、卿の戦いぶりは見事だった。私は士官学校を卒業して以来、卿とは随分戦ってきたものだ」
> 「・・・・・・」
> 「あなたは乗らずにここに残ってもよろしい」
> 「それで、兵士たちは?」
> 「ああ、それは、不可能だ。彼らは帝国軍に公然と反抗した。ハイネセン市民の反抗を抑えるためにも一罰百戒の見本を見せなければならない」
> ビュコックが叫んだ。
> 「あなたは間違っている!まず兵士たちを-」
> 彼は自ら護送車へ入っていった。
>
> ポーランドの教育家、ヤヌス・コルチャックの最後をモデルにしました。
ハイネセンの虐殺は同盟の軍と指導層を抹殺するために行われたものである以上、たとえ一時でもビュコックを助けよう、といった話にはならないと思います。