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投稿ログ26 (No.454 - No.462)

親記事No.388スレッドの返信投稿
board4 - No.454

Re:この問題については

投稿者:くら
2001年07月16日(月) 19時45分

> > 絵の具に砂糖を入れても甘い絵にはならないでしょうが
> > 砂糖を混ぜてマチエールの変化を狙うことは不自然ではないです
> > 火で炙ったりすると良い感じにこげるので、結構おもしろいです
>
> 管理人さんの例えは、絵の具に砂糖を混ぜて甘い絵をこしらえようとするに類する愚かな行為をなす者を評したものであります。

はい、解りますよ、銀河英雄伝説読んでますし
作中では確か、浅はかな政治家の甘い見通しでの安易な判断を評した言葉ですよね
ただここで評されていたのは「文章表現の手法について(出来はともかく)」だと思ったから
甘い絵にならないからって、砂糖は菓子に使えって類の決めつけ方はどうだろう?
絵の具に砂糖混ぜたから甘い絵を描こうとしてるなっという類の判断はどうかな?
程度のことを言っただけです

board4 - No.455

くらさん、もっと発言の意図を理解してください☆

投稿者:
2001年07月17日(火) 03時01分

恵です☆
はじめまして、くらさん。一生懸命書いておられるところに水を差すようで申し訳ありませんけど、少し勘違いをなされているようなので、意見させていただきますね。

> あ、人肉は美味しいらしいですね(特に脳味噌)
生理的嫌悪感や、倫理的なことは別にして、理論的には
(薬膳としての効能は高いと言う方が適切か?)
でも実際には共食いは病気になりやすいのだそうで
> ま、雪山で遭難でもしたら、その時に考えます


> > 絵の具に砂糖を入れても甘い絵にはならないでしょうが
> > 砂糖を混ぜてマチエールの変化を狙うことは不自然ではないです
> > 火で炙ったりすると良い感じにこげるので、結構おもしろいです
>
> 管理人さんの例えは、絵の具に砂糖を混ぜて甘い絵をこしらえようとするに類する愚かな行為をなす者を評したものであります。

> はい、解りますよ、銀河英雄伝説読んでますし
作中では確か、浅はかな政治家の甘い見通しでの安易な判断を評した言葉ですよね
> ただここで評されていたのは「文章表現の手法について(出来はともかく)」だと思ったから
甘い絵にならないからって、砂糖は菓子に使えって類の決めつけ方はどうだろう?
> 絵の具に砂糖混ぜたから甘い絵を描こうとしてるなっという類の判断はどうかな?
>程度のことを言っただけです


もう少し、発言された方の意図をきちんと汲んでからコメントされてはいかがですか?
「人肉料理」・「絵の具に砂糖を入れる」のお話は両者ともに、「喩え話」です。これは、「ある事柄をわかりやすく説明するために、それとよく似たある身近な物事を引き合いに出して説明すること」です。喩え方の是非を問う反論ならともかく、あなたがしている返答は、

「犬も歩けば棒に当たるでしょうね」

と他者から言われたことに、

「うちの犬は、すっごく賢いから棒なんかに当たらないもんね!だいたい、犬の平衡感覚は人間より優れているんだ、云々…(以下省略)」

と、ズレた答え方をしているのと、構造的にはまったく同じです。
具体的には、まず、絵のお話ですけど、「砂糖を混ぜてマチエールの変化を狙う」のは「絵を甘くする」目的ではありません。「甘くはならなかったけど、こんな化学変化で絵(創竜伝)が良くなったんだ!」と主張されるなら、創竜伝の社会評論(つまり、ここでは砂糖ですね)を評価する根拠をはっきりと示してください。どうして「絵の喩え話」という表面的なことにこだわって、こんな「マチエールの変化」などと強弁をなさるのか、わたし(たぶん他の方々も)には理解できないのですけど。
次に「人肉料理」のお話では、美味しい・不味いの判断ではなくて、創竜伝の職業差別的記述のような倫理(モラル)破りを擁護するときのあなたの精神性や判断力を問われたわけでしょう?
それがどうして、

「生理的嫌悪感や、倫理的なことは別にして」
(↑って、まさにそれを問われてるんですってば!)

「あ、人肉は美味しいらしいですね(特に脳味噌) 」

というコメントで返されたのでしょうか?
もっと、喩えの意図を正確に汲みとってレスされないと、発言された方に対して失礼だと思います。

特に、↓などは、

> 絵の具に砂糖混ぜたから甘い絵を描こうとしてるなっという類の判断はどうかな?
>程度のことを言っただけです

まったくの曲解だと思いましたから。「甘い絵」というのは、あくまで「質の高い作品」の喩えです。そして、「質の高い作品」を目指さない作家の姿勢が「表現者」としてどれ程真摯なのか、あらためて考えてみるのも興味深いかもしれませんよ。

親記事No.388スレッドの返信投稿
board4 - No.456

Re:結論に思う

投稿者:見学者
2001年07月17日(火) 03時23分

> >
> > 「そんな表現形態を取るのは不自然でないかということはできても、ルールを擬制してそんな表現形態を間違っているということはできない」
> >
> >  ということでは合意にいたったでよろしいでしょうか。
>
> はい、了解です☆
>
>
> 今回の議論で、実はあらためて納得したことが一つあることを、最後にご報告しておきます。
>
> 「明確に禁止されていなければ何をやってもよい、という最近の風潮はナゲカワシイわね(大意)」(BY 薬師寺涼子)
>
> ↑これを言わせたのが田中芳樹氏本人であることは、すごく皮肉なお話ですよね(笑)。結局、ご自分も「最近の風潮」にどっぷりつかってしまってるわけなんですから。
>
>

どうも、混ぜっ返して申し訳ありませんが、「最近の風潮」というのが、とても気になりました。明確だろうが暗黙だろうが、作家に何書くかについて(差別やポルノはのぞいて)を縛られる「禁止(ルール)」なるものはないという私の意見を理解されていないように見えるからです。あなたの真意は違うのかもしれませんが。

 よければ詳しく教えてください。

親記事No.388スレッドの返信投稿
board4 - No.457

Re:最後の意見です☆

投稿者:
2001年07月17日(火) 05時57分

> どうも、混ぜっ返して申し訳ありませんが、「最近の風潮」というのが、とても気になりました。明確だろうが暗黙だろうが、作家に何書くかについて(差別やポルノはのぞいて)を縛られる「禁止(ルール)」なるものはないという私の意見を理解されていないように見えるからです。あなたの真意は違うのかもしれませんが。
>
>  よければ詳しく教えてください。


正直、そんなに杓子定規な思考で詰め寄られてもすごく困るんですけど、一応お答えしておきます。

> 「明確に禁止されていなければ何をやってもよい、という最近の風潮はナゲカワシイわね(大意)」(BY 薬師寺涼子)

> ↑これを言わせたのが田中芳樹氏本人であることは、すごく皮肉なお話ですよね(笑)。結局、ご自分も「最近の風潮」にどっぷりつかってしまってるわけなんですから。


もちろん、これは書いた通り「皮肉なお話」というのが意図です。そもそも、わたしたちの合意意見は、

「小説にはルール(禁忌)はない」
(先人が築いた『定義』は間違いなくあるはずですけど、これはルールという概念からは除きます)

だったはずです。
そして、わたしが皮肉った薬師寺涼子の言葉は、

「明確に禁止されていなければ何をやってもよい」

=「小説にはルールはない」から創竜伝では小説に社会評論を入れるような手法を用いている

と置き換えることが可能です。しかも、そのご自分自身も含まれる行為を「最近の風潮」と決めつけて、間接的に「ナゲカワシイ」と登場人物に言わせていることが田中氏にとって皮肉なお話ですね、と、わたしは申し上げたのです。(その行為自体がイケナイことだなんて、わたしは一言も言ってません。ただ、「皮肉なお話」と言っているんです)

管理人さんの「絵の具に砂糖を入れる」の喩え話にも突っかかっておられましたけど、あなたは皮肉や喩え話を受けつけることができない人なんですか?もっと直接的な説明でないと納得できない性分なんですか?(あなたのこういう所が、杓子定規だと感じてしまいます)

それと、あなたが混ぜっ返したせいであなた自身のご意見に矛盾が生じてしまいましたね。

「明確だろうが暗黙だろうが、作家に何書くかについて(差別やポルノはのぞいて)を縛られる「禁止(ルール)」なるものはない」

明確だろうが暗黙だろうが「禁止(ルール)」なるものはない、って……「差別やポルノが除かれる」と書いてしまったら、

「差別やポルノを除く」

という、立派な「ルール的」なものが存在してしまうじゃないですか。あなたがこれを書いてしまったせいで、

「小説にルールはない」

の前提が自己崩壊してしました。なぜなら、差別やポルノに関する何らかの(倫理面等の)「規制」があることを、あなたがご自分で認めてしまったからです。これは、「明確だろうが暗黙だろうがルールはない!」の主張とは完全に矛盾します。(前回まで、わたしも、「不自然」というだけで、あえてそこまで主張するつもりはなかったのに…)

わたし自身も、他人の言葉を誤用してしまった失敗もあるので、あまり強く言える立場ではありませんけど、それにしても今回のあなたのご指摘は納得がいきません。
どうせまた、「言葉が正確ではありませんでした」と言ってどこかの部分を加筆修正して反論されるおつもりでしょうけど、あなたの「正確ではない言葉」に踊らされるのもいい加減に精神的苦痛を感じています。ですから、この話題に関する議論は、申し訳ありませんけど、わたしのほうからはこれで打ち切らせていただきます。自分の言いたいことは、全部言わせていただきましたから。
後は、わたしの発言の意味とご自分が軽率にされた発言をもっとしっかり消化なさって、それでもまだご意見があるようでしたらご自由に書き込まれたらいいと思います。ただし、わたしはもう何も言いませんけどね。

以上です☆
あしからず、ご了解くださいね、見学者さん。

board4 - No.458

「(法で)禁止されている」と「いけない」と…

投稿者:新Q太郎
2001年07月17日(火) 17時34分

えーとね、どっかでずれてる感じがするんですが、
結局「いけない」という意味をどのように捉えるか、という問題ですね。

例えば写真。
日本では、陰部をはきり写した写真や幼児のポルノ写真を撮って発表するのは、たしか法律で禁止されていて、やると後ろに手が回ります。そういう意味で、これは確かに「いけない」。
しかし、風景写真や記念写真でも、ピンぼけ、露光不足、或いはカメラの蓋をあけてしまい真っ黒クロ・・・というのは、一応「いけない」と言って差しつかえないのではないでしょうか。
もちろん、ピンボケは日常の異化作用だ!とか真っ黒のフイルムは無と破滅、そして再生の隠喩だ…とか主張するゲージツ化もいるでしょうが、一応そういう写真が出てきたら記念撮影を依頼した人は怒るし、大方のコンテストは落選します。
他にも「頭上の余白は敵」とか「ピーカン不許可」とかはありますが、それは片寄っている(一部笑)としても、そういう基準が厳然として「写真」にあると言えるでしょう。

小説でも例えば、田中氏自身が某ベストセラー「ノ○ウェイの森」を批判して「文末を数えたら、『…と言った』が○○個所もあった。こんな陳腐な表現をしていいのか」と冷笑したことがありました。
これはおそらく田中氏が、「小説はワンパターンで単純な文末を繰り返しては『いけない』」と思っていたからの言葉でしょう。

あるいは小説中ですが、「かの諸葛亮孔明は…」「字と名前を一緒にするな、諸葛孔明か諸葛亮だろう」と論難するくだりがあります。
これも別に法律でそう呼べと決まっているものではない、言葉(呼称)なんてオレがどう呼ぼうと勝手だ、といえばそれまでです。しかしスタンダードから外れる、いけない、という評価も厳然として存在する。ということです。
これらと同じと思いますがどうでしょう。

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board4 - No.459

Re:スタイルというか手法

投稿者:たこつぼ
2001年07月18日(水) 03時19分

> > 料理の中にゴキブリが入っていたとして、
> > 「これは料理の素材でアクセントなんだ!」
> > という主張が通るでしょうか?
> >
> > せめてゴキブリを「料理」として出してもらいたいものです。
>
> 小説に、エッセイや評論的表現を入れる手法をゴキブリにたとえるのはどうかなぁ?
> と言う気はしますけど
> 作者が意図的に入れてるなら十分通るでしょう
> ゴキブリの入った料理を
> 食べたいかどうか、おいしいかどうかは別にして
> ゴキブリを入れること自体は別に反則でもなんでもないと言うことですよね?
> 本論とか読むとイナゴをゴキブリか便所コウロギと言ってる気がしなくもないですが
> 虫嫌いの人には一緒と言えば一緒ですかね
> イナゴは結構美味しいんですよ、足とか引っかかるので注意が必要ですが

『料理の中にゴキブリ』は絶妙な表現だと思います
エッセイや評論的表現を入れる手法をゴキブリといっているのではなく
必要もなく、脈絡もなく、穴だらけの偏った社会論評を半ばわざと『読者が勘違いしやすい』形式でだらだら述べていることがゴキブリで表現で例えられているのです。

ゴキブリを入れる事で明らかに料理の質が下がっているのに、作者の自己満足の為にわざわざ故意にゴキブリを入れているということが問題なんだと思います。

だったらそーいう姑息なまねをせずに穴だらけの偏った社会論評を社会論評という舞台で堂々と発表しろということです。

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board4 - No.460

お約束な反応(ゴミレス、すまん)

投稿者:Merkatz
2001年07月18日(水) 12時44分

> 他にも「頭上の余白は敵」とか「ピーカン不許可」とかはありますが、それは片寄っている(一部笑)としても、そういう基準が厳然として「写真」にあると言えるでしょう。
>


鳥坂先輩ですね(笑)

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board4 - No.461

反銀英伝 大逆転! リップシュタット戦役(71)

投稿者:不沈戦艦
2001年07月18日(水) 15時57分

 そして8月15日、戦役の行方に決定的な影響を与える事件が発生した。いわゆる「ヴェスターラントの虐殺」に先立つ叛乱により、シャイド男爵が死亡した件である。

 事の起こりは、ブラウンシュヴァイク公の甥にあたる、シャイド男爵が、公爵の領地であるヴェスターラントにて、民衆から過酷な収奪を行ったことによる。伯父に対する背後からの援護を過剰に意識したことと、男爵自身の若さがそうさせたものだ。しかし、ラインハルトが立ち上がり、貴族支配に反抗し、支配のたがが緩み始めていることを、民衆も知っている。タンネンベルク侯の戦略により、戦役の行方が未だ混沌としているとしても、それには変わりがない。反抗の機運が生まれ、それに驚き起こったシャイドは、弾圧を強め、更に反抗が広がる、というように悪循環が拡大発展していった。そして遂に、大規模な暴動が始まってしまい、少数の警備兵に何かがなし得る状況ではなくなった。シャイド男爵は重傷を負った後、単身シャトルを駆ってガイエスブルグに逃げ込んだが、到着後程なく死亡した、ということである。

「賤民どもが、つけ上がりおって!恩知らずの賤民どもに、正義の鉄槌を下してやる!!ヴェスターラントに核攻撃を加える!!!!」

 元々、自軍の状況や自分自身の権勢が思わしくなくなっているところに、甥が領民に殺されたという事件は、ブラウンシュヴァイク公の自尊心を決定的に傷つけた。甥を殺した者どもを、皆殺しにしてやる、というところまで一気に到達してしまったのだ。特権を持っていることに対する自覚のない者は、それを持たない人々の全存在、全人格を容易に否定することができる。ブラウンシュヴァイク公は、民衆に、圧政に反抗する権利どころか、大貴族の許可なしに民衆が生存する権利すら認めていなかった。民衆の中の病人や老人など、貴族に奉仕することのできない者は、家畜より無益で、したがって生きる価値もない・・・・・そう確信している。

 そのような賤民どもが、大貴族に反抗し、あまつさえ彼の甥までもを殺したのである。ブラウンシュヴァイク公は怒り狂い、自らの怒りを正当なものと信じた。

「閣下、核攻撃はかつて人類が死滅に瀕した十三日間戦争以来のタブーのはず。しかも、ヴェスターラントは閣下の御領地ではありませぬか。領民二百万全員に核攻撃を加える、などということはあまりにご無体。首謀者たちを捕らえた上で、処罰すればよろしいかと」

 アンスバッハ准将の、必死の取りなしも怒りが爆発した公爵には通じない。

「黙れ!!ヴェスターラントはわしの領地だ!当然わしには、あの惑星を、賤民どもとともに吹き飛ばす権利がある!!ルドルフ大帝とて、かつて何億人という暴徒を誅戮あそばし、帝国の基礎をお固めになられたではないか!!」

 ブラウンシュヴァイク公の怒りの激しさに、呆然としてそれ以上声を掛けられなくなってしまうアンスバッハであった。説得を断念すると、おとなしく盟主の前から退出する。アンスバッハに続いて、メルカッツ上級大将もブラウンシュヴァイク公に会見を求め、ヴェスターラントへの核攻撃の再考を促すつもりであったが、ブラウンシュヴァイク公が会見を拒否した為に、やはり説得は行われずじまいとなる。



 この情報が、ローエングラム陣営にもたらされたのは、ヴェスターラントへの攻撃が行われる一日前。ロイエンタールらが一網打尽にされた二日後である。しかし、ここではロイエンタールが捕縛された、という情報は未だローエングラム陣営には伝わっていない。ロイエンタールが可能な限り行動を秘匿していたことと、払暁に一網打尽にされてしまったことにより、部隊要員の誰もが連絡する暇などなかった為である。また、シュタウフェンベルク少将による制圧作戦も短時間で終了した為、オーベルシュタインの情報網も「帝都の一部地区で騒ぎがあった」という程度しか掴んではいなかった。それ故、この件はラインハルトの耳には入ってこなかったのである。

「閣下、諜者からの報告では、ブラウンシュヴァイク公はヴェスターラントにて叛乱が勃発、結局甥のシャイド男爵が殺されてしまったことに激怒し、ヴェスターラント二百万の領民を、核攻撃で殺戮する挙に出ようとしている、とのことにございます」

「そうか。いかにもブラウンシュヴァイク公らしい、目先の怒りに身を任せただけの愚かな決断だ。だが、そのヴェスターラントの件は捨て置けぬ。ミュラー提督に命じて、艦隊を出して阻止せねばならぬな」

 オーベルシュタインの報告で、ブラウンシュヴァイク公によるヴェスターラントへの核攻撃を知ったラインハルトは、それを阻止すべく命令を出そうとする。しかし、オーベルシュタインは異議を唱えた。

「お待ち下さい。いっそ、血迷ったブラウンシュヴァイク公に、この残虐な攻撃を実行させるべきです。」

 平然と言い放つオーベルシュタインに、ラインハルトは目を見開いた。

「ヴェスターラントを見殺しにせよ、と卿は言うのか!」

「その通りです。ヴェスターラントへの核攻撃の模様を撮影し、超光速通信(FTL)にて全帝国に流すのです。それをもって大貴族どもの非人道性の証とすれば、彼らの支配下にある民衆や、平民出身の兵士たちが離反することは疑いありません。阻止するよりは、その方が効果があります」

 恐怖を知らない金髪の若者が、この時はさすがに怯む様子を見せた。

「しかし、ヴェスターラントには二百万の領民がいる。その中には女子供も大勢おろう。助けようと思えば助けられるものを、敢えて見殺しにするなど・・・・・」

「閣下、現在我が軍は容易ならざる状況に追い込まれております。それを少しでも覆す恰好の材料を、敵が進んで提供してくれる、というのです。利用せずしていかがしますか。しかも、この内戦が長引けば、より多くの死者が出ることでしょうし、大貴族どもが仮に勝てば、このようなことはこの先何度でも起こります。ですから、彼らの凶暴さを帝国全土に知らしめ、彼らに宇宙を統治する権利はない、貴族支配には正義はないのだ、と宣伝する必要があるのです。ここは一つ・・・・・」

「目を瞑れ、というのか」

「帝国二百五十億の民の為です、閣下。ヴェスターラントの民には、その為に高貴なる犠牲になってもらいましょう」

「卿が一つ忘れていることがあるぞ。タンネンベルクだ。奴は、これを阻止する方向に動くに違いない。あの男が、そのような貴族全体にとっての悪宣伝を、看過する訳がないからな。それにはどう対処する」

「タンネンベルク侯爵によるヴェスターラント救援は阻止することですな。ミュラー提督に命じて」

 ヴェスターラントを救援するどころか、タンネンベルク侯による救援活動を阻止せよ、とまで主張するオーベルシュタインであった。さすがに目を剥くラインハルトである。ヴェスターラントを救援するどころか、敵の救援を阻止せよ、とまで言うオーベルシュタイン。その目の光を見ていると、感情というものを失った、機械人形を相手にしているが如きであった。

「・・・・・・解った。卿の策が妥当なようだ」

 理性でも感情でもオーベルシュタインの策は受け入れ難いが、謀略としては優れているので、採用せざるを得ないラインハルトである。不愉快極まりないのを承知の上で、オーベルシュタインの言に従うしかなかった。

「キルヒアイス、お前ならこのようなことは絶対に許すまいな」

 赤毛の親友は、民衆を犠牲にするこのような策は、絶対に認めることはないだろう。それ故、この件に関しては、キルヒアイスには相談できなかった。キルヒアイスから隠れるように、極秘の命令を、個別暗号でミュラー艦隊に送らせるよう、指示するラインハルトである。



「侯爵閣下、ガイエスブルグのシュヴェーリン伯爵からの一報です」

 ロイエンタールの件を片付け、数時間ほど仮眠を取ってから目覚めたタンネンベルク侯を、またしても厄介な問題が襲っていた。無論、ブラウンシュヴァイク公による、ヴェスターラント攻撃の報せが届いたのである。

「なに、ヴェスターラントで叛乱が勃発。ブラウンシュヴァイク公が甥を殺されたことに激怒し、熱核攻撃にて領民を皆殺しにする、と命令しただと?」

 秘書官が持ってきたシュヴェーリンからの文面を目にし、あまりの暴挙に呆れるタンネンベルク侯であった。

「公爵は一体何を考えているのか。もちろん、叛乱など許すべきではない。しかし、それは責任者を処罰するだけで充分な話であるし、叛乱が起こった理由の解明も必要だ。それらを抜きにして、領民を百万単位で殺戮しようなど、まともな領主のやることではないな」

 しばし熟考し、対応を決めるタンネンベルク侯である。

「シュヴェーリンに伝えよ。『この暴挙は、可及的速やかに艦隊を派遣し、阻止すること。仮に一部実施されるようなことがあったとしても、可能な限りヴェスターラント攻撃部隊を排除し、領民の命を守れ。なお、これに関してはローエングラム軍の妨害が予想される。充分な戦力にて、阻止部隊を派遣するよう注意せよ』以上だ」

 秘書官にシュヴェーリンへの電文内容を伝えると、タンネンベルク侯はリッテンハイム公に面会を申し入れ、宰相府に向かった。


「おお、帝都へ潜入せしめていた賊軍どもの鎮圧は無事に終わったそうだな。ご苦労であった」

 開口一番、リッテンハイム公はタンネンベルク侯に労いの言葉を掛ける。

「恐れ入ります。ところで、ガイエスブルグにいる味方の一員より、連絡が入りまして。少々問題が発生しているようです」

「問題、とな?」

「はい。ブラウンシュヴァイク公爵領ヴェスターラントにて、叛乱が発生。ブラウンシュヴァイク公の甥、シャイド男爵が重傷を負い、ガイエスブルグに逃げ込んだもののその後死亡。激怒したブラウンシュヴァイク公が、ヴェスターラントに熱核攻撃を加え、領民二百万を皆殺しにしようとしている、という状況でして」

「領民どもが叛乱?それを掣肘して何が問題なのだ。当然ではないか」

 リッテンハイム公は、特に疑問は持っていないようだ。実際、ブラウンシュヴァイク公とメンタリティがそう異なっている訳ではないので、一族を殺された報復に領民皆殺し、という処置を妥当なものとしか受け取れなかったのである。

「さようです。一体、何が問題だと言うのですか!」

 リッテンハイム公とタンネンベルク侯の会話に、突然割り込んできたのは、言うまでもなく秘書官のヘッセン子爵である。タンネンベルク侯に対する敵意と対抗意識剥き出しで、噛みつくような勢いだ。

「宰相閣下、こちらの方は?」

 珍獣でも眺めるような目つきで、ヘッセン子爵の方を見るタンネンベルク侯である。その反応に、ヘッセン子爵は更に怒りを滾らせた。

「これはこれは。銀河帝国軍最高司令官にして、名門の当主たる高名なタンネンベルク侯爵閣下にはご存じいただけなかったかも知れませんが、リッテンハイム公爵閣下の遠縁にあたる、ヘッセン子爵と申します。現在は、宰相閣下の秘書官を務めさせていただいているところでして」

「さようだ。まあ、娘しかおらんわしにとっては、息子代わりのようなものだな。あまりできが良いとは言えぬが、以後よろしくしてやってくれ」

「あまりできが良いとは言えない」と評され更に不満が重なるヘッセン子爵だが、さすがにリッテンハイム公に怒りをぶつける訳にはいかない。代わって、その矛先はタンネンベルク侯に向いた。

「で、一体、何が問題だと言うのです。叛乱などという帝室と領主への大恩を忘れる行為を行ったばかりか、あまつさえ陛下より領地の統治を任された我ら貴族階級を傷つけ、命を奪うなどという暴虐、到底許せるものではありませぬ。そのような賤民どもに、相応の罰をくれてやることこそ我らの責務。金髪の孺子ではあるまいに、『領民にも生きる権利がある』などのような、世迷い言を並べ立てるつもりではありますまいな!?」

 ヘッセン子爵の物言いと「息子のようなもの」という立場を聞いて、この男が何を考えて突っ張っているのか、簡単に理解したタンネンベルク侯である。子爵のこの態度では「急速にリッテンハイム公の側近にのし上がってきた侯爵の存在が気に入らず、激しく妬まれている」ということが解らない方がどうかしているだろう。

「無論だ。叛乱など、到底許せるものではない。処罰を与えるのは当然だな。しかし・・・」

「しかし、何なのですか」

「二百万の領民全てを熱核兵器で殺し尽くす、というのはやりすぎだ。過酷過ぎる措置は、人心を惑わすことにもなる。これでは、一罰百戒というよりは、『どのみち貴族に殺されるのなら、死にものぐるいで抵抗する』という覚悟を、ヴェスターラント以外の平民たちに与えかねん。それらの平民たちは当然の如くローエングラム侯支持に回るので、彼の勢力が絶大になってしまうだろう。敵を利するだけでしかない。ヴェスターラントの件は、叛乱の首謀者たちを捕縛し、処罰をくれてやるだけで充分だ」

「甘い!そのような甘い態度だからこそ、賤民どもに舐められるのです!厳罰をもって臨まなければ、我ら貴族階級の鼎の軽重を問われる、ということになるのは、絶対に間違いありませぬ!!」

 ほとんど、絶叫状態にまで到達してしまっているヘッセン子爵である。しかし、ここでタンネンベルク侯は、まるで話にならないヘッセン子爵を無視し、リッテンハイム公に向き直った。

「さて、宰相閣下。これは、好機到来と言えますな」

「好機、とな?」

 ヘッセン子爵の狂乱ぶりを、唖然として眺めていたリッテンハイム公だが、タンネンベルク侯が話を振ってきたので、そちらに反応する。

「さようです。ブラウンシュヴァイク公は、陛下より賜った領地の臣民を、個人的感情で殺戮するという挙に出ようとしている、ということになります。いや、そのように決め付けてしまえばよろしい。これを帝室の大恩を裏切る行為として、帝国政府を代表して宰相閣下が非難し、ブラウンシュヴァイク公の爵位と領地を召し上げる、と全帝国に宣言すれば、ブラウンシュヴァイク公は貴族連合軍の盟主面をすることは出来なくなる、ということでございますな。すなわち、かの公爵を貴族連合軍盟主の座から追い落とす、絶好の機会というわけです」

「む、ブラウンシュヴァイクを追い落とせる、だと?」

 リッテンハイム公の目が輝く。そういう話に持っていける、とは思っていなかったようだ。

「その通りでございます。今までは決定的な要素に欠けており、ガイエスブルグの皆も決心が付かなかったようですが、ブラウンシュヴァイク公が帝恩を裏切ったとなれば、もはや躊躇することはありませぬ。ほぼ全員が公爵を見限ってガイエスブルグより離脱し、こちらへとやってくることとなるでしょう」

「とんでもありません!そのような小賢しい真似を、小父上に行わせようというのですか?!謀略で敵を追い落とすなどのような良心に悖る行為は行わず、正々堂々と正面から敵を撃破すべきなのです!私は、このような卑劣な策には、絶対に反対します!!」

 何が何でも口を差し挟み、タンネンベルク侯の策が採用されないよう言い張るヘッセン子爵である。とにかく、タンネンベルク侯が手柄を立てることが、許せないのだ。何があってもそれを妨害しようとする。その一念のみで突っ張っていた。

 さすがに、ヘッセン子爵のこの態度には、タンネンベルク侯も辟易とした。

「ところで秘書官、卿は一体何の権限があって、帝国宰相と、その部下たる帝国軍最高司令官の、帝国の行方を左右するであろうさしの会談に口を差し挟むばかりか、一方からの提案にことごとく反対し、自説を強硬に主張するのかな。宰相秘書官の責務とは、そのようなものではないと考えるが。以後、控えるべきであろう」

 言い方は穏やかだが、事実上「お前如きが出しゃばるレヴェルの話ではない。大人しく引っ込んでいろ!」と言わんばかりの内容に、ヘッセン子爵は目を剥き、顔を紅潮させた。

「何ですと、卿こそ一体何様のつもりなのです!恐れ多くも小父上、いや帝国宰相閣下に、賤民どもに媚びへつらうような策を行うことを強要するとは。また、小父上のみならず、私にまでこのような耐え難き侮辱を投げつけるなど、到底許せませぬ。小父上、この男を即刻解任して下さい。タンネンベルクは、帝国軍最高司令官などに相応しい人物ではありませぬ!!」

 さすがのタンネンベルク侯も、ヘッセン子爵がここまで異常な言動を示すと、苦笑せざるを得なかった。リッテンハイム公も、苦い顔でそれに同調する。

「カール、お前は下がっていろ。帝国宰相秘書官の責務とは、帝国宰相と帝国軍最高司令官の会談で、自説を強硬に主張することではない。これ以上出しゃばると、不本意ながら、お前の方を解任せざるを得なくなるぞ。わしがせっかく与えた地位を、もう失いたいのか?」

 ヘッセン子爵に厳しい言葉を投げつけ、退室するよう申しつけるリッテンハイム公である。ヘッセン子爵は一瞬「信じられない」というような顔をしたが、リッテンハイム公に逆らう訳にもいかず、大人しく控え室の方に下がった。

「いや、申し訳ない。どうも、カールには甘くしてきてしまったのでな。根が子供なのだ、あやつは。わしの顔に免じて、許してやって欲しい」

 リッテンハイム公は、ヘッセン子爵の狂乱の度が過ぎていたことを、タンネンベルク侯に謝罪した。

「いえ、それは大したことではありませぬし、彼のような人物を取り立てるのも宰相の度量のうち、とは推察いたしますが、さすがに重要な場面で実務を妨害されるのは愉快ではありませぬな。ヘッセン子爵には、帝国宰相秘書官の地位は、重すぎるのではありませぬか?名誉だけの地位の方が、彼には合っていると思われますが」

「手厳しいな、卿は」

 渋い顔になるリッテンハイム公である。ヘッセン子爵の「子供ぶり」には、さすがの公爵も自覚があるだけに、否定できない。

「いえ、それを承知で子爵を秘書官としてお使いになられる、というのでしたら、私が差し出がましいことを申し上げる必要はありませぬが。まあ、いずれにせよ、彼の言うことはあまり取り合わない方がよろしいかと」

 タンネンベルク侯はヘッセン子爵の件をそこまでで切り上げ、ヴェスターラントの件に戻す。これ以上更に子爵の件をつついて、リッテンハイム公を不愉快にさせても何の得もないからである。

「ところで、ヴェスターラントの件ですが、ブラウンシュヴァイク公にこの殺戮行為を実施させてしまうのはあまり良き策とは言えませぬ。二百万を殺した、となると人心に与える衝撃が大きすぎますからな。何と言っても、我が軍であっても、現場で働く兵士は平民がほとんどでございますので。彼らがローエングラム侯に同調し、『貴族打倒』を叫んで一斉に叛乱を起こしたりした場合は、目も当てられませぬ。もちろん、過度に甘やかすのは問題ですが、だからと言って鞭をくれるばかりでもいけませぬ。適度に使い分けることが肝要でして」

「うむ、卿の言にも一理はある。金髪の孺子が出てきたことにより、平民どもも反抗的になっていることではあるし、奴らが一斉に孺子に与する、というのでは確かにたまったものではないな」

「そういうことですので、ガイエスブルグに留まっている配下の者に、この攻撃を阻止するように命令を出しておきました。ただ、問題はローエングラム侯に、攻撃阻止を妨害される可能性があることです」

「孺子が妨害?!何故だ。奴は、『民衆の貴族支配からの解放』とやらを、旗印にしているのではなかったのか?」

「それ故でございます。彼の目的から考えますと、『貴族は民衆をこのように過酷に取り扱う』と宣伝することは、大いに有益にございまして。その為、ブラウンシュヴァイク公の攻撃を容認してしまう可能性が高いと思われます。ことが終わった後に『自分たちは知らなかった』だの、『攻撃を阻止しようとしたが間に合わなかった』だのと言い訳し『悪いのは貴族だ』と宣伝すれば良い、ということでありますから」

「ぬう、もしそうだとすると、孺子は見下げ果てた奴であるな。もちろん奴の本質など最初から解ってはいるものの、そのような下司を、これ以上のさばらせておく訳には行かぬの」

「その通りでございます。もしもの話ではありますが、我らが敗北し、帝国がローエングラム侯に統治されるようになってしまうことは最悪でして。所詮は下賤の身分からの成り上がりにて、『支配する者の責任』など求めようもありませぬ。彼の覇権など確立しようものなら、流血の惨事が続出することは疑いないでしょう。『戦争の天才』などと言われているような者が、戦いを好まぬわけはありませぬので。そのような人物に、帝国二百五十億の民の運命を委ねるわけには行きませぬからな」

 タンネンベルク侯の物言いに、深く頷くリッテンハイム公であった。

「以上でございますので、機が到来したところで、宰相閣下と私にて、ブラウンシュヴァイク公を追い落とす為、全帝国への放送を行うということでよろしいですな?情報収集や放送局の方など、準備はさせておきますので」

「諒解した。卿の方針でよい」

 何と言っても、「ブラウンシュヴァイク公を追い落とせる」ということが、リッテンハイム公を説得できた最大の要因であろう。公爵自身は、「領民を殺戮することは、陛下に対する裏切りである」などと全く信じてはいないが、大嫌いなブラウンシュヴァイク公を奈落の底に突き落とす為であれば、嬉々として実行することに間違いはない。

 タンネンベルク侯は一礼してリッテンハイム公のもとを辞し、軍務省に戻った。ヴェスターラントの件が片づくまで、当分は軍務省に詰めたまま、ということになるはずである。


「おのれおのれ、タンネンベルクめ。絶対に許さないぞ。小父上の前で、大恥を掻かせやがって。見ていろ、どのような手段を使ってでも、必ず地べたに這い蹲らせてやるからな!」

 ヘッセン子爵は、公用車で軍務省に帰って行くタンネンベルク侯を、宰相府の窓から憎しみの籠もった目で見送りつつ、復讐を誓った。彼の自尊心をずたずたにした侯爵に、最大級の報復を為すことを。


(以下続く)

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board4 - No.462

Re:「(法で)禁止されている」と「いけない」と…

投稿者:新Q太郎
2001年07月18日(水) 18時20分

あれ、このテーマのツリーの下に繋げたつもりだったんですけどね?
単独ツリーになっちゃってる。

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