4代目掲示板過去ログ

mixiチェック

投稿ログ68 (No.1271 - No.1275)

親記事No.1269スレッドの返信投稿
board4 - No.1271

対談本「イギリス病のすすめ」についての一考察・後編(3)

投稿者:冒険風ライダー
2001年12月24日(月) 12時46分

 さて、佐藤孝行氏とロッキード事件関連で少々長くなってしまいましたが、いよいよ「イギリス病のすすめ」文庫版あとがきの登場です。
 あまりに全文ツッコミどころ満載でありすぎますので、まずは全文引用してみることに致しましょう。


イギリス病のすすめ・文庫版あとがき P236~P239
<多くの方のお力ぞえをいただいて二〇世紀に上梓された本が、二一世紀に文庫化されました。「めでたいこっちゃ」と能天気なことを書こうとしていたら、ニューヨークの世界貿易センタービルに、ハイジャックされた旅客機が突っこんでしまいました。テロリズムの犠牲となった無辜の人々に、つつしんで哀悼の意をささげます。
 直後に災厄をこうむったペンタゴンに対しては、正直あまり同情を感じません。これまでさんざん世界各国に無差別爆撃をおこなってきた軍事エリートの総本山ですからね。無差別爆撃がどれほど非人道的なものか、被害者になってみてはじめてわかったのではないでしょうか。簡単に忘れてほしくないものです。
 今回のことがどのような方向へどれだけ拡大していくか、現在の段階ではとてもわかりません。私はそうは思いませんが、一部の無責任なマスコミが煽動するように「キリスト教文明とイスラム教文明との全面抗争」だとするなら、仏教文明圏の日本が一方に荷担する必要は、なおのことないでしょう。テロ防止や首謀者の逮捕・裁判、被害者救済への協力は当然としても、わざわざ押しかけて忠勤を押し売りする必要はまったくありませんよ。ジャイアンのご機嫌とりに必死なスネ夫じゃあるまいし、みっともないからやめてください、歴史上はじめて在任中に自分の写真集を出し、息子を芸能界にデビューさせた首相さま。
 どうせキリスト教文明の指導者に拝謁するなら、ローマ教皇にしてみたらいかがでしょう。カザフスタンを訪問した教皇ヨハネ・パウロ二世は、「宗教を戦争の口実にしてはいけない」と語りました。歴史から学んだ人の言葉は重いものです。でも日本のマスコミのあつかいはいちじるしく小さかったですね。
 現実世界のことですから、キレイゴトだけではすまされない、というのはもっともです。でも「日本人も血を流すのが当然。批判するやつは平和ボケ」という一部マスコミの論調に賛同するのはちょっと待ちましょう。そういうマスコミの経営者や重役たちが自分自身の血を流すのを確認してからでも、遅くはありません。今回のテロ自体がそうですが、煽動者にとって他人の生命ほど廉いものはありませんからね。これまでに最前線で戦死したり、過去の戦争責任をとって自殺したりした日本のマスコミや経営者や重役がひとりでもいたのでしたら、どうか教えてください。
 さて、イギリスです。
 今回の惨劇に関して、「サンデー・ヘラルド」はつぎのように記しているそうです。
「われわれはNYの悲惨な事件に心を痛めているが、問題はアメリカが中東で行ってきたことに起因している。ハーバード医科大学によると、過去10年で、イラクの子供たち50万人がアメリカの爆撃や経済制裁によって命を落としている」(週刊朝日二〇〇一年一〇月五日号)
 根は善良で頼りになるのですが、図体と声がばかでかく、腕力自慢で自己陶酔しがち、自分に都合のよい相手だけを「心の友」とよぶジャイアン。彼の暴走をたしなめ、建設的な方向へとコントロールするドラえもんの役割は、二一世紀の地球で多分もっとも重大なものです。それがうまくいけば、地球環境の保全でも核軍縮でも武器拡散禁止でも人種差別撲滅でも、かなりの前進が見こめるはずですから、その役割をイギリスあたりに期待できるでしょうか。
 やたらとフットワークの軽いブレア首相は、内心はともかく表面的にはさっそくアメリカに強調する意思を表明し、イギリス国内では国民のIDカード保持の義務づけ、警察の逮捕権の拡大、電子メールの検閲などを法制化するようです。これらは欧州人権規約に抵触しますから、激しい議論が巻きおこるでしょう。
 アフガニスタンのタリバン政権は、いっさいの芸能活動と娯楽を禁止し、パーミヤンの石仏を破壊し、女性の人権を抑圧するなどの蛮行で有名です。女性は学校に通うことすら禁じられ、ひとりで病院に行くことさえ許されません。このような極端に非寛容で独善的な神権政治が永続しないことは、イギリスの「清教徒革命」の例によっても明らかですが、その傷をイギリスは無血の「名誉革命」によって克服することができました。アフガニスタンは歴史のよい先例に倣うことができるでしょうか。
 この四年の間に、イギリスには移民がさらに増え、文学、音楽、演劇、映画から料理に至るまで多彩で多様な創造と発展があいついでいます。それは非寛容と独善に対する寛容と自由の勝利です。このような勝利をこそ、「先進国」は誇りとし、永続させてほしいとつくづく思うのです。>


 ……しかし私も田中作品の様々な評論やストーリー破綻を色々な角度から検証してきましたけど、全文を通じてこれほどまでにツッコミどころ満載な文章は見たことがありません。仮にも公刊されている著書でこれほどまでに支離滅裂なタワゴトを「フィクションの影に隠れることなく堂々と」述べられることは「ある意味」では大変スバラシイことでしょう。マトモな理性を持っているのであればとてもできることではないのですから(笑)。
 このあとがきはあまりにも話題が多岐にわたっていますので、とりあえずテーマごとに文章を分割していきながら論評することにしましょう。


<多くの方のお力ぞえをいただいて二〇世紀に上梓された本が、二一世紀に文庫化されました。「めでたいこっちゃ」と能天気なことを書こうとしていたら、ニューヨークの世界貿易センタービルに、ハイジャックされた旅客機が突っこんでしまいました。テロリズムの犠牲となった無辜の人々に、つつしんで哀悼の意をささげます。
 直後に災厄をこうむったペンタゴンに対しては、正直あまり同情を感じません。これまでさんざん世界各国に無差別爆撃をおこなってきた軍事エリートの総本山ですからね。無差別爆撃がどれほど非人道的なものか、被害者になってみてはじめてわかったのではないでしょうか。簡単に忘れてほしくないものです。>


 田中センセイ、これってとんでもない職業差別ではないですか? アメリカ軍はアメリカの国益とアメリカ国民の生命と財産を守るために存在しているのであって、彼らは自分達の職業に誇りを抱き、アメリカの国益と国民のために自分の生命を投げ打つつもりで戦っているのですよ。そのような彼らが同時多発テロ事件の犠牲者となったことを、あたかも「当然の報いだ」と言わんばかりの発言を弄した挙句、ただの大量殺人者であるかのようなレッテル貼りまで行う念の入れようは大したものですね。かつて創竜伝で散々吹聴していた「他人を思いやる想像力」とやらはどこに行ってしまったのですか?
 第一、世界貿易センタービルの旅客機特攻を、戦時中の日本の神風特攻あたりと比較検証するのであればともかく、どこをどう結びつければ、せいぜい「飛行機による攻撃」くらいしか共通点がない「無差別爆撃」と関連付けてアメリカ軍を非難する根拠とすることができるのか、あまりにも突飛すぎる発想で私にはまるで理解できないのですけど。


<今回のことがどのような方向へどれだけ拡大していくか、現在の段階ではとてもわかりません。私はそうは思いませんが、一部の無責任なマスコミが煽動するように「キリスト教文明とイスラム教文明との全面抗争」だとするなら、仏教文明圏の日本が一方に荷担する必要は、なおのことないでしょう。テロ防止や首謀者の逮捕・裁判、被害者救済への協力は当然としても、わざわざ押しかけて忠勤を押し売りする必要はまったくありませんよ。ジャイアンのご機嫌とりに必死なスネ夫じゃあるまいし、みっともないからやめてください、歴史上はじめて在任中に自分の写真集を出し、息子を芸能界にデビューさせた首相さま。>

 このあまりにも甘すぎる現状認識には正直言って涙を誘われますね(T_T)。「キリスト教文明とイスラム教文明との全面抗争」以前に、そもそも日本とアメリカとが同盟関係を結んでいる時点で、すでに選択の余地なく日本は「アメリカ側に味方している」と国際的にも国内的にも見られることになるのですし、またあの同時多発テロ事件では日本人も犠牲となっており、またテロ事件を起こした側も日本人が犠牲となることを承知の上でテロを遂行していたわけですから、日本もまたアメリカと同じ同時多発テロ事件の「当事者」であり、また日本単独でも、テロを起こしたとされる「イスラム過激異端派」であるタリバン勢力を敵視する理由が充分に存在するではありませんか。
 また、日本はかつて湾岸戦争の際、130億ドルの資金援助と数隻の掃海艇を派遣したにもかかわらず、国際世論にはほとんど評価されず、クウェート政府がアメリカの新聞に出した30カ国に対する感謝広告の中に日本の名前がなかったなどという惨憺たる評価を受けてしまっています。湾岸戦争に見られるような「資金援助外交」では、日本が諸外国から高い評価と尊敬を受けることなどありえないのです。日本を批判する際に諸外国の対日評価を病的なまでに取り上げ、「日本を他国から尊敬される国にしたい」などと常日頃から仰られている田中芳樹御大が、結果的に日本の評価を落とすことになる外交政策を推奨するというのですから、その評価基準はいつものことながら支離滅裂もいいところですね(笑)。
 で、偏狭な宗教的対立の観点でしか政治を語ることができない田中芳樹のタワゴトはまだまだ続くわけです↓


<どうせキリスト教文明の指導者に拝謁するなら、ローマ教皇にしてみたらいかがでしょう。カザフスタンを訪問した教皇ヨハネ・パウロ二世は、「宗教を戦争の口実にしてはいけない」と語りました。歴史から学んだ人の言葉は重いものです。でも日本のマスコミのあつかいはいちじるしく小さかったですね。
 現実世界のことですから、キレイゴトだけではすまされない、というのはもっともです。でも「日本人も血を流すのが当然。批判するやつは平和ボケ」という一部マスコミの論調に賛同するのはちょっと待ちましょう。そういうマスコミの経営者や重役たちが自分自身の血を流すのを確認してからでも、遅くはありません。今回のテロ自体がそうですが、煽動者にとって他人の生命ほど廉いものはありませんからね。これまでに最前線で戦死したり、過去の戦争責任をとって自殺したりした日本のマスコミや経営者や重役がひとりでもいたのでしたら、どうか教えてください。>


 自分が出版しているシリーズ作品中であれほどまでに宗教(特にキリスト教)に対する敵愾心溢れた記述を行っている田中芳樹が、いくら自らの主張に利用できるからとは言え、最大の批判対象とすら言えるであろう「キリスト教の親玉」であるローマ教皇を突然崇拝し出すのも笑止な限りでしかないのですが、そもそもこの御仁はローマ教皇ヨハネ・パウロ二世が何故あの時期にカザフスタンを訪問してあのような主張を展開したのかすらも理解できていないのではないですかね。これは思いっきり政治的な理由で、イスラム教徒が多数派を占めるカザフスタンでイスラム教との融和を印象づけることによって、「イスラム過激異端派」であるタリバン勢力やその他のイスラム教徒による「対キリスト教聖戦」の阻止を計るという現実的な狙いがあったのであって、別に崇高な理想論を敵地で唱えたかったなどという酔狂な理由からあのようなことを行ったわけではありません。自分に都合の良い勝手な歪曲解釈を元にして教皇絶賛論を展開しても、ヨハネ・パウロ二世も迷惑でしかないでしょうに。
 しかもそれを引き合いに出して日本の「一部マスコミの論調」とやらを「おまえが戦争に行け論」の劣化コピーな論調で批判するに至ってはもはや失笑ものでしかないですね。現実問題として「一部マスコミ」とやらがわざわざ戦場に赴いたところで足手まといでしかないですし、マスコミやオピニオンリーダーにとって「自らが批判される覚悟をもって政治の提言を行う」ということは、まさに兵士が前線で命をかけて戦うのと同じくらいに危険で、かつ重大な責任を背負わなければならないことなのですけど。発言者・批判者としての信頼を失ってしまったら、彼らは社会的に死んだも同然なのですから。そのような「リスク」を背負って批判活動を行っていくことの方が、ある意味、後先考えずに死ぬことができる自殺や戦死といったものよりも遥かに過酷な道かもしれないのですが、まあ小説や対談本で何ら言論の責任を負うこともなしに、恥も外聞もなく、わけの分からないタワゴトを好き勝手に喚き散らせる人にとっては、発言者の責任意識といった職業倫理など永遠に理解することもできないシロモノなのでしょうな(笑)。
 ついでに「批判者の有言実行」をやたらと重んじる田中芳樹にひとつ面白いことを教えて差し上げますが、日本は日米安保条約に基づき、日本国内の軍事基地をアメリカ軍に貸与し、「思いやり予算」などという偽善的な予算配分まで行って在日米軍に資金援助を与えていますよね? 実は国際政治学的に見ると、この時点ですでに日本はアメリカの軍事活動を積極的に支援しているとみなされても文句は言えないのです。国際関係における「中立」とは、他国の勢力を自国の領土に一歩たりとも足を踏み込ませないことによって初めて成立するものなのですから、これに従うと、あくまで日本がアメリカの報復攻撃に対して完全中立を守ろうとするのであれば、日本は日米安保条約の破棄と在日米軍の撤兵をアメリカに求め、拒否された場合は実力をもって在日米軍を日本国内から排除しなければならないことになります。
 さあ田中センセイ、「日本は同時多発テロ事件に関しては中立を守るべき」「日本はアメリカにわざわざ忠勤を押し売りする必要はない」という主張の正しさを証明したいと考えるのであれば、まずは自らがアメリカ大使館なりホワイトハウスなりに赴いて在日米軍の国外退去を要求し、それが拒否された場合は(と言っても十中八九そうなるでしょうが(笑))、当然のことながら田中芳樹自らが先頭に立って在日米軍を実力で排除することこそ、あなたが取るべき唯一の道なのではないのですか? こんな3流対談本のあとがきで能書き垂れるよりも先に、まずは自分が率先して行動しなくては(笑)。
 手法は自らの正当性を他者に知らしめるためにもできるだけ派手な方が良いですね。以前に創竜伝9巻で田中芳樹自身が取り上げていたゴールドシュタインよろしく、在日米軍基地に乗り込んで自動小銃を乱射するのも良いですし、いっそ同時多発テロ事件を真似て旅客機をハイジャックし、在日米軍基地に突っ込むのもなかなかに「ウケる」方法です。どうせ田中芳樹の妄想に満ちた頭の中では、アメリカの軍人は「これまでさんざん世界各国に無差別爆撃をおこなってきた」極悪人という設定になっているのですから、彼らが自分のテロ攻撃でいくら死んでも、それは彼らの「自業自得」ということで全て片付けられるでしょう。良心の呵責を感じる必要は全くありませんよ(笑)。何しろ現実世界のことですから、自らの主張を押し通すためにはキレイゴトだけではすまされないでしょうし(爆)。
 田中芳樹の主張に賛同するのは、これぐらいのことを田中芳樹自身にやっていただき、自らの主張の正当性を行動によって立証してもらった後でも遅くはありますまい(笑)。


<さて、イギリスです。
 今回の惨劇に関して、「サンデー・ヘラルド」はつぎのように記しているそうです。
「われわれはNYの悲惨な事件に心を痛めているが、問題はアメリカが中東で行ってきたことに起因している。ハーバード医科大学によると、過去10年で、イラクの子供たち50万人がアメリカの爆撃や経済制裁によって命を落としている」(週刊朝日二〇〇一年一〇月五日号)
 根は善良で頼りになるのですが、図体と声がばかでかく、腕力自慢で自己陶酔しがち、自分に都合のよい相手だけを「心の友」とよぶジャイアン。彼の暴走をたしなめ、建設的な方向へとコントロールするドラえもんの役割は、二一世紀の地球で多分もっとも重大なものです。それがうまくいけば、地球環境の保全でも核軍縮でも武器拡散禁止でも人種差別撲滅でも、かなりの前進が見こめるはずですから、その役割をイギリスあたりに期待できるでしょうか。>


 すいませんが田中センセイ、ひとつ質問があるのですけど、ドラえもんの基本設定の中に「ジャイアンの暴走をたしなめ、建設的な方向へとコントロールする」などといった役割配分が一体どこに存在するというのでしょうか? ドラえもんが面倒を見なければならないのはジャイアンではなくのび太ですし、その目的が「歴史を変えることによってのび太の孫の孫であるセワシの生活環境を改善すること」にあることなど、ドラえもん第1巻を少し閲読するだけで簡単に理解できる程度の常識でしかないでしょうに(笑)。田中芳樹ののマヌケな説教のために、ありもしない勝手な設定をでっち上げられてしまったドラえもんが可哀想ではありませんか(T_T)。
 それからイギリスを礼賛するのも結構なことですけど、中東問題でイギリスの記事を持ち出してアメリカを非難するのはかなりヤバ過ぎるのではありませんか? こと中東問題に関しては、アメリカ以上にイギリスの対中東政策の方が、そもそもの発端を作ったという点で遥かに批判に値するシロモノなのですから。
 そもそも中東問題がアレほどまでに中東諸国を巻き込んだ大問題にまで発展するに至ったきっかけは、第一次世界大戦時にイギリスが展開した対中東3枚舌外交にあります。当時のイギリスは自国と対立するドイツ・オーストリアの同盟国陣営に属していたトルコの背後を脅かすため、トルコに対するアラブの反乱を支持し、戦後トルコ領内のアラブ人地域にアラブの独立国家を建設することを約束したフサイン=マクマホン協定を締結する一方、ユダヤ人資本家の協力を得るために、彼らの進めるシオニズム運動の支援とパレスチナにおけるユダヤ人国家の建設を約束し(バルフォア宣言)、さらにはフランス・ロシアとの間で秘密裏に3国によるトルコ領分割協定(サイクス=ピコ協定)まで結んでいました。
 第一次世界大戦終了後、イギリスはイラク・ヨルダン・パレスチナを委任統治領としましたが、この3枚舌外交が原因でユダヤ人とアラブ人とが互いに敵対するようになってしまい、イギリスは両者の統治に散々手を焼いた挙句、第二次世界大戦後にパレスチナ問題の解決を国連に委ねる事になります。これを受けて1947年11月、国連総会はパレスチナをアラブ・ユダヤの2国に分割し、エルサレムおよび周辺地域を国際管理下に置くというパレスチナ分割案を、アラブ諸国の猛烈な反対を押し切って採択しました。その結果、ユダヤ人によって建国されたイスラエルとそれに反発するアラブ諸国との間で対立が激化し、4度にわたる中東戦争を経て、現在の中東問題に至るわけです。
 確かにアメリカの対中東政策に何ら問題がないわけではないでしょうが、それ以前にそもそも中東問題の発端自体を作ったイギリスには、当然のことながら中東問題をイギリスから引き継いだアメリカ以上に大きな責任が存在するのです。つまり、こと中東問題に関する限り、イギリスはアメリカを建設的な方向にコントロールするどころか、そもそも田中芳樹が言うところの「ジャイアン」的な要素を、しかもアメリカ以上に主犯的な立場で有しているわけで、田中芳樹の希望的観測に満ちた問いかけは完全に否定されるものでしかありえないのですよ(笑)。絶望的な結論を出してしまって申し訳ありませんね(笑)。
 しかしまあ、中東問題の歴史ひとつ知らない田中芳樹などと違って、イギリスは過去に犯した自らの過ちにそれなりの責任感を感じてはいるのでしょう。アメリカの同時多発テロ事件を受けて、イギリスは以下のような行動を取るに至ったわけですから↓


<やたらとフットワークの軽いブレア首相は、内心はともかく表面的にはさっそくアメリカに協調する意思を表明し、イギリス国内では国民のIDカード保持の義務づけ、警察の逮捕権の拡大、電子メールの検閲などを法制化するようです。これらは欧州人権規約に抵触しますから、激しい議論が巻きおこるでしょう。>

 しかしこのあとがきを閲読していて思うのですけど、上記に書かれているような「アメリカに追従する政策」を推進しているイギリスに対して、田中芳樹はなぜ何ら批判の声を上げようとしないのでしょうか? イギリスよりはるかに穏当な政策を推進しようとしていた日本に関しては、確か前の方で小泉総理に対する誹謗中傷まで含んだ、日本に対する罵倒と蔑視に満ちた批判を大々的に展開していたはずなのですけど(笑)。
 それから、このあとがきはアメリカ軍のアフガニスタン攻撃開始(日本時間10月8日)より前の9月中旬~下旬頃に書かれたものなのでしょうが、あの攻撃にはイギリス軍も参加していたという事実を、田中芳樹がどのように評価しているのか是非とも知りたいものですね。これに関しては両国共に全く同じ「報復攻撃」を行っているわけですから、イギリスに対してもアメリカと同じような批判論法を展開しても良いのではないかと思うのですけど(笑)。


<アフガニスタンのタリバン政権は、いっさいの芸能活動と娯楽を禁止し、パーミヤンの石仏を破壊し、女性の人権を抑圧するなどの蛮行で有名です。女性は学校に通うことすら禁じられ、ひとりで病院に行くことさえ許されません。このような極端に非寛容で独善的な神権政治が永続しないことは、イギリスの「清教徒革命」の例によっても明らかですが、その傷をイギリスは無血の「名誉革命」によって克服することができました。アフガニスタンは歴史のよい先例に倣うことができるでしょうか。>

 イギリスの歴史を持ち出してアフガニスタンの政治を云々するよりも前に、少しはタリバン勢力が台頭するに至ったアフガニスタンの歴史ぐらい学んでみたらどうなのですか、田中センセイ。そうすれば、政情が全く異なるイギリスとアフガニスタンとが比較対象にならないことぐらい、すぐにでも理解することができると思うのですけど。
 そもそもアフガニスタンでタリバン勢力が台頭していった最大の理由は、1979年の旧ソ連によるアフガニスタン侵攻にあります。この侵攻によるソ連側の大量虐殺とそれに伴う難民流出によって、元来多民族多言語国家であるアフガニスタンをひとつにまとめていたイスラム教スンニ派ハナフィー学派の伝統が崩壊したため、アフガニスタン侵攻に失敗した旧ソ連のアフガン駐留軍が撤退した後の1991年、シンボルを失った民族間の対立が激化し、国内の各民族を代表する武装勢力によるアフガン内戦が勃発したのです。
 そして、民族毎に分裂した各派のいずれも内戦の帰趨を決するだけの軍事的勝利を収めることができず、しかもこの武装勢力同士の対立に周辺諸国の利害も加わり、各国がそれぞれの思惑で各派に対する支援を行ったため、アフガニスタンは無政府状態と化し、アフガン内戦は泥沼の様相を呈していったのです。この泥沼の内戦下で次第に台頭していったのが、同時多発テロ事件の首謀者とされるタリバン勢力です。
 この「タリバン」というのは、元々パキスタンに避難してきた貧しいアフガン難民のイスラム神学校の生徒を母体として結成され、アフガニスタンの民族のひとつ・パシュトゥン族を中心にして構成された武装勢力です。1994年頃に台頭してきた当初は他の内戦各派に見られたような略奪や虐殺を行わなかったこと、内戦下のアフガニスタンで厳しいイスラム法を制定して治安を回復させたこと、軍閥や民族各派を政治・軍事の両面で巧妙に攻略してきたことなどから、激しい女性抑圧や娯楽の禁止にも関わらず、急速に支持を拡大していきました。そして民衆に支持されたタリバン勢力は、1995年9月にはアフガニスタン北西部の都市ヘラートを、1996年8月にはジャララバードを、そして同年9月には首都カブールを占領していったのです。
 しかしその後、ロシア・トルクメニスタン・タジキスタン・ウズベキスタンといった国々に支援されている武装勢力・北部同盟が支配下に置いていたアフガン北部では激しい抵抗に遭い、1997年にマザリシャリフ攻略を狙うも失敗。そしてこの時の失敗が元で、タリバン勢力もまた、他の武装勢力と同じように数千人規模の異民族虐殺や略奪に手を染めていくようになってしまい、またこの頃から、1996年5月にスーダンを追われてアフガニスタンに入国したオサマ・ビン・ラディンらアラブ人一派の強い影響下に置かれるようになり、完全に過激化してしまったわけです。
 一体このアフガニスタン内戦史のどこをどう見れば、イギリスの清教徒革命だの名誉革命だのを持ち出してアフガニスタン情勢を語ることができるというのでしょうか? イギリスの清教徒革命や名誉革命というのは、あくまでもイギリスの特権階級である国王と議会による政治的・宗教的な対立が引き起こした「特権階級同士の戦争」であって、民族紛争が主体であるアフガニスタン情勢とは根本的に異なるカテゴリーに属するシロモノでしょうに。いつものことながら理解に苦しむ政治比較論を展開する癖にはいいかげんウンザリさせられますね。
 そりゃ自分が愛するイギリスを絶賛したい気持ちは充分過ぎるほど伝わってきますけど、イギリスを絶賛するなら絶賛するで、もう少しマトモな評論が書けるように努力してくれませんかね、田中センセイ。


<この四年の間に、イギリスには移民がさらに増え、文学、音楽、演劇、映画から料理に至るまで多彩で多様な創造と発展があいついでいます。それは非寛容と独善に対する寛容と自由の勝利です。このような勝利をこそ、「先進国」は誇りとし、永続させてほしいとつくづく思うのです。>

 しかしこのような論法を使うと、移民によって国が成立し、ハリウッド映画やインターネット発祥の地であるアメリカなども、イギリスと同じくらいに絶賛の対象となってしまうはずなのですけど、その辺り田中芳樹は自覚して書いているのでしょうかね? この事例に限らず、いくら田中芳樹の主張を読んでみても、同じ「民主主義体制」の「先進国」であるにもかかわらず、なぜイギリスとアメリカとで田中芳樹の態度が全く正反対なまでに変わってしまうというダブルスタンダードが生じるのか、私には全く理解できないのですけど。
 それに昨今のイギリスで移民が流入し、多種多様な文化が発展するようになったのも、別に「非寛容と独善に対する寛容と自由」とやらの勝利の産物などではなく、田中芳樹が日本に推奨している「イギリス病」をイギリスが克服したからでしょう。上でも述べたように、「英国病」を発症し、経済衰退の症状が進行していたかつてのイギリスでは、「非寛容と独善に対する寛容と自由」がきちんと存在していたにもかかわらず、移民の流入や文化の発展など最初から望めない惨状を呈していたのですけど(笑)。
 第一、「イギリス病のすすめ」を提唱する身としては、「イギリス病」ならぬ「英国病」をないがしろにしている昨今のイギリス情勢を賞賛してはいささかマズイのではありませんか? 田中芳樹と土屋守がでっち上げた「イギリス病のすすめ」なるシロモノが、実は自分達でも全く信じていない虚構であることを自ら曝け出すことに繋がってしまうのですから(笑)。




 さて、今回3回にわたって行った特集「対談本『イギリス病のすすめ』についての一考察」、いかがだったでしょうか? イギリスを無理矢理にでも礼賛したいがために、ロクな検証作業すら行わないままに日本やアメリカを貶めている実態がご理解いただけたのではないかと思います。
 しかし、私がこの本を最初に手にとってみた時、創竜伝でいつも見られるような「フィクションの影に隠れた評論手法」を取らず、自らの評論を「対談本」として世に出した田中芳樹の心意気に感心し、そのような紳士な態度を取るからには、当然創竜伝で展開していたような「何ら検証を行わない支離滅裂な現実世界に対する社会評論」とは一線を画す、より詳細な検証に基づいた主張が行われることを期待したのですけど、その実態は私が論評したとおりの無様さを呈しているありさまですからね~(>_<)。むしろ、創竜伝に見られる評論が本当に「創竜伝世界ではなく現実世界に対して向けられた批判」であったことを自ら暴露してしまう結果を生むこととなってしまっているわけですから、私としてはミクロン単位の微かな希望さえも打ち砕かれた絶望的な気分にさせられてしまいましたね(T_T)。
 全く、このような自らの作品と評価をさらに貶める愚かしい対談本で意味不明なタワゴトなどを駄弁っている暇があるのならば、少しは作家の本業に立ち返り、山ほど残っている「宿題」を全て片づける誠意と努力を読者に示してみたらどうなのでしょうかね、この無様な3流評論家は。

親記事No.1247スレッドの返信投稿
board4 - No.1272

Re:ヤン・ビュコック・ウェンリー提督

投稿者:ビンス・マクマホン三世
2001年12月24日(月) 13時38分

> こんにちは、銀英伝の話題になると出てくるKURと申します。
>
> > はじめまして。ずっとROMってきた者ですが一つ反銀英伝ネタを思いついたので初カキコさせて頂きます。
> >
> >
> > 宇宙交易商人だったヤン・タイロンが宇宙船の反応炉の事故で死亡したのは、彼の息子ウェンリーがまだ3歳の時であった。成功し、それなりに財を築いていたタイロンの遺産には禿鷹の如く親族(を自称する人々)が飛びつき、幼いヤンの手に残されたのは明朝期の壷一つだった。
> > 親戚の家に預けられたヤンは、そこであまり恵まれたとは言えない子供時代を過ごす。一言で言えば厄介者扱いだったのであるが、彼がジュニアスクールに入る直前に転機が訪れた。預けられていた親戚の家の家長、ヤンにとっては養父に当たる人物が出征先で戦死したのであった。
> > 一家の大黒柱を失い、困窮したその親戚の家であったが、戦災孤児を軍人が引き取って養育すると言う法律が成立した事を知り、これ幸いとばかりにヤンをその枠に押し込めてしまった。
> > これだけなら不幸な話だが…ヤンにとっての幸運はここから始まる。彼を引き取る事になったのは、自由惑星同盟軍でも特に声望の高い名将、アレクサンドル・ビュコック提督だったのである。
> > 子供が出来たビュコックは殊の外ヤンに愛情を注ぎ、かつその資質を見抜くと、ヤンならば自分よりも遥かに優秀な軍人になるかもしれないと予感。己の戦略、戦術論の全てをこの養子に注ぎ込み、ヤンもまたその期待に良く応えた。
> > ビュコックの薫陶を受けて成長したヤンは当然の如く士官学校に入学。たちまち頭角を現し、士官学校を極めて優秀な成績で卒業。さらに軍大学校を経て将来を嘱望されるエリート軍人になっていく…
> >
> >
> > この立派な軍人のヤンならば、銀英伝世界に与える影響はどれほどのものでしょう…と言うのが私の思いつきなんですが、ヤン・ビュコック・ウェンリー氏(笑)誕生の可能性まで含めて是非ご意見をお聞かせください。

立派な軍人のヤンですか…
体力面で無理がありそうですな。
士官学校に入れるよりユリアンのように従卒にした方がよさそうです。
ヤンに従卒が出来る甲斐性があるかどうかは置いといて。

親記事No.1269スレッドの返信投稿
board4 - No.1273

やはりシンパであったか

投稿者:本ページ管理人
2001年12月24日(月) 14時55分

> 田中:
>  でも、「わたし公僕って言葉が一番キライ」って、大蔵省のお役人の奥さんが言ったらしいから。(笑)佐高信さんの文章によると。
> ――:
>  なんかものすごい勘違いしてますね。それ。

出ましたね、佐高信氏!現実で竜堂兄弟レベルの思考をする評論家じゃないですか。
創竜伝でああいう支離滅裂評論を得意げにする知性の無さが佐高のコピーのようだと思っていたら、やはりそうでしたか。
ちなみに、佐高信という評論家については、この掲示板の常連である新Q太郎さんがちゃちゃちゃのボードにて徹底批判を展開していますので、どんなものだか知りたい人にお勧めです(佐高信に対する批判は田中芳樹に対する批判と非常に近しいものがありますし。この書き込みのURLにリンクしてあります)。


余談ですが、私が大学生の時、経営学か何かの講義で、テキストに佐高の本を渡され感想を書けと言われたので、田中芳樹を撃つやり方で評論の支離滅裂さを列挙し、「こんなものは前提が不明確もしくは思いこみに過ぎず、学問として研究するにあたらない」という趣旨の(今考えると生意気ですねー(^^;))事を書いて提出したら、なんかえらい褒められた経験があります。

親記事No.1269スレッドの返信投稿
board4 - No.1274

余談

投稿者:本ページ管理人
2001年12月24日(月) 16時02分

住専の時、大蔵省の岡光事務次官の不祥事の際、彼が乗り回しているとマスコミが批判していた高級車とやらが「マークⅡ」だったという話がありましたね。笑っちゃダメですよ、まじだから(笑)
一応事務次官ってちょっとした企業の社長に匹敵する権限と責任のポストなんですけれどねぇ。

そもそも、人の庭の芝生の色を気にして妬むような卑しさはどっかの花井夫人だったと思いますが、実はあれが田中芳樹の投影なんでしょうか(笑)


#ちなみに、車に詳しくない人のために書いておくと、マークⅡという車はそこらのタクシー(だいたいクラウンコンフォート。都会だったらセルシオもありますね)より車格が下です。合掌。

board4 - No.1275

薬師寺シリーズ新作情報(ややネタばれ注意)

投稿者:平松重之
2001年12月24日(月) 16時36分

 薬師寺涼子の怪奇事件簿の新作である「クレオパトラの葬送」が出ていました。内容はお馴染みの面々が、南米のラ・パルマ元大統領で日本に逃れているホセ・モリタという日系人が操る怪物と豪華客船内で戦いを繰り広げるという話です。
 しかしこのモリタというのは明らかにフジモリ元大統領が大枠でのモチーフなのが読めばすぐ分かりますね。毎度の事ながら、ちょっと安直過ぎるかも…。

mixiチェック