4代目掲示板過去ログ

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投稿ログ30 (No.522 - No.539)

board4 - No.522

新作情報

投稿者:太郎
2001年07月31日(火) 10時10分

来月、講談社ノベルスより「薬師寺涼子の怪奇事件簿3」が出るようです。「岳飛伝」は翻訳物ですので、久方ぶりの純粋な新作と言うことになると思うのですが、果たして出来栄えはどんなものでありましょうか。

board4 - No.523

質問です

投稿者:とも
2001年07月31日(火) 11時42分

はじめまして、お邪魔致します。
過去ログはまだ拝見していないのですが、管理人さんの
書かれた文章は一通り読ませていただきました。
読み終えまして非常に気になる点がいくつもありましたので、
とりあえずそのうちの一点についての質問をお許し下さい。
管理人さんの書かれた文章の中で、
“「小説の世界のことだから」と逃げをうてる”
という点を幾度も問題点として上げられていましたが、
実際問題として、たとえ小説であろうと論評的な性質を
含む部分に関してはそういった“逃げ”は通用しないと
思います。
この作品のように“オリジナルが容易に推察出来るように
書いた”論評が多用されている場合はなおさらです。
田中氏が実際にそういった“逃げ”をとっている文章が
どこにあるのか、管理人さんの書かれた文章の中では
紹介されていなかったように思うのですが、よろしければ
どこでこういった“逃げ”をうったのか教えていただけ
ませんでしょうか?

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board4 - No.524

Re:田中芳樹は小心者?

投稿者:小村損三郎
2001年07月31日(火) 12時21分

>
> ああ、中学の頃、好きな子から「君の父さんって、政治家なんだよね。」と聞かれたときのことを思い出します。
> 軽蔑の眼差し。片手には「創竜伝」。
>
> ・・・コロス。
>

い、いやあ・・・、
笑っちゃいけないとは思いつつも笑っちゃいました(^^;;)m(_ _)m
御大も罪だよなー。

貴男も彼女も若かったんですよ、きっと・・・。

board4 - No.525

巨星墜つ

投稿者:小村損三郎
2001年07月31日(火) 13時26分

現代日本の誇るエンターテイメントの巨匠・山田風太郎氏が死去しました。

後続のエンターテイメント作家・クリエイターに与えた影響という点では司馬遼太郎以上と言っていいと思われる人物。
この方とその奔放無比なアイディアなかりせば『リングにかけろ』をはじめとする一連のジャンプ漫画も、一世を風靡した格闘ゲームも存在し得なかったことでしょう。

「一体どうやったらここまでくだらないことを思いつくのか」
というのは最高の賛辞だと思ひます。

以上、講談社の忍法帖シリーズに御大も解説を書いてるとゆーことでこちらに書かせていただきました。

謹んでご冥福をお祈りします。

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board4 - No.526

Re:フェザーン自治領の存在がおかしい

投稿者:zero
2001年07月31日(火) 14時58分

初めまして。

僕は、フェザーンの位置づけって、特に奇異に感じなかったクチです。
フェザーン(イコール地球教)が、両陣営の支配者層(同盟の方は
指導者層かな)に取り入り、買収する事で自己の存在を維持したと
いう点で、納得がいきます。
軍事的行動を政治が抑えていた訳ですね。

実際、その設立や継続のために両首脳部へは「献金」を欠かさなかった
だろうし、帝国は「大貴族」、同盟は「最高評議会」というごく少数の
権力者への付け届けで、政治的にフェザーンへの侵攻を抑えることは
十分に可能だったのではないでしょうか?

「国益」より、「自己」の権益を優先する政治家が存在するというのは、
思い切り納得出来るのですが・・・(^^;


ラインハルトがフェザーンを納め得たのは、その「政治的しがらみ」が
無かった故でしょう。

ヤンにも無かっただろうけれど、彼にはついでに「権限」も
「権限を持つ者へのコネ」もなかったでしょうから。

ちなみに浮沈戦艦さんは「同盟の指揮を取るとしたら」と仰っていますが
同盟は民主国家だから、一個人の指導者の指揮で軍は動かせないと思いますよ。
それこそ根回しをしなくては(笑

あ、でも「フェザーン人」が「フェザーンは大丈夫」だと認識していた
のは、「長年起こらなかった事がこれからも起こらない」という
単なる希望的観測でしか無かったと思います。

上記の政治的調略を知らずに「フェザーンは平和」と思っているのは
まさに「平和ボケ」そのものです。
#やっぱ、モデルは日本だし・・・(^^;

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board4 - No.527

Re:田中芳樹の悪いとこ

投稿者:zero
2001年07月31日(火) 15時04分

僕は、「完結させないまま、別の手を拡げ過ぎ」なことだと・・・

万が一、この状態でお亡くなりになろうモノなら、
惜しむ前に恨みます(笑

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board4 - No.528

Re:「寝たきり美青年」誕生じゃないでしょうか

投稿者:クロイツェル
2001年07月31日(火) 16時18分

>  クロイツェルさん、先日は失礼いたしました。
>  時に「父性の補完されたラインハルト」ですが、影響としては精神性に「寛容さ」と「気楽さ」が充填されるのではと思います。
> 「寛容さ」を原作のラインハルトが身につけたのは、「自身の狭量さと甘えが無二の親友を死に追いやった」というかなり不幸な通過儀礼の産物でしたが、同盟ラインハルトはその辺をキャゼルヌやグリーンヒル大将との(反抗期交じりの)触れ合いなどで代替できるのではないでしょうか。
>  で「気楽さ」ですが、元々無趣味な青年ですし前述の「寛容さ」によって生まれたゆとりがあればそう張り詰めた日常を送る必要もなく休暇の折などフレデリカにおんぶに抱っこでダラダラ過ごす「寝たきり美青年」が誕生しそうな気がします。
>  やはりフレデリカは幸せなんだか気の毒なんだか微妙な所ですが。

 寝たきり美青年…妙につぼにはまる表現ですねえ(笑)。休日のたびにイゼルローンの自然公園で、フレデリカの膝枕でお昼寝してるんですね?たしかに端から見るとそれで満足なのか?って感じですが、多分二人とも幸せなんでしょう(笑)

>  ところで帝国の「ウェンリー元帥府」に一つ問題を見つけてしまいまして、レンネンカンプどうしましょう?
>  フルネーム「ヘルムート・フォン・レンネンカンプ」で貴族階級出身なのは間違いなさそうですから、後腐れなくリップシュッタット戦役でサクッと殺っちゃいますか?
>  生かしておくと原作者の折り紙付きの「同陣営にいても不幸にしかならない取り合わせ」ですし。
>  それでは。

 そうですねえ、一回仲間になってから、あとで離反して敵対…ってかんじですかねえ?どちらにしても、レンネンカンプ氏の性格では、ウェンリー伯の下にはつきつづけてはいられそうもないですしね。

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board4 - No.529

逆銀英伝・1

投稿者:クロイツェル
2001年07月31日(火) 16時45分

 そろそろ同盟ラインハルトと帝国ヤンのイメージも固まってきましたし、あらすじ風に歴史を作ってみましょうか?(笑)あまり出来はよく無いかとは思いますが。

------------------------------

 始まりは、やはリアスターテ会戦からでしょう。ウェンリー伯爵率いる2万隻の遠征軍と、パエッタ提督率いる4万隻の迎撃艦隊との戦闘からです。

 この時、パエッタ提督の参謀部に、若き天才が配属されていました。名を、ラインハルト・ミューゼル少佐といいます。彼は、士官学校を主席卒業するほどの逸材でしたが、参謀本部では新任ということで、彼をあなどっていました。その為、彼が提出した「帝国軍による各個撃破を封じる為の作戦案」は、先任の参謀達によって封殺され、パエッタ中将の元へは届かなかったのです。
 パエッタ中将は、ウェンリー伯爵をあなどっていました。ウェンリー伯爵は数多くの武勲を上げているにもかかわらず、その奇人ぶりと覇気の無さゆえに貴族社会からはむしろ馬鹿にされていました。そして、その情報から、パエッタ中将はウェンリー伯爵に誤ったイメージを抱いていたのです。

 はたして、会戦が始まると、同盟軍は帝国軍の見事な機動に翻弄され、包囲した各分隊毎に各個撃破されていったのでした。その戦闘の中、旗艦への命中弾によりパエッタ中将は重傷をおい、主だった士官たちもほとんどが死亡、残った者も重傷という惨事になってしまいます。残った士官はただ一人、阻害されていたがゆえに離れた所にいたラインハルト少佐だけでした。かくして、なんと艦隊指揮を少佐がとる、という異常事態が発生してしまったのです。

 ですが、この少佐は只者ではありませんでした。パエッタ中将の名を借りた見事な指揮により、一方的な殲滅戦を互いに相打つ消耗戦まで回復して見せたのです。無意味な損耗を嫌ったウェンリー伯爵はここで軍を引き、同盟軍は窮地を免れたのでした。

 戦闘後、それなりの成果を上げたとはいえ結果的に勝利できなかったウェンリー伯爵には、お咎めもありませんでしたが褒賞もありませんでした。ですが、本人はまったく気にした様子も無く、むしろ「やっと仕事から解放された」とばかりに嬉々として家へと帰るのでした。
 一方、敵軍よりもはるかに多くの戦力を送り出しながら大きな損耗を出してしまった同盟首脳部は、この不祥事を隠すべく、ラインハルト少佐を「同盟の敗北を救ったアスターテの英雄」として大々的に売り出します。それが、将来自分達の首を絞める結果になるとも知らずに。

 かくして、歴史の第一幕は動き出しました。

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board4 - No.530

ご冥福を祈りましょう

投稿者:クロイツェル
2001年07月31日(火) 16時49分

 山田先生の忍法帳ものは、私のバイブルの一つです。長きにわたって私達を楽しませてくれた偉大な才能に、私は感謝の念を抱いています。
 ありがとうございました、山田風太郎先生。心から、ご冥福をお祈りいたします。

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board4 - No.531

ゴミ撒き

投稿者:クロイツェル
2001年07月31日(火) 16時51分

> 僕は、「完結させないまま、別の手を拡げ過ぎ」なことだと・・・
>
> 万が一、この状態でお亡くなりになろうモノなら、
> 惜しむ前に恨みます(笑
>

 この評は、そのまま菊地秀行氏と火浦功氏にもあてはまりますねえ(笑)

board4 - No.533

初めまして

投稿者:Trindskallarna
2001年08月01日(水) 15時14分

皆様、初めまして。Trindskallarnaと申します。
先日googleで「秦檜」で検索したら、このHPに出会いました。
それ以来、皆様が展開される田中作品の考察の鋭さに
すっかり魅せられて、入り浸っております。

正直、私は創竜伝の社会批評にいたく共感している部分が
あったので、結構むかっとくる部分もありましたが…
今思えば、まったく赤面ものです(恥)

ここの論評にみられる優れた論理構成と豊富な知識は、
読んでいるだけで勉強になります。
のみならず、アンチ一辺倒ではなくて皆様の田中作品に対する
深い愛情(特に銀英伝)が感じられ、こういうサイトがあるのなら
インターネットも捨てたもんじゃないと思いました。
…いえ、ちょっと最近2chに入り浸ってた時期があって、
いささかインターネット不信気味になってたもので<自業自得(^^;
いや、あそこはマジでひどいです。
文字通り、ネットの掃き溜めですね。
そんなところに入り浸っていた自分が愚かなんですが…

管理人様もご多忙のこととは思いますが、応援しておりますので
どうぞこれからもお体にお気をつけて頑張って下さい。
またよろしければ、ちょくちょくカキコさせて頂きます。

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board4 - No.534

Re:ゴミ撒き

投稿者:kaju
2001年08月01日(水) 15時55分

ほんとにゴミです(笑)

> > 僕は、「完結させないまま、別の手を拡げ過ぎ」なことだと・・・
>  この評は、そのまま菊地秀行氏と火浦功氏にも
> あてはまりますねえ(笑)

最近森岡浩之氏もそうなりつつあるような…^^;

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board4 - No.535

Re:田中芳樹の悪いとこ

投稿者:倉本
2001年08月02日(木) 01時18分

> 僕は、「完結させないまま、別の手を拡げ過ぎ」なことだと・・・

実際に未完成の作品ってどれくらいあるんでしょうね。
創竜伝、薬師寺涼子、アルスラーン戦記、タイタニア、レッドホットドラグーン、自転地球儀、夏の魔術、こんなところですかね。
これだけですよね。他にはないと思いますけど。
他にあったら教えてください。
さすがにちょっと多いですね。
5作品ぐらいなら私の知ってる作家で同時にシリーズもの執筆してた人を知ってますけど。
でもあの人は一年に必ずどのシリーズも一冊は書いてましたから田中芳樹とは比べ物になりませんけど。
作家としては中堅の知ってる人は知ってるレベルですから知名度でも田中芳樹には及びませんけど。
こういうことを知ると作家の評価基準がわからないですよね。
この人と田中芳樹のどっちがいい作家なんでしょう。

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board4 - No.536

Re:反銀英伝 大逆転! リップシュタット戦役(74)

投稿者:不沈戦艦
2001年08月02日(木) 16時37分

> ガイエスブルク要塞についてですが、
> みすみす無傷で敵に渡すより、破壊したほうが良いのでは。
> その上で、兵糧攻めも効果的でしょう。
> ローエングラム軍は立場上、物資の調達はやりにくいでしょうから

 これはですね、離脱するメルカッツ指揮の部隊は、「ガイエスブルグに残るブラウンシュヴァイク公たちを見捨てていく」訳ですから、離脱時に物理的にガイエスブルグを破壊してしまう、というところまでやってしまうと、窮鼠と化したブラウンシュヴァイク公が何をやらかすか解らないので、放置しておくしかない、というわけなんですけど。一々要塞内部で相手を制圧、戦闘までせねばならんかも知れませんから。そこまでブラウンシュヴァイク公らに関わりあいになってはいられない、ということですね。

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board4 - No.537

Re:さらにごみれす

投稿者:Merkatz
2001年08月03日(金) 10時16分

> > > 他にも「頭上の余白は敵」とか「ピーカン不許可」とかはありますが、それは片寄っている(一部笑)としても、そういう基準が厳然として「写真」にあると言えるでしょう。
> > >
> >
> >
> > 鳥坂先輩ですね(笑)
>
> 鳥坂先輩は「トライXで万全」「4号か5号で焼いてこそ味がある」だけですよん。あとはたわばさんの言葉です。


おお、ゴミレスに突っ込みが(笑)
そういえばそうでした。
あそこは鳥坂&たわばが初心者のための正しい知識(笑)を
披露するんでしたね。

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board4 - No.538

反銀英伝 大逆転! リップシュタット戦役(75)

投稿者:不沈戦艦
2001年08月03日(金) 14時42分

 タンネンベルク侯は、ローエングラム軍がレンテンベルクを進発し、ガイエスブルグを出てこちらへ向かってくる友軍に向かっていった、という報を受けると、次の手を打つことにする。

「タイミングが問題だが、グリューネワルト伯爵夫人を多少いたぶった上で解放し、ローエングラム侯のもとへ送り届けてやらねばならぬな。この小細工にはロイエンタールを使うと良かろう。我らがグリューネワルト伯爵夫人を虐待し、ロイエンタールが救出した、という筋書きだ」

 タンネンベルク侯の策は、単純なものでしかない。しかし、問題がない訳ではなかった。それで、本当にローエングラム軍が、こちらに向かってくるのか、ということである。

「それで、本当に大丈夫でしょうか?ローエングラム侯がグリューネワルト伯爵夫人を奪回したが、かなり虐待されていた、という事実を知った場合でも敢えてそれには目を瞑り、ガイエスブルグ組の友軍を叩いた後で、そのガイエスブルグに入城してしまった場合は、いかが致しましょう?」

「そこだな。加減が難しい。あまりに怒り狂わせてしまうのも問題であるし、だからと言って程度が軽ければ、ローエングラム侯はこちらを無視してガイエスブルグに一直線に突き進むだろう。いっそのこと、こちらに向かわせるだけなら、処刑してしまえれば話は早いのだがな。その場合は、彼が怒り狂ってこちらに向かって来ることは間違いなかろう」

 シュリーフェンの質問に、少々苦しい回答をするタンネンベルク侯である。

「では、このような手はどうでしょう。服役中の性犯罪者を連れてきてグリューネワルト伯爵夫人にけしかけ、その様子を撮影して送りつける、というのは。いや、もっと効果を考えれば、性犯罪者ではなく、閣下ご自身でそれを行えば、ローエングラム侯は絶対に閣下を討ち取るべく、いきり立ってこちらに向かって来ることでしょう」

「おいおい、さすがに勘弁してくれ。私自身が、そこまでやる気はせぬぞ。しかし、卿も相当非道なことを考えるな。まあ、非道だのどうだのを気にしている場合ではないのは確かだが。せっかくの提案だが、それはやりすぎの範疇であろう。それなら、処刑してしまうのと五十歩百歩。彼の反応は、大して変わりはしないだろうよ」

 苦笑しながら、シュリーフェンの提案を却下するタンネンベルク侯であった。フリードリッヒ四世が執着した美姫、に全く興味が湧かないわけではなかったが、正直そこまでの悪趣味は侯爵にはない。また、見た目が麗しいにしても、アンネローゼの生気の感じられない、世捨て人のような態度には、あまり惹かれるものを感じない、ということもあってのものだ。

「それでは、社会秩序維持局に連れていって、拷問の専門家に委ねる、というあたりですかな。女性専門に、痛めつけることに手練れた者はおりましょう。その様子を撮影して送りつけるか、あるいは超光速通信(FTL)にて全帝国に流すか、といったところで」

 割と恐ろしいことを、淡々と述べるシュリーフェンであった。

「まあ、そんなところか。だとしても、あまり私の趣味ではないのだがな。しかし、そんなことを言っていられる場合ではない。これが成功しない限り、我らの勝利はないからな」

 結局、タイミングを見て、8月26日にアンネローゼを虐待し、その様子をラインハルトのもとに流した上で、29日にロイエンタールがアンネローゼを連れて脱出、という筋書きとした。それで、ラインハルトがガイエスブルグ方面ではなく、こちらにやってくるように仕向ける、という寸法である。




 軍の情報ネットワークにアクセスし得た、「26日にグリューネワルト伯爵夫人を社会秩序維持局へ移送」という情報は、ドレクスラーらにとっては重要なものだった。移動時間とルートまで詳細に予備命令として発動されていたので「襲撃してくれ」と言わんばかりのものである。ロイエンタールの逮捕拘禁で、軍トップのタンネンベルク侯ですら警戒感を薄めていたわけであるから、その気分が下の者に伝搬しない筈もない。オーディンの地上軍部隊では、緊張感はほとんどなくなっており、情報は漏れ放題というのが実状だ。しかし、それでも不都合は特になかったので、誰かが責任を問われることも、これもない。

 ドレクスラーは、26日に移動中のアンネローゼを襲撃することに決定し、メンバーの配置を検討する。護送車と警備車の車種、警備兵の数も細かに指定されていたので、いかような戦術を取れば容易に目的を達成させられるか、というだけの話である。しかも、移動ルートも決まっているので、待ち伏せが可能だ。彼らにとっては、極めて楽な仕事でしかない。



 25日、タンネンベルク侯は社会秩序維持局を訪れ、獄中のロイエンタールに面会した。

「これはこれは、銀河帝国軍最高司令官たる元帥閣下御自らお出ましとは、小官に何か御用ですかな?残念ながら、かくの如き場所なので、おもてなしも出来ませぬが」

 皮肉を効かせた物言いを、タンネンベルク侯にぶつけるロイエンタールである。しばらく獄中にあろうとも、ロイエンタールの精神には何の変化も無かったことを、如実に物語っていると言えるだろう。

「ははははは、さすがは卿だな。まあ、たかだか10日ほどで、卿ともあろう者が落ち込んでいるとも思わなかったが」

 ロイエンタールの皮肉を笑い飛ばし、すぐ用件に入るタンネンベルク侯である。

「ところで、卿には少々働いてもらいたい。話は簡単だ。グリューネワルト伯爵夫人を連れ、ローエングラム侯のもとに行って欲しい、ということだ。悪い話ではあるまい?」

 ロイエンタールが捕縛されたのは15日。その後、「ヴェスターラントの虐殺」が発生し、貴族連合軍のほとんどがブラウンシュヴァイク公を見放し、ガイエスブルグから離脱したことを、獄中にあったロイエンタールは知るわけがない。その過程で、オーベルシュタインの謀略が失敗し、ラインハルトへの民衆の支持が薄れたことも。しかし、「悪い話ではあるまい」と締めくくったタンネンベルク侯の提案に、胡散臭さを感じないロイエンタールではなかった。

「ほう・・・・確かに悪い話ではありませぬ。しかし、上手すぎる話には落とし穴がある、というのが古今東西問わぬ常識というもの。小官としては、うかうかと乗せられるわけには行かぬでしょうな」

「状況を説明してくれ」と暗に求めるロイエンタールである。

「なるほど。10日ほどで情勢はかなり変化したが、卿がそれを知る筈はないな。よし、簡単に説明しよう。現在、ブラウンシュヴァイク公は自領で起こした、領民に対する虐殺事件によって信望を完全に失い、公爵の麾下にあった軍はガイエスブルグから離れ、我が軍に合流すべく、こちらに向かっている。ローエングラム侯は、その虐殺事件について、公爵に加担するかの如く立ち回ったことを我が軍に暴露され、彼に対する民衆の支持は急降下した。まあ、早い話が、虐殺を黙認し、反貴族連合の政治宣伝に利用しようとしたが、私がその事実を暴露した為に失敗した、ということだ。今彼は、レンテンベルクから進発し、ガイエスブルグ離脱組の迎撃に向かっている。情勢は、こんなところだな」

 簡単にではあるが、タンネンベルク侯はロイエンタールに説明を行った。それを聞いて、しばし考えるロイエンタールである。

「こちらの意図は明白だ。グリューネワルト伯爵夫人を解放することにより、ローエングラム侯に決戦を強いる、ということだな。何しろ、今のままでは、彼がオーディンに攻め掛かってくることはあり得ぬ。しかし、我らがオーディンを空にして出撃し、彼に決戦を求めることも、これもできない。ローエングラム侯の二の舞は御免なのでな。兵力を二分し、オーディン守備に充分な兵力を残して出撃することも、我が軍の少ない戦力ではこれも無理だ。彼をオーディンの正面まで引きずり出さねばならなくなったわけで、その為の小細工だよ」

「しかし、それほど上手く行きますかな?仮に、グリューネワルト伯爵夫人が解放されたところで、ローエングラム侯が直ぐにオーディンに攻め掛かってくるとは限りませぬ。その、ガイエスブルグから離脱した戦力を先に叩き、空になったガイエスブルグを占領。要塞の防御力を加えて貴族連合軍に対抗する、という策もあり得るでしょう。閣下のお考えの通り、とは限りませぬな」

「なに、細工は充分行っての上での話だ。さすがに、そこまでは卿に教えようとは思わぬがな。で、どうだろう。受けてもらえるかな?」

 事実上、ロイエンタールの生殺与奪を握っているタンネンベルク侯に、ロイエンタールが逆らえる訳はないのだが、しゃあしゃあと「受けてもらえるか」と訊ねる侯爵である。

「選択の余地はなさそうですな。よろしいでしょう、但し、小官が閣下の意図の通り、動くとはお約束できかねますが。特に、オーディン脱出以降については」

「もちろんだ。卿は私の部下という訳ではないからな。好きにするがよい。ところで・・・・・」

 更に、ロイエンタールに相談を持ちかけるタンネンベルク侯であった。

「ところで、卿はこのままローエングラム侯の配下として、最後まで忠誠を誓うつもりなのか。私の意図が成功すれば、彼は敗北し、逃げるか死ぬか、ということになる。運命をともにするにまで、彼に付いていくつもりかね?この前にも言ったが、それほど忠誠心を捧げなければならぬような相手とは思えぬのだが。ラインハルト・フォン・ミューゼルという男は、面白い人材ではあるが、社会へのルサンチマンに凝り固まっている点が、出自云々を別にして権力者としては頂けぬし、姉という弱点は致命的だ。しかし、誰かの部下になって満足するような男ではないとなれば、社会にとっては危険人物でしかなかろう。かくの如き人物に、帝国やら人類社会の命運を預けてしまうのは、薦められないと思うのが、卿はどうだね?」

 ロイエンタールに、再考を促すタンネンベルク侯である。しかし、ロイエンタールは答えない。

「もちろん、今すぐ決断しこちらに鞍替えせよ、と言っているのではない。抗戦空しく敗北に至った時は、卿だけでも素直に降伏しないか、ということだ。卿のような人材なら、いくらでも使えるところはある。その場合、投降さえすれば、卿を処分するような真似はしない、と保証しよう」

 沈黙を守るロイエンタールに、タンネンベルク侯は話を切り上げようとする。

「まあ、考えておいてくれ。但し、卿の僚友の、ミッターマイヤー提督は駄目だ。彼は、貴族階級を侮蔑しすぎた。彼の正義感は貴重ではあると思うが、子供じみた正義感だけでは、汚泥にまみれた実世界を動かすことは適わぬ。確かに直接の関係者は、ミッターマイヤー提督やローエングラム侯との対決に敗れて消えているし、そもそもブラウンシュヴァイク公らの一族であって、今の我らと直接関係があるわけではないが、自分の正義感の為なら貴族階級を蔑ろにしても良い、という彼の考え方は到底受け入れられぬのでな。彼に会った時には、最悪の場合は逃げるか自決することを勧めておくが良かろう」

 話を終えると、牢の前から立ち去って行くタンネンベルク侯である。結局、この間ロイエンタールは一言も発しなかった。しかし、このタンネンベルク侯の薦めは、結果的にはあまり意味のないものとなる。ロイエンタールがグリューネワルト伯爵夫人を連れてオーディンを脱出することは、遂になかったからだ。




 8月26日、シュワルツェンの館の警備部隊に、グリューネワルト伯爵夫人の社会秩序維持局への移送命令が発令された。予備命令が出ていた件なので、現場には特に混乱はない。それどころか、かなりだれた様子で、準備されていたくらいである。

 結局、伯爵夫人の移送には大型の乗用車一台を使用し、前後を警備兵を乗せた、これも通常の乗用車ニ台ずつで挟むというやり方は、完全に失敗だったと言わざるを得ない。もう一台、あとで「グリューネワルト伯爵夫人逃亡」の為の、ニュース用の映像を撮影しているテレビ局の車もあったのだが、これは戦力とは言えないだろう。全体的に、警護の兵力が少なすぎたのである。

 館を出てしばらく経ったところで、いきなり前後の乗用車に、至近距離からハンドキャノンによる攻撃が浴びせられる。軽装甲車くらいなら一撃で吹き飛ばしてしまうような攻撃に、通常の乗用車程度がもつはずもない。一瞬で爆発し炎上する車輌四両から、生きて出てくる者はいなかった。そして、次に伯爵夫人を乗せた車にも、ハンドキャノンによる攻撃が浴びせられる。急ブレーキを踏んだ車は、辛うじてこの攻撃を交わしたが、炎上中の前の車に突っ込みそうになり、右に急ハンドルを切った結果、壁に衝突してしまった。

 伯爵夫人以下が、よろけながら車外に出てきたところで、決定的な一弾が飛来した。ドレクスラー自らの手、狙撃用のライフルから放たれたエネルギー弾が、グリューネワルト伯爵夫人アンネローゼの、額の中央を貫いたのだ。

「・・・・・・・・・・・・・」

 無言で崩れ落ち、頭から血を吹き出しながら倒れるアンネローゼ。爵位を持たぬ下級貴族の娘として生まれ、見出されて一躍、神聖不可侵なる銀河帝国皇帝の寵姫となり、運命に翻弄され続けた女性の短い一生は、ここに終わりを遂げたのだ。

 なお、炎上する車と、倒れたアンネローゼの様子は、一部始終を後続のテレビ局の車によって、カメラに収められている。生中継しているわけではなかったことが、タンネンベルク侯にとっては唯一の救いであったろう。しかし、その救いも、そう長くは続かなかった。



「グリューネワルト伯爵夫人が暗殺されただと?!い、いったい、ど、どこの誰が!!」

 タンネンベルク侯は、その報告を受けて驚愕した。あるはずもないことが起こったのであれば、さすがの侯爵と雖も、混乱して当然だったであろう。いかに侯爵が有能だとはいえ、何と言ってもまだ若い、25歳の青年貴族でしかない面も、濃厚に持っているのである。しかし、いつまでも混乱しているわけにもいかないのは、さすがに弁えてはいた。

「いいか、この情報は押さえろ!通信を徹底的に管制する。この情報が、今すぐにローエングラム侯のところに届いてしまったら、彼は怒り狂って反転し、こちらに向かってくることになる。それではまだ、まだタイミングが早すぎる。ガイエスブルグ組が間に合わぬ!!」

 焦って関係各所に指示を連発するタンネンベルク侯だが、この行為が更に悪い結果を呼んでしまった。当然、帝国宰相府にも話が行き、リッテンハイム公爵のみならず、秘書官もそれを知るところとなったからだ。

「よいか、すぐにこの件はニュースで全帝国に流すのだ。暗殺の瞬間という、スクープ映像を逃してはならぬ。軍からの命令など気にすることはない。何か言われたら、『宰相府からの指示だった』と言えば良いぞ」

 ヘッセン子爵は、タンネンベルク侯を窮地に追い込む為だけに、個人的に知り合いであった国営放送局の報道局長に、勝手に指示を出した。こうなると、帝国宰相秘書官の地位は軽いものではない。放送局にとっては、帝国軍最高司令官の指示より、行政組織である帝国宰相府からの指示の方が、遙かに重みがある。



「帝国国営放送局より臨時ニュースを申し上げます。本日午前、帝都オーディンにおいて、先々代皇帝、フリードリッヒ四世陛下のご寵愛を受けられた、グリューネワルト伯爵夫人のご一行が、何者かによる襲撃を受け、伯爵夫人は逝去されました。それでは、偶然撮影されました、襲撃の瞬間の映像をご覧下さい」

 アナウンサーの姿が消えると、爆発炎上する車と、壁に衝突した車からよろよろと出てきたアンネローゼが撃たれ、崩れ落ちる瞬間の映像が映し出される。いずれも、迫真性があり、作ったような映像には見えない。本物の映像であることは明らかだった。

「なお、伯爵夫人は、現在賊軍の首魁となっているミューゼルもと元帥の姉にあたりますが、皇帝陛下のご慈愛により、処罰を受けることもなく、オーディンでの生活を継続しておられました。ご冥福をお祈り致します」



 この放送が流されると、タンネンベルク侯は怒髪天をついた。

「ふざけるな!いつ、誰が、これを全帝国に放送しろと言ったのだ!!」

 直ちに帝国国営放送局に電話を掛けると、自分の名を名乗り、責任者を出せと怒鳴った。報道局長が電話口に出る。

「ですから、これは帝国宰相府からの要請でございまして。放送せよ、とのお達しだったのでお断りするわけにもゆかず・・・・」

「いい加減なことを言うな!宰相閣下が、そのようなことを言うはずはない。それは、私がご本人に確認しておる。一体誰の指示だ?正直に話せ!!」

「何度も申し上げている通り、宰相府からの指示でございまして・・・・」

「そうか、あくまで隠し立てするか。では、憲兵をそちらにやって卿を逮捕、憲兵隊司令部に連行し、真実を述べるまで拘禁して拷問を加えることにしよう。いつでも命令できるぞ」

 電話口の向こうで、報道局長は息を呑んだ。そして叫ぶ。

「そ、そんな、ご無体な!!」

「さっさと白状すれば、もちろんそういう目には遭わせない。どうする、大人しく今すぐ正直に話すか、それとも憲兵による拷問の末に、嫌々喋らざるを得ないようになるか、二つに一つだ。卿が自分で選べ」

 さすがに、そこまで脅されては、報道局長も本当のことを白状しなければならなくなる。いくら何でも、憲兵隊に連れて行かれて拷問では、たまったものではないからだ。

「わ、解りました。話しますから、憲兵は勘弁して下さい!こちらに指示を出したのは、ヘッセン子爵ですよ、宰相秘書官の。帝国宰相府の命令だから、ということで」

「ヘッセン子爵」の名を聞くと、タンネンベルク侯は「わかった」とだけ言って電話を切り、直ちに宰相府に向かった。



「ヘッセン子爵、卿は何ということをしてくれたのだ!」

 宰相執務室にやってきたタンネンベルク侯は、開口一番、ヘッセン子爵を怒鳴りつける。頭ごなしに叱りつけられ、一瞬驚きを見せたヘッセン子爵だが、こちらも怒りを滾らせた。

「何だと!一体、何の権限があって、貴様はこの私にそのような口をきくのだ!お前如きに、怒鳴られなければならぬ私ではないわ!!この躾けの悪い野良犬が!!」

 罵詈雑言で返すヘッセン子爵である。しかし、タンネンベルク侯は、ヘッセン子爵が全く相手にならないことを確認すると、リッテンハイム公の方に向き直った。

「宰相閣下。この度の秘書官の越権行為は目に余ります。グリューネワルト伯爵夫人を暗殺されてしまったのは、こちらの手落ちではありますが、それを今ローエングラム侯に垂れ込まれるということは、我が軍にとっての重大な危機を意味しますので」

 二人の正面からの激突に、目を白黒させているリッテンハイム公だが、「重大な危機」という言葉は頭に入った。

「重大な危機、とな?」

「さよう。これで、ローエングラム侯が、怒り狂って帝都に攻めてくることは間違いありませぬ。彼が帝都による我が軍と戦えない唯一の理由、人質になっている姉が死んでしまったわけでございますから。そうなると、ローエングラム軍は八万、我が軍は五万。しかも、相手は復讐の一念の燃えているという状況。あまりに不利でございます。ガイエスブルグからの味方が全速で駆けつけても、今の位置関係では、下手をするとローエングラム軍の来襲より、一週間近くの時間がかかります。それ故、援軍が到来する前に我が軍が敗れ、帝都が失陥してしまう可能性は、かなり高いと言えるでしょう。もし、彼に帝都を占領されてしまった場合、私のみならず、皇帝陛下と宰相閣下、お二方とも、復讐に狂ったローエングラム侯の手によって、断頭台の露と消えることになりましょうな」

「何と不吉なことを!小父上、このような不愉快な物言いは、受け付ける必要はありませぬ!絶対にあり得ませぬぞ、そのようなことは。このタンネンベルクの愚か者が、卑怯かつ臆病なだけにて・・・」

 横から口を挟んだヘッセン子爵に、タンネンベルク侯は向き直った。そして、いきなり拳を打ち込む。一発、二発、三発と殴られ、ヘッセン子爵はたまらず昏倒した。士官学校上がりで軍務を経験しているタンネンベルク侯と、家名と財産に胡座をかいて生きてきただけのヘッセン子爵では、鍛え方が違う。仮に、タンネンベルク侯が奇襲的に殴ったのではなくても、全く勝負にはならないだろう。

「この度し難い莫迦者が、邪魔だ、引っ込んでおれ!」

 吐き捨てるように言うと、タンネンベルク侯は更に続けた。

「いかに我が軍と雖も、多数の敵、しかも戦闘能力が高い相手では、勝つことは無理でございます。何日支えられるか、ということが正直なところでしょう。何とか持たせて、ガイエスブルグ組が間に合ってくれることを祈るしかありませぬが、最悪の場合一時帝都を放棄する、ということも選択肢としてお考えあそばされるよう、お願いいたします。皇帝陛下と宰相閣下さえご無事でしたら、ガイエスブルグからの味方と合流し、再起することも可能ですからな」

 リッテンハイム公は、激発したタンネンベルク侯の迫力に圧倒されており、生返事をするだけだ。状況の急変と、ヘッセン子爵が目の前で叩きのめされたことにより、一時的に頭が回らなくなっているのである。

「それと・・・この大莫迦者ですが、申し訳ないですが拘禁させていただきます。軍の行動に害を及ぼすに至っては、さすがに看過し得ませぬ。当分の間、軍刑務所に放り込んでおきますので、ご承知を」

 タンネンベルク侯は、侮蔑しきった目でヘッセン子爵を見ると、外に待たせてあった憲兵を呼んだ。屈強の憲兵たちが入室してくると、失神しているヘッセン子爵を両脇から抱え、連れて行こうとする。

「ま、待ってくれ。カールに手荒な真似は、なるべくしないで貰いたいのだが・・・・確かに思慮の足らぬ、愚かな奴ではあるが、それなりにわしは可愛がってきたのでな・・・・」

 懇願するような調子になってしまった、リッテンハイム公である。

「ご安心を。軍刑務所に放り込むとは言っても、貴人用の施設が整った独房としますし、乱暴な真似などする筈もありませぬので。子爵には、しばらく頭を冷やして頂くだけでございます。しかし・・・・・」

 しかし、で一旦切って続けるタンネンベルク侯である。

「しかし、何だ?」

「しかし、さすがにヘッセン子爵にこれ以上、帝国宰相秘書官の重責を担わせることは、御免被りたいと思いますが。宰相閣下に秘書官の解任を要求するなど、越権行為であることは重々承知しておりますが、このように、味方に我が軍の足を引っ張られるような真似をされるのでは、たまったものではありませぬので」

「ぬうう、し、仕方ないか。カールがこんな真似をするとは、わしも思わなかったからな。卿の言う通りにしよう」

 すっかりしょげた様子で、タンネンベルク侯の言を受け入れるリッテンハイム公である。

「ところで、あの女を殺したというものは、一体誰なのだ?下手人は取り逃がしたのか?」

「申し訳ありませぬ。こちら側の警備は、ロイエンタールの逮捕で、私を含めすっかり油断しておりました上、相手はかなりの手練れだったようでございます。風のように襲われ、風のように去られてしまったようでして。現場の兵も、ほとんど全員グリューネワルト伯爵夫人と一緒に、倒されてしまっておりまして、証拠として残ったものは例の映像だけにございます。それだけでは、皆目見当のつかぬ有様にて。敵の姿は、ほとんど映っておりませぬからな。一応厳重な非常線を張ってはおりますが、敵の行方は皆目分からぬ、といった有様にて」

「そ、それでは、その手練れの敵が、わしやサビーネを襲ってきたら、拙いことになるやも知れぬではないか!警備の方は大丈夫なのか?!」

「それはご安心を。今でも皇宮と宰相府には、かなりの警備体制を敷いていますが、此度のことで差し当たって警備兵の数を倍に増やしました。閣下のお屋敷の方も同じく。もちろん、私の軍務省の方もでありますが。当面は、それで何とかなりましょう」

「そ、そうか。それで良い。しかし、此度は卿ともあろう者が、抜かったな。孺子の子分を捕らえたことで、いささか浮かれておったのかな?」

「何ともはや、それに関しては何も言い訳できませぬな。申し訳ありませぬ」

 深々と頭を下げるタンネンベルク侯である。

「しかし、あの女が死んで、孺子に都合が良い事態になるとは、おかしなものだな。だとすると、一体誰が狙わせたのか?いくら何でも孺子自身が、姉を狙わせるわけもあるまいに」

 リッテンハイム公の疑問を聞いて、はたと思い当たるタンネンベルク侯である。

「ようやく解りました。おそらく裏で糸を引いているのは、奴の参謀長、パウル・フォン・オーベルシュタイン中将ですな」

「オーベルシュタイン?」

「さよう。人間とは思えないような奴にて、感情を完全に排した『呼吸する機械人形』とでも考えた方がよろしいかと。イゼルローンが陥落した際、駐留艦隊の参謀の地位にありながら、司令官ゼークト大将を見捨てて逃亡し、その後ローエングラム侯の参謀となっている男にございます。奴なら、ローエングラム侯の感情など無視し、勝手にグリューネワルト伯爵夫人暗殺を進めることにございましょうな」

「では、いっそのことそやつが下手人だと、孺子に教えてやったらどうか。内輪もめが起こるだろう」

「無益でしょう。ローエングラム侯は、彼の姉を死なせてしまった私や宰相閣下の言を、信じようとはせぬでしょうからな。逆に、小手先の言い逃れと考え、ますます復讐心を滾らせるかも知れませぬぞ」

 油断から最悪の事態を迎えたことに、苦り切っているタンネンベルク侯である。こうなると、ロイエンタールの捕縛も、オーベルシュタインの撒き餌だったのでは、ということに思い至らないわけにはいかない。思わぬ大物を捕らえたことで、自分では気付かぬ内に有頂天になっていたのだろう。それ以外の工作に対する、警戒心が全く薄れてしまっていたのは、己がまだまだ経験不足の青臭い若造でしかない、ということを嫌と言うほど思い知らされたのである。

「とにかく、ローエングラム侯がオーディンに殺到してくるにせよ、まだ時間はあります。至急、私の幕僚を集め、今後の予測と作戦案の検討に入りたいと思いますので、これにて軍務省の方に帰らせていただきます。何か御用の折りには、いつでもお呼び下さいませ」

 諒解した、と尊大に頷くリッテンハイム公を後目に、タンネンベルク侯は宰相府を後にした。とにかく、急いで今後の対策を立てねばならない。宇宙に上がっている者を含めて全員を呼び集め、作戦会議を行う必要がある。


(以下続く)

親記事No.507スレッドの返信投稿
board4 - No.539

Re:田中芳樹の悪いとこ

投稿者:zero
2001年08月03日(金) 17時04分

> 実際に未完成の作品ってどれくらいあるんでしょうね。
> 創竜伝、薬師寺涼子、アルスラーン戦記、タイタニア、
>レッドホットドラグーン、自転地球儀、夏の魔術、こんなところですかね。
> これだけですよね。他にはないと思いますけど。

あと、KALNと、共作モノですが、野望円舞曲がありますね。
何か、マンガの原作もやってたような・・・


> こういうことを知ると作家の評価基準がわからないですよね。
> この人と田中芳樹のどっちがいい作家なんでしょう。

僕は「作家」としては田中芳樹氏は評価いますが、「人」としては
やはり、だらしなさを感じます。

実際、田中芳樹氏の「文章の作り方」「台詞回し」等、小気味よい
のは事実で、僕などは其処に惹かれていると思います。
「○○年待ったけど、その甲斐はあった」といえるモノは作っている
(と思いたい)

しかし、やはり「一つの作品(シリーズ)」に掛ける時間には限度
というモノがあると思います。
個人的には「一シリーズ10年以内、かつ最低年一冊」が理想です。
特に「作品内の時間<実際の時間」という場合、作者は年をとりますし、
色々な知識を得たりして、モノの考え方の変遷があると思うのです。
物語が始まった頃にないモノを作品内に反映させたりという事もあります。
#ココで徹底的に言及されているとおり、「創竜伝」ではその傾向が顕著ですしね。

なによりも、僕は一作品に対する興味が持続させづらいです。
あ、完結している作品は良いのです。
僕の場合、作品は完結して初めて「評価」を出します。
「評価」した作品は心の中に残りますから。


#最近(といってもここ数年)、完結するまで読まずに
 取っておく、という試みを実施中。
 やばい!何か最近、田中芳樹作品読んでない気が・・・

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